車両用空調装置に用いられる防塵用キャップ
【課題】冷却手段の接続部に開口した連通孔を介して、冷媒が流通する通路を確実に閉塞させると共に、前記接続部に対する着脱を確実且つ簡便に行う。
【解決手段】車両用空調装置10に採用されるエバポレータ14には、冷媒が流通する一組の配管28a、28bの端部に接続ブロック30が設けられ、前記配管28a、28bと連通した第1及び第2孔部36、38が開口している。そして、接続ブロック30には、第1及び第2孔部36、38を通じてエバポレータ14の内部に塵埃等が進入することを防止する防塵用キャップ52が装着されている。防塵用キャップ52は、第1及び第2孔部36、38を閉塞する第1及び第2嵌合部56、58を備えるボディ54と、該ボディ54より突出形成され、該ボディ54を接続ブロック30より離脱させる際に引張されるフック部60からなり、前記フック部60が、ボディ54に対して回動自在に形成されている。
【解決手段】車両用空調装置10に採用されるエバポレータ14には、冷媒が流通する一組の配管28a、28bの端部に接続ブロック30が設けられ、前記配管28a、28bと連通した第1及び第2孔部36、38が開口している。そして、接続ブロック30には、第1及び第2孔部36、38を通じてエバポレータ14の内部に塵埃等が進入することを防止する防塵用キャップ52が装着されている。防塵用キャップ52は、第1及び第2孔部36、38を閉塞する第1及び第2嵌合部56、58を備えるボディ54と、該ボディ54より突出形成され、該ボディ54を接続ブロック30より離脱させる際に引張されるフック部60からなり、前記フック部60が、ボディ54に対して回動自在に形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置において冷却手段の通路を閉塞する車両用空調装置に用いられる防塵用キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両用空調装置では、空気を冷却するエバポレータと、空気を加熱させるヒータコアとを備え、この冷却された空気と加熱された空気とを所望の混合比率で混合し、車室内に向かって開口した複数の吹出口から選択的に送風することにより、前記車室内の温度及び湿度の調整を行っている。
【0003】
上述したエバポレータを含む車両用空調装置は、車両隔壁によってエンジンルームと分離された車室内側に配置され、前記エンジンルーム内に配設された圧縮機等に対して配管及び接続部材を介して接続されている。そして、圧縮機によって圧縮された冷媒が、高圧側の配管及び接続部材を介してエバポレータへと導入され、該エバポレータにおいて空気との熱交換が行われた後に、低圧側の配管を介して再び前記圧縮機へと循環されている。
【0004】
このエバポレータでは、例えば、冷媒通路を構成する高圧側及び低圧側の配管の端部が単一のブロックに接続され、該ブロックには冷媒通路と連通した一組の接続孔が形成され前記ブロックを介してエンジンルーム側の配管及び接続部材に対して連結される。この際、ブロックの接続孔は、外部に向かって開口しているため、エバポレータをエンジンルーム側の接続部材と接続する前に、該接続孔を通じてエバポレータの内部に塵埃等が進入してしまうことが懸念される。
【0005】
このようなエバポレータ内への塵埃等の進入を防止するために、ブロックの接続孔を閉塞するキャップが知られている。このキャップは、一組の接続孔に対応してそれぞれ別個に設けられ、前記キャップの端面より突出した封鎖部を前記接続孔に挿入することにより、前記接続孔を封鎖している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−11733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に係る従来技術においては、ブロックに設けられた一組の接続孔に対してそれぞれ別個のキャップを装着するようにしているため、その装着作業が煩雑であると共に、部品点数が増大してしまうという問題がある。
【0008】
また、ブロックをエンジンルーム側の接続部に接続するにあたりキャップをブロックから取り外す際にも、前記キャップをそれぞれ別個に取り外す必要があり、前記キャップの脱着させる際の作業効率が低下するという問題がある。
【0009】
一方、前記キャップをブロックから離脱させる際には、該キャップの頭部を作業者が把持して該ブロックから離間させるように引張させているが、該キャップを前記ブロックに対してより一層簡便且つ確実に取り外したいという要望がある。
【0010】
本発明は、前記の種々の課題等を考慮してなされたものであり、冷却手段の接続部に対して簡便に着脱を行うことができると共に、該接続部の端面に開口して冷媒が流通する連通孔を確実に閉塞することが可能な車両用空調装置に用いられる防塵用キャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するために、本発明は、ハウジング内に空気を冷却して冷風を供給する冷却手段を備える車両用空調装置において、前記冷却手段には冷媒を循環させる一組の通路が接続され、該通路に対してそれぞれ接続され連通した連通孔を有する接続部に装着され、前記接続部の端面に開口した前記連通孔を閉塞する車両用空調装置に用いられる防塵用キャップであって、
前記接続部の端面に装着され、前記連通孔に挿入される一組の挿入部を有する本体部と、
前記本体部に対して所定角度傾斜して接合され、該本体部側に向かって回動自在に設けられるフック部と、
を備え、
前記フック部が前記本体部に向かって回動した際、前記接続部の端面において該フック部が前記本体部を回避した該本体部の外側に配置されることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、冷却手段における接続部の端面に形成された連通孔に対して一組の挿入部を有する防塵用キャップを装着することにより、単一の防塵用キャップによって一組の連通孔を簡便且つ確実に閉塞することができると共に、本体部に対して接合されたフック部を介して防塵用キャップを引張することにより、該防塵用キャップを接続部に対して確実且つ簡便に離脱させることができる。
【0013】
従って、接続部に対して防塵用キャップを着脱させる際の作業時間を短縮化することができると共に、前記防塵用キャップによって冷却手段内への塵埃等の進入を確実に阻止することができる。
【0014】
また、フック部が本体部側に回動した際、接続部の端面において前記フック部を前記本体部の外側となるように配置しているため、前記フック部と本体部とがその厚さ方向に重なり合うことを回避することができる。そのため、防塵用キャップの厚さ寸法が増大することが防止され、接続部を収容するようにハウジングを組み付ける際に、該ハウジングと防塵用キャップとがその厚さ方向において接触することがなく、前記ハウジングの組付性を良好に維持することができる。
【0015】
また、フック部に、本体部に対して接合される第1折曲部と、
前記第1折曲部に対して所定角度傾斜して折曲して接合される第2折曲部とを備えるとよい。これにより、フック部を第1及び第2折曲部から構成し、該第1及び第2折曲部のそれぞれの長さを任意に調整することにより、前記フック部が回動して本体部と略平行となった際の前記フック部の長さ、すなわち、該フック部の先端位置を調整することができる。その結果、ハウジング内に収容された防塵用キャップのフック部を、該ハウジングに接触しない長さに調整することにより、該フック部をハウジングに対して外部に突出させることができるため、前記フック部を介して防塵用キャップを簡便且つ確実に離脱させることができる。
【0016】
さらに、本体部に、接続部の端面に配設されたねじ部と対向し、該ねじ部が挿通される挿通孔を備えることにより、前記接続部に連結用のねじ部が設けられた場合においても、該ねじ部を挿通させる挿通孔を本体部に設けているため、前記連通孔を閉塞する際の支障となることがなく、本体部に形成された一組の挿入部によって挿通孔を確実に閉塞することが可能である。
【0017】
さらにまた、本体部に、接続部に装着されたねじ部に臨み、該ねじ部を囲繞するカバー部材を配設することにより、前記ねじ部に対して塵埃等が付着することを防止できるため、前記ねじ部を介して接続部と相手部材とを連結する際に、その連結作業を円滑に行うことができる。
【0018】
またさらに、フック部の長手寸法は、該フック部が回動して本体部と略平行となった際に、接続部の端面に臨むハウジングの開孔内となる長さに設定することにより、前記フック部が前記ハウジングに接触することが防止されるため、前記開孔内に設定された長さのフック部を該開孔を介して好適に外部に突出させることができる。
【0019】
また、フック部を、本体部と対向する略中央部が切り欠かれた中空状に形成することにより、前記本体部に対してフック部がその厚さ方向に重なり合うことが回避されるため、前記フック部が回動してハウジングが組み付けられる際において防塵用キャップの厚さ寸法の増大を抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0021】
すなわち、冷却手段における接続部の端面に形成された連通孔に対して防塵用キャップを装着することにより、一組の挿入部を介して単一の防塵用キャップで前記連通孔を簡便且つ確実に閉塞することができ、且つ、本体部に接合されたフック部を介して接続部から離間する方向に引張することにより、該防塵用キャップを確実且つ簡便に離脱させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る防塵用キャップが適用された車両用空調装置において、該車両用空調装置から防塵用キャップが離脱された状態を示す外観斜視図である。
【図2】図1の防塵用キャップがエバポレータの接続ブロックに装着された状態を示す拡大斜視図である。
【図3】図2の防塵用キャップが接続ブロックから離脱された状態を示す拡大斜視図である。
【図4】図1の防塵用キャップが接続ブロックに対して装着された状態を示す拡大平面図である。
【図5】図2の防塵用キャップがエバポレータの接続ブロックに装着された状態を示す一部断面拡大側面図である。
【図6】図5のフック部が第2ケースによってボディ側に押圧されて回動した状態を示す拡大側面図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る防塵用キャップがエバポレータの接続ブロックに装着された状態を示す拡大斜視図である。
【図8】図7の防塵用キャップが接続ブロックに対して装着された状態を示す拡大平面図である。
【図9】図7の防塵用キャップが接続ブロックに対して装着された状態を示す拡大側面図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態に係る防塵用キャップがエバポレータの接続ブロックに装着された状態を示す拡大斜視図である。
【図11】図10の防塵用キャップが接続ブロックに対して装着された状態を示す拡大平面図である。
【図12】図10の防塵用キャップが接続ブロックに対して装着された状態を示す一部断面拡大側面図である。
【図13】図10のボディからカバー部材を離脱させた状態を示す防塵用キャップ単体の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る車両用空調装置に用いられる防塵用キャップについて好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0024】
図1において、参照符号10は、本発明の実施の形態に係る防塵用キャップが適用される車両用空調装置を示す。
【0025】
この車両用空調装置10は、図1に示されるように、その内部に空気の各通路を構成するハウジング12と、前記ハウジング12の内部に配設され、空気を冷却するエバポレータ(冷却手段)14と、前記空気を加熱するヒータコア(図示せず)とを含む。
【0026】
ハウジング12は、エバポレータ14及びヒータコアが収容される第1ケース16と、該エバポレータ14の側部に装着される第2ケース18とから構成されている。
【0027】
第1ケース16には、該第1ケース16内で混合された混合風を車室内における乗員の頭部近傍に送風するフェイス吹出部20と、前記フェイス吹出部20と近接して車両のフロントガラス近傍に送風するデフロスタ吹出部22と、前記車室内における乗員の足元近傍に送風するフット吹出部24とを備える。
【0028】
また、第1ケース16には、略長方形の箱状に形成されるエバポレータ14の本体部26が開口部(図示せず)を介して挿入されている。このエバポレータ14は、本体部26の側部から延在し、図示しないエンジンルーム内に配置された圧縮機(例えば、コンプレッサ)によって圧縮された冷媒及び熱交換された後の冷媒が循環流通する一組の配管(通路)28a、28bと、前記配管28a、28bの端部に接続され、エンジンルーム側からの配管(図示せず)に対して接続される接続ブロック(接続部)30とを備える。このエンジンルーム側の配管は、図示しない圧縮機等に接続され、接続部を介してその端部が一体的に接続されている。そして、前記接続部が、車両用空調装置10における接続ブロック30と接続されることにより、前記接続部及び接続ブロック30を介して冷媒が配管内を循環流通する。
【0029】
すなわち、図示しない圧縮機によって圧縮された高圧の冷媒が、エンジンルーム側における一方の配管(図示せず)及び接続部を通じて接続ブロック30に導入され、膨張弁32によって低温・低圧の霧状にされた後に、該接続ブロック30に接続された一方の配管28aを通じてエバポレータ14の本体部26へと供給される。そして、本体部26においてハウジング12内を流通する空気との熱交換がなされた後に、再び低圧側となる他方の配管28b、接続ブロック30を介してエンジンルーム側の配管へと供給されて前記圧縮機へと循環される。
【0030】
なお、接続ブロック30及び配管28a、28bの一部には、第2ケース18内に収容されると共に、前記接続ブロック30は、高圧の冷媒を急激に膨張させることにより低圧として霧状とする膨張弁32が内蔵されている。
【0031】
接続ブロック30は、図1〜図6に示されるように、略直方体形状に形成され、その一端面側には本体部26に接続された一組の配管28a、28bが所定間隔離間して接続されると共に、他端面側には、エンジンルーム側に配置された圧縮機等に配管を介して接続された接続部(図示せず)が連結される取付面(端面)34(図3参照)を有する。なお、この接続ブロック30の取付面34は、車両用空調装置10において略鉛直方向に延在し、平面状に形成されている。
【0032】
この接続ブロック30には、取付面34側に開口し、図示しない圧縮機から高圧の冷媒が供給されると共に、一方の配管28aが接続される第1孔部36と、該第1孔部36と略水平方向に所定間隔離間し、他方の配管28bが接続されて本体部26から前記圧縮機へと循環される低圧の冷媒が流通する第2孔部38と、前記第1及び第2孔部36、38の間に形成され、前記接続ブロック30と接続部(図示せず)とを連結するボルト(ねじ部)40が螺合されるねじ孔42(図5参照)とを備える。この第1孔部36は、第2孔部38より小径に形成される。
【0033】
また、接続ブロック30の内部には、第1孔部36に導入された高圧の冷媒の圧力を制御する膨張弁32が設けられ、前記膨張弁32は、接続ブロック30の側部から突出したダイヤフラム部44を介して図示しない弁部を変位させることにより、前記圧力を制御してエバポレータ14の本体部26へと供給している。
【0034】
接続ブロック30は、第1孔部36と第2孔部38との内周径の違いに対応して、第1孔部36側が第2孔部38側より幅狭状に形成されている。
【0035】
ボルト40は、図5に示されるように、軸状に形成された長尺のスタッドボルトからなり、その一端部がねじ孔42に螺合されてナット46を介して接続ブロック30に固定されると共に、他端部が接続ブロック30の取付面34より所定長だけ突出している。
【0036】
第2ケース18は、図1に示されるように、エバポレータ14が装着される第1ケース16の開口部(図示せず)に対して側方から装着され、該開口部が前記第2ケース18によって閉塞される。そして、エバポレータ14の側部より突出した配管28a、28bの一部及び接続ブロック30がその内部に収容される。また、第2ケース18には、エバポレータ14の上流側となる位置に、図示しないブロアファンから空気が導入される導入通路48と、その内部に収容された前記接続ブロック30の取付面34に臨むように開口した開口孔50とが形成されている。この開口孔50は、図1〜図3に示されるように、接続ブロック30における取付面34の表面積より若干大きな開口面積を有する長孔状に形成されている。
【0037】
次に、接続ブロック30の取付面34に装着され、第1及び第2孔部(連通孔)36、38を閉塞する防塵用キャップ52について説明する。
【0038】
この防塵用キャップ52は、図2〜図5に示されるように、可撓性を有する樹脂製材料から形成され、接続ブロック30の取付面34に当接するボディ(本体部)54と、前記ボディ54に対して円筒状に突出し、該接続ブロック30の第1及び第2孔部36、38にそれぞれ挿入される第1及び第2嵌合部(挿入部)56、58と、前記ボディ54の端部に対して撓曲自在に設けられ、接続ブロック30から離脱させる際に作業者が引張可能なフック部60とを含む。
【0039】
ボディ54は、プレート状に形成され、図4に示されるように、その長手寸法L1が取付面34の長手寸法L2より若干だけ小さく形成されると共に、該長手寸法L1と略直交したボディ54の幅寸法W1は、取付面34の幅寸法W2と略同等に形成されている(W1≒W2)。なお、ボディ54とフック部60の厚さ寸法は略同等に形成されている(図5参照)。
【0040】
この第1及び第2嵌合部56、58は、図5及び図6に示されるように、ボディ54の長手方向に所定間隔離間して配置され、前記第1嵌合部56の外周径が、第1孔部36の内周径と略同等に形成され、その外周面には半径外方向に突出した複数本のリブ62が設けられている。このリブ62は、第1嵌合部56の外周面に沿って等角度毎に離間して設けられている。
【0041】
また、第2嵌合部58は、第1嵌合部56が第1孔部36に対して挿入された際に、接続ブロック30における第2孔部38と対向する位置に形成されると共に、該第2孔部38の内周径と略同等に形成されている。そして、第2嵌合部58の外周面には、半径外方向に突出した複数本のリブ62が設けられ、該リブ62が、第2嵌合部58の外周面に沿って等角度毎で離間して配設されている。
【0042】
すなわち、第1及び第2孔部36、38に対して第1及び第2嵌合部56、58がそれぞれ挿入される際に、リブ62が前記第1及び第2孔部36、38の内周面に沿って摺動しながら変位することとなるため、前記第1及び第2孔部36、38の内周径より若干だけ大きく形成された前記リブ62を介して第1及び第2嵌合部56、58が該第1及び第2孔部36、38に対して嵌合される。
【0043】
また、ボディ54の略中央部には、図2及び図4に示されるように、第1嵌合部56と第2嵌合部58との間となる位置に挿通孔64が形成され、前記挿通孔64には、ねじ孔42に螺合されたボルト40及びナット46が挿通される。前記挿通孔64の直径は、前記ボルト40及び該ボルト40を固定するナット46の外周径より大きく設定される。
【0044】
一方、第2嵌合部58が設けられるボディ54の一端部には、一組のアーム部66を介してフック部60が設けられ、前記フック部60は、該フック部60とアーム部66との境界部位を支点として前記ボディ54に対して略直交した直立状態から該ボディ54側に接近するように回動自在に設けられている。このフック部60は、前記直立状態(図5参照)からボディ54に重なった略水平状態(図6参照)となるまで約90°の範囲内で回動可能である。また、フック部60は、その略中央部が長方形状に切り欠かれた断面略U字状に形成されている。
【0045】
すなわち、フック部60は、該フック部60に対して負荷が付与されていない通常時に、ボディ54との間に生じる弾発作用下に該ボディ54に対して略直交した直立状態に保持され(図5参照)、該フック部60に対してボディ54側に向かった負荷が付与された場合には、該フック部60その弾発力に抗して該ボディ54側に向かって最大約90°だけ回動して略水平状態となる(図6参照)。
【0046】
アーム部66は、ボディ54の一端部から離間する方向に向かって徐々に拡幅するように二股状に形成されているため、前記アーム部66を介して接続されたフック部60の外幅寸法W3及び内幅寸法W4は、ボディ54の幅寸法W1より大きく設定される(W3、W4>W1)。これにより、フック部60が回動してボディ54と略平行に重なり合った際に、該フック部60とボディ54とがその幅方向に重なり合うことが回避される(図4参照)。
【0047】
第1嵌合部56が設けられるボディ54の他端部側は、その先端に向かって徐々に先細となるテーパ状に形成されると共に、その端部が円弧状に形成されている。これにより、フック部60が回動してボディ54と重なった略水平状態において、該フック部60の先端とボディ54の他端部とが重なり合わないよう回避される。
【0048】
これにより、防塵用キャップ52は、フック部60を回動させてボディ54と略平行状態とした際に、該ボディ54とフック部60とがその長手方向及び幅方向に重なり合うことを回避可能な形状に形成されている。そのため、フック部60を略水平状態まで回動させた際に、防塵用キャップ52における厚さ方向の寸法が増大することがない。
【0049】
さらに、フック部60の長さは、該フック部60が回動してボディ54と略平行とした際に、その先端部が第2ケース18の開口孔50より内周側に位置するように設定される(図4参照)。
【0050】
本発明の実施の形態に係る防塵用キャップ52が適用される車両用空調装置10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に前記防塵用キャップ52をエバポレータ14の接続ブロック30に対して装着した後に、第2ケース18を第1ケース16に対して組み付ける場合について説明する。
【0051】
先ず、第1ケース16内に本体部26が収容されたエバポレータ14に対して、その接続ブロック30の取付面34に防塵用キャップ52を装着する。詳細には、防塵用キャップ52の第1及び第2嵌合部56、58が前記取付面34側となるように把持し、該第1嵌合部56を第1孔部36に挿入すると同時に、第2嵌合部58を第2孔部38へと挿入する。この際、第1及び第2嵌合部56、58のリブ62が、第1及び第2孔部36、38の内周面に沿って摺動しながら挿入されるため、前記第1及び第2嵌合部56、58が第1及び第2孔部36、38に対して嵌合され、防塵用キャップ52の接続ブロック30に対する脱抜が防止される。
【0052】
また、防塵用キャップ52を接続ブロック30に装着しておくことにより、第1及び第2孔部36、38を通じてエバポレータ14の内部に外部から塵埃等が進入することが確実に阻止される。
【0053】
次に、第1ケース16に対して接続ブロック30側となる側方から第2ケース18を組み付ける。この場合には、開口孔50が接続ブロック30の取付面34側となるように第2ケース18を第1ケース16に向かって略水平方向に接近させ、該第1ケース16の開口部(図示せず)に対して第2ケース18の端部を装着すると共に、該第2ケース18の内部に接続ブロック30及び配管28a、28bの一部を収容する。
【0054】
この際、第2ケース18が第1ケース16側に向かって接近するに伴って、図6に示されるように、該第2ケース18における開口孔50近傍の内壁面18aが、フック部60に当接し、該フック部60をボディ54側に向かって押圧しながら変位することとなる。換言すれば、フック部60が、アーム部66との境界部位を支点としてボディ54側に向かって徐々に回動しながら接近して該ボディ54と略平行な略水平状態となる。
【0055】
そして、さらに第2ケース18を第1ケース16側へと変位させ、前記第2ケース18が第1ケース16の側部に装着された際に、図5に示されるように、フック部60の先端部は、第2ケース18の開口孔50より内周側となるようにその長さが設定されているため、該第2ケース18の内壁面18aによってフック部60が下方に向かって押圧されていた状態が解除され、該フック部60がその弾発作用下にボディ54から離間する方向に回動する。これにより、フック部60が、開口孔50を介してボディ54に対して略直交した直立状態に復帰する。
【0056】
最後に、防塵用キャップ52の挿通孔64を介してねじ孔42にボルト40の一端部側を螺合し、ナット46で締め付けることにより、前記ボルト40が取付面34より前記防塵用キャップ52側に突出した状態で固定される。この場合にも、接続ブロック30の第1及び第2孔部36、38は、防塵用キャップ52によって確実に閉塞されているため、ボルト40の装着時に発生した塵埃等が進入することが阻止される。
【0057】
そして、このように防塵用キャップ52が装着された接続ブロック30を、エンジンルーム側の圧縮機等に接続された接続部(図示せず)に接続する前に、図示しない作業者が第2ケース18の開口孔50から外部に突出したフック部60を把持し、前記接続ブロック30から離間する方向に引張することにより、第1及び第2嵌合部56、58を介して前記接続ブロック30に嵌合されていた防塵用キャップ52が離脱する。
【0058】
前記防塵用キャップ52が離脱された取付面34に対して、配管を介して図示しない圧縮機等に接続された接続部(図示せず)を接続ブロック30の取付面34に対して当接させ、前記接続ブロック30のボルト40を挿通させた後に、締付部材によって連結することにより、車両用空調装置10におけるエバポレータ14とエンジンルームに配置された圧縮機等が接続ブロック30及び接続部を通じて接続される。
【0059】
以上のように、第1の実施の形態では、エバポレータ14における接続ブロック30の取付面34に対して第1及び第2孔部36、38を閉塞可能な防塵用キャップ52を装着すると共に、該防塵用キャップ52のボディ54に回動自在なフック部60を設け、第2ケース18を第1ケース16に対して組み付けた後に、接続ブロック30が臨む前記第2ケース18の開口孔50から前記フック部60を外部へと突出させている。これにより、接続ブロック30における一組の第1及び第2孔部36、38を、単一の防塵用キャップ52を装着することにより同時且つ簡便に閉塞することができると共に、該防塵用キャップ52が不要となった際には、フック部60を引張することにより簡便に離脱させることができる。
【0060】
その結果、車両用空調装置10を、エンジンルーム内の圧縮機等に接続された接続部に対して連結する際に、接続ブロック30に装着された防塵用キャップ52を離脱させる際の作業時間を短縮化することができると共に、その連結作業を行う直前まで防塵用キャップ52を装着しておくことが可能であるため、エバポレータ14内への塵埃等の進入を極力阻止することができる。
【0061】
また、接続ブロック30にその取付面34から突出した締結用のボルト40が装着されている場合にも、防塵用キャップ52に該ボルト40が挿通可能な挿通孔64を設けることにより、前記ボルト40を好適に回避させることができるため、該ボルト40を備える接続ブロック30においても、前記防塵用キャップ52によって第1及び第2孔部36、38を確実に閉塞することが可能である。
【0062】
さらに、防塵用キャップ52は、第1ケースに装着される第2ケースの開口孔に近接配置されているため、予め防塵用キャップ52が装着された接続ブロックに対して第2ケースを接近させて第1ケースに組み付ける際、該第2ケース18によってフック部60がボディ54側へと押圧されて回動する。その際、前記フック部60は、ボディ54と重なり合うことがなく回避可能な長手寸法及び幅寸法で形成されているため、前記フック部60とボディ54とがその厚さ方向に重なり合うことがなく、防塵用キャップ52の厚さ寸法の増大を抑制することができる。そのため、防塵用キャップ52の厚さが増大することによって生じる該防塵用キャップ52と第2ケース18との接触による組付性の低下が防止され、第1及び第2ケース16、18を良好に組み付けることができる。
【0063】
さらにまた、フック部60の長さを、該フック部60が回動してボディ54と略平行となった際に、第2ケース18の開口孔50の内周面より内側となるように設定しているため、前記第2ケース18が装着された際に、フック部60が第2ケース18の内壁面によって押さえられることがなく、前記フック部60をその弾発作用下に開口孔50を介して前記ボディ54に対して略直交した直立状態に好適に復帰させることができる。そのため、第2ケース18を装着した後に、フック部60を再び開口孔50の外部へと突出させることが可能となり、前記フック部60を利用して作業者が防塵用キャップ52を接続ブロック30から確実且つ簡便に離脱させることができる。
【0064】
次に、第2の実施の形態に係る車両用空調装置10に用いられる防塵用キャップ100を図7〜図9に示す。なお、上述した第1の実施の形態に係る防塵用キャップ52と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0065】
この第2の実施の形態に係る防塵用キャップ100では、ボディ54の一端部に接続されたフック部102に第1及び第2折曲部104、106を設け、前記ボディ54の一端部に対して若干だけ他端部側にオフセットさせて設けている点で、第1の実施の形態に係る防塵用キャップ52と相違している。
【0066】
この防塵用キャップ100では、ボディ54の一端部に対して断面略U字状のフック部102が接続され、前記フック部102は、前記ボディ54との接合部位を支点として他端部側に向かって所定角度だけ傾斜した第1折曲部104(図9参照)と、前記第1折曲部104に接合され、該第1折曲部104との境界部位と支点として略鉛直方向に折曲した第2折曲部106とを有する。すなわち、第2折曲部106は、ボディ54と略直交するように形成されている。
【0067】
このような構成とすることにより、フック部102が回動してボディ54と略平行となった際(図9中、二点鎖線形状)、第1折曲部104がボディ54との接合部位を支点として上方に向かって突出するように湾曲し、第2折曲部106が前記ボディ54と略平行となるように折曲される。
【0068】
このように、フック部102において第1及び第2折曲部104、106のそれぞれの長さを任意に調整し、該第1折曲部104と第2折曲部106との境界部位の位置を変更することにより、前記フック部102が回動してボディ54と略平行となる第2ケース18の装着時に、前記フック部102の先端位置を所望の位置に調整することが可能となる。そのため、ボディ54における他端部の位置、第2ケース18の開口孔50の内周面形状及び位置、第2ケース18の内壁面とボディ54との間のクリアランス等に応じて、前記第1及び第2折曲部104、106の設定条件(例えば、長さ寸法)を変更することにより、フック部102とボディ54部とがその厚さ方向に重なり合い、防塵用キャップ100の厚さ寸法が増大してしまうことを確実且つ簡便に防止することができる。
【0069】
また、図7及び図8に示されるように、フック部102の先端形状を、単一の半径からなる円弧状とすることにより、第1の実施の形態に係る防塵用キャップ52のフック部60と比較して、第2ケース18における開口孔50の内周面との離間距離をさらに大きく確保することが可能となるため、第2ケース18の内壁面に対する引っ掛かりをより一層確実に防止して、第2ケース18の装着後に開口孔50を介してフック部102を再び外部へと突出させることができる。
【0070】
次に、第3の実施の形態に係る車両用空調装置10に用いられる防塵用キャップ120を図10〜図13に示す。なお、上述した第1及び第2の実施の形態に係る防塵用キャップ52、100と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0071】
この第3の実施の形態に係る防塵用キャップ120では、ボディ122の挿通孔124に挿通されたボルト40をカバーするカバー部材126を前記ボディ122に対して一体的に係合させている点で、第1及び第2の実施の形態に係る防塵用キャップ52、100と相違している。
【0072】
この防塵用キャップ120では、挿通孔124の内周側に突出した一組のフランジ部128を備え、該フランジ部128は挿通孔124の周方向に沿って所定間隔離間した位置に設けられている(図13参照)。
【0073】
また、カバー部材126は、図12に示されるように、有底筒状に形成され、その開口した一端部がボルト40側となるように装着されると共に、他端部側には環状のリング部130が形成されている。すなわち、例えば、作業者がリング部130を接続ブロック30から離間させる方向に引張することにより、カバー部材126を介して前記防塵用キャップ120を接続ブロック30から離脱させることができる。
【0074】
このカバー部材126の一端部側には、その外周面から突出した第1及び第2鍔部132、134が設けられている。この第1及び第2鍔部132、134は、半径外方向に所定長だけ突出し、外周面の周方向に沿って所定間隔離間した位置に一組ずつ設けられている。
【0075】
第1鍔部132は、挿通孔124に挿入されるカバー部材126の一端部と略同一面上に形成されると共に、第2鍔部134は、該第1鍔部132に対して前記カバー部材126の軸線方向に所定間隔離間して形成されている(図12参照)。
【0076】
そして、図13に示されるように、第1鍔部132がフランジ部128の間となるようにカバー部材126を挿通孔124に挿入し、前記第1及び第2鍔部132、134をフランジ部128に対して接近させる方向に前記カバー部材126を所定角度だけ回転させる。これにより、第1鍔部132と第2鍔部134との間にフランジ部128がそれぞれ挿入され、該第2鍔部134の端部に形成された係止爪138(図13参照)がフランジ部128の端部に係合される。すなわち、第1及び第2鍔部132、134の離間距離は、フランジ部128の厚さ寸法と略同等若しくは若干だけ大きく設定されている。
【0077】
これにより、カバー部材126が挿通孔124に対して回転変位することが規制されると共に、第1及び第2鍔部132、134の間にフランジ部128が係合されているため、前記カバー部材126の軸線方向への変位が規制される。その結果、カバー部材126が挿通孔124を介してボディ122に一体的に装着された状態となる。
【0078】
このような構成とすることにより、接続ブロック30にボルト40が装着されている場合に、前記接続ブロック30から突出したボルト40をカバー部材126によって簡便且つ確実に囲繞することができるため、前記ボルト40の外周面に刻設されたねじ部40aに対して塵埃等が付着するのを防止することができ、それに伴って、前記ボルト40を介して接続ブロック30をエンジンルーム側の接続部(図示せず)に連結する際に、その連結作業を円滑に行うことができる。
【0079】
また、カバー部材126に設けられたリング部130を介して防塵用キャップ120を接続ブロック30から一体的且つ簡便に離脱させることができる。そのため、接続ブロック30を介して車両用空調装置10と圧縮機等に配管を介して接続された接続部とを連結する作業時間を短縮化することができる。
【0080】
さらに、防塵用キャップ120のボディ122に対してカバー部材126を所定角度だけ回転させるという簡便な組み付け作業で、前記ボディ122に対してカバー部材126を一体的に装着することが可能である。
【0081】
さらにまた、カバー部材126が不要な場合には、ボディ122の挿通孔124に対して前記カバー部材126を装着することなく、前記ボディ122及びフック部60を含む防塵用キャップ120として使用することができる。
【0082】
なお、本発明に係る車両用空調装置に用いられる防塵用キャップは、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0083】
10…車両用空調装置 12…ハウジング
14…エバポレータ 16…第1ケース
18…第2ケース 26…本体部
28a、28b…配管 30…接続ブロック
34…取付面 36…第1孔部
38…第2孔部 40…ボルト
42…ねじ孔 50…開口孔
52、100、120…防塵用キャップ
54、122…ボディ 56…第1嵌合部
58…第2嵌合部 60、102…フック部
64、124…挿通孔 104…第1折曲部
106…第2折曲部 126…カバー部材
128…フランジ部 130…リング部
132…第1鍔部 134…第2鍔部
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置において冷却手段の通路を閉塞する車両用空調装置に用いられる防塵用キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両用空調装置では、空気を冷却するエバポレータと、空気を加熱させるヒータコアとを備え、この冷却された空気と加熱された空気とを所望の混合比率で混合し、車室内に向かって開口した複数の吹出口から選択的に送風することにより、前記車室内の温度及び湿度の調整を行っている。
【0003】
上述したエバポレータを含む車両用空調装置は、車両隔壁によってエンジンルームと分離された車室内側に配置され、前記エンジンルーム内に配設された圧縮機等に対して配管及び接続部材を介して接続されている。そして、圧縮機によって圧縮された冷媒が、高圧側の配管及び接続部材を介してエバポレータへと導入され、該エバポレータにおいて空気との熱交換が行われた後に、低圧側の配管を介して再び前記圧縮機へと循環されている。
【0004】
このエバポレータでは、例えば、冷媒通路を構成する高圧側及び低圧側の配管の端部が単一のブロックに接続され、該ブロックには冷媒通路と連通した一組の接続孔が形成され前記ブロックを介してエンジンルーム側の配管及び接続部材に対して連結される。この際、ブロックの接続孔は、外部に向かって開口しているため、エバポレータをエンジンルーム側の接続部材と接続する前に、該接続孔を通じてエバポレータの内部に塵埃等が進入してしまうことが懸念される。
【0005】
このようなエバポレータ内への塵埃等の進入を防止するために、ブロックの接続孔を閉塞するキャップが知られている。このキャップは、一組の接続孔に対応してそれぞれ別個に設けられ、前記キャップの端面より突出した封鎖部を前記接続孔に挿入することにより、前記接続孔を封鎖している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−11733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に係る従来技術においては、ブロックに設けられた一組の接続孔に対してそれぞれ別個のキャップを装着するようにしているため、その装着作業が煩雑であると共に、部品点数が増大してしまうという問題がある。
【0008】
また、ブロックをエンジンルーム側の接続部に接続するにあたりキャップをブロックから取り外す際にも、前記キャップをそれぞれ別個に取り外す必要があり、前記キャップの脱着させる際の作業効率が低下するという問題がある。
【0009】
一方、前記キャップをブロックから離脱させる際には、該キャップの頭部を作業者が把持して該ブロックから離間させるように引張させているが、該キャップを前記ブロックに対してより一層簡便且つ確実に取り外したいという要望がある。
【0010】
本発明は、前記の種々の課題等を考慮してなされたものであり、冷却手段の接続部に対して簡便に着脱を行うことができると共に、該接続部の端面に開口して冷媒が流通する連通孔を確実に閉塞することが可能な車両用空調装置に用いられる防塵用キャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するために、本発明は、ハウジング内に空気を冷却して冷風を供給する冷却手段を備える車両用空調装置において、前記冷却手段には冷媒を循環させる一組の通路が接続され、該通路に対してそれぞれ接続され連通した連通孔を有する接続部に装着され、前記接続部の端面に開口した前記連通孔を閉塞する車両用空調装置に用いられる防塵用キャップであって、
前記接続部の端面に装着され、前記連通孔に挿入される一組の挿入部を有する本体部と、
前記本体部に対して所定角度傾斜して接合され、該本体部側に向かって回動自在に設けられるフック部と、
を備え、
前記フック部が前記本体部に向かって回動した際、前記接続部の端面において該フック部が前記本体部を回避した該本体部の外側に配置されることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、冷却手段における接続部の端面に形成された連通孔に対して一組の挿入部を有する防塵用キャップを装着することにより、単一の防塵用キャップによって一組の連通孔を簡便且つ確実に閉塞することができると共に、本体部に対して接合されたフック部を介して防塵用キャップを引張することにより、該防塵用キャップを接続部に対して確実且つ簡便に離脱させることができる。
【0013】
従って、接続部に対して防塵用キャップを着脱させる際の作業時間を短縮化することができると共に、前記防塵用キャップによって冷却手段内への塵埃等の進入を確実に阻止することができる。
【0014】
また、フック部が本体部側に回動した際、接続部の端面において前記フック部を前記本体部の外側となるように配置しているため、前記フック部と本体部とがその厚さ方向に重なり合うことを回避することができる。そのため、防塵用キャップの厚さ寸法が増大することが防止され、接続部を収容するようにハウジングを組み付ける際に、該ハウジングと防塵用キャップとがその厚さ方向において接触することがなく、前記ハウジングの組付性を良好に維持することができる。
【0015】
また、フック部に、本体部に対して接合される第1折曲部と、
前記第1折曲部に対して所定角度傾斜して折曲して接合される第2折曲部とを備えるとよい。これにより、フック部を第1及び第2折曲部から構成し、該第1及び第2折曲部のそれぞれの長さを任意に調整することにより、前記フック部が回動して本体部と略平行となった際の前記フック部の長さ、すなわち、該フック部の先端位置を調整することができる。その結果、ハウジング内に収容された防塵用キャップのフック部を、該ハウジングに接触しない長さに調整することにより、該フック部をハウジングに対して外部に突出させることができるため、前記フック部を介して防塵用キャップを簡便且つ確実に離脱させることができる。
【0016】
さらに、本体部に、接続部の端面に配設されたねじ部と対向し、該ねじ部が挿通される挿通孔を備えることにより、前記接続部に連結用のねじ部が設けられた場合においても、該ねじ部を挿通させる挿通孔を本体部に設けているため、前記連通孔を閉塞する際の支障となることがなく、本体部に形成された一組の挿入部によって挿通孔を確実に閉塞することが可能である。
【0017】
さらにまた、本体部に、接続部に装着されたねじ部に臨み、該ねじ部を囲繞するカバー部材を配設することにより、前記ねじ部に対して塵埃等が付着することを防止できるため、前記ねじ部を介して接続部と相手部材とを連結する際に、その連結作業を円滑に行うことができる。
【0018】
またさらに、フック部の長手寸法は、該フック部が回動して本体部と略平行となった際に、接続部の端面に臨むハウジングの開孔内となる長さに設定することにより、前記フック部が前記ハウジングに接触することが防止されるため、前記開孔内に設定された長さのフック部を該開孔を介して好適に外部に突出させることができる。
【0019】
また、フック部を、本体部と対向する略中央部が切り欠かれた中空状に形成することにより、前記本体部に対してフック部がその厚さ方向に重なり合うことが回避されるため、前記フック部が回動してハウジングが組み付けられる際において防塵用キャップの厚さ寸法の増大を抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0021】
すなわち、冷却手段における接続部の端面に形成された連通孔に対して防塵用キャップを装着することにより、一組の挿入部を介して単一の防塵用キャップで前記連通孔を簡便且つ確実に閉塞することができ、且つ、本体部に接合されたフック部を介して接続部から離間する方向に引張することにより、該防塵用キャップを確実且つ簡便に離脱させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る防塵用キャップが適用された車両用空調装置において、該車両用空調装置から防塵用キャップが離脱された状態を示す外観斜視図である。
【図2】図1の防塵用キャップがエバポレータの接続ブロックに装着された状態を示す拡大斜視図である。
【図3】図2の防塵用キャップが接続ブロックから離脱された状態を示す拡大斜視図である。
【図4】図1の防塵用キャップが接続ブロックに対して装着された状態を示す拡大平面図である。
【図5】図2の防塵用キャップがエバポレータの接続ブロックに装着された状態を示す一部断面拡大側面図である。
【図6】図5のフック部が第2ケースによってボディ側に押圧されて回動した状態を示す拡大側面図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る防塵用キャップがエバポレータの接続ブロックに装着された状態を示す拡大斜視図である。
【図8】図7の防塵用キャップが接続ブロックに対して装着された状態を示す拡大平面図である。
【図9】図7の防塵用キャップが接続ブロックに対して装着された状態を示す拡大側面図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態に係る防塵用キャップがエバポレータの接続ブロックに装着された状態を示す拡大斜視図である。
【図11】図10の防塵用キャップが接続ブロックに対して装着された状態を示す拡大平面図である。
【図12】図10の防塵用キャップが接続ブロックに対して装着された状態を示す一部断面拡大側面図である。
【図13】図10のボディからカバー部材を離脱させた状態を示す防塵用キャップ単体の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る車両用空調装置に用いられる防塵用キャップについて好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0024】
図1において、参照符号10は、本発明の実施の形態に係る防塵用キャップが適用される車両用空調装置を示す。
【0025】
この車両用空調装置10は、図1に示されるように、その内部に空気の各通路を構成するハウジング12と、前記ハウジング12の内部に配設され、空気を冷却するエバポレータ(冷却手段)14と、前記空気を加熱するヒータコア(図示せず)とを含む。
【0026】
ハウジング12は、エバポレータ14及びヒータコアが収容される第1ケース16と、該エバポレータ14の側部に装着される第2ケース18とから構成されている。
【0027】
第1ケース16には、該第1ケース16内で混合された混合風を車室内における乗員の頭部近傍に送風するフェイス吹出部20と、前記フェイス吹出部20と近接して車両のフロントガラス近傍に送風するデフロスタ吹出部22と、前記車室内における乗員の足元近傍に送風するフット吹出部24とを備える。
【0028】
また、第1ケース16には、略長方形の箱状に形成されるエバポレータ14の本体部26が開口部(図示せず)を介して挿入されている。このエバポレータ14は、本体部26の側部から延在し、図示しないエンジンルーム内に配置された圧縮機(例えば、コンプレッサ)によって圧縮された冷媒及び熱交換された後の冷媒が循環流通する一組の配管(通路)28a、28bと、前記配管28a、28bの端部に接続され、エンジンルーム側からの配管(図示せず)に対して接続される接続ブロック(接続部)30とを備える。このエンジンルーム側の配管は、図示しない圧縮機等に接続され、接続部を介してその端部が一体的に接続されている。そして、前記接続部が、車両用空調装置10における接続ブロック30と接続されることにより、前記接続部及び接続ブロック30を介して冷媒が配管内を循環流通する。
【0029】
すなわち、図示しない圧縮機によって圧縮された高圧の冷媒が、エンジンルーム側における一方の配管(図示せず)及び接続部を通じて接続ブロック30に導入され、膨張弁32によって低温・低圧の霧状にされた後に、該接続ブロック30に接続された一方の配管28aを通じてエバポレータ14の本体部26へと供給される。そして、本体部26においてハウジング12内を流通する空気との熱交換がなされた後に、再び低圧側となる他方の配管28b、接続ブロック30を介してエンジンルーム側の配管へと供給されて前記圧縮機へと循環される。
【0030】
なお、接続ブロック30及び配管28a、28bの一部には、第2ケース18内に収容されると共に、前記接続ブロック30は、高圧の冷媒を急激に膨張させることにより低圧として霧状とする膨張弁32が内蔵されている。
【0031】
接続ブロック30は、図1〜図6に示されるように、略直方体形状に形成され、その一端面側には本体部26に接続された一組の配管28a、28bが所定間隔離間して接続されると共に、他端面側には、エンジンルーム側に配置された圧縮機等に配管を介して接続された接続部(図示せず)が連結される取付面(端面)34(図3参照)を有する。なお、この接続ブロック30の取付面34は、車両用空調装置10において略鉛直方向に延在し、平面状に形成されている。
【0032】
この接続ブロック30には、取付面34側に開口し、図示しない圧縮機から高圧の冷媒が供給されると共に、一方の配管28aが接続される第1孔部36と、該第1孔部36と略水平方向に所定間隔離間し、他方の配管28bが接続されて本体部26から前記圧縮機へと循環される低圧の冷媒が流通する第2孔部38と、前記第1及び第2孔部36、38の間に形成され、前記接続ブロック30と接続部(図示せず)とを連結するボルト(ねじ部)40が螺合されるねじ孔42(図5参照)とを備える。この第1孔部36は、第2孔部38より小径に形成される。
【0033】
また、接続ブロック30の内部には、第1孔部36に導入された高圧の冷媒の圧力を制御する膨張弁32が設けられ、前記膨張弁32は、接続ブロック30の側部から突出したダイヤフラム部44を介して図示しない弁部を変位させることにより、前記圧力を制御してエバポレータ14の本体部26へと供給している。
【0034】
接続ブロック30は、第1孔部36と第2孔部38との内周径の違いに対応して、第1孔部36側が第2孔部38側より幅狭状に形成されている。
【0035】
ボルト40は、図5に示されるように、軸状に形成された長尺のスタッドボルトからなり、その一端部がねじ孔42に螺合されてナット46を介して接続ブロック30に固定されると共に、他端部が接続ブロック30の取付面34より所定長だけ突出している。
【0036】
第2ケース18は、図1に示されるように、エバポレータ14が装着される第1ケース16の開口部(図示せず)に対して側方から装着され、該開口部が前記第2ケース18によって閉塞される。そして、エバポレータ14の側部より突出した配管28a、28bの一部及び接続ブロック30がその内部に収容される。また、第2ケース18には、エバポレータ14の上流側となる位置に、図示しないブロアファンから空気が導入される導入通路48と、その内部に収容された前記接続ブロック30の取付面34に臨むように開口した開口孔50とが形成されている。この開口孔50は、図1〜図3に示されるように、接続ブロック30における取付面34の表面積より若干大きな開口面積を有する長孔状に形成されている。
【0037】
次に、接続ブロック30の取付面34に装着され、第1及び第2孔部(連通孔)36、38を閉塞する防塵用キャップ52について説明する。
【0038】
この防塵用キャップ52は、図2〜図5に示されるように、可撓性を有する樹脂製材料から形成され、接続ブロック30の取付面34に当接するボディ(本体部)54と、前記ボディ54に対して円筒状に突出し、該接続ブロック30の第1及び第2孔部36、38にそれぞれ挿入される第1及び第2嵌合部(挿入部)56、58と、前記ボディ54の端部に対して撓曲自在に設けられ、接続ブロック30から離脱させる際に作業者が引張可能なフック部60とを含む。
【0039】
ボディ54は、プレート状に形成され、図4に示されるように、その長手寸法L1が取付面34の長手寸法L2より若干だけ小さく形成されると共に、該長手寸法L1と略直交したボディ54の幅寸法W1は、取付面34の幅寸法W2と略同等に形成されている(W1≒W2)。なお、ボディ54とフック部60の厚さ寸法は略同等に形成されている(図5参照)。
【0040】
この第1及び第2嵌合部56、58は、図5及び図6に示されるように、ボディ54の長手方向に所定間隔離間して配置され、前記第1嵌合部56の外周径が、第1孔部36の内周径と略同等に形成され、その外周面には半径外方向に突出した複数本のリブ62が設けられている。このリブ62は、第1嵌合部56の外周面に沿って等角度毎に離間して設けられている。
【0041】
また、第2嵌合部58は、第1嵌合部56が第1孔部36に対して挿入された際に、接続ブロック30における第2孔部38と対向する位置に形成されると共に、該第2孔部38の内周径と略同等に形成されている。そして、第2嵌合部58の外周面には、半径外方向に突出した複数本のリブ62が設けられ、該リブ62が、第2嵌合部58の外周面に沿って等角度毎で離間して配設されている。
【0042】
すなわち、第1及び第2孔部36、38に対して第1及び第2嵌合部56、58がそれぞれ挿入される際に、リブ62が前記第1及び第2孔部36、38の内周面に沿って摺動しながら変位することとなるため、前記第1及び第2孔部36、38の内周径より若干だけ大きく形成された前記リブ62を介して第1及び第2嵌合部56、58が該第1及び第2孔部36、38に対して嵌合される。
【0043】
また、ボディ54の略中央部には、図2及び図4に示されるように、第1嵌合部56と第2嵌合部58との間となる位置に挿通孔64が形成され、前記挿通孔64には、ねじ孔42に螺合されたボルト40及びナット46が挿通される。前記挿通孔64の直径は、前記ボルト40及び該ボルト40を固定するナット46の外周径より大きく設定される。
【0044】
一方、第2嵌合部58が設けられるボディ54の一端部には、一組のアーム部66を介してフック部60が設けられ、前記フック部60は、該フック部60とアーム部66との境界部位を支点として前記ボディ54に対して略直交した直立状態から該ボディ54側に接近するように回動自在に設けられている。このフック部60は、前記直立状態(図5参照)からボディ54に重なった略水平状態(図6参照)となるまで約90°の範囲内で回動可能である。また、フック部60は、その略中央部が長方形状に切り欠かれた断面略U字状に形成されている。
【0045】
すなわち、フック部60は、該フック部60に対して負荷が付与されていない通常時に、ボディ54との間に生じる弾発作用下に該ボディ54に対して略直交した直立状態に保持され(図5参照)、該フック部60に対してボディ54側に向かった負荷が付与された場合には、該フック部60その弾発力に抗して該ボディ54側に向かって最大約90°だけ回動して略水平状態となる(図6参照)。
【0046】
アーム部66は、ボディ54の一端部から離間する方向に向かって徐々に拡幅するように二股状に形成されているため、前記アーム部66を介して接続されたフック部60の外幅寸法W3及び内幅寸法W4は、ボディ54の幅寸法W1より大きく設定される(W3、W4>W1)。これにより、フック部60が回動してボディ54と略平行に重なり合った際に、該フック部60とボディ54とがその幅方向に重なり合うことが回避される(図4参照)。
【0047】
第1嵌合部56が設けられるボディ54の他端部側は、その先端に向かって徐々に先細となるテーパ状に形成されると共に、その端部が円弧状に形成されている。これにより、フック部60が回動してボディ54と重なった略水平状態において、該フック部60の先端とボディ54の他端部とが重なり合わないよう回避される。
【0048】
これにより、防塵用キャップ52は、フック部60を回動させてボディ54と略平行状態とした際に、該ボディ54とフック部60とがその長手方向及び幅方向に重なり合うことを回避可能な形状に形成されている。そのため、フック部60を略水平状態まで回動させた際に、防塵用キャップ52における厚さ方向の寸法が増大することがない。
【0049】
さらに、フック部60の長さは、該フック部60が回動してボディ54と略平行とした際に、その先端部が第2ケース18の開口孔50より内周側に位置するように設定される(図4参照)。
【0050】
本発明の実施の形態に係る防塵用キャップ52が適用される車両用空調装置10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に前記防塵用キャップ52をエバポレータ14の接続ブロック30に対して装着した後に、第2ケース18を第1ケース16に対して組み付ける場合について説明する。
【0051】
先ず、第1ケース16内に本体部26が収容されたエバポレータ14に対して、その接続ブロック30の取付面34に防塵用キャップ52を装着する。詳細には、防塵用キャップ52の第1及び第2嵌合部56、58が前記取付面34側となるように把持し、該第1嵌合部56を第1孔部36に挿入すると同時に、第2嵌合部58を第2孔部38へと挿入する。この際、第1及び第2嵌合部56、58のリブ62が、第1及び第2孔部36、38の内周面に沿って摺動しながら挿入されるため、前記第1及び第2嵌合部56、58が第1及び第2孔部36、38に対して嵌合され、防塵用キャップ52の接続ブロック30に対する脱抜が防止される。
【0052】
また、防塵用キャップ52を接続ブロック30に装着しておくことにより、第1及び第2孔部36、38を通じてエバポレータ14の内部に外部から塵埃等が進入することが確実に阻止される。
【0053】
次に、第1ケース16に対して接続ブロック30側となる側方から第2ケース18を組み付ける。この場合には、開口孔50が接続ブロック30の取付面34側となるように第2ケース18を第1ケース16に向かって略水平方向に接近させ、該第1ケース16の開口部(図示せず)に対して第2ケース18の端部を装着すると共に、該第2ケース18の内部に接続ブロック30及び配管28a、28bの一部を収容する。
【0054】
この際、第2ケース18が第1ケース16側に向かって接近するに伴って、図6に示されるように、該第2ケース18における開口孔50近傍の内壁面18aが、フック部60に当接し、該フック部60をボディ54側に向かって押圧しながら変位することとなる。換言すれば、フック部60が、アーム部66との境界部位を支点としてボディ54側に向かって徐々に回動しながら接近して該ボディ54と略平行な略水平状態となる。
【0055】
そして、さらに第2ケース18を第1ケース16側へと変位させ、前記第2ケース18が第1ケース16の側部に装着された際に、図5に示されるように、フック部60の先端部は、第2ケース18の開口孔50より内周側となるようにその長さが設定されているため、該第2ケース18の内壁面18aによってフック部60が下方に向かって押圧されていた状態が解除され、該フック部60がその弾発作用下にボディ54から離間する方向に回動する。これにより、フック部60が、開口孔50を介してボディ54に対して略直交した直立状態に復帰する。
【0056】
最後に、防塵用キャップ52の挿通孔64を介してねじ孔42にボルト40の一端部側を螺合し、ナット46で締め付けることにより、前記ボルト40が取付面34より前記防塵用キャップ52側に突出した状態で固定される。この場合にも、接続ブロック30の第1及び第2孔部36、38は、防塵用キャップ52によって確実に閉塞されているため、ボルト40の装着時に発生した塵埃等が進入することが阻止される。
【0057】
そして、このように防塵用キャップ52が装着された接続ブロック30を、エンジンルーム側の圧縮機等に接続された接続部(図示せず)に接続する前に、図示しない作業者が第2ケース18の開口孔50から外部に突出したフック部60を把持し、前記接続ブロック30から離間する方向に引張することにより、第1及び第2嵌合部56、58を介して前記接続ブロック30に嵌合されていた防塵用キャップ52が離脱する。
【0058】
前記防塵用キャップ52が離脱された取付面34に対して、配管を介して図示しない圧縮機等に接続された接続部(図示せず)を接続ブロック30の取付面34に対して当接させ、前記接続ブロック30のボルト40を挿通させた後に、締付部材によって連結することにより、車両用空調装置10におけるエバポレータ14とエンジンルームに配置された圧縮機等が接続ブロック30及び接続部を通じて接続される。
【0059】
以上のように、第1の実施の形態では、エバポレータ14における接続ブロック30の取付面34に対して第1及び第2孔部36、38を閉塞可能な防塵用キャップ52を装着すると共に、該防塵用キャップ52のボディ54に回動自在なフック部60を設け、第2ケース18を第1ケース16に対して組み付けた後に、接続ブロック30が臨む前記第2ケース18の開口孔50から前記フック部60を外部へと突出させている。これにより、接続ブロック30における一組の第1及び第2孔部36、38を、単一の防塵用キャップ52を装着することにより同時且つ簡便に閉塞することができると共に、該防塵用キャップ52が不要となった際には、フック部60を引張することにより簡便に離脱させることができる。
【0060】
その結果、車両用空調装置10を、エンジンルーム内の圧縮機等に接続された接続部に対して連結する際に、接続ブロック30に装着された防塵用キャップ52を離脱させる際の作業時間を短縮化することができると共に、その連結作業を行う直前まで防塵用キャップ52を装着しておくことが可能であるため、エバポレータ14内への塵埃等の進入を極力阻止することができる。
【0061】
また、接続ブロック30にその取付面34から突出した締結用のボルト40が装着されている場合にも、防塵用キャップ52に該ボルト40が挿通可能な挿通孔64を設けることにより、前記ボルト40を好適に回避させることができるため、該ボルト40を備える接続ブロック30においても、前記防塵用キャップ52によって第1及び第2孔部36、38を確実に閉塞することが可能である。
【0062】
さらに、防塵用キャップ52は、第1ケースに装着される第2ケースの開口孔に近接配置されているため、予め防塵用キャップ52が装着された接続ブロックに対して第2ケースを接近させて第1ケースに組み付ける際、該第2ケース18によってフック部60がボディ54側へと押圧されて回動する。その際、前記フック部60は、ボディ54と重なり合うことがなく回避可能な長手寸法及び幅寸法で形成されているため、前記フック部60とボディ54とがその厚さ方向に重なり合うことがなく、防塵用キャップ52の厚さ寸法の増大を抑制することができる。そのため、防塵用キャップ52の厚さが増大することによって生じる該防塵用キャップ52と第2ケース18との接触による組付性の低下が防止され、第1及び第2ケース16、18を良好に組み付けることができる。
【0063】
さらにまた、フック部60の長さを、該フック部60が回動してボディ54と略平行となった際に、第2ケース18の開口孔50の内周面より内側となるように設定しているため、前記第2ケース18が装着された際に、フック部60が第2ケース18の内壁面によって押さえられることがなく、前記フック部60をその弾発作用下に開口孔50を介して前記ボディ54に対して略直交した直立状態に好適に復帰させることができる。そのため、第2ケース18を装着した後に、フック部60を再び開口孔50の外部へと突出させることが可能となり、前記フック部60を利用して作業者が防塵用キャップ52を接続ブロック30から確実且つ簡便に離脱させることができる。
【0064】
次に、第2の実施の形態に係る車両用空調装置10に用いられる防塵用キャップ100を図7〜図9に示す。なお、上述した第1の実施の形態に係る防塵用キャップ52と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0065】
この第2の実施の形態に係る防塵用キャップ100では、ボディ54の一端部に接続されたフック部102に第1及び第2折曲部104、106を設け、前記ボディ54の一端部に対して若干だけ他端部側にオフセットさせて設けている点で、第1の実施の形態に係る防塵用キャップ52と相違している。
【0066】
この防塵用キャップ100では、ボディ54の一端部に対して断面略U字状のフック部102が接続され、前記フック部102は、前記ボディ54との接合部位を支点として他端部側に向かって所定角度だけ傾斜した第1折曲部104(図9参照)と、前記第1折曲部104に接合され、該第1折曲部104との境界部位と支点として略鉛直方向に折曲した第2折曲部106とを有する。すなわち、第2折曲部106は、ボディ54と略直交するように形成されている。
【0067】
このような構成とすることにより、フック部102が回動してボディ54と略平行となった際(図9中、二点鎖線形状)、第1折曲部104がボディ54との接合部位を支点として上方に向かって突出するように湾曲し、第2折曲部106が前記ボディ54と略平行となるように折曲される。
【0068】
このように、フック部102において第1及び第2折曲部104、106のそれぞれの長さを任意に調整し、該第1折曲部104と第2折曲部106との境界部位の位置を変更することにより、前記フック部102が回動してボディ54と略平行となる第2ケース18の装着時に、前記フック部102の先端位置を所望の位置に調整することが可能となる。そのため、ボディ54における他端部の位置、第2ケース18の開口孔50の内周面形状及び位置、第2ケース18の内壁面とボディ54との間のクリアランス等に応じて、前記第1及び第2折曲部104、106の設定条件(例えば、長さ寸法)を変更することにより、フック部102とボディ54部とがその厚さ方向に重なり合い、防塵用キャップ100の厚さ寸法が増大してしまうことを確実且つ簡便に防止することができる。
【0069】
また、図7及び図8に示されるように、フック部102の先端形状を、単一の半径からなる円弧状とすることにより、第1の実施の形態に係る防塵用キャップ52のフック部60と比較して、第2ケース18における開口孔50の内周面との離間距離をさらに大きく確保することが可能となるため、第2ケース18の内壁面に対する引っ掛かりをより一層確実に防止して、第2ケース18の装着後に開口孔50を介してフック部102を再び外部へと突出させることができる。
【0070】
次に、第3の実施の形態に係る車両用空調装置10に用いられる防塵用キャップ120を図10〜図13に示す。なお、上述した第1及び第2の実施の形態に係る防塵用キャップ52、100と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0071】
この第3の実施の形態に係る防塵用キャップ120では、ボディ122の挿通孔124に挿通されたボルト40をカバーするカバー部材126を前記ボディ122に対して一体的に係合させている点で、第1及び第2の実施の形態に係る防塵用キャップ52、100と相違している。
【0072】
この防塵用キャップ120では、挿通孔124の内周側に突出した一組のフランジ部128を備え、該フランジ部128は挿通孔124の周方向に沿って所定間隔離間した位置に設けられている(図13参照)。
【0073】
また、カバー部材126は、図12に示されるように、有底筒状に形成され、その開口した一端部がボルト40側となるように装着されると共に、他端部側には環状のリング部130が形成されている。すなわち、例えば、作業者がリング部130を接続ブロック30から離間させる方向に引張することにより、カバー部材126を介して前記防塵用キャップ120を接続ブロック30から離脱させることができる。
【0074】
このカバー部材126の一端部側には、その外周面から突出した第1及び第2鍔部132、134が設けられている。この第1及び第2鍔部132、134は、半径外方向に所定長だけ突出し、外周面の周方向に沿って所定間隔離間した位置に一組ずつ設けられている。
【0075】
第1鍔部132は、挿通孔124に挿入されるカバー部材126の一端部と略同一面上に形成されると共に、第2鍔部134は、該第1鍔部132に対して前記カバー部材126の軸線方向に所定間隔離間して形成されている(図12参照)。
【0076】
そして、図13に示されるように、第1鍔部132がフランジ部128の間となるようにカバー部材126を挿通孔124に挿入し、前記第1及び第2鍔部132、134をフランジ部128に対して接近させる方向に前記カバー部材126を所定角度だけ回転させる。これにより、第1鍔部132と第2鍔部134との間にフランジ部128がそれぞれ挿入され、該第2鍔部134の端部に形成された係止爪138(図13参照)がフランジ部128の端部に係合される。すなわち、第1及び第2鍔部132、134の離間距離は、フランジ部128の厚さ寸法と略同等若しくは若干だけ大きく設定されている。
【0077】
これにより、カバー部材126が挿通孔124に対して回転変位することが規制されると共に、第1及び第2鍔部132、134の間にフランジ部128が係合されているため、前記カバー部材126の軸線方向への変位が規制される。その結果、カバー部材126が挿通孔124を介してボディ122に一体的に装着された状態となる。
【0078】
このような構成とすることにより、接続ブロック30にボルト40が装着されている場合に、前記接続ブロック30から突出したボルト40をカバー部材126によって簡便且つ確実に囲繞することができるため、前記ボルト40の外周面に刻設されたねじ部40aに対して塵埃等が付着するのを防止することができ、それに伴って、前記ボルト40を介して接続ブロック30をエンジンルーム側の接続部(図示せず)に連結する際に、その連結作業を円滑に行うことができる。
【0079】
また、カバー部材126に設けられたリング部130を介して防塵用キャップ120を接続ブロック30から一体的且つ簡便に離脱させることができる。そのため、接続ブロック30を介して車両用空調装置10と圧縮機等に配管を介して接続された接続部とを連結する作業時間を短縮化することができる。
【0080】
さらに、防塵用キャップ120のボディ122に対してカバー部材126を所定角度だけ回転させるという簡便な組み付け作業で、前記ボディ122に対してカバー部材126を一体的に装着することが可能である。
【0081】
さらにまた、カバー部材126が不要な場合には、ボディ122の挿通孔124に対して前記カバー部材126を装着することなく、前記ボディ122及びフック部60を含む防塵用キャップ120として使用することができる。
【0082】
なお、本発明に係る車両用空調装置に用いられる防塵用キャップは、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0083】
10…車両用空調装置 12…ハウジング
14…エバポレータ 16…第1ケース
18…第2ケース 26…本体部
28a、28b…配管 30…接続ブロック
34…取付面 36…第1孔部
38…第2孔部 40…ボルト
42…ねじ孔 50…開口孔
52、100、120…防塵用キャップ
54、122…ボディ 56…第1嵌合部
58…第2嵌合部 60、102…フック部
64、124…挿通孔 104…第1折曲部
106…第2折曲部 126…カバー部材
128…フランジ部 130…リング部
132…第1鍔部 134…第2鍔部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内に空気を冷却して冷風を供給する冷却手段を備える車両用空調装置において、前記冷却手段には冷媒を循環させる一組の通路が接続され、該通路に対してそれぞれ接続され連通した連通孔を有する接続部に装着され、前記接続部の端面に開口した前記連通孔を閉塞する車両用空調装置に用いられる防塵用キャップであって、
前記接続部の端面に装着され、前記連通孔に挿入される一組の挿入部を有する本体部と、
前記本体部に対して所定角度傾斜して接合され、該本体部側に向かって回動自在に設けられるフック部と、
を備え、
前記フック部が前記本体部に向かって回動した際、前記接続部の端面において該フック部が前記本体部を回避した該本体部の外側に配置されることを特徴とする車両用空調装置に用いられる防塵用キャップ。
【請求項2】
請求項1記載の防塵用キャップにおいて、
前記フック部は、前記本体部に対して接合される第1折曲部と、
前記第1折曲部に対して所定角度傾斜して折曲して接合される第2折曲部と、
を備えることを特徴とする車両用空調装置に用いられる防塵用キャップ。
【請求項3】
請求項1又は2記載の防塵用キャップにおいて、
前記本体部は、前記接続部の端面に配設されたねじ部と対向し、該ねじ部が挿通される挿通孔を備えることを特徴とする車両用空調装置に用いられる防塵用キャップ。
【請求項4】
請求項3記載の防塵用キャップにおいて、
前記本体部には、前記接続部に装着されたねじ部に臨み、該ねじ部を囲繞するカバー部材が配設されることを特徴とする車両用空調装置に用いられる防塵用キャップ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の防塵用キャップにおいて、
前記フック部の長手寸法は、該フック部が回動して前記本体部と略平行となった際に、前記接続部の端面に臨むハウジングの開孔内となる長さに設定されることを特徴とする車両用空調装置に用いられる防塵用キャップ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の防塵用キャップにおいて、
前記フック部は、前記本体部と対向する略中央部が切り欠かれた中空状に形成されることを特徴とする車両用空調装置に用いられる防塵用キャップ。
【請求項1】
ハウジング内に空気を冷却して冷風を供給する冷却手段を備える車両用空調装置において、前記冷却手段には冷媒を循環させる一組の通路が接続され、該通路に対してそれぞれ接続され連通した連通孔を有する接続部に装着され、前記接続部の端面に開口した前記連通孔を閉塞する車両用空調装置に用いられる防塵用キャップであって、
前記接続部の端面に装着され、前記連通孔に挿入される一組の挿入部を有する本体部と、
前記本体部に対して所定角度傾斜して接合され、該本体部側に向かって回動自在に設けられるフック部と、
を備え、
前記フック部が前記本体部に向かって回動した際、前記接続部の端面において該フック部が前記本体部を回避した該本体部の外側に配置されることを特徴とする車両用空調装置に用いられる防塵用キャップ。
【請求項2】
請求項1記載の防塵用キャップにおいて、
前記フック部は、前記本体部に対して接合される第1折曲部と、
前記第1折曲部に対して所定角度傾斜して折曲して接合される第2折曲部と、
を備えることを特徴とする車両用空調装置に用いられる防塵用キャップ。
【請求項3】
請求項1又は2記載の防塵用キャップにおいて、
前記本体部は、前記接続部の端面に配設されたねじ部と対向し、該ねじ部が挿通される挿通孔を備えることを特徴とする車両用空調装置に用いられる防塵用キャップ。
【請求項4】
請求項3記載の防塵用キャップにおいて、
前記本体部には、前記接続部に装着されたねじ部に臨み、該ねじ部を囲繞するカバー部材が配設されることを特徴とする車両用空調装置に用いられる防塵用キャップ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の防塵用キャップにおいて、
前記フック部の長手寸法は、該フック部が回動して前記本体部と略平行となった際に、前記接続部の端面に臨むハウジングの開孔内となる長さに設定されることを特徴とする車両用空調装置に用いられる防塵用キャップ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の防塵用キャップにおいて、
前記フック部は、前記本体部と対向する略中央部が切り欠かれた中空状に形成されることを特徴とする車両用空調装置に用いられる防塵用キャップ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−30600(P2010−30600A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263185(P2009−263185)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【分割の表示】特願2005−271609(P2005−271609)の分割
【原出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【出願人】(000141901)株式会社ケーヒン (1,140)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【分割の表示】特願2005−271609(P2005−271609)の分割
【原出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【出願人】(000141901)株式会社ケーヒン (1,140)
【Fターム(参考)】
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