説明

車両用空調装置

【課題】冷媒回路を構成する複数の部品を一体構成とすることにより、占有スペースを小さくすると共に部品点数及び組み付け工数の低減を図ることのできる車両空調装置を提供する。
【解決手段】冷媒回路1に、凝縮器3の下流側の高圧冷媒が流通する高圧冷媒貯蔵部11と、蒸発器5の下流側の低圧冷媒が流通する低圧冷媒貯蔵部12と、蓄熱材が収容された蓄熱材収容部13とを有し、高圧冷媒貯蔵部11の高圧冷媒と低圧冷媒貯蔵部12の低圧冷媒とを熱交換するとともに、圧縮機2の駆動時に低圧冷媒貯蔵部12の低圧冷媒によって蓄冷材収容部13の蓄冷材を冷却し、低圧冷媒貯蔵部12の低圧冷媒と熱交換した後の高圧冷媒貯蔵部11の高圧冷媒を蓄冷材収容部13の蓄冷材によって冷却し、圧縮機2の停止時に蓄冷材収容部13の蓄冷材によって低圧冷媒貯蔵部12の低圧冷媒を冷却する蓄冷内部熱交換器10を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機、凝縮器、減圧器、蒸発器を有する冷媒回路を備えた車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両用空調装置では、圧縮機、凝縮器、減圧器、蒸発器を有する冷媒回路を備え、車両のエンジンを駆動源として圧縮機を駆動することにより車室内を冷房するようになっている。
【0003】
前記車両用空調装置では、凝縮器の下流側の高圧冷媒と蒸発器の下流側の低圧冷媒とを熱交換するための内部熱交換器を冷媒回路に設け、冷房能力の向上を図るようにしたものが知られている。
【0004】
ところで、信号待ち等による停車を検知してエンジンを停止するアイドリングストップ機構を備えた車両に対して前記空調装置を適用する場合には、エンジンの停止と同時に圧縮機の駆動も停止して冷媒回路に冷媒が流通しなくなるため、冷房を継続することができない。そこで、圧縮機の停止中に冷房を継続するため、冷媒回路の蒸発器の下流側の冷媒流路に、内部に蓄冷材を有し、圧縮機の運転時に低圧冷媒によって蓄冷材を冷却し、圧縮機の停止時に蓄冷材によって低圧冷媒を冷却する蓄冷熱交換器を設け、圧縮機の停止時に蓄冷材によって冷媒を液化し、圧縮機が停止してから冷媒回路の高圧側と低圧側との圧力が均一になるまでの時間を遅らせることにより、所定時間の冷房の継続が可能となるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−1485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記車両空調装置では、内部熱交換器や蓄冷熱交換器等、冷媒回路を構成する部品を多数有しており、部品点数が多く、組み付け工数が多くなるため、占有スペースが大きく製造コストが高くなる。
【0007】
本発明の目的とするところは、冷媒回路を構成する複数の部品を一体構成とすることにより、占有スペースを小さくすると共に部品点数及び組み付け工数の低減を図ることのできる車両空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前記目的を達成するために、圧縮機、凝縮器、減圧器、蒸発器を有する冷媒回路を備えた車両用空調装置において、前記冷媒回路に、凝縮器の下流側の高圧冷媒が流通する高圧冷媒流路と、蒸発器の下流側の低圧冷媒が流通する低圧冷媒流路と、蓄冷材が収容された蓄冷材収容部とを有し、高圧冷媒流路の高圧冷媒と低圧冷媒流路の低圧冷媒とを熱交換するとともに、圧縮機の駆動時に低圧冷媒流路の低圧冷媒によって蓄冷材収容部の蓄冷材を冷却し、圧縮機の停止時に蓄冷材によって低圧冷媒流路の低圧冷媒を冷却する蓄冷内部熱交換器を設けている。
【0009】
これにより、凝縮器の下流側の高圧冷媒の過冷却度が大きくなるとともに、圧縮機の停止時に蒸発器の下流側の低圧冷媒が液化されることから、蓄冷内部熱交換器の一部品によって内部熱交換器としての機能及び蓄冷熱交換器としての機能が果たされる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、蓄冷内部熱交換器の一部品によって内部熱交換器としての機能及び蓄冷熱交換機としての機能を果たすことができるので、冷媒回路の占有スペースを小さくすると共に部品点数及び組み付け工数の低減を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態を示す車両用空調装置の冷媒回路図
【図2】蓄冷内部熱交換器の側面断面図
【図3】図3のA−A′断面図
【図4】図3のB−B′断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1乃至図4は本発明の一実施形態を示すものである。
【0013】
本発明の車両用空調装置は、信号待ち等で停車したことを検知してエンジンを停止するアイドリングストップ機構を備えた車両に適用されるものであり、図1に示す冷媒回路1を備えている。
【0014】
冷媒回路1は、圧縮機2、凝縮器3、減圧器としての膨張弁4及び蒸発器5を有する周知の冷凍サイクルに、凝縮器3の下流側の高圧冷媒と蒸発器5の下流側の低圧冷媒とを熱交換するとともに、凝縮器3の下流側の高圧冷媒及び蒸発器5の下流側の低圧冷媒と蓄冷材とを熱交換するための蓄冷内部熱交換器10が接続されたものである。ここで用いられる圧縮機2は、車両のエンジンを駆動源として駆動するようになっており、アイドリングストップ機構によってエンジンが停止した場合に、同時に駆動が停止するものである。また、この車両用空調装置は、蒸発器5が車室内の空調ユニットの内部に設けられ、蒸発器5において冷媒と熱交換した空気が送風機5aによって車室内に供給されるようになっている。また、圧縮機2、凝縮器3、膨張弁4及び蓄冷内部熱交換器10は、車室外のエンジンルームの内部に設けられている。また、冷媒回路1には、冷媒としてHFC134aが用いられる。
【0015】
蓄冷内部熱交換器10は、水平方向に延びる円筒形状に形成され、一端側に凝縮器3の下流側の高圧冷媒と蒸発器5の下流側の低圧冷媒とを熱交換する内部熱交換部20が設けられ、他端側に凝縮器3の下流側の高圧冷媒及び蒸発器5の下流側の低圧冷媒と蓄冷材を熱交換する蓄冷熱交換部30が設けられている。
【0016】
内部熱交換部20は、第1筒状部材21と、第1筒状部材21内の下部に設けられた第2筒状部材22と、第1筒状部材21及び第2筒状部材の一端を閉鎖する第1閉鎖板23と、第1筒状部材21及び第2筒状部材22の他端に設けられ、内部熱交換部20と蓄冷熱交換部30とを仕切る仕切板24とから構成されている。
【0017】
蓄冷熱交換部30は、内部に蓄冷材が収容された第3筒状部材31と、第3筒状部材31内の上部に設けられた第4筒状部材32と、第3筒状部材31内の下部に設けられた第5筒状部材33と、第3筒状部材31、第4筒状部材32及び第5筒状部材33の一端に設けられた仕切板24と、第3筒状部材31、第4筒状部材32及び第5筒状部材33の他端を閉鎖する第2閉鎖板34とから構成されている。
【0018】
第1筒状部材21の一端の上部に位置する第1閉鎖板23には、低圧冷媒流出口23aが設けられ、第2筒状部材22の一端の下部に位置する第1閉鎖板23には、高圧冷媒流入口23bが設けられている。また、第1筒状部材21の他端の上部、且つ、第4筒状部材32の一端の上部に位置する仕切板24には、第1連通孔24aが設けられ、第2筒状部材22の他端の下部、且つ、第5筒状部材33の一端に位置する仕切板24には、第2連通孔24bが設けられている。更に、第4筒状部材32の他端の上部に位置する第2閉鎖板34には、低圧冷媒流入口34aが設けられ、第5筒状部材33の他端に位置する第2閉鎖板34には、高圧冷媒流出口34bが設けられている。即ち、第2筒状部材22内及び第5筒状部材33内に、凝縮器3から流出した高圧冷媒が流通すると共に所定量の高圧冷媒が貯蔵可能な高圧冷媒貯蔵部11が設けられ、第1筒状部材21内及び第4筒状部材32内に、蒸発器5から流出した低圧冷媒が流通すると共に所定量の低圧冷媒が貯蔵可能な低圧冷媒貯蔵部12が設けられ、第3筒状部材31内に、蓄冷材収容部13が設けられている。また、蓄冷材収容部13内には、蓄冷材としてエンジン冷却用のクーラントや水が収容されている。
【0019】
以上のように構成された車両用空調装置において、車両の走行時には、圧縮機2が駆動され、圧縮機2から吐出された冷媒は、凝縮器3において放熱して液化し、蓄冷内部熱交換器10の高圧冷媒貯蔵部11を流通する。また、蓄冷内部熱交換器10の高圧冷媒貯蔵部11から流出した冷媒は、膨張弁4において減圧されて蒸発器5において吸熱して蒸発し、蓄冷内部熱交換器10の低圧冷媒貯蔵部12を流通した後、圧縮機2に吸入される。
【0020】
前記車両の走行時において、蓄冷内部熱交換器10の蓄冷材収容部13に収容された蓄冷材は、第4筒状部材32を介して低圧冷媒貯蔵部12を流通する低圧冷媒によって冷却される。蓄冷内部熱交換器10の高圧冷媒貯蔵部11を流通する冷媒は、第2筒状部材22を介して低圧冷媒貯蔵部12を流通する冷媒と熱交換して冷却されることにより過冷却の状態となり、第5筒状部材33を介して蓄冷材収容部13に収容された蓄冷材と更に熱交換することにより冷却されるため、過冷却度が大きくなる。また、蓄冷内部熱交換器10の高圧冷媒貯蔵部11である第2筒状部材22内には、凝縮器3において液化した冷媒が一時的に貯えられるため、冷房負荷に応じて冷媒が蒸発器5に供給される。
【0021】
また、信号待ち等の停車を検知してエンジンが停止し、圧縮機2の駆動が停止すると、冷媒回路1内の圧力が均一となるまで高圧側から低圧側に冷媒が流入するが、蓄冷内部熱交換器10の低圧冷媒貯蔵部12の低圧冷媒は、蓄冷材収容部13の蓄冷材によって冷却されて液化するため、冷媒回路1の低圧側の圧力の上昇が遅くなり、冷媒回路1内の圧力が均一となるまでの時間が長くなる。これにより、圧縮機2の駆動が停止した場合にも、冷媒回路1内を冷媒が流通している間は、車室内の冷房の継続が可能となる。
【0022】
また、圧縮機2の駆動が停止している状態で、蓄冷内部熱交換器10の低圧冷媒貯蔵部12を流通する冷媒は、蓄冷材収容部13の蓄冷材によって冷却されて液化し、低圧冷媒貯蔵部12の第4筒状部材32内に溜まる。低圧冷媒貯蔵部12の第4筒状部材32から液冷媒が溢れると、溢れた液冷媒は、低圧側貯蔵部12の第1筒状部材21内に流れ、第2筒状部材22を介して高圧冷媒貯蔵部12の冷媒によって加熱されて気化するため、低圧冷媒貯蔵部12の第1筒状部材21の上部に設けられた冷媒流出口23aから液冷媒が流出することはない。
【0023】
このように、本実施形態の車両用空調装置によれば、冷媒回路1に、凝縮器3の下流側の高圧冷媒が流通する高圧冷媒貯蔵部11と、蒸発器5の下流側の低圧冷媒が流通する低圧冷媒貯蔵部12と、蓄熱材が収容された蓄熱材収容部13とを有し、高圧冷媒貯蔵部11の高圧冷媒と低圧冷媒貯蔵部12の低圧冷媒とを熱交換するとともに、圧縮機2の駆動時に低圧冷媒貯蔵部12の低圧冷媒によって蓄冷材収容部13の蓄冷材を冷却し、圧縮機2の停止時に蓄冷材収容部13の蓄冷材によって低圧冷媒貯蔵部12の低圧冷媒を冷却する蓄冷内部熱交換器10を設けたので、蓄冷内部熱交換器10の一部品によって内部熱交換器の機能及び蓄冷熱交換器の機能を果たすことができ、冷媒回路1の占有スペースを小さくすると共に部品点数及び組み付け工数の低減を図ることが可能となる。
【0024】
また、圧縮機2の駆動時に、低圧冷媒貯蔵部12の低圧冷媒と熱交換した後の高圧冷媒貯蔵部11の高圧冷媒を蓄冷材収容部13の蓄冷材によって冷却するようにしたので、高圧冷媒を低圧冷媒貯蔵部12の冷媒との熱交換によって過冷却状態とした後、更に蓄冷材収容部13の蓄冷材との熱交換によって高圧冷媒の過冷却度を大きくすることができ、高圧冷媒の過冷却を確実に行うことができる。
【0025】
更に、蓄冷内部熱交換器10に、蒸発器5の下流側の低圧冷媒が流通すると共に所定量の低圧冷媒を貯蔵可能な低圧冷媒貯蔵部12を設け、低圧冷媒貯蔵部12の冷媒流出口21aを、第1筒状部材21の上部に設けたので、蓄冷材によって冷却されて液化した低圧冷媒の低圧冷媒貯蔵部12外への流出を防止することができ、冷媒回路1に別途アキュムレータを設けることなく圧縮機2の液圧縮を防止することが可能となる。
【0026】
また、蓄冷内部熱交換器10に、凝縮器3の下流側の高圧冷媒が流通すると共に所定量の高圧冷媒を貯蔵可能な高圧冷媒貯蔵部11を設けたので、凝縮器3において液化した冷媒を高圧冷媒貯蔵部11に一時的に貯えることができ、冷媒回路1に別途受液器を設けることなく冷房負荷が変化する場合に確実に冷媒を蒸発器5に供給することが可能となる。
【0027】
この場合、低圧冷媒貯蔵部12の低圧冷媒と熱交換した後の高圧冷媒貯蔵部11の高圧冷媒が蓄冷材収容部13の蓄冷材によって冷却されるため、液化した冷媒を高圧冷媒貯蔵部11内に貯えるために第2筒状部材22の内部容量を大きくしても、高圧冷媒の過冷却を十分に行うことができ、アキュムレータ機能と内部熱交換機能とを確実に得ることができる。
【符号の説明】
【0028】
1…冷媒回路、2…圧縮機、3…凝縮器、4…膨張弁、5…蒸発器、10…蓄冷内部熱交換器、11…高圧冷媒貯蔵部、12…低圧冷媒貯蔵部、13…蓄冷材収容部、20…内部熱交換部、21…第1筒状部材、22…第2筒状部材、30…蓄冷熱交換部、31…第3筒状部材、32…第4筒状部材、33…第5筒状部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、凝縮器、減圧器、蒸発器を有する冷媒回路を備えた車両用空調装置において、
前記冷媒回路に、凝縮器の下流側の高圧冷媒が流通する高圧冷媒流路と、蒸発器の下流側の低圧冷媒が流通する低圧冷媒流路と、蓄冷材が収容された蓄冷材収容部とを有し、高圧冷媒流路の高圧冷媒と低圧冷媒流路の低圧冷媒とを熱交換するとともに、圧縮機の駆動時に低圧冷媒流路の低圧冷媒によって蓄冷材収容部の蓄冷材を冷却し、圧縮機の停止時に蓄冷材によって低圧冷媒流路の低圧冷媒を冷却する蓄冷内部熱交換器を設けた
ことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記蓄冷内部熱交換器を、圧縮機の駆動時に低圧冷媒流路の低圧冷媒と熱交換した後の高圧冷媒流路の高圧冷媒を蓄冷材によって冷却するように構成した
ことを特徴とする請求項1記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記蓄冷内部熱交換器の低圧冷媒流路として、蒸発器の下流側の低圧冷媒が流通すると共に所定量の低圧冷媒を貯蔵可能な低圧冷媒貯蔵部を設け、
低圧冷媒貯蔵部の低圧冷媒の流出口を、低圧冷媒貯蔵部の上部に設けた
ことを特徴とする請求項1または2記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記蓄冷内部熱交換器の高圧冷媒流路として、凝縮器の下流側の高圧冷媒が流通すると共に所定量の高圧冷媒を貯蔵可能な高圧冷媒貯蔵部を設けた
ことを特徴とする請求項1、2または3記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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