説明

車両用灯具

【課題】部品点数や組立工数の増加を招くことなく、電源自体の熱を利用して防曇対策を施すことができる車両用灯具を提供すること。
【解決手段】ハウジング2の開口部をアウタレンズ3で密閉して画成される灯室4内にバルブ(光源)5を収容して構成される車両用灯具1において、前記ハウジング2内に熱伝導板6を埋設し、該熱伝導板6の前記バルブ5に対向する部分を灯室4内の高温部(A部分)に露出させ、他の埋設部分6bを灯室4内の低温部(B部分)まで延ばす。又、前記熱伝導板6を前記ハウジング2とのインサート成形によってハウジング2と一体化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、灯室内の温度差によるアウタレンズ内面の曇りを防ぐようにした車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
テールランプ、ストップランプ等の車両用灯具要部の平断面を図2に示すが、図示の車両用灯具101は、ハウジング102の前面開口部をアウタレンズ103で覆うことによって画成される灯室104内に光源であるバルブ105を収容して構成されており、ハウジング102の内面はアルミ蒸着等の反射処理がなされて反射面102aを構成している。
【0003】
斯かる車両用灯具101においては、バルブ105の点灯時には灯室104内のバルブ105近傍の図示A部分は高温となり、そこから離れた図示B部分は低温となるため、A部分(高温部分)とB部分(低温部分)との温度差によってアウタレンズ103の内面に曇りが発生して商品性が損なわれるという問題がある。
【0004】
そこで、従来はハウジング102の裏面のボス102bを一体に形成し、このボス102bに呼吸孔107を貫設して灯室104と外部とを連通させるとともに、灯室104内への水等の侵入を防ぐために呼吸孔107の開口部をキャップ108によって塞ぐ構成が採用されていた。
【0005】
ところで、アウタレンズに対する防曇対策として、例えば特許文献1には、灯室内を仕切壁によって高温部である発光部と非発光部である低温室とに区画するとともに、両者を連通させ、低温室をハウジングに形成された連通孔(呼吸孔)によって外気と連通させて発光部と低温室間の空気の対流を促進させるようにした構成が提案されている。
【0006】
又、特許文献2には、バルブからの出射光束を反射する有効反射面と反射しないダーク部とから成る反射手段を備えた車両前照灯において、前記反射手段のダーク部に対向するレンズの内壁面を通電発熱体(熱促進手段)によって加熱することによってレンズ内面の曇りを防ぐようにした構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−022708号公報
【特許文献2】実開平6−079006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、図2に示した従来の車両用灯具101や特許文献1において提案された構成では、ハウジング102に形成された呼吸孔107が正面から見えるため、車両用灯具101の見栄えが低下するという問題がある。又、呼吸孔107から灯室104内への水等の侵入を防ぐために呼吸孔107をキャップ108等によって塞ぐ必要があるため、部品点数が増えるとともに、キャップ108等の取り付けに要する工数が増えてコストアップを招くという問題もある。
【0009】
これに対して、特許文献2において提案された構成では上記問題は発生しないが、バルブに供給する電力の他に通電発熱体にバッテリから別途電力を供給する必要がある他、バッテリと通電発熱体とを接続する配線が必要となり、その配索も容易ではないという問題がある。
【0010】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、部品点数や組立工数の増加を招くことなく、光源自体の発熱を利用して防曇対策を施すことができる車両用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、ハウジングの開口部をアウタレンズで密閉して画成される灯室内に光源を収容して構成される車両用灯具において、前記ハウジング内に熱伝導板を埋設し、該熱伝導板の前記光源に対向する部分を灯室内の高温部に露出させ、他の埋設部分を灯室内の低温部まで延ばしたことを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記熱伝導板を前記ハウジングとのインサート成形によってハウジングと一体化したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によれば、点灯によって発熱する光源の熱は該光源周りの高温部に露出する熱伝導板によって受けられ、この熱伝導板によって受けられた熱は該熱伝導板を経て低温部へと伝導して該低温部を加熱するため、該低温部の温度が高温部の温度に近づいて両者の温度差が小さくなり、灯室内の温度差によるアウタレンズ内面の曇りが防がれる。そして、この場合、従来ハウジングに形成されていた呼吸孔やこれを塞ぐキャップ等が不要となるため、部品点数や組立工数の増加を招くがなく、当該車両用灯具の見栄えの向上とコストダウンを図ることができる。又、光源自体の発熱を利用して防曇対策を施すことができるため、防曇のための電力消費や配線等が不要となり、構造の単純化を図ることができる。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、ハウジングを例えば樹脂によって射出成形する際に熱伝導板を成形機にセットし、両者をインサート成形することによって熱伝導板とハウジングとを容易に一体化することができるため、高い生産性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る車両用灯具要部の平断面図である。
【図2】従来の車両用灯具要部の平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は本発明に係る車両用灯具要部の平断面図であり、図示の車両用灯具1はストップランプ等の信号灯であって、これは樹脂によって一体成形されたハウジング2の前面開口部を光透過性の透明なアウタレンズ3で覆うことによって画成される灯室4内に光源であるバルブ5を収容して構成されており、ハウジング2の内面はアルミ蒸着等の反射処理がなされて反射面2aを構成している。尚、ヘッドランプとしての車両用灯具1は車両前部の左右に設けられるが、これらの基本構成は左右で同じであるため、図1には一方の車両用灯具1のみ図示しており、他方については図示及び説明を省略する。
【0018】
而して、斯かる車両用灯具1においてバルブ5に給電されて該バルブ5が点灯すると、バルブ5から出射される光の一部は直射光としてそのままアウタレンズ3を透過して車両前方(図1の上方)へと照射され、他の光はハウジング2の内面の反射面2aで反射し、反射光としてアウタレンズ3を透過して車両前方へと照射されるため、夜間走行中の車両の前方が照明される。
【0019】
ところで、バルブ5が点灯している間は該バルブ5の発熱によって灯室4内のバルブ5の周囲(図示のA部分)は高温となり、そこから離れたB部分は低温となる。このようにバルブ5が点灯しているときには、灯室4内に高温のA部分と低温のB部分が存在するため、これらのA部分(高温部分)とB部分(低温部分)との温度差によってアウタレンズ3の内面に曇りが発生して商品性画損なわれるという問題があることは前述の通りである。
【0020】
そこで、本実施の形態では、アウタレンズ3の防曇対策として、ハウジング2内に熱伝導板6をA部分とB部分に亘って埋設し、該熱伝導板6のバルブ5に対向する部分6aを灯室4内の高温のA部分に露出させ、他の埋設部分6bを灯室4内の低温のB部分まで延ばす構成を採用している。ここで、熱伝導板6の材質には熱伝導率の高い鉄や銅、アルミニウム等の金属が選定され、該熱伝導板6はハウジング2とのインサート成形によってハウジング2と一体化される。具体的には、ハウジング2を例えば樹脂によって射出成形する際に熱伝導板6を不図示の成形機にセットし、両者をインサート成形することによって熱伝導板6とハウジング2とを一体化させる。
【0021】
従って、本実施の形態に係る車両用灯具1によれば、点灯によって発熱するバルブ5の熱は熱伝導板6のバルブ5の周りのA部分(高温部)に露出する部分(露出部)6aによって受けられ、この露出部6aによって受けられた熱は熱伝導板6のハウジング2に埋設された埋設部6bを経てB部分(低温部)へと伝導して該B部分を加熱するため、該B部分(低温部)の温度がA部分(高温部)の温度に近づいて両者の温度差が小さくなり、灯室4内の温度差によるアウタレンズ3の内面の曇りが防がれる。そして、この場合、従来ハウジング2に形成されていた呼吸孔やこれを塞ぐキャップ等が不要となるため、部品点数や組立工数の増加を招くことがなく、当該車両用灯具1の見栄えの向上とコストダウンが図られる。
【0022】
又、本実施の形態に係る車両用灯具1によれば、バルブ5自体の発熱を利用してアウタレンズ3の防曇対策を施すことができるため、防曇のための電力消費や配線等が不要となり、構造の単純化を図ることができる。
【0023】
更に、本実施の形態では、熱伝導板6をハウジング2とのインサート成形によってハウジング2と一体化するようにしたため、該熱伝導板6のハウジング2への埋設が容易化して高い生産性が得られる。
【0024】
尚、以上は本発明をストップランプ等の信号灯に適用した形態について説明したが、本発明は、ストップランプ等の信号灯以外の他の任意の車両用灯具に対しても同様に適用可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0025】
1 車両用灯具
2 ハウジング
2a ハウジングの反射面
3 アウタレンズ
4 灯室
5 バルブ(光源)
6 熱伝導板
6a 熱伝導板の露出部
6b 熱伝導板の埋設部
A 灯室内の高温部
B 灯室内の低温部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングの開口部をアウタレンズで密閉して画成される灯室内に光源を収容して構成される車両用灯具において、
前記ハウジング内に熱伝導板を埋設し、該熱伝導板の前記光源に対向する部分を灯室内の高温部に露出させ、他の埋設部分を灯室内の低温部まで延ばしたことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記熱伝導板を前記ハウジングとのインサート成形によってハウジングと一体化したことを特徴とする請求項1記載の車両用灯具。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−165488(P2011−165488A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27279(P2010−27279)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】