説明

車両用空調装置

【課題】簡単な構成で、空調ケース内において冷風と温風との混合性を向上することができる車両用空調装置を提供する。
【解決手段】温風合流通路21を流下した温風が合流部分18aにて冷風通路16を流れた冷風と合流する。また温風トンネル通路23を流下した温風は、温風拡散通路24によって、合流部分18aの温風合流方向Y下流側にて並び方向Zに拡散して、エアミックスチャンバ18に導かれる。温風拡散通路24は、合流部分18aと隔壁26によって仕切られているので、合流部分18aにて冷風と合流することなくエアミックスチャンバ18に導かれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷風と温風とを混合するエアミックス方式の車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術の車両用空調装置において、冷風と温風との混合性を向上させる技術が特許文献1に開示されている。特許文献1に記載の技術では、ヒータコアからエアミックスチャンバに至る温風通路と、ヒータコアからエアミックスチャンバを一端迂回して、温風通路の出口とは冷却通路を挟んで反対側に位置する出口を有する温風バイパス通路を設けている。そして温風バイパス通路を流れる温風をUターンさせて冷風通路に温風を吹き出させることで、温風通路と温風バイパス通路とによって冷風通路を挟み込むようにしている。
【0003】
また従来技術の車両用空調装置のデフ吹出口において、冷風と温風との混合性を向上させる技術が特許文献2に開示されている。特許文献2に記載の技術では、デフ吹出口に幅方向に温風を分散させる案内部材を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−155497号公報
【特許文献2】米国特許第5109755号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の特許文献1に記載の技術では、温風バイパス通路によって温風をUターンさせているので、通路抵抗が大きくなるという問題がある。また前述の特許文献2に記載の技術では、デフ吹出口という特定の吹出口に案内部材を設けているので、他の吹出口については混合性を向上することができない。また他の吹出口のそれぞれに同様の案内部材を設けることも考えられるが、部品点数が多くなるという問題、および装置が大型化するという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は前述の問題点を鑑みてなされたものであり、簡単な構成で、空調ケース内において冷風と温風との混合性を向上することができる車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前述の目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。
【0008】
請求項1に記載の発明では、内部に空気通路(15)を形成する空調ケース(12)と、
空調ケース内に空気を送風する送風機と、
空調ケース内に設けられ、送風機によって送風される空気を冷却する冷却用熱交換器(13)と、
空調ケース内に設けられ、冷却用熱交換器を通過した空気を加熱する加熱用熱交換器(14)と、
空調ケース内に形成され、加熱用熱交換器を通過せずに冷却用熱交換器を通過した冷風が流れる冷風通路(16)と、
空調ケース内に形成され、加熱用熱交換器を通過した後の温風が流れる温風通路(21,23,24)と、
空調ケース内に設けられ、加熱用熱交換器を通過する空気量と冷風通路を流れる空気量とを調整するエアミックス手段(17)と、
空調ケース内に設けられ、温風通路からの温風と冷風通路からの冷風とが混合される混合室(18)と、
空調ケース内に設けられ、混合室にて混合された空調風を車室内の複数箇所に向けて吹き出す複数の吹出開口部(31〜33)と、を含み、
温風と冷風とは、混合室内の上流側に位置する合流部分(18a)で合流し、
冷風通路は、合流部分において冷風を温風に対して交差するように導き、
温風通路は、
合流部分に温風を導く温風合流通路(21)と、
合流部分を横断するように配置され温風の合流方向に延びる筒状体の内側に形成される通路であって、筒状体内を流れる温風を合流部分に対して温風の合流方向下流側へ導く温風トンネル通路(23)と、
混合室および温風トンネル通路と連通する通路であって、温風トンネル通路を流れてきた温風が流入し、合流部分と筒状体とが並ぶ方向であって、冷風の流れ方向に交差する並び方向に延びる温風拡散通路(24)と、を有し、
温風拡散通路は、
並び方向および冷風の流れ方向に延び、合流部分と温風拡散通路とを仕切る第1の壁部(26)と、
並び方向および冷風の流れ方向に延び、第1の壁部の温風の合流方向下流側に間隔をあけて位置する第2の壁部(27)と、
並び方向および温風の合流方向に延び、第1の壁部と第2の壁部との冷風の流れ方向上流側に位置する端部を連結する底部(28)と、で囲まれており、
温風拡散通路は、温風トンネル通路から流れてきた温風を第1の壁部および第2の壁部に沿う方向へ導いて、混合室に導くことを特徴とする車両用空調装置である。
【0009】
請求項1に記載の発明に従えば、温風合流通路を流下した温風が合流部分にて冷風通路を流れた冷風と合流する。また温風トンネル通路を流下した温風は、温風拡散通路によって、合流部分の温風の合流方向下流側にて並び方向に拡散して、混合室に導かれる。温風拡散通路は、合流部分と第1の壁部によって仕切られているので、合流部分にて冷風と合流することなく混合室に導かれる。したがって冷風通路を流下した冷風は、合流部分にて温風の温風合流通路を流れた合流方向の上流側からの温風と合流し、さらに混合室にて、温風拡散通路を流れた温風の合流方向下流側からの温風とで挟むようになる。また温風合流通路を流れた温風と冷風との合流部分における合流によって、合流部分おける合流方向上流側の温度は合流する温風によって高くなるが、合流部分における合流方向他方側の冷風と温風は混ざりにくい。そこで温風拡散通路を流下した温風が合流部分の合流方向下流側を流下して混合室に導かれるので、温度が低い冷風と混合室にて混合させることができる。したがって合流方向および並び方向において、温度分布を均一に近づけることができる。そして混合した空気を空調風として、吹出開口部から車室内に向けて吹き出せることができる。したがって吹出開口部の位置などにかかわらず、混合した空調風を流下させることができる。このように本発明の車両用空調装置では、簡単な構成で、空調ケース内において冷風と温風との混合性を向上することができる。
【0010】
また請求項2に記載の発明では、筒状体は、並び方向に間隔をあけて複数設けられることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明に従えば、筒状体は並び方向に間隔をあけて複数設けられる。したがって並び方向に分散して温風トンネル通路から温風拡散通路に送ることができる。また合流部分において、温風と冷風とを合流する部分を隣接する筒状体の間隔によって、尾温風合流通路からの温風を並び方向の分散させて、合流部分に導くことができる。これによって並び方向における混合性をより向上することができる。
【0012】
なお、前述の各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態の車両用空調装置10の断面図である。
【図2】図1中のII−II線断面図である。
【図3】温風グリッド20を示す斜視図である。
【図4】バイレベルモードの状態における車両用空調装置10の断面図である。
【図5】フットモードの状態における車両用空調装置10の断面図である。
【図6】フット/デフモードの状態における車両用空調装置10の断面図である。
【図7】デフロスタモードの状態における車両用空調装置10の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に関して、図1〜図7を用いて説明する。図1は、第1実施形態の車両用空調装置10の断面図を示す。まず、本実施形態の車両用空調装置10の全体構成について説明する。車両用空調装置10は、室内空調ユニット(図示せず)を備えている。室内空調ユニットは、車室内最前部の図示しない車両計器盤の内側に配置される。室内空調ユニットは、図示しない送風機ユニットと、図1に示す空調本体ユニット11とを有している。
【0015】
空調本体ユニット11は、車両左右方向の略中央に配置される。送風機ユニットは、空調本体ユニット11に対して助手席側に所定寸法だけ離間して配置される。送風機ユニットは、内外気を切替導入する内外気切替箱と送風機とを有しており、送風機によって、導入した空気を空調本体ユニット11に送風するものである。
【0016】
図1に示すように、空調本体ユニット11は、空調ケース12の内部に、蒸発器13とヒータコア14とを収納している。空調ケース12は、空気通路15を内部に形成するものであり、樹脂材料で構成されている。空調ケース12の前方側(図1の左方側)に送風機ユニットが設けられ、送風機ユニットから空調ケース12内に空気が送風される。
【0017】
蒸発器13は、蒸発器13の内部を通過する冷媒と空調ケース12内を流れる空気とを熱交換させて空気を冷却する冷却用熱交換器である。蒸発器13は、空調ケース12の内部の前方側に配置されており、送風機ユニットから送風された空気を冷却する。したがって、蒸発器13を通過した空気は冷風となって流れる。
【0018】
ヒータコア14は、内部を通過する冷媒、たとえばエンジン冷却水と蒸発器13を通過した空気とを熱交換させて空気を加熱する加熱用熱交換器である。したがって、ヒータコア14を通過した空気は温風となって流れる。ヒータコア14は、蒸発器13の後方側(図1の右方側)であって、空調ケース12内の下方側に配置されている。空調ケース12のうちヒータコア14の後方側には、ヒータコア14からの温風が流れる温風合流通路21が形成されている。
【0019】
空調ケース12のうち蒸発器13の上方側には、ヒータコア14を迂回(バイパス)して蒸発器13からの冷風が流れる冷風通路16が形成されている。冷風通路16は蒸発器13から上方に向かって延びている。
【0020】
空調ケース12の内部のうち蒸発器13とヒータコア14との間には、ヒータコア14を流れる空気量と、冷風通路16を流れる空気量との割合を調整するエアミックスドア17が配置されている。エアミックスドア17は、たとえば回転ドアで構成されている。
【0021】
空調ケース12の内部のうち蒸発器13の後方側であって、ヒータコア14の下流側に、冷風通路16からの冷風と、ヒータコア14からの温風とを衝突させて混合する混合室であるエアミックスチャンバ18が形成されている。
【0022】
空調ケース12内には、エアミックスチャンバ18にて混合された空調風を車室内の複数箇所に向けて吹き出す複数の吹出開口部31〜33が設けられる。したがって吹出開口部31〜33は、エアミックスチャンバ18の空気流れ下流側に設けられる。本実施形態では、複数の吹出開口部31〜33として、デフロスタ開口部31、フェイス開口部32およびフット開口部33が設けられている。デフロスタ開口部31は、前側窓ガラスの内表面に空調風を吹き出すためのものである。フェイス開口部32は、乗員上半身に向けて空調風を吹き出すためのものである。フット開口部33は、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すためのものである。
【0023】
空調ケース12には、複数の吹出開口部31〜33を選択して開閉する吹出モードドアが設けられている。具体的には、フェイス開口部32とフット開口部33とを開閉するフェイス・フットドア34と、デフロスタ開口部31を開閉するデフロスタドア35とが設けられている。フェイス・フットドア34およびデフロスタドア35は、吹出開口部31〜33を開閉する板状のドア本体部とドア本体部を回転させる回転軸とを有する板ドアによって構成されている。
【0024】
次に、温風グリッド20に関して説明する。図2は、図1中のII−II線断面図である。図3は、温風グリッド20を示す斜視図である。温風グリッド20は、冷風と温風とを混合するために設けられる。図2では、理解を容易にするため温風の流れを矢印にて示し、冷風の流れの図示は省略している。図3では、理解を容易にするため温風の流れを実線の矢印で示し、冷風の流れを破線の矢印で示している。以下、冷風の温風グリッド20における流れ方向X(図1における上下方向)に対して、交差、具体的には直交する方向であって冷風通路16を横断する方向を温風合流方向Y(図1における左右方向)と称し、流れ方向Xおよび温風合流方向Yに直交する方向を並び方向Z(図1の紙面に垂直な方向)と称することがある。
【0025】
温風グリッド20は、空調ケース12の内部のうち、エアミックスドア17とエアミックスチャンバ18との間に設けられる。温風グリッド20は、たとえば空調ケース12と同一の樹脂材料で一体に形成され、もしくは、空調ケース12と別体に形成された後、空調ケース12に固定される。
【0026】
温風グリッド20は、ヒータコア14からの温風が流れる温風合流通路21の出口に設けられる。また温風グリッド20は、冷風通路16を横断するように設けられる。換言すると、温風グリッド20は、冷風通路16からの冷風の流れ方向Xと温風合流通路21からの温風の吹出方向とが交差する部位であって、吹出モードドアの可動域よりも空気流れ上流側に位置している。交差する部位は、エアミックスチャンバ18内の上流側に位置する合流部分18aであり、温風と冷風とが合流する部分である。冷風通路16から温風グリッド20への冷風の吹出方向は、図1における上方であり、温風合流通路21からの冷風通路16への温風の吹出方向は、図1における左方である。よって、冷風通路16からの冷風の吹出方向と、温風合流通路21からの温風の吹出方向とは交差している。したがって冷風通路16は、合流部分18aにおいて冷風を温風に対して交差するように導く。
【0027】
温風グリッド20は、温風合流通路21を流下した温風の一部が通過する冷風通路16とは独立した通路として、温風トンネル通路23と温風拡散通路24とを有する。温風トンネル通路23は、合流部分18aを横断するように配置される。温風トンネル通路23は、温風合流方向Yに延びる筒状体23aの内側に形成される通路である。温風トンネル通路23は、筒状体23a内を流れる温風を合流部分18aに対して温風合流方向Y下流側へ導く。換言すると、温風トンネル通路23は、合流部分18aの一部を塞ぐように温風合流方向Yに横断し、冷風通路16の温風合流方向Yの他方側に位置する温風拡散通路24に温風を導く。筒状体23aは、温風合流方向Yに延び、並び方向Z(図2の左右方向)に間隔をあけて、複数設けられ、本実施形態では3つ設けられる。3つの温風トンネル通路23は、並び方向Zの中央と、並び方向Zの両方の端にそれぞれ設けられる。筒状体23aの外壁のうちエアミックスドア17側(図3の下方側)の面部は、好ましくは流線型に形成され、本実施形態では角部がR面取りなされる。これによって冷風が隣接する合流部分18aである筒状体23a間に流入するとき発生する通風抵抗を、流線型の外壁によって低減することができる。
【0028】
したがって隣接する筒状体23aの間は、並び方向Zの間隔となり、この間隔が合流部分18aである。また合流部分18aには、冷風と温風とをエアミックスチャンバ18に案内する案内板25が複数、本実施形態では間隔毎に2つ設けられる。案内板25は、温風合流方向Yおよび流れ方向Xに延びる。これによって冷風が流れ方向X(図3の上方)に案内される。
【0029】
また温風合流通路21が温風を導く合流部分18aは、温風合流方向Yの一方側(図2の下方側)から他方側(図2の上方側)に向かって冷風通路16と合流する部位である。具体的には、温風合流通路21が温風を導く部位は、並び方向Zの間隔である。
【0030】
温風拡散通路24は、並び方向Zに延びる通路であり、温風トンネル通路23の下流側(温風合流方向Yの他方側)に位置する。また温風拡散通路24は、温風トンネル通路23とエアミックスチャンバ18とに連通する。したがって温風トンネル通路23を通過した温風は、温風拡散通路24にて合流する。また温風拡散通路24は、流れ方向Xが開放されている。したがって温風拡散通路24は、断面略U字状に形成され、温風トンネル通路23から温風が流入する部分は開口しているが、合流部分18aに隣接する他の部分について冷風通路16と温風拡散通路24とを隔てる第1の壁部である隔壁26が設けられる。さらに温風拡散通路24は、温風トンネル通路23から温風が流入する部分(隔壁26)とは反対側に、温風合流方向Yに間隔をあけて並び方向Zおよび冷風の流れ方向X(図2の紙面厚み方向)に延びる壁部27(第2の壁部)を有する。壁部27は、本実施形態では空調ケース12の内壁である。さらに並び方向Zおよび温風の合流方向Yに延び、隔壁26と壁部27との流れ方向X上流側(図1の下方)に位置する端部を連結する底部28とを有する。したがって温風拡散通路24は、隔壁26と壁部27と底部28とでで囲まれている。したがって温風拡散通路24に流入した温風は、隔壁26および壁部27によって合流部分18aに流入することなく流れ方向Xに案内される。そして温風拡散通路24は、温風トンネル通路23から流れてきた温風を隔壁26および壁部27に沿う方向へ導いて、エアミックスチャンバ18に導く。
【0031】
次に、温風と冷風との流れに関して説明する。ヒータコア14を通過直後の温風は、先ず温風合流通路21によって温風グリッド20まで案内される。そして温風合流通路21の出口にて、一部の温風が温風トンネル通路23に流入し、他の温風が筒状体23aの間隔、すなわち合流部分18aに流入する。合流部分18aの流入した温風は、冷風通路16を流れた冷風と合流し、冷風の圧力によって冷風の流れ方向Xに案内されて、エアミックスチャンバ18に流入する。
【0032】
また温風トンネル通路23を流下した温風は、温風拡散通路24にて合流し、壁部27によって流れ方向Xに案内される。流れ方向Xに案内された温風は、隣接する合流部分18aを流下した冷風とエアミックスチャンバ18にて混合される。このように温風グリッド20を通過した冷風と温風とは、並び方向Zおよび温風合流方向Yに混合されることになる。
【0033】
次に、吹出モードに関して説明する。本実施形態の車両用空調装置10では、吹出モードとして、たとえばフェイスモード、バイレベル(B/L)モード、フットモード、フット/デフロスタモードおよびデフロスタモードがある。
【0034】
先ず、フェイスモードに関して説明する。フェイスモードは、主に乗員上半身に向けて空調風を吹き出すモードである。フェイスモードでは、図1に示すように、フェイス開口部32が開状態であり、フット開口部33が閉状態となる位置にフェイス・フットドア34を配置している。またデフロスタ開口部31が閉状態となる位置にデフロスタドア35を配置している。これによって温風グリッド20によって混合された空気がエアミックスチャンバ18に流入し、エアミックスチャンバ18からフェイス開口部32を介して空調風が車室内に送風される。
【0035】
次に、バイレベルモードに関して説明する。バイレベルモードは、乗員上半身および乗員の足元に向けて空調風を吹き出すモードである。図4は、バイレベルモードの状態における車両用空調装置10の断面図である。バイレベルモードでは、図4に示すように、フェイス開口部32およびフット開口部33が開状態となる位置にフェイス・フットドア34を配置している。またデフロスタ開口部31が閉状態となる位置にデフロスタドア35を配置している。これによって温風グリッド20によって混合された空気がエアミックスチャンバ18に流入し、エアミックスチャンバ18からフェイス開口部32およびフット開口部33を介して空調風が車室内に送風される。
【0036】
次に、フットモードに関して説明する。フットモードは、主に乗員の足元に向けて空調風を吹き出すモードである。図5は、フットモードの状態における車両用空調装置10の断面図である。フットモードでは、図5に示すように、フェイス開口部32が閉状態であり、フット開口部33が開状態となる位置にフェイス・フットドア34を配置している。またデフロスタ開口部31が開状態であって、デフロスタ開口部31にわずかに空気が流れる位置にデフロスタドア35を配置している。これによって温風グリッド20によって混合された空気がエアミックスチャンバ18に流入し、エアミックスチャンバ18からデフロスタ開口部31およびフット開口部33を介して空調風が車室内に送風される。またデフロスタ開口部31は、温風拡散通路24に対向するような位置にある。したがってデフロスタドア35の開度によっては、デフロスタ開口部31へは主に温風拡散通路24からの空気が流入する。これによってデフロスタ開口部31とフット開口部33とで温度差を付けることができる。
【0037】
次に、フット/デフロスタモードに関して説明する。フット/デフロスタモードは、前側窓ガラスおよび乗員の足元に向けて空調風を吹き出すモードである。図6は、フット/デフロスタモードの状態における車両用空調装置10の断面図である。フット/デフロスタモードでは、図6に示すように、フェイス開口部32が閉状態であり、フット開口部33が開状態となる位置にフェイス・フットドア34を配置している。またデフロスタ開口部31が開状態となる位置にデフロスタドア35を配置している。これによって温風グリッド20によって混合された空気がエアミックスチャンバ18に流入し、エアミックスチャンバ18からデフロスタ開口部31およびフット開口部33を介して空調風が車室内に送風される。
【0038】
次に、デフロスタモードに関して説明する。デフロスタモードは、前側窓ガラスに向けて空調風を吹き出すモードである。図7は、デフロスタモードの状態における車両用空調装置10の断面図である。デフロスタモードでは、図7に示すように、フェイス開口部32が閉状態となる位置にフェイス・フットドア34を配置している。またデフロスタ開口部31が開状態であり、フット開口部33が閉状態となる位置にデフロスタドア35を配置している。これによって温風グリッド20によって混合された空気がエアミックスチャンバ18に流入し、エアミックスチャンバ18からデフロスタ開口部31を介して空調風が車室内に送風される。
【0039】
以上説明したように本実施形態の車両用空調装置10では、温風合流通路21を流下した温風が合流部分18aにて冷風通路16を流れた冷風と合流する。また温風トンネル通路23を流下した温風は、温風拡散通路24によって、合流部分18aの温風合流方向Y下流側にて並び方向Zに拡散して、エアミックスチャンバ18に導かれる。温風拡散通路24は、合流部分18aと隔壁26によって仕切られているので、合流部分18aにて冷風と合流することなくエアミックスチャンバ18に導かれる。したがって冷風通路16を流下した冷風は、合流部分18aにて温風の温風合流通路21を流れた合流方向Yの上流側からの温風と合流し、さらにエアミックスチャンバ18にて、温風拡散通路24を流れた温風の合流方向Y下流側からの温風とで挟むようになる。また温風合流通路21を流れた温風と冷風との合流部分18aにおける合流によって、合流部分18aおける合流方向Y上流側の温度は合流する温風によって高くなるが、合流部分18aにおける合流方向Y他方側の冷風と温風は混ざりにくい。そこで温風拡散通路を流下した温風が合流部分18aの合流方向Y下流側を流下してエアミックスチャンバ18に導かれるので、温度が低い冷風とエアミックスチャンバ18にて混合させることができる。したがって合流方向Yおよび並び方向Zにおいて、温度分布を均一に近づけることができる。そして混合した空気を空調風として、吹出開口部31〜33から車室内に向けて吹き出せることができる。したがって吹出開口部31〜33の位置などにかかわらず、混合した空調風を流下させることができる。このように本実施形態の車両用空調装置10では、簡単な構成で、空調ケース12内において冷風と温風との混合性を向上することができる。
【0040】
また本実施形態では、筒状体23aは並び方向Zに間隔をあけて、複数設けられ、並び方向Zに延びる温風拡散通路24に合流する。したがって温風をより均一に分散して合流部分18aの温風合流方向Y下流側に位置する温風拡散通路24に送ることができる。また合流部分18aは、並び方向Zの間隔であり、温風合流通路21が温風を導く部位は、並び方向Zの間隔である。したがって温風合流通路21が冷風通路16に合流する部分において、並び方向Zの分散させることができる。これによって並び方向Zにおける混合性をより向上することができる。
【0041】
換言すると、本実施形態では、温風グリッド20にて温風を、合流部分18aを貫通させて向こう側の空調ケース12の内壁(壁部27)まで導く。そして、その導かれた温風をケース幅方向である並び方向Zへ分散させる。そして、並び方向Zに分散された温風を、空調ケース12の内壁に沿ってエアミックスチャンバ18に導く。この際、ケース壁面に沿って幅方向へ分散された温風が、冷風によって拡散されないように、温風拡散通路24では温風と冷風とが隔壁26にて仕切られている。そして温風グリッド20は、エアミックスチャンバ18の上流側に位置するので、全ての吹出モードにおいて、温風拡散通路24に導かれた温風が幅方向に分散され、そのままケース壁面に沿って吹出口に導かれる。
【0042】
これによって空調ケース12の全幅(並び方向Zの全域)から温風が得られるので、並び方向Zにおける温度バラツキを小さくできる。また冷風に対し、温風合流方向Yの前後で温風によって囲う形態になり、混合性が向上するとともに、前後の温度バラツキを小さくできる。
【0043】
さらに温風拡散通路24を構成する隔壁26の高さなどの形状を選択することによって、温風拡散通路24からデフロスタ開口部31に流入する空気量を調節することができる。このように温風拡散通路24を構成する壁部27および隔壁26の形状を選択することによって、デフロスタ開口部31と他の開口部との温度差を調整することができる。
【0044】
(その他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0045】
前述の第1実施形態では、吹出開口部31〜33として、前席用開口部としてのデフロスタ開口部31、フェイス開口部32およびフット開口部33を例として説明したが、後席用のフェイス開口部、フット開口部を備える車両用空調装置10であってもよい。たとえば、前席用開口部と後席用開口部の全ての吹出開口部から同時に空調風を吹き出す場合においても、本発明を適用することで、全ての吹出開口部における吹出空気温度のコントロール特性を同程度に近づけることができる。
【0046】
前述の第1実施形態では、温風合流通路21を流下した温風が温風トンネル通路23に流入する構成であるがこのような構成に限るものではなく、温風合流通路21と温風トンネル通路23とを並列に設けてもよい。換言すると、ヒータコア14を通過した温風が温風合流通路21と温風トンネル通路23とに分岐するように構成してもよい。
【0047】
前述の第1実施形態では、1つのエアミックスチャンバ18と1つのエアミックスドア17とを備え、1つのエアミックスチャンバ18から運転席側と助手席側の各吹出開口部に空調風が導かれる構成であったが、運転席側用のエアミックスチャンバおよびエアミックスドアと、助手席側用のエアミックスチャンバおよびエアミックスドアとを備える構成においても本発明を適用できる。この場合、エアミックスチャンバ毎に、温風グリッド20を設置する。
【0048】
前述の第1実施形態では、エアミックス手段としてエアミックスドア17が用いられているが、エアミックスドア17に限るものではなく、流路を変更して分配比率を変更する構成であってもよい。またエアミックスドア17として、回転ドアを採用していたが、スライドドア、ロータリドアおよびフィルムドアなどの他の種類のドアを採用しても良い。
【0049】
前述の第1実施形態では、ヒータコア14はエンジン冷却水を熱源とする構成であるが、このような構成に限るものではなく、他の熱源として、たとえばPTCヒータなどの発熱体を用いてもよい。
【符号の説明】
【0050】
10…車両用空調装置
11…空調本体ユニット
12…空調ケース
13…蒸発器(冷却用熱交換器)
14…ヒータコア(加熱用熱交換器)
15…空気通路
16…冷風通路
17…エアミックスドア(エアミックス手段)
18…エアミックスチャンバ(混合室)
18a…合流部分
20…温風グリッド
21…温風合流通路
23…温風トンネル通路
24…温風拡散通路
25…案内板
26…隔壁(第1の壁部)
27…壁部(第2の壁部)
28…底部
31…デフロスタ開口部(吹出開口部)
32…フェイス開口部(吹出開口部)
33…フット開口部(吹出開口部)
X…流れ方向
Y…温風合流方向(温風の合流方向)
Z…並び方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空気通路(15)を形成する空調ケース(12)と、
前記空調ケース内に空気を送風する送風機と、
前記空調ケース内に設けられ、前記送風機によって送風される空気を冷却する冷却用熱交換器(13)と、
前記空調ケース内に設けられ、前記冷却用熱交換器を通過した空気を加熱する加熱用熱交換器(14)と、
前記空調ケース内に形成され、前記加熱用熱交換器を通過せずに前記冷却用熱交換器を通過した冷風が流れる冷風通路(16)と、
前記空調ケース内に形成され、前記加熱用熱交換器を通過した後の温風が流れる温風通路(21,23,24)と、
前記空調ケース内に設けられ、前記加熱用熱交換器を通過する空気量と前記冷風通路を流れる空気量とを調整するエアミックス手段(17)と、
前記空調ケース内に設けられ、前記温風通路からの温風と前記冷風通路からの冷風とが混合される混合室(18)と、
前記空調ケース内に設けられ、前記混合室にて混合された空調風を車室内の複数箇所に向けて吹き出す複数の吹出開口部(31〜33)と、を含み、
温風と冷風とは、前記混合室内の上流側に位置する合流部分(18a)で合流し、
前記冷風通路は、前記合流部分において前記冷風を前記温風に対して交差するように導き、
前記温風通路は、
前記合流部分に前記温風を導く温風合流通路(21)と、
前記合流部分を横断するように配置され前記温風の合流方向に延びる筒状体の内側に形成される通路であって、前記筒状体内を流れる温風を前記合流部分に対して前記温風の合流方向下流側へ導く温風トンネル通路(23)と、
前記混合室および前記温風トンネル通路と連通する通路であって、前記温風トンネル通路を流れてきた温風が流入し、前記合流部分と前記筒状体とが並ぶ方向であって、前記冷風の流れ方向に交差する並び方向に延びる温風拡散通路(24)と、を有し、
前記温風拡散通路は、
前記並び方向および前記冷風の流れ方向に延び、前記合流部分と前記温風拡散通路とを仕切る第1の壁部(26)と、
前記並び方向および前記冷風の流れ方向に延び、前記第1の壁部の前記温風の合流方向下流側に間隔をあけて位置する第2の壁部(27)と、
前記並び方向および前記温風の合流方向に延び、前記第1の壁部と前記第2の壁部との前記冷風の流れ方向上流側に位置する端部を連結する底部(28)と、で囲まれており、
前記温風拡散通路は、前記温風トンネル通路から流れてきた温風を前記第1の壁部および前記第2の壁部に沿う方向へ導いて、前記混合室に導くことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記筒状体は、前記並び方向に間隔をあけて複数設けられることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−240495(P2012−240495A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110617(P2011−110617)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】