説明

車両用空調装置のエア吹出構造体

【課題】部品点数を減らすとともに、吹出口から吹き出された空気(空調風)の指向性を高めることができる車両用空調装置のエア吹出構造体を提供する。
【解決手段】車両用空調装置のエア吹出構造体15は、中央縦フィン41に中央横フィン42が一体に設けられ、左縦フィン51に上下の左横フィン52,53が一体に設けられ、右縦フィン61に上下の右横フィン62,63が一体に設けられている。中央横フィン42で中央領域65が形成され、左横フィン52,53や右横フィン62,63で左右の領域66,67が形成されている。中央領域65が左右の領域66,67より大きくなるように、中央横フィン42を左横フィン52,53や右横フィン62,63と異なる構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内の空調をおこなうエアコンディショナユニット(以下、「エアコンユニット」という)に吹出口が連結され、吹出口から空調された空気を車室内に吹き出す車両用空調装置のエア吹出構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用空調装置のエア吹出構造体は、車室内の空調をおこなうエアコンユニットにダクトを介して吹出口が連結され、吹出口に複数の縦フィンおよび複数の横フィンが設けられている。
複数の縦フィンは、それぞれが上下方向に延びるとともに車体幅方向に所定間隔をおいてフィンの向きを調整可能に配置されている。
また、複数の横フィンは、それぞれが車体幅方向に延びるとともに上下方向に所定間隔をおいてフィンの向きを調整可能に配置されている。
【0003】
この車両用空調装置のエア吹出構造体によれば、エアコンユニットで空調された空気を吹出口から車室内に吹き出す際に、縦フィンや横フィンの向きを調整することで、吹出口から吹き出す空気(空調風)の指向性を規定することが可能である(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−106968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1の車両用空調装置のエア吹出構造体は、縦フィンと横フィンとがそれぞれ別部材で形成され、縦フィンや横フィンが吹出口にそれぞれ個別に設けられている。
このため、フィンの部品点数が多くなり、フィンの部品管理や組付け作業に手間がかかり、この観点から改良の余地が残されていた。
【0006】
また、縦フィンが車体幅方向に所定間隔をおいて設けられるとともに、横フィンが上下方向に所定間隔をおいて設けられることで、吹出口の全域が略均等に開口されている。
よって、エアコンユニットで空調された空気を吹出口から車室内に吹き出す際に、吹出口の全域から空気が略均等に吹き出される。
このため、吹出口の全域から吹き出された空気が拡散する可能性があり、吹き出された空気(空調風)の指向性をさらに高めるという観点から改良の余地が残されていた。
【0007】
本発明は、部品点数を減らすとともに、吹出口から吹き出された空気(空調風)の指向性を高めることができる車両用空調装置のエア吹出構造体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、車室に空調された空気を供給するエアコンディショナユニットを備え、前記エアコンディショナユニットにダクトを介して吹出口が連結され、前記吹出口から前記車室内に前記空調された空気を吹き出す車両用空調装置のエア吹出構造体において、前記吹出口に、上下方向に張り出した縦フィンが車体幅方向に所定間隔をおいて設けられ、前記縦フィンが、前記吹出口の中央に設けられた中央縦フィンと、前記中央の他に設けられた他の縦フィンとを有し、前記中央縦フィンに、車体幅方向に張り出した中央横フィンが一体に設けられ、前記他の縦フィンに、車体幅方向に張り出した他の横フィンが一体に設けられ、前記中央横フィンで前記吹出口の中央に中央空間が形成されるとともに、前記他の横フィンで前記中央の他に他の空間が形成され、前記中央空間が前記他の空間より大きくなるように前記中央横フィンおよび前記他の横フィンを異なる構成としたことを特徴とする。
【0009】
請求項2は、前記中央横フィンおよび前記他の横フィンは、前記ダクト側から前記車室側に向かって車体幅方向に広がるように形成されたことを特徴とする。
【0010】
請求項3は、車室に空調された空気を供給するエアコンディショナユニットを備え、前記エアコンディショナユニットにダクトを介して吹出口が連結され、前記吹出口から前記車室内に前記空調された空気を吹き出す車両用空調装置のエア吹出構造体において、前記吹出口に、車体幅方向に延びる横フィンが上下方向に所定間隔をおいて設けられ、前記横フィンが、前記吹出口の中央に設けられた中央横フィンと、前記中央の他に設けられた他の横フィンとを有し、前記中央横フィンに、上下方向に張り出した中央縦フィンが一体に設けられ、前記他の横フィンに、上下方向に張り出した他の縦フィンが一体に設けられ、前記中央縦フィンで前記吹出口の中央に中央空間が形成されるとともに、前記他の縦フィンで前記中央の他に他の空間が形成され、前記中央空間が前記他の空間より大きくなるように前記中央縦フィンおよび前記他の縦フィンを異なる構成としたことを特徴とする。
【0011】
請求項4は、前記中央縦フィンおよび前記他の縦フィンは、前記ダクト側から前記車室側に向かって上下方向に広がるように形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、中央縦フィンに中央横フィンを一体に設けるとともに、他の縦フィンに他の横フィンを一体に設けた。
このように、縦フィンに横フィンを一体に設けることで、フィンの部品点数を減らすことができるので、フィンの部品管理や組付け作業の容易化を図ることができる。
【0013】
さらに、中央横フィンで中央空間を形成するとともに、他の横フィンで他の空間を形成した。そして、中央空間が他の空間より大きくなるように中央横フィンおよび他の横フィンを異なる構成とした。
【0014】
このように、中央空間を他の空間より大きくすることで、エアコンディショナユニット(エアコンユニット)で空調された空気を吹出口から車室内に吹き出す際に、中央空間が他の空間より低圧領域となる。
よって、他の空間に導かれた空気を、低圧領域の中央空間に導くことができる。
これにより、ダクトから導かれた空気を中央空間に集めることができるので、吹出口から吹き出された空気(空調風)の指向性を高めることができる。
【0015】
請求項2に係る発明では、中央横フィンおよび他の横フィンの形状を、ダクト側から車室側に向かって車体幅方向に広がるように形成することで、各横フィンの車体幅方向の寸法をダクト側で小さく抑えることができる。
よって、縦フィンの向きを調整した際に、縦フィンが中央横フィンや他の横フィンに干渉することを防ぐことができる。これにより、縦フィンの向きを調整する際の調整範囲を大きく確保することができ、設計の自由度を高めることができる。
【0016】
さらに、中央横フィンおよび他の横フィンの形状を、ダクト側から車室側に向かって車体幅方向に広がるように形成することで、各横フィンの車体幅方向の寸法を、ダクト側で小さく、車室側で大きく確保できる。
中央横フィンや他の横フィンの車体幅方向の寸法をダクト側で小さくすることで、ダクト側の空間を比較的低圧領域にすることができ、ダクト側の空間にダクトから空気を円滑に導く(流す)ことができる。
【0017】
一方、中央横フィンや他の横フィンの車体幅方向の寸法を車室側で大きく確保することで、車室側の空間を高圧領域とすることができ、車室側の空間に導かれた空気を中央空間(低圧領域)に円滑に導くことができる。
このように、ダクト側の空間に空気を円滑に導き、車室側の空間に導いた空気を中央空間(低圧領域)に円滑に導くことで、中央空間に空気を良好に集めて空気(空調風)の指向性を一層高めることができる。
【0018】
請求項3に係る発明では、請求項1と同様の効果を得ることができる。
すなわち、請求項3に係る発明では、中央横フィンに中央縦フィンを一体に設けるとともに、他の横フィンに他の縦フィンを一体に設けた。
このように、横フィンに縦フィンを一体に設けることで、フィンの部品点数を減らすことができるので、フィンの部品管理や組付け作業の容易化を図ることができる。
【0019】
さらに、中央縦フィンで中央空間を形成するとともに、他の縦フィンで他の空間を形成した。そして、中央空間が他の空間より大きくなるように中央縦フィンおよび他の縦フィンを異なる構成とした。
【0020】
このように、中央空間を他の空間より大きくすることで、エアコンユニットで空調された空気を吹出口から車室内に吹き出す際に、中央空間が他の空間より低圧領域となる。
よって、他の空間に導かれた空気を、低圧領域の中央空間に導くことができる。
これにより、ダクトから導かれた空気を中央空間に集めることができるので、吹出口から吹き出された空気(空調風)の指向性を高めることができる。
【0021】
請求項4に係る発明では、請求項2と同様の効果を得ることができる。
すなわち、請求項4に係る発明では、中央縦フィンおよび他の縦フィンの形状を、ダクト側から車室側に向かって上下方向に広がるように形成することで、各縦フィンの上下方向の寸法をダクト側で小さく抑えることができる。
よって、横フィンの向きを調整した際に、横フィンが中央縦フィンや他の縦フィンに干渉することを防ぐことができる。これにより、横フィンの向きを調整する際の調整範囲を大きく確保することができ、設計の自由度を高めることができる。
【0022】
さらに、中央縦フィンおよび他の縦フィンの形状を、ダクト側から車室側に向かって上下方向に広がるように形成することで、各縦フィンの上下方向の寸法を、ダクト側で小さく、車室側で大きく確保できる。
中央縦フィンや他の縦フィンの上下方向の寸法をダクト側で小さくすることで、ダクト側の空間を比較的低圧領域にすることができ、ダクト側の空間にダクトから空気を円滑に導く(流す)ことができる。
【0023】
一方、中央縦フィンや他の縦フィンの上下方向の寸法を車室側で大きく確保することで、車室側の空間を高圧領域とすることができ、車室側の空間に導かれた空気を中央空間(低圧領域)に円滑に導くことができる。
このように、ダクト側の空間に空気を円滑に導き、車室側の空間に導いた空気を中央空間(低圧領域)に円滑に導くことで、中央空間に空気を良好に集めて空気(空調風)の指向性を一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る実施例1の車両用空調装置のエア吹出構造体を備えたインストルメントパネルを示す斜視図である。
【図2】図1の車両用空調装置のエア吹出構造体を示す斜視図である。
【図3】図2の車両用空調装置のエア吹出構造体を示す分解斜視図である。
【図4】図3のフィンユニットを示す分解斜視図である。
【図5】図2の5矢視図である。
【図6】図5の6−6線断面図である。
【図7】図5の7−7線断面図である。
【図8】図2の8−8線断面図である。
【図9】図8のフィンユニットを車体幅方向に傾けた状態を示す断面図である。
【図10】図10(a)は図6の車両用空調装置のエア吹出構造体を上向きに傾けた状態を示す断面図、図10(b)は図7の車両用空調装置のエア吹出構造体を上向きに傾けた状態を示す断面図である。
【図11】図11(a)は実施例1のフィンユニットで吹出口の中央に空気を集める例を説明する断面図、図11(b)は図11(a)の正面図である。
【図12】実施例1のフィンユニットで吹出口の中央に空気を集める例を説明する斜視図である。
【図13】実施例1のフィンユニットを車体幅方向に傾けた状態で吹出口の中央に空気を集める例を説明する断面図である。
【図14】本発明に係る実施例2の車両用空調装置のエア吹出構造体を示す分解斜視図である。
【図15】本発明に係る実施例3の左吹出手段を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」は運転者から見た方向にしたがい、前側をFr、後側をRr、左側をL、右側をRとして示す。
【実施例1】
【0026】
実施例1に係る車両用空調装置のエア吹出構造体15について説明する。
図1に示すように、車両用空調装置10は、インストルメントパネル11の車体前方側に設けられたエアコンユニット(エアコンディショナユニット)12と、エアコンユニット12にダクト13を介して連結された車両用空調装置のエア吹出構造体15とを備えている。
エアコンユニット12は、インストルメントパネル11で仕切られた車室17内の空調をおこなうユニットである。
【0027】
車両用空調装置のエア吹出構造体15は、インストルメントパネル11の車体幅方向中央11aに設けられた一対の中央吹出手段21と、インストルメントパネル11の左側部11bに設けられた左吹出手段22と、インストルメントパネル11の右側部11cに設けられた右吹出手段23とを備えている。
【0028】
一対の中央吹出手段21は、エアコンユニット12で空調された空気を車室17内の車幅方向中央に向けて矢印の如く吹き出す換気(ベンチレーション)用の吹出手段である。
左吹出手段22は、エアコンユニット12で空調された空気を車室17内の左側部に向けて矢印の如く吹き出す換気用の吹出手段である。
【0029】
右吹出手段23は、エアコンユニット12で空調された空気を車室17内の右側部に向けて矢印の如く吹き出す換気用の吹出手段である。
一対の中央吹出手段21や左右の吹出手段22,23から空気(空調された空気)を車室17内に吹き出すことで、車室17内の空調をおこなうことができる。
【0030】
ここで、一対の中央吹出手段21や左右の吹出手段22,23はそれぞれが同様に構成されている。よって、実施例1では左吹出手段22について説明し、一対の中央吹出手段21や右吹出手段23についての説明を省略する。
【0031】
図2〜図3に示すように、左吹出手段22は、インストルメントパネル11の左側部11b(図1参照)に設けられた吹出口(ハウジング)25と、吹出口25に設けられたフィンユニット(ルーバーユニット)26と、フィンユニット26の向きを調整する風向調整手段27とを備えている。
【0032】
吹出口25は、周壁31が上下のパネル32,33や左右のパネル34,35で略矩形状筒体に形成されたハウジングである。
この吹出口25は、周壁31の車室側端部(吹出側端部)31aが開口され、周壁31のダクト側端部31b(図8参照)がダクト13の端部13a(図8参照)に連通されている。
【0033】
図4〜図5に示すように、フィンユニット26は、吹出口25内の車体幅方向中央に設けられた中央フィン体37と、中央フィン体37の左側に設けられた左フィン体38と、中央フィン体37の右側に設けられた右フィン体39とを備えている。
中央フィン体37や左右のフィン体38,39は、吹出口25内において車体幅方向にそれぞれ所定間隔S1をおいて設けられている。
【0034】
中央フィン体37は、吹出口25内の車体幅方向中央に設けられた中央縦フィン(縦フィン)41と、中央縦フィン41に一体に設けられた中央横フィン42とを備えている。
【0035】
図6に示すように、中央縦フィン41は、側面視で円盤状に形成され、上端41aから上支持ピン44が上方に向けて突出され、下端41bから下支持ピン45が下方に向けて突出されている。
上支持ピン44および下支持ピン45は同軸上に設けられ、上支持ピン44が上パネル32の車体幅方向中央32aに回動自在に支持されるとともに、下支持ピン45が下パネル33の車体幅方向中央33aに回動自在に支持されている。
よって、中央縦フィン41は、図5に示すように、吹出口25内の車体幅方向中央において上下方向に延びるように(すなわち、縦向きに)配置されている。
【0036】
図4、図5に示すように、中央横フィン42は、中央縦フィン41のうち上下方向中央の中央部位41cから左側に左部位が略水平に張り出されるとともに、中央部位41cから右側に右部位が略水平に張り出されることで、左部位および右部位が中央縦フィン41に対して左右対称に形成されている。
すなわち、中央横フィン42は、中央縦フィン41の中央部位41cに一体に設けられるとともに、中央部位41cから左右方向(車体幅方向)に略水平に張り出すように形成されている。
【0037】
図8に示すように、中央横フィン42は、車室17側に配置された車室側端部42aと、ダクト13側に配置されたダクト側端部42bと、ダクト側端部42bの左端から車室側端部42aの左端まで延びた左側部42cと、ダクト側端部42bの右端から車室側端部42aの右端まで延びた右側部42dとを有する。
【0038】
車室側端部42aおよびダクト側端部42bは、それぞれ凸状の円弧に形成されている。
左側部42cおよび右側部42dは、それぞれ凹状の円弧に形成されている。
ここで、車室側端部42aの幅寸法W1がダクト側端部42bの幅寸法W2より大きく形成されている。
よって、中央横フィン42は、ダクト側のダクト側端部42bから車室17側の車室側端部42aに向かって車体幅方向に広がるように略扇状に形成されている。
これにより、中央横フィン42の車体幅方向の寸法をダクト側端部42b側で小さく抑えることができる。
【0039】
図4〜図5に示すように、左フィン体38は、吹出口25内の車体幅方向左側に設けられた左縦フィン(縦フィン、他の縦フィン)51と、左縦フィン51に一体に設けられた上下の左横フィン(他の横フィン)52,53とを備えている。
【0040】
図7に示すように、左縦フィン51は、側面視で円盤状に形成され、上端51aから上支持ピン55が上方に向けて突出され、下端51bから下支持ピン56が下方に向けて突出されている。
上支持ピン55および下支持ピン56は同軸上に設けられ、上支持ピン55が上パネル32の車体幅方向左側32bに回動自在に支持されるとともに、下支持ピン56が下パネル33の車体幅方向左側33bに回動自在に支持されている。
よって、左縦フィン51は、図5に示すように、吹出口25内の車体幅方向左側において上下方向に延びるように(すなわち、縦向きに)配置されている。
【0041】
図4、図5に示すように、上左横フィン52は、左縦フィン51の中央部位51cから高さ寸法H1だけ上方の上部位51dに設けられている。
左縦フィン51の中央部位51cは、中央縦フィン41の中央部位41cと同じ高さに位置する。
【0042】
左縦フィン51の上部位51dから左側に左部位が略水平に張り出されるとともに、上部位51dから右側に右部位が略水平に張り出されることで、左部位および右部位が左縦フィン51に対して左右対称に形成されている。
すなわち、上左横フィン52は、左縦フィン51の上部位51dに一体に設けられるとともに、上部位51dから左右方向(車体幅方向)に張り出すように形成されている。
【0043】
図8に示すように、上左横フィン52は、車室17側に配置された車室側端部52aと、ダクト13側に配置されたダクト側端部52bと、ダクト側端部52bの左端から車室側端部52aの左端まで延びた左側部52cと、ダクト側端部52bの右端から車室側端部52aの右端まで延びた右側部52dとを有する。
【0044】
車室側端部52aおよびダクト側端部52bは、それぞれ凸状の円弧に形成されている。
左側部52cおよび右側部52dは、それぞれ凹状の円弧に形成されている。
ここで、車室側端部52aの幅寸法W3がダクト側端部52bの幅寸法W4より大きく形成されている。
よって、上左横フィン52は、中央横フィン42と同様に、ダクト側のダクト側端部52bから車室17側の車室側端部52aに向かって車体幅方向に広がるように略扇状に形成されている。
これにより、上左横フィン52の車体幅方向の寸法をダクト側端部52b側で小さく抑えることができる。
【0045】
図4、図5に示すように、下左横フィン53は、左縦フィン51の中央部位51cから高さ寸法H1だけ下方の下部位51eに設けられている。
上左横フィン52および下左横フィン53は同一形状の部材なので、以下上左横フィン52について詳説して下左横フィン53の詳しい説明を省略する。
【0046】
右フィン体39は、左フィン体38と左右対称の位置に設けられている。
右フィン体39は、吹出口25内の車体幅方向右側に設けられた右縦フィン(縦フィン、他の縦フィン)61と、右縦フィン61に一体に設けられた上下の右横フィン(他の横フィン)62,63とを備えている。
【0047】
右縦フィン61は左縦フィン51と同一形状の部材である。また、上下の右横フィン62,63は上下の左横フィン52,53と同一形状の部材である。
よって、右縦フィン61および上下の右横フィン62,63の詳しい説明を省略する。
【0048】
ここで、中央縦フィン41、左縦フィン51および右縦フィン61は、吹出口25内において車体幅方向にそれぞれ所定間隔S1をおいて設けられている。
所定間隔S1は任意に決めることが可能である。
【0049】
また、中央縦フィン41に1つの横フィン(すなわち、中央横フィン42)が設けられている。
さらに、左縦フィン51に2つの横フィン(すなわち、上左横フィン52および下左横フィン53)が設けられている。
加えて、右縦フィン61に2つの横フィン(すなわち、上右横フィン62および下右横フィン63)が設けられている。
【0050】
よって、中央横フィン42のフィン数を、上左横フィン52および下左横フィン53のフィン数より少なくでき、さらに、上右横フィン62および下右横フィン63のフィン数より少なくできる。
【0051】
図5、図8に示すように、中央横フィン42のフィン数を少なくすることで、中央横フィン42が設けられた中央領域(中央空間)65の空間を大きく確保できる。
中央領域65は、吹出口25の中央に形成されている。
ここで、上左横フィン52(車室側端部52a)や下左横フィン53(車室側端部53a)の幅寸法W3が中央横フィン42(車室側端部42a)の幅寸法W1より小さく設定されている。
よって、上下の左横フィン52,53が左側の中央領域65に侵入することを抑えることができるので、左側の中央領域65の空間を一層大きく確保できる。
【0052】
また、上右横フィン62(車室側端部62a)や下左横フィン63(車室側端部63a)の幅寸法W3が中央横フィン42(車室側端部42a)の幅寸法W1より小さく設定されている。
よって、上下の右横フィン62,63が右側の中央領域65に侵入することを抑えることができるので、右側の中央領域65の空間を一層大きく確保できる。
【0053】
さらに、上左横フィン52および下左横フィン53のフィン数を多くすることで、上下の左横フィン52,53が設けられた左領域(他の空間)66の空間を小さく抑えることができる。
ここで、中央横フィン42(車室側端部42a)の幅寸法W1が上左横フィン52(車室側端部52a)や下左横フィン53(車室側端部53a)の幅寸法W3より大きく設定されている。
よって、中央横フィン42を上左横フィン52および下左横フィン53間まで張り出すことができるので、左領域66の空間を一層小さく抑えることができる。
【0054】
さらに、上右横フィン62および下右横フィン63のフィン数を多くすることで、上下の右横フィン62,63が設けられた右領域(他の空間)67の空間を小さく抑えることができる。
ここで、中央横フィン42(車室側端部42a)の幅寸法W1が上右横フィン62(車室側端部62a)や下右横フィン63(車室側端部63a)の幅寸法W3より大きく設定されている。
よって、中央横フィン42を上右横フィン62および下右横フィン63間まで張り出すことができるので、右領域67の空間を一層小さく抑えることができる。
【0055】
これにより、図5に示すように、中央領域65が左右の領域66,67より大きく形成されている。
このように、中央横フィン42を上下の左横フィン52,53や上下の右横フィン62,63に対して異なる構成とすることで、中央領域65を左右の領域66,67より大きくすることができる。
【0056】
ここで、中央横フィン42を上下の左横フィン52,53や上下の右横フィン62,63に対して異なる構成とする例として、前述したように、フィン数を異ならせることや、フィン形状を異ならせることが挙げられる。
【0057】
すなわち、フィン数を異なる構成とするために、実施例1において、中央横フィン42のフィン数を上下の左横フィン52,53のフィン数や上下の右横フィン62,63のフィン数より少なく設定している。
さらに、フィン形状を異なる構成とするために、実施例1において、上下の左横フィン52,53の幅寸法W3や上下の右横フィン62,63の幅寸法W3を中央横フィン42の幅寸法W1より小さくするように、上下の左横フィン52,53、上下の右横フィン62,63や中央横フィン42の形状を設定している。
【0058】
中央領域65を左右の領域66,67より大きく形成することで、ダクト13(図1参照)から吹出口25に空気が導かれた際に、中央領域65における受圧面積(空気の圧力を受ける面積)を左領域66の受圧面積や右領域67の受圧面積より大きく確保することができる。
【0059】
よって、ダクト13(図1参照)から吹出口25に空気が導かれた際に、大きな空間の中央領域65に生じる風圧(空気圧)を、小さな空間の左右の領域66,67に生じる風圧(空気圧)より低く抑えることができる。
すなわち、中央横フィン42が設けられた中央領域65を低圧領域とすることができる。
これにより、ダクト13から吹出口25に空気が導かれた際に、導かれた空気を中央領域65に集めることができ、吹出口25から吹き出す空気(空調風)の指向性を高めることができる。
【0060】
ここで、図4に示すように、中央フィン体37は、中央縦フィン41に中央横フィン42が一体に設けられている。また、左フィン体38は、左縦フィン51に上下の左横フィン52,53が一体に設けられている。さらに、右フィン体39は、右縦フィン61に上下の右横フィン62,63が一体に設けられている。
これにより、フィンの部品点数を減らすことができるので、フィンの部品管理や組付け作業の容易化を図ることができる。
【0061】
また、図4、図6〜図7に示すように、中央縦フィン41、左縦フィン51および右縦フィン61は、それぞれ側面視で円盤状に形成されている。
よって、例えば、インストルメントパネル11の左側部11b(図1参照)が円弧状に形成されている場合、各縦フィン41,51,61の車室17(図1参照)側の縁部を左側部11bに沿わせることができるので、意匠性(デザイン性)を高めることができる。
【0062】
図2に示すように、風向調整手段27は、車幅方向の風向を調整する左右風向調整部71と、上下方向の風向を調整する上下風向調整部72とを備えている。
【0063】
左右風向調整部71は、第1操作ノブ74を車体幅方向(左右方向)に矢印A−Bの如くスライド移動することで、中央フィン体37が上下の支持ピン44,45を軸にして車体幅方向に矢印C−Dの如く回動する。
第1操作ノブ74は、インストルメントパネル11(図1参照)に矢印A−Bの如くスライド移動自在に支持されている。
中央フィン体37の回動がリンク75を経て左右のフィン体38,39に伝わり、左右のフィン体38,39が中央フィン体37の回動に連動して矢印C−Dの如く回動する。
【0064】
すなわち、左右風向調整部71は、第1操作ノブ74を矢印A−Bの如く操作することで、中央フィン体37(中央縦フィン41)や左右のフィン体38,39(左右の縦フィン51,61)の水平方向の向きを調整して車幅方向の風向を変えることができる。
【0065】
例えば、第1操作ノブ74を矢印Bの如くスライド移動することで、中央縦フィン41や左右の縦フィン51,61の向きを、図9に示すように車室17中央側に向くように調整できる。
これにより、中央縦フィン41や左右の縦フィン51,61で吹出口25から吹き出す空気(空調風)の指向性を規定することができる。
【0066】
ここで、図9に示すように、中央横フィン42は、車室側端部42aの幅寸法W1がダクト側端部42bの幅寸法W2より大きくなるように略扇状に形成されている。さらに、左側部42cおよび右側部42dが凹状の円弧に形成されている。
よって、中央横フィン42の車体幅方向の寸法をダクト側端部42b側で小さく抑えることができる。
【0067】
上左横フィン52は、車室側端部52aの幅寸法W3がダクト側端部52bの幅寸法W4より大きくなるように略扇状に形成されている。さらに、左側部52cおよび右側部52dが凹状の円弧に形成されている。
よって、上左横フィン52の車体幅方向の寸法をダクト側端部52b側で小さく抑えることができる。
【0068】
上右横フィン62は、上左横フィン52と同様に、車室側端部62aの幅寸法W3がダクト側端部62bの幅寸法W4より大きくなるように略扇状に形成されている。さらに、左側部62cおよび右側部62dが凹状の円弧に形成されている。
よって、上右横フィン62の車体幅方向の寸法をダクト側端部62b側で小さく抑えることができる。
【0069】
図8に示すように、中央横フィン42、上左横フィン52および上右横フィン62の車体幅方向の寸法がダクト13側で小さく抑えられている。
よって、例えば、図9に示すように、左縦フィン51の車室17側端部51fが中央横フィン42の左側部42cに干渉することを防ぐことができる。
さらに、中央縦フィン41や左右の縦フィン51,61の向きを、さらに車室17中央側に向くように調整した場合でも、中央縦フィン41の車室側端部41dが上右横フィン62の左側部62cに干渉することを防ぐことができる。
【0070】
よって、中央縦フィン41や左右の縦フィン51,61の水平方向の向きを調整する際の調整範囲S2を大きく確保する(広げる)ことができる。
さらに、中央縦フィン41、左縦フィン51および右縦フィン61を設ける際に所定間隔S1の選択範囲を広げることができる。
このように、調整範囲S2や所定間隔S1の選択範囲を広げることで設計の自由度を高めることができる。
【0071】
図2に示すように、上下風向調整部72は、第2操作ノブ77を上下方向に矢印E−Fの如くスライド移動することで、吹出口25が左右の支持ピン78(左支持ピン78は図示せず)を軸にして上下方向に矢印G−Hの如く回動する。
第2操作ノブ77は、インストルメントパネル11(図1参照)に矢印E−Fの如くスライド移動自在に支持されている。
吹出口25が矢印G−Hの如く回動することで、中央横フィン42、上下の左横フィン52,53および上下の右横フィン62,63の上下方向の向きを調整することができる。
【0072】
例えば、上下風向調整部72は、第2操作ノブ77を矢印Eの如く操作することで、図10(a)に示すように中央横フィン42を上向きに調整して風向が斜め上方を向くように変えることができる。
同様に、図10(b)に示すように上下の左横フィン52,53を上向きに調整して風向が斜め上方を向くように変えることができる。
【0073】
さらに、上下の左横フィン52,53と同様に、上下の右横フィン62,63(図4参照)を上向きに調整して風向が斜め上方を向くように変えることができる。
これにより、中央横フィン42、上下の左横フィン52,53や上下の右横フィン62,63で吹出口25から吹き出す空気(空調風)の指向性を規定することができる。
【0074】
つぎに、車両用空調装置のエア吹出構造体15の中央縦フィン41や左右の縦フィン51,61を車体前後方向に向けた状態で吹出口25から空気を吹き出す例を図11〜図12に基づいて説明する。
【0075】
図11(a)に示すように、エアコンユニット12(図1参照)で空調された空気がダクト13を経て吹出口25に向けて矢印J1〜J4の如く流れる。
この状態で、中央領域65における受圧面積(空気の圧力を受ける面積)が左領域66の受圧面積や右領域67の受圧面積より大きく確保されている。
よって、中央領域65の風圧(空気圧)が左右の領域66,67の風圧(空気圧)より低く抑えられる。
このように、中央領域65や左右の領域66,67に圧力差が生じることで、左右の領域66,67の空気を中央領域65に向けての収束、指向(集向)させることができる。
【0076】
具体的には、図11(a),(b)に示すように、左領域66に矢印J1の如く導かれた空気は、風圧(空気圧)が低く抑えられた左側の中央領域65に向けて矢印K1の如く導かれる。
一方、左側の中央領域65に矢印J2の如く導かれた空気は、左側の中央領域65に向けて矢印K1の如く導かれた空気で案内されて、中央縦フィン41に沿って矢印K2の如く導かれる。
【0077】
また、右領域67に矢印J4の如く導かれた空気は、風圧(空気圧)が低く抑えられた右側の中央領域65に向けて矢印K4の如く導かれる。
一方、右側の中央領域65に矢印J3の如く導かれた空気は、右側の中央領域65に向けて矢印K4の如く導かれた空気で案内されて、中央縦フィン41に沿って矢印K3の如く導かれる。
【0078】
中央縦フィン41に沿って矢印K2の如く導かれた空気が、左領域66から左側の中央領域65に向けて矢印K1の如く導かれた空気と合流し、中央縦フィン41に沿って矢印L(1〜2)の如く導かれる。
同様に、中央縦フィン41に沿って矢印K3の如く導かれた空気が、右領域67から右側の中央領域65に向けて矢印K4の如く導かれた空気と合流し、中央縦フィン41に沿って矢印L(3〜4)の如く導かれる。
【0079】
図12に示すように、ダクト13から吹出口25に導かれた空気を中央領域65(図11(b)も参照)に集めて中央領域65から車室17内に矢印L(1〜2)、矢印L(3〜4)の如く吹き出すことができる。
このように、吹出口25に導かれた空気を中央領域65に集めて吹き出すことで、吹出口25から吹き出す空気(空調風)の指向性を高めることができる。
【0080】
ここで、図11(a)に示すように、上左横フィン52の形状を、ダクト側端部52bから車室側端部52aに向かって車体幅方向に広がるように略扇状に形成することで、上左横フィン52の車体幅方向の寸法を、ダクト側端部52b側で小さく、車室側端部52a側で大きく確保できる。
【0081】
上左横フィン52の車体幅方向の寸法をダクト側端部52b側で小さくすることで、ダクト側端部52b側の空間を車室側端部52a側の空間より大きく確保することができる。
よって、左領域66において、ダクト側端部52b側の空間を車室側端部52a側の空間より低圧領域にできる。これにより、ダクト側端部52bの空間にダクト13から空気を矢印J1の如く円滑に導く(流す)ことができる。
【0082】
一方、上左横フィン52の車体幅方向の寸法を車室側端部52a側で大きく確保することで、車室側端部52a側の空間を高圧領域とすることができる。これにより、車室側端部52a側の空間に向けて導かれた空気を中央領域(すなわち、低圧領域)65に矢印K1の如く円滑に導くことができる。
このように、ダクト側端部52b側の空間に空気を円滑に導き、車室側端部52a側の空間に導いた空気を中央領域65に円滑に導くことで、中央領域65に空気を良好に集めることができる。
【0083】
下左横フィン53、上下の右横フィン62,63も上左横フィン52と同様に略扇状に形成されている。
これにより、下左横フィン53や上下の右横フィン62,63側に導かれた空気を、上左横フィン52と同様に、各横フィン53,62,63で中央領域65に良好に集めることができる。
このように、上下の左横フィン52,53や上下の右横フィン62,63側に導かれた空気を、各横フィン52,53,62,63で中央領域65に良好に集めることで空気(空調風)の指向性を一層高めることができる。
【0084】
つぎに、車両用空調装置のエア吹出構造体15の中央縦フィン41や左右の縦フィン51,61を車体前後方向に対して傾けた状態(すなわち、車体幅方向に傾けた状態)で吹出口25から空気を吹き出す例を図13に基づいて説明する。
【0085】
図13に示すように、中央縦フィン41や左右の縦フィン51,61の向きを、車室17中央側に向くように水平方向に傾けた状態に調整する。
この状態で、エアコンユニット12(図1参照)で空調された空気がダクト13を経て吹出口25に向けて矢印M1〜M4の如く流れる。
【0086】
この状態で、中央領域65における受圧面積(空気の圧力を受ける面積)が左領域66の受圧面積や右領域67の受圧面積より大きく確保されている。
よって、中央領域65の風圧(空気圧)が左右の領域66,67の風圧(空気圧)より低く抑えられる。
【0087】
左領域66に矢印M1の如く導かれた空気は、左側の中央領域65に向けて矢印N1の如く導かれる。
一方、左側の中央領域65に矢印M2の如く導かれた空気は、左側の中央領域65に向けて矢印N1の如く導かれた空気で案内されて、中央縦フィン41に沿って矢印N2の如く導かれる。
【0088】
右領域67に矢印M4の如く導かれた空気のうち、一部の空気が右側の中央領域65に向けて矢印N4の如く導かれ、残りの空気が矢印N5の如く導かれる。
一方、右側の中央領域65に矢印M3の如く導かれた空気は、中央縦フィン41に沿って矢印N3の如く導かれる。
【0089】
中央縦フィン41に沿って矢印N2の如く導かれた空気が、左領域66から左側の中央領域65に向けて矢印N1の如く導かれた空気と合流し、中央縦フィン41に沿って矢印O(1〜2)の如く導かれる。
同様に、中央縦フィン41に沿って矢印N3の如く導かれた空気が、右領域67から右側の中央領域65に向けて矢印N4の如く導かれた空気と合流し、中央縦フィン41に沿って矢印O(3〜4)の如く導かれる。
さらに、矢印N5の如く導かれた空気が矢印O(5)の如く導かれる。
【0090】
よって、ダクト13から吹出口25に導かれた空気を中央領域65に集めて中央領域65から車室17中央側に向けて矢印O(1〜2)、矢印O(3〜4)や矢印O(5)の如く吹き出すことができる。
これにより、中央縦フィン41や左右の縦フィン51,61の向きを水平方向に傾けた状態においても、吹出口25から吹き出す空気(空調風)の指向性を高めることができる。
【0091】
つぎに、実施例2に係る車両用空調装置のエア吹出構造体90、および実施例3に係る車両用空調装置のエア吹出構造体110を図14、図15に基づいて説明する。
なお、実施例2、3において実施例1の車両用空調装置のエア吹出構造体15と同一・類似部材については同じ符号を付して説明を省略する。
【実施例2】
【0092】
図14に示すように、車両用空調装置のエア吹出構造体90は、実施例1の中央フィン体37および左右のフィン体38,39(図4参照)に代えて中央フィン体91および左右のフィン体92,93を備えたもので、その他の構成は実施例1の車両用空調装置のエア吹出構造体15と同様である。
【0093】
中央フィン体91は、実施例1の中央縦フィン41(図4参照)を中央縦フィン(縦フィン)95に代え、実施例1の中央横フィン42(図4参照)を中央横フィン96に代えたものである。
中央縦フィン95は、実施例1に用いた円盤状の中央縦フィン41を側面視で略矩形状に形成したものである。
中央横フィン96は、実施例1に用いた略扇状の中央横フィン42を平面視で円盤状に形成したものである。
【0094】
左フィン体92は、実施例1の左縦フィン51(図4参照)を左縦フィン(縦フィン、他の縦フィン)101に代え、実施例1の上下の左横フィン52,53(図4参照)を上下の左横フィン(他の横フィン)102,103に代えたものである。
左縦フィン101は、中央縦フィン95と同様に、実施例1に用いた円盤状の左縦フィン51を側面視で略矩形状に形成したものである。
上左横フィン102は、実施例1に用いた略扇状の上左横フィン52を平面視で円盤状に形成したものである。
下左横フィン103は、上左横フィン102と同様に、実施例1に用いた略扇状の下左横フィン53を円盤状に形成したものである。
【0095】
右フィン体93は、実施例1の右縦フィン61(図4参照)を右縦フィン(縦フィン、他の縦フィン)105に代え、実施例1の上下の右横フィン62,63(図4参照)を上下の右横フィン(他の横フィン)106,107に代えたものである。
右縦フィン105は左縦フィン101と同一形状の部材である。また、上下の右横フィン106,107は上下の左横フィン102,103と同一形状の部材である。よって、右縦フィン105および上下の右横フィン106,107の詳しい説明を省略する。
【0096】
以上説明したように、実施例2に係る車両用空調装置のエア吹出構造体90によれば、実施例1のエア吹出構造体15と同様の効果を得ることができる。
【0097】
加えて、実施例2に係るエア吹出構造体90によれば、中央横フィン96、上下の左横フィン102,103および上下の右横フィン106,107を円盤状に形成した。
これにより、各横フィン96,102,103,106,107を、実施例1の横フィン42,52,53,62,63より簡素な形状にでき、製造の容易化を図ることができる。
さらに、実施例1、2のエア吹出構造体15,90を用意することで、実施例1、2の横フィン形状を適宜選択することが可能になり、意匠性(デザイン性)の自由度を高めることができる。
【実施例3】
【0098】
図15に示すように、車両用空調装置のエア吹出構造体110は、図5に示す実施例1の左吹出手段22に代えて左吹出手段111を備えたものである。
左吹出手段111は、実施例1の左吹出手段22を車室17(図1参照)側から見て90°回転させたものである。
【0099】
この左吹出手段111は、インストルメントパネル11の左側部11b(図1参照)に設けられた吹出口(ハウジング)112と、吹出口112に設けられたフィンユニット(ルーバーユニット)115と、フィンユニット115の向きを調整する風向調整手段(図示せず)とを備えている。
【0100】
吹出口112は、周壁113が略矩形状筒体に形成されたハウジングである。
フィンユニット115は、吹出口112内の車体幅方向中央に設けられた中央フィン体116と、中央フィン体116の上側に設けられた上フィン体117と、中央フィン体116の下側に設けられた下フィン体118とを備えている。
中央フィン体116や上下のフィン体117,118は、吹出口112内において上下方向にそれぞれ所定間隔S1をおいて設けられている。
【0101】
中央フィン体116は、吹出口112内の上下方向中央に設けられた中央横フィン(横フィン)121と、中央横フィン121に一体に設けられた中央縦フィン122とを備えている。
中央横フィン121は、実施例1の中央縦フィン41(図5参照)を横向きに配置したものである。
【0102】
中央縦フィン122は、実施例1の中央横フィン42(図5参照)を縦向きに配置したものである。
この中央縦フィン122は、図8に示す中央横フィン42と同様に、ダクト13側から車室17側に向かって上下方向に広がるように形成されている。
【0103】
上フィン体117は、吹出口112内の上側に設けられた上横フィン(横フィン、他の横フィン)124と、上横フィン124に車幅方向(すなわち、左右方向)に一体に設けられた左右の上縦フィン(他の縦フィン)125,126とを備えている。
【0104】
上横フィン124は、実施例1の左縦フィン51(図5参照)を横向きに配置したものである。
左上縦フィン125は、上横フィン124の中央部位124aから距離寸法H1だけ左側の部位124bに設けられている。
右上縦フィン126は、上横フィン124の中央部位124aから距離寸法H1だけ右側の部位124cに設けられている。
上横フィン124の中央部位124aは、中央横フィン121の中央部位121aと同じ部位に位置する。
【0105】
左右の上縦フィン125,126は、実施例1の上下の左横フィン52,53(図5参照)を縦向きに配置したものである。
左右の上縦フィン125,126は、図5、図8に示す上下の左横フィン52,53と同様に、ダクト13側から車室17側に向かって上下方向に広がるように形成されている。
【0106】
下フィン体118は、上フィン体117と上下対称の部材であり、下フィン体118の詳しい説明を省略する。
下フィン体118は、上フィン体117と同様に、吹出口112内の下側に設けられた下横フィン(横フィン、他の横フィン)127と、下横フィン127に車幅方向(すなわち、左右方向)に一体に設けられた左右の下縦フィン(他の縦フィン)128,129とを備えている。
【0107】
左吹出手段111は、実施例1の左吹出手段22(図5参照)と同様に、中央縦フィン122が設けられた中央領域(中央空間)131の空間を大きく確保し、さらに、左右の上縦フィン125,126が設けられた上領域(他の空間)132の空間を小さく抑え、加えて、左右の下縦フィン128,129が設けられた下領域(他の空間)133の空間を小さく抑えることができる。
【0108】
このように、中央縦フィン122を左右の上縦フィン125,126や左右の下縦フィン128,129に対して異なる構成とすることで、中央領域131を上下の領域132,133より大きくすることができる。
【0109】
ここで、中央縦フィン122を左右の上縦フィン125,126や左右の下縦フィン128,129に対して異なる構成とする例として、実施例1と同様に、フィン数を異ならせることや、フィン形状を異ならせることが挙げられる。
【0110】
すなわち、フィン数を異なる構成とするために、実施例3において、中央縦フィン122のフィン数を左右の上縦フィン125,126のフィン数や左右の下縦フィン128,129のフィン数より少なく設定している。
さらに、フィン形状を異なる構成とするために、実施例3において、左右の上縦フィン125,126の幅寸法W3や左右の下縦フィン128,129の幅寸法W3を中央縦フィン122の幅寸法W1より小さくするように、左右の上縦フィン125,126、左右の下縦フィン128,129や中央縦フィン122の形状を設定している。
【0111】
中央領域131を上下の領域132,133より大きく形成することで、中央縦フィン122が設けられた中央領域131を、実施例1の左吹出手段22と同様に低圧領域とすることができる。
これにより、ダクト13(図2参照)から吹出口112に空気が導かれた際に、導かれた空気を中央領域131に集めることができ、吹出口112から吹き出す空気(空調風)の指向性を高めることができる。
【0112】
以上説明したように、実施例3に係る車両用空調装置のエア吹出構造体110によれば、実施例1のエア吹出構造体15と同様の効果を得ることができる。
【0113】
なお、本発明に係る車両用空調装置のエア吹出構造体15,90,110は、前述した実施例1〜3に限定されるものではなく適宜変更、改良などが可能である。
【0114】
例えば、前記実施例1では、中央横フィン42を上下の左横フィン52,53や上下の右横フィン62,63に対して異なる構成として、中央横フィン42を1フィン数、左横フィン52,53や右横フィン62,63をそれぞれ2フィン数にした例について説明したがこれに限定するものではない。
例えば、中央横フィン42を2フィン数、左横フィン52,53や右横フィン62,63をそれぞれ3〜4フィン数などにフィン数を適宜変更することも可能である。
【0115】
さらに、中央横フィン42を上下の左横フィン52,53や上下の右横フィン62,63に対して異なる構成として、左右の横フィン52,53,62,63の幅寸法W3を中央横フィン42の幅寸法W1より小さくするように、左右の横フィン52,53,62,63や中央横フィン42の形状を設定した例について説明したが、これに限定するものではなくフィン形状を適宜変更が可能である。
このように、フィン数やフィン形状を変形する変形例は、前記実施例2や実施例3でも同様に適用が可能である。
【0116】
また、前記実施例1,2では、吹出口25において車体幅方向中央に1個の中央フィン体37,91を設け、中央フィン体の左側に1個の左フィン体38,92を設けるとともに、中央フィン体の右側に1個の右フィン体39,93を設けた例について説明したがこれに限定するものではない。
例えば、吹出口25において車体幅方向中央に複数個の中央フィン体37,91を設けて、中央フィン体の左側に複数個の左フィン体38,92を設けるとともに、中央フィン体の右側に複数の右フィン体39,93を設けることも可能である。
このように、フィン体数を変更する変形例は、前記実施例3でも同様に適用が可能である。
【0117】
さらに、前記実施例1,2の風向調整手段27(左右風向調整部71、上下風向調整部72)は例示した構成に限定するものではなく適宜変形が可能である。
このように、風向調整手段を変更する変形例は、前記実施例3でも同様に適用が可能である。
【0118】
また、前記実施例1〜3で示した車両用空調装置10、エアコンユニット12、ダクト13、車両用空調装置のエア吹出構造体15,90,110、車室17、吹出口25,112、中央縦フィン41,95,122、中央横フィン42,96,121、左縦フィン51,101、上左横フィン52,102、下左横フィン53,103、右縦フィン61,105、上右横フィン62,106、下右横フィン63,107、中央領域65,131、左領域66,132、右領域67,133、上横フィン124、左右の上縦フィン125,126、下横フィン127および左右の下縦フィン128,129などの形状や構成は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明は、エアコンユニットに吹出口が連結され、吹出口から空調された空気を車室内に吹き出す車両用空調装置のエア吹出構造体を備えた自動車への適用に好適である。
【符号の説明】
【0120】
10…車両用空調装置、12…エアコンユニット(エアコンディショナユニット)、13…ダクト、15,90,110…車両用空調装置のエア吹出構造体、17…車室、25,112…吹出口、41,95…中央縦フィン(縦フィン)、42,96…中央横フィン、51,101…左縦フィン(縦フィン、他の縦フィン)、52,102…上左横フィン(他の横フィン)、53,103…下左横フィン(他の横フィン)、61,105…右縦フィン(縦フィン、他の縦フィン)、62,106…上右横フィン(他の横フィン)、63,107…下右横フィン(他の横フィン)、65,131…中央領域(中央空間)、66,132…左領域(他の空間)、67,133…右領域(他の空間)、121…中央横フィン(横フィン)、122…中央縦フィン、124…上横フィン(横フィン、他の横フィン)、125,126…左右の上縦フィン(他の縦フィン)、127…下横フィン(横フィン、他の横フィン)、128,129…左右の下縦フィン(他の縦フィン)、S1…所定間隔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室に空調された空気を供給するエアコンディショナユニットを備え、前記エアコンディショナユニットにダクトを介して吹出口が連結され、前記吹出口から前記車室内に前記空調された空気を吹き出す車両用空調装置のエア吹出構造体において、
前記吹出口に、上下方向に張り出した縦フィンが車体幅方向に所定間隔をおいて設けられ、
前記縦フィンが、前記吹出口の中央に設けられた中央縦フィンと、前記中央の他に設けられた他の縦フィンとを有し、
前記中央縦フィンに、車体幅方向に張り出した中央横フィンが一体に設けられ、
前記他の縦フィンに、車体幅方向に張り出した他の横フィンが一体に設けられ、
前記中央横フィンで前記吹出口の中央に中央空間が形成されるとともに、前記他の横フィンで前記中央の他に他の空間が形成され、
前記中央空間が前記他の空間より大きくなるように前記中央横フィンおよび前記他の横フィンを異なる構成としたことを特徴とする車両用空調装置のエア吹出構造体。
【請求項2】
前記中央横フィンおよび前記他の横フィンは、
前記ダクト側から前記車室側に向かって車体幅方向に広がるように形成されたことを特徴とする請求項1記載の車両用空調装置のエア吹出構造体。
【請求項3】
車室に空調された空気を供給するエアコンディショナユニットを備え、前記エアコンディショナユニットにダクトを介して吹出口が連結され、前記吹出口から前記車室内に前記空調された空気を吹き出す車両用空調装置のエア吹出構造体において、
前記吹出口に、車体幅方向に延びる横フィンが上下方向に所定間隔をおいて設けられ、
前記横フィンが、前記吹出口の中央に設けられた中央横フィンと、前記中央の他に設けられた他の横フィンとを有し、
前記中央横フィンに、上下方向に張り出した中央縦フィンが一体に設けられ、
前記他の横フィンに、上下方向に張り出した他の縦フィンが一体に設けられ、
前記中央縦フィンで前記吹出口の中央に中央空間が形成されるとともに、前記他の縦フィンで前記中央の他に他の空間が形成され、
前記中央空間が前記他の空間より大きくなるように前記中央縦フィンおよび前記他の縦フィンを異なる構成としたことを特徴とする車両用空調装置のエア吹出構造体。
【請求項4】
前記中央縦フィンおよび前記他の縦フィンは、
前記ダクト側から前記車室側に向かって上下方向に広がるように形成されたことを特徴とする請求項3記載の車両用空調装置のエア吹出構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−162088(P2011−162088A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28067(P2010−28067)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】