説明

車両用灯具

【課題】リフレクタの熱変形による配光性能の悪化や、リフレクタの組付け誤差に起因する配光性能の悪化を回避して、配光性能に優れた車両用灯具の提供を図る。
【解決手段】第2リフレクタ13がヒートシンク部材20と一体成形されていて、該第2リフレクタ13自体が放熱機能を備えているので、半導体型光源10の発光による輻射熱によって昇温しても、該第2リフレクタ13自体の放熱作用に加えてヒートシンク部材20の放熱作用によって効率的に放熱することができ、該第2リフレクタ13の熱変形や組付け誤差による配光性能の悪化が回避される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のヘッドランプやリヤコンビネーションランプ等に用いられる車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ヘッドランプ等の車両用灯具の光源として、発光ダイオード(LED)などの自発光半導体型光源が用いられている。
【0003】
このような半導体型光源は、その光を所定の方向に反射させるリフレクタと共に光源ユニットを構成して、ハウジングとアウターレンズとで構成する灯室内に配設される(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−207235号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両用灯具の光源に用いられる半導体型光源は照明効果を高めるために高輝度化が進められて来ており、この高輝度化に伴って発熱量も大きくなっている。この半導体型光源の温度上昇を抑える措置として、放熱性の良好な金属材料からなるヒートシンク部材を用いて、このヒートシンク部材を基台として半導体型光源とリフレクタとを集約的に配設することも行われている。
【0005】
一方、リフレクタは、複雑な曲面の反射面を形成する上から、成形性のよい適宜の合成樹脂材をもって金型成形されているのが一般的である。
【0006】
このような合成樹脂製のリフレクタを用いたものでも、半導体型光源の周囲を覆って配設されて、該半導体型光源の出射光を所定の方向に向けて反射させる第1リフレクタと、この第1リフレクタからの反射光を灯具前方に向けて反射させる第2リフレクタとを用いて、これら半導体型光源と第1リフレクタおよび第2リフレクタとで構成される光源ユニットを1つのヒートシンク部材に集約的に配設したものも提案されている。
【0007】
ところが、前記第2リフレクタは、光源ユニットの光学的設計上、半導体型光源およびその周囲を覆う第1リフレクタから離間配置され、ヒートシンク部材からも比較的に大きく張り出して配設されるため、半導体型光源および第1リフレクタ周りと第2リフレクタ周りとでは、ヒートシンク部材による放熱効果に差が生じて、即ち、温度差が生じて第2リフレクタ周りが半導体型光源および第1リフレクタ周りよりも昇温する傾向にある。
【0008】
このため、熱影響により前記第2リフレクタに微妙な反り変形や曲げ変形が生じて配光性能が低下する可能性があって、別途、変形防止手段の構成が求められる。また、このような熱影響とは別に、前記光学的設計を満足させるためには、第2リフレクタの組付精度を高くする必要があって、正確な位置決め手段の構成も求められる。
【0009】
そこで、本発明はリフレクタの熱変形による配光性能の悪化や、リフレクタの組付け誤差に起因する配光性能の悪化を誘発することがなく、配光性能に優れた車両用灯具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の車両用灯具にあっては、半導体型光源と、この半導体型光源を覆い、該半導体型光源から射出された光を所定の方向に向けて反射させる第1リフレクタと、該第1リフレクタからの反射光を灯具前方に向けて反射させる第2リフレクタと、これら半導体型光源と第1リフレクタおよび第2リフレクタが集約的に配設されたヒートシンク部材と、を備え、少くとも前記第2リフレクタが、前記ヒートシンク部材と一体成形されていることを主要な特徴としている。
【0011】
前記半導体型光源の点灯による発熱で、該半導体型光源とこれを覆う第1リフレクタ周りは昇温するが、この昇熱はヒートシンク部材に直ちに伝達されて、該ヒートシンク部材により効率的に放熱される。
【0012】
一方、第2リフレクタは前記半導体型光源の発光による輻射熱で昇温するが、該第2リフレクタ自体がヒートシンク部材と一体成形されていて放熱機能を備えているため、該第2リフレクタ周りも効率的に放熱される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、第2リフレクタがヒートシンク部材と一体成形されていて、該第2リフレクタ自体が放熱機能を備えているので、半導体型光源の発光による輻射熱によって昇温しても、該第2リフレクタ自体の放熱作用に加えてヒートシンク部材の放熱作用によって効率的に放熱される。
【0014】
この結果、第2リフレクタ自体の本質的な剛性材質による保形性とは別に、半導体型光源および第1リフレクタ周りとの温度差による熱影響で、該第2リフレクタが微妙に反り変形や曲げ変形することがなく、配光性能を向上することができる。
【0015】
また、前述のように第2リフレクタがヒートシンク部材と一体成形されているため、該第2リフレクタの組付け誤差が生じる要因は全くなく、半導体型光源および第1リフレクタに対する第2リフレクタの位置精度を高くすることができて、この点からも配光性能を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】

以下、本発明の一実施形態を自動車のヘッドランプを例に採って図面と共に詳述する。
【0017】
図1は本発明に係るヘッドランプにおける灯具ユニットを分解して示す斜視図、図2は図1に示した灯具ユニットの平面図、図3は図1に示した灯具ユニットの正面図、図4は図1に示した灯具ユニットの側面図、図5は図3のA−A線を沿う断面図である。
【0018】
図1〜図5に示す本実施形態のヘッドランプは、半導体型光源10と、該半導体型光源10の灯具前方側を覆って、該半導体型光源10から射出された光を後ろ斜め上方に向けて反射させる凹型の反射面12を有する第1リフレクタ11と、該第1リフレクタ11により反射された光を灯具前方に向けて反射させる凹型の反射面14を有する第2リフレクタ13と、半導体型光源10で発生した熱を拡散するヒートシンク部材20と、を備えている。
【0019】
前記半導体型光源10と第1リフレクタ11および第2リフレクタ13により光源ユニット1を構成し、これら半導体型光源10,第1リフレクタ11,第2リフレクタ13が所定の光学的設計に基づいてヒートシンク部材20に集約的に配設されて、該光源ユニット1とヒートシンク部材20との組合せで灯具ユニット2が構成される。
【0020】
そして、この灯具ユニット2が図外のランプハウジングとアウターレンズ(投影レンズ)とで形成される灯室内に配設されて、ヘッドランプが構成される。
【0021】
前記半導体型光源10は、例えば、発光ダイオード(LED)や有機ELおよび無機ELを含むエレクトロルミネッセンス(EL)など、半導体に電圧を印加することによって得られるルミネッセンス(発光現像)を利用した光源である。
【0022】
前記第1リフレクタ11は、例えば光不透過性の合成樹脂材で形成され、該第1リフレクタ11の内面にアルミ蒸着や銀塗装を施して前記反射面12が形成される。
【0023】
第1リフレクタ11の反射面12は、楕円または楕円を基本とする反射面、例えば、回転楕円面または楕円を基本とした自由曲面からなる。
【0024】
この第1リフレクタ11は図5に示すように、第1焦点F1と第2焦点F2とを備え、第1焦点F1から射出された光は該第1リフレクタ11の反射面12で反射されて第2焦点F2に集束する。
【0025】
前記第1リフレクタ11の第1焦点F1の位置またはその近傍位置に前記半導体型光源10の発光部10aが配置される。これにより、半導体型光源10から射出される光のうち、第1リフレクタ11の反射面12により反射された光は、該第1リフレクタ11の第2焦点F2またはその近傍に集光される。
【0026】
前記第2リフレクタ13は、前記ヒートシンク部材20の上端に前方斜め上方に向けて張り出して一体成形されている。
【0027】
この第2リフレクタ13は、ヒートシンク部材20の略水平な平坦に形成された上端面20aの後縁から凹型に立設され、その内面に前記反射面14が形成される。
【0028】
第2リフレクタ13の反射面14は、該第2リフレクタ13の内面にアルミ蒸着や銀塗装を施して形成される他、該第2リフレクタ13の内面を研磨して鏡面に仕上げることによって反射面14を形成することができる。
【0029】
この第2リフレクタ13の反射面14は、図5に示すように放物線を基本とする自由曲面に形成され、焦点F3を有している。この焦点F3は前記第1リフレクタ11の第2焦点F2に位置しており、これにより、第1リフレクタ11の反射面12で反射されて該第2焦点F2に集光される光が、反射面14により平行光Lとして灯具前方に向けて反射される。
【0030】
ヒートシンク部材20は、熱伝導性のよい金属材料、例えばアルミダイカス製からなり、その背面には複数枚の縦形の放熱フィン21が車幅方向に適宜等間隔に列設配置されている。
【0031】
このヒートシンク部材20は、前記半導体型光源10,第1リフレクタ11および第2リフレクタ13を集約的に配置する基台を兼ねて、前記半導体型光源10で発生した熱を放熱するもので、その背面には前述のように複数枚の縦形の放熱フィン21が第2リフレクタ13の背面の途中に亘って車幅方向に列設されている一方、前面は斜め上向きに傾斜して平坦に形成されて、第1リフレクタ取付面22とされている。
【0032】
この第1リフレクタ取付面22の中央部分には、前記半導体型光源10を取付けるための光源取付面23が一段低く有段成形されている。
【0033】
この光源取付面23に前記半導体型光源10の基板10bを重合し、発光部10aを前向きにして図外のロケートピンおよびビスにより正確に位置決めして締結固定される。
【0034】
また、この光源取付面23には前記半導体型光源10をほぼ全体的に覆う透明な保護カバー10Cが、ロケートピン27により位置決めされて図外のビスにより締結固定されている(図2参照)。
【0035】
そして、この半導体型光源10の灯具前方側を覆って、前記第1リフレクタ11が第1リフレクタ取付面22にロケートピン25およびビス26により正確に位置決めして締結固定される。
【0036】
前記ヒートシンク部材20の前面上側部、具体的には第1リフレクタ11の上方部位には、半導体型光源10の出射光の一部を遮蔽して配光パターンの上縁に所定形状のカットオフラインを形成するシェード24が突出成形されている。このシェード24の上縁のシェードエッジ24a、つまり、シェード24を形成する突起部と、前記略水平の平坦な上端面20aとが連設する隅角部は、前記第1リフレクタ11の第2焦点F2、および第2リフレクタ13の第3焦点F3の位置に略一致している。
【0037】
本実施形態では、前記半導体型光源10,第1リフレクタ11,第2リフレクタ13が1組の光源ユニット1として構成され、その2組の光源ユニット1,1Aが前記1つのヒートシンク部材20を基台として左右方向に併設されている。
【0038】
即ち、一方の光源ユニット1は、前述のようにシェード24によって、配光パターンの上縁に所定形状のカットオフラインが形成されるロービーム(すれ違い用ビーム)形成用の光源ユニットであり、他方の光源ユニット1Aはシェード24が無いハイビーム(走行用ビーム)形成用の光源ユニットとして構成される。
【0039】
このハイビーム形成用の光源ユニット1Aの第2リフレクタ13Aは、前記ロービーム形成用の光源ユニット1の第2リフレクタ13よりも1回り小さい形状で、該第2リフレクタ13と連設状態にしてヒートシンク部材20と一体成形されている。
【0040】
また、ハイビーム形成用の光源ユニット1Aの半導体型光源10A,第1リフレクタ11A,第2リフレクタ13Aの反射面14Aの下縁位置は、ロービーム形成用の光源ユニット1の各対応部(10,11,14)に対して、所定の光学的設計に基づいて上方、かつ、前方にずれた配置とされて所定の拡散配光パターンが得られるようにしている。
【0041】
従って、このハイビーム形成用の光源ユニット1Aが配設される第1リフレクタ取付面22A,光源取付面23Aおよび上端面20aは、ロービーム形成用の光源ユニット1が配設される各対応する取付面22,23および上端面20aに対して、上方、かつ、前方にずれた配置とされている。
【0042】
このように、1つのヒートシンク部材20を基台として、2組の光源ユニット1,1Aを左右に併設して構成された灯具ユニット2は、該ヒートシンク部材20と図外のランプハウジングとに跨って設けられたエイミングボルトとピボットとからなるエイミング機構により、前記灯室内に光軸調整可能に組付けられる。
【0043】
以上の構成からなる本実施形態のヘッドランプにあっては、半導体型光源10,10Aの点灯による発熱で、該半導体型光源10,10Aとその灯具前方側を覆う第1リフレクタ11,11A周りは昇温するが、この昇熱はヒートシンク部材20に直ちに伝達されて、該ヒートシンク部材20により効率的に放熱される。
【0044】
一方、第2リフレクタ13(13A)は前記半導体型光源10(10A)の発光による輻射熱で昇温するが、該第2リフレクタ13(13A)自体がヒートシンク部材20と一体成形されていて放熱機能を備えているため、該第2リフレクタ13(13A)自体の放熱作用に加えてヒートシンク部材20の放熱作用によって効率的に放熱される。
【0045】
この結果、第2リフレクタ13(13A)自体の本質的な剛性材質による保形性とは別に、半導体型光源10(10A)および第1リフレクタ11(11A)周りとの温度差による熱影響で、該第2リフレクタ13(13A)が微妙に反り変形や曲げ変形することがなく、配光性能を向上することができる。
【0046】
また、前述のように第2リフレクタ13(13A)がヒートシンク部材20と一体成形されているため、該第2リフレクタ13(13A)の組付け誤差が生じる要因は全くなく、半導体型光源10(10A)および第1リフレクタ11(11A)に対する第2リフレクタ13(13A)の位置精度を高くすることができて、この点からも配光性能を高めることができる。
【0047】
また、本実施形態では前記ヒートシンク部材20と第2リフレクタ13との連設部分にシェード24が形成されていて、該ヒートシンク部材20に直付けされた半導体型光源10と、該シェード24、および第2リフレクタ13との位置精度が高められるため、配光パターンのカットオフラインのずれを回避することができる。
【0048】
更に、本実施形態では、1つのヒートシンク部材20を基台として併設された左右一対のロービーム形成用の光源ユニット1と、ハイビーム形成用の光源ユニット1Aとにおける第2リフレクタ13,13Aが、連設状態でヒートシンク部材20に一体成形されていて、各光源ユニット1,1Aにおける半導体型光源10,10Aと、第1リフレクタ11,11Aと、第2リフレクタ13,13Aとの位置関係を一定に保って、かつ、光源ユニット1,1A間の位置ずれを生起することなく両ユニットの組付け精度を高めることができるので、左右光源ユニット1,1Aの配光パターンの位置ずれを防止して、両者の合成配光パターンの配光性能を高めることができる。
【0049】
なお、前記実施形態では、第1リフレクタ11,11Aを別体の合成樹脂製としているが、場合によって該第1リフレクタ11,11Aもヒートシンク部材20と一体成形することも可能である。
【0050】
また、前記実施形態では、車両用ヘッドランプを例に採って説明したが、リヤコンビネーションランプに適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施形態に係るヘッドランプの灯具ユニットを分解して示す斜視図。
【図2】図1に示した灯具ユニットの平面図。
【図3】図1に示した灯具ユニットの正面図。
【図4】図1に示した灯具ユニットの側面図。
【図5】図3のA−A線に沿う断面図。
【符号の説明】
【0052】
1,1A 光源ユニット
2 灯具ユニット
10,10A 半導体型光源
11,11A 第1リフレクタ
12,12A 第1リフレクタの反射面
13,13A 第2リフレクタ
14,14A 第2リフレクタの反射面
20 ヒートシンク部材
24 シェード


【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体型光源と、
この半導体型光源を覆い、該半導体型光源から射出された光を所定の方向に向けて反射させる第1リフレクタと、
該第1リフレクタからの反射光を灯具前方に向けて反射させる第2リフレクタと、
これら半導体型光源と第1リフレクタおよび第2リフレクタが集約的に配設されたヒートシンク部材と、を備え、
少くとも前記第2リフレクタが、前記ヒートシンク部材と一体成形されていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記ヒートシンク部材の第2リフレクタとの連設部分には、配光パターンの上縁に所定形状のカットオフラインを形成するシェードが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記半導体型光源と第1リフレクタと第2リフレクタとで1組の光源ユニットが構成され、この光源ユニットの複数組が前記1つのヒートシンク部材に併設されていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−80082(P2010−80082A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−243811(P2008−243811)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】