説明

車両用空調装置

【課題】空気流路内に導入して空調した空気を車室内に吹き出す車室内吹出温度について、車室内の吹出位置による温度偏差の抑制または解消を可能にした車両用空調装置を提供する。
【解決手段】ケーシング内の空気流路に配置されたエバポレータ及びヒータコアを備え、空気流路内に導入した空気を空調した車室内吹出温度が、エバポレータを通過して冷却される冷風とヒータコアを通過して加熱される温風との混合割合を合流部に設けたエアミックスダンパ8の開度に応じて調整される車両用空調装置であって、エアミックスダンパ8の冷風側先端に、暖房運転時に冷風を中央寄りに転向させて増速する空気流集束部20を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に適用される車両用空調装置に係り、特に、エバポレータ及びヒータコアにより空気調和を行う車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷却用熱交換器であるエバポレータと、加熱用熱交換器であるヒータコアとを一体化した構成の車両用空調装置(HVAC:Heating, Ventilation, and Air-Conditioning)が広く普及している。(たとえば、特許文献1を参照)
【0003】
このような車両用空調装置においては、エバポレータを通過した冷風とヒータコアを通過した温風との混合割合を適宜調整して、車室内に吹き出す空調空気の温度調節を行っている。なお、空調空気の温度調節は、一般的にエアミックスダンパと呼ばれるダンパの角度(開度)調節機構を動作させて行われる。
【0004】
エアミックスダンパの動作は、角度調節機構により板状のダンパが回転軸を中心に回動するものである。このようなエアミックスダンパの回動動作により、エバポレータを通過した冷風が流れる冷風流路及びヒータコアを通過した温風が流れる温風流路は、有効な流路断面積(開度)が相対的に変化(増減)する。なお、エアミックスダンパは、冷房運転時(吹出空気低温時)に冷風風量割合が多くなるように動作し、暖房運転時(吹出空気高温時)に温風風量割合が多くなるように動作する。
また、上述したエアミックスダンパと一体に動作する再熱防止ダンパを設けることにより、冷房運転時にヒータコアを通過した温風が冷風に流入することを防止または抑制することも行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−7840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来の車両用空調装置は、車両の居住スペースを優先して確保することが一般的であるため、許容される設置スペースには制限を受けることが多い。このため、車両用空調装置は極力小型化することが求められ、従って、冷風と温風とを混合して温度調節を行うために十分な混合距離を確保することは困難になっている。この結果、車室内の各吹出口へ供給される空調空気は、その吹出空気温度に偏差を生じるという問題が指摘されている。
この偏差は車室内の吹出位置に応じて生じ、特に、車室内の車幅方向においては、運転席及び助手席間の中央側と左右両側面側との偏差として現れることが多く、また、冷房時と暖房時とで温度差が逆転する傾向も見られる。
【0007】
温度偏差が生じる場合には、冷房運転時の車室中央側で冷たくなり、暖房運転時の車室中央側で暖かくなることが多い。これは、車両用空調装置内で衝突/混合する冷風や温風は、アスペクト比の大きな矩形断面噴流であることが多く、風量の多い流れ(動圧の大きい流れ)の方が中央側に流れる傾向にあるためと考えられる。すなわち、冷房運転時は冷風割合が多いため、風量の多い冷風が車室中央側に集まり、反対に、暖房運転時は冷風割合が少なく温風割合が多くなっているため、風量の多い温風が車室中央側に集まるものと推測される。
【0008】
上述した特許文献1においては、エアミックスダンパに軸方向を複数に分割するリブが立設されており、このリブが冷風及び温風の合流部を複数の領域に分割することで混合状態を改善している。
しかし、特許文献1に開示されたリブのように、単なる流れのガイド部材を設置した構成では、冷房運転時(もしくは暖房運転時)の温度差を解消できたとしても、暖房運転時(もしくは冷房運転時)の温度差まで解消することは困難である。
【0009】
このような背景から、風量の多い冷風や温風が車室内の中央側に流れて吹出空気温度に偏差が生じるという従来装置の問題を解決し、快適な車室内環境の提供が可能となる車両用空調装置が望まれる。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、空気流路内に導入して空調した空気を車室内に吹き出す車室内吹出温度について、車室内の吹出位置による温度偏差の抑制または解消を可能にした車両用空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するため、下記の手段を採用した。
本発明に係る車両用空調装置は、ケーシング内の空気流路に配置されたエバポレータ及びヒータコアを備え、前記空気流路内に導入した空気を空調した車室内吹出温度が、前記エバポレータを通過して冷却される冷風と前記ヒータコアを通過して加熱される温風との混合割合を合流部に設けたエアミックスダンパの開度に応じて調整される車両用空調装置であって、前記エアミックスダンパの冷風側先端に、暖房運転時に冷風を中央寄りに転向させて増速する空気流集束部を設けたことを特徴とするものである。
【0011】
このような本発明の車両用空調装置によれば、エアミックスダンパの冷風側先端に、暖房運転時に冷風を中央寄りに転向させて増速する空気流集束部を設けたので、風量の少ない冷風の流れを中央寄りに転向させ、かつ、流速を増加させることができる。この結果、暖房運転時においては、側面側に比べて温風風量の多い車室中央に流れる冷風割合を増して混合させるとともに、側面側に比べて温風風量の少ない車室中央に流れる冷風割合を低減して混合させることが可能になる。
【0012】
本発明に係る車両用空調装置は、ケーシング内の空気流路に配置されたエバポレータ及びヒータコアを備え、前記空気流路内に導入した空気を空調した車室内吹出温度が、前記エバポレータを通過して冷却される冷風と前記ヒータコアを通過して加熱される温風との混合割合を合流部に設けたエアミックスダンパの開度に応じて調整される車両用空調装置であって、前記エアミックスダンパが一体に動作する再熱防止ダンパを備え、該再熱防止ダンパの温風側先端に、冷房運転時に温風を中央寄りに転向させて増速する空気流集束部を設けたことを特徴とするものである。
【0013】
このような本発明の車両用空調装置によれば、エアミックスダンパが一体に動作する再熱防止ダンパを備え、該再熱防止ダンパの温風側先端に、冷房運転時に温風を中央寄りに転向させて増速する空気流集束部を設けたので、風量の少ない温風の流れを中央寄りに転向させ、かつ、流速を増加させることができる。この結果、冷房運転時においては、側面側に比べて冷風風量の多い車室中央に流れる温風割合を増して混合させるとともに、側面側に比べて冷風風量の少ない車室中央に流れる温風割合を低減して混合させることが可能になる。
【0014】
上記の車両用空調装置において、前記空気流集束部は、前記エアミックスダンパの冷風側先端及び/または前記再熱防止ダンパの温風側先端に立設したリブの軸方向中央部に形成された貫通流路が好ましい。このような空気流収束部は、エアミックスダンパが再熱防止ダンパを備えている場合、エアミックスダンパの冷風側先端及び再熱防止ダンパの温風側先端のいずれか一方のみでもよいし、あるいは、両方に設けてもよい。
なお、この場合のリブは、エアミックスダンパの回転軸と平行に設けられてもよいし、あるいは、流れを軸方向中央部に導くようなハの字状に設けられてもよい。
【0015】
本発明における好適な貫通流路としては、前記リブに形成した1または複数段の段差を備えた凹部や、前記リブに形成した1または複数のスリットがあり、これらを適宜組み合わせた構成としてもよい。
また、他の好適な貫通流路は、前記リブを軸方向に分割した複数枚を、軸方向において中央部を除く領域で一部が重なるよう空気流流れ方向にずらした配置により形成されたものでもよい。この場合のリブも、エアミックスダンパの回転軸と平行に設けられてもよいし、あるいは、流れを軸方向中央部に導くようなハの字状に設けられてもよい。
なお、本発明の貫通流路には、三角形、半円及び半楕円等の形状を有する凹部は勿論のこと、軸方向にスライドして流路幅の調整が可能となる可動扉としてもよい。
【0016】
上記の車両用空調装置において、前記貫通流路は、空気流の軸方向分散を抑制するガイドリブを備えていることが好ましく、これにより、冷風及び温風の混合時に車室内幅方向の温度分布が生じることをより一層抑制できるようになり、冷風及び温風の混合促進に有効である。
【0017】
また、本発明における好適な空気流集束部は、前記エアミックスダンパの冷風側先端部中央及び/または前記再熱防止ダンパの温風側先端部中央にダンパ部材を貫通または除去して形成されたバイパス風路としてもよい。このようなバイパス風路としても、風量の少ない冷風の流れを中央寄りに転向させ、かつ、流速を増加させることができる。
【発明の効果】
【0018】
上述した本発明によれば、風量の多い冷風や温風が車室内の中央側に流れて吹出空気温度に偏差が生じることを抑制または解消し、車室内に略均一な温度の空調空気を吹き出して快適な車室内環境の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る車両用空調装置の一実施形態(第1の実施形態)を示す図であり、(a)は1段の凹部を設けたエアミックスダンパの概要を示す斜視図、(b)は2段の凹部を設けたエアミックスダンパの正面図である。
【図2】図1(a)に示したエアミックスダンパについて、第1変形例を示す斜視図である。
【図3】図1(a)に示したエアミックスダンパについて、第2変形例を示す斜視図である。
【図4】図1(a)に示したエアミックスダンパについて、第3変形例を示す斜視図である。
【図5】本発明に係る車両用空調装置の一実施形態(第2の実施形態)を示す図であり、エアミックスダンパの再熱防止ダンパに適用した構成例を示す斜視図である。
【図6】図1(a)に示したエアミックスダンパにガイドリブを追加して設けた変形例であり、(a)は貫通流路となる中央側端部にのみガイドリブを追設した第5変形例を示す斜視図、(b)はエアミックスダンパに立設したリブの全域にわたって複数のガイドリブを追設した第6変形例を示す平面図、(c)は(b)の冷風側先端から見た正面図である。
【図7】図5に示した再熱防止ダンパにガイドリブを追加して設けた変形例を示す斜視図である。
【図8】本発明に係る車両用空調装置の概略構成例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る車両用空調装置の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図8は、本実施形態に係る車両用空調装置の一例を模式的に示す概略構成例の縦断面図であり、車両の左側面から見た図である。なお、図中の矢印は、主な空気(空調前の空気、冷風、温風及び空調後の空気等)の流れ方向を示している。
【0021】
図8に示すように、本実施形態の車両用空調装置1は、ケーシング2を有し、このケーシング2内に、車両の前方から取り込んだ空気を空調装置1の内部に導入する空気導入部3と、この導入された空気を冷却するエバポレータ4と、このエバポレータ4の後方下半部に配置されてエバポレータ4からの冷却された空気を加熱するヒータコア5とを備えている。エバポレータ4は、導入した気相の冷媒が空気から吸熱して冷却する熱交換器であり、ヒータコア5は、導入した熱源(たとえば高温のエンジン冷却水)から空気が吸熱して加熱される熱交換器である。
なお、車両の前方から取り込む空気は、車室外から取り込む外気と、車室内から取り込む内気との選択切換が可能となっている。
【0022】
また、ケーシング2内に設置されたヒータコア5の後方には仕切板6が配置され、この仕切板6により、ヒータコア5との間で温風風路aを形成している。この通風風路aにより、ヒータコア5で加熱された空気は、エバポレータ4からその直後の冷風風路bを経てきた冷却空気と混合させるため、合流部であるエアミックス領域7に導かれるようになっている。
エアミックス領域7には、ヒータコア5をバイパスする空気量及びヒータコア5に流入する空気量を調整するためのエアミックスダンパ8が設けられ、エバポレータ4で冷却された冷却空気量(冷風量)と、ヒータコア5で加熱された加熱空気量(温風量)との混合割合を調整できるようになっている。なお、図示のエアミックスダンパ8は、車両の車幅方向に配置されている。
【0023】
また、仕切板6とケーシング2の後部2aとの間には、乗員の足元に空調空気を導くフット風路9が形成されている。このフット風路9に導かれた空気は、フット吹出口16を経てケーシング2下部に設けられた浅い箱状のフットケース(不図示)に流入した後、空調された空気がフロントフット及びリヤフットに供給されるようになっている。なお、フット風路9の入口には、フットダンパ15が設けられている。
一方、ケーシング2の上部において、エアミックス領域7の上方近傍の部分には、フェイス吹出口11が設けられており、さらに、このフェイス吹出口11より前方には、デフロスト吹出口12が設けられている。また、フェイス吹出口11にはフェイスダンパ13が設けられており、デフロスト吹出口12にはデフロストダンパ14が設けられている。
【0024】
このような車両用空調装置1においては、4つのダンパ8,13,14,15を図中に二点鎖線及び細線で示す扇形状の範囲で、それぞれ支軸8a,13a,14a,15aを中心として回動させて開閉操作することにより、風量の調整をしつつ種々の吹出モードで、所望の温度に調整された空調空気をフェイス吹出口11やデフロスト吹出口12、さらにはフット吹出口16から吹き出すようにしている。なお、前記種々のモードには、たとえばフェイスモード,バイレベルモード,フットモード,フットデフモード,デフロストモード等がある。
【0025】
フェイスモードは、空気をフェイス吹出口11のみより吹き出すモードである。バイレベルモードは、フェイス吹出口11より冷風を、またフット吹出口16より温風を、それぞれ吹き出すモードである。フットモードは、空気の大部分をフット吹出口16より吹き出し、残りをデフロスト吹出口12より吹き出すモードである。フットデフモードは、空気をデフロスト吹出口12及びフット吹出口16の双方より吹き出すモードである。そして、デフロストモードは、空気をデフロスト吹出口12のみより吹き出すモードである。
【0026】
このような車両用空調装置1においては、エバポレータ4により冷却された空気(冷風)と、ヒータコア5により加熱された空気(温風)とを混合することで、空調した空気温度を所望の値に制御している。空気温度を設定するためには、エアミックスダンパ8の開閉角度を変更し、ヒータコア5を通過させて加熱する空気量を調整している。
また、図示のエアミックスダンパ8は、支軸8aを中心として一体に回動する再熱防止ダンパ17を備えている。この再熱防止ダンパ17は、混合割合を冷風100%にして冷房能力を最大にする冷房運転時において、温風風路aからエアミックス領域7に温風が流入しないよう全閉とするダンパである。
【0027】
<第1の実施形態>
上述したように、本実施形態に係る車両用空調装置1は、ケーシング2内の空気流路に配置されたエバポレータ4及びヒータコア5を備えており、空気流路内に導入した空気を空調した車室内吹出温度が、エバポレータ4を通過して冷却される冷風とヒータコア5を通過して加熱される温風との混合割合を合流部に設けたエアミックスダンパ8の開度に応じて調整するようになっている。
そして、本実施形態においては、たとえば図1(a)に示すように、エアミックスダンパ8の冷風側先端に、暖房運転時に冷風を中央寄りに転向させて増速する空気流集束部20が設けられている。
【0028】
図1(a)の空気流集束部20は、たとえば略矩形板状としたエアミックスダンパ8の冷風側先端にリブ21を立設し、このリブ21の軸方向中央部に形成された凹部22のような貫通流路である。この場合、凹部22は1段の矩形とされるが、たとえば図1(b)に示す空気流集束部20Aのように、リブ21Aの中央部に2段の凹部22Aを形成した凹部22Aや、複数段(2段以上)の段差を有する矩形形状の貫通流路としてもよい。
このような凹部22,22Aは、略矩形板状としたリブ21,21Aの一部を矩形状に除去した部分であり、冷風風路bの開度が略全閉または小さくなる暖房運転時において、エアミックスダンパ8の軸方向中央部に、すなわち、車両の車幅方向中央部に冷風の流れを集めてエアミックス領域7に導く冷風流路となる。
【0029】
そして、このような空気流収束部20を備えた車両用空調装置1によれば、暖房運転時に風量の少ない冷風の流れを中央寄りに転向させて集め、かつ、中央寄りに集められた冷風は、狭い領域を流れることで流速が増加する。従って、暖房運転時のエアミックス領域7においては、風量が多く動圧の大きな温風の流れに対して、風量の少ない冷風の流れを中央部に集めて比較的速い流速で流入させることが可能になるので、温風及び冷風を略均一に混合させることができる。
【0030】
この結果、暖房運転時においては、車室内の側面側に比べて温風風量が多くなっていた車室中央に流れる冷風割合を増して混合させるとともに、側面側に比べて温風風量が少なくなっていた車室中央に流れる冷風割合を低減して混合させることが可能になるので、車室内に吹き出す空調空気は、車幅方向に生じていた温度偏差を抑制または解消することができる。従って、車室内に略均一な温度の空調空気を吹き出すことで、車室内の乗員に快適な車室内環境と提供することができる。
【0031】
また、上述した実施形態のリブ21は、エアミックスダンパ8の冷風側先端と平行に、すなわち、支軸8aを中心にて回動するエアミックスダンパ8の外周端側と平行に立設されているが、これに限定されることはなく、たとえば中央部を支軸8a側へ近づけたハの字状としてもよい。このようなハの字状にすれば、リブ21の傾斜面が冷風の流れを空気集束部20へスムーズに導いて増速できる。
【0032】
ところで、空気流集束部20となる貫通流路については、図1(a),(b)に示した
凹部22に限定されることはなく、たとえば下記に例示する変形例が可能である。
図2に示す第1変形例では、空気流集束部20Bとなる貫通流路として、1または複数のスリット23を設けてもよい。図2に示す構成例の空気流収束部20Bは、図1(a)に示した凹部22の両側にそれぞれ3本のスリット23を設けているが、1または複数のスリット23のみを設けてもよい。スリット23のみで貫通流路を形成する場合には、中央部程スリット幅やスリット数を増すようにして、暖房運転時の冷風を中央部に収束させればよい。
【0033】
図3に示す第2変形例では、空気流収束部20Cとなる貫通流路として、軸方向を複数(図示の例では6枚)に分割したリブ21Cが立設されている。この場合、軸方向において貫通流路となる中央部を除いた領域にリブ21Cが立設され、各リブ21Cは、その一部が軸方向で重なるとともに、図中に白抜矢印で示す冷風(空気流)の流れ方向にずらして間隔を設けた配置となっている。すなわち、エアミックスダンパ8の冷風側先端(冷風の流れ方向上流)側から見ると、中央部に空気流収束部20Cとなる貫通流路が形成されており、その両側は複数(図示の例では3枚)のリブ21Cが重なることで連続したリブと略同様に機能し、この結果、図1(a)に示したものと略同様になる。
なお、複数のリブ21Cは、エアミックスダンパ8の支軸と平行に配置されているが、たとえば中央部を支軸8a側へ近づけたハの字状としてもよい。
【0034】
図4に示す第3変形例では、空気流収束部20Dとなる貫通流路として、エアミックスダンパ8の冷風側先端部中央にダンパ部材を貫通または除去して形成されたバイパス風路24が設けられている。このバイパス風路24は、その形状や数が特に限定されることはなく、矩形や円形など適宜選択して設ければよい。
このようなバイパス風路24を形成する貫通流路の空気流集束部20Dとすれば、リブが不要になるとともに、風量の少ない冷風の流れを中央寄りに転向させ、かつ、流速を増加させることができる。
【0035】
このように、空気流集束部20となる貫通流路については種々の変形例が可能であり、それぞれの変形例を単独で採用してもよいし、あるいは、適宜組み合わせて採用してもよい。また、本実施形態の貫通流路としては、たとえば三角形、半円及び半楕円等の形状を有する凹部は勿論のこと、軸方向にスライドして流路幅の調整が可能となる可動扉を採用してもよい。
【0036】
<第2の実施形態>
続いて、本発明に係る第2の実施形態を図5に基づいて説明する。この実施形態は、エアミックスダンパ8と一体に回動する再熱防止ダンパ17に適用したもので、上述した実施形態と同様の部分には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
本実施形態においては、たとえば図5に示すように、再熱防止ダンパ17の温風側先端に、冷房運転時に温風を中央寄りに転向させて増速する空気流集束部30が設けられている。
【0037】
図示の空気流集束部30は、たとえば略矩形板状とした再熱防止ダンパ17の温風側先端にリブ31を立設し、このリブ31の軸方向中央部に形成された凹部32のような貫通流路である。
このような凹部32は、略矩形板状としたリブ31の一部を矩形状に除去した部分であり、温風風路aの開度が略全閉または小さくなる冷房運転時において、再熱防止ダンパ17の軸方向中央部に、すなわち、車両の車幅方向中央部に温風の流れを集めてエアミックス領域7に導く温風流路となる。
【0038】
また、上述した凹部32は1段の矩形としてもよいし、あるいは、中央部に2段以上の凹部を形成したものでもよい。そして、この場合の貫通流路やリブについても、たとえばスリットを貫通流路とすることやリブをハの字状に配置することなど、上述した実施形態及び各変形例の等構成を同様に採用することが可能である。
【0039】
そして、このような空気流収束部30を備えた車両用空調装置1によれば、冷房運転時に風量の少ない温風の流れを中央寄りに転向させて集め、かつ、中央寄りに集められた温風は、狭い領域を流れることで流速が増加する。従って、冷房運転時のエアミックス領域7においては、風量が多く動圧の大きな冷風の流れに対して、風量の少ない温風の流れを中央部に集めて比較的速い流速で流入させることが可能になり、温風及び冷風は略均一に混合されるようになる。
【0040】
この結果、冷房運転時においては、車室内の側面側に比べて冷風風量が多くなっていた車室中央に流れる温風割合を増して混合させ、さらに、側面側に比べて冷風風量が少なくなっていた車室中央に流れる温風割合を低減して混合させることができるので、車室内に吹き出す空調空気は、車幅方向に生じていた温度偏差が抑制または解消される。従って、車室内に略均一な温度の空調空気を吹き出すことで、車室内の乗員に快適な車室内環境と提供することができる。
【0041】
さて、上述した第1及び第2の実施形態で説明した空気流収束部20,30は、エアミックスダンパ8が再熱防止ダンパ17を備えている場合、エアミックスダンパ8の冷風側先端及び再熱防止ダンパ17の温風側先端のいずれか一方のみに設けてもよいし、あるいは、両方に設けてもよい。
【0042】
また、上述した車両用空調装置1において、各実施形態及び各変形例で説明した貫通流路は、たとえば図6や図7に示すように、冷風または温風の空気流が軸方向に分散することを抑制するガイドリブ40を備えていることが望ましい。
図6(a)に示す実施例では、図1(a)に示した凹部22の両端から支軸8a方向に一対のガイドリブ40が対向して設けられている。このガイドリブ40は、エアミックスダンパ8に立設された板状のガイド部材を支軸8aと直交する方向に設けてあるが、ハの字状に対向させて支軸8a側の面間距離を狭めてもよい。
【0043】
このようなガイドリブ40を設置することにより、空気流集束部20により中央部に転向して増速した冷風は、ガイドリブ40の対向面間に形成された流路を通ってエアミックス領域7に導かれる。このため、冷風の流れが幅方向に広がることを防止または抑制できるようになり、この結果、冷風及び温風の混合はより一層促進されるようになる。
従って、車室内に吹き出す空調空気は、吹出温度の分布が車幅方向において略均一化される。
【0044】
また、このようなガイドリブ40は、たとえば図6(b),(c)に示すように、エアミックスダンパ8に軸方向を複数に分割するように複数も埋めてもよい。このような分割リブ40は、冷風の合流部を複数の領域に分割することになるので、冷風/温風で混合状態を改善して幅方向に温度分布が生じることを抑制または防止でき、車幅方向における吹出温度の均一化はより一層確実になる。
同様に、再熱防止ダンパ17側においても、たとえば図7に示すように、凹部32の両端から支軸8a方向に一対のガイドリブ40を対向して設けることで、温風の流れが幅方向に広がることを防止でき、車幅方向における空調空気の吹出温度を均一化できる。
【0045】
また、上述したリブ21は、エアミックスダンパ8の先端に設置されているため、開度の大きい冷房運転時はほとんど流路抵抗とならず、冷風の風量低下を防止できる。
同様に、上述したリブ31は、再熱防止ダンパ17の先端に設置されているため、開度の大きい暖房運転時はほとんど流路抵抗とならず、温風の風量低下を抑制できる。
なお、上述した各実施形態は、それぞれ単独での適用が可能なだけでなく、適宜組み合わせた構成、たとえば、空気流収束部20を備えたエアミックスダンパ8及び空気流収束部30を備えた再熱防止ダンパ17を併用した構成が可能なことは言うまでもない。
【0046】
このように、上述した各実施形態及びその変形例によれば、車幅方向における吹出温度の均一化が可能になるので、風量の多い冷風や温風が車室内の中央側に流れて吹出空気温度に偏差が生じることを抑制または解消できるようになり、この結果、車室内に略均一な温度の空調空気を吹き出して快適な車室内環境を提供できる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 車両用空調装置
2 ケーシング
3 空気導入部
4 エバポレータ
5 ヒータコア
6 仕切板
7 エアミックス領域
8 エアミックスダンパ
13 フェイスダンパ
14 デフロストダンパ
15 フットダンパ
17 再熱防止ダンパ
20,20A〜20D,30 空気流集束部
21,21A,31 リブ
22,22A,32 凹部
23 スリット
24 バイパス風路
40 ガイドリブ
a 温風風路
b 冷風風路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング内の空気流路に配置されたエバポレータ及びヒータコアを備え、前記空気流路内に導入した空気を空調した車室内吹出温度が、前記エバポレータを通過して冷却される冷風と前記ヒータコアを通過して加熱される温風との混合割合を合流部に設けたエアミックスダンパの開度に応じて調整される車両用空調装置であって、
前記エアミックスダンパの冷風側先端に、暖房運転時に冷風を中央寄りに転向させて増速する空気流集束部を設けたことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
ケーシング内の空気流路に配置されたエバポレータ及びヒータコアを備え、前記空気流路内に導入した空気を空調した車室内吹出温度が、前記エバポレータを通過して冷却される冷風と前記ヒータコアを通過して加熱される温風との混合割合を合流部に設けたエアミックスダンパの開度に応じて調整される車両用空調装置であって、
前記エアミックスダンパが一体に動作する再熱防止ダンパを備え、該再熱防止ダンパの温風側先端に、冷房運転時に温風を中央寄りに転向させて増速する空気流集束部を設けたことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項3】
前記空気流集束部は、前記エアミックスダンパの冷風側先端及び/または前記再熱防止ダンパの温風側先端に立設したリブの軸方向中央部に形成された貫通流路であることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記貫通流路は、前記リブに形成した1または複数段の段差を備えた凹部であることを特徴とする請求項3に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記貫通流路は、前記リブに形成した1または複数のスリットであることを特徴とする請求項3に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記貫通流路は、前記リブを軸方向に分割した複数枚を、軸方向において中央部を除く領域で一部が重なるよう空気流流れ方向にずらした配置により形成されていることを特徴とする請求項3に記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記貫通流路は、空気流の軸方向分散を抑制するガイドリブを備えていることを特徴とする請求項3から6のいずれか1項に記載の車両用空調装置。
【請求項8】
前記空気流集束部は、前記エアミックスダンパの冷風側先端部中央及び/または前記再熱防止ダンパの温風側先端部中央にダンパ部材を貫通または除去して形成されたバイパス風路であることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−67333(P2013−67333A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208818(P2011−208818)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】