説明

車両用空調装置

【課題】車両用空調装置における閉状態の開口部からの風漏れを防止する。
【解決手段】バタフライ式の第1モードドア12によりデフロスタ開口部8およびフェイス開口部9を開閉する車両用空調装置は、フェイスモード時に第1モードドア12が受ける力とデフロスタモード時に第1モードドア12が受ける力とが風量や内圧によって変化するため、フェイスモード時にデフロスタ開口部8を閉じる向きに第1モードドア12を付勢する力とデフロスタモード時にデフロスタ開口部8を閉じる向きに第1モードドア12を付勢する力とを異ならせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内の空調を行う車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用空調装置は、隣接するデフロスタ開口部とフェイス開口部を1枚のバタフライドアで開閉し、フット開口部をロータリドアで開閉する構造となっている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−203127号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、フェイスモードでは、バタフライドアはデフロスタ開口部を閉じるとともにフェイス開口部を開き、ロータリドアはフット開口部を閉じているため、全風量がフェイス開口部に集中する。この際、フェイス開口部に流れる風によって、バタフライドアはデフロスタ開口部を閉じる向きに押されて、デフロスタ開口部のシールが強化される。
【0004】
これに対し、バイレベルモードでは、バタフライドアの回動位置はフェイスモード時と同じであるが、ロータリドアがフット開口部を開くため、フット開口部とフェイス開口部に風が分散し、フェイスモード時と比較してフェイス開口部に流れる風量が減少する。
【0005】
そして、フェイスモードとバイレベルモードで、バタフライドアの回動位置は理屈上は変化しないはずであるが、現実にはバイレベルモードではフェイス開口部への風量減少により、デフロスタ開口部を閉じる向きにバタフライドアを押す力(図1のF1)が弱くなってバタフライドアの回動位置が変化してしまい、デフロスタ開口部のシールが弱くなりデフロスタ開口部への風漏れが生じる。
【0006】
また、バタフライドアは、デフロスタ開口部を開く向きに押す力(図1のF2)も受けている。そして、バイレベルモード時とフェイスモード時ではユニットの内圧が変化するため、デフロスタ開口部を開く向きの力F2も変化する。したがって、バタフライドアやユニットの設計次第では、フェイスモード時にバタフライドアに作用する合力(F1−F2)が、バイレベルモード時にバタフライドアに作用する合力(F1−F2)よりも小さくなる場合も考えられる。この場合は、フェイスモード時にデフロスタ開口部のシールが弱くなりデフロスタ開口部への風漏れが生じる。
【0007】
そして、フェイスモードやバイレベルモードは、通常、外気温が高い季節に冷房で用いられるモードであるため、デフロスタ開口部への風漏れ風量が多いと、フロントガラスが冷やされて外面が結露する不具合に繋がる。
【0008】
本発明は上記点に鑑みて、車両用空調装置における閉状態の開口部からの風漏れを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、第1開口部(8)および第2開口部(9)を開閉するバタフライ式の第1モードドア(12)と、第3開口部(11)を開閉する第2モードドア(13)とを備え、第1モードドア(12)が第1開口部(8)を閉じるとともに第2開口部(9)を開き且つ第2モードドア(13)が第3開口部(11)を開いた状態を第1状態とし、第1モードドア(12)が第1開口部(8)を閉じるとともに第2開口部(9)を開き且つ第2モードドア(13)が第3開口部(11)を閉じた状態を第2状態としたとき、第1状態のときに第1開口部(8)を閉じる向きに第1モードドア(12)を付勢する力と第2状態のときに第1開口部(8)を閉じる向きに第1モードドア(12)を付勢する力とが異なることを特徴とする。
【0010】
このようにすれば、第1状態において第1モードドア(12)が受ける力と第2状態において第1モードドア(12)が受ける力とが風量や内圧によって変化する場合でも、第1開口部(8)への風漏れを防止することが可能になる。
【0011】
この場合、第1開口部(8)を車両窓ガラス側へ空気を吹き出すデフロスタ開口部とし、第2開口部(9)を車室内の乗員頭部側へ空気を吹き出すフェイス開口部とし、さらに第3開口部(11)を車室内の乗員足元側へ空気を吹き出すフット開口部とすれば、フェイスモードやバイレベルモードのときに、デフロスタ開口部への風漏れを防止することが可能になる。
【0012】
また、第1状態のときに第1開口部(8)を閉じる向きに第1モードドア(12)を付勢する力が第2状態のときに第1開口部(8)を閉じる向きに第1モードドア(12)を付勢する力よりも大きくなるようにすれば、第1状態のときに第1開口部(8)への風漏れが多くなる車両用空調装置において、第1状態での第1開口部(8)への風漏れを防止することができる。
【0013】
また、第2状態のときに第1開口部(8)を閉じる向きに第1モードドア(12)を付勢する力が第1状態のときに第1開口部(8)を閉じる向きに第1モードドア(12)を付勢する力よりも大きくなるようにすれば、第2状態のときに第1開口部(8)への風漏れが多くなる車両用空調装置において、第2状態での第1開口部(8)への風漏れを防止することができる。
【0014】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の一実施形態について説明する。図1は一実施形態に係る車両用空調装置における空調ユニットの断面図である。
【0016】
空調ケース1の下部には、空気の導入口2が開口して形成され、この導入口2には、図示しない送風機ユニットから内気又は外気が導入されるようになっている。また、導入口2には、冷媒と空気流間で熱交換を行なって空気流を冷却するエバポレータ3が配設されている。
【0017】
エバポレータ3よりも空気流れ下流側には冷風通路4が形成され、冷風通路4にエアミックスドア5が配設されている。冷風通路4はエアミックスドア5が配設された部位で分岐されており、この分岐された冷風通路4のうちの一方側にヒータコア6が配設される。ヒータコア6よりも空気流れ下流側には温風通路7が設けられ、この温風通路7は、分岐された冷風通路4のうちの他方側に合流する。
【0018】
エアミックスドア5は、ヒータコア6を通過する空気量とヒータコア6をバイパスして流れる空気量を調整して、車室内に吹出す空気の温度を調整するドアであり、空調温度調整レバーなどの操作に基づき、サーボモータ等によりその角度が調整される。ヒータコア6は、タンクと多数のチューブを有した加熱用熱交換器であり、その内部にエンジンの冷却水(温水)を流して空気を加熱する。
【0019】
冷風通路4と温風通路7との合流部よりも空気流れ下流側には、車両の前面窓ガラス側へ空気を吹き出すデフロスタ開口部8と、乗員の頭部に向けて空気を吹き出すフェイス開口部9と、フット側通路10を介して導かれた空気を乗員の足元に向けて吹き出すフット開口部11が設けられている。なお、デフロスタ開口部8は本発明の第1開口部に相当し、フェイス開口部9は本発明の第2開口部に相当し、フット開口部11は本発明の第3開口部に相当する。
【0020】
空調ケース1の上部に設けられたデフロスタ開口部8とフェイス開口部9には、それらを相互に逆の開閉状態に開閉するバタフライ式の第1モードドア12が設けられている。この第1モードドア12は、ドア軸121により空調ケース1に回動自在に支持されており、デフロスタ側板部122にてデフロスタ開口部8を開閉し、フェイス側板部123にてフェイス開口部9を開閉するようになっている。
【0021】
フット側通路10における空気流れ上流端には、フット開口部11を開閉する第2モードドア13が設けられている。この第2モードドア13は、扇形のロータリードアとして形成され、ドア軸131により空調ケース1に回動自在に支持されており、円弧状の板部132にてフェイス開口部9およびフット開口部11を開閉するようになっている。
【0022】
第1モードドア12のドア軸121の一端部および第2モードドア13のドア軸131の一端部は空調ケース1の外部に突出して、リンク機構に接続されている。
【0023】
図2はそのリンク機構を示している。このリンク機構は、空調ケース1の外部に配置されている。リンクプレート20は、図示しないサーボモータまたは手動操作により駆動されて、回転中心Oを中心にして回転する。リンクプレート20は、第1カム溝201と第2カム溝202が形成されている。
【0024】
第1モードドア12のドア軸121には第1レバー21の一端が連結され、この第1レバー21の他端に設けられた第1ピン211が第1カム溝201内に摺動可能に嵌入されている。これにより、リンクプレート20の回転により第1レバー21を介して第1モードドア12が回転操作される。
【0025】
第2モードドア13のドア軸131には第2レバー22の一端が連結され、この第2レバー22の他端に設けられた第2ピン221が第2カム溝202内に摺動可能に嵌入されている。これにより、リンクプレート20の回転により第2レバー22を介して第2モードドア13が回転操作される。
【0026】
図3は第1カム溝201の詳細なカム形状を示す図である。図3において、実線は本実施形態のカム形状を示し、一点鎖線は従来のカム形状を示しており、バイレベルモード時に第1ピン211が嵌合するバイレベル時嵌合領域Aのカム形状が従来と異なっている。具体的には、バイレベルモード時には、フェイスモード時よりもさらにデフロスタ開口部8を閉じる向きに第1モードドア12が回動される。換言すると、バイレベルモード時にデフロスタ開口部8を閉じる向きに第1モードドア12を付勢する力が、フェイスモード時にデフロスタ開口部8を閉じる向きに第1モードドア12を付勢する力よりも大きくなる。
【0027】
図4は、リンクプレート20の回動角に対する第1モードドア12の回動角を示す作動線図である。図4において、実線は本実施形態の回動角を示し、一点鎖線は従来の回動角を示している。
【0028】
なお、図2に示すようにリンクプレート20が反時計回りに最も回転した状態(すなわち、フェイスモード時)におけるリンクプレート20の回動角および第1モードドア12の回動角を0°とする。
【0029】
図4に示すように、リンクプレート20の回動角が0°のときには、第1モードドア12の回動角は0°であり、第1モードドア12はデフロスタ開口部8を全閉し、フェイス開口部9を全開にする。このとき、第2モードドア13はフェイス開口部9を全開し、フット開口部11を全閉するようになっているため、フェイスモード(すなわち、図1の状態)となる。なお、フェイスモードは、本発明の第2状態に相当する。
【0030】
リンクプレート20の回動角が略50°のときには、第1モードドア12の回動角は略−2°であり、フェイスモード時よりもさらにデフロスタ開口部8を閉じる向きに第1モードドア12が回動される。このとき、第2モードドア13はフェイス開口部9およびフット開口部11をともに半開するようになっているため、バイレベルモードとなる。なお、バイレベルモードは、本発明の第1状態に相当する。
【0031】
リンクプレート20の回動角が略100°のときには、第1モードドア12の回動角は略8°であり、第1モードドア12はデフロスタ開口部8を僅かに開き、フェイス開口部9を大きく開いている。このとき、第2モードドア13はフェイス開口部9を全閉し、フット開口部11を全開するようになっているため、フットモードとなる。
【0032】
リンクプレート20の回動角が略150°のときには、第1モードドア12の回動角は略20°であり、第1モードドア12はデフロスタ開口部8およびフェイス開口部9をともに半開している。このとき、第2モードドア13はフェイス開口部9を全閉し、フット開口部11を全開するようになっているため、フットデフモードとなる。
【0033】
リンクプレート20の回動角が略200°のときには、第1モードドア12の回動角は略55°であり、第1モードドア12はデフロスタ開口部8を全開し、フェイス開口部9を全閉にする。このとき、第2モードドア13はフェイス開口部9を全開し、フット開口部11を全閉するようになっているため、デフロスタモードとなる。
【0034】
本実施形態の車両用空調装置は、フェイスモード時およびバイレベルモードには、デフロスタ開口部8を閉じる向きに第1モードドア12を押す力F1と、デフロスタ開口部8を開く向きに第1モードドア12を押す力F2が、第1モードドア12に作用する。
【0035】
ここで、一般的には、バイレベルモード時に第1モードドア12に作用する合力(F1−F2)が、フェイスモード時に第1モードドア12に作用する合力(F1−F2)よりも小さくなり、バイレベルモード時にフェイスモード時よりもデフロスタ開口部8への風漏れが生じ易くなる。
【0036】
しかし、本実施形態では、バイレベルモード時には、フェイスモード時よりもさらにデフロスタ開口部8を閉じる向きに第1モードドア12が回動されるようにしているため、バイレベルモード時にデフロスタ開口部8を閉じる向きに第1モードドア12を付勢する力が、フェイスモード時にデフロスタ開口部8を閉じる向きに第1モードドア12を付勢する力よりも大きくなり、バイレベルモード時のデフロスタ開口部8への風漏れが防止ないしは抑制される。
【0037】
(他の実施形態)
上記実施形態では、第1モードドア12および第2モードドア13を、リンクプレート20を介して単体の外力(手動またはサーボモータ)によって駆動するようにしたが、独立した2つの外力によってそれぞれのドア12、13を駆動してもよい。この場合は、手動ケーブルコントロールによる駆動は構造的に困難なため、2個のサーボモータで各ドア12、13のドア軸121、131を駆動する方法が考えられる。この方法ならば、リンクプレート20のガタツキを考慮する必要がないため、上記実施形態よりも高い位置精度で各ドア12、13を駆動することができるとともに、上記実施形態と比較して操作力にも余裕ができる。
【0038】
また、上記実施形態では、バイレベルモード時にフェイスモード時よりもデフロスタ開口部8への風漏れが生じ易い空調装置に適合させるために、バイレベルモード時に、フェイスモード時よりもさらにデフロスタ開口部8を閉じる向きに第1モードドア12が回動されるようにした。これに対し、フェイスモード時にバイレベルモード時よりもデフロスタ開口部8への風漏れが生じ易い空調装置の場合は、フェイスモード時に、バイレベルモード時よりもさらにデフロスタ開口部8を閉じる向きに第1モードドア12が回動されるようにする。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用空調装置における空調ユニットの断面図である。
【図2】一実施形態に係る車両用空調装置におけるリンク機構を示す図である。
【図3】図2の第1カム溝201の詳細なカム形状を示す図である。
【図4】図2のリンクプレート20の回動角に対する第1モードドア12の回動角を示す作動線図である。
【符号の説明】
【0040】
8…デフロスタ開口部(第1開口部)、9…フェイス開口部(第2開口部)、11…フット開口部(第3開口部)、12…第1モードドア、13…第2モードドア。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内の各部へ空気を吹き出す第1〜第3開口部(8、9、11)と、
前記第1開口部(8)および前記第2開口部(9)を開閉するバタフライ式の第1モードドア(12)と、
前記第3開口部(11)を開閉する第2モードドア(13)とを備え、
前記第1モードドア(12)が前記第1開口部(8)を閉じるとともに前記第2開口部(9)を開き且つ前記第2モードドア(13)が前記第3開口部(11)を開いた状態を第1状態とし、前記第1モードドア(12)が前記第1開口部(8)を閉じるとともに前記第2開口部(9)を開き且つ前記第2モードドア(13)が前記第3開口部(11)を閉じた状態を第2状態としたとき、
前記第1状態のときに前記第1開口部(8)を閉じる向きに前記第1モードドア(12)を付勢する力と前記第2状態のときに前記第1開口部(8)を閉じる向きに前記第1モードドア(12)を付勢する力とが異なることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記第1開口部(8)は車両窓ガラス側へ空気を吹き出すデフロスタ開口部であり、前記第2開口部(9)は車室内の乗員頭部側へ空気を吹き出すフェイス開口部であり、さらに前記第3開口部(11)は車室内の乗員足元側へ空気を吹き出すフット開口部であることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記第1状態のときに前記第1開口部(8)を閉じる向きに前記第1モードドア(12)を付勢する力が前記第2状態のときに前記第1開口部(8)を閉じる向きに前記第1モードドア(12)を付勢する力よりも大きいことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記第2状態のときに前記第1開口部(8)を閉じる向きに前記第1モードドア(12)を付勢する力が前記第1状態のときに前記第1開口部(8)を閉じる向きに前記第1モードドア(12)を付勢する力よりも大きいことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−207700(P2008−207700A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−46995(P2007−46995)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】