説明

車両用灯具

【課題】光学部品と保持部品との係合部での脱落を防止する。
【解決手段】車両用灯具1では、光源からの光を前方へ反射させるリフレクタ2と、当該リフレクタ2を保持するヒートシンク3とが、前後方向に沿って組み合わされることによって係合部Pで互いに係合されている。係合部Pでは、灯具内側へ突出するようにヒートシンク3に設けられた係止突起31が、リフレクタ2に設けられた前側の係止面23bに灯具外側から係止されている。係止面23bは、灯具外側に向かうに連れて前側に位置するように傾斜している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用ヘッドランプなどの車両用灯具として、リフレクタ等の光学部品と、これを保持する保持部品とを、複数の係合部によって係合させたものが知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
このような係合部は、一般に車両用灯具の周縁に設けられており、図6に示すように、光学部品50を係合方向の一方側(図の下側)から当該係合方向に沿って保持部品60に組み合わせることにより、例えば保持部品60に設けられた係止突起61が、光学部品50に設けられた係止孔51の係止面51aに係止される構造となっている。
【0004】
ここで、光学部品50は、図7(a),(b)に示すように、当該光学部品50の前面及び後面を形成する第一成形型M70及び第二成形型M80と、係止孔51を形成するスライド型M90とを用いて成形される。具体的には、第一成形型M70と第二成形型M80とが係合方向に嵌合されるとともに、係合方向と略直交する方向へスライド可能なようにスライド型M90が第一成形型M70及び第二成形型M80と嵌合され、これらの型の間に構成されるキャンバーに樹脂が充填されることによって光学部品50が成形される。
【0005】
そのため、係止孔51は、スライド型M90のスライド方向に対して抜き勾配を設けた各面で構成される結果、係止突起61を挿入させる挿入側(図の右側)に向かって広がる形状に形成される。したがって、係止突起61が係止される係止面51aは、係止突起61を挿入させる挿入側(図の右側)に向かって、係合方向の他方側(図の上側)に傾斜した面となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平6−57514号公報
【特許文献2】実用新案登録第2575239号公報
【特許文献3】特許第3048195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、係止面51aが上述のように傾斜していると、係止突起61と係止面51aとを互いに引き抜こうとする方向の荷重が係合部に作用したときに、係止突起61と係止面51aとが互いの係止を解除する方向に移動しやすくなってしまう。
【0008】
具体的には、例えば、図8に示すように、振動等に起因する係合方向の他方側(図の上側)への荷重が保持部品60に作用した場合、係止突起61は、係止面51aに倣うようにして、当該係止面51aから脱落する方向へ移動してしまう。加えて、係止突起61を介して光学部品50に作用する荷重によって、光学部品50のうち係止面51aを含む部分が係止突起61とは反対側へ捻れるため、更に係止突起61が係止面51aから脱落しやすくなってしまう。
【0009】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、光学部品と保持部品との係合部での脱落を防止することができる車両用灯具の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、
光源からの光に光学的作用を及ぼす光学部品と、当該光学部品を保持する保持部品とが、所定の係合方向に沿って組み合わされることによって係合部で互いに係合された車両用灯具において、
前記係合部では、前記光学部品及び前記保持部品のうちの一方の部品が前記係合方向の一方側から他方の部品に組み合わされることにより、前記係合方向と交差する交差方向の一方側へ突出するように前記一方の部品に設けられた係止突起が、前記他方の部品に設けられた前記係合方向の他方側の係止面に、前記交差方向の他方側から係止されており、
前記係止面が、前記交差方向の他方側に向かうに連れて前記係合方向の他方側に位置するように傾斜していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、係合方向と交差する交差方向の一方側へ突出するように一方の部品に設けられた係止突起が、他方の部品に設けられた係合方向の他方側の係止面に交差方向の他方側から係止されており、この係止面が、交差方向の他方側に向かうに連れて係合方向の他方側に位置するように傾斜しているので、係止突起と係止面とを互いに引き抜こうとする方向の荷重が作用したときであっても、これら係止突起と係止面とが互いに脱落する方向へ移動することを防止でき、ひいては係合部での脱落を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態における車両用灯具の要部の分解斜視図である。
【図2】実施形態における車両用灯具の係合部の斜視図である。
【図3】図2のII−II線での断面図である。
【図4】実施形態における車両用灯具の係合部に荷重が作用したときの動きを説明するための図である。
【図5】実施形態におけるリフレクタの成形方法を説明するための図である。
【図6】従来の車両用灯具の係合部の断面図である。
【図7】従来の車両用灯具の係止面の成形方法を説明するための図である。
【図8】従来の車両用灯具の係合部に荷重が作用したときの動きを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態における車両用灯具1の要部の分解斜視図である。
なお、以下の説明では、「前」「後」「左」「右」「上」「下」との記載は、車両用灯具1から見た方向を意味するものとする。
【0014】
図1に示すように、車両用灯具1は、図示しない光源からの光を前方へ反射させるリフレクタ2と、当該リフレクタ2及び光源を後側から保持しつつ光源からの発熱を放散させるヒートシンク3とを備えている。これらリフレクタ2及びヒートシンク3は、前後方向に沿って組み合わされることにより、左右方向両端部の係合部Pで互いに係合するように構成されている。
【0015】
図2は、係合部Pの斜視図であり、図3は、図2のII−II線での断面図である。
これらの図に示すように、係合部Pでは、リフレクタ2に設けられた第一係合部20と、ヒートシンク3に設けられた第二係合部30とが互いに係合している。
【0016】
このうち、リフレクタ2に設けられた第一係合部20は、上下方向に長尺な基端部21と、基端部21の上下方向両端部から後方へ立設された2つの柱状部22,22とを有しており、この柱状部22,22の先端部(後端部)には、後述する第二係合部30の係止突起31と係止されるフック部23が一体的に連結されている。
【0017】
このフック部23は、基端部21及び柱状部22,22との間に側面視コ字状の間隙孔23aが形成されるように柱状部22,22の間に配設され、後端部が柱状部22,22の先端部(後端部)と連結されて支持されている。当該フック部23は、前方に向かって広がるように略三角柱状に形成されており、その前端面が、後述する第二係合部30の係止突起31と係止される係止面23bとなっている。係止面23bは、灯具外側の略半部が基端部21及び柱状部22,22よりも灯具外側へ突出しているとともに、灯具外側に向かうに連れて前側に位置するように傾斜している。
【0018】
一方、ヒートシンク3に設けられた第二係合部30は、前後方向に直交する略平板状に形成されており、その中央には、第一係合部20を挿入させる上下方向に長尺な挿入孔30aが形成されている。第二係合部30の後面のうち、挿入孔30aよりも灯具外側の部分には、第一係合部20の係止面23bに係止される係止突起31が形成されている。
【0019】
この係止突起31は、上下方向と直交する断面において、前後方向と交差する左右方向のうち灯具内側へ突出するように設けられている。また、係止突起31のうち、第一係合部20の係止面23bと対向する後面31aは、係止面23bと同様に、灯具外側に向かうに連れて前側に位置するように傾斜しており、本実施形態においては、係止面23bよりもやや大きな角度で傾斜している。そのため、係止突起31の後面31aのうち、最も灯具内側のエッジ部が係止面23bと点接触した状態で、当該係止突起31が係止面23bに係止されるようになっている。但し、この係止突起31の後面31aを係止面23bと平行に形成し、これら係止突起31の後面31aと係止面23bとを面接触させてもよい。
【0020】
以上の構成を具備する係合部Pでは、リフレクタ2の第一係合部20をヒートシンク3の第二係合部30に前側から組み合わせるか、或いは、ヒートシンク3の第二係合部30をリフレクタ2の第一係合部20に後側から組み合わせることにより、これら第一係合部20と第二係合部30とが係合される。より詳しくは、第一係合部20のフック部23の外側面が挿入孔30aの灯具外側の内側面と当接して当該フック部23が灯具内側に撓みつつ、第一係合部20が第二係合部30の挿入孔30aに前方から挿入されて、第二係合部30の係止突起31がフック部23の係止面23bに灯具外側から係止される。
【0021】
このような係合部Pでは、図4に示すように、係止突起31と係止面23bとを互いに引き抜こうとする方向の荷重として、例えばヒートシンク3の第二係合部30に後方への荷重が作用した場合、フック部23は、係止突起31を介して当該フック部23に作用する荷重によって、柱状部22,22に支持された支点を中心に、係止突起31から脱落する方向(灯具内側)へ移動(回転)しようとする。しかしながら、フック部23の係止面23bが灯具外側に向かうに連れて前側に位置するように傾斜している、すなわち、係止突起31が当該係止面23bから脱落しにくくなる方向に傾斜しているため、係止突起31が係止面23bから脱落することを好適に防止することができる。
【0022】
続いて、リフレクタ2の成形方法について説明する。
図5(a),(b)は、リフレクタ2の成形方法を説明するための図である。
【0023】
この図に示すように、リフレクタ2は、前面を形成する第一成形型M10と、後面を形成する第二成形型M20と、係止面23bを含む間隙孔23aを形成するスライド型M30とを用いて成形される射出成形品であり、これらの型を嵌合させて構成されるキャンバーC内に樹脂を充填して成形される。
【0024】
具体的には、第一成形型M10と第二成形型M20とが前後方向に嵌合されるとともに、スライド型M30が、第一成形型M10と第二成形型M20との間の灯具外側に嵌合されている。また、スライド型M30は、灯具外側に向かって前方に傾斜したスライド方向へスライド可能なように構成されている。このようなスライド型M30を用いれば、スライド方向に対して抜き勾配を設けた面によって係止面23bが成形される場合でも、当該係止面23bを、灯具外側に向かうに連れて前側に位置するように傾斜させた傾斜面とすることができる。
【0025】
以上のように、車両用灯具1によれば、灯具内側へ突出するようにヒートシンク3に設けられた係止突起31が、リフレクタ2に設けられた前側の係止面23bに灯具外側から係止されており、この係止面23bが、灯具外側に向かうに連れて前側に位置するように傾斜しているので、係止突起31と係止面23bとを互いに引き抜こうとする方向の荷重が作用したときであっても、これら係止突起31と係止面23bとが互いに脱落する方向へ移動することを防止でき、ひいては係合部Pでの脱落を防止することができる。
【0026】
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0027】
例えば、上記実施形態では、係止面23bを有する第一係合部20をリフレクタ2に設け、係止突起31を有する第二係合部30をヒートシンク3に設けることとしたが、第二係合部30をリフレクタ2に設け、第一係合部20をヒートシンク3に設けることとしてもよい。
【0028】
また、係合部Pで係合される2つの部品は、光源からの光に光学的作用を及ぼす光学部品と、当該光学部品を保持する保持部品であれば、リフレクタ2とヒートシンク3でなくともよい。例えば、リフレクタ2に代えてインナーレンズなどを用いてもよいし、ヒートシンク3に代えてブラケットやハウジングなどを用いてもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 車両用灯具
2 リフレクタ
20 第一係合部
21 基端部
22 柱状部
23 フック部
23a 間隙孔
23b 係止面
3 ヒートシンク
30 第二係合部
30a 挿入孔
31 係止突起
31a 後面
P 係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光に光学的作用を及ぼす光学部品と、当該光学部品を保持する保持部品とが、所定の係合方向に沿って組み合わされることによって係合部で互いに係合された車両用灯具において、
前記係合部では、前記光学部品及び前記保持部品のうちの一方の部品が前記係合方向の一方側から他方の部品に組み合わされることにより、前記係合方向と交差する交差方向の一方側へ突出するように前記一方の部品に設けられた係止突起が、前記他方の部品に設けられた前記係合方向の他方側の係止面に、前記交差方向の他方側から係止されており、
前記係止面が、前記交差方向の他方側に向かうに連れて前記係合方向の他方側に位置するように傾斜していることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記係止突起のうち、前記係止面と対向する面が、前記係止面よりも大きな角度で、前記交差方向の他方側に向かうに連れて前記係合方向の他方側に位置するように傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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