説明

車両用空調装置

【課題】ユーザの不満を解消し、適確な故障診断を行うことができる車両用空調装置を提供する。
【解決手段】センサの検出状態およびエアコン動作要素の作動状態を少なくとも含むエアコン制御情報を取得するための、予め定められたエアコン制御情報取得操作を検出するエアコン制御情報取得操作検出手段と、検出したエアコン制御情報取得操作に基づき、エアコン制御情報を取得するエアコン制御情報取得手段と、取得したエアコン制御情報を記憶するエアコン制御情報記憶手段と、記憶したエアコン制御情報を出力するエアコン制御情報出力手段と、を備えることを特徴とする車両用空調装置として提供可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用空調装置は殆どの車両に取り付けられ、乗員が車室内で快適に過ごせるようになっている。乗員が好みの温度を設定すると、車室内に取り付けられた温度センサが検出する温度と設定温度とに基づいて風量が調整され、吹出口が選択される(特許文献1参照)。
【0003】
近年、車両の電子化,機構の複雑化に伴い、車載機器の故障解析も困難になっている。そこで、例えば、簡単な操作で車両用空調装置のアクチュエータの故障診断を行うことが可能な故障診断装置が考案されている(特許文献2参照)。
【0004】
また、修理担当者の手間を減らすために、各電子制御装置から故障情報を収集して故障診断を行う車両用故障診断装置が考案されている(特許文献3参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平07−285322号公報
【特許文献2】特開平09−286223号公報
【特許文献3】特開2005−346612号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術における故障診断は、電子制御装置に接続されたセンサやアクチュエータの故障を診断することに主眼が置かれている。そして、故障と診断された場合には、その故障の内容を示す故障診断コードをメモリ等に記憶して、爾後の故障解析に用いている。
【0007】
例えば、車両用空調装置の場合、温度センサやブロワモータ等の故障のように、再現性のある現象は故障診断コードに基づいて対処できるが、「冷えない」,「温まらない」等のクレームは、個人差のあるユーザの感覚に基づくものが多く、センサやアクチュエータの故障でないときには故障診断コードに記録が残されない。しかしながら、これらのクレームは少なくなく、クレームに対応するディーラー,整備部門の工数は無視できないものがある。さらに、センサやアクチュエータの故障はなく、NTF(No Trouble Found:故障なし)と判定されても、ユーザが納得せず、ディーラーの対応に不満を持ってしまうこともある。
【0008】
上記問題を背景として、ユーザの不満を解消し、適確な故障診断を行うことができる車両用空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0009】
上記課題を解決するための車両用空調装置は、センサの検出状態およびエアコン動作要素の作動状態を少なくとも含むエアコン制御情報を取得するための、予め定められたエアコン制御情報取得操作を検出するエアコン制御情報取得操作検出手段と、検出したエアコン制御情報取得操作に基づき、エアコン制御情報を取得するエアコン制御情報取得手段と、取得したエアコン制御情報を記憶するエアコン制御情報記憶手段と、記憶したエアコン制御情報を出力するエアコン制御情報出力手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
上記構成によって、ユーザが故障と認識した現象状況を、ユーザの特定操作(エアコン制御情報取得操作)により制御状態のデータを記録することにより、故障診断コードに残らない異常の原因を特定できる情報を残し、NTFの低減を図ることが可能となる。これにより、ユーザの不満も解消し、ディーラー持込時にそのデータを解析することにより正確な診断ができるようになり、故障の原因調査に要する時間も短縮される。
【0011】
また、本発明の車両用空調装置は、ユーザが操作入力を行うための操作パネルを備え、エアコン制御情報取得操作は、操作パネルの予め定められた操作対象を、通常操作時とは異なる操作態様にて操作するように構成することもできる。
【0012】
上記構成によって、車両用空調装置に備えられた操作パネルを用いることで、専用の操作スイッチ等を設けることなく、すなわちコストや車内の意匠に影響を及ぼすことなく、本発明の構成を実現することができる。
【0013】
また、本発明の車両用空調装置におけるエアコン制御情報取得操作は、操作パネルの複数の操作対象を連携して操作するように構成することもできる。
【0014】
通常操作時には、複数の操作対象を連携して操作することは稀である。上記構成によって、通常操作時とは異なる操作態様の操作を行うことが可能となる。
【0015】
また、本発明の車両用空調装置におけるエアコン制御情報取得操作は、操作パネルの操作対象を予め定められた時間を超えて押し続ける操作であるように構成することもできる。
【0016】
通常操作時には、操作対象を押す時間は短時間であることが多い。上記構成によっても、通常操作時とは異なる操作態様の操作を行うことが可能となる。
【0017】
また、本発明の車両用空調装置は、エアコン制御情報を予め定められたタイミングでサンプリングするエアコン制御情報サンプリング手段を備え、エアコン制御情報取得手段は、エアコン制御情報取得操作を検出したときを基準とする予め定められた期間のサンプリング結果を、エアコン制御情報として取得するように構成することもできる。
【0018】
上記構成によって、エアコン制御情報取得操作を検出したとき以外(例えばその前後)のエアコン制御情報を取得できるので、ユーザが故障と認識した現象の解析を精密に行うことができる。
【0019】
また、本発明の車両用空調装置は、日時情報を取得する日時情報取得手段を備え、エアコン制御情報記憶手段は、取得したエアコン制御情報と日時情報とを関連付けて記憶するように構成することもできる。
【0020】
上記構成によって、ユーザが故障と認識した現象と、その現象の発生時間帯との相関関係を調べることができる。そして、その相関関係に基づいて、現象の解析を行うことができる。
【0021】
また、本発明の車両用空調装置は、エアコン制御情報を示すデータを一括して記憶するメモリを備え、エアコン制御情報取得手段は、メモリの記憶内容のうち、少なくともエアコン制御情報を示すデータを含むダンプリストを取得するように構成することもできる。
【0022】
エアコン制御情報はメモリに記憶されていることが多いが、記憶されている領域は必ずしも連続しているわけではない。上記構成によって、例えば、予め定められたエアコン制御情報を含むメモリ領域を一括してダンプリストとして取得する方法を用いれば、効率よくエアコン制御情報を取得することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。図1に、本発明の車両用空調装置(以下、エアコンと称することもある)CAの全体構成を示す。車両用空調装置CAはダクト1を備え、該ダクト1には、車内空気を循環させるための内気吸い込み口13と、車外の空気を取込む外気吸い込み口14とが形成され、内外気切替ダンパー15により切り替え使用される。これら内気吸い込み口13ないし外気吸い込み口14からの空気は、ブロワモータ23により駆動されるブロワ16によってダクト1内に吸い込まれる。
【0024】
ダクト1内は、吸い込まれた空気を冷却して冷気を発生させるためのエバポレータ17と、逆にこれを加熱して暖気を発生させるヒータコア2(エンジン冷却水の廃熱により発熱動作する)とが設けられている。そして、これら冷気と暖気とが、エアミックスダンパー3の角度位置に対応した比率にて混合され、吹出口4,5,6より吹出される。
【0025】
このうち、フロントグラス曇り止め用のデフ吹出口([DEF])4は、フロントグラスの内面下縁に対応するインパネ上方奥に、フェイス([FACE])吹出口5はインパネの正面中央に、フット吹出口([FOOT])6はインパネ下面奥の搭乗者足元に対向する位置にそれぞれ開口し、吹出口切替用ダンパー7,8,9により個別に開閉される。
【0026】
具体的には、吹出口切替用モータ20からのダンパー制御用の回転入力位相に応じて、ダンパー駆動ギア機構10により、デフ吹出口4のみを開いた状態、フェイス吹出口5のみを開いた状態、フット吹出口6のみを開いた状態、フェイス吹出口5とデフ吹出口4とを開いた状態、フット吹出口6とデフ吹出口4とを開いた状態、フェイス吹出口5,デフ吹出口4,およびフット吹出口6の全てを開いた状態の間で切り替えられる。
【0027】
また、内外気切替ダンパー15は内外気切替用モータ21により、エアミックスダンパー3はエアミックス用モータ19により、吹出口切替用ダンパー7,8,9は吹出口切替用モータ20により、それぞれ電動駆動される。これらモータ19,20,21は、は例えばステッピングモータにて構成される。さらにブロワモータ23はブラシレスモータ等で構成され、PWM制御にて回転速度制御することにより吹出し風量が調整される。これらモータ19〜21,23の動作はエアコンECU50により集中制御される。また、モータ19〜21,23は、ドライバ等のモータ駆動回路,モータの回転位置を検出するポテンショメータ等を含むモータアッセンブリとして構成されている。
【0028】
図2に、エアコンECU50の構成例を示す。エアコンECU50の実体は周知のCPU501,ROM502,RAM503,入出力回路であるI/O504,A/D変換部506,時計IC508,EEPROM509,通信I/F(インターフェース)510およびこれらが接続されたバスライン505等を備えたコンピュータハードウェアである。エアコンECU50は、CPU501がROM502等に搭載されたエアコン制御ファームウェア(図示せず)を実行することにより、後述する各種の制御を行う。
【0029】
A/D変換部506は、周知のA/D変換回路を含み、後述する各センサが出力する電圧(アナログ値)を読み込んで、CPU501で処理可能なデジタル値に変換する。
【0030】
時計IC508はリアルタイムクロックICとも呼ばれ、CPU501からの要求に応じて時計・カレンダーのデータを送出あるいは設定するものである。CPU501は時計IC508から日時情報を取得する。また、車内LAN30に接続された他の車載機器から日時情報を取得してもよい。なお、CPU501が本発明のエアコン制御情報サンプリング手段,日時情報取得手段に相当する。
【0031】
EEPROM(Electrically Erasable & Programmable Read Only Memory:電気的消去・プログラム可能・読出し専用メモリ)509は、エアコンCAが非動作時あるいはエアコンECU50の電源がオフ状態の場合に記憶内容が保持される。EEPROMの他に、フラッシュメモリ,ハードディスク装置等の不揮発性記憶媒体を用いてもよい。なお、EEPROM509が本発明のエアコン制御情報記憶手段に相当する。
【0032】
通信I/F510は、車内LAN30との通信を行うためのネットワークアダプタ等の回路を備え、他の車載機器との通信を行う。また、図1の例では、モータ(アッセンブリ)19〜21,23の動作制御を、車内LAN30を介して行っている。無論、車内LAN30を介さずにモータ(アッセンブリ)19〜21,23の動作制御を行ってもよい。なお、通信I/F510が本発明のエアコン制御情報出力手段に相当する。
【0033】
図1に戻り、エアコンECU50には、エバポレータセンサ51,内気センサ55,外気センサ56,水温センサ57,および日射センサ58が接続されている。
【0034】
エアコンECU50には、風量設定スイッチ52,吹き出しモード(吹出口)を切り替えるためのモードスイッチ53,温度設定スイッチ54,A/Cスイッチ59,内外気切替スイッチ60,送風オフスイッチ61,デフロスタ作動用のDEFスイッチ62,オート切替スイッチ65,およびリアデフォッガ(図示せず)作動用のリアデフスイッチ70が、インジケータ用光源49(光源の駆動部を含む)とともに接続されている。なお、これらのスイッチが本発明の操作対象に相当する。また、液晶ディスプレイ63も接続されている。
【0035】
図3に、上述のスイッチが組み込まれた操作ユニット100の構成例を示す。操作ユニット100は、車両のインパネ部に設けられ、操作パネル110に各スイッチが組み込まれている。温度設定スイッチ54はダイアルスイッチにて構成され、樹脂製の本体に検出電極42がそれぞれ埋め込まれている。なお、操作パネル110が本発明のエアコン制御情報取得操作検出手段に相当する。
【0036】
また、風量設定スイッチ52,モードスイッチ53,A/Cスイッチ59,内外気切替スイッチ60,送風オフスイッチ61,DEFスイッチ62,オート切替スイッチ65,およびリアデフスイッチ70は、いずれも押しボタンスイッチであり、樹脂製の本体に検出電極42がそれぞれ埋め込まれるとともに、インジケータ光源49が設けられている。いずれもスイッチを1回押す毎に機能選択状態がサイクリックに切り替わる。インジケータ光源49は、各スイッチに対応する主機能が選択されたときに点灯する。
【0037】
液晶ディスプレイ63は、運転席と助手席との各設定温度や風量ないし吹出口の設定状態等のエアコン動作に関する各種情報あるいは日時情報を表示する。図3の例では、外気温,ブロワ風量,吹き出しモード,および設定温度が表示されている。なお、液晶ディスプレイ63が本発明のエアコン制御情報出力手段に相当する。
【0038】
以下に、エアコンECU50の具体的な制御内容を示す。
・内外気切替スイッチ60の操作入力状態に対応して、内気側および外気側のいずれかに内外気切替用ダンパー15が倒れるよう、対応する内外気切替用モータ21のドライバIC(図示せず)に駆動制御指令を行う。
・A/Cスイッチ59の操作状態に応じて、エバポレータ17の作動をオン・オフさせる。
【0039】
・オート切替スイッチ65の入力状態に基づいて、エアコンの動作モードをマニュアルモードとオートモードとの間で切り替える。
・オートモードでは、温度設定スイッチ54による設定温度の入力情報と、内気センサ55,外気センサ56,水温センサ57,および日射センサ58の出力情報とを参照し、車内温度が設定温度に近づくよう、エアミックスダンパー3の開度調整による吹出し温度調整と、ブロワモータ23による風量調整と、吹出口切替ダンパー7,8,9の位置変更とがなされるよう、対応するエアミックス用モータ19,ブロワモータ23,吹出口切替用モータ20の動作制御指令を行う。
・マニュアルモードでは、風量設定スイッチ52とモードスイッチ53との操作入力状態に対応して、ブロワモータ23による風量調整を行うとともに、吹出口切替ダンパー7,8,9が対応する開閉状態となるように吹出口切替用モータ20への駆動制御指令を行う。
【0040】
・DEFスイッチ62の操作に伴い、フロントガラス側のデフ吹出口4の開閉制御を行う。
・リアデフスイッチ70の操作に伴い、図示しないリアガラスの電熱線(リアデフォッガ)に通電し、リアガラスの曇り除去を行う。
【0041】
図4を用いて、エアコン制御情報取得処理について説明する。なお、本処理は、エアコンECU50のROM501等に記憶されたエアコン制御ファームウェアに含まれ、他の処理とともに繰り返し実行される。まず、ユーザの操作ユニット100における操作入力情報を取得する(S11)。次に、エアコン制御情報取得操作であるか否かを判定する。
【0042】
エアコン制御情報取得操作としては、以下のものが挙げられる。
・複数のスイッチの二重押し(連携操作)
例えば、モードスイッチ53とA/Cスイッチ59を同時に押す。あるいは、送風オフスイッチ61を押しながらオート切替スイッチ65を押す。
・複数のスイッチを予め定められた順序で押す(連携操作)
例えば、送風オフスイッチ61,送風オフスイッチ61,モードスイッチ53の順に押す。このとき、スイッチ操作後、例えば2秒のような予め定められた時間内に次のスイッチが操作されなかった場合には、エアコン制御情報取得操作でないと判定する。
・一つのスイッチの長押し
例えば、モードスイッチ53を1秒以上押し続ける。
【0043】
エアコン制御情報取得操作であるか否かを判定するまでは、スイッチ操作前のエアコンの動作状態を維持する。
【0044】
エアコン制御情報取得操作でないと判定された場合(S12:No)、スイッチの操作内容に基づいて、通常のエアコンの動作制御を行う(S18)。
【0045】
一方、エアコン制御情報取得操作であると判定された場合(S12:Yes)、スイッチ操作前のエアコンの動作状態を維持し、RAM503等に記憶されている、センサの検出状態およびエアコン動作要素の作動状態を少なくとも含むエアコン制御情報を取得する(S13)。
【0046】
図5に、RAM503に記憶されるエアコン制御情報の一例を示す。
・センサ検出状態情報503a:内気センサ55,外気センサ56,水温センサ57,および日射センサ58の検出値。
・スイッチ検出状態情報503b:風量設定スイッチ52,モードスイッチ53,温度設定スイッチ54,A/Cスイッチ59,内外気切替スイッチ60,送風オフスイッチ61,DEFスイッチ62,オート切替スイッチ65,およびリアデフスイッチ70の状態。各スイッチに含まれるインジケータ用光源49の状態を含めてもよい。
【0047】
・ダンパー位置情報503c:内外気切替ダンパー15,エアミックスダンパー3,および吹出口切替用ダンパー7,8,9の位置情報。図1のように、エアミックス用モータ19には、モータの回転位置すなわちエアミックスダンパー3の位置を検出するためのポテンショメータ19aが含まれている(吹出口切替用モータ20および内外気切替用モータ21も同様の構成をとるが、ポテンショメータは非図示)。これらポテンショメータの検出値を位置情報とする。
【0048】
・モータ駆動情報503d:エアミックス用モータ19,吹出口切替用モータ20,内外気切替用モータ21,およびブロワモータ23の駆動制御に用いるための情報。駆動/停止の指令情報,ダンパーを設定された位置へ移動させるための目標回転位置情報等が含まれる。
・コンプレッサ駆動情報503e:エバポレータ17には、気化した冷媒ガスを圧縮して液体に戻す前に液化し易いように加圧するコンプレッサ18が接続されている。このコンプレッサ18の駆動状態を取得する。
・エバポレータ駆動情報503f:エバポレータ17の駆動状態,エバポレータセンサ51の検出値等が含まれる。
【0049】
図4に戻り、時計IC508から日時情報503gを取得する(S14)。取得したエアコン制御情報を、日時情報503gと関連付けてEEPROM509のエアコン制御情報記憶領域に記憶する(S15)。図6に、EEPROM509のエアコン制御情報記憶領域の一例を示す。図6の例では、N個のエアコン制御情報記憶領域があり、エアコン制御情報記憶領域1から順次書き込まれ、エアコン制御情報記憶領域Nまで書き込まれたら、エアコン制御情報記憶領域1に戻り上書きしていく。
【0050】
各エアコン制御情報記憶領域には、上述したエアコン制御情報(センサ検出状態情報503a,スイッチ検出状態情報503b,ダンパー位置情報503c,モータ駆動情報503d,コンプレッサ駆動情報503e,エバポレータ駆動情報503f)が、日時情報503gと関連付けて記憶される。
【0051】
図4に戻り、エアコン制御情報出力要求がある場合(S16:Yes)、EEPROM509に記憶されたエアコン制御情報を、エアコン制御情報の出力要求元へ出力する(S17)。
【0052】
エアコン制御情報の出力要求としては、以下のものが挙げられる。
・エアコン制御情報取得操作を検出したときに、エアコン制御情報の出力要求があったと見なして、液晶ディスプレイ63にエアコン制御情報の一部あるいは全てを表示する。一画面で納まらない場合には、画面をスクロール可能とする。
・例えばディーラーあるいは整備工場に設置されている故障診断装置200(図1参照)が接続され、その故障診断装置200からエアコン制御情報出力要求を受信した場合、エアコン制御情報を故障診断装置200に出力する。
【0053】
エアコン制御情報は、エアコン制御情報取得操作を検出したときに取得したものとする他に、エアコン制御情報取得操作を検出したときを基準とする予め定められた期間のサンプリング結果をエアコン制御情報としてもよい。例えば、図7のようにエアコン制御情報取得操作を検出したときから遡ったm回分のエアコン制御情報群を、一つのエアコン制御情報とするものである。つまり、エアコン制御情報1−1の記憶内容が図6のエアコン制御情報1の記憶内容と同様のもの(図5の503a〜503g)となる。
【0054】
サンプリングは、予め定められたタイミング・周期で行われ、サンプリングデータはRAM503に記憶される。サンプリングデータ記憶領域はm回分のサンプリングデータを記憶でき、古いものから順次最新のものに上書きされる。エアコン制御情報取得操作を検出したときに、その時点でRAM503に記憶されているサンプリングデータが一括してEEPROM509のエアコン制御情報記憶領域に転送される。
【0055】
エアコン制御情報は、エアコン制御情報取得操作を検出した後のサンプリングデータを含めてもよく、例えばm個のサンプリングデータのうち、エアコン制御情報取得操作を検出した後のサンプリングデータを何個にするかについての制約は特にない。
【0056】
RAM503からEEPROM509へのエアコン制御情報の記憶は、個別のエアコン制御情報毎にRAM503から読み出してEEPROM509へ記憶する方法以外にも、RAM503のエアコン制御情報が含まれる予め定められた領域を一括してEEPROM509へ記憶する方法(メモリダンプ)を用いてもよい。
【0057】
エアコンCAの操作ユニット100における制御情報取得操作により、他の車載機器210の制御情報を取得可能とする構成としてもよい。例えば車載機器210を、車両のエンジン制御を行うエンジンECUとする。操作ユニット100において、エアコン制御情報取得操作に準ずる操作(通常のエアコン操作以外の操作)が検出された場合、通信I/F510を介して車内LAN30に、該操作情報を出力する。この操作情報は、車載機器毎に固有のものとしてもよいし、車載機器共通のものとしてもよい。
【0058】
エンジンECUは、車内LAN30からこの操作情報を受信した場合、該操作情報がエンジンECUに対するものか否かを調べ、エンジンECUに対するものである場合には、エンジンを駆動制御するために必要なセンサの検出情報およびアクチュエータの動作状態を取得して、制御情報としてエンジンECU内の予め定められた(不揮発)メモリ領域に記憶する。
【0059】
上述のような、操作パネル(あるいは操作対象)を含む車載機器の制御情報取得操作により、操作パネルを含まない他の車載機器の制御情報の取得,記憶,および出力が可能となる。また、エアコンCAの他に、車載音響映像装置においても、本発明と同様の構成をとることが可能となる。
【0060】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、これらはあくまで例示にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づく種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】車両用空調装置の構成を示す図。
【図2】エアコンECUの構成例を示す図。
【図3】操作ユニットの構成例を示す図。
【図4】エアコン制御情報取得処理を説明するフロー図。
【図5】エアコン制御情報の一例を示す図。
【図6】エアコン制御情報の記憶内容の例を示す図。
【図7】エアコン制御情報の記憶内容の別例を示す図。
【符号の説明】
【0062】
50 エアコンECU
51 エバポレータセンサ
52 風量設定スイッチ(操作対象)
53 モードスイッチ(操作対象)
54 温度設定スイッチ(操作対象)
55 内気センサ
56 外気センサ
57 水温センサ
58 日射センサ(操作対象)
59 A/Cスイッチ(操作対象)
60 内外気切替スイッチ(操作対象)
61 送風オフスイッチ(操作対象)
62 DEFスイッチ(操作対象)
63 液晶ディスプレイ(エアコン制御情報出力手段)
65 オート切替スイッチ(操作対象)
70 リアデフスイッチ(操作対象)
100 操作ユニット
110 操作パネル(エアコン制御情報取得操作検出手段)
501 CPU(エアコン制御情報サンプリング手段,日時情報取得手段)
503 RAM
508 時計IC
509 EEPROM(エアコン制御情報記憶手段)
510 通信I/F(エアコン制御情報出力手段)
CA 車両用空調装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサの検出状態およびエアコン動作要素の作動状態を少なくとも含むエアコン制御情報を取得するための、予め定められたエアコン制御情報取得操作を検出するエアコン制御情報取得操作検出手段と、
検出した前記エアコン制御情報取得操作に基づき、前記エアコン制御情報を取得するエアコン制御情報取得手段と、
取得した前記エアコン制御情報を記憶するエアコン制御情報記憶手段と、
記憶した前記エアコン制御情報を出力するエアコン制御情報出力手段と、
を備えることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
ユーザが操作入力を行うための操作パネルを備え、
前記エアコン制御情報取得操作は、前記操作パネルの予め定められた操作対象を、通常操作時とは異なる操作態様にて操作するものである請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記エアコン制御情報取得操作は、前記操作パネルの複数の操作対象を連携して操作するものである請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記エアコン制御情報取得操作は、前記操作パネルの操作対象を予め定められた時間を超えて押し続ける操作である請求項2または請求項3に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記エアコン制御情報を予め定められたタイミングでサンプリングするエアコン制御情報サンプリング手段を備え、
前記エアコン制御情報取得手段は、前記エアコン制御情報取得操作を検出したときを基準とする予め定められた期間のサンプリング結果を、前記エアコン制御情報として取得する請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
日時情報を取得する日時情報取得手段を備え、
前記エアコン制御情報記憶手段は、取得した前記エアコン制御情報と前記日時情報とを関連付けて記憶する請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記エアコン制御情報を示すデータを一括して記憶するメモリを備え、
前記エアコン制御情報取得手段は、前記メモリの記憶内容のうち、少なくとも前記エアコン制御情報を示すデータを含むダンプリストを取得する請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−51320(P2009−51320A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−218984(P2007−218984)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】