説明

車両用照明灯具

【課題】プロジェクタ型の車両用照明灯具において、リフレクタの反射面の一部に不具合が生じた場合であっても、これに起因する視認性の低下を効果的に抑制する。
【解決手段】リフレクタの反射面における一部反射領域を除く他の一般反射領域からの反射光により、灯具配光パターンPL、PHと略同様の基本的な配光パターンPL0、PH0を形成する構成とする。その上で、上記一部反射領域を、光源からの光を拡散反射光として投影レンズに入射させる構成とし、その反射光によりある程度の拡がりを持った付加的な配光パターンPLA、PHAを形成するようにする。これにより、一般反射領域の一部に不具合が生じて、基本的な配光パターンPL0、PH0の一部に暗部DZが形成されるようなことがあっても、この暗部DZを付加的な配光パターンPLA、PHAで覆うことによって、灯具配光パターンPL、PHの一部が極端に暗くなってしまうのを未然に防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、いわゆるプロジェクタ型の車両用照明灯具に関するものであり、特に、その配光性能を安定させるための構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、プロジェクタ型の車両用照明灯具は、投影レンズの後側焦点よりも後方側に配置された光源からの光をリフレクタにより投影レンズへ向けて反射させるように構成されている。
【0003】
「特許文献1」には、このようなプロジェクタ型の車両用照明灯具において、そのリフレクタの反射面における一部の反射領域を、他の反射領域とは異なる形状で形成することにより、配光性能を向上させるようにした構成が記載されている。
【0004】
すなわち、この「特許文献1」に記載された車両用照明灯具においては、ロービーム用配光パターンにおける対向車線側の水平カットオフラインの形成に寄与する反射領域の一部を、光源からの光を投影レンズの後側焦点近傍へ向けて反射させる構成とすることにより、車両がロービームでの走行中にピッチングしたようなときでも対向車ドライバに大きなグレアを与えてしまわないようにする一方、ハイビーム用配光パターンの中心光度を高めるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−79984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
プロジェクタ型の車両用照明灯具においては、リフレクタからの反射光により投影レンズの後側焦点面上に形成される光源像が、投影レンズにより反転投影される構成となっている。このため、リフレクタの反射面の一部に不具合(例えば異物の付着や反射蒸着膜の欠損等)が生じて、この部分からの反射光が得られなくなると、投影レンズの後側焦点面上の光源像に暗部が形成されてしまい、この暗部が投影レンズにより反転投影されて灯具配光パターンの一部に暗部が形成されてしまうこととなる。そして、このような暗部が発生すると、車両前方路面や路側帯のフェンス等の視認性が低下してしまうこととなる。
【0007】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、プロジェクタ型の車両用照明灯具において、リフレクタの反射面の一部に不具合が生じた場合であっても、これに起因する視認性の低下を効果的に抑制することができる車両用照明灯具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、リフレクタの反射面の構成に工夫を施すことにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0009】
すなわち、本願発明に係る車両用照明灯具は、
投影レンズと、この投影レンズの後側焦点よりも後方側に配置された光源と、この光源からの光を上記投影レンズへ向けて反射させるリフレクタと、を備えてなる車両用照明灯具において、
この車両用照明灯具からの照射光により形成されるべき灯具配光パターンを、上記リフレクタの反射面における一部反射領域を除く他の一般反射領域からの反射光により形成するように構成されており、
上記一部反射領域が、上記光源からの光を拡散反射光として上記投影レンズに入射させるように構成されている、ことを特徴とするものである。
【0010】
上記「光源」の種類は特に限定されるものではなく、例えば、放電バルブの発光部やハロゲンバルブのフィラメント等が採用可能である。
【0011】
上記「灯具配光パターン」は、車両用照明灯具からの照射光により形成される配光パターンであれば、その種類は特に限定されるものではなく、例えば、ヘッドランプのロービーム用配光パターンやハイビーム用配光パターン、あるいはフォグランプの配光パターン等が採用可能である。
【0012】
上記「一部反射領域」は、光源からの光を拡散反射光として投影レンズに入射させるように構成されていれば、その具体的な反射面形状やリフレクタの反射面における具体的な形成位置等は特に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0013】
上記構成に示すように、本願発明に係る車両用照明灯具は、プロジェクタ型の車両用照明灯具として構成されているが、その照射光により形成されるべき灯具配光パターンを、リフレクタの反射面における一部反射領域を除く他の一般反射領域からの反射光により形成するように構成されており、一方、その一部反射領域は光源からの光を拡散反射光として投影レンズに入射させるように構成されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0014】
すなわち、本願発明に係る車両用照明灯具においては、一般反射領域からの反射光によって、灯具配光パターンとしての基本的な配光パターンが形成され、その上で、一部反射領域からの反射光によって、ある程度の拡がりを持った付加的な配光パターンが形成されることとなる。
【0015】
このため、一般反射領域の一部に不具合が生じて、基本的な配光パターンの一部に暗部が形成されるようなことがあっても、この暗部を付加的な配光パターンで覆うことによって、灯具配光パターンの一部が極端に暗くなってしまうのを未然に防止することができる。そしてこれにより、車両前方路面や路側帯のフェンス等の視認性が低下してしまうのを未然に防止することができる。
【0016】
このように本願発明によれば、プロジェクタ型の車両用照明灯具において、リフレクタの反射面の一部に不具合が生じた場合であっても、これに起因する視認性の低下を効果的に抑制することができる。また、これによりリフレクタの製造工程における品質管理を厳密に行う必要性をなくすことができるので、その分だけ灯具製造コストを低減させることができる。
【0017】
上記構成において、一部反射領域が反射面における投影レンズの光軸の近傍位置に配置された構成とすれば、この一部反射領域からの拡散反射光の最大拡散角度を比較的大きい値に設定した場合においても、その拡散反射光を投影レンズに入射させることができ、これにより付加的な配光パターンを基本的な配光パターンに近い大きさで形成することができる。このため、一般反射領域での不具合の発生箇所が大きくばらついたような場合においても、基本的な配光パターンに形成される暗部を付加的な配光パターンで覆うようにすることができる。
【0018】
上記構成において、灯具配光パターンとして上端縁にカットオフラインを有するロービーム用配光パターンを形成するようになっている場合には、リフレクタからの反射光の一部を遮蔽するシェードが配置された灯具構成となるが、このような場合には、一部反射領域が投影レンズの光軸に対して自車線側に配置された構成とすれば、ロービームでの走行中に車両がピッチングしたようなときでも対向車ドライバに大きなグレアを与えてしまわないようにした上で、上記作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本願発明の一実施形態に係る車両用照明灯具を、その可動シェードが遮光位置にある状態で示す平断面図
【図2】図1のII−II線矢視図
【図3】上記車両用照明灯具から前方へ照射される光により灯具前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンを透視的に示す図
【図4】上記実施形態の変形例の要部を示す、図2と同様の図
【図5】上記変形例の作用を示す、図3と同様の図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0021】
図1は、本願発明の一実施形態に係る車両用照明灯具10を、その可動シェード20が遮光位置にある状態で示す平断面図であり、図2は、そのII−II線矢視図である。
【0022】
これらの図に示すように、本実施形態に係る車両用照明灯具10は、プロジェクタ型の灯具ユニットとして構成されており、図示しないランプボディ等に組み込まれた状態で用いられるようになっている。
【0023】
この車両用照明灯具10は、光源バルブ12と、リフレクタ14と、ホルダ16と、投影レンズ18と、可動シェード20と、アクチュエータ22とを備えてなり、車両前後方向に延びる光軸Axを有している。ただし、この車両用照明灯具10は、エイミング調整が完了した段階では、その光軸Axが車両前後方向に対して0.5〜0.6°程度下向きの方向に延びた状態で配置されるようになっている。
【0024】
投影レンズ18は、前方側表面が凸面で後方側表面が平面の平凸非球面レンズからなり、光軸Ax上に配置されている。そして、この投影レンズ18は、その後側焦点面(すなわち投影レンズ18の後側焦点Fを含む焦点面)上に形成される光源像を、灯具前方に配置された仮想鉛直スクリーン上に反転像として投影するようになっている。
【0025】
光源バルブ12は、放電発光部を光源12aとするメタルハライドバルブ等の放電バルブであって、リフレクタ14の後頂部に形成された開口部14bに後方側から挿入固定されている。この光源バルブ12の光源12aは、光軸Axと略同軸で延びる線分光源として構成されており、投影レンズ18の後側焦点Fよりも後方側に配置されている。
【0026】
リフレクタ14は、光源12aからの光を投影レンズ18へ向けて反射させる反射面14aを有している。
【0027】
この反射面14aにおいて、一部反射領域14aA(これについては後述する)を除く他の一般反射領域14a0は、光源12aからの光を前方へ向けて光軸Ax寄りに反射させるように形成されている。
【0028】
すなわち、この一般反射領域14a0の光軸Axを含む平面に沿った断面形状は略楕円形に設定されており、その離心率は鉛直断面から水平断面へ向けて徐々に大きくなるように設定されている。そしてこれにより、この一般反射領域14a0で反射した光源12aからの光を、鉛直断面内においては後側焦点F近傍に略収束させるとともに、水平断面内においてはその収束位置を後側焦点Fの前方側へ変位させるようになっている。
【0029】
一方、一部反射領域14aAは、図2において破線領域で示すように、反射面14aの内周縁部において、開口部14bを環状に囲むように配置されている。
【0030】
この一部反射領域14aAは、光源12aからの光を拡散反射光として投影レンズ18に入射させるように構成されている。その際、この一部反射領域14aAは、光源12aからの光を、水平方向に関しては比較的大きい拡散角度で左右均等に拡散反射させるとともに上下方向に関しては比較的小さい拡散角度でやや下向きに拡散反射させるするように形成されている。
【0031】
ホルダ16は、リフレクタ14の前端開口部から前方へ向けて略筒状に延びるように形成されており、その後端部においてリフレクタ14を固定支持するとともに、その前端部において投影レンズ18を固定支持している。このホルダ16は、その下部領域が切り欠かれている。
【0032】
可動シェード20は、ホルダ16の内部空間における略下半部に位置するように設けられており、その下端部において左右方向に延びる回動ピン24を介してホルダ16に回動可能に支持されている。そして、この可動シェード20は、遮光位置(すなわち図1において実線で示すとともに図2において2点鎖線で示す位置)と、この遮光位置から後方側へ所定角度回動した遮光解除位置(すなわち図1において2点鎖線で示す位置)とを採り得るようになっている。
【0033】
この可動シェード20の上端縁20a1、20a2は、左右段違いで形成されており、可動シェード20が遮光位置にあるとき、投影レンズ18の後側焦点面に沿って水平方向に略円弧状に延びるように配置され、これによりリフレクタ14からの反射光の一部を遮蔽するようになっている。一方、可動シェード20が遮光解除位置にあるときには、リフレクタ14からの反射光の遮蔽を解除するようになっている。
【0034】
アクチュエータ22は、前後方向に延びるプランジャを有するソレノイドで構成されており、リフレクタ14の下端部に固定されている。このアクチュエータ22は、図示しないビーム切換えスイッチの操作が行われたときに駆動して、そのプランジャの前後方向の移動により可動シェード20を遮光位置および遮光解除位置間において移動させるようになっている。
【0035】
図3は、車両用照明灯具10から前方へ照射される光により灯具前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンを透視的に示す図であって、同図(c)がロービーム用配光パターンPL、同図(f)がハイビーム用配光パターンPHを示している。
【0036】
ロービーム用配光パターンPLは、可動シェード20が遮光位置にあるときに形成される配光パターンであって、同図(a)に示す基本的な配光パターンPL0と同図(b)に示す付加的な配光パターンPLAとの合成配光パターンとして形成されるようになっている。一方、ハイビーム用配光パターンPHは、可動シェード20が遮光解除位置にあるときに形成される配光パターンであって、同図(d)に示す基本的な配光パターンPH0と同図(e)に示す付加的な配光パターンPHAとの合成配光パターンとして形成されるようになっている。
【0037】
同図(c)に示すように、ロービーム用配光パターンPLは、左配光のロービーム用配光パターンであって、その上端縁に左右段違いのカットオフラインCL1、CL2を有している。このカットオフラインCL1、CL2は、灯具正面方向の消点であるH−Vを鉛直方向に通るV−V線を境にして左右段違いで水平方向に延びるように形成されている。その際、V−V線よりも右側の対向車線側カットオフラインCL1は、その全長にわたって水平方向に延びるように形成されており、一方、V−V線よりも左側の自車線側カットオフラインCL2は、対向車線側カットオフラインCL1の左端位置から傾斜部を介して段上がりになった後に水平方向に延びるように形成されている。
【0038】
このロービーム用配光パターンPLにおいて、対向車線側カットオフラインCL1とV−V線との交点であるエルボ点Eは、H−Vの0.5〜0.6°程度下方に位置している。これは、灯具ユニット20の光軸Axが車両前後方向に対して0.5〜0.6°程度下向きの方向に延びていることによるものである。そして、このロービーム用配光パターンPLにおいては、エルボ点Eを囲むようにして高光度領域であるホットゾーンHZLが形成されている。
【0039】
このロービーム用配光パターンPLは、リフレクタ14の反射面14aで反射した光源12aからの光によって投影レンズ18の後側焦点面上に形成された光源12aの像を、投影レンズ18により上記仮想鉛直スクリーン上に反転投影像として投影することにより形成され、その左右段違いのカットオフラインCL1、CL2は、可動シェード20の上端縁20a1、20a2の反転投影像として形成されるようになっている。
【0040】
同図(a)に示す基本的な配光パターンPL0は、リフレクタ14の反射面14aにおける一般反射領域14a0からの反射光により形成される配光パターンであって、ロービーム用配光パターンPLと略同様の配光パターンとして形成されている。
【0041】
この基本的な配光パターンPL0には、そのエルボ点Eの右下方位置に暗部DZが形成されている。この暗部DZは、図2に示すように、リフレクタ14の反射面14aにおける光軸Axの左上方位置(灯具正面視では右上方位置)に、異物の付着や反射蒸着膜の欠損等による不具合部分14aDが生じてしまった場合に、この不具合部分14aDから反射すべき光がなくなってしまうことにより形成されるものである。
【0042】
同図(b)に示す付加的な配光パターンPLAは、リフレクタ14の反射面14aにおける一部反射領域14aAからの反射光により形成される配光パターンであって、基本的な配光パターンPL0よりもやや小さくて暗い配光パターンとして形成されている。その際、この一部反射領域14aAからの反射光も、遮光位置にある可動シェード20によって、その一部が遮蔽されるので、付加的な配光パターンPLAは、その上端縁に左右段違いのカットオフラインCL1、CL2を有するものとなる。
【0043】
同図(c)に示すように、ロービーム用配光パターンPLは、基本的な配光パターンPL0と付加的な配光パターンPLAとの合成配光パターンとして形成されるので、基本的な配光パターンPL0の暗部DZは付加的な配光パターンPLAによって覆われることとなる。
【0044】
一方、同図(f)に示すハイビーム用配光パターンPHは、ロービーム用配光パターンPLに対して、そのカットオフラインCL1、CL2から上方へ拡がるように形成されており、H−V近傍にホットゾーンHZHを有している。
【0045】
同図(d)に示す基本的な配光パターンPH0は、リフレクタ14の反射面14aにおける一般反射領域14a0からの反射光により形成される配光パターンであって、ハイビーム用配光パターンPHと略同様の配光パターンとして形成されている。その際、この基本的な配光パターンPH0においても、リフレクタ14の反射面14aに生じた不具合部分14aDに起因する暗部DZが形成されている。
【0046】
同図(e)に示す付加的な配光パターンPHAは、リフレクタ14の反射面14aにおける一部反射領域14aAからの反射光により形成される配光パターンであって、基本的な配光パターンPH0よりもやや小さくて暗い配光パターンとして形成されている。
【0047】
同図(f)に示すように、ハイビーム用配光パターンPHは、基本的な配光パターンPL0と付加的な配光パターンPLAとの合成配光パターンとの合成配光パターンとして形成されるので、基本的な配光パターンPH0の暗部DZは付加的な配光パターンPHAによって覆われることとなる。
【0048】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0049】
本実施形態に係る車両用照明灯具10は、プロジェクタ型の車両用照明灯具として構成されているが、その照射光により形成されるべき灯具配光パターンPL、PHと略同様の基本的な配光パターンPL0、PH0を、リフレクタ14の反射面14aにおける一部反射領域14aAを除く他の一般反射領域14a0からの反射光により形成するように構成されており、一方、その一部反射領域14aAは光源12aからの光を拡散反射光として投影レンズ18に入射させるように構成されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0050】
すなわち、本実施形態に係る車両用照明灯具10においては、一般反射領域14a0からの反射光によって、灯具配光パターンPL、PHとしての基本的な配光パターンPL0、PH0が形成され、その上で、一部反射領域14aAからの反射光によって、ある程度の拡がりを持った付加的な配光パターンPLA、PHAが形成されることとなる。
【0051】
このため、一般反射領域14a0の一部に不具合が生じて、基本的な配光パターンPL0、PH0の一部に暗部DZが形成されるようなことがあっても、この暗部DZを付加的な配光パターンPLA、PHAで覆うことによって、灯具配光パターンPL、PHの一部が極端に暗くなってしまうのを未然に防止することができる。そしてこれにより、車両前方路面や路側帯のフェンス等の視認性が低下してしまうのを未然に防止することができる。
【0052】
このように本実施形態によれば、プロジェクタ型の車両用照明灯具10において、リフレクタ14の反射面14aの一部に不具合が生じた場合であっても、これに起因する視認性の低下を効果的に抑制することができる。また、これによりリフレクタ14の製造工程における品質管理を厳密に行う必要性をなくすことができるので、その分だけ灯具製造コストを低減させることができる。
【0053】
その際、本実施形態においては、一部反射領域14aAが反射面14aにおける投影レンズ18の光軸Axの近傍位置に配置されているので、この一部反射領域14aAからの拡散反射光の水平方向の最大拡散角度が比較的大きい値に設定されているにもかかららず、その拡散反射光を投影レンズ18に入射させることができる。そしてこれにより、付加的な配光パターンPLA、PHAを基本的な配光パターンPL0、PH0に近い大きさで形成することができる。このため、一般反射領域14a0での不具合の発生箇所が大きくばらついたような場合においても、基本的な配光パターンPL0、PH0に形成される暗部DZを付加的な配光パターンPLA、PHAで覆うようにすることができる。
【0054】
特に、本実施形態においては、一部反射領域14aAが、反射面14aの内周縁部において開口部14bを環状に囲むように形成されているので、基本的な配光パターンPL0、PH0をその一部が不自然に欠けた形状にならないようにした上で、付加的な配光パターンPLA、PHAを形成することができる。
【0055】
上記実施形態においては、車両用照明灯具10が、ロービーム用配光パターンPLとして、左配光のロービーム用配光パターンを形成するように構成されているものとして説明したが、右配光のロービーム用配光パターンを形成するように構成されている場合においても、上記実施形態と同様の構成を採用することにより同様の作用効果を得ることができる。
【0056】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0057】
図4は、本変形例に係る車両用照明灯具の要部を示す、図2と同様の図である。
【0058】
同図に示すように、本変形例に係る車両用照明灯具は、その基本的な構成は上記実施形態の場合と同様であるが、そのリフレクタ114の反射面114aの構成が上記実施形態の場合と異なっている。
【0059】
すなわち、本変形例においても、一部反射領域114aAは、同図において破線領域で示すように、反射面114aにおける光軸Axの近傍位置に配置されているが、この一部反射領域114aAは光軸Axに対して左側(すなわち自車線側)に配置されている。具体的には、この一部反射領域114aAは、光軸Axの左側方の反射面114aの内周縁部において開口部114bに臨む横長略矩形状の領域として形成されている。
【0060】
図5は、車両用照明灯具10から前方へ照射される光により上記仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンを透視的に示す図であって、同図(c)がロービーム用配光パターンPL、同図(f)がハイビーム用配光パターンPHを示している。
【0061】
本変形例においても、リフレクタ114の反射面114aにおける一部反射領域114aAを除く他の一般反射領域114a0からの反射光により同図(a)、(d)に示すような基本的な配光パターンPL1、PH1を形成するとともに、一部反射領域114aAからの反射光によって、同図(b)、(e)に示すような付加的な配光パターンPLB、PHBを形成するようになっている。
【0062】
そしてこれにより、一般反射領域114a0に不具合部分114aDが生じて、基本的な配光パターンPL1、PH1の一部に暗部DZが形成されるようなことがあっても、この暗部DZを付加的な配光パターンPHBで覆うことによって、灯具配光パターンPL、PHの一部が極端に暗くなってしまうのを未然に防止するようになっている。
【0063】
その際、本変形例においては、一部反射領域114aAが光軸Axの左側方の反射面114aの内周縁部に配置されているので、ロービーム用配光パターンPLにおける対向車線側カットオフラインCL1に沿ったエルボ点E寄りの部分Aの明るさを低減させるようにした上で、ロービーム用配光パターンPLおよびハイビーム用配光パターンPHの一部が極端に暗くなってしまうのを未然に防止することができる。
【0064】
そしてこれにより、ロービームでの走行中に車両がピッチングしたようなときでも対向車ドライバに大きなグレアを与えてしまわないようにした上で、上記実施形態の場合と略同様の作用効果を得ることができる。
【0065】
なお、上記実施形態およびその変形例において諸元として示した数値は一例にすぎず、これらを適宜異なる値に設定してもよいことはもちろんである。
【符号の説明】
【0066】
10 車両用照明灯具
12 光源バルブ
12a 光源
14、114 リフレクタ
14a、114a 反射面
14a0、114a0 一般反射領域
14aA、114aA 一部反射領域
14aD、114aD 不具合部分
14b、114b 開口部
16 ホルダ
18 投影レンズ
20 可動シェード
20a1、20a2 上端縁
22 アクチュエータ
24 回動ピン
A 対向車線側カットオフラインに沿ったエルボ点寄りの部分
Ax 光軸
CL1 対向車線側カットオフライン
CL2 自車線側カットオフライン
DZ 暗部
E エルボ点
F 後側焦点
HZH、HZL ホットゾーン
PH ハイビーム用配光パターン
PH0、PH1、PL0、PL1 基本的な配光パターン
PHA、PHB、PLA、PLB 付加的な配光パターン
PL ロービーム用配光パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投影レンズと、この投影レンズの後側焦点よりも後方側に配置された光源と、この光源からの光を上記投影レンズへ向けて反射させるリフレクタと、を備えてなる車両用照明灯具において、
この車両用照明灯具からの照射光により形成されるべき灯具配光パターンを、上記リフレクタの反射面における一部反射領域を除く他の一般反射領域からの反射光により形成するように構成されており、
上記一部反射領域が、上記光源からの光を拡散反射光として上記投影レンズに入射させるように構成されている、ことを特徴とする車両用照明灯具。
【請求項2】
上記一部反射領域が、上記反射面における上記投影レンズの光軸の近傍位置に配置されている、ことを特徴とする請求項1記載の車両用照明灯具。
【請求項3】
上記投影レンズの後方に、上記灯具配光パターンとして上端縁にカットオフラインを有するロービーム用配光パターンを形成するために上記リフレクタからの反射光の一部を遮蔽するシェードが配置されており、
上記一部反射領域が、上記投影レンズの光軸に対して自車線側に配置されている、ことを特徴とする請求項1または2記載の車両用照明灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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