説明

車両用空調装置

【課題】冷媒とともに循環されるオイルを、蓄冷内部熱交換器内部にトラップさせることなく、効率よく循環させる。
【解決手段】内部熱交換器と蓄冷熱交換器を一体化した蓄冷内部熱交換器9を設け、該蓄冷内部熱交換器の低圧冷媒流路を、蓄冷材との熱交換により低圧冷媒を冷却して低圧冷媒の一部を再液化し、再液化された冷媒とともに冷媒中のオイルを貯留可能な低圧冷媒再液化兼オイル貯留エリアを形成する第1の内部低圧冷媒流路7aと、第1の内部低圧冷媒流路からの低圧冷媒を圧縮機へと送出可能な第2の内部低圧冷媒流路7bとから構成し、第2の内部低圧冷媒流路を、圧縮機への送出流路23と第1の内部低圧冷媒流路のオイル貯留エリア部位を通過し送出流路と合流する分岐流路24とに分岐し、該分岐流路にオイルの吸い込み機構を設けるとともに、分岐流路の送出流路との合流部にオイルの吸い上げ機構28を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機、凝縮器、減圧器、蒸発器を有する冷媒回路を備えた車両用空調装置に関し、とくに、冷媒回路に、蓄冷材を収容した蓄冷内部熱交換器を備えた車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の通常の車両用空調装置では、圧縮機、凝縮器、減圧器、蒸発器をこの順に有する有する冷媒回路を備え、例えば車両のエンジンを駆動源として圧縮機を駆動することにより車室内を冷房するようになっている。このような車両用空調装置では、凝縮器の下流側の高圧冷媒と蒸発器の下流側の低圧冷媒とを熱交換するための内部熱交換器を冷媒回路に設け、冷房能力の向上を図るようにしたものが知られている。
【0003】
ところで、信号待ち等による停車を検知してエンジンを停止するアイドリングストップ機構を備えた車両に対して上記空調装置を適用する場合には、エンジンの停止と同時に圧縮機の駆動も停止して冷媒回路に冷媒が流通しなくなるため、冷房を継続することができない。そこで、圧縮機の停止中にも冷房を継続するため、冷媒回路の蒸発器の下流側の冷媒流路に、内部に蓄冷材を有し、圧縮機の運転時に低圧冷媒によって蓄冷材を冷却し、圧縮機の停止時に冷却された蓄冷材によって低圧冷媒を冷却する蓄冷熱交換器を設け、圧縮機の停止時に蓄冷材によって冷媒を液化し、圧縮機が停止してから冷媒回路の高圧側と低圧側との圧力が均一になるまでの時間を遅らせることにより、所定時間の冷房の継続が可能となるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−1485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に開示されているような車両用空調装置では、内部熱交換器や蓄冷熱交換器等、冷媒回路を構成する部品を多数有しており、部品点数が多く、組み付け工数が多くなるため、占有スペースが大きく製造コストが高くなるという問題がある。
【0006】
そこでこのような問題を解消するために、未だ出願未公開の段階にあるが、先に本出願人により、冷媒回路を構成する複数の部品を一体構成とすることにより、占有スペースを小さくすると共に部品点数及び組み付け工数の低減を図ることが可能な車両空調装置、つまり、前述したような蓄冷熱交換器と、従来一般の内部熱交換器とを一体に構成した改良構造が提案されている(特願2009−143936号)。より具体的には、圧縮機、凝縮器、減圧器、蒸発器を有する冷媒回路を備えた車両用空調装置において、前記冷媒回路に、凝縮器の下流側の高圧冷媒が流通する高圧冷媒流路と、蒸発器の下流側の低圧冷媒が流通する低圧冷媒流路と、蓄冷材が収容された蓄冷材収容部とを有し、高圧冷媒流路の高圧冷媒と低圧冷媒流路の低圧冷媒とを熱交換するとともに、圧縮機の駆動時に低圧冷媒流路の低圧冷媒によって蓄冷材収容部の蓄冷材を冷却し、低圧冷媒流路の低圧冷媒と熱交換した後の高圧冷媒流路の高圧冷媒を蓄冷材によって冷却し、圧縮機の停止時に蓄冷材によって低圧冷媒流路の低圧冷媒を冷却する蓄冷内部熱交換器を設けたことを特徴とする車両用空調装置が提案されており、内部熱交換器としての機能と蓄冷熱交換器としての機能を一つの部品としての蓄冷内部熱交換器で発揮できるようにして、部品、ひいては車両用空調装置全体の小型化を図るとともに、部品点数および組み付け工数の低減を図ることが可能となっている。
【0007】
しかしながら、上記先に本出願人により提案された車両用空調装置にも、未だ以下のような問題が残されている。通常、冷媒回路中を循環される冷媒とともに、オイル(潤滑油)も循環され、該オイルは、とくに可動部を有する圧縮機に循環されなければならないが、上記先に本出願人により提案された構造では、このようなオイル循環に関しては格別考慮されていなかった。すなわち、上記提案構造においては、蓄冷内部熱交換器内に、オイルがトラップされる部位が生じやすいので、オイルの循環量、とくに圧縮機へのオイルの循環量が不足するおそれがあるという問題が残されている。
【0008】
また、上記先の提案構造においては、蓄冷内部熱交換器内における高圧冷媒流路中の上流側部位で低圧冷媒流路の低圧冷媒と熱交換させ、熱交換した後の高圧冷媒流路中の液冷媒からなる高圧冷媒を下流側部位で蓄冷材によって冷却することになっているが、基本的に蓄冷内部熱交換器が横型に配置されているので、車両に傾きや振動が生じた場合にも、この高圧冷媒流路中の上流側部位から実質的に液冷媒のみを下流側部位に送るためには、上流側部位の容積を大きくせざるを得ない。換言すれば、横型配置の場合には、車両の傾きや振動の影響を受けやすいので、その影響を受けずに上記上流側部位から下流側部位に高圧冷媒を液冷媒の状態で送液しようとする場合、上流側部位の容積を大きくせざるを得ない。このように高圧冷媒流路中の一部(上流側部位)の容積が大きくなると、蓄冷内部熱交換器全体が大型化してしまい、結局、従来一般の内部熱交換器と蓄冷熱交換器とを一体化して蓄冷内部熱交換器の構成としたことによる、車両用空調装置全体としての小型化の利点が損なわれてしまう。また、高圧冷媒流路中の一部の容積が大きくなると、冷媒回路に封入すべき冷媒量が増大するので、冷房性能の観点からは冷媒封入量が不必要に多くなるおそれがある。
【0009】
そこで本発明の課題は、従来一般の内部熱交換器と蓄冷熱交換器とを一体化して蓄冷内部熱交換器の構成とした先の提案構造(蓄冷内部熱交換器を備えた先の提案構造)における残された問題を解消するために、とくに、冷媒とともに循環されるオイル(潤滑油)を、蓄冷内部熱交換器内に不要にトラップさせることなく、効率よく循環できるようにした改良構造を有する蓄冷内部熱交換器を備えた車両用空調装置を提供することにある。
【0010】
また、併せて、上記蓄冷内部熱交換器内における円滑なオイル循環構造を、蓄冷内部熱交換器自体の構造をコンパクトに構成し、蓄冷内部熱交換器全体の小型化をはかりつつ達成することも、本発明の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係る車両用空調装置は、圧縮機、凝縮器、減圧器、蒸発器を冷媒の流れ方向にこの順に有する冷媒回路を備えた車両用空調装置において、 前記冷媒回路に、凝縮器の下流側の高圧冷媒が流通する高圧冷媒流路と、蒸発器の下流側の低圧冷媒が流通する低圧冷媒流路と、蓄冷材が収容された蓄冷材収容部とを有し、高圧冷媒流路の高圧冷媒と低圧冷媒流路の低圧冷媒とを熱交換する内部熱交換機能を有するとともに、圧縮機の駆動時に低圧冷媒流路の低圧冷媒によって蓄冷材収容部の蓄冷材を冷却し、圧縮機の停止時に冷却された蓄冷材によって低圧冷媒流路の低圧冷媒を冷却する蓄冷熱交換機能を有する蓄冷内部熱交換器を設け、
該蓄冷内部熱交換器の前記低圧冷媒流路を、蓄冷材との熱交換により低圧冷媒を冷却して低圧冷媒の一部を再液化し、再液化された冷媒とともに冷媒中のオイルを貯留可能な低圧冷媒再液化兼オイル貯留エリアを形成する第1の内部低圧冷媒流路と、該第1の内部低圧冷媒流路に接続され該第1の内部低圧冷媒流路からの低圧冷媒を前記圧縮機へと送出可能な第2の内部低圧冷媒流路とから構成し、
該第2の内部低圧冷媒流路を、途中で圧縮機への送出流路と前記第1の内部低圧冷媒流路のオイル貯留エリア部位を通過し前記圧縮機への送出流路と合流する分岐流路とに分岐し、
該分岐流路の前記第1の内部低圧冷媒流路のオイル貯留エリア部位通過部に、該第1の内部低圧冷媒流路内下部に貯留されたオイルを分岐流路内に吸い込む吸い込み機構を設けるとともに、分岐流路の前記圧縮機への送出流路との合流部に、分岐流路内に吸い込まれ分岐流路内を冷媒とともに送られてきたオイルを前記圧縮機への送出流路内に吸い上げる吸い上げ機構を設けたことを特徴とするものからなる。
【0012】
このような本発明に係る車両用空調装置においては、第2の内部低圧冷媒流路が、途中で、圧縮機への送出流路から分岐され、該分岐流路内に低圧冷媒の一部の少量が流され、該分岐流路が第1の内部低圧冷媒流路のオイル貯留エリア部位を通過する際に、第1の内部低圧冷媒流路内下部に貯留されたオイルが分岐流路内に吸い込まれ、吸い込まれたオイルが、低圧冷媒とともに圧縮機への送出流路との合流部に送られて送出流路内に吸い上げられ、第2の内部低圧冷媒流路から圧縮機へと送られる低圧冷媒の流れに合流されて、圧縮機へと送出される。このような構成により、低圧冷媒再液化兼オイル貯留エリアを形成する第1の内部低圧冷媒流路のオイル貯留エリア(通常、第1の内部低圧冷媒流路の底部)に溜まったオイルが、円滑に圧縮機へと送られる低圧冷媒の流れに乗せられ、蓄冷内部熱交換器内にトラップされることなく、効率よく圧縮機に向けて循環されることになる。また、この場合、第1の内部低圧冷媒流路内の再液化された冷媒も同じ経路で吸い込まれ、圧縮機への送出流路内に吸い上げられるかも知れないが、その場合にあっても、送出流路内に吸い上げられて送出流路内の第2の内部低圧冷媒流路からの流れに乗せられる際、キャブレター効果が発現されるので、吸い上げられた液冷媒が霧化され、霧化された状態にて圧縮機へと送られることになり、低圧冷媒は液化状態のままでは圧縮機には到達しないことになる。したがって、低圧冷媒が液化状態で送られた場合に発生のおそれが生じる圧縮機での液圧縮は回避される。さらに、このようなオイル回収構造(循環構造)は、上記の分岐通路を蓄冷内部熱交換器内に適切に配設することにより、例えばオイル戻し管を蓄冷内部熱交換器内に適切に設けることにより、容易に達成することができるので、蓄冷内部熱交換器全体の小型化、部品点数および組み付け工数の低減の要求にも応えることができる。
【0013】
また、本発明に係る車両用空調装置においては、上記第1の内部低圧冷媒流路が上記蓄冷内部熱交換器のより低位部に、上記第2の内部低圧冷媒流路が上記蓄冷内部熱交換器のより高位部に配置されていることが好ましい。このように構成すれば、必然的に、上記分岐流路は、分岐部から下方に向けて延び、下位に位置する吸い込み機構部でオイルを吸い込み、しかる後に上方の吸い上げ機構部に向けて上方に延びることになる。このような構成においては、上記分岐流路を第1の内部低圧冷媒流路のオイル貯留エリア部位を通過させやすくなり、分岐流路内にオイルを吸い込みやすくなる。また、分岐流路を圧縮機への送出流路に合流させやすくなり、分岐流路内に吸い込まれ分岐流路内を冷媒とともに送られてきたオイルを圧縮機への送出流路内に吸い上げやすくなる。また、第1の内部低圧冷媒流路をより低位部に、第2の内部低圧冷媒流路をより高位部に配置した構成においては、第1の内部低圧冷媒流路の周囲部および下部に、上記蓄冷材収容部が配置されている構成、例えば、蓄冷内部熱交換器の内部に配置された第1の内部低圧冷媒流路と、蓄冷内部熱交換器の外殻を構成するハウジングとの間に、蓄冷材が収容された蓄冷材収容部を形成した構成を採用することができる。このように構成すれば、本発明で必要とされる所定の部位を効率よくコンパクトに配置でき、蓄冷内部熱交換器全体の小型化に寄与できる。
【0014】
また、本発明に係る車両用空調装置においては、上記吸い込み機構が、第1の内部低圧冷媒流路の最下部に設けられた、上記分岐流路内へと開口する連通孔を有している構造に構成されることができる。この連通孔は、円滑なオイル吸い込みに必要なだけの小さな孔に形成されればよい。この構成により、第1の内部低圧冷媒流路内下部に貯留されたオイルが効率よく円滑に分岐流路内に吸い込まれる。
【0015】
また、上記吸い上げ機構については、上記分岐流路の圧縮機への送出流路との合流部に設けられた、該圧縮機への送出流路内へと開口する絞り連通孔(絞り形状を有する連通孔)を有していることが好ましい。このように構成すれば、第2の内部低圧冷媒流路からの圧縮機への送出流路内の低圧冷媒の流れによる、分岐流路内からのオイル吸い上げ性能を向上することができ、回収オイルのより確実な循環が可能になる。また、流れが一旦絞られた後に吸い上げられることになるので、オイルとともに液化低圧冷媒が吸い上げられようとする場合に、上述したようなキャブレター効果が増大され、液化冷媒の霧化性能が向上されて、圧縮機での液圧縮が一層確実に回避されることになる。
【0016】
また、本発明に係る車両用空調装置において、上記蓄冷材収容部は、例えば、上述の如く第1の内部低圧冷媒流路の周囲部および下部に配置することもできるし、第1の内部低圧冷媒流路の内部に配置することもできる。それぞれの実施形態については、後述の如く図面を用いて明示する。とくに蓄冷材収容部が材収容部が第1の内部低圧冷媒流路の内部に配置される構成では、例えば、蓄冷材収容部が、内部に蓄冷材が封入された複数の円板フィン状部材の上下方向連接連通構造体に構成されている構造を採用することもできる。このように構成すれば、蓄冷材収容部と第1の内部低圧冷媒流路との間のより効率の良い熱交換が可能になり、蓄冷熱交換器としての機能が向上される。
【0017】
さらに、上記第2の内部低圧冷媒流路が気液分離機能を有するチャンバ形状に形成されており、上記第1の内部低圧冷媒流路と上記第2の内部低圧冷媒流路との間は、第2の内部低圧冷媒流路内で分離された液冷媒を上記第1の内部低圧冷媒流路内に落下させる連通孔を介して連通されている構成を採用することも好ましい。このように構成すれば、第1の内部低圧冷媒流路内で再液化された低圧冷媒が第2の内部低圧冷媒流路内に流出してしまったとしても、該液冷媒は第2の内部低圧冷媒流路で気液分離され、分離された液冷媒は連通孔を介して第1の内部低圧冷媒流路内に戻されるようになる。したがって、液冷媒の圧縮機側への流出をより効果的に抑制することが可能になり、圧縮機における望ましくない液圧縮をより適切に回避できる。
【0018】
本発明における蓄冷内部熱交換器は、基本的に縦型に配置されるが、小さな占有スペースで狙いの性能を効率よく発揮できる蓄冷内部熱交換器を構成するために、蓄冷内部熱交換器の外形が上下方向に延びる円筒体の形状に形成されていることが好ましい。円筒体の形状とすることにより、内部に効率よく、高圧冷媒流路、低圧冷媒流路、蓄冷材収容部を形成することが可能になる。また、この場合、第1の内部低圧冷媒流路へと低圧冷媒を導入する入口および第2の内部低圧冷媒流路からの低圧冷媒を導出する出口が、上記円筒体の側面に配置されていることが好ましい。円筒体の側面に配置されていることにより、例えば、入口および出口を円筒体の周方向に沿った方向に形成でき、径方向に向けて配設する場合に比べ、蓄冷内部熱交換器外形全体としての小型化が可能になる。同様に蓄冷内部熱交換器外形全体としての小型化が可能である観点から、蓄冷内部熱交換器内の高圧冷媒流路へと高圧冷媒を導入する入口および高圧冷媒流路からの高圧冷媒を導出する出口についても、上記円筒体の側面に配置されていることが好ましい。
【0019】
なお、本発明における蓄冷内部熱交換器の高圧冷媒流路の好ましい形態例、およびその具体的な構造例については、後述の実施の形態において例示する。
【発明の効果】
【0020】
このように、本発明に係る蓄冷内部熱交換器を備えた車両用空調装置によれば、冷媒回路中に冷媒とともに循環されるオイルを、蓄冷内部熱交換器内に不要にトラップさせることなく、圧縮機に向けて効率よく循環させることができる。また、このオイル回収、循環に必要な構造を、小型に構成することが求められる蓄冷内部熱交換器内にコンパクトに構成することができ、蓄冷内部熱交換器全体の小型化の要求にも応えることができる。
【0021】
また、回収オイルを圧縮機への送出流路内に吸い上げて送出流路内の冷媒と合流させるので、より円滑なオイル吸い上げ、回収が可能になるとともに、オイルとともに液化低圧冷媒が吸い上げられた場合にあっても、キャブレター効果により液冷媒を霧化することが可能になり、圧縮機での液圧縮を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る車両用空調装置の冷媒回路の一例を示す概略機器系統図である。
【図2】本発明の一実施態様に係る車両用空調装置における蓄冷内部熱交換器の概略外観斜視図である。
【図3】図2の蓄冷内部熱交換器の部分断面表示斜視図である。
【図4】図2の蓄冷内部熱交換器の別の角度から見た部分断面表示斜視図である。
【図5】図2の蓄冷内部熱交換器のさらに別の角度から見た部分断面表示斜視図である。
【図6】図2の蓄冷内部熱交換器のさらに別の角度から見た部分断面表示斜視図である。
【図7】図2の蓄冷内部熱交換器の縦断面図であり、本発明におけるオイル回収経路を示す図である。
【図8】本発明の別の実施態様に係る車両用空調装置における蓄冷内部熱交換器の部分断面表示斜視図である。
【図9】図8の蓄冷内部熱交換器の別の角度から見た部分断面表示斜視図である。
【図10】図8の蓄冷内部熱交換器の縦断面図であり、本発明におけるオイル回収経路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の望ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
まず、本発明に係る車両用空調装置全体の概略構成について、図1を参照して説明する。本発明に係る車両用空調装置は、例えば、信号待ち等で停車したことを検知してエンジンを停止するアイドリングストップ機構を備えた車両に適用されるものであり、図1に示すような冷媒回路を備えている。
【0024】
図1において、冷媒回路1は、圧縮機2、凝縮器3、減圧器としての膨張弁4および蒸発器5を矢印で示した冷媒の流れ方向にこの順に有する周知の冷凍回路内に、凝縮器3の下流側の高圧冷媒と蒸発器5の下流側の低圧冷媒とを熱交換するとともに、凝縮器3の下流側の高圧冷媒が流通する高圧冷媒流路6と、蒸発器5の下流側の低圧冷媒が流通する低圧冷媒流路7と、蓄冷材が収容された蓄冷材収容部8とを有し、高圧冷媒流路6の高圧冷媒と低圧冷媒流路7の低圧冷媒とを熱交換する内部熱交換機能を有するとともに、圧縮機2の駆動時には低圧冷媒流路7の低圧冷媒によって蓄冷材収容部8の蓄冷材を冷却し、圧縮機2の停止時には冷却された蓄冷材によって低圧冷媒流路7の低圧冷媒を冷却する蓄冷熱交換機能を有する蓄冷内部熱交換器9を設けたものから構成されている。ここで用いられる圧縮機2は、車両のエンジンを駆動源として駆動するようになっており、アイドリングストップ機構によってエンジンが停止した場合に、同時に駆動が停止するものである。また、この車両用空調装置は、蒸発器5が車室内の空調ユニットの内部に(車室内への空気通路内に)設けられ、蒸発器5において冷媒と熱交換した空気が送風機10によって車室内に供給されるようになっている。また、圧縮機2、凝縮器3、膨張弁4および蓄冷内部熱交換器9は、車室外のエンジンルームの内部に設けられている。また、冷媒回路1には、冷媒として、例えばHFC134aやHFO1234yfが用いられる。なお、図1において、11は切換弁を示しているが、これについては後述する。
【0025】
本実施態様では、蓄冷内部熱交換器9は、その外形が、例えば図2に示すように、上下方向に延びる円筒体の形状に(円筒形状の外殻12に)形成されている。この蓄冷内部熱交換器9の上記高圧冷媒流路6は、例えば図3に示すように、冷媒の流れ方向に(矢印方向に)上流側に位置し凝縮器3からの高圧冷媒が導入される第1の内部高圧冷媒流路6aと、冷媒の流れ方向に下流側に位置し第1の内部高圧冷媒流路6aからの高圧冷媒が導入されるとともに該高圧冷媒を減圧器(膨張弁4)へと送出する第2の内部高圧冷媒流路6bとから構成されている。そして、この第2の内部高圧冷媒流路6bへと連通する第1の内部高圧冷媒流路6aの最下流部には、第2の内部高圧冷媒流路6bへと導入される高圧冷媒中の液冷媒を集合させ、第2の内部高圧冷媒流路6bへと導入される冷媒の大部分が効率よく液冷媒となるようにした、高圧液冷媒集合部13が形成されている。本実施態様では、第1の内部高圧冷媒流路6aへの高圧冷媒の入口14が円筒形状の外殻12の側面に配置されており、入口14から導入された高圧冷媒は、上下方向に円筒状に延びる第1の内部高圧冷媒流路6a内を下流側に送られて、第1の内部高圧冷媒流路6aの最下流部に形成された高圧液冷媒集合部13に、大半が液冷媒の状態で集合される。この高圧液冷媒集合部13は、上下方向に延びる第1の内部高圧冷媒流路6aの最下部に、液冷媒を集液して一時的に貯留可能な液溜め状の形状に形成されている。この高圧液冷媒集合部13の図3における底面側に、第2の内部高圧冷媒流路6bの入口が接続されている。
【0026】
第2の内部高圧冷媒流路6bからの高圧冷媒の出口15も、円筒形状の外殻12の側面に配置されており、出口15から導出された高圧冷媒は、減圧器(膨張弁4)側へと送出される。ただし、本実施態様においては、この出口15の近傍に、例えば図4に示すように、前述の切換弁11が設けられており、この切換弁11は、図1に示すように、第2の内部高圧冷媒流路6bと蒸発器5との間に設けられた、圧縮機2の駆動時に高圧冷媒を減圧器(膨張弁4)を通して蒸発器5に送る第1の冷媒経路16と、圧縮機2の停止時に高圧冷媒を減圧器(膨張弁4)をバイパスさせて蒸発器5に送る第2の冷媒経路17との間で切り換える。膨張弁4は、通常、あるレベル以上の流路抵抗を有してため、アイドリングストップ時等に車両のエンジンが停止され圧縮機2の運転が停止されてしまうと、そのときの高圧側冷媒の圧力条件では、比較的流路抵抗の高い膨張弁4を通過できる冷媒流量がごく僅かとなり、空調に必要な蒸発器5内への冷媒導入量が得られなくなるおそれがあるが、蒸発器5への冷媒経路が膨張弁4をバイパスする第2の冷媒経路17に切り換えられることにより、高圧冷媒は低圧側との圧力差を利用して自然に蒸発器5内に導入されるようになり、エンジン停止時にもある時間(つまり、上記圧力差が無くなるまでの時間)空調を行うことが可能になる。
【0027】
さて、蒸発器5の下流側の低圧冷媒が流通される蓄冷内部熱交換器9の低圧冷媒流路7においては、図5に示すように、低圧冷媒流路7の低圧冷媒の入口18が、円筒形状の外殻12の側面に配置されている。そして、低圧冷媒流路7は、図6にも示すように、蓄冷材との熱交換により低圧冷媒を冷却し低圧冷媒の一部を再液化する低圧冷媒再液化エリアを形成する第1の内部低圧冷媒流路7aと、該第1の内部低圧冷媒流路7aの下流側に接続され該第1の内部低圧冷媒流路7aからの低圧冷媒を圧縮機2へと送出可能な第2の内部低圧冷媒流路7bとから構成されており、少なくとも第2の内部低圧冷媒流路7bの低圧冷媒と上述の第1の内部高圧冷媒流路6aの高圧冷媒との間で熱交換可能に構成されている。蓄冷内部熱交換器9内において、第1の内部低圧冷媒流路7aはより低位部に、第2の内部低圧冷媒流路7bはより高位部に配置されており、第2の内部低圧冷媒流路7bからの低圧冷媒の出口19は、円筒形状の外殻12の側面に配置されている。第2の内部低圧冷媒流路7bは、気液分離機能を有するチャンバ形状に形成されており、第1、第2の内部低圧冷媒流路7a、7b間は、第2の内部低圧冷媒流路7b内で分離された液冷媒を第1の内部低圧冷媒流路7a内に落下させる連通孔20を介して連通されている。
【0028】
蓄冷材収容部8は、本実施態様では、蓄冷内部熱交換器9内のより低位部に配置された第1の内部低圧冷媒流路7aの周囲部および下部において、内部低圧冷媒流路7aを形成している内壁21と外殻12との間に形成されており、この間に形成される空間内に所定の蓄冷材を収容(例えば、封入)することにより構成されている。この蓄冷材収容部8の設置により、圧縮機2の駆動時に低圧冷媒流路7、とくに第1の内部低圧冷媒流路7aの低圧冷媒によって収容されている蓄冷材が冷却され、圧縮機2の停止時に冷却された蓄冷材によって低圧冷媒流路7、とくに第1の内部低圧冷媒流路7aの低圧冷媒を冷却するという蓄冷熱交換機能が付与されている。
【0029】
なお、前述の第1の内部高圧冷媒流路6aへの高圧冷媒の入口14側には、例えば図3に示すように、高圧冷媒の凝縮器3側への逆流を防止する逆止弁22が設けられていてもよい。このような逆止弁22を設けておけば、高圧冷媒を常時所望の方向へ流すことができるので、蓄冷内部熱交換器9として目標とする機能を確実に発揮させることに寄与できる。
【0030】
次に、本実施態様における、本発明のオイル(潤滑油)回収、循環構造について説明する。このオイル回収、循環構造は、冷媒とともに循環されるオイル、とくに本実施態様においては、低圧冷媒再液化エリアを形成している第1の内部低圧冷媒流路7a内の底部に溜まったオイルを良好に低圧冷媒の圧縮機2への流れ中に戻すために、設けられる。図6、図7に示すように、第2の内部低圧冷媒流路7bが、途中で圧縮機2への送出流路23と第1の内部低圧冷媒流路7aの底部のオイル貯留エリア部位の下部を通過した後圧縮機2への送出流路23と合流する分岐流路24とに分岐されている。本実施態様では、分岐流路24の大半は、パイプ(オイル戻し管25と呼ぶ)で構成されている。
【0031】
分岐流路24の第1の内部低圧冷媒流路7aの底部のオイル貯留エリア部位通過部には、第1の内部低圧冷媒流路7a内下部に貯留されたオイルを分岐流路24内に吸い込む吸い込み機構26が設けられており、本実施態様においては、吸い込み機構26は、第1の内部低圧冷媒流路7aの最下部に設けられた、分岐流路24内へと開口する連通孔27を有する構造に構成されている。分岐流路24の圧縮機2への送出流路23との合流部には、分岐流路24内に吸い込まれ分岐流路24内を冷媒とともに送られてきたオイル(矢印で示してある)を圧縮機2への送出流路23内に吸い上げる吸い上げ機構28が設けられている。本実施態様においては、吸い上げ機構28は、分岐流路24の圧縮機2への送出流路23との合流部に設けられた、送出流路23内へと開口する絞り連通孔29(送出流路23側にいくほど孔径が小さくなるように絞られた連通孔)を有する構造に構成されている。分岐流路24を形成しているオイル戻し管25は、本実施態様では、途中で内壁21と外殻12との間に形成された空間内、つまり、蓄冷材収容部8を通過した後、上記吸い上げ機構28に至っている。
【0032】
まず、このように構成された本実施態様に係る車両用空調装置における蓄冷内部熱交換器9の機能について説明する。内部熱交換器としての機能と蓄冷熱交換器としての機能との両方を発揮できる一部品としての蓄冷内部熱交換器9に構成されることにより、内部熱交換器と蓄冷熱交換器を別に設ける場合に比べ、冷媒回路における占有スペースが小さくされるとともに、部品点数および組み付け工数が低減される。そして、本実施態様のように、蓄冷内部熱交換器9の高圧冷媒流路6が第1の内部高圧冷媒流路6aと第2の内部高圧冷媒流路6bとから構成され、第1の内部高圧冷媒流路6aの最下流部に高圧液冷媒集合部13を形成することにより、上流側の第1の内部高圧冷媒流路6aの容積をとくに大きくしなくても、液冷媒を車両の傾きや振動の影響を受けずに適切にかつ確実に高圧液冷媒集合部13に集合させることが可能になり、集合された高圧液冷媒を確実にかつ容易に第2の内部高圧冷媒流路6bへと導入させることができる。第1の内部高圧冷媒流路6aの容積を小さくできることにより、蓄冷内部熱交換器9としての所望の機能を確保しつつ、先に本出願人により提案された構造に比べ、高圧冷媒流路6全体、ひいては蓄冷内部熱交換器9全体の小型化が可能になる。また、高圧冷媒流路6の容積を格別大きくする必要がなくなるから、蓄冷内部熱交換器9を有する冷媒回路全体としての冷媒封入量を、先に本出願人により提案された構造に比べ、大幅に低減することが可能になる。
【0033】
また、低圧冷媒流路7が、蓄冷材との熱交換により低圧冷媒の一部を再液化する低圧冷媒再液化エリアを形成する第1の内部低圧冷媒流路7aと、第2の内部低圧冷媒流路7bとから構成し、少なくとも第2の内部低圧冷媒流路7bの低圧冷媒と第1の内部高圧冷媒流路6aの高圧冷媒との間で熱交換可能に構成するとともに、蓄冷材収容部8を第1の内部低圧冷媒流路7aの周囲部および下部に形成しておくことにより、第1の内部低圧冷媒流路7aにおいて蓄冷材との間の熱交換をより効率よく行うことができ、一部が再液化されて効率よく冷却された低圧冷媒は、第2の内部低圧冷媒流路7bに送られて、第1の内部高圧冷媒流路6aの高圧冷媒との間で効果的に熱交換を行うことができ、高圧冷媒の過冷却度がより高められて、内部熱交換器としての機能を向上できる。そして、再液化された低圧冷媒の一部が第2の内部低圧冷媒流路7b内に流出した場合にあっても、より高位部に配置された第2の内部低圧冷媒流路7bから、連通孔20を介して、より低位部に配置された第1の内部低圧冷媒流路7a内へと再液化された低圧冷媒を自然に戻すことが可能になり、液冷媒の圧縮機2側への流出を効率よく抑制することが可能になる。
【0034】
また、蓄冷内部熱交換器9の縦型配置に加え、主として第1の内部低圧冷媒流路7aと外殻12との間に蓄冷材収容部8を形成することにより、コンパクトな蓄冷材収容構造を達成でき、蓄冷内部熱交換器9全体を小型に構成できる。
【0035】
このように、内部熱交換器としての機能と蓄冷熱交換器としての機能の両方を効率よく発揮可能な小型の縦型蓄冷内部熱交換器9を構成できるので、内部熱交換器と蓄冷熱交換器を一体化したことによる、冷媒回路の占有スペースを低減、部品点数および組み付け工数の低減の効果とともに、先に本出願人により提案された構造に比べ、蓄冷内部熱交換器9をより小型に構成できるとともに、冷媒回路への冷媒封入量も少なくすることができる。そして、このような小型で高性能の蓄冷内部熱交換器9を冷媒回路内に設けることにより、アイドリングストップ時等の車両のエンジン停止時でも、適当な時間、車室内への吐気温度を低く保つことができ、乗員の不快感の解消に寄与することができる。
【0036】
次に、上記実施態様での、本発明におけるオイル回収、循環について説明する。
圧縮機2への送出流路23から分岐された分岐流路24内に低圧冷媒の一部少量が導入され、オイル戻し管25で形成された分岐流路24内を下流に向けて流れる。分岐流路24は、低圧冷媒再液化エリアを形成している第1の内部低圧冷媒流路7aの底部の下部を通るように配置されているが、内部低圧冷媒流路7aの底部には冷媒から分離されたオイルが溜まっているので、分岐流路24内の冷媒の流れによって、内部低圧冷媒流路7aの底部に貯留されていたオイルが吸い込み機構26の連通孔27を介して分岐流路24内に吸い込まれる。吸い込まれたオイルは、低圧冷媒の流れに乗って、低圧冷媒とともに圧縮機2への送出流路23との合流部に向けて送られる。
【0037】
分岐流路24内を低圧冷媒とともに圧縮機2への送出流路23との合流部に送られてきたオイルは、送出流路23内の冷媒の流れによって、吸い上げ機構28の絞り連通孔29を介して送出流路23内に吸い上げられる。吸い上げられたオイルは、送出流路23内を流れる低圧冷媒の流れに乗り、圧縮機2へと送られる。このように、低圧冷媒再液化兼オイル貯留エリアを形成する第1の内部低圧冷媒流路7aのオイル貯留エリア(第1の内部低圧冷媒流路7aの底部)に溜まったオイルが、円滑に回収され、圧縮機2へと送られる低圧冷媒の流れに乗せられ、蓄冷内部熱交換器9内にトラップされることなく、効率よく圧縮機2に向けて送出され、冷媒回路1内を循環されることになる。
【0038】
このようなオイル回収時には、第1の内部低圧冷媒流路7a内の再液化された冷媒も、吸い込み機構26の連通孔27を介して分岐流路24内に吸い込まれ、分岐流路24内を送出流路23との合流部に向けて送られた後、オイルとともに吸い上げ機構28により吸い上げられ、送出流路23内に導入される場合があるかも知れない。しかし、このような場合においても、吸い上げ機構28におけるキャブレター効果により、とくに本実施態様におけるる絞り連通孔29を通しての吸い上げ時のキャブレター効果により、吸い上げられた液冷媒が霧化され、霧化された状態にて圧縮2機へと送られる。したがって、低圧冷媒が液化状態のまま圧縮機2に到達することは回避され、圧縮機2での液圧縮は回避される。
【0039】
また、このようなオイル回収構造(循環構造)の一部を構成するオイル戻し管25は、図6、図7に示したように蓄冷内部熱交換器9内に効率よくコンパクトな形態にて配置することができるので、蓄冷内部熱交換器9全体の小型化、部品点数および組み付け工数の低減の要求にも適切に応えることができる。
【0040】
図8〜図10に、本発明の別の実施態様に係る蓄冷熱交換器の構造を示す。
本実施態様においては、上述の実施態様に比べ、蓄冷内部熱交換器31の内部に於ける蓄冷材収容部32の構造およびその周りの構造、とくにオイル回収構造が変更されている。その他の部位の構造は、実質的に上述の実施態様と同じであるので、上述の実施態様と対応する部位に上述の実施態様と同じ符号を付すことにより、説明を省略する。
【0041】
第1の内部低圧冷媒流路7aは、前述の実施態様のように内壁内に形成されるのではなく、円筒形状の外殻33によって直接的に、外殻33内の下部側に形成されており、この第1の内部低圧冷媒流路7aの内部に蓄冷材収容部32が配置されている。蓄冷材収容部32は、内部に蓄冷材が封入された複数の円板フィン状部材32aの上下方向連接連通構造体(複数の円板フィン状部材32aが平行に配置されて上下方向に配列され、隣接円板フィン状部材32aが互いに接続されるとともに互いに連通された構造体)に構成されている。また、分岐流路34を形成するオイル戻し管35は、図10に示すように、外殻33によって直接形成された第1の内部低圧冷媒流路7aの底部の溜まったオイルを直接吸い込むために、該底部に対応する部位に開口された連通孔36を有している。吸い上げ機構37については、前述の実施態様と同様に、絞り連通孔38を有する構造に構成されている。
【0042】
本実施態様のこのような構成によれば、第1の内部低圧冷媒流路7a内の低圧冷媒と、蓄冷材収容部32の外表面との接触面積が著しく増大されるので、両者間の熱交換の効率が大幅に高められ、圧縮機駆動時における第1の内部低圧冷媒流路7a内の低圧冷媒による蓄冷材収容部32内の蓄冷材の冷却性能、圧縮機停止時における冷却されている蓄冷材収容部32内の蓄冷材による第1の内部低圧冷媒流路7a内の低圧冷媒の冷却性能が、ともに大幅に高められることになり、蓄冷内部熱交換器31としての目標とする機能が大幅に向上される。
【0043】
また、オイル戻し管35は、第1の内部低圧冷媒流路7a内を通ることになり、その底部の溜まったオイルを連通孔36を介して直接吸い込むことができるので、より確実にオイルを吸い込むことが可能になる。また、蓄冷材収容部32は、内部に蓄冷材が封入された複数の円板フィン状部材32aの上下方向連接連通構造体に構成されるものの、この上下方向連接連通構造体は別部品として作製した後に外殻33内に組み込むことができるものであり、第1の内部低圧冷媒流路7a自体のみについてみれば、内壁を設けることなく外殻33によって直接形成できるので、蓄冷内部熱交換器31の内部構造を簡素化でき、蓄冷内部熱交換器31をより小型化することが可能となる。その他の、構成、作用、効果は、前述の実施態様に準じる。
【0044】
なお、図示例では、蓄冷材収容部32を、内部に蓄冷材が封入された複数の円板フィン状部材32aの上下方向連接連通構造体に構成したが、この構造に限定されず、熱交換のための低圧冷媒との接触面積を大きくとれる構造であればよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明に係る車両用空調装置の構造は、アイドリングトップ時等の冷房性能の改善のために、冷媒回路に蓄冷内部熱交換器を備えることが望ましいと考えられ、オイルの圧縮機への循環が求められる、あらゆる車両用空調装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 冷媒回路
2 圧縮機
3 凝縮器
4 減圧器としての膨張弁
5 蒸発器
6 高圧冷媒流路
6a 第1の内部高圧冷媒流路
6b 第2の内部高圧冷媒流路
7 低圧冷媒流路
7a 第1の内部低圧冷媒流路
7b 第2の内部低圧冷媒流路
8、32 蓄冷材収容部
9、31 蓄冷内部熱交換器
10 送風機
11 切換弁
12、33 外殻
13 高圧液冷媒集合部
14 高圧冷媒の入口
15 高圧冷媒の出口
16 第1の冷媒経路
17 第2の冷媒経路
18 低圧冷媒の入口
19 低圧冷媒の出口
20 連通孔
21 内壁
22 逆止弁
23 圧縮機への送出流路
24、34 分岐流路
25、35 オイル戻し管
26 吸い込み機構
27、36 連通孔
28、37 吸い上げ機構
29、38 絞り連通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、凝縮器、減圧器、蒸発器を冷媒の流れ方向にこの順に有する冷媒回路を備えた車両用空調装置において、
前記冷媒回路に、凝縮器の下流側の高圧冷媒が流通する高圧冷媒流路と、蒸発器の下流側の低圧冷媒が流通する低圧冷媒流路と、蓄冷材が収容された蓄冷材収容部とを有し、高圧冷媒流路の高圧冷媒と低圧冷媒流路の低圧冷媒とを熱交換する内部熱交換機能を有するとともに、圧縮機の駆動時に低圧冷媒流路の低圧冷媒によって蓄冷材収容部の蓄冷材を冷却し、圧縮機の停止時に冷却された蓄冷材によって低圧冷媒流路の低圧冷媒を冷却する蓄冷熱交換機能を有する蓄冷内部熱交換器を設け、
該蓄冷内部熱交換器の前記低圧冷媒流路を、蓄冷材との熱交換により低圧冷媒を冷却して低圧冷媒の一部を再液化し、再液化された冷媒とともに冷媒中のオイルを貯留可能な低圧冷媒再液化兼オイル貯留エリアを形成する第1の内部低圧冷媒流路と、該第1の内部低圧冷媒流路に接続され該第1の内部低圧冷媒流路からの低圧冷媒を前記圧縮機へと送出可能な第2の内部低圧冷媒流路とから構成し、
該第2の内部低圧冷媒流路を、途中で圧縮機への送出流路と前記第1の内部低圧冷媒流路のオイル貯留エリア部位を通過し前記圧縮機への送出流路と合流する分岐流路とに分岐し、
該分岐流路の前記第1の内部低圧冷媒流路のオイル貯留エリア部位通過部に、該第1の内部低圧冷媒流路内下部に貯留されたオイルを分岐流路内に吸い込む吸い込み機構を設けるとともに、分岐流路の前記圧縮機への送出流路との合流部に、分岐流路内に吸い込まれ分岐流路内を冷媒とともに送られてきたオイルを前記圧縮機への送出流路内に吸い上げる吸い上げ機構を設けたことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記第1の内部低圧冷媒流路が前記蓄冷内部熱交換器のより低位部に、前記第2の内部低圧冷媒流路が前記蓄冷内部熱交換器のより高位部に配置されている、請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記吸い込み機構が、前記第1の内部低圧冷媒流路の最下部に設けられた、前記分岐流路内へと開口する連通孔を有している、請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記吸い上げ機構が、前記分岐流路の前記圧縮機への送出流路との合流部に設けられた、該圧縮機への送出流路内へと開口する絞り連通孔を有している、請求項1〜3のいずれかに記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記第1の内部低圧冷媒流路の周囲部および下部に、前記蓄冷材収容部が配置されている、請求項1〜4のいずれかに記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記第1の内部低圧冷媒流路の内部に、前記蓄冷材収容部が配置されている、請求項1〜4のいずれかに記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記蓄冷材収容部が、内部に蓄冷材が封入された複数の円板フィン状部材の上下方向連接連通構造体に構成されている、請求項6に記載の車両用空調装置。
【請求項8】
前記第2の内部低圧冷媒流路が気液分離機能を有するチャンバ形状に形成されており、前記第1の内部低圧冷媒流路と前記第2の内部低圧冷媒流路との間は、前記第2の内部低圧冷媒流路内で分離された液冷媒を前記第1の内部低圧冷媒流路内に落下させる連通孔を介して連通されている、請求項1〜7のいずれかに記載の車両用空調装置。
【請求項9】
前記蓄冷内部熱交換器の外形が上下方向に延びる円筒体の形状に形成されている、請求項1〜8のいずれかに記載の車両用空調装置。
【請求項10】
前記第1の内部低圧冷媒流路へと低圧冷媒を導入する入口および前記第2の内部低圧冷媒流路からの低圧冷媒を導出する出口が、前記円筒体の側面に配置されている、請求項9に記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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