説明

車両用前照灯のレベリング装置

【課題】従来のレベリング装置では、車両用前照灯の後部においてレベリング装置を配置することができない場合がある。
【解決手段】この発明は、ハウジング9と、ワイヤ11と、シャフト12と、減速機構13と、を備えるものである。ワイヤ11は、一端がハウジング9に対して引き戻し可能であるように、他端がハウジング9内に巻装されている。シャフト12は、ハウジング9にワイヤ11の引き戻し方向に対して直交する方向に進退可能に取り付けられている。減速機構13は、ハウジング9内であって、ワイヤ11の他端とシャフト12との間に設けられていて、ワイヤ11の一端の引き戻しによりシャフト12をハウジング9に対して進退させてヘッドランプ1の光軸を調整するものである。この結果、この発明は、ヘッドランプ1の後部においてレベリング装置6を確実に配置することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえば、ヘッドランプやフォグランプなどの車両用前照灯の光軸を手動で調整する安価なレベリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用前照灯のレベリング装置は、従来からある(たとえば、特許文献1)。以下、従来の車両用前照灯のレベリング装置について説明する。従来の車両用前照灯のレベリング装置は、支持体と、支持体に一端部が引き戻し可能に取り付けられているワイヤと、支持体にワイヤの引き戻し方向と同方向に進退可能に取り付けられているアジャストスクリューと、支持体にワイヤの引き戻し方向およびアジャストスクリューの進退方向と直交する方向の軸回りに回動可能に取り付けられていて、ワイヤの一端とアジャストスクリューの一端とがそれぞれ取り付けられている回動部材と、を備えるものである。従来の車両用前照灯のレベリング装置は、車両用前照灯の後部に配置されていて、ワイヤを引き戻すことにより、回動部材が回動し、アジャストスクリューが進退して、車両用前照灯の光軸が調整される。
【0003】
ところが、従来の車両用前照灯のレベリング装置は、ワイヤとアジャストスクリューとが回動部材を介してワイヤの引き戻し方向およびアジャストスクリューの進退方向に直線方向に配置されているものであるから、車両用前照灯の後部においてレベリング装置を配置するための広いスペースを必要とする。このために、従来の車両用前照灯のレベリング装置は、車両用前照灯の後部においてレベリング装置を配置する広いスペースがエンジンやその他の車両用部品のレイアウト上確保できない場合には、レベリング装置を配置することができない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭58−12038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする問題点は、従来の車両用前照灯のレベリング装置では、車両用前照灯の後部においてレベリング装置を配置する広いスペースが確保できない場合には、レベリング装置を配置することができない場合があるという点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明(請求項1にかかる発明)は、ハウジングと、一端がハウジングに対して引き戻し可能であるように、他端がハウジング内に巻装されているワイヤと、ハウジングにワイヤの引き戻し方向に対して直交する方向に進退可能に取り付けられているシャフトと、ハウジング内であって、ワイヤの他端とシャフトとの間に設けられていて、ワイヤの一端の引き戻しによりシャフトをハウジングに対して進退させて車両用前照灯の光軸を調整する減速機構と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、この発明(請求項2にかかる発明)は、シャフトが、ハウジングに回転可能にかつ進退可能に取り付けられていて、減速機構が、ハウジング内にシャフトの回転中心線と同心の回転中心線回りに回転可能に取り付けられていて、ワイヤの他端が巻装されている回転部材と、回転部材に回転可能に取り付けられている複数個の遊星ギアと、ハウジングに設けられていて、複数個の遊星ギアと噛み合う外輪ギアと、シャフトに相互に回転不可能にかつシャフトの回転中心線方向に移動不可能に取り付けられていて、複数個の遊星ギアと噛み合い、シャフトと共にハウジングに対して回転しながら進退する太陽ギアと、ハウジングと回転部材とにそれぞれ取り付けられていて、ワイヤを戻し方向に付勢するスプリングと、から構成されている、ことを特徴とする。
【0008】
さらに、この発明(請求項3にかかる発明)は、ハウジングとワイヤの一端とには、ワイヤの引き戻し量の調整を行う調整機構が設けられている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明(請求項1にかかる発明)の車両用前照灯のレベリング装置は、ワイヤの引き戻し方向とシャフトの進退方向とが直交するので、ワイヤの引き戻し方向とアジャストスクリューの進退方向とが直線方向にある従来の車両用前照灯のレベリング装置と比較して、車両用前照灯の後部のレベリング装置の配置スペースを小さくすることができる。この結果、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用前照灯のレベリング装置は、車両用前照灯の後部においてレベリング装置を配置する広いスペースがエンジンやその他の車両用部品のレイアウト上確保できない場合であっても、レベリング装置を配置することができるものである。
【0010】
また、この発明(請求項2にかかる発明)の車両用前照灯のレベリング装置は、減速機構として遊星ギア機構を使用するので、車両用前照灯の後部におけるレベリング装置の配置スペースをさらに小さくすることができ、その分、エンジンやその他の車両用部品のレイアウトの設計の自由度が増す。しかも、この発明(請求項2にかかる発明)の車両用前照灯のレベリング装置は、ワイヤを戻し方向に付勢するスプリングを使用することにより、車両用前照灯の光軸を確実に調整することができる。
【0011】
さらに、この発明(請求項3にかかる発明)の車両用前照灯のレベリング装置は、調整機構でワイヤの引き戻し量を調整することにより、車両用前照灯の光軸の初期調整を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明にかかる車両用前照灯のレベリング装置の実施例を示すヘッドランプの縦断面図(垂直断面図)である。
【図2】同じく、レベリング装置の縦断面図(垂直断面図)である。
【図3】同じく、図1におけるIII−III線断面図である。
【図4】同じく、図1におけるIV矢視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、この発明にかかる車両用前照灯のレベリング装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0014】
以下、この実施例における車両用前照灯のレベリング装置の構成について説明する。図1において、符号1は、この実施例におけるレベリング装置を備える車両用前照灯であって、この例ではヘッドランプである。前記ヘッドランプ1は、灯室2を区画する固定部材としてのランプハウジング3およびランプレンズ4と、前記灯室2内に配置されている傾動部材としての取付ブラケット5と、前記ランプハウジング3と前記取付ブラケット5との間に配置されているこの実施例における車両用前照灯のレベリング装置6と、を備えるものである。
【0015】
前記傾動部材は、1個もしくは複数個のランプユニット(図示せず)と、前記1個もしくは複数個のランプユニットを取り付けた前記取付ブラケット5と、から構成されている。前記ランプユニットは、たとえば、プロジェクタタイプやリフレクタタイプ(反射タイプ)や直射タイプなどある。前記ランプユニットは、光源(図示せず)からの光(図示せず)を所定の光軸(図示せず)に沿って前記ランプレンズ4を通して車両の前方に所定の配光パターン(図示せず)で照射する。なお、前記ランプユニットの構成部品たとえばリフレクタと前記取付ブラケット5とが兼用する場合がある。また、光源としては、たとえば、LEDなどの半導体型光源、HIDなどの放電灯、ハロゲンバルブ、白熱バルブなどがある。さらに、所定の配光パターンとしては、たとえば、すれ違い用配光パターン、高速道路用配光パターン、走行用配光パターンなどがある。
【0016】
前記傾動部材の前記取付ブラケット5は、前記ランプハウジング3に前記レベリング装置6およびピボット機構7を介して前記ピボット機構7の球部8の中心を通る水平線H(ほぼ水平線も含む)回りに上下に回転可能に取り付けられている。なお、前記ランプハウジング3と前記取付ブラケット5との間に左右用の光軸調整機構(図示せず)を設け、前記傾動部材を前記ピボット機構7の球部8の中心を通る垂直線V(ほぼ垂直線も含む)回りに左右に光軸調整可能に構成しても良い。
【0017】
前記レベリング装置6は、ハウジング9およびカバー10と、ワイヤ11と、シャフト12と、減速機構13と、スプリング14と、調整機構としての調整部材15と、を備えるものである。
【0018】
前記ハウジング9は、前面側(前記ヘッドランプ1が光を照射する方向側)および4側面側が閉塞し、かつ、後面側が開口する中空状の円板形状をなす。一方、前記カバー10は、後面側および4側面側が閉塞し、かつ、前面側が開口する中空状の円板形状をなす。前記ハウジング9と前記カバー10とは、嵌合、係合、スクリュー止めなどにより、着脱可能に取り付けられている、あるいは、固定されている。この結果、前記ハウジング9および前記カバー10中には、前記ワイヤ11および前記シャフト12の一部および前記減速機構13および前記スプリング14を収納する空間部が形成される。
【0019】
前記ハウジング9と前記カバー10との間には、シール部材(図示せず)が介在されていて、前記ハウジング9と前記カバー10との間は、気密にもしくは水密に保持されている。前記ハウジング9および前記カバー10は、図1に示すように、たとえばランス形状の取付爪16が前記ランプハウジング3の取付孔17の縁に係合することにより、前記ランプハウジング3にOリング形状のパッキン18を介して気密にもしくは水密に取り付けられている。すなわち、前記レベリング装置6は、前記ヘッドランプ1の固定部材としての前記ランプハウジング3に取り付けられることとなる。
【0020】
前記ハウジング9の前面側の中央には、円筒部19が一体に設けられている。前記円筒部19の先端の外周面には、複数個の前記取付爪16が一体に設けられている。前記円筒部19の中心には、ねじ孔(メスねじ)20が設けられている。
【0021】
前記シャフト12は、中間部から一端(前端)にかけて丸棒形状をなし、一方、中間部から他端(後端)にかけて角棒形状をなすものである。前記シャフト12の一端には、球部21が一体に設けられている。また、前記シャフト12の中間部には、ねじ(オスねじ)22が設けられている。前記シャフト12の前記ねじ22を前記ハウジング9の前記ねじ孔20にねじ込むことにより、前記シャフト12は、前記ハウジング9に回転中心線O回りに回転可能にかつ回転中心線O方向に進退可能に取り付けられることとなる。
【0022】
前記ハウジング9および前記カバー10中に設けられている前記減速機構13は、遊星ギア機構(遊星歯車機構)からなり、遊星キャリアとしての回転部材23と、複数個この例では4個の遊星ギア(遊星歯車)24と、外輪ギア25と、太陽ギア(太陽歯車)26と、前記スプリング14と、から構成されている。
【0023】
前記回転部材23は、円板形状をなし、前面側には円柱形状の凹部が設けられている。前記回転部材23は、前記ハウジング9および前記カバー10内に前記シャフト12の回転中心線Oと同心の回転中心線回りに回転可能に取り付けられている。
【0024】
前記回転部材23の凹部の底には、4本の回転軸27が同一円周上に等間隔に固定されている。前記4個の遊星ギア24は、前記回転部材23の前記4本の回転軸27にそれぞれ回転可能に取り付けられている。
【0025】
前記ハウジング9の内面には、円輪部28が一体に設けられている。前記円輪部8の内周面には、前記外輪ギア25が設けられている。前記外輪ギア25と前記4個の遊星ギア24とは、相互に噛み合っている。
【0026】
前記太陽ギア26は、前記シャフト12の角棒形状の部分に相互に回転不可能に取り付けられている。また、前記太陽ギア26は、前記シャフト12の丸棒形状の部分(前記ねじ22)と角棒形状の部分との境の段部と、止め具(ストッパ)29との間において、前記シャフト12に前記シャフト12の回転中心軸O方向に相互に移動不可能に取り付けられている。この結果、前記太陽ギア26は、前記シャフト12と共に、前記ハウジング9および前記ケース10に対して、回転しながら前記シャフト12の回転中心軸O方向に進退するものである。前記太陽ギア26と前記4個の遊星ギア24とは、相互に噛み合っている。
【0027】
前記スプリング14は、コイルスプリングからなり、前記ハウジング9の円輪部28の外側にセットされている。前記スプリング14の一端は、前記ハウジング9に取り付けられていて(固定されていて)、一方、前記スプリング14の他端は、前記回転部材23に取り付けられている(固定されている)。前記スプリング14は、前記ワイヤ14を戻し方向(図3、図4中の矢印A方向と反対側の方向)に常時付勢するものである。
【0028】
前記シャフト12の前記球部21には、球受け部材30が、前記球部21の中心(図示せず)を中心として回転可能に取り付けられている。 前記球受け部材30は、前記取付ブラケット5に取り付けられている。これにより、前記シャフト12は、前記球受け部材30を介して前記傾動部材の前記取付ブラケット5に取り付けられている。また、前記のように、前記ハウジング9および前記カバー10は、前記ランプハウジング3に取り付けられている。この結果、前記レベリング装置6は、前記固定部材としての前記ランプハウジング3と前記傾動部材としての前記取付ブラケット5との間に配置されていることとなる。
【0029】
前記ハウジング9の側面の上部には、前記ワイヤ11の引き戻し口31が設けられている。前記引き戻し口31は、円筒形状をなす。前記ワイヤ11の一端は、前記引き戻し口31から前記ハウジング9および前記カバー10に対して引き戻し可能に引き出されている。一方、前記ワイヤ11の他端は、前記ハウジング9および前記カバー10内の前記回転部材23の外周面に固定されていて、かつ、前記ワイヤ11の他端部は、前記ハウジング9および前記カバー10内の前記回転部材23の外周面に巻装されている。
【0030】
図4に示すように、前記ワイヤ11の引き戻し方向Aと、前記シャフト12の進退方向Bとは、直交(ほぼ直交も含む)する。前記シャフト12の進退方向Bは、前記シャフト12の回転中心軸O方向と平行(ほぼ平行も含む)である。
【0031】
前記ハウジング9の前記引き戻し口31と前記ワイヤ11の一端とには、前記ワイヤ11の引き戻し量の調整を行う調整機構としての前記調整部材15が設けられている。すなわち、前記ハウジング9の前記引き戻し口31の内周面には、調整ねじ孔32が設けられている。一方、前記調整部材15は、一端部の調整ねじ部33と、他端部の受け凹部34と、からなる。前記調整部材15の調整ねじ部33を前記ハウジング9の調整ねじ孔32にねじ込んだり、ねじ戻したりすることにより、前記ワイヤ11の引き戻し量の調整を行うことができる。
【0032】
前記ワイヤ11の一端には、操作ワイヤ35の一端が、ジョイント36を介して連結されている。すなわち、前記ジョイント36の両端部には、球凹部がそれぞれ設けられていて、一方、前記ワイヤ11の一端および前記操作ワイヤ35の一端には、それぞれ球部がもうけられていて、前記ワイヤ11の一端の球部および前記操作ワイヤ35の一端の球部が前記ジョイント36の両端部の球凹部にそれぞれある程度回転可能に取り付けられているものである。
【0033】
前記操作ワイヤ35の他端は、光軸調整操作部(図示せず)に連結されている。前記光軸調整操作部は、前記操作ワイヤ35および前記ジョイント36を介して前記ワイヤ11を所定寸法複数段引き出したり戻し入れたりするものである。
【0034】
この実施例における車両用前照灯のレベリング装置6は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。
【0035】
まず、ヘッドランプ1の上下方向の光軸の初期設定について説明する。工具(図示せず)で手動により調整部材15を回してハウジング9の引き出し口31から引き戻す。すると、ワイヤ11が調整部材15の引き戻しに伴って、引き戻される。このワイヤ11の引き戻しに伴って、遊星ギア機構の減速機構13の回転部材23が回転する。この回転部材23の回転に伴って、4個の遊星ギア24が自転しながら公転する。この遊星ギア24の自転公転に伴って、太陽ギア26が回転する。この太陽ギア26の回転に伴ってシャフト12が太陽ギア26と共に回転しながらハウジング9に対して進退する。シャフト12の進退に伴って、取付ブラケット5をはじめとする傾動部材が水平線H回りに図1中の二点鎖線矢印方向に上下に傾動して、ヘッドランプ1の上下方向の光軸の初期設定が行われる。
【0036】
ヘッドランプ1の上下方向の光軸の初期設定が完了して、ヘッドランプ1のランプユニットの光源を点灯する。すると、光源からの光は、所定の光軸に沿ってランプレンズ4を通して車両の前方に所定の配光パターンで照射される。
【0037】
ここで、車両の姿勢が下向きに変化した場合においては、光源からの光が所定の光軸に対して下向きに照射されるので、問題がない。ところが、車両の姿勢が上向きに変化した場合においては、光源からの光が所定の光軸に対して上向きに照射されるので、問題が発生する。
【0038】
そして、車両の姿勢が上向きに変化した場合には、光軸調整操作部を手動で操作して、ワイヤ35およびジョイント36を介してワイヤ11を図3、図4中の矢印A方向に所定の段数引き出す。すると、このワイヤ11の所定の段数の引き出しに伴って、遊星ギア機構の減速機構13の回転部材23がスプリング14のスプリング力に抗して図3中の時計方向に回転する。この回転部材23の回転に伴って、4個の遊星ギア24が図3中の反時計方向に自転しながら図3中の時計方向に公転する。この遊星ギア24の自転公転に伴って、太陽ギア26が図3中の時計方向に回転する。この太陽ギア26の回転に伴ってシャフト12が太陽ギア26と共に図1中の実線矢印方向に回転しながらハウジング9に対して図1中の実線矢印方向および図2、図4中の矢印B方向に後退する。シャフト12の後退に伴って、取付ブラケット5をはじめとする傾動部材が水平線H回りに図1中の二点鎖線矢印方向に傾動して、ヘッドランプ1の光軸が下向きに調整される。
【0039】
車両の姿勢が元の状態に戻った時点で、光軸調整操作部を手動で操作して、ワイヤ35およびジョイント36を介してワイヤ11を図3、図4中の矢印A方向と逆方向に戻し入れる。すると、このワイヤ11の戻し入れに伴って、遊星ギア機構の減速機構13の回転部材23がスプリング14のスプリング力の復帰作用により図3中の反時計方向に回転する。この回転部材23の回転に伴って、4個の遊星ギア24が図3中の時計方向に自転しながら図3中の反時計方向に公転する。この遊星ギア24の自転公転に伴って、太陽ギア26が図3中の反時計方向に回転する。この太陽ギア26の回転に伴ってシャフト12が太陽ギア26と共に図1中の実線矢印方向と逆方向に回転しながらハウジング9に対して図1中の実線矢印方向および図2、図4中の矢印B方向と逆方向に前進する。シャフト12の前進に伴って、取付ブラケット5をはじめとする傾動部材が水平線H回りに図1中の二点鎖線矢印方向と逆方向に傾動して、ヘッドランプ1の光軸が上向きに調整される。ジョイント36が調整部材15の受け凹部34に当接することにより、ヘッドランプ1の光軸が初期設定の位置に復帰する。
【0040】
この実施例における車両用前照灯のレベリング装置6は、以上のごとき構成および作用からなり、以下、その効果について説明する。
【0041】
この実施例における車両用前照灯のレベリング装置6は、ワイヤ11の引き戻し方向(図3、図4中の矢印A方向および矢印A方向と逆方向)とシャフトの進退方向(図2、図4中の矢印B方向および矢印B方向と逆方向)とが直交するので、ワイヤの引き戻し方向とアジャストスクリューの進退方向とが直線方向にある従来の車両用前照灯のレベリング装置と比較して、車両用前照灯(ヘッドランプ1)の後部のレベリング装置6の配置スペースを小さくすることができる。この結果、この実施例における車両用前照灯のレベリング装置6は、車両用前照灯(ヘッドランプ1)の後部においてレベリング装置6を配置する広いスペースがエンジンやその他の車両用部品のレイアウト上確保できない場合であっても、レベリング装置6を配置することができるものである。
【0042】
また、この実施例における車両用前照灯のレベリング装置6は、減速機構13として遊星ギア機構を使用するので、車両用前照灯(ヘッドランプ1)の後部におけるレベリング装置6の配置スペースをさらに小さくすることができ、その分、エンジンやその他の車両用部品のレイアウトの設計の自由度が増す。しかも、この実施例における車両用前照灯のレベリング装置6は、ワイヤ11を戻し方向(図2、図4中の矢印B方向と逆方向)に付勢するスプリング14を使用することにより、車両用前照灯(ヘッドランプ1)の光軸を確実に調整することができる。
【0043】
さらに、この実施例における車両用前照灯のレベリング装置6は、調整機構としての調整部材15でワイヤ11の引き戻し量を調整することにより、車両用前照灯(ヘッドランプ1)の光軸の初期調整を行うことができる。
【0044】
なお、前記の実施例においては、車両用前照灯のレベリング装置としてヘッドランプ1について説明する。ところが、この発明においては、ヘッドランプ1以外の車両用前照灯のレベリング装置にも適用することができる。
【0045】
また、前記の実施例においては、固定部材としてランプハウジング3を使用し、傾動部材としてランプユニットおよび取付ブラケット5を使用するものである。ところが、この発明においては、固定部材として車体を使用し、傾動部材として車両用前照灯全体を使用しても良い。
【符号の説明】
【0046】
1 ヘッドランプ(レベリング装置を備える車両用前照灯)
2 灯室
3 ランプハウジング(固定部材)
4 ランプレンズ
5 取付ブラケット(傾動部材)
6 レベリング装置
7 ピボット機構
8 球部
9 ハウジング
10 カバー
11 ワイヤ
12 シャフト
13 減速機構
14 スプリング
15 調整部材(調整機構)
16 取付爪
17 取付孔
18 パッキン
19 円筒部
20 ねじ孔
21 球部
22 ねじ
23 回転部材
24 遊星ギア
25 外輪ギア
26 太陽ギア
27 回転軸
28 円輪部
29 止め具
30 球受け部材
31 引き戻し口
32 調整ねじ孔
33 調整ねじ部
34 受け凹部
35 操作ワイヤ
36 ジョイント
A ワイヤの引き方向
B シャフトの後退方向
H 水平線
V 垂直線
O シャフトの回転中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用前照灯の光軸を調整するレベリング装置において、
ハウジングと、
一端が前記ハウジングに対して引き戻し可能であるように、他端が前記ハウジング内に巻装されているワイヤと、
前記ハウジングに前記ワイヤの引き戻し方向に対して直交する方向に進退可能に取り付けられているシャフトと、
前記ハウジング内であって、前記ワイヤの他端と前記シャフトとの間に設けられていて、前記ワイヤの一端の引き戻しにより前記シャフトを前記ハウジングに対して進退させて前記車両用前照灯の光軸を調整する減速機構と、
を備えることを特徴とする車両用前照灯のレベリング装置。
【請求項2】
前記シャフトは、前記ハウジングに回転可能にかつ進退可能に取り付けられていて、
前記減速機構は、
前記ハウジング内に前記シャフトの回転中心線と同心の回転中心線回りに回転可能に取り付けられていて、前記ワイヤの他端が巻装されている回転部材と、
前記回転部材に回転可能に取り付けられている複数個の遊星ギアと、
前記ハウジングに設けられていて、前記複数個の遊星ギアと噛み合う外輪ギアと、
前記シャフトに相互に回転不可能にかつ前記シャフトの回転中心線方向に移動不可能に取り付けられていて、前記複数個の遊星ギアと噛み合い、前記シャフトと共に前記ハウジングに対して回転しながら進退する太陽ギアと、
前記ハウジングと前記回転部材とにそれぞれ取り付けられていて、前記ワイヤを戻し方向に付勢するスプリングと、
から構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用前照灯のレベリング装置。
【請求項3】
前記ハウジングと前記ワイヤの一端とには、前記ワイヤの引き戻し量の調整を行う調整機構が設けられている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用前照灯のレベリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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