説明

車両用空調装置

【課題】乗員の快適性を向上させること。
【解決手段】フェイスモードで冷房運転を行う場合、インストルメントパネル11に設置したセンター吹出口12a,13aとサイド吹出口12b,13bから空調風を吹き出させる。このとき、サイド吹出口12b,13bからの風量を、センター吹出口12a,13aからの風量よりも多くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェイスモード運転時にセンター吹出口とサイド吹出口から空調風を乗員に吹き付ける車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、例えば、特許文献1で開示されるような車両用空調装置が搭載されている。この種の車両用空調装置では、空気を冷却又は加熱する手段を有する空調ユニットで温度調節された空調風を、車室内に設置した吹出口から吹き出させている。インストルメントパネルに設置される吹出口には、車両幅方向中央側で開口するセンター吹出口と乗降用ドアで開口するサイド吹出口がある。そして、これらの吹出口からは、乗員の上半身に向けて空調風が吹き出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−32119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、通常、車両の乗降用ドアには、ウインドガラスが設置されている。このため、乗員は、日射しやガラスからの伝熱の影響を受けて、窓側(側方側)と中央側とで温度差を感じる場合がある。車両空調装置では、前述した温度差を考慮して空調運転を行うことで、乗員の快適性をより向上させることができると考えられる。
【0005】
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その目的は、車両の中央部と側方部の温度差を考慮して空調運転を行うことにより、乗員の快適性を向上させる車両空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、車室内に向けて送風機から送出された空調風を吹き出すための吹出口を、インストルメントパネルに複数設置した車両用空調装置において、前記吹出口は、車両幅方向中央側で開口するセンター吹出口と乗降用ドア側で開口するサイド吹出口とを備え、前記センター吹出口と前記サイド吹出口から前記空調風を乗員に吹き付けるフェイスモード運転時に、前記サイド吹出口からの風量を前記センター吹出口からの風量よりも多くする風量制御手段を備えたことを要旨とする。
【0007】
これによれば、フェイスモード運転時にはセンター吹出口よりもサイド吹出口の方が空調風の風量が多くなる。すなわち、日差しや乗降用ドアのウインドガラスからの伝熱の影響を受け易い車両の側方側に吹き出される風量が多くなる。このような、車両の中央部と側方部の温度差を考慮した空調運転により、乗員は温度差を感じ難くなり、乗員の快適性を向上させることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用空調装置において、前記風量制御手段は、冷房運転時に前記サイド吹出口からの風量を多くすることを要旨とする。
これによれば、日差しや乗降用ドアのウインドガラスからの伝熱による影響を受け易い夏場の冷房運転時に、車両の中央部と側方部の温度差を考慮した空調運転を実現できる。したがって、冷房運転による乗員の快適性をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、車両の中央部と側方部に生じ得る温度差を考慮して空調運転を行うことにより、乗員の快適性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】車両の車室内を示す模式図。
【図2】空調ダクト及び空調ユニットを示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図2にしたがって説明する。
図1に示すように、車両(自動車)の車室内前面に設けられたインストルメントパネル11には、車両に搭載された空調ユニットK(図2に示す)によって温度調節された空調風を、車室内に向けて吹き出すための複数の吹出口12,13が設置されている。より具体的に言えば、運転席14側には、吹出口12として、センター吹出口12aとサイド吹出口12bが設置されている。一方、助手席15側には、吹出口13として、センター吹出口13aとサイド吹出口13bが設置されている。
【0012】
各センター吹出口12a,13aは、インストルメントパネル11の中央部で開口しており、運転席14及び助手席15の乗員の上半身(頭胸部)に向けて空調風を吹き出す中央側上部吹出口とされている。インストルメントパネル11の中央部は、車両幅方向中央部に相当する。なお、運転席14の前方に設けられたステアリングハンドル16は、運転席14側のセンター吹出口12aとサイド吹出口12bの間に配置されている。
【0013】
一方、各サイド吹出口12b,13bは、インストルメントパネル11の側方部で開口しており、運転席14及び助手席15の乗員の上半身(頭胸部)に向けて空調風を吹き出す側方側上部吹出口とされている。インストルメントパネル11の側方部は、運転席14へ乗降するための乗降用ドア14a側、及び助手席15へ乗降するための乗降用ドア15a側にそれぞれ相当する。そして、各乗降用ドア14a,15aには、図示しないウインドガラスがそれぞれ設置されている。
【0014】
なお、車両には、フロントガラスに向けて空調風を吹き出すデフロスタ用の吹出口(図示しない)や、運転席14及び助手席15の乗員の足元に向けて空調風を吹き出すフット用の吹出口(図示しない)も設置されている。
【0015】
また、図2に示すように、空調ユニットKによって温度調節された空調風を移送するダクト17には、各吹出口12,13を開閉するための開閉ドア18a,18b,18cが回動自在に取り付けられている。空調風の送風は、空調ユニットK内の送風機K4によって行われる。開閉ドア18aは、各センター吹出口12a,13a及び各サイド吹出口12b,13bを開閉する。開閉ドア18bは、運転席14側のセンター吹出口12a及びサイド吹出口12bを開閉する。開閉ドア18cは、助手席15側のセンター吹出口13a及びサイド吹出口13bを開閉する。各開閉ドア18a〜18cは、空調ユニットKを構成する開閉用アクチュエータK2の駆動によって開度調節がなされる。なお、開閉用アクチュエータK2は、空調ユニットKの制御部K1によって制御される。制御部K1は、マイクロコンピュータによって構成される。
【0016】
また、図2に示すように、空調ユニットKの制御部K1には、吹出口モードを乗員が設定(指示)するためのモード設定器K3が接続されている。吹出口モードとしては、空調風を吹出口12,13から吹き出すフェイスモード、空調風をデフロスタ用の吹出口から吹き出すデフモード、空調風をフット用の吹出口から吹き出すフットモードなどがある。そして、制御部K1は、モード設定器K3で設定された吹出口モードにしたがって、各開閉ドア18a,18b,18cの開度調節を行う。これにより、空調風は、ダクト17を介して、吹出口モードに対応する吹出口へ移送されるとともに、その吹出口から車室内に吹き出す。なお、空調ユニットKは、前述した制御部K1、開閉用アクチュエータK2、モード設定器K3に加えて、蒸発器などの空気冷却手段やヒータなどの空気加熱手段を備えている。
【0017】
以下、本実施形態の車両用空調装置の作用を説明する。
制御部K1は、フェイスモードにて冷房運転を行う場合、空調ユニットKで温度調節した空調風を、吹出口12,13から吹き出させるために、各開閉ドア18a,18b,18cの開度調節を行う。具体的に言えば、制御部K1は、開閉ドア18aを全開とし、空調風を、ダクト17によって吹出口12,13へ移送させる。なお、本実施形態の車両用空調装置は、開閉ドア18aを全開とした場合、空調風はデフロスタ用の吹出口やフット用の吹出口へ移送されないように構成されている。
【0018】
また、制御部K1は、フェイスモードにて冷房運転を行う場合、各サイド吹出口12b,13bからの風量を、各センター吹出口12a,13aからの風量よりも多くするように、各開閉ドア18b,18cの開度調節を行う。つまり、空調ユニットKの送風機K4から送出された空調風は、開閉ドア18b,18cによって、各センター吹出口12a,13aより、各サイド吹出口12b,13bへ多く配風可能な状態とされる。開閉ドア18b,18cは、制御部K1の指令により動作する電気的な配風比率変更手段として機能する。具体的に言えば、制御部K1は、開閉ドア18bについて、図2に示すように、センター吹出口12aへ空調風が向かう流路の開度αよりもサイド吹出口12bへ空調風が向かう流路の開度βを大きくするように開度調節を行う。また、制御部K1は、開閉ドア18cについて、図2に示すように、センター吹出口13aへ空調風が向かう流路の開度αよりもサイド吹出口13bへ空調風が向かう流路の開度βを大きくするように開度調整を行う。なお、開閉ドア18b,18cの開度αは同一開度であるとともに、開閉ドア18b,18cの開度βは同一開度である。
【0019】
これにより、本実施形態の車両用空調装置では、フェイスモードにて冷房運転を行う場合、乗降用ドア14a,15a側の各サイド吹出口12b,13bからの風量が、車両中央側の各センター吹出口12a,13aからの風量よりも多くなる。なお、本実施形態の車両用空調装置では、空調運転モードがフェイスモードの場合、常時、各サイド吹出口12b,13bからの風量を、各センター吹出口12a,13aからの風量よりも多くする。
【0020】
本実施形態では、制御部K1、開閉用アクチュエータK2、及び開閉ドア18a〜18cにより、フェイスモード運転時に、サイド吹出口12b,13bからの風量を、常時、センター吹出口12a,13aからの風量よりも多くする風量制御手段が構成される。そして、本実施形態では、上記した風量制御手段の各構成、空調ユニットK、センター吹出口12a,13a、及びサイド吹出口12b,13bにより、車両用空調装置が構成される。
【0021】
したがって、本実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)フェイスモード運転時には、センター吹出口12a,13aからの風量よりもサイド吹出口12b,13bからの風量を多くする。これによれば、日差しや乗降用ドア14a,15aのウインドガラスからの伝熱の影響を受け易い車両の側方側に吹き出される風量を多くできる。したがって、車両の中央部と側方部の温度差を考慮した空調運転の実現により、乗員は温度差(不均一感)を感じ難く、乗員の快適性を向上させることができる。
【0022】
(2)冷房運転時に、センター吹出口12a,13aからの風量よりもサイド吹出口12b,13bからの風量を多くする。夏場は、日差しや乗降用ドア14a,15aのウインドガラスからの伝熱による影響を受け易い。したがって、冷房運転時に、車両の中央部と側方部の温度差を考慮した空調運転を実現することで、乗員の快適性をより向上させることができる。
【0023】
(3)吹出口前方にステアリングハンドル16が配置されている場合は、そのステアリングハンドル16が障害物となって空調風が拡散し、冷房効果の低減に繋がる。しかし、本実施形態では、運転席14側のサイド吹出口12bの前方にステアリングハンドル16が配置されていないため、サイド吹出口12bからの風量を多くした場合であっても、空調風を乗員に向けて確実に吹き付けることができる。その結果、乗員の快適性を向上させることができる。
【0024】
(4)開閉ドア18b,18cの開度調節により、センター吹出口12a,13aからの風量よりもサイド吹出口12b,13bからの風量を多くする。したがって、既存の構成(ダクト17の構成)を流用しつつ、乗員の快適性を向上させることができる。
【0025】
(5)センター吹出口12a,13aからの空調風は、運転席14及び助手席15の後部へ吹き抜ける可能性が高い。一方、サイド吹出口12b,13bからの空調風は、運転席14及び助手席15が障害物となり、これらの座席後部へ吹き抜ける可能性が低い。このため、フェイスモード運転時に、サイド吹出口12b,13bからの風量を多くすることで、運転席14及び助手席15の着座領域に対して空調風を吹き付けることができる。したがって、運転席14や助手席15の乗員の快適性を向上させることができる。
【0026】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 実施形態において、空調運転モードが急速冷房モードとなる場合は、開閉ドア18a〜18cの開度調節により、吹出口12,13からの風量を均等にしても良いし、センター吹出口12a,13aからの風量を、サイド吹出口12b,13bからの風量よりも多くしても良い。
【0027】
○ 実施形態において、開閉ドア18b,18cを、開度変更不能(開度固定)に取り付けても良い。この場合、開閉ドア18b,18cは、実施形態で説明したように、センター吹出口12a,13aへ空調風が向かう流路の開度αよりもサイド吹出口12b,13bへ空調風が向かう流路の開度βが大きくなるように取り付ける。
【0028】
○ 実施形態において、開閉ドア18b,18cに代えて、センター吹出口12a,13aへ空調風を移送するダクトの流路径を、サイド吹出口12b,13bへ空調風を移送するダクトの流路径に比して小さくしても良い。この構成により、サイド吹出口12b,13bからの風量を、センター吹出口12a,13aからの風量よりも多くしても良い。
【0029】
○ 実施形態を、センター吹出口12a,13aとサイド吹出口12b,13bのそれぞれに対して各別に空調風を移送する構成に適用する場合は、空調ユニットKからの風量を、サイド吹出口12b,13bの方がセンター吹出口12a,13aよりも多くなるように各別に調節しても良い。
【0030】
○ 実施形態は、運転席14及び助手席15からなる前部座席に加えて後部座席を有する車両(自動車)や、前記前部座席のみを有する車両(自動車)の何れに具体化しても良い。
【0031】
○ 実施形態は、エンジン式車両、駆動源をエンジン及びモータとするハイブリッド式車両や、駆動源をモータとする電気式車両などの各種自動車に具体化しても良い。
【符号の説明】
【0032】
11…インストルメントパネル、12,13…吹出口、12a,13a…センター吹出口、12b,13b…サイド吹出口、14a,15a…乗降用ドア、18a〜18c…開閉ドア、K…空調ユニット、K1…制御部、K2…開閉用アクチュエータ、K4…送風機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に向けて送風機から送出された空調風を吹き出すための吹出口を、インストルメントパネルに複数設置した車両用空調装置において、
前記吹出口は、車両幅方向中央側で開口するセンター吹出口と乗降用ドア側で開口するサイド吹出口とを備え、
前記センター吹出口と前記サイド吹出口から前記空調風を乗員に吹き付けるフェイスモード運転時に、前記サイド吹出口からの風量を前記センター吹出口からの風量よりも多くする風量制御手段を備えたことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記風量制御手段は、冷房運転時に前記サイド吹出口からの風量を多くすることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−188086(P2012−188086A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55665(P2011−55665)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】