説明

車両用空調装置

【課題】空調ケースにおける外形寸法の大型化を必要とせず、省動力運転が可能な車両用空調装置を提供する。
【解決手段】送風機110を、空調ケース111内におけるエバポレータ104に対して空調空気流れ下流側に配設する。また、空調ケース111に、エバポレータ104と送風機110との間へ車両室内の空気を導入する第2内気口140を形成する。第2内気口140には、第2内気口140の開閉状態を調整する第2内気切替ドア141を設ける。これによれば、第1内気切替ドア121を調整し、第1内気口120を開状態とし、第2内気切替ドア141を調整し、第2内気口140を開状態とし、エバポレータ104を通過しない車両室内の空気を空調ケース111内に導入し、送風機駆動動力を効果的に節減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両室内の空調を行う車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用空調装置として、特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1に記載の車両用空調装置の通風路は、空調ケースによって形成されている。空調ケース内には、車室内へ送風される空気を冷却する蒸発器が配置され、さらに、蒸発器をバイパスして空気を流すバイパス通路が形成されている。特許文献1に記載の車両用空調装置においては、バイパス通路を通過するバイパス風量の分だけ、蒸発器通過風量を減少させることができ、その結果、蒸発器の必要冷却能力を低減させ、圧縮機駆動動力の節減を図っている。
【特許文献1】特開2008−81121号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の車両用空調装置では、バイパス通路が蒸発器の側面に形成される為、空調ケースの外形寸法が大きくなってしまうといった問題点がある。
【0004】
問題となる理由として、空調ケースは、車両に搭載可能なスペースの有限性という観点から外形寸法の小さいものが望まれており、また、例えば、外形寸法が大きい空調ケースは、バイパス通路を必要としない車両に搭載する場合において共用化し難いといった点が挙げられる。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、空調ケースにおける外形寸法の大型化を必要とせず、省動力運転が可能な車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するために、以下の技術的手段を採用する。
【0007】
請求項1に係る発明は、空調空気が内部を流通する空調ケース(111、211)と、空調ケース(111、211)内に配設され、空調空気を冷却する冷却用熱交換器(104)と、空調ケース(111、211)内に配設され、空調空気を車両室内に送風する送風機(110)とを有し、空調ケース(111、211)には、空調ケース(111、211)の内部における冷却用熱交換器(104)に対して空調空気流れ上流側に車両室内の空気を導入する第1内気口(120)が形成されている車両用空調装置であって、送風機(110)は、空調ケース(111、211)内における冷却用熱交換器(104)に対して空調空気流れ下流側に配設され、空調ケース(111、211)には、空調ケース(111、211)の内部における冷却用熱交換器(104)と送風機(110)との間に車両室内の空気を導入する第2内気口(140)が形成され、第1内気口(120)、及び第2内気口(140)の開閉状態を調整する開閉手段(121、141)を備えることを特徴とする。
【0008】
これによれば、第1内気口(120)を開状態とし、第2内気口(140)を閉状態とした状態において、第1内気口(120)から吸入した車両室内の空気の全てを冷却用熱交換器(104)に通風させることができ、冷却された空調空気を車両室内に送風することができる。
【0009】
更に、第1内気口(120)を開状態とし、第2内気口(140)を開状態とした状態において、冷却用熱交換器(104)を通過しない車両室内の空気を空調ケース(111、211)内に導入することができ、省動力運転を行うことが可能となる。省動力運転とは、第2内気口(140)から導入される導入風量の分だけ、冷却用熱交換器(104)の通風抵抗を減少させて送風機(110)の必要送風能力を低減させることで、送風機駆動動力を効果的に節減する運転である。その結果、従来技術のようにバイパス通路を形成する必要が無い為、空調ケース(111、211)における外形寸法の大型化も必要としない省動力運転を行うことが可能となる。また、空調ケース(111、211)における外形寸法の大型化を必要としない為、車両に搭載可能なスペースの有限性という観点から望まれ、例えば、バイパス通路を必要としない車両に搭載する場合において共用化し易い空調ケース(111、211)を提供することができる。
【0010】
また、請求項2に係る発明では、冷却用熱交換器(104)の停止時においては、開閉手段(121、141)によって、第1内気口(120)が閉状態となるように調整され、一方、第2内気口(140)が開状態となるように調整される内気切替モードに設定可能とすることを特徴とする。
【0011】
ここで、冷却用熱交換器(104)の停止時において、送風機(110)は、冷却用熱交換器(104)に通風する必要が無い。従って、第1内気口(120)を閉状態とし、第2内気口(140)を開状態とすることによって、冷却用熱交換器(104)を通過させずに空調空気を送風機(110)によって車両室内に送風することができる。よって、送風機(110)の必要送風能力を低減する省動力運転を実行することができ、送風機駆動動力を効果的に節減することが可能となる。
【0012】
また、請求項3に係る発明では、空調ケース(111、211)には、空調ケース(111、211)の内部における冷却用熱交換器(104)に対して空調空気流れ上流側に車両室外の空気を導入する外気口(130)が形成され、開閉手段(121、131、141)によって、外気口(130)の開閉状態が調整され、暖房運転時であって、除湿を必要とする場合においては、開閉手段(121、131、141)によって、第1内気口(120)が閉状態となるように、一方、第2内気口(140)、及び外気口(130)が開状態となるように調整された外気切替モードに設定可能とすることを特徴とする。
【0013】
これによれば、外気口(130)から導入された温度の低い車両室外の空気を冷却用熱交換器(104)に通風させ除湿することができる。その結果、第1内気口(120)から導入された温度の高い車両室内の空気を冷却用熱交換器(104)に通風させ除湿する場合と比べて、除湿効果を高めることが可能となる。更に、車両室内の空気が十分に高い温度で安定している暖房運転の場合、第2内気口(140)から車両室内の温度の高い空気を冷却用熱交換器(104)の空調空気流れ下流側に導入することができる。その結果、上記の除湿効果を高めつつ、送風機駆動動力を効果的に節減することが可能となる。
【0014】
また、請求項4に係る発明では、空調ケース(111、211)内に配設され、空調空気を加熱する加熱装置(109)を備え、加熱装置(109)は、空調ケース(111、211)内における送風機(110)に対して空調空気流れ下流側に配設されていることを特徴とする。
【0015】
これによれば、加熱装置(109)は、送風機(110)に対して空調空気流れ下流側となる乗員側へ配設される為、第2内気口(140)から車両室内の空気を吸い込む際に生じる送風機(110)の吸い込み騒音を乗員に対して遮音することが可能となる。
【0016】
また、請求項5に係る発明では、加熱装置(109)は、エンジン(105)を冷却する冷却水が内部を流れ、空調空気と冷却水との間で熱交換する加熱用熱交換器(109)であることを特徴とする。
【0017】
これによれば、空調空気を加熱する熱源を特別に設ける必要がなく、エンジン(105)を冷却した冷却水を熱源とすることにより、効率良く、空調空気の温度を調整することが可能となる。
【0018】
また、請求項6に係る発明では、第2内気口(140)は、空調ケース(111、211)における下側に設けられることを特徴とする。
【0019】
これによれば、第2内気口(140)を乗員から最も離れた位置とすることができ、送風機(110)による吸い込み騒音を低減することが可能となる。
【0020】
なお、この欄及び特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態における車両用空調装置100が搭載された車両の構造について、図1を用いて説明する。図1は、本実施形態における車両用空調装置100を示す模式図である。図1が記載された紙面上において、紙面上方を車両前方とし、紙面下方を車両後方とする。ここで、車両前方とは、エンジンルーム側であり、車両後方とは、車室内(乗員側)である。本実施形態の車両は、信号待ち時等の停車時(車両エンジン動力不要時)に車両エンジンを自動的に停止する車両(エコラン車、ハイブリット車)である。
【0022】
本実施形態における車両用空調装置100は、冷凍サイクル112を構成するエバポレータ104、エンジン105を冷却する冷却水が循環するヒータ回路113に配設されるヒータコア109、送風用の送風機110等が空調ケース111内に設けられて構成されている。また、各機器を制御するECU190を有している。
【0023】
冷凍サイクル112は、圧縮機101、コンデンサ102、膨張弁103、エバポレータ104が順に配管で環状に接続されて構成されている。圧縮機101は、エバポレータ104から流出する冷媒を高温高圧に圧縮する流体機械である。コンデンサ102は、圧縮機101から吐出される高温高圧の冷媒を走行風と熱交換させ、冷媒を低温高圧に冷却する熱交換器である。膨張弁103は、コンデンサ102から流出する低温高圧の冷媒を低温低圧に減圧膨張させる減圧手段である。エバポレータ104は、膨張弁103から流出する低温低圧の冷媒を送風機110によって通風する空調空気と熱交換させ、空調空気を除湿、冷却する熱交換器である。
【0024】
エンジン105は、車両用水冷の内燃機関であり、ラジエータ108側に冷却水が循環するラジエータ回路114と、ヒータコア109側に冷却水が循環するヒータ回路113を備えている。ラジエータ回路114には、ウォータポンプ106、サーモスタット107、ラジエータ108、及びバイパス路108aが設けられている。ウォータポンプ106は、冷却水を循環させる流体機械である。サーモスタット107は、ラジエータ108へ流入する冷却水量を制御する流量調整手段である。ラジエータ108は、サーモスタット107にて許容された冷却水を走行風と熱交換させ、冷却水を冷却する熱交換器である。バイパス路108aは、ラジエータ108をバイパスする配管である。
【0025】
ヒータ回路109は、ラジエータ108に対して並列に接続された回路であり、その途中にヒータコア109が設けられている。ヒータコア109は、エンジン105から流出した冷却水を送風機110によって送風される空調空気と熱交換させ、空調空気を加熱する加熱装置である。ヒータ回路113は、図示しないバルブによってヒータコア109への冷却水の流量が調整されて、ヒータコア109の加熱能力が調整されるようになっている、いわゆるリヒート式である。
【0026】
次に、本実施形態における車両用空調装置100の構造について、図2、及び図3を用いて詳しく説明する。図2、及び図3は、本実施形態における車両用空調装置100を示す模式図である。
【0027】
空調ケース111は、エバポレータ104、ヒータコア109、及び送風機110等を収容するとともに、空調空気の流路を形成するものである。空調ケース111内には、車両室内を空調する空調空気の流れにおいて、上流側から下流側へ、フィルタ114、エバポレータ104、送風機110、ヒータコア109の順に配置されている。ここで、空調ケース111には、エバポレータ104、ヒータコア109、送風機110、及びフィルタ114をバイパスするバイパス通路は形成されておらず、空調ケース111は、これらの構成部品の形状に応じて、可能な限り小径に形成されている。
【0028】
フィルタ114は、空調空気から埃や異物などを取り除くものであり、空調空気流れにおいて、エバポレータ104の上流側に近接して設けられている。送風機110は、軸方向から吸い込み、軸方向に送風する吸い込み式の軸流ファンである。
【0029】
また、空調ケース111には、第1内気口120、外気口130、第2内気口140、デフロスタ口150、フェイス口150、及びフット口170が形成されている。
【0030】
第1内気口120は、空調ケース111内に車両室内の空気を導入する導入口である。第1内気口120には、第1内気調整手段として、第1内気口120の開閉状態を調整する第1内気切替ドア121が設けられている。本実施形態における第1内気切替ドア121は、バタフライドアである。外気口130は、空調ケース111内に車両室外の空気を導入する導入口である。外気口130には、外気調整手段として、外気口130の開閉状態を調整する外気切替ドア131が設けられている。本実施形態における外気切替ドア131は、バタフライドアである。
【0031】
第1内気口120、及び外気口130は、空調空気流れにおいて最も上流側であって、空調ケース111における車両上側に形成されている。外気口130は、第1内気口120に対して車両前方に位置している。
【0032】
デフロスタ口150は、空調ケース111からウィンドガラスへ空調空気を吹き出す吹出口である。デフロスタ口150には、デフロスタ口150の開閉状態を調整するデフロスタ切替ドア151が設けられている。本実施形態におけるデフロスタ切替ドア151は、バタフライドアである。
【0033】
フェイス口160は、空調ケース111から乗員の胸元へ空調空気を吹き出す吹出口である。フェイス口160には、フェイス口160の開閉状態を調整するフェイス切替ドア161が設けられている。本実施形態におけるフェイス切替ドア161は、バタフライドアである。
【0034】
フット口170は、空調ケース111から乗員の足元へ空調空気を吹き出す吹出口である。フット口170には、フット口170の開閉状態を調整するフット切替ドア171が設けられている。本実施形態におけるフット切替ドア171は、バタフライドアである。
【0035】
デフロスタ口150、フェイス口160、及びフット口170は、空調空気流れにおいて最も下流側に形成されている。デフロスタ口150、及びフェイス口160は、空調ケース111における車両上側に形成されている。デフロスタ口150は、フェイス口160に対して車両上方に位置している。また、フット口170は、空調ケース111における車両下側に形成されている。
【0036】
第2内気口140は、空調ケース111内に車両室内の空気を導入する導入口である。第2内気口140には、第2内気調整手段として、第2内気口140の開閉状態を調整する第2内気切替ドア141が設けられている。第2内気切替ドア141、第1内気切替ドア121、及び外気切替ドア131は、開閉手段に相当する。本実施形態における第2内気切替ドア141は、第2内気口140における空調空気流れ上流側の開口端を回転中心として回転する板ドアである。第2内気口140は、空調空気流れにおいてエバポレータ104と送風機110との間であって、空調ケース111における車両下側に形成されている。
【0037】
ECU190は、第1ドアコントローラ191を介して、第1内気切替ドア121及び外気切替ドア131の開度を制御している。また、ECU190は、第2ドアコントローラ192を介して、第2内気切替ドア141、デフロスタ切替ドア151、フェイス切替ドア161、及びフット切替ドア171の開度を制御している。また、ECU190は、送風機コントローラ193を介して送風機110の回転数を制御している。
【0038】
車両用空調装置100は、上記のECU190による各種ドアの開閉制御により、内外気切替モードと吹出切替モードとを形成して、空調空気流れを変更可能としている。内外気切替モードは、各導入口の開閉状態を選択するモードであって、第1内気切替モード、第2内気切替モード、第3内気切替モード、第1外気切替モード、及び第2外気切替モードを有する。
【0039】
第1内気切替モード時において、第1内気切替ドア121は、第1内気口120が開状態となるように調整し、外気切替ドア131は、外気口130が閉状態となるように調整し、第2内気切替ドア141は、第2内気口140が閉状態となるように調整する。これによって、空調ケース111内に導入される空気は、第1内気口120から導入される車両室内の空気となる。
【0040】
第2内気切替モード時において、第1内気切替ドア121は、第1内気口120が開状態となるように調整し、外気切替ドア131は、外気口130が閉状態となるように調整し、第2内気切替ドア141は、第2内気口140が開状態となるように調整する。これによって、空調ケース111内に導入される空気は、第1内気口120から導入された車両室内の空気、及び第2内気口140から導入された車両室内の空気となる。
【0041】
第3内気切替モード時において、第1内気切替ドア121は、第1内気口120が閉状態となるように調整し、外気切替ドア131は、外気口130が閉状態となるように調整し、第2内気切替ドア141は、第2内気口140が開状態となるように調整する。これによって、空調ケース111内に導入される空気は、第2内気口140から導入される車両室内の空気となる。第3内気切替モードとしているところを、本発明の内気切替モードとしている。
【0042】
第1外気切替モード時において、第1内気切替ドア121は、第1内気口120が閉状態となるように調整し、外気切替ドア131は、外気口130が開状態となるように調整し、第2内気切替ドア141は、第2内気口140が閉状態となるように調整する。これによって、空調ケース111内に導入される空気は、外気口130から導入される車両室外の空気となる。
【0043】
第2外気切替モード時において、第1内気切替ドア121は、第1内気口120が閉状態となるように調整し、外気切替ドア131は、外気口130が開状態となるように調整し、第2内気切替ドア141は、第2内気口140が開状態となるように調整する。これによって、空調ケース111内に導入される空気は、外気口130から導入された車両室外の空気、及び第2内気口140から導入された車両室内の空気となる。第2外気切替モードとしているところを、本発明の外気切替モードとしている。
【0044】
一方、吹出切替モードは、各吹出口の開閉状態を選択するモードであって、デフロスタモード、フェイスモード、フットモード、バイレベルモード等を有している。そして、各吹出口に設けられた切替ドア151、161、171を調整し、各吹出口からの吹き出し量を変化させることで、上記の各モードを形成している。図2は、第2内気切替モード時におけるバイレベルモードの空調空気の流れを示しており、図3は、第3内気切替モード時におけるバイレベルモードの空調空気の流れを示している。
【0045】
次に、本実施形態における車両用空調装置100の作動について説明する。本実施形態における車両用空調装置100は、車両室内に対して冷房、及び暖房が可能なものである。
【0046】
1.冷房時(通常運転)
車両室内の温度が高い為に乗員が車両室内の冷房を望む場合、冷凍サイクル112が作動され、ヒータコア109への冷却水の流量を調整するバルブは閉じられる。そして、内外気切替モードは、第1内気切替モード、或いは第1外気切替モードに設定される。これらの内外気切替モード時における空調空気は、第1内気口120、或いは外気口130から空調ケース111内に導入され、エバポレータ104を通過することによって冷却され、送風機110によってヒータコア109を通過して車両室内に送風される。ここで、冷房時において、ヒータコア109への冷却水の流量を調整するバルブは閉じられていることから、ヒータコア109へ冷却水が流入することが阻止され、ヒータコア109は作動していない停止状態である為、車両室内には、エバポレータ104によって冷却された空調空気が送風される。
【0047】
2.冷房時(省動力運転)
また、冷房時において、冷房運転を続けたことによって車両室内の温度が下がり、乗員が快適と感じる温度帯に安定している場合や、乗員が車両室内の温度変化を望まない場合には、内外気切替モードは、第2内気切替モード、或いは第2外気切替モードに設定される。そして、省動力運転が実行される。省動力運転とは、第2内気口140から導入された導入風量の分だけ、エバポレータ104の通風抵抗を減少させて送風機110の必要送風能力を低減させることで、送風機駆動動力を効果的に節減する運転である。これらの内外気切替モード時における省動力運転では、第1内気口120、或いは外気口130から導入された空調空気は、エバポレータ104を通過することによって冷却され、送風機110によってヒータコア109を通過して車両室内に送風される。また、第2内気口140から導入された空調空気は、直接ヒータコア109側に導入され、上記の第1内気口120、或いは外気口130から導入されてエバポレータ104を通過して冷却された空調空気とともに、送風機110によってヒータコア109を通過して車両室内に送風される。
【0048】
3.暖房時(通常運転)
車両室内の温度が低い為に乗員が車両室内の暖房とともにウィンドガラスの除湿を望む場合、冷凍サイクル112が作動され、ヒータコア109への冷却水の流量を調整するバルブが開かれ、開度調整される。そして、内外気切替モードは、第1内気切替モード、或いは第1外気切替モードに設定される。これらの内外気切替モード時における空調空気は、第1内気口120、或いは外気口130から空調ケース111内に導入され、エバポレータ104を通過することによって除湿され、送風機110によってヒータコア109を通過して車両室内に送風される。ここで、暖房時において、ヒータコア109への冷却水の流量を調整するバルブが開かれ、開度調整されることから、ヒータコア109へ冷却水が流入することが許容され、ヒータコア109は作動している運転状態である為、車両室内には、エバポレータ104によって除湿され、ヒータコア109によって加熱された空調空気が送風される。
【0049】
4.暖房時(省動力運転)
また、暖房時において、暖房運転を続けたことによって車両室内の温度が上がり、乗員が快適と感じる温度帯に安定している場合や、乗員が車両室内の温度変化を望まない場合には、内外気切替モードは、第2内気切替モード、或いは第2外気切替モードに設定される。そして、省動力運転が実行される。これらの内外気切替モード時においては、第1内気口120、或いは外気口130から導入された空調空気は、エバポレータ104を通過することによって除湿され、送風機110によってヒータコア109を通過して車両室内に送風される。第2内気口140から導入された空調空気は、上記のエバポレータ104を通過して冷却された空調空気とともに、送風機110によってヒータコア109を通過して車両室内に送風される。
【0050】
5.エバポレータ104の停止時
冷房時、及び暖房時においてエバポレータ104が停止する場合がある。例えば、暖房時であって除湿を必要としない場合や、信号待ち時等の停車時に車両エンジンが自動的に停止され圧縮機が停止した場合等である。
【0051】
このようなエバポレータ104の停止時においては、内外気切替モードは、第3内気切替モードに設定される。第3内気切替モード時における空調空気は、第2内気口140から空調ケース111内に導入され、送風機110によってヒータコア109を通過して車両室内に送風される。ここで、冷房時においては、ヒータコア109は作動していない停止状態である為、車両室内には、車両室内の空気と同じ温度の空調空気が送風される。また、暖房時においては、ヒータコア109は作動している為、車両室内には、ヒータコア109によって加熱された空調空気が送風される。
【0052】
本実施形態の構成、及び作動は以上のようになっている。本実施形態における車両用空調装置100は、従来の車両用空調装置のようなバイパス通路が形成された空調ケースを必要とせず、第2内気口140からエバポレータ104を通過しない車両室内の空気を空調ケース111内に導入しているので、エバポレータ104を通過する空気量を減らすことが可能となる。換言すると、空調ケース111を大型化すること無く、各空調条件に応じた省動力運転を行うことが可能となる。また、空調ケース111を大型化することが無い為、例えば、エバポレータ104をバイパスさせる必要の無い車両に搭載する場合においても、共用化し易い。さらに、空調ケースを大型化すること無く、第2内気口140から導入される導入風量の分だけ、冷却用熱交換器を通過する風量を減少させて冷却用熱交換器の必要冷却能力を低減するので、エバポレータ104を通過した流体を圧縮し、吐出する圧縮機101の圧縮機駆動動力を効果的に節減することができる。
【0053】
また、エバポレータ104が停止時においては、エバポレータ104を通過する為の送風機110の送風能力が不要となる為、第1内気口120、及び外気口130を閉じて、第2内気口140のみから車両室内の空気を空調ケース111内に導入することで、送風機110は、省動力運転を実行することが可能となる。また、エバポレータ104は、ある温度以上になると、表面に付着したにおい成分を放出するが、本実施形態では、エバポレータ104の停止時において、空調空気はエバポレータ104を通過しない為、放出されるにおい成分が乗員に送風されることは無い。
【0054】
また、車両室内の空気が十分に高い温度で安定している暖房運転時であって、ウィンドガラスの除湿が必要とされる場合に、第1内気口120を閉状態とし、第2内気口140を開状態とし、外気口130を開状態とすることにより、第2内気口140から車両室内の温度の高い空気をエバポレータ104の空調空気流れ下流側に導入することができるので、除湿効果を高めつつ、送風機駆動動力を効果的に節減することが可能となる。
【0055】
また、車両前方から車両後方に向かって、エバポレータ104、送風機110、ヒータコア109の順に配置しているので、冷凍サイクル112を構成する圧縮機101、コンデンサ102、及び膨張弁103が配置される位置にエバポレータ104を近づけることができる。その結果、これらを接続する配管を短くすることが可能となる。また、ヒータコア109を送風機110より車両後方側に配置しているので、送風機110の吸い込み騒音をヒータコア109により乗員に対して遮音することが可能となる。
【0056】
また、第2内気口140を空調ケース111における車両下側の乗員から離れた位置に形成しているので、乗員に対して送風機110によって吸い込まれる空気の吸い込み騒音を低減することができる。
【0057】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態における車両用空調装置200について、図4を用いて説明する。本実施形態を含む以下の各実施形態において、既に説明した実施形態と同一、又は相当する構成については、同一符号を付し、その重複説明を省略する。図4は、本実施形態における車両用空調装置200を示す模式図である。
本実施形態の車両用空調装置200は、第1実施形態におけるリヒート式の車両用空調装置100ではなく、エアミックスドア280を備えるエアミックス式のものである。空調ケース211の内部には、ヒータコア109をバイパスするバイパス通路281が設けられている。本実施形態では、バイパス通路281は、ヒータコア109に対して車両上方に位置している。エアミックスドア280は、ヒータコア109とバイパス通路281との間を回転中心として回転する板ドアである。エアミックスドア280は、冷房時には、ヒータコア109の前面を塞ぐように車両下方の位置へ回転し、暖房時には、図4に示すように、バイパス通路281を塞ぐように車両上方の位置へ回転する。図4は、暖房時であって、除湿が必要な場合における省動力運転時の空調空気流れを示している。内外気切替モードは、第2内気切替モードに設定されている。
【0058】
この本実施形態の構成によっても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、バイパス通路281を設けることによって、冷房時において、空調空気をヒータコア109に通風させる必要が無くなる。その為、ヒータコア109を通過させるための送風機110の送風能力を低減することができ、送風機駆動動力を節減することが可能となる。
【0059】
(他の実施形態)
上記第1実施形態では、エバポレータ104の停止時において、内外気切替モードは、第3内気切替モードに設定されている。しかし、エバポレータ104の停止時において、必ずしも第3内気切替モードに設定されるわけではなく、必要に応じて他の切替モードに設定されても良い。例えば、第2内気切替モードに設定されたり、第2外気切替モードに設定されても良い。
【0060】
また、上記第1実施形態では、車両室内の空気が十分に高い温度で安定している暖房運転時であって、ウィンドガラスの除湿が必要とされる場合において、内外気切替モードは、第2内気切替モード、或いは第2外気切替モードに設定されている。しかし、必ずしもこれらの切替モードが設定されるわけではなく、必要に応じて他の切替モードが設定されても良い。例えば、第1内気切替モードに設定されたり、第1外気切替モードに設定されても良い。
【0061】
また、上記各実施形態では、ヒータコア109は、送風機110に対して空調空気流れ下流側に配設されている。しかし、ヒータコア109は、送風機110に対して空調空気流れ上流側であって、第2内気口140に対して空調空気流れ下流側に配設されていても良い。これによれば、ヒータコア109は、上記第1実施形態と比べて空調ケース111において車両前方に配置される為、冷却水回路113を構成するエンジン105、ウォータポンプ106、サーモスタット107、及びラジエータ108が配置される位置にヒータコア109を近づけることができる。その結果、ヒータコア109を接続する配管を短くすることが可能となる。
【0062】
また、上記各実施形態では、空調空気を加熱する加熱装置として、加熱用熱交換器であるヒータコア109が用いられている。しかし、加熱装置は、ヒータコア109のみに限らず、例えば、電気ヒータが用いられていても良い。
【0063】
また、上記各実施形態では、第2内気口140は、空調ケース111における下側に形成されている。しかし、第2内気口140は、例えば、空調ケース111における側壁や、上側に形成されていても良い。
【0064】
また、上記各実施形態では、送風機110として、吸い込み式の軸流ファンが用いられている。しかし、送風機110は、例えば、多段の軸流ファン、反転ファン、クロスフローファン、斜流ファンが用いられたものであっても良い。
【0065】
また、上記各実施形態では、各種切替ドアは、板ドア、或いはバタフライドアで構成されているが、それに限定されず、例えば、スライド式ドアや、ロータリドアであっても良い。
【0066】
また、上記各実施形態では、吹出口として、デフロスタ口150、フェイス口160、及びフット口170が形成されているが、これに限定されず、例えば、後席用フェイス口や、後席用フット口が形成されていても良い。
【0067】
また、上記各実施形態では、フィルタ114は、エバポレータ104に対して空調空気流れ上流側に配置しているが、例えば、エバポレータ104に対して空調空気流れ下流側に配置されていても良い。また、ヒータコア109の空調空気流れ下流側に配置されていても良い。更には、フィルタ114は、無くても良い。
【0068】
また、上記各実施形態では、ECU190によって、各種ドアの開閉制御が行われている。しかし、各種ドアの開閉は、手動で行われていても良い。
【0069】
また、上記各実施形態では、第1内気口120には第1内気切替ドア121が設けられ、外気口130には外気切替ドア131が設けられ、第2内気切替ドア140には第2内気切替ドア141が設けられている。しかし、複数の導入口の開閉状態を調整する切替ドアが設けられていても良い。例えば、第1内気口120の開閉状態を調整するとともに外気口130の開閉状態を調整する切替ドアが採用されていても良い。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の第1実施形態における車両用空調装置を示す模式図である。
【図2】第1実施形態における車両用空調装置を示す模式図である。(第2内気切替モード時)
【図3】第1実施形態における車両用空調装置を示す模式図である。(第3内気切替モード時)
【図4】第2実施形態における車両用空調装置を示す模式図である。(第2内気切替モード時)
【符号の説明】
【0071】
101…圧縮機、102…コンデンサ、103…膨張弁、104…エバポレータ、105…エンジン、106…ウォータポンプ、107…サーモスタット、108…ラジエータ、109…ヒータコア、110…送風機、111…空調ケース、112…冷凍サイクル、113…冷却水回路、120…第1内気口、121…第1内気切替ドア、130…外気口、131…外気切替ドア、140…第2内気口、141…第2内気切替ドア。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調空気が内部を流通する空調ケース(111、211)と、
前記空調ケース(111、211)内に配設され、前記空調空気を冷却する冷却用熱交換器(104)と、
前記空調ケース(111、211)内に配設され、前記空調空気を車両室内に送風する送風機(110)とを有し、
前記空調ケース(111、211)には、前記空調ケース(111、211)の内部における前記冷却用熱交換器(104)に対して前記空調空気流れ上流側に前記車両室内の空気を導入する第1内気口(120)が形成されている車両用空調装置であって、
前記送風機(110)は、前記空調ケース(111、211)内における前記冷却用熱交換器(104)に対して前記空調空気流れ下流側に配設され、
前記空調ケース(111、211)には、前記空調ケース(111、211)の内部における前記冷却用熱交換器(104)と前記送風機(110)との間に前記車両室内の空気を導入する第2内気口(140)が形成され、
前記第1内気口(120)、及び前記第2内気口(140)の開閉状態を調整する開閉手段(121、141)を備えることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記冷却用熱交換器(104)の停止時においては、前記開閉手段(121、141)によって、前記第1内気口(120)が閉状態となるように調整され、一方、前記第2内気口(140)が開状態となるように調整される内気切替モードに設定可能とすることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記空調ケース(111、211)には、前記空調ケース(111、211)の内部における前記冷却用熱交換器(104)に対して前記空調空気流れ上流側に前記車両室外の空気を導入する外気口(130)が形成され、
前記開閉手段(121、131、141)によって、前記外気口(130)の開閉状態が調整され、
暖房運転時であって、除湿を必要とする場合においては、前記開閉手段(121、131、141)によって、前記第1内気口(120)が閉状態となるように、一方、前記第2内気口(140)、及び前記外気口(130)が開状態となるように調整された外気切替モードに設定可能とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記空調ケース(111、211)内に配設され、前記空調空気を加熱する加熱装置(109)を備え、
前記加熱装置(109)は、前記空調ケース(111、211)内における前記送風機(110)に対して前記空調空気流れ下流側に配設されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の車両用熱交換器。
【請求項5】
前記加熱装置(109)は、エンジン(105)を冷却する冷却水が内部を流れ、前記空調空気と前記冷却水との間で熱交換する加熱用熱交換器(109)であることを特徴とする請求項4に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記第2内気口(140)は、前記空調ケース(111、211)における下側に設けられることを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の車両用空調装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−100139(P2010−100139A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−272375(P2008−272375)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】