説明

車両用空調ユニット

【課題】エバポレータから発生したドレン水をケース本体内壁に付着させることなく、確実にドレン孔から排水してケース本体での結露発生を防止することができる車両用空調ユニットを提供すること。
【解決手段】車両用空調ユニットにおいて、エバポレータ(6)を収納するケース本体(2)内に、送風流路の一部を形成する蓋部(20)と、エバポレータから発生したドレン水を受けてドレン孔(10)へと導くドレン水受部(22)と、ドレン水受部からドレン孔を貫通してケース本体外のドレン通路(12)内まで延びるノズル部(24)とからなるドレン水案内手段を、少なくともドレン水受部がケース本体の内面と非接触であるように設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調ユニットに関し、エバポレータを備えたHVAC(heating, ventilating, air conditioning)ユニットからなる車両用空調ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用空調装置が特許文献1に記載されている。この自動車用空調装置は、冷却用熱交換器(エバポレータ)で発生する凝縮水(ドレン水)が車室内に飛水することを防止しつつ且つ水漏れ防止性を高くするものである。これを行うために、凝縮水を流すためのドレン溝と送風路とを区画する蓋部材を取り付けている。
しかしながら、上記特許文献1の自動車用空調装置では、ドレン溝が形成されたインシュレータがケース本体に当接し、また蓋部材下側であってエバポレータ上流側のケース本体側面がドレン水に対してむき出しの状態である。したがってケース本体の下面にはドレン溝を介してドレン水の低温が伝わってケース本体の下面が冷やされ、結露するおそれがある。また、エバポレータ上流側のケース本体側面がドレン水に対してむきだしなので、車両の加減速時や旋回時に車両が傾き、ドレン水がはねてケース本体側面に付着し、ここからドレン水の低温が伝わって結露するおそれがある。
【0003】
このようなケース本体における結露の発生は、大きくなった結露が車室内に落下して乗員に不快な思いをさせたり、車室内を濡らしたり、電装部品や電線に結露水がかかり、腐食やショートを引き起こすおそれがあるので、好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−56342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術を考慮したものであって、エバポレータから発生したドレン水をケース本体内壁に付着させることなく、確実にドレン孔から排水してケース本体での結露発生を防止することができる車両用空調ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を達成するために、請求項1の車両用空調ユニットでは、送風空気を冷却するエバポレータと、前記エバポレータを収納し、該エバポレータへ送風空気を導く送風流路を有するケース本体と、前記ケース本体の下部または側部に開口したドレン孔と、前記送風流路の一部を形成する蓋部と、前記エバポレータから発生したドレン水を受けて前記ドレン孔へと導くドレン水受部と、該ドレン水受部から前記ドレン孔を貫通して前記ケース本体外まで延びるノズル部とから構成され、少なくとも前記ドレン水受部が前記ケース本体の内面と非接触であるように該ケース本体内に設けられるドレン水案内手段とを備えることを特徴としている。
【0007】
請求項2の車両用空調ユニットでは、前記ドレン水案内手段は、前記ドレン水受部がドレン孔に向かって下方に窄んだ形状をなしており、このドレン水受部の窄んだ先から前記ノズル部が延びていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
上記手段を用いる本発明の請求項1の車両用空調ユニットによれば、車両用空調ユニットにおいて、エバポレータを収納するケース本体内に、送風流路の一部を形成する蓋部と、エバポレータから発生したドレン水を受けてドレン孔へと導くドレン水受部と、ドレン水受部からドレン孔を貫通してケース本体外まで延びるノズル部とからなるドレン水案内手段を、少なくともドレン水受部がケース本体の内面と非接触であるように設ける。
【0009】
ドレン水案内手段において、ドレン水が通るドレン水受部がケース本体の内面と非接触で設けられることで、当該ドレン水受部を流れるドレン水の低温がケース本体に伝わることはない。そして、ドレン水受部からドレン孔を貫通してケース本体外まで延びたノズル部が設けられていることで、ドレン水案内手段とドレン通路との間に隙間が生じることを防ぐことができ、確実にドレン水案内手段からケース本体外へとドレン水を案内することができる。
【0010】
これにより、ドレン水をケース本体内面に付着させることなくケース本体外へと排出することができ、確実にケース本体における結露を防止することができる。
請求項2の車両用空調ユニットによれば、ドレン水案内手段のドレン水受部を、ドレン孔に向かって下方に窄んだ形状とし、このドレン水受部の窄んだ先から前記ノズル部が延びた形状とする。
【0011】
このように、ドレン水受部をドレン孔に向かって下方に窄んだ形状とすることで、車両が傾いた場合や車両の加減速時や旋回時にドレン水がはねた場合等でも、ケース本体内にドレン水が漏れることなく、確実にドレン孔に導くことができる。また、下方に窄んだ形状のドレン水受部に沿ってドレン水が集められてドレン孔に導かれるため、ドレン水受部の窄んだ先から延びるノズル部には流速の上がったドレン水が流れて、ドレン水を停滞させることなく、より確実にケース本体外へと流入させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る車両用空調ユニットの全体横断面図である。
【図2】本発明に係る車両用空調ユニットのケース本体冷却部の概略斜視図である。
【図3】本発明に係る車両用空調ユニットの概略斜視図である。
【図4】インナーガイドの概略斜視図である。
【図5】図1のA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1から図3を参照すると、図1には本発明に係る車両用空調ユニットの全体横断面図、図2、3には車両用空調ユニットの概略斜視図が示されている。図1はケース本体2の下半分を上側から見た断面図であり、図2はエバポレータ上流側を正面に対し右方向から見た斜視図であり、図3は左方向からみた斜視図である。なお、図2、図3ではケース本体を一部切欠いて記載している。
【0014】
図1に示す車両用空調ユニット1は、車両車室内のインストルメントパネル内に設けられている。
当該車両用空調ユニット1は、ケース本体2内に、空気を送風する送風ファン4、送風空気を冷却するエバポレータ6(蒸発器)、送風空気を加熱する図示しないヒータコア等が設けられて構成されている。
【0015】
ケース本体2は、内部において、送風ファン4からエバポレータ6への送風流路を形成している。詳しくは、ケース本体2の送風流路は、送風ファン4が設けられた円筒部2aから連結通路2bを介してエバポレータ6の設けられた冷却部2cへと連通しており、送風ファン4の回転により送風された空気は、連結通路2bを通り、冷却部2cへと流入しエバポレータを通過してさらに下流へと流れていく。なお、送風空気の流れは各図白抜き矢印で示している。
【0016】
図2、3に示すように、エバポレータ6は、ケース本体2の冷却部2cにおいて送風流路断面に沿って設けられている。また、冷却部2cの下部であって、エバポレータより送風空気上流側にはインナーガイド8(ドレン水案内手段)が設けられている。
エバポレータ6は、内部に冷媒が通過しており、この冷媒を用いて送風空気を熱交換作用により冷却する。エバポレータ6としては、種々のタイプがあるが、一般的には放熱フィンが複数枚並べて配設された積層型が用いられている。エバポレータ6に供給される冷媒は、図示しないコンプレッサーで圧縮され、さらに図示しないコンデンサーで液化され、これが気化したものである。すなわち、上述した熱交換作用は、この冷媒の潜熱を利用するものである。
【0017】
ケース本体2の冷却部2c内に流入した送風空気はインナーガイド8の上方を通過して、エバポレータ6を通ってケース本体2の送風空気下流側へと流れていく。この送風空気が、エバポレータ6を通り、具体的には放熱フィンの間を通過することにより冷却されて、冷風として車室内に提供される。この圧縮空気の冷却時に、ドレン水(凝縮水)が発生する。ドレン水は、インナーガイド8により、ケース本体2側面に開口したドレン孔10に案内されて、当該ドレン孔10からケース本体2の外側に突出した管状のドレン通路12を通って車室外に排水される。
【0018】
ここで、図4及び図5を参照すると、図4にはインナーガイドの概略斜視図、図5には図1のA−A断面図が示されている。以下、上記図1から図3に加え、これら図4、5に基づきインナーガイド8について詳しく説明する。
図4に示すように、インナーガイド8は、蓋部20、ドレン水受部22、及びノズル部24より一体的に成形された構成をなしている。
【0019】
蓋部20は、ケース本体2の連結通路2bの下面と連続をなして冷却部2cにおける送風流路を形成する矩形の板部材である。当該蓋部20は、一方の短辺20aが連結流路2b下面と接し、他方の短辺20b及び一方の長辺20cがケース本体2の内面と接し、他方の長辺20dがエバポレータ6側面と接する。図5に示すように、当該蓋部20は、ケース本体2の冷却部2c上部の送風空間と下部の排水空間とを区画するものである。
【0020】
ドレン水受部22は、蓋部20より下方に形成されており、ケース本体2内に設置されたときに、エバポレータ6下面からケース本体2のドレン孔10に亘って形成されている。
さらに詳しくは、ドレン水受部22は、蓋部20の下面から垂直に下方に延びた壁部22aと、ドレン水受部22の底面をなす受部底面22bからなる。
ドレン水受部22の壁部22aは、蓋部20のエバポレータ側の両端からドレン側に向かい、ドレン水を中央側に集めるよう湾曲しつつ中央へ延びている。そして、中央よりやや蓋部20の一方の短辺20a側部分にて、ドレン孔10側に向かう導入通路を形成するように対向した一対の壁部22aが延びている。
【0021】
ドレン水受部22の受部底面22bはエバポレータ6の下面から上記壁部22aに沿ってドレン孔10まで延びている。特に上記対向する一対の壁部22aにより形成される導入通路部分においては、受部底面22bは、エバポレータ6の下面に沿った面よりもさらに下方に傾斜しつつ、当該壁部22a下部も互いに近づき、導入通路はドレン孔10に向かって窄んだ形状をなしている。
【0022】
ノズル部24は、この上記導入通路の受部底面22bからドレン孔10を貫通し、ケース本体2外のドレン通路12内まで延び、上半分が開口した半管状をなしている。そして、インナーガイド8がケース本体2内に設置されたときには、当該ノズル部24の先端がドレン通路12内の下面形状に沿って当接する。
このように構成されたインナーガイド8は、蓋部20及び受部底面22の各辺がケース本体2の内面等に突き当たるとともに、当該蓋部20の両短辺側下面がケース本体2側部内面より突出した支持部2d、2dに当接することで、支持されている。インナーガイド8は、当該支持部2d、2dに支持されることで、ドレン水が流れるドレン水受部22は本体ケース2の内面と面接触せず、当該ドレン水受部22の各面(壁部22a、受部底面22b)はケース本体2の内面と所定の間隔を有して設けられている。これによりドレン水受部22とケース本体2との間には空気層が形成されることとなる。
【0023】
また、図5に示すように、インナーガイド8は、ノズル部24が最下端位置となるよう、水平方向より傾斜して支持される。この傾斜角度は車両に傾斜可能な角度に応じて設定されるものとし、例えば受部底面22bのエバポレータ下面と当接する面が20°〜25°傾斜するよう支持されるのが好ましい。
以下、このように構成された車両用空調ユニット1の作用効果について説明する。
【0024】
当該車両用空調ユニット1では、送風ファン4から冷却部2cに流入した送風空気は、インナーガイド8の蓋部20上方を通ってエバポレータ6に導かれる。
一方で、エバポレータ6にて発生したドレン水は、エバポレータ6の下部からインナーガイド8におけるドレン水受部22の受部底面22bを伝い、壁部22aによって導入通路に集められる。そして、ドレン水は、下方に傾斜し窄んだ形状の導入通路を通ることで流速が上がり、ノズル部24に沿ってドレン通路12内へと流れていく。
【0025】
このようにインナーガイド8において、ドレン水が通るドレン水受部22がケース本体2の内面と所定の間隔を有し非接触で設けられることで、当該ドレン水受部22を流れるドレン水の低温がケース本体2に伝わることはない。したがって、ケース本体2における結露を防止することができる。
また、インナーガイド8は、車両の傾きを考慮してドレン孔10に向かって傾斜して設けられている上、ドレン水受部22においてドレン孔10に対応して壁部22a及び受部底面22bにより形成された導入通路がドレン孔10に向かって下方に窄んだ形状をなしているため、車両が傾いた場合や車両の加減速時や旋回時にドレン水がはねた場合等でも、ケース本体2内にドレン水を漏らすことはない。
【0026】
また、蓋部20がドレン受部22の上部を覆いつつ、ケース本体2の冷却部2c内の送風空間と排水空間を区画していることによっても、ケース本体2内にドレン水が漏れることを防止できる。
そして、インナーガイド8に、ドレン水受部22からドレン孔10を貫通してドレン通路12内に沿って当接するまで延びたノズル部24が設けられていることで、インナーガイド8とドレン通路12との間に隙間が生じることを防ぎ、確実にインナーガイド8からケース本体2外のドレン通路12内へとドレン水を案内することができる。
【0027】
また、ドレン水受部22において下方に窄んだ形状の導入通路に沿ってドレン水が集められてドレン孔10に導かれるため、導入通路の窄んだ先から延びるノズル部24には流速の上がったドレン水が流れ、ドレン水を停滞させることなく、より確実にドレン通路12内へと流入させることができる。
さらに、インナーガイド8は、図4から明らかなように、閉じた空間等を有さず、蓋部20の短辺方向に開放した形状をなしていることから、当該短辺方向を抜き方向とした型で容易に一体成形することができる。つまり、部品点数を大幅に増加したり、特別な装置等を用いることなく、簡単な構成で結露を防止することができる。
【0028】
以上のことから本発明に係る車両用空調ユニットは、ドレン水をケース本体内面に付着させることなくドレン通路へと排出することができ、より確実にケース本体における結露を防止することができる。
これで本発明に係る車両用空調ユニットの実施形態についての説明を終えるが、実施形態は上記実施形態に限られるものではない。
【0029】
上記実施形態では、ノズル部24は半管状をなしているが、当該ノズル部24の形状はこれに限られるものではなく、例えば、管状や断面V字状、形状をより簡素化するためにドレン水が伝う板状のノズル部としてもよい。
また、上記実施形態では、ノズル部24がドレン通路12内まで延びた構成であるが、当該ノズル部はドレン孔を貫通してケース本体外まで延びていれば、その効果を奏するものであり、例えばドレン通路が短い場合やドレン通路が形成されていないケース本体にも適用は可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 車両用空調ユニット
2 ケース本体
2a 円筒部
2b 連結通路
2c 冷却部
2d 支持部
4 送風ファン
6 エバポレータ
8 インナーガイド(ドレン水案内手段)
10 ドレン孔
12 ドレン通路
20 蓋部
20a、20b 短辺
20c、20d 長辺
22 ドレン水受部
22a 壁部
22b 受部底面
24 ノズル部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風空気を冷却するエバポレータと、
前記エバポレータを収納し、該エバポレータへ送風空気を導く送風流路を有するケース本体と、
前記ケース本体の下部または側部に開口したドレン孔と、
前記送風流路の一部を形成する蓋部と、前記エバポレータから発生したドレン水を受けて前記ドレン孔へと導くドレン水受部と、該ドレン水受部から前記ドレン孔を貫通して前記ケース本体外まで延びるノズル部とから構成され、少なくとも前記ドレン水受部が前記ケース本体の内面と非接触であるように該ケース本体内に設けられるドレン水案内手段とを備えることを特徴とする車両用空調ユニット。
【請求項2】
前記ドレン水案内手段は、前記ドレン水受部がドレン孔に向かって下方に窄んだ形状をなしており、このドレン水受部の窄んだ先から前記ノズル部が延びていることを特徴とする請求項1記載の車両用空調ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−152850(P2011−152850A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−15415(P2010−15415)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】