説明

車両用空調ダクト構造

【課題】空調ダクトから結露水が滴下することを抑制する。
【解決手段】本発明の車両用空調ダクト構造10は、車室に形成された吹出口と連通されたサイド空調ダクト部20と、サイド空調ダクト部20の上壁部20A及び下壁部20Bの表面に形成され、それぞれ凹球面状を成す多数の凹部22とを備えている。この構成によれば、上壁部20A及び下壁部20Bの表面に結露が生じた場合には、多数の凹部22で結露水が分散保持される。ここで、この多数の凹部22は、それぞれ凹球面状を成しており、例えば深さ一定に形成された凹部に比して表面積が増加されている。従って、各凹部22において結露水の表面張力が増大されるので、サイド空調ダクト部20から結露水が滴下することを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調ダクト構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、空調ダクトの表面に格子状ビードが形成され、この空調ダクトの表面に付着した結露水を格子状ビードで構成された複数の凹部で分散保持する構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−257149号公報
【特許文献2】特開2004−90705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の例では、各凹部が深さ一定に形成されており、この凹部の底部が平面状を成すため、結露水が凹部の隅部等に纏まり易く、この纏まった結露水が空調ダクトから滴下する虞がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、空調ダクトから結露水が滴下することを抑制できる車両用空調ダクト構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の車両用空調ダクト構造は、車室に形成された吹出口と連通されたダクト部と、前記ダクト部の少なくとも一部の表面に形成され、それぞれ凹球面状を成す多数の凹部と、を備えている。
【0007】
この車両用空調ダクト構造によれば、ダクト部の少なくとも一部の表面には、多数の凹部が形成されている。従って、ダクト部の表面に結露が生じた場合には、多数の凹部で結露水が分散保持される。
【0008】
ここで、この多数の凹部は、それぞれ凹球面状を成しており、例えば深さ一定に形成された凹部に比して表面積が増加されている。従って、各凹部において結露水の表面張力が増大されるので、空調ダクトから結露水が滴下することを抑制することができる。
【0009】
請求項2に記載の車両用空調ダクト構造は、請求項1に記載の車両用空調ダクト構造において、前記複数の凹部が、互いに並列する第一群の凹部と第二群の凹部との間に直線状の折れ線が存在しないように配列された構成とされている。
【0010】
この車両用空調ダクト構造によれば、互いに並列する第一群の凹部と第二群の凹部との間に直線状の折れ線が存在しないので、ダクト部の折れを抑制して、ダクト部の剛性を向上させることができる。
【0011】
請求項3に記載の車両用空調ダクト構造は、請求項1又は請求項2に記載の車両用空調ダクト構造において、前記ダクト部が、車両上下方向と交差する方向に延在され、前記ダクト部の側壁部に、前記ダクト部の延在方向に沿って樋が形成された構成とされている。
【0012】
この車両用空調ダクト構造によれば、ダクト部の側壁部には、このダクト部の延在方向に沿って樋が形成されているので、ダクト部における上壁部に結露が生じ、この上壁部から結露水が流れ落ちた場合でも、この結露水を樋によって受け止めることができる。
【0013】
請求項4に記載の車両用空調ダクト構造は、請求項3に記載の車両用空調ダクト構造において、前記多数の凹部が、前記ダクト部の少なくとも上壁部の一部に形成され、前記樋の少なくとも一部が、前記上壁部の一部と前記ダクト部の延在方向にオーバラップされた構成とされている。
【0014】
この車両用空調ダクト構造によれば、ダクト部の少なくとも上壁部の一部(上壁部における多数の凹部が形成された領域)と、樋とがダクト部の延在方向にオーバラップされている。従って、例えば、車両走行に伴う振動や、結露水が凹部の許容量を超えるなどの理由によって、上壁部に形成された多数の凹部から結露水が流出し、この結露水が上壁部から流れ落ちた場合でも、この結露水を樋によって受け止めることができる。
【0015】
請求項5に記載の車両用空調ダクト構造は、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の車両用空調ダクト構造において、前記ダクト部の少なくとも一部の表面に、凸状を成すと共に、前記多数の凹部を複数の凹部毎に分けて囲む複数の格子部を有する格子状ビードが形成された構成とされている。
【0016】
この車両用空調ダクト構造によれば、ダクト部の少なくとも一部の表面には、凸状の格子状ビードが形成されており、この格子状ビードに形成された複数の格子部は、多数の凹部を複数の凹部毎に分けて囲んでいる。従って、例えば、凹部で保持できない結露水(例えば、凹部から流出した結露水)については、格子部で保持でき、また、格子部で保持できない結露水(例えば、格子部から離脱した結露水)については、凹部で保持することができ、相乗効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上詳述したように、本発明によれば、空調ダクトから結露水が滴下することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用空調ダクト構造が適用された空調ダクトの要部斜視図である。
【図2】図1に示されるサイド空調ダクト部を2−2線断面で切断した要部拡大断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る車両用空調ダクト構造の第一変形例を示す要部拡大平面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る車両用空調ダクト構造の第二変形例を示す要部拡大斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る車両用空調ダクト構造の第三変形例を示す要部拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
【0020】
なお、各図において示される矢印UP、矢印RR、矢印OUTは、車両上下方向上側、車両前後方向後側、車両幅方向外側(左側)をそれぞれ示している。
【0021】
図1に示される空調ダクト12は、本発明の一実施形態に係る車両用空調ダクト構造10が適用されたものであり、例えば、図示しないインストルメントパネルに対する車両下側に配置される。
【0022】
この空調ダクト12は、例えばブロー成形によって形成された樹脂成形品とされており、上側パネル14と下側パネル16とを有して構成されている。この上側パネル14と下側パネル16とは、一対のフランジ部18にて互いに接合されている。
【0023】
また、この空調ダクト12には、ダクト部としてのサイド空調ダクト部20が形成されている。このサイド空調ダクト部20は、上述のインストルメントパネルに形成された吹出口と空調装置に形成された送出口(いずれも不図示)とを連通するものであり、車両上下方向と交差する方向の一例として、水平方向に延在されている。
【0024】
このサイド空調ダクト部20における上壁部20A及び下壁部20Bの略全体の表面には、多数の凹部22が形成されている。この多数の凹部22は、それぞれ平面視にて円形状に形成されると共に、図2に示されるように、それぞれ凹球面状(半球曲面状)を成している。
【0025】
次に、本発明の一実施形態の作用及び効果について説明する。
【0026】
この車両用空調ダクト構造10によれば、図1に示されるように、サイド空調ダクト部20における上壁部20A及び下壁部20Bの略全体の表面には、多数の凹部22が形成されている。従って、上壁部20A及び下壁部20Bの表面に結露が生じた場合には、多数の凹部22で結露水が分散保持される。
【0027】
ここで、この多数の凹部22は、図2に示されるように、それぞれ凹球面状を成しており、例えば深さ一定に形成された凹部に比して表面積が増加されている。従って、各凹部22において結露水の表面張力が増大されるので、サイド空調ダクト部20から結露水が滴下することを抑制することができる。
【0028】
また、この多数の凹部22がビードの役割を果たすので、図1に示される上壁部20A及び下壁部20Bの面剛性、ひいては、サイド空調ダクト部20の剛性を向上させることもできる。
【0029】
なお、各凹部22の半径は、所望の表面張力が得られるように(結露水を保持できるように)、例えば、この凹部22の表面の濡れ性等を考慮して設定される。
【0030】
次に、本発明の一実施形態の変形例について説明する。
【0031】
上記実施形態において、多数の凹部22は、上壁部20A及び下壁部20Bの略全体の表面に形成されていたが、上壁部20A及び下壁部20Bの一部の表面に形成されていても良い。
【0032】
また、多数の凹部22は、上壁部20A及び下壁部20Bだけでなく、この上壁部20Aと下壁部20Bの両側を連結する一対の側壁部20Cに形成されていても良い。
【0033】
また、多数の凹部22は、サイド空調ダクト部20に形成されていたが、空調ダクト12に形成されたその他のダクト部(例えば、図示しないセンタ空調ダクト部)に形成されていても良い。
【0034】
また、多数の凹部22は、次のように配列されていても良い。つまり、図3に示される変形例において、複数の凹部22は、互いに並列する第一群の凹部22(例えば、四角Aで囲まれた縦方向に並ぶ複数の凹部22)と第二群の凹部22(例えば、四角Bで囲まれた縦方向に並ぶ複数の凹部22)との間に直線状の折れ線が存在しないように配列されている。
【0035】
すなわち、換言すれば、第一群の凹部22と第二群の凹部22との間に境界線Lを設定した場合に、この境界線L上に第一群に属する各凹部22の一部と第二群に属する各凹部22の一部が位置するようになっている。
【0036】
なお、この場合における互いに並列する第一群の凹部22と第二群の凹部22とは、上述の四角Aで囲まれた縦方向に並ぶ複数の凹部22と四角Bで囲まれた縦方向に並ぶ複数の凹部22だけでなく、例えば、四角Cで囲まれた斜め方向に並ぶ複数の凹部22と四角Dで囲まれた斜め方向に並ぶ複数の凹部22や、特に図示しないが、横方向に並ぶ複数の凹部22とこれと並列する横方向に並ぶ複数の凹部22や、四角C,Dで囲まれた複数の凹部22と異なる斜め方向に並ぶ複数の凹部22とこれと並列する斜め方向に並ぶ複数の凹部22も当てはまる。
【0037】
このように構成されていると、上述の互いに並列する第一群の凹部22と第二群の凹部22との間に直線状の折れ線が存在しないので、サイド空調ダクト部20の折れを抑制して、サイド空調ダクト部20の剛性を確保することができる。
【0038】
また、サイド空調ダクト部20の側壁部20Cに形成されたフランジ部18は、次のように形成されていても良い。
【0039】
つまり、図4に示される変形例では、フランジ部18の突端部に、車両上側に突出する突出部24が形成されている。また、このフランジ部18は、サイド空調ダクト部20の延在方向に沿って形成されており、樋としての役割を果たしている。
【0040】
また、多数の凹部22及びフランジ部18は、サイド空調ダクト部20に全長に亘って形成されており、上壁部20Aにおける多数の凹部22が形成された領域と、フランジ部18の全体とがサイド空調ダクト部20の延在方向(長手方向)にオーバラップされている。
【0041】
このように構成されていると、例えば、車両走行に伴う振動や、結露水が凹部22の許容量を超えるなどの理由によって、上壁部20Aに形成された多数の凹部22から結露水が流出し、この結露水が上壁部20Aから流れ落ちた場合でも、この結露水をフランジ部18によって受け止めることができる。
【0042】
また、空調ダクト12がブロー成形される際に形成されるフランジ部18を樋として利用しているので、新たな部材の追加を抑制して、コストアップを抑制することができる。
【0043】
なお、サイド空調ダクト部20の側壁部20Cに、フランジ部18以外の専用の樋が形成されても良い。
【0044】
また、この場合に、この樋は、上述のフランジ部18と同様に、その全体が上壁部20Aにおける多数の凹部22が形成された領域とサイド空調ダクト部20の延在方向(長手方向)にオーバラップするように形成されていても良い。
【0045】
また、多数の凹部22が上壁部20Aにおけるサイド空調ダクト部20の延在方向の一部に形成された場合、この樋は、その一部が上述の上壁部20Aにおける多数の凹部22が形成された領域とサイド空調ダクト部20の延在方向(長手方向)にオーバラップするように形成されていても良い。
【0046】
なお、この樋は、その一部が上述の上壁部20Aにおける多数の凹部22が形成された領域とオーバラップするように形成されていることが望ましいが、上壁部20Aにおける多数の凹部22が形成された領域とサイド空調ダクト部20の延在方向にずれて設けられていても良い。
【0047】
また、上壁部20Aの表面における多数の凹部22が形成された領域には、図5に示されるように、凸状の格子状ビード26が形成されていても良い。この格子状ビード26は、それぞれ縦枠28Aと横枠28Bとによって平面視四角形状に形成された複数の格子部28を有しており、この複数の格子部28は、多数の凹部22を複数の凹部22毎に分けて囲んでいる。
【0048】
このように構成されていると、例えば、凹部22で保持できない結露水(例えば、凹部22から流出した結露水)については、格子部28で保持でき、また、格子部28で保持できない結露水(例えば、格子部28から離脱した結露水)については、凹部22で保持することができ、相乗効果を得ることができる。
【0049】
なお、複数の格子部28は、平面視四角形状に形成される以外に、その他の形状(例えば、平面視六角形状等)に形成されても良い。
【0050】
また、空調ダクト12は、ブロー成形によって形成されていたが、その他にも、例えば、射出成形等によって形成されていても良い。
【0051】
また、車両用空調ダクト構造10は、インストルメントパネルの車両下側に配置される空調ダクト12以外に、車室内に配置されるその他の空調ダクトに適用されても良い。
【0052】
また、サイド空調ダクト部20は、水平方向に延在されていたが、車両上下方向と交差する方向の他の例として、水平方向に対して傾斜する方向に延在されていても良い。
【0053】
なお、上記複数の変形例のうち組み合わせ可能な変形例は、適宜組み合わされて実施可能である。
【0054】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0055】
10 車両用空調ダクト構造
12 空調ダクト
18 フランジ部(樋)
20 サイド空調ダクト部(ダクト部)
22 凹部
26 格子状ビード
28 格子部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室に形成された吹出口と連通されたダクト部と、
前記ダクト部の少なくとも一部の表面に形成され、それぞれ凹球面状を成す多数の凹部と、
を備えた車両用空調ダクト構造。
【請求項2】
前記複数の凹部は、互いに並列する第一群の凹部と第二群の凹部との間に直線状の折れ線が存在しないように配列されている、
請求項1に記載の車両用空調ダクト構造。
【請求項3】
前記ダクト部は、車両上下方向と交差する方向に延在され、
前記ダクト部の側壁部には、前記ダクト部の延在方向に沿って樋が形成されている、
請求項1又は請求項2に記載の車両用空調ダクト構造。
【請求項4】
前記多数の凹部は、前記ダクト部の少なくとも上壁部の一部に形成され、
前記樋の少なくとも一部は、前記上壁部の一部と前記ダクト部の延在方向にオーバラップされている、
請求項3に記載の車両用空調ダクト構造。
【請求項5】
前記ダクト部の少なくとも一部の表面には、凸状を成すと共に、前記多数の凹部を複数の凹部毎に分けて囲む複数の格子部を有する格子状ビードが形成されている、
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の車両用空調ダクト構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−156944(P2011−156944A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19298(P2010−19298)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】