説明

車両用灯具

【課題】光軸にずれを生じることなく、バルブへの汎用性に優れ、部品点数の削減を図ることができる車両用灯具を提供する。
【解決手段】車両用灯具10は、バルブ11が接続される給電用コネクタ12は、コネクタ取付部31に取り付けられるリフレクタ取付部19と、バルブ11のバルブ端子部15に嵌合されるコネクタ部20とを備えている。そして、コネクタ部20は、リフレクタ取付部19に対して、少なくとも光軸方向及び光軸方向と垂直な方向の一方に変位可能に一体化されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関し、詳しくは給電用コネクタとバルブをリフレクタに装着する取り付け構造を備えた車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用灯具の一例として、リフレクタの開口部に装着したホルダーと、バルブの端子を差し込んでバルブを保持したコネクタとを備え、ホルダーとコネクタとの間にバルブの鍔部を挟んで組み付けた車両用灯具が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭63−4321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、バルブの製造工程においては、最初にフィラメントを備えた管部、バルブボディ、端子部を一体化し、その後に鍔部をフィラメントが所定の位置関係になるように調整しながら、バルブボディに鍔部を接続する。バルブは、リフレクタに対して鍔部を介して接続されるため、バルブをこのように製造することにより、フィラメントとリフレクタの位置関係が常に一定に保たれることになり、全ての製品において所望の配光を得られることになる。
一方、この製造方法の結果として、バルブの鍔部と端子部の位置関係にはバラツキが生じ、リフレクタと端子部の位置関係にもバラツキが生じることになる。このため、上記特許文献1に開示された従来の車両用灯具では、コネクタ4が端子12とリフレクタ2のホルダー3両方に同時に接続することができない可能性があった。
【0005】
また、バルブを取り付けるのに必要な部品がホルダーとコネクタとの2部品構成であるため、組付け工数の増大や部品点数に伴うコストアップに繋がっていた。
【0006】
本発明の目的は、前述した課題を解決するためになされたものであり、バルブの光軸にずれを生じることなく、バルブへの汎用性に優れ、部品点数の削減を図ることができる車両用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る上記目的は、バルブと、該バルブが接続される給電用コネクタと、前記バルブを光軸方向に沿って挿入するバルブ挿入部と前記給電用コネクタを取り付ける前記バルブ挿入部の周囲に設けられるコネクタ取付部とを有するリフレクタと、を備える車両用灯具であって、前記給電用コネクタは、前記コネクタ取付部に取り付けられるリフレクタ取付部と、前記バルブのバルブ端子部に嵌合されるコネクタ部とを備え、前記コネクタ部は、前記リフレクタ取付部に対して、少なくとも前記光軸方向及び該光軸方向と垂直な方向の一方に変位可能に一体化されていることを特徴とする車両用灯具により達成される。
【0008】
上記構成の車両用灯具によれば、給電用コネクタのコネクタ部がリフレクタ取付部に対して、少なくとも光軸方向及び光軸方向と垂直な方向の一方に変位可能に一体化されている。これにより、バルブのバルブ端子部に位置ずれを生じていても、コネクタ部がバルブの位置ずれを吸収してコネクタ取付部に取り付けられる。よって、リフレクタに対するバルブの光軸ずれを生じることはない。
【0009】
また、給電用コネクタのコネクタ部側をバルブのバルブ端子部に嵌合させ、給電用コネクタのリフレクタ取付部側をリフレクタのコネクタ取付部に取り付けるため、バルブの形状に影響されることなく多種のバルブに適用させることができる。
さらに、給電用コネクタにリフレクタ取付部とコネクタ部とを一体に備えているため、部品点数の大幅な削減を図ることができる。
【0010】
また、上記構成の車両用灯具において、前記コネクタ部は、可撓性を有する接続部を介して前記リフレクタ取付部と一体化されていることが望ましい。
【0011】
このような構成の車両用灯具によれば、接続部によりコネクタ部がリフレクタ取付部に対して変位(偏心)可能であるため、バルブのバルブ端子部に位置ずれを生じていても、接続部がバルブの位置ずれを吸収することができる。
【0012】
また、上記構成の車両用灯具において、前記リフレクタ取付部は、前記リフレクタ後方側から前記光軸方向に沿って押し込むことで、前記コネクタ取付部に設けられたリフレクタ側係合部に係止されるコネクタ側係合部を備えていることが望ましい。
【0013】
このような構成の車両用灯具によれば、リフレクタ取付部をリフレクタ後方側から光軸方向に沿って押し込むことにより、コネクタ側係合部がリフレクタのリフレクタ側係合部に係止される。よって、給電用コネクタのリフレクタへの装着を一方向から簡単に行うことができ、自動組付けに対応することができる。
【0014】
また、上記構成の車両用灯具において、前記リフレクタ取付部は、前記コネクタ取付部に対して押圧付勢する弾性押圧部を備えていることが望ましい。
【0015】
このような構成の車両用灯具によれば、給電用コネクタは、弾性押圧部によりコネクタ取付部から押圧付勢されるため、リフレクタに対して傾くことなく装着することができる。
【0016】
また、上記構成の車両用灯具において、前記コネクタ側係合部は、前記リフレクタ取付部の外周部に形成された可撓ランスであり、前方に係止部を有し、後方に解除操作部を有していることが望ましい。
【0017】
このような構成の車両用灯具によれば、コネクタ側係合部の係止部をリフレクタのリフレクタ側係合部に係止させることで、給電用コネクタを簡単にリフレクタに装着することができる。
また、給電用コネクタの取り外し時は、コネクタ側係合部の解除操作部を操作することで、リフレクタ側係合部から係止部を容易に係止解除させることができる。よって、専用工具等を用いることなく給電用コネクタをリフレクタから簡単に取り外すことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る車両用灯具によれば、給電用コネクタは、コネクタ取付部に取り付けられるリフレクタ取付部と、バルブのバルブ端子部に嵌合されるコネクタ部とを備え、リフレクタ取付部に対してコネクタ部を、少なくとも光軸方向及び光軸方向と垂直な方向の一方に変位可能に一体化した。したがって、バルブの光軸にずれを生じることなく、汎用性に優れ、部品点数の削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る一実施形態の車両用灯具の分解斜視図である。
【図2】図1の車両用灯具に適用される給電用コネクタの平面図である。
【図3】図2の給電用コネクタの側面図である。
【図4】図2の給電用コネクタの底面図である。
【図5】図1の車両用灯具の組立後の外観斜視図である。
【図6】図1の車両用灯具の組立後の要部断面図である。
【図7】図1の車両用灯具の解除時の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態に係る車両用灯具について図面を参照して説明する。
【0021】
図1に示すように、本発明の一実施形態である車両用灯具10は、バルブ11と、バルブ11が接続される給電用コネクタ12と、車両前方側が開口された形状で車体側に固定され、給電用コネクタ12を取り付ける樹脂製のランプボディ一体型リフレクタ13(以下、単にリフレクタと云う)とを備えている。なお、図1も含め、以下の図では図中の下方が車両前方である。
【0022】
バルブ11は、例えばH4タイプのハロゲンランプであり、バルブボディ14の一方側に3本のバルブ端子部15を突出しており、バルブボディ14の他方側に突出した管部17内に不図示のフィラメントを内蔵している。
バルブ11は、バルブボディ14の側部にリフレクタ取付用の鍔部16を突出している。鍔部16は、位置決め用の3個の突部18を有している。
【0023】
給電用コネクタ12は、可撓性を有する樹脂材料から成形されており、リフレクタ取付部19と、コネクタ部20とから構成されている。
【0024】
コネクタ部20は、リフレクタ取付部19に対して、光軸方向及び光軸方向と垂直な方向に変位(偏心)可能なように一体化されている。コネクタ部20には、バルブ11のバルブ端子部15に電気的に接続される不図示の端子を収容するための端子キャビティ21(図2参照)を有している。コネクタ部20の後方からは、端子に接続された電源用配線22が引き出されている。
【0025】
リフレクタ取付部19は、円筒形状に形成されており、上端面23上の3箇所に可撓性を有する帯状の接続部24の一端が等間隔に延設されている。接続部24の他端は、コネクタ部20の外周部に接続されている。
接続部24は、リフレクタ取付部19に対してコネクタ部20を傾動可能に支持している。なお、接続部24のみを他の給電用コネクタ12とは異なる可撓性を有する別の樹脂材料と共に一体成形しても良い。
【0026】
リフレクタ取付部19は、外周面25の対向する2箇所に、可撓ランスであるコネクタ側係合部26を形成している。コネクタ側係合部26は、T字形状に外周面25から突出しており、前方側に係止部27を有し、後方側に解除操作部28を有している。
【0027】
リフレクタ取付部19の下端面29上には、3箇所に弾性押圧部30が等間隔に突設されている。弾性押圧部30は、バルブ11側の鍔部16に対応しており、リフレクタ取付部19がリフレクタ13に装着されるとき、バルブ11の鍔部16を介してリフレクタ13側のコネクタ取付部31を押圧付勢する。
【0028】
リフレクタ13は、例えば、硬質の樹脂材料を用いて車両前方に開口した箱形状に形成されており、内面に反射面を有している。リフレクタ13の基部には、バルブ11を光軸方向に沿って挿入するためのバルブ挿入部32が形成されており、バルブ挿入部32の周囲にコネクタ取付部31を形成している。
【0029】
コネクタ取付部31は、円筒形状に突出した円筒部33を有している。円筒部33の対向する2箇所には、コネクタ側係合部26の係止部27に対応したリフレクタ側係合部34を形成している。円筒部33は、バルブ11の突部18を挿入させるための3個の切欠35を有している。
【0030】
図2〜図4に示すように、コネクタ部20は、円柱形状に形成されており、これに対して、リフレクタ取付部19は円筒形状に形成されている。
【0031】
コネクタ部20は、外径寸法D1を有しており、3個の端子キャビティ21を円周方向に90度の間隔で貫通形成している。また、リフレクタ取付部19は、コネクタ部20よりも大きい内径寸法D2を有している。
コネクタ部20は、接続部24によりリフレクタ取付部19に接続されており、リフレクタ取付部19の筒内にオーバーラップしている。そのため、コネクタ部20の光軸方向への変位は、光軸方向に長くなることなく変位可能である。
【0032】
次に、給電用コネクタ12の取り付け動作および取り外し動作について説明する。
【0033】
先ず、バルブ11の管部17をリフレクタ13のバルブ挿入部32に挿入してから、バルブ11の突部18を円筒部33の切欠35に挿入させて位置決めをする。
【0034】
次に、図5に示すように、給電用コネクタ12をリフレクタ13の後方側から光軸方向に沿ってバルブ11のバルブ端子部15に向けて押し込む。これにより、コネクタ部20の端子キャビティ21がバルブ11のバルブ端子部15に装着される。
このとき、給電用コネクタ12のコネクタ部20がリフレクタ取付部19に対して、少なくとも光軸方向及び光軸方向と垂直な方向の一方に偏心する。これにより、バルブ11のバルブ端子部15に位置ずれを生じていても、コネクタ部20がバルブ11の位置ずれを吸収することができる。
【0035】
そして、図6に示すように、給電用コネクタ12のリフレクタ13への押し込みにより、コネクタ側係合部26の係止部27がリフレクタ側係合部34に係止する。このとき、弾性押圧部30は、弾性変形してその反発力により、バルブ11の鍔部16を介してリフレクタ13のコネクタ取付部31を押圧付勢する。
このようにバルブ11とリフレクタ13とに光軸のずれを生じることなく、バルブ11の固定と給電用コネクタ12の接続がリフレクタ13の後方側から1工程で行うことができ、自動組付けに対応することができる。
なお、給電用コネクタ12をバルブ11のバルブ端子部15に押し込んで装着後、これらをリフレクタ13のバルブ挿入部32に挿入し、コネクタ側係合部26の係止部27をリフレクタ側係合部34に係止させても良い。
【0036】
次に、図7に示すように、給電用コネクタ12をリフレクタ13から取り外す際は、コネクタ側係合部26の解除操作部28を、例えば手指で摘むことにより係止部27をリフレクタ側係合部34から容易に係止解除させることができる。
これにより、弾性押圧部30は弾性変形が開放され、その弾性復元力により給電用コネクタ12が押し上げられ、給電用コネクタ12がリフレクタ13から簡単に取り外される。
【0037】
上述したように本実施形態の車両用灯具10では、給電用コネクタ12のコネクタ部20がリフレクタ取付部19に対して、少なくとも光軸方向及び光軸方向と垂直な方向の一方向に変位可能に一体化されている。これにより、バルブ11のバルブ端子部15に位置ずれを生じていても、コネクタ部20がバルブ11の位置ずれを吸収してコネクタ取付部31 に取り付けられる。よって、バルブ11とリフレクタ13との間で光軸のずれを生じることはなくなる。
【0038】
また、給電用コネクタ12のコネクタ部20をバルブ11のバルブ端子部15に嵌合させ、給電用コネクタ12のリフレクタ取付部19をリフレクタ13のコネクタ取付部31に取り付けるため、バルブ11形状に影響されることなく多種のバルブに適用させることができる。
また、給電用コネクタ12にリフレクタ取付部19とコネクタ部20とを一体に備えているため、部品点数の大幅な削減を図ることができる。
【0039】
また、コネクタ部20がリフレクタ取付部19に対して、接続部24により変位可能であるため、バルブ11のバルブ端子部15に位置ずれを生じていても、接続部24がバルブ11の位置ずれを吸収することができる。
【0040】
また、リフレクタ取付部19をリフレクタ13の後方側から光軸方向に沿って押し込むことにより、コネクタ側係合部26がリフレクタ13のリフレクタ側係合部34に係止される。これにより、給電用コネクタ12のリフレクタ13への装着を一方向から簡単に行うことができ、自動組付けに対応することができる。
【0041】
また、給電用コネクタ12は、コネクタ取付部31から弾性押圧部30により押圧付勢されるため、リフレクタ13に対して傾くことなく給電用コネクタ12をリフレクタ13に装着することができる。
【0042】
また、コネクタ側係合部26の係止部27をリフレクタ13のリフレクタ側係合部34に係止させることで、給電用コネクタ12がリフレクタ13に装着される。また、コネクタ側係合部26の解除操作部28をリフレクタ13のリフレクタ側係合部34から係止解除させることで、給電用コネクタ12がリフレクタ13から取り外される。
したがって、専用工具等を用いることなく給電用コネクタ12をリフレクタ13から簡単に取り外すことができる。
【0043】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0044】
10 車両用灯具
11 バルブ
12 給電用コネクタ
13 ランプボディ一体型リフレクタ(リフレクタ)
19 リフレクタ取付部
20 コネクタ部
24 接続部
26 コネクタ側係合部
27 係止部
28 解除操作部
30 弾性押圧部
31 コネクタ取付部
32 バルブ挿入部
34 リフレクタ側係合部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブと、
該バルブが接続される給電用コネクタと、
前記バルブを光軸方向に沿って挿入するバルブ挿入部と前記給電用コネクタを取り付ける前記バルブ挿入部の周囲に設けられるコネクタ取付部とを有するリフレクタと、を備える車両用灯具であって、
前記給電用コネクタは、前記コネクタ取付部に取り付けられるリフレクタ取付部と、前記バルブのバルブ端子部に嵌合されるコネクタ部とを備え、
前記コネクタ部は、前記リフレクタ取付部に対して、少なくとも前記光軸方向及び該光軸方向と垂直な方向の一方に変位可能に一体化されていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記コネクタ部は、可撓性を有する接続部を介して前記リフレクタ取付部と一体化されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記リフレクタ取付部は、前記リフレクタ後方側から前記光軸方向に沿って押し込むことで、前記コネクタ取付部に設けられたリフレクタ側係合部に係止されるコネクタ側係合部を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記リフレクタ取付部は、前記コネクタ取付部に対して押圧付勢する弾性押圧部を備えていることを特徴とする請求項3に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記コネクタ側係合部は、前記リフレクタ取付部の外周部に形成された可撓ランスであり、前方に係止部を有し、後方に解除操作部を有していることを特徴とする請求項3又は4に記載の車両用灯具。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−277890(P2010−277890A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130314(P2009−130314)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】