説明

車両用灯具洗浄装置の配管固定構造

【課題】軽量化とコストダウン、配管ヘの車体振動衝撃の伝播を防いで該配管の耐久性向上を図ることができる車両用灯具洗浄装置の配管固定構造を提供すること。
【解決手段】ウォッシャタンクと車両用灯具洗浄装置1とを接続する配管の固定構造として、前記配管を小径自在ホース4で構成するとともに、該小径自在ホース4をこれを嵌合保持するホースサポート6を介して車体に固定する構成を採用する。又、前記ホースサポート6を複数に分割し、各分割片6A,6B,6Cの一端にピン(嵌合凸部)8、他端に円孔(嵌合凹部)11を形成し、隣接する分割片6Aと6B及び分割片6Bと6Cを一方のピン8と他方の円孔11との嵌合によって連結可能とする。更に、前記各分割片6A〜6Cに円弧状の曲げ部6aと直線部6bを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドランプ等の車両用灯具に洗浄液を噴射してその表面を洗浄するための洗浄装置の配管固定構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の例えばヘッドランプの前面が埃や泥等の付着によって汚れると光量不足を招く可能性があるため、必要に応じてヘッドランプに向かって洗浄液を噴射して該ヘッドランプの表面を洗浄するための洗浄装置がフロントバンパの裏側に設置されている。この洗浄装置は、洗浄液が供給されるシリンダと、該シリンダ内に摺動可能に嵌挿されたピストンと、該ピストンの先端に取り付けられたバルブケースと、該バルブケースに支持されたノズルホルダと、該ノズルホルダに支持された噴射ノズルを備えており、噴射ノズルから洗浄液が車両用灯具に向けて噴射される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、洗浄液を収容するウォッシャタンクと洗浄装置とは配管によって接続され、ウォッシャタンクに収容された洗浄液はポンプによって上昇圧されて配管を通って洗浄装置へと供給され、該洗浄装置の噴射ノズルからヘッドランプに向かって噴射される。ここで、ヘッドランプを洗浄するための洗浄装置は車両前部のフロントバンパの裏側に取り付けられるが、フロントバンパ裏側のエンジンルームには多くの部品が配置されるため、配管30を図6に示すように他部品との干渉を避けて取り廻す必要がある。この場合、配管30の図6に示すX部分は複数のクランプ40によってフロントバンパに固定することができるため、この部分の配管30には太い押し出し成形ホース30Aが使用されるが、図6のY部分の配管30は車体に取り付けることができず、宙に浮いてしまう。このため、図6のY部分の配管30は樹脂等によって所定の形状に成形された専用成形ホース30Bをジョイント50によって連結する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−264891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図6に示す配管30のようにフロントバンパへの固定が可能な部分に太い押し出し成形ホース30Aを使用し、車体への固定が不可能な部分に専用成形ホース30Bを使用すると、重量増加やコストアップを招く他、車種に応じて複数の専用成形ホース30Bが必要となるために、その種類が増えて管理が大変であるという問題があった。
【0006】
又、図6に示す配管構造によれば、車体の振動衝撃を配管30自身が直接受けるため、特に該配管30のジョイント50部分に大きな負荷が作用するという問題があった。
【0007】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、軽量化とコストダウン、配管ヘの車体振動衝撃の伝播を防いで該配管の耐久性向上を図ることができる車両用灯具洗浄装置の配管固定構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、ウォッシャタンクと車両用灯具洗浄装置とを接続する配管の固定構造として、前記配管を小径自在ホースで構成するとともに、該小径自在ホースをこれを嵌合保持するホースサポートを介して車体に固定する構成を採用することを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記ホースサポートを複数に分割し、各分割片の一端に嵌合凸部、他端に嵌合凹部を形成し、隣接する分割片を一方の嵌合凸部と他方の嵌合凹部との嵌合によって連結可能としたことを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記各分割片に円弧状の曲げ部と直線部を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、配管を小径自在ホースで構成するとともに、該小径自在ホースをこれを嵌合保持するホースサポートを介して車体に固定するようにしたため、従来必要であった太くて重い押し出し成形ホースや専用成形ホースを用いる必要がなく、軽量で柔軟な小径自在ホースを用いることができ、配管の軽量化とコストダウンを図ることができる。又、柔軟な小径自在ホースを他部品との干渉を避けてホースサポートの形状に沿って折り曲げて配索することができ、その形状をホースサポートによって保持することができる。更に、車体の振動衝撃はホースサポートによって受けられ、小径自在ホースに車体の振動衝撃が直接及ぶことがないため、該小径自在ホースの耐久性が高められる。
【0012】
請求項2及び3記載の発明によれば、ホースサポートを複数に分割し、各分割片の一端に嵌合凸部、他端に嵌合凹部を形成し、隣接する分割片を一方の嵌合凸部と他方の嵌合凹部との嵌合によって連結可能としたため、車種に応じて複数の分割片を適当に組み合わせて連結することによって小径自在ホースを他部品との干渉を避けて配索することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る車両用灯具洗浄装置の配管固定構造を示す車両前部の正面図である。
【図2】図1のA部の拡大詳細図である。
【図3】図2のB−B線断面図である。
【図4】ホースサポートの連結構造を示す分解斜視図である。
【図5】小径自在ホースのホースサポートへの嵌合構造を示す部分斜視図である。
【図6】車両用灯具洗浄装置の従来の配管固定構造を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は本発明に係る車両用灯具洗浄装置の配管固定構造を示す車両前部の正面図、図2図1のA部の拡大詳細図、図3は図2のB−B線断面図、図4はホースサポートの連結構造を示す分解斜視図、図5は小径自在ホースのホースサポートへの嵌合構造を示す部分斜視図である。
【0016】
図1に示すように、車両前部のフロントバンパ20の裏側の左右には、左右の不図示のヘッドランプの前面に向かって洗浄液を噴射して該前面を洗浄するための洗浄装置1がそれぞれ取り付けられている。ここで、各洗浄装置1は、図2に示すように、円筒状のシリンダ2の内部に不図示のピストンを摺動可能に嵌挿し、該ピストンの先端部に不図示のチェックバルブ機構を介して左右一対の噴射ノズル3を取り付けて構成されている。
【0017】
而して、本実施の形態では、上記左右一対の洗浄装置1とフロントバンパ20の裏側のエンジンルーム内に配置された不図示のウォッシャタンクとを接続する配管として可撓性を有する柔軟な小径自在ホース4が使用されている。この小径自在ホース4は、フロントバンパ20の車幅方向中央部の裏側を水平に配され、その両端は垂直上方に立ち上がった後に各洗浄装置1の上方を外側方に向かって水平に延び、その端部は垂直下方に向かって直角に折り曲げられた後に内側方向かって直角に折り曲げられ、その端部が各洗浄装置1に接続されている。即ち、左右の各洗浄装置1の周囲においては、小径自在ホース4は各洗浄装置1を外側から取り囲むように矩形状を成して配索されている。
【0018】
上記小径自在ホース4のフロントバンパ20の車幅方向中央部の裏側に水平に配される部分(図1のC部分)は複数のクランプ5によってフロントバンパ20の裏面に取り付けられている。これに対して、小径自在ホース4の各洗浄装置1の周囲を取り巻く部分(図1のA部分)は、図2に詳細に示すようにホースサポート6によって嵌合保持されている。
【0019】
上記ホースサポート6は、図2に示すように、3分割された分割片6A,6B,6Cを連結することによって矩形枠状に構成されており、各分割片6A〜6Cは樹脂にて一体成形されている。そして、各分割片6A〜6Cは、直角に折り曲げられた円弧状の曲げ部6aとこれに連なる直線部6bを備えており、これには図3〜図5に示すように小径自在ホース4を嵌合保持するための横断面半円形の嵌合溝6cが形成されている。
【0020】
又、図4に示すように、ホースサポート6の各分割片6A〜6Cの一端には水平なフランジ7が一体に形成されており、このフランジ7の上面の左右からは嵌合凸部を構成するピン8が垂直に立設され、フランジ7の下面中央からは爪状のフック9が垂直に形成されている。そして、各分割片6A〜6Cの他端の左右にはボス10が一体に形成されており、各ボス10には嵌合凹部を構成する円孔11がそれぞれ貫設されている。尚、円孔11の内径は前記ピン8の外径よりも若干小さく設定されている。
【0021】
而して、各分割片6A〜6Cは、隣接するもの同士の一方の端部に形成された左右のボス10の円孔11に他方の端部に立設された左右にピン8を圧入することによって連結され、このようにして3つの分割片6A〜6Cが連結されることによって図3に示すように矩形枠状のホースサポート6が形成される。すると、このホースサポート6においては、各分割片6A〜6Cに形成された嵌合溝6cが1本に連なり、この連なった嵌合溝6cに小径自在ホース4を嵌め込むことによって該小径自在ホース4がホースサポート6によって嵌合保持され、図2に示すように小径自在ホース4がホースサポート6の形状に沿って洗浄装置1の周囲を囲むように矩形に配索される。そして、ホースサポート6の両端部分(図2のa点とb点)のフック9を車体側の不図示の係止孔に差し込むことによってホースサポート6とこれに嵌合保持された小径自在ホース4が車体側に固定される。
【0022】
以上のようにウォッシャタンクと左右の洗浄装置1とが小径自在ホース4によって接続された状態において、運転者のスイッチ操作によって不図示のポンプが駆動されると、ウォッシャタンクから高圧の洗浄液が小径自在ホース4を通って左右の洗浄装置1へとそれぞれ供給され、各洗浄装置1の噴射ノズル3から洗浄液が不図示のヘッドランプに向かって噴射され、この洗浄液の噴射によって左右のヘッドランプの表面が洗浄される。
【0023】
以上のように、本実施の形態では、ウォッシャタンクと洗浄装置1とを接続する配管を小径自在ホース4で構成するとともに、該小径自在ホース4をこれを嵌合保持するホースサポート6を介して車体に固定するようにしたため、従来必要であった太くて重い押し出し成形ホースや専用成形ホースを用いる必要がなく、軽量で柔軟な小径自在ホース4を用いることができるため、配管の軽量化とコストダウンを図ることができる。
【0024】
又、柔軟な小径自在ホース4を他部品との干渉を避けてホースサポート6の形状に沿って折り曲げて配索することができ、その形状をホースサポート6によって保持することができる。
【0025】
更に、車体の振動衝撃はホースサポート6によって受けられ、小径自在ホース4に車体の振動衝撃が直接及ぶことがないため、該小径自在ホース4の耐久性が高められる。
【0026】
そして、本実施の形態では、ホースサポート6を3つに分割し、各分割片6A〜6Cの一端に嵌合凸部としてピン8を突設し、他端に嵌合凹部としてボス10に円孔11を形成し、隣接する分割片6Aと6B及び分割辺6Bと6Cの一方のピン8を他方の円孔11に圧入することによって連結するようにしたため、車種に応じて複数の分割片6A,6B,6C,…を適当に組み合わせて連結することによって小径自在ホース4を他部品との干渉を避けて配索することができる。
【0027】
尚、以上の実施の形態ではホースサポート6を3分割したが、その分割数は任意であって配管の形状や寸法によって自由に設定することができる。又、以上は本発明をヘッドランプの洗浄に供される洗浄装置の配管固定構造に適用した形態について説明したが、本発明は、ヘッドランプ以外の他の任意の車両用灯具の洗浄に供される洗浄装置の配管固定構造に対しても同様に適用可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0028】
1 洗浄装置
2 洗浄装置のシリンダ
3 洗浄装置の噴射ノズル
4 小径自在ホース
5 クランプ
6 ホースサポート
6A〜6C ホースサポートの分割片
6a 分割片の曲げ部
6b 分割片の直線部
6c 分割片の嵌合溝
7 ホースサポートのフランジ
8 ホースサポートのピン(嵌合凸部)
9 ホースサポートのフック
10 ホースサポートのボス
11 ボスの円孔(嵌合凹部)
20 フロントバンパ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウォッシャタンクと車両用灯具洗浄装置とを接続する配管の固定構造であって、
前記配管を小径自在ホースで構成するとともに、該小径自在ホースをこれを嵌合保持するホースサポートを介して車体に固定することを特徴とする車両用灯具洗浄装置の配管固定構造。
【請求項2】
前記ホースサポートを複数に分割し、各分割片の一端に嵌合凸部、他端に嵌合凹部を形成し、隣接する分割片を一方の嵌合凸部と他方の嵌合凹部との嵌合によって連結可能としたことを特徴とする請求項1記載の車両用灯具洗浄装置の配管固定構造。
【請求項3】
前記各分割片に円弧状の曲げ部と直線部を設けたことを特徴とする請求項2記載の車両用灯具洗浄装置の配管固定構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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