説明

車両用芳香装置

【課題】複数の芳香成分の供給を間欠的に行う車両用芳香装置において、車室内に芳香成分を供給する制御手段を簡易な構造とし、芳香成分ごとに供給できる芳香成分の貯留量を設定することで、それぞれの芳香成分を適切な臭気強度で供給できる装置を提供することを目的とする。
【解決手段】収容空間2、空気流入用開口部3、空気流出用開口部4を備える芳香剤保持容器5及び入口経路開閉ドア8、出口経路開閉ドア9を備える本体部10を有し、車室内に芳香成分を供給可能な車両用芳香装置100において、収容空間2の容積が芳香剤1毎に異なることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香剤保持容器に収容した芳香剤の芳香成分を車両用空調装置の空気流に含有させて車室内に供給することができる車両用芳香装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の芳香剤の芳香成分を用いて室内に快適な香りを漂わせる芳香装置は、芳香成分を室内に自然に供給させた場合、香り濃度は高くても、人間の香り感度は所定時間経過後に低下する傾向がある。そこで、芳香成分の供給時間を間欠的に制御して、快適な香り空間を長時間保持させることのできる芳香装置が提案されている。しかし、上記の芳香装置は、香りの異なる数種の芳香成分を使用する場合でも、芳香成分の特質に応じた制御を行うことはなく、一律に制御するものである。従って、使用目的の異なる芳香成分を用いたときなどには、必ずしも長時間に渡って香り空間を保持することが望ましいとはいえない場合がある。例えば、使用者の選択した芳香成分がリラックス効果を有する芳香成分であれば、リラックス効果のある香り空間が長時間保持されることで集中力の低下を招く。このため、車両運転中にリラックス効果のある香りを供給し続けることは、車両の安全運転を確保する上で適切ではない。
【0003】
そこで、リラックス系芳香剤の供給による覚醒水準の低下を抑えて、集中力の低下を防止するため、意識の覚醒水準を上げるリフレッシュ効果を奏するリフレッシュ系芳香成分及び意識の覚醒水準を下げるリラックス効果を奏するリラックス系芳香成分をそれぞれ供給する供給手段と、使用者がリフレッシュ系芳香成分の供給を選択するリフレッシュ選択スイッチと、使用者がリラックス系芳香剤の供給を選択するリラックス選択スイッチと、リフレッシュ選択スイッチにてリフレッシュ系芳香剤の供給が選択されたときはリフレッシュ系芳香剤を供給し、リラックス選択スイッチにてリラックス系芳香剤の供給が選択されたときはリラックス系芳香剤を所定回数供給した後、リフレッシュ系芳香剤を所定回数供給する供給パターンを繰り返し行うように供給手段を制御する制御手段とを備えた芳香装置が開示されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0004】
また、車室内に芳香成分を供給する装置として、複数の芳香成分を芳香剤保持容器で保持し、芳香剤保持容器内を通過する空気流を、芳香剤保持容器の前後に位置する経路に設けた電磁弁を開閉することで制御する芳香装置が開示されている(例えば、特許文献2を参照。)。この芳香装置は、車室内に供給する芳香成分を制御するため、供給する芳香成分の量を、芳香剤保持容器の開口頻度、開口する度合い、送風機の回転強弱によって調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許3211410号公報
【特許文献2】特開平11−278048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の構成では、芳香剤保持容器の開閉のために、芳香剤保持容器の上、下流それぞれの位置に電磁弁を配置する構成のため、複数の芳香成分を提供する場合には高価な構成となる。また、芳香成分を供給する時間を変化させることによって芳香成分の供給量を調整することはできるが、芳香成分の臭気強度を調整することはできない。特許文献2に記載の構成では、芳香成分の臭気強度を調整することができるが、実現するための構造は複雑なものとなっている。
【0007】
そこで、本発明においては、複数の芳香成分の供給を間欠的に行う車両用芳香装置において、車室内に芳香成分を供給する制御手段を簡易な構造とし、芳香成分ごとに供給できる芳香成分の貯留量を設定することで、それぞれの芳香成分を適切な臭気強度で供給できる装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本願発明に係る車両用芳香装置は、複数の収容空間を有する芳香剤保持容器において、収容空間内に芳香成分を貯留し、間欠的に開放し、また、芳香成分毎に収容空間の容積を異ならせる構成とした。具体的には、本願発明の車両用芳香装置は、芳香剤を収容するための複数の収容空間、並びに、前記収容空間ごとに設けられた空気流入用開口部及び空気流出用開口部を備える芳香剤保持容器と、前記芳香剤保持容器が取り付けられ、前記各空気流入用開口部の開閉を行う入口経路開閉ドア及び前記各空気流出用開口部の開閉を行う出口経路開閉ドアを備える本体部とを有し、前記芳香剤の芳香成分を空気流に含有させて車室内に間欠的に供給可能な車両用芳香装置において、前記収容空間の容積が、前記芳香剤ごとにそれぞれ異なることを特徴とする。
【0009】
本願発明に係る車両用芳香装置では、さらに、前記入口経路開閉ドア及び前記出口経路開閉ドアは、同期して前記空気流入用開口部及び前記空気流出用開口部を開閉し、一方の収容空間に設けられた前記空気流入用開口部及び前記空気流出用開口部を閉としたとき、他方の収容空間に設けられた前記空気流入用開口部及び前記空気流出用開口部を開又は閉とし、前記他方の収容空間に設けられた前記空気流入用開口部及び前記空気流出用開口部を閉としたとき、前記一方の収容空間に設けられた前記空気流入用開口部及び前記空気流出用開口部を開又は閉とすることが好ましい。この構成によれば、収容空間内に芳香成分を貯留することができるため、簡易な制御によって、適切な臭気強度の芳香成分を供給することができる。
【0010】
また、本願発明に係る車両用芳香装置では、前記芳香剤は、固体状又は芳香剤を担持したセラミック体であることが好ましい。この構成によれば、芳香剤保持容器の製造時の漏れ防止対策は不要であり、製造時に容易に取り扱うことができ、かつ、低コストの芳香装置を提供することができる。
【0011】
また、本願発明に係る車両用芳香装置では、前記芳香剤は、寸法が大きく重量が重い芳香剤Aと、芳香剤Aよりも寸法が小さくかつ重量が小さい芳香剤Bであり、芳香剤Aは、容積が小さい収容空間Xに収容できない大きさを有するとともに、容積が大きい収容空間Yに収容できる大きさを有し、かつ、芳香剤Bは、収容空間Xに収容できる大きさを有することが好ましい。この構成によれば、芳香剤Aと芳香剤Bの重量を異ならせることでその種類を容易に見分けることができ、誤って芳香剤Bを収容空間XとYに収容しても重量を計測することで誤収容であることを発見でき、また、寸法を異ならせることで、芳香剤の種類とそれを収容すべき収容空間との組み合わせを容易に見分けることができ、芳香剤Aが容積が小さい収容空間Xに収容できない大きさを有することで、芳香剤Aを収容空間Xに誤収容することを防止できるため、芳香装置の生産時或いは芳香剤の交換時において、生産効率・作業効率を高めることができる。
【0012】
また、本願発明に係る車両用芳香装置では、前記芳香剤は、芳香成分の検知閾値の大きな芳香剤及び該芳香剤よりも検知閾値の小さな芳香剤であり、前記検知閾値の大きな芳香剤は、大きな収容空間に収容され、前記検知閾値の小さな芳香剤は、前記大きな収容空間よりも小さな収容空間に収容されることが好ましい。この構成によれば、検知閾値が小さい芳香剤の芳香成分は相対的に少なく供給でき、検知閾値が大きい芳香剤の芳香成分は相対的に多く供給できるので、芳香成分を、検知閾値に関わらず、一定の臭気強度に調整して供給できる。
【0013】
また、本願発明に係る車両用芳香装置では、前記芳香剤は、芳香成分の蒸発速度が大きい芳香剤及び該芳香剤よりも蒸発速度が小さい芳香剤であり、(I)前記蒸発速度の大きい芳香剤は、小さな収容空間に収容され、前記蒸発速度の小さい芳香剤は、前記小さな収容空間よりも大きな収容空間に収容されるか、或いは(II)前記蒸発速度の大きい芳香剤は、大きな収容空間に収容され、前記蒸発速度の小さい芳香剤は、前記大きな収容空間よりも小さな収容空間に収容されることが好ましい。(I)の構成によれば、蒸発速度が大きい芳香剤の芳香成分は必要以上に揮発してしまうことが防止され、蒸発速度が小さい芳香剤の芳香成分は十分な貯留量を確保できるので、芳香成分を、蒸発速度に関わらず、一定の臭気強度に調整して供給できる。また、(II)の構成によれば、収容容積を異ならしめても芳香成分が収容空間に充満して飽和蒸気圧に達するまでの時間、すなわち貯留完了までの時間について、蒸発速度が小さい芳香剤の芳香成分と蒸発速度が大きい芳香剤の芳香成分との誤差を少なくすることができる。
【0014】
また、本願発明に係る車両用芳香装置では、前記収容空間は、容器内仕切り板による収容空間の仕切り割合によって又は収容空間に収容するダミー部材の体積によって容積を異ならせることが好ましい。前者の構成によれば、簡易かつ安価に複数の収容空間を構成でき、後者の構成によれば、芳香剤の変更において、芳香剤の種類に応じて容易に収容空間の容積を変更できる。
【0015】
また、本願発明に係る車両用芳香装置では、前記芳香剤保持容器は、樹脂で形成され又は樹脂を主体として形成されることが好ましい。この構成によれば、車両用芳香装置を軽量化できる。
【0016】
また、本願発明に係る車両用芳香装置では、前記樹脂はポリプロピレンであり、前記芳香剤保持容器は肉厚が1.8mm以上、3.2mm以下で形成されていることが好ましい。この構成によれば、芳香剤保持容器の材質として、車両用空調装置のケースに広く用いられているポリプロピレンを主体とした樹脂を用いることができるため、材料を調達しやすくなる。また、芳香剤保持容器は、車両用空調装置と同じ材質とすることで、リサイクル時の分別は不要となる。さらに、芳香剤保持容器の肉厚を1.8mm以上とすることで、芳香成分が樹脂へ浸透する速度を遅らせることができるため、芳香装置が耐用年数を経過するまでの期間中、意図しない芳香成分の揮散を防止できる。また、肉厚を3.2mm以下とすることで、樹脂の成形時に発生するひけによる変形を防止できる。
【0017】
なお、上記構成は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、複数の芳香成分の供給を間欠的に行う車両用芳香装置において、車室内に芳香成分を供給する制御手段を簡易な構造とし、芳香成分ごとに供給できる芳香成分の貯留量を設定することで、それぞれの芳香成分を適切な臭気強度で供給できる装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第一実施形態に係る車両用芳香装置100の斜視透視図である。
【図2】車両用芳香装置100の芳香剤保持容器の概略図である。
【図3】芳香剤保持容器内の複数の異なる容積の収容空間を説明する概略図であり、(a)は容器内仕切り板によって区分けされた形態、(b)は容器内仕切り板によって区分けされた別形態、(c)は収容空間の容積を同一として、一方の収容空間にダミー部材を収容することによって異なる容積とした形態を示している。
【図4】空気流入用開口部及び空気流出用開口部の開閉を行うドアを含む本体部の概略図である。
【図5】図1においてS方向の反対側から見た入口経路開閉ドア及び出口経路開閉ドアの開閉状態とカムの回転状態との関係を説明するための概略図であり、(a)は一方の収容空間が開、他方の収容空間が閉、(b)は全ての収容空間が閉、(c)は一方の収容空間が閉、他方の収容空間が開の状態である。
【図6】車両用芳香装置100の配置を説明するための、車両用空調装置との接続関係についての概略断面図である。
【図7】車両用芳香装置100の動作について説明する。図7は、本発明に係る車両用芳香装置100の動作と空気流の流れを説明するための概略図であり、その正面図は、図1をS方向から見た透視図である。(a)は収容空間2aが開、収容空間2bが閉で、芳香剤1aの芳香成分が供給されている状態、(b)は全ての収容空間2が閉で、芳香成分が供給されていない状態、(c)は収容空間2aが閉で、収容空間2bが開で、芳香剤1bの芳香成分が供給されている状態である。
【図8】本発明に係る車両用芳香装置100の貯留と供給の動作を説明するための概略断面図であり、(a)は収容空間の2aが開、2bが閉、(b)は収容空間の2aが閉、2bが閉、(c)は収容空間の2aが閉、2bが開、(d)は収容空間の2aが閉、2bが閉となっている。なお、網掛け部分が濃くなるに従い、芳香成分の濃度が高いことを示している。
【図9】第二実施形態に係る車両用芳香装置101の概略断面図であり、(a)は平面図、(b)はS1方向から見た(a)のA−A断面図、(c)はS2方向から見た(b)のC−C断面図、(d)は(b)のB−B断面図である。
【図10】第二実施形態に係る車両用芳香装置101の動作説明図であり、(a)は収容空間2aが開、収容空間2bが閉で、芳香剤1aの芳香成分が供給されている状態、(b)は全ての収容空間2が閉で、芳香成分が供給されていない状態、(c)は収容空間2aが閉、収容空間2bが開で、芳香剤1bの芳香成分が供給されている状態である。
【図11】第二実施形態に係る車両用芳香装置101の貯留と供給の動作を説明するための概略断面図であり、(a)は収容空間の2aが開、2bが閉、(b)は収容空間の2aが閉、2bが閉、(c)は収容空間の2aが閉、2bが開、(d)は収容空間の2aが閉、2bが閉となっている。なお、網掛け部分が濃くなるに従い、芳香成分の濃度が高いことを示している。
【図12】第三実施形態に係る車両用芳香装置102の概略断面図であり、(a)は平面図、(b)はS1方向から見た(a)のA−A断面図、(c)はS2方向から見た(b)のC−C断面図、(d)は(b)のB−B断面図である。
【図13】第三実施形態に係る車両用芳香装置102の動作説明図であり、(a)は収容空間2aが開、収容空間2bが閉で、芳香剤1aの芳香成分が供給されている状態、(b)は全ての収容空間2が閉で、芳香成分が供給されていない状態、(c)は収容空間2aが閉、収容空間2bが開、芳香剤1bの芳香成分が供給されている状態である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付の図面を参照して本発明の一態様を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。本発明の効果を奏する限り、種々の形態変更をしてもよい。
【0021】
図1〜図6を参照して、第一実施形態に係る車両用芳香装置100について説明する。図1は、第一実施形態に係る車両用芳香装置100の斜視透視図である。図2は、車両用芳香装置100の芳香剤保持容器の概略図である。図3は、芳香剤保持容器内の複数の異なる容積の収容空間を説明する概略図であり、(a)は容器内仕切り板によって区分けされた形態、(b)は容器内仕切り板によって区分けされた別形態、(c)は収容空間の容積を同一として、一方の収容空間にダミー部材を収容することによって異なる容積とした形態を示している。図4は、空気流入用開口部及び空気流出用開口部の開閉を行うドアを含む本体部の概略図である。図5は、図1においてS方向の反対側から見た入口経路開閉ドア及び出口経路開閉ドアの開閉状態とカムの回転状態との関係を説明するための概略図であり、(a)は一方の収容空間が開、他方の収容空間が閉、(b)は全ての収容空間が閉、(c)は一方の収容空間が閉、他方の収容空間が開の状態である。図6は、車両用芳香装置100の配置を説明するための、車両用空調装置との接続関係についての概略断面図である。
【0022】
図1〜図4に示すように、第一実施形態に係る車両用芳香装置100は、芳香剤1を収容するための複数の収容空間2、並びに、収容空間2ごとに設けられた空気流入用開口部3及び空気流出用開口部4を備える芳香剤保持容器5と、芳香剤保持容器5が取り付けられ、各空気流入用開口部3の開閉を行う入口経路開閉ドア8及び各空気流出用開口部4の開閉を行う出口経路開閉ドア9を備える本体部10とを有し、芳香剤1の芳香成分を空気流に含有させて車室内に間欠的に供給可能な車両用芳香装置100において、収容空間2の容積が、芳香剤1ごとにそれぞれ異なる。
【0023】
芳香剤1は、例えば、ゲラニオール、ネロール、リナロール、ヌートカトン、メントールである。芳香剤1は少なくとも一種を使用するが、二つ以上の種類を用いることもできる。また、二つ以上の種類の芳香剤1を用いる場合は、リラックス系芳香剤と、リフレッシュ系芳香剤とを組み合わせることが好ましい。リラックス系芳香剤は、例えば、フォレスト(Forest)、レモン(Lemon)、ローズ(Rose)、ラベンダー(Lavender)、パイン(Pine)、イランイラン(Ylangylang)である。リフレッシュ系芳香剤は、例えば、ミント(Mint)、フローラル(Floral)、麝香(Musk)、メントール(Menthol)、ハッカオイル(Japanese mint)、ペパーミント(peppermint)、ユーカリ(eucalyptus)である。これらの芳香剤をジプロピレングリコール、メトキシメチルブタノール、流動パラフィンなどの溶媒で希釈して使用することも可能である。
【0024】
芳香剤1は、具体的形態として、固体状又は芳香剤を担持したセラミック体であることが好ましい。例えば、気体状の芳香剤を用いる際には、芳香剤保持容器5の製造時の漏れ防止対策のために取り扱い難く、圧力容器を必要とするため高コストであり、また、車両に搭載した際に危険性がある。また、液体状の芳香剤を用いる際には、芳香剤保持容器5の製造時の漏れ防止対策のために取り扱い難く、水密性保持のため高コストである。しかし、固体状の芳香剤1は、芳香剤保持容器5の製造時の漏れ防止対策は不要であり、製造時に容易に取り扱うことができ、かつ、低コストである。さらに、芳香剤1は、芳香成分を透過させるフィルム、或いはメッシュで作製した袋43に入れて使用することが好ましい。収容空間2内で芳香剤1が振り回されることによって生じる騒音を防止することができる。
【0025】
芳香剤保持容器5は、図1に示すように、車両用芳香装置100に一つ備えられるが、二つ以上備えられてもよい。芳香剤保持容器5は、図2に示すように、内部に収容空間2a、収容空間2bを有する。収容空間2を2つ以上設ける場合は、収容空間2内を容器内仕切り板22で仕切ることによって、収容空間2a、収容空間2bに区分けする。或いは芳香剤保持容器5を複数設けることによって、収容空間2を二つ以上設けてもよい。なお、収容空間2aの幅をt、収容空間2bの幅をtとする。例えばtの長さをtの長さより短くすることで、収容空間2aの容積は、収容空間2bの容積より小さくなる。収容空間2a内には芳香剤1aが収容され、収容空間2b内には芳香剤1aとは異なる芳香剤1bが収容される。図2には、異なる種類の芳香剤を収容した例を示したが、同じ種類の芳香剤でもよい。なお、芳香剤1aはリフレッシュ系芳香剤、芳香剤1bはリラックス系芳香剤とすることが好ましい。或いはその逆の組み合わせとしてもよい。
【0026】
図2に示すように、空気流入用開口部3a及び空気流出用開口部4aは、収容空間2aに通じる。また、空気流入用開口部3b及び空気流出用開口部4bは、収容空間2bに通じる。空気流入用開口部3及び空気流出用開口部4は、芳香剤保持容器5の容器天面23の同一面にあることが望ましく、開閉を行うドアによって密閉できる大きさとする。空気流入用開口部3の形状は、空気流19を滞らせなければ形状は問わない。空気流出用開口部4の形状は、芳香成分を含む空気流20を滞らせなければ形状は問わない。空気流入用開口部3は空気流19を収容空間2内へ流入させ、空気流出用開口部4は芳香成分を含む空気流20を収容空間2内から流出させる。
【0027】
図3に示すように、芳香剤1aを収容する収容空間2a及び芳香剤1bを収容する収容空間2bは、芳香剤毎に収容空間2a及び収容空間2bの容積を異ならせることが好ましい。このように収容空間2を構成することで、収容空間2aに収容される芳香剤1aの芳香成分及び収容空間2bに収容される芳香剤1bの芳香成分は、それぞれ貯留量を異ならせることができ、車両用芳香装置100は車室内に、貯留された芳香成分を、一回あたりの供給量として供給できるので、収容空間2aに収容される芳香剤1aの芳香成分、或いは収容空間2bに収容される芳香剤1bの芳香成分に応じた制御手段は不要となる。
【0028】
具体的には、収容空間2は、容器内仕切り板22による収容空間2の仕切り割合によって容積を異ならせることが好ましい。図3(a)に示すように、収容空間2は、芳香剤保持容器5内に容器内仕切り板22を、t及びtを異なる長さになるように配置し、収容空間2aと収容空間2bとを異なる容積となるように区分けされる。芳香剤1の組み合わせを変更しない場合には、あらかじめ収容空間2a及び収容空間2bの容積を設定して容器内仕切り板22を成形することで、簡易かつ安価に収容空間2a及び収容空間2bを構成できる。また、容器内仕切り板22は、収容空間2a及び収容空間2bに区分けできれば、図3(b)に示すように、芳香剤1の種類に応じて必要な容積を確保するために、屈曲した形状であってもよい。
【0029】
また、別の具体例として、収容空間2は、収容空間に収容するダミー部材44の体積によって容積を異ならせることが好ましい。図3(c)に示すように、収容空間2は、芳香剤保持容器5内に容器内仕切り板22を、t及びtをt=tとなるように配置し、収容空間2aと収容空間2bとを等しい容積となるように区分けされる。そして、容積を縮小したい収容空間2a内にダミー部材44を収容する。ダミー部材44の体積が増加することによって、収容空間2aの容積は減少し、他方の収容空間2bの容積は変化しないため、収容空間2aの容積及び収容空間2bの容積は異なる容積となる。芳香剤1の組み合わせを変更する場合には、収容する芳香剤1の種類に応じて、収容空間2a又は収容空間2bにダミー部材44を適宜選択して収容することで、容易に収容空間2a又は収容空間2bの容積を変更できるため、車両用芳香装置100の出荷時には、同一容積の収容空間2を有する芳香剤保持容器5を複数使用して、それぞれの収容空間2に収容するダミー部材44の体積を異ならせることで、芳香剤1の組み合わせの変更に対応することができる。また、芳香剤1の組み合わせを別の組み合わせに交換する時には、それぞれの収容空間2に収容するダミー部材44の体積を変更することで、芳香剤1の組み合わせの変化に対応することができる。なお、図3(a)、図3(b)、図3(c)に示した収容空間2の区分け手段は、それぞれを組み合わせて使用できる。
【0030】
また、芳香剤保持容器5は、芳香剤1の補充のため脱着可能なカートリッジとなっている。本体部10のケース10aへの取り付け方向について、逆組み付けを防ぐ必要があるため、位置決めピンなどによる逆組み付け防止構造を採用することが好ましい。そして、芳香剤保持容器5は、樹脂で形成され又は樹脂を主体として形成されることが好ましい。ここで、樹脂はポリプロピレンであることが好ましい。ポリプロピレンを主体とする場合は、タルクを含有させることが好ましく、タルクの割合は、例えば10wt%〜30wt%である。車両用空調装置のケースに広く用いられているポリプロピレンを主体とした樹脂を用いることができるため、材料調達が容易であり、車両用空調装置のケースと同様の射出成形によって製造できるため、生産効率を高めることができる。加えて、車両用芳香装置100は車両用空調装置に取り付けられているため、車両用空調装置と同じ材質とすることで、リサイクル時は分別の必要が無い。なお、ポリプロピレン(PP)は、芳香成分の透過性が高く、芳香成分と反応して分解してしまうおそれがあるため、例えば、高結晶PP(HighCrystal PP)、アルミ等の金属を蒸着させたPPを使用してもよい。又は、樹脂として、PPの代わりに、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)を用いてもよい。
【0031】
さらに、芳香剤保持容器5の肉厚は、1.8mm以上、3.2mm以下で形成されていることが好ましい。肉厚を1.8mm以上とすることで、芳香成分の樹脂への浸透による漏れの速度を遅らせることができ、車両用芳香装置100が耐用年数を経過するまでの期間中、意図しない芳香成分の揮散を防止できる。そして、肉厚を3.2mm以下とすることで、樹脂の成形時に発生するひけによる変形を防止できる。
【0032】
また、芳香剤1は、寸法が大きく重量が重い芳香剤1bと、芳香剤1bよりも寸法が小さくかつ重量が小さい芳香剤1aであり、芳香剤1bは、容積が小さい収容空間2aに収容できない大きさを有するとともに、容積が大きい収容空間2bに収容できる大きさを有し、かつ、芳香剤1aは、収容空間2aに収容できる大きさを有することが好ましい。図3に示したように、芳香剤1の大きさ及び重さは、袋43によって調整してもよい。芳香剤1aと芳香剤1bの重量を異ならせることでその種類を容易に見分けることができ、また、寸法を異ならせることで、芳香剤1a、芳香剤1bの種類とそれを収容すべき収容空間2a、収容空間2bとの組み合わせを容易に見分けることができる。芳香剤1a、芳香剤1bの寸法又は重量、或いはそれら両方を異ならせてもよい。さらに、溶媒に芳香成分を溶解させて飽和蒸気圧を変更させてもよい。充満する芳香成分の量を調整することができる。溶媒としては、例えば、ジプロピレングリコール、メトキシメチルブタノール、流動パラフィンである。
【0033】
また、芳香剤1は、芳香成分の検知閾値の大きな芳香剤1b及び芳香剤1bよりも検知閾値の小さな芳香剤1aであり、検知閾値の大きな芳香剤1bは、大きな収容空間2bに収容され、検知閾値の小さな芳香剤1aは、大きな収容空間2bよりも小さな収容空間2aに収容されることが好ましい。閾値とは、人間の感覚器官が香りを感知できる最小限度の刺激量のことである。そして、検知閾値とは、感知することができる芳香成分の濃度を指し、小さい値ほど、少量の芳香成分でも香りを感じることができることを示す。よって、検知閾値が小さい芳香剤1aの芳香成分は、供給量が少量でも車室内における臭気強度を高めるため、小さい収容空間2a内に少量のみ貯留することで、相対的に少なく供給されるので、車室内における臭気強度は必要以上に高まることはない。また、検知閾値が大きい芳香剤1bの芳香成分は、供給量が多量でなければ車室内における臭気強度は高まらないため、大きい収容空間2b内に多量に貯留することで、相対的に多く供給されるので、車室内における臭気強度は十分に高められる。よって、車両用芳香装置100は、芳香成分の検知閾値の大小に関わらず、的確な臭気強度で芳香成分を車室内に供給できる。
【0034】
さらに、芳香剤1は、芳香成分の蒸発速度が大きい芳香剤1b及び芳香剤1bよりも蒸発速度が小さい芳香剤1aであり、(I)蒸発速度の大きい芳香剤1bは、小さな収容空間2bに収容され、蒸発速度の小さい芳香剤1aは、小さな収容空間2bよりも大きな収容空間2aに収容されるか、或いは、(II)蒸発速度の大きい芳香剤1bは、大きな収容空間2bに収容され、蒸発速度の小さい芳香剤1aは、大きな収容空間2bよりも小さな収容空間2aに収容されることが好ましい。(I)のように構成することで、蒸発速度が大きい芳香剤1aは、小さい収容空間2aにおいて揮発し飽和蒸気圧に達したのちは必要以上に芳香成分が揮発して臭気強度が大きくなりすぎることが防止される。一方、蒸発速度が小さい芳香剤1bは、大きい収容空間2bにおいて十分な貯留量を確保できる。よって、蒸発速度が大きい芳香剤1aは、小さい収容空間2aに収容されているが故に、その貯留量を、蒸発速度が小さい芳香剤1の貯留量に合わせることができ、その結果、車両用芳香装置100は、芳香剤1a、芳香剤1bの蒸発速度に関わらず、芳香成分を一定の臭気強度に調整して車室内へ供給できる。また、(II)のように構成することで、収容容積を異ならしめても芳香成分が収容空間に充満して飽和蒸気圧に達するまでの時間、すなわち貯留完了までの時間について、蒸発速度が小さい芳香剤1aの芳香成分と蒸発速度が大きい芳香剤1bの芳香成分との誤差を少なくすることができ、蒸発速度の小さい芳香成分の貯留完了までの時間が長くなることを防止することができるので、芳香成分を間欠的に供給する制御の設計を容易化できる。
【0035】
図4に示すように、本体部10のケース10aは、その天面に、入口管15bの先端に入口開口部15aを設けた入口15と、出口管16bの先端に出口開口部16aを設けた出口16とを備える。ケース10aは、芳香剤保持容器5の上方に位置し、底面が開口されており、芳香剤保持容器5の天面23によって塞がれている。
【0036】
ケース10a内の仕切り板17は、空気流出用開口部4を囲うように縦方向に設けられ、ケース10a内の空間を入口側空間24a及び出口側空間24bの二つの空間に分けている。仕切り板17に設けられた仕切り板開口部18aは空気流出用開口部4aに隣接している孔である。仕切り板17に設けられた仕切り板開口部18bは空気流出用開口部4bに隣接している孔である。仕切り板開口部18aは、空気流出用開口部4aの開閉を行う出口経路開閉ドア9aによって密閉できる大きさを有し、仕切り板開口部18bは、空気流出用開口部4bの開閉を行う出口経路開閉ドア9bによって密閉できる大きさを有する。仕切り板開口部18aは、空気流入用開口部3a及び空気流出用開口部4aが閉じられた時に、入口側空間24aから出口側空間24bに空気流を通すことができ、仕切り板開口部18bは、空気流入用開口部3b及び空気流出用開口部4bが閉じられた時に、入口側空間24aから出口側空間24bに空気流を通すことができる。
【0037】
また、入口管15b、ケース10a、仕切り板17及び容器天面23は、入口経路6(不図示)を形成し、容器天面23、仕切り板17、ケース10a及び出口管16bは、出口経路7(不図示)を形成している。
【0038】
また、図4に示すように、本体部10のケース10aは、空気流入用開口部3bを開放/密閉する入口経路開閉ドア8b、空気流出用開口部4bを開放/密閉する出口経路開閉ドア9b、空気流入用開口部3aを開放/密閉する入口経路開閉ドア8a及び空気流出用開口部4aを開放/密閉する出口経路開閉ドア9aを有する。また、ケース10aは、入口経路開閉ドア8a及び出口経路開閉ドア9aを開閉させる回転軸12a及び入口経路開閉ドア8b及び出口経路開閉ドア9bを開閉させる回転軸12bをさらに有する。なお、入口経路開閉ドア8b、出口経路開閉ドア9bと入口経路開閉ドア8a、出口経路開閉ドア9aとは、図1で示すように、向かい合わせで対称に設けられている。
【0039】
出口経路開閉ドア9aは、空気流出用開口部4aを開放している間は仕切り板開口部18aを密閉し、空気流出用開口部4aを密閉している間は仕切り板開口部18aを開放する。出口経路開閉ドア9bは、空気流出用開口部4bを開放している間は仕切り板開口部18bを密閉し、空気流出用開口部4bを密閉している間は仕切り板開口部18bを開放する。
【0040】
入口経路開閉ドア8aは、空気流入用開口部3aを開放/密閉できれば、開閉形式、形状を問わない。入口経路開閉ドア8bは、空気流入用開口部3bを開放/密閉できれば、開閉形式、形状を問わない。出口経路開閉ドア9aは、空気流出用開口部4aを開放/密閉でき、仕切り板開口部18aを開放/密閉できれば、開閉形式、形状を問わない。出口経路開閉ドア9bは、空気流出用開口部4bを開放/密閉でき、仕切り板開口部18bを開放/密閉できれば、開閉形式、形状を問わない。なお、回転軸12a及び回転軸12bは、仕切り板17及びケース10aを貫通した状態で回動する。
【0041】
入口経路開閉ドア8による密閉性を高めるため、芳香剤保持容器5の天面23上の空気流入用開口部3の周縁に、ライニングを貼ることが好ましい。出口経路開閉ドア9による密閉性を高めるため、芳香剤保持容器5の天面23上の空気流出用開口部4の周縁に、ライニングを貼ることが好ましい。また、出口経路開閉ドア9による密閉性を高めるため、仕切り板開口部18の周縁に、ライニングを貼ることが好ましい。
【0042】
さらに、入口経路開閉ドア8a及び出口経路開閉ドア9aは、ひとつの回転軸12aに、空気流入用開口部3a及び空気流出用開口部4aの開閉が同期する位置に取り付けられている(図4では不図示)。また、図4に示すように、入口経路開閉ドア8b及び出口経路開閉ドア9bは、ひとつの回転軸12bに、空気流入用開口部3b及び空気流出用開口部4bの開閉が同期する位置に取り付けられている。すなわち、入口経路開閉ドア8a及び前記出口経路開閉ドア9aは、同期して空気流入用開口部3a及び空気流出用開口部4aを開閉し、入口経路開閉ドア8b及び出口経路開閉ドア9bは、同期して空気流入用開口部3b及び空気流出用開口部4bを開閉する。この構成によれば、収容空間2aに収容される芳香剤1aの芳香成分を貯留することができ、また、収容空間2bに収容される芳香剤1bの芳香成分を貯留することができる。さらに、入口経路開閉ドア8aの回転軸と出口経路開閉ドア9aの回転軸を別に設ける必要は無くなるため、部品点数の少ない簡易な構成となる。また、入口経路開閉ドア8aと出口経路開閉ドア9aの開閉の同期を確実なものとすることができるため、芳香装置としての動作の確実性を増すことができる。さらに、入口経路開閉ドア8aと出口経路開閉ドア9aとを同時に密閉することができるため、芳香成分の供給停止時には芳香成分の浪費を防ぐことができる。入口経路開閉ドア8b及び出口経路開閉ドア9bでも同様である。
【0043】
本体部10はケース10aとカバー10bによって構成される。カバー10bは、カム14及びアクチュエータ11の軸27を覆い、巻き込みを防止する。ケース10a及びカバー10bは、一体成形であっても別体で成形されたものであってもよい。
【0044】
アクチュエータ11は、図1に示すように、本体部10のカバー10bに固定される。図5に示すように、アクチュエータ11の軸27は、カム14に垂直に連結され、カム14を回転駆動させる。カム14を回転駆動させることができれば、駆動形式は問わない。本実施形態においては、一個のアクチュエータ11に対して、一個のカム14を備えた構成としている。アクチュエータ11とカム14とをそれぞれ一個とすることで、複数の芳香成分を提供可能な、安価で耐久性の高い芳香装置を簡易な構造で実現できる。なお、アクチュエータ11とカム14を二個以上としてもよい。
【0045】
カム14は、図5に示すように、円板状の形状を有する。軌道溝21を設けることができれば形状は問わない。カム14は、芯ぶれの防止のために、アクチュエータ11の軸27を貫通連結した構成とし、アクチュエータ11の軸27は、アクチュエータ11及びケース10aによる両端支持とすることが好ましい。
【0046】
アーム25aは、図5に示すように、一端に入口経路開閉ドア8a及び出口経路開閉ドア9aの回転軸12aを、回転可能に垂直に連結し、他端にピン26aを回転軸12aと反対方向に垂直に突出させた状態で設けている。また、アーム25bは、一端に入口経路開閉ドア8b及び出口経路開閉ドア9bの回転軸12bを、回転可能に垂直に連結し、他端にピン26bを回転軸12bと反対方向に垂直に突出させた状態で設けている。
【0047】
ピン26a及びピン26bは、軌道溝21に垂直に挿入される。軌道溝21は、軌道溝21に沿ってピン26a及びピン26bが移動できれば、軌道溝21の深さは問わない。アーム25aは、ピン26aを軌道溝21に沿って連動させ、この動きに伴い、回転軸12aを回転させて、入口経路開閉ドア8a及び出口経路開閉ドア9aを開閉させる。アーム25bは、ピン26bを軌道溝21に沿って連動させ、この動きに伴い、回転軸12bを回転させて、入口経路開閉ドア8b及び出口経路開閉ドア9bを開閉させる。アーム25aは、ピン26aと回転軸12aを連結できれば、形状は問わない。アーム25bは、ピン26bと回転軸12bを連結できれば、形状は問わない。
【0048】
図5に示すように、アクチュエータ11は、アクチュエータ11の軸27を左回転端まで回転させて、カム14を、図5(a)に示す位置に回転させ、入口経路開閉ドア8aを開き、出口経路開閉ドア9aを開く。同時に、入口経路開閉ドア8bを閉じ、出口経路開閉ドア9bを閉じる。
【0049】
次に、アクチュエータ11は、アクチュエータ11の軸27を図5(a)に対して右側に回転させて、カム14を、図5(b)に示す位置に回転させて、入口経路開閉ドア8を閉じ、出口経路開閉ドア9を閉じる。
【0050】
次に、アクチュエータ11は、アクチュエータ11の軸27を図5(b)に対して右側に回転させて(この位置が右回転端である。)、カム14を、図5(c)に示す位置に回転させ、入口経路開閉ドア8bを開き、出口経路開閉ドア9bを開く。同時に、入口経路開閉ドア8aを閉じ、出口経路開閉ドア9aを閉じる。以降、(a)→(b)→(c)→(b)→(a)…の順に繰り返し往復動作させることによって、入口経路開閉ドア8及び出口経路開閉ドア9は繰り返し開閉動作することができる。或いは必要に応じて、(a)と(b)を繰り返し動作させることによって、入口経路開閉ドア8a及びドア9aを繰り返し開閉動作すること、又は(b)と(c)を繰り返し動作させることによって、入口経路開閉ドア8b及びドア9bを繰り返し開閉動作することもできる。
【0051】
なお、全ての入口経路開閉ドア8及び出口経路開閉ドア9が閉とならないように、軌道溝21の形状を設定することで、(1)入口経路開閉ドア8a及び出口経路開閉ドア9a又は(2)入口経路開閉ドア8b及び出口経路開閉ドア9bの、(1)、(2)いずれか一方が常に開である動作をさせることもできる。
【0052】
次に、図6の概略断面図を用いて、本発明に係る車両用芳香装置100の設置例を説明する。図6に示すように、車両用空調装置内に設けられたブロア32は、空気流33を押し出す。空気流33の圧力は、車両用空調装置内に設置されたフィルタ35及びエバポレータ36に押し込まれることによって高まる。入口配管28の端部31aは、フィルタ35及びエバポレータ36の上流の圧力が高まった空気流33中に設置される。入口配管28の端部31aへ流入した空気流33の一部の空気流19は、入口配管28を通り、車両用芳香装置100の入口15を介して入口経路6へ流し込まれる。車両用芳香装置100内において、空気流19の全部又は一部は芳香成分を含有し、芳香成分を含む空気流20となる。芳香成分を含む空気流20は、出口経路7から出口16を介して出口配管29を通り、フィルタ35及びエバポレータ36下流の低い圧力の吹き出し空気流34中に設置された出口配管29の端部31bから流出する。入口配管28の端部31aをフィルタ35及びエバポレータ36の上流、出口配管29の端部31bをフィルタ35及びエバポレータ36の下流に設置することで、フィルタ35及びエバポレータ36を挟んだ空気の圧力差を用いて芳香成分を含む空気流20を流すことができる。なお、圧力差が発生する場所であれば、入口配管28の端部31a及び出口配管29の端部31bを設置する場所は問わない。そして、フット吹出しに続く通路の通気抵抗を制御するフットドア40、ベント吹出しに続く通路の通気抵抗を制御するベントドア41、デフ吹出しに続く通路の通気抵抗を制御するデフドア42をそれぞれ切り換えることによって、ベント、デフ、フットの各吹出し口から、車室内に空気流が送られる。また、図6に示していないが、さらにサイドベント、リアベント、リアフットが設けられる場合もあり、これらの吹出し口からも芳香成分を含む空気流20を車室内に供給することもできる。
【0053】
次に、図7を用いて、車両用芳香装置100の動作について説明する。図7は、本発明に係る車両用芳香装置100の動作と空気流の流れを説明するための概略図であり、その正面図は、図1をS方向から見た透視図である。(a)は収容空間2aが開、収容空間2bが閉で、芳香剤1aの芳香成分が供給されている状態、(b)は全ての収容空間2が閉で、芳香成分が供給されていない状態、(c)は収容空間2aが閉で、収容空間2bが開で、芳香剤1bの芳香成分が供給されている状態である。
【0054】
図7(a)に示すように、入口経路開閉ドア8aは、空気流入用開口部3aを開く。出口経路開閉ドア9aは、空気流出用開口部4aを開き、仕切り板開口部18aを閉じる。入口経路開閉ドア8bは、空気流入用開口部3bを閉じる。出口経路開閉ドア9bは、空気流出用開口部4bを閉じ、仕切り板開口部18bを開く。入口15から入口経路6に流し込まれた空気流19の一部は、空気流入用開口部3aから収容空間2a内に流れ込み、芳香剤1aの芳香成分を含有して芳香成分を含む空気流29aとなる。芳香成分を含む空気流29aは、収容空間2a内から空気流出用開口部4aを通り、出口経路7に流れ込む。一方、空気流入用開口部3bから収容空間2b内に流れ込まなかった他の空気流30aは、入口経路6から仕切り板開口部18bを通じ、出口経路7に流れ込み、芳香成分を含む空気流29aと混合され、空気流20aとなって出口16を通じて、図6で示すように、出口配管29の端部31bから流出し、車室内に供給される。そして、所定時間経過後、図7(b)に示す状態へ移行する。
【0055】
図7(b)に示すように、出口経路開閉ドア9aは、仕切り板開口部18aを開き、出口経路開閉ドア9bは、仕切り板開口部18bを開く。入口15から入口経路6に流し込まれた空気流19は、仕切り板開口部18a及び仕切り板開口部18bを通じ、出口経路7から出口16を通じて、図6で示すように、出口配管29の端部31bから流出し、芳香成分が含まれない空気流20bのみを車室内に供給する。
【0056】
このとき、入口経路6及び出口経路7は、全ての空気流入用開口部3及び空気流出用開口部4が閉のときに直結した経路となるように構成されている。このような構成とすることで、いずれかの空気流入用開口部3及び空気流出用開口部4が開であった時に供給していた芳香成分を、芳香成分が含まれない空気流20bによって排気することができる。このように、空気流入用開口部3及び空気流出用開口部4を密閉することによって芳香成分の供給を停止し、芳香成分の浪費を防ぐことができる。
【0057】
次に、図7(b)の状態から、所定時間経過後、図7(c)に示す状態へ移行する。図7(c)に示すように、入口経路開閉ドア8bは、空気流入用開口部3bを開く。出口経路開閉ドア9bは、空気流出用開口部4bを開き、仕切り板開口部18bを閉じる。入口経路開閉ドア8aは、空気流入用開口部3aを閉じる。出口経路開閉ドア9aは、空気流出用開口部4aを閉じ、仕切り板開口部18aを開く。入口15から入口経路6に流し込まれた空気流19の一部は、空気流入用開口部3bから収容空間2b内に流れ込み、芳香剤1bの芳香成分を含有して芳香成分を含む空気流29cとなる。芳香成分を含む空気流29cは、収容空間2b内から空気流出用開口部4bを通り、出口経路7に流れ込む。一方、空気流入用開口部3bから収容空間2b内に流れ込まなかった他の空気流30cは、入口経路6から仕切り板開口部18aを通じ、出口経路7に流れ込み、芳香成分を含む空気流29cと混合され、空気流20cとなって出口16を通じて、図6で示すように、出口配管29の端部31bから流出し、車室内に供給される。そして、所定時間経過後、図7(b)に示す状態へ移行する。
【0058】
以降、(a)→(b)→(c)→(b)→(a)…の順に繰り返し往復動作させることによって、車室内に、空気流20a、空気流20b、空気流20c、空気流20b、空気流20a…の順に繰り返し供給される。或いは必要に応じて、(a)と(b)を繰り返し動作させることによって、車室内に、空気流20aと空気流20bは交互に供給され、又は(b)と(c)を繰り返し動作させることによって、車室内に、空気流20bと空気流20cは交互に供給される。なお、図6に示される芳香成分を含む空気流20は、空気流20a、空気流20b、空気流20cを含む。
【0059】
また、空気流入用開口部3及び空気流出用開口部4が開き、芳香成分が供給されている状態で、車両用空調装置のブロア32が停止された場合、或いは、車両のイグニッションがオフとされた場合には、空気流入用開口部3及び空気流出用開口部4を閉じる制御を図示しない制御装置が行うことが好ましい。芳香成分を供給する必要が無い場合には空気流入用開口部3及び空気流出用開口部4を閉じることで、芳香剤の浪費を防ぐことができる。
【0060】
また、芳香成分の非供給時に、出口経路開閉ドア9が空気流出用開口部4を閉とすることに同期して、仕切り板開口部18を閉じるドアを設けてもよい。或いは、芳香成分の非供給時に、出口経路開閉ドア9が空気流出用開口部4を閉とすることに同期して、ケース10aと入口管15bとの接合部15cにある開口部15dを閉じるドア及びケース10aと出口管16bとの接合部16cにある開口部16dを閉じるドアを設けてもよい。このように構成することによって、芳香成分の非供給時に、全ての空気流33について温度調整をすることができ、車両用空調装置の温度調整が容易になる。
【0061】
次に、図8を用いて、車両用芳香装置100の貯留と供給の動作について説明する。図8は、本発明に係る車両用芳香装置100の貯留と供給の動作を説明するための概略断面図であり、(a)は収容空間の2aが開、2bが閉、(b)は収容空間の2aが閉、2bが閉、(c)は収容空間の2aが閉、2bが開、(d)は収容空間の2aが閉、2bが閉となっている。なお、網掛け部分が濃くなるに従い、芳香成分の濃度が高いことを示している。
【0062】
図8(a)に示すように、収容空間2aは開とされ、この時、収容空間2aにおいて貯留が完了した芳香剤1aの芳香成分が供給される。この時、収容空間2bは閉の状態で継続され、芳香剤1bの芳香成分はゆっくり揮発している。そして、所定時間経過後、図8(b)に示す状態へ移行する。
【0063】
図8(b)に示すように、収容空間2aは閉とされ、この時、収容空間2aにおいて芳香剤1aの芳香成分の貯留が開始される。この時、収容空間2bは閉の状態で継続され、芳香剤1bの芳香成分が充満し、貯留が完了する。そして、所定時間経過後、図8(c)に示す状態へ移行する。
【0064】
図8(c)に示すように、収容空間2aは閉の状態で継続され、芳香剤1aの芳香成分はゆっくり揮発している。この時、収容空間2bは開とされ、収容空間2bにおいて貯留が完了した芳香剤1bの芳香成分が供給される。そして、所定時間経過後、図8(d)に示す状態へ移行する。
【0065】
図8(d)に示すように、収容空間2aは閉の状態で継続され、芳香剤1aの芳香成分が充満し、貯留が完了する。この時、収容空間2bは閉とされ、収容空間2bにおいて芳香剤1bの芳香成分の貯留が開始される。そして、所定時間経過後、図8(a)に示す状態へ移行する。
【0066】
以降、(a)→(b)→(c)→(d)→(a)…の順に繰り返し動作させることによって、車室内に、芳香剤1aの芳香成分と芳香剤1bの芳香成分とが、交互に間欠的に供給される。
【0067】
次に図9と図10を参照して、第二実施形態に係る車両用芳香装置101について説明する。図9は、第二実施形態に係る車両用芳香装置101の概略断面図であり、(a)は平面図、(b)はS1方向から見た(a)のA−A断面図、(c)はS2方向から見た(b)のC−C断面図、(d)は(b)のB−B断面図である。また、図10は、第二実施形態に係る車両用芳香装置101の動作説明図であり、(a)は収容空間2aが開、収容空間2bが閉で、芳香剤1aの芳香成分が供給されている状態、(b)は全ての収容空間2が閉で、芳香成分が供給されていない状態、(c)は収容空間2aが閉、収容空間2bが開で、芳香剤1bの芳香成分が供給されている状態である。
【0068】
図9を用いて、第二実施形態に係る車両用芳香装置101について説明する。なお、芳香剤1、芳香剤保持容器5については、第一実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0069】
図9に示すように、本体部10のケース10aは、その天面に、入口管15bの先端に入口開口部15aを設けた入口15と、出口管16bの先端に出口開口部16aを設けた出口16とを備える。ケース10aは、芳香剤保持容器5の上方に位置し、底面が開口されており、芳香剤保持容器5の天面23によって塞がれている。ケース10a内の仕切り板17は、ケース10a内の空間を入口側空間24a及び出口側空間24bの二つの空間に分けるように設けられている。短絡孔39は仕切り板17に設けられ、常時、入口側空間24aから出口側空間24bへ空気流を通すことができる。また、入口管15b、ケース10a、仕切り板17及び容器天面23は、入口経路6(不図示)を形成し、容器天面23、仕切り板17、ケース10a及び出口管16bは、出口経路7(不図示)を形成している。
【0070】
また、図9に示すように、本体部10のケース10aは、空気流入用開口部3bを開放/密閉する入口経路開閉ドア8b、空気流出用開口部4bを開放/密閉する出口経路開閉ドア9b、空気流入用開口部3aを開放/密閉する入口経路開閉ドア8a及び空気流出用開口部4aを開放/密閉する出口経路開閉ドア9aを有する。入口経路開閉ドア8aは、空気流入用開口部3aを開放/密閉できれば、開閉形式、形状を問わない。入口経路開閉ドア8bは、空気流入用開口部3bを開放/密閉できれば、開閉形式、形状を問わない。出口経路開閉ドア9aは、空気流出用開口部4aを開放/密閉できれば、開閉形式、形状を問わない。出口経路開閉ドア9bは、空気流出用開口部4bを開放/密閉できれば、開閉形式、形状を問わない。
【0071】
また、ケース10aは、入口経路開閉ドア8aを開閉させる回転軸13a、出口経路開閉ドア9aを開閉させる回転軸13c、入口経路開閉ドア8bを開閉させる回転軸13b、出口経路開閉ドア9bを開閉させる回転軸13dをさらに有する。回転軸13a、回転軸13b、回転軸13c及び回転軸13dは、それぞれ独立して回転可能な4本の回転軸である。回転軸13a及び回転軸13cは、同期して回転する。収容空間2aは、空気流入用開口部3a及び空気流出用開口部4aを入口経路開閉ドア8a及び出口経路開閉ドア9aが同期して閉じることによって、芳香剤1aの芳香成分を貯留することができる。また、回転軸13b及び回転軸13dは、同期して回転する。収容空間2bは、空気流入用開口部3b及び空気流出用開口部4bを入口経路開閉ドア8b及び出口経路開閉ドア9bが同期して閉じることによって、芳香剤1bの芳香成分を貯留することができる。なお、図9(a)に示すように、4本の回転軸は、ケース10aを貫通した状態で回動する。
【0072】
また、入口経路開閉ドア8による密閉性を高めるため、芳香剤保持容器5の天面23上の空気流入用開口部3の周縁に、ライニングを貼ることが好ましい。出口経路開閉ドア9による密閉性を高めるため、芳香剤保持容器5の天面23上の空気流出用開口部4の周縁に、ライニングを貼ることが好ましい。
【0073】
図10において、本実施形態における動作を説明する。図10(a)において、入口経路開閉ドア8aは、空気流入用開口部3aを開き、出口経路開閉ドア9aは、空気流出用開口部4aを開き、入口経路開閉ドア8bは、空気流入用開口部3bを閉じ、出口経路開閉ドア9bは、空気流出用開口部4bを閉じる。入口15から入口経路6に流し込まれた空気流19の一部は、空気流入用開口部3aから収容空間2a内に流れ込み、芳香剤1aの芳香成分を含有して芳香成分を含む空気流29aとなる。芳香成分を含む空気流29aは、収容空間2a内から空気流出用開口部4aを通り、出口経路7に流れ込む。一方、空気流入用開口部3bから収容空間2b内に流れ込まなかった他の空気流30aは、入口経路6から短絡孔39を通じて出口経路7に流れ込み、芳香成分を含む空気流29aと混合され、空気流20aとして出口16を通じて、図6で示すように、出口配管29の端部31bから流出し、車室内に供給される。そして、所定時間経過後、図10(b)に示す状態へ移行する。
【0074】
図10(b)に示すように、入口経路開閉ドア8aは、空気流入用開口部3aを閉じ、出口経路開閉ドア9aは、空気流出用開口部4aを閉じ、入口経路開閉ドア8bは、空気流入用開口部3bを閉じ、出口経路開閉ドア9bは、空気流出用開口部4bを閉じる。入口15から入口経路6に流し込まれた空気流19は、仕切り板17に設けられた短絡孔39を通じて出口経路7へ流れ込み、芳香成分が含まれない空気流20bとして出口16を通じて、図6で示すように、出口配管29の端部31bから流出し、車室内に供給される。
【0075】
このとき、入口経路6及び出口経路7は、全ての空気流入用開口部3及び空気流出用開口部4が閉のときに直結した経路となるように構成されている。このような構成とすることで、いずれかの空気流入用開口部3及び空気流出用開口部4が開であった時に供給していた芳香成分を、芳香成分が含まれない空気流20bによって排気することができる。このように、空気流入用開口部3及び空気流出用開口部4を密閉することによって芳香成分の供給を停止し、芳香成分の浪費を防ぐことができる。
【0076】
次に、図10(b)の状態から、所定時間経過後、図10(c)に示す状態へ移行する。図10(c)において、入口経路開閉ドア8bは、空気流入用開口部3bを開き、出口経路開閉ドア9bは、空気流出用開口部4bを開き、入口経路開閉ドア8aは、空気流入用開口部3aを閉じ、出口経路開閉ドア9aは、空気流出用開口部4aを閉じる。入口15から入口経路6に流し込まれた空気流19の一部は、空気流入用開口部3bから収容空間2b内に流れ込み、芳香剤1bの芳香成分を含有して芳香成分を含む空気流29cとなる。芳香成分を含む空気流29cは、収容空間2b内から空気流出用開口部4bを通り、出口経路7に流れ込む。一方、空気流入用開口部3aから収容空間2a内に流れ込まなかった他の空気流30cは、入口経路6から短絡孔39を通じ、出口経路7に流れ込み、芳香成分を含む空気流29cと混合され、空気流20cとして出口16を通じて、図6で示すように、出口配管29の端部31bから流出し、車室内に供給される。そして、所定時間経過後、図10(b)に示す状態へ移行する。以降、図10(a)、図10(b)、図10(c)の動作を繰り返す。
【0077】
以降、(a)→(b)→(c)→(b)→(a)…の順に繰り返し往復動作させることによって、車室内に、空気流20a、空気流20b、空気流20c、空気流20b、空気流20a…の順に繰り返し供給される。或いは必要に応じて、(a)と(b)を繰り返し動作させることによって、車室内に、空気流20aと空気流20bは交互に供給され、又は(b)と(c)を繰り返し動作させることによって、車室内に、空気流20bと空気流20cは交互に供給される。なお、図6に示される芳香成分を含む空気流20は、空気流20a、空気流20b、空気流20cを含む。
【0078】
次に、図11を用いて、車両用芳香装置101の貯留と供給の動作について説明する。図11は、本発明に係る車両用芳香装置101の貯留と供給の動作を説明するための概略断面図であり、(a)は収容空間の2aが閉、2bが開、(b)は収容空間の2aが閉、2bが閉、(c)は収容空間の2aが開、2bが閉、(d)は収容空間の2aが閉、2bが閉となっている。なお、網掛け部分が濃くなるに従い、芳香成分の濃度が高いことを示している。
【0079】
図11(a)に示すように、収容空間2aは閉の状態で継続され、芳香剤1aの芳香成分はゆっくり揮発している。この時、収容空間2bは開とされ、収容空間2bにおいて貯留が完了した芳香剤1bの芳香成分が供給される。そして、所定時間経過後、図11(b)に示す状態へ移行する。
【0080】
図11(b)に示すように、収容空間2aは閉の状態で継続され、芳香剤1aの芳香成分が充満し、貯留が完了する。この時、収容空間2bは閉とされ、収容空間2bにおいて芳香剤1aの芳香成分の貯留が開始される。そして、所定時間経過後、図11(c)に示す状態へ移行する。
【0081】
図11(c)に示すように、収容空間2aは開とされ、収容空間2aにおいて貯留が完了した芳香剤1aの芳香成分が供給される。この時、収容空間2bは閉の状態で継続され、芳香剤1bの芳香成分はゆっくり揮発している。そして、所定時間経過後、図11(d)に示す状態へ移行する。
【0082】
図11(d)に示すように、収容空間2aは閉とされ、この時、収容空間2aにおいて芳香剤1aの芳香成分の貯留が開始される。この時、収容空間2bは閉の状態で継続され、芳香剤1bの芳香成分が充満し、貯留が完了する。そして、所定時間経過後、図11(a)に示す状態へ移行する。
【0083】
以降、(a)→(b)→(c)→(d)→(a)…の順に繰り返し動作させることによって、車室内に、芳香剤1aの芳香成分と芳香剤1bの芳香成分とが、交互に間欠的に供給される。
【0084】
次に図12と図13を参照して、第三実施形態に係る車両用芳香装置102について説明する。図12は、第三実施形態に係る車両用芳香装置102の概略断面図であり、(a)は平面図、(b)はS1方向から見た(a)のA−A断面図、(c)はS2方向から見た(b)のC−C断面図、(d)は(b)のB−B断面図である。また、図13は、第三実施形態に係る車両用芳香装置102の動作説明図であり、(a)は収容空間2aが開、収容空間2bが閉で、芳香剤1aの芳香成分が供給されている状態、(b)は全ての収容空間2が閉で、芳香成分が供給されていない状態、(c)は収容空間2aが閉、収容空間2bが開、芳香剤1bの芳香成分が供給されている状態である。
【0085】
図12を用いて、第三実施形態に係る車両用芳香装置102について説明する。なお、芳香剤1、芳香剤保持容器5については、第一実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0086】
図12に示すように、第三実施形態に係る車両用芳香装置102において、芳香剤保持容器5は、芳香剤1、空気流入用開口部3、空気流出用開口部4、入口経路開閉ドア8及び出口経路開閉ドア9をそれぞれ複数有し、入口経路開閉ドア8及び出口経路開閉ドア9は、それぞれ別個の回転軸13に、空気流入用開口部3及び空気流出用開口部4の開閉が同期する位置に取り付けられており、本体部10は、入口経路6と出口経路7とをつなげる短絡孔39を有し、かつ、入口経路開閉ドア8のいずれか一つが、空気流入用開口部3を開としたときに、短絡孔39の入口39aを閉とし、出口経路開閉ドア9のいずれか一つが、空気流出用開口部4を開としたときに、短絡孔39の出口39bを閉とすることが好ましい。
【0087】
図12に示すように、本体部10のケース10aは、その天面に、入口管15bの先端に入口開口部15aを設けた入口15と、出口管16bの先端に出口開口部16aを設けた出口16とを備える。ケース10aは、芳香剤保持容器5の上方に位置し、底面が開口されており、芳香剤保持容器5の天面23によって塞がれている。ケース10a内の仕切り板17は、ケース10a内の空間を入口側空間24a及び出口側空間24bの二つの空間に分けるように設けられている。
【0088】
また、図12に示すように、本体部10のケース10aは、空気流入用開口部3bを開放、密閉する入口経路開閉ドア8b、空気流出用開口部4bを開放、密閉する出口経路開閉ドア9b、空気流入用開口部3aを開放、密閉する入口経路開閉ドア8a及び空気流出用開口部4aを開放、密閉する出口経路開閉ドア9aを有する。入口経路開閉ドア8aは、空気流入用開口部3aを密閉、開放できれば、開閉形式、形状を問わない。入口経路開閉ドア8bは、空気流入用開口部3b及び短絡孔39の入口39aを密閉、開放できれば、開閉形式、形状を問わない。出口経路開閉ドア9aは、空気流出用開口部4a及び短絡孔39の出口39bを密閉、開放できれば、開閉形式、形状を問わない。出口経路開閉ドア9bは、空気流出用開口部4bを密閉、開放できれば、開閉形式、形状を問わない。
【0089】
また、ケース10aは、入口経路開閉ドア8aを開閉させる回転軸13a、出口経路開閉ドア9aを開閉させる回転軸13c、入口経路開閉ドア8bを開閉させる回転軸13b、出口経路開閉ドア9bを開閉させる回転軸13dをさらに有する。なお、回転軸13a、回転軸13b、回転軸13c及び回転軸13dは、それぞれ独立して回転可能な4本の回転軸である。回転軸13a及び回転軸13cは、同期して回転する。収容空間2aは、空気流入用開口部3a及び空気流出用開口部4aを入口経路開閉ドア8a及び出口経路開閉ドア9aが同期して閉じることによって、芳香剤1aの芳香成分を貯留することができる。また、回転軸13b及び回転軸13dは、同期して回転する。収容空間2bは、空気流入用開口部3b及び空気流出用開口部4bを入口経路開閉ドア8a及び出口経路開閉ドア9aが同期して閉じることによって、芳香剤1bの芳香成分を貯留することができる。なお、図12(a)に示すように、4本の回転軸は、ケース10aを貫通した状態で回動する。
【0090】
短絡孔39は仕切り板17に設けられ、短絡孔39の入口39a、短絡孔39の出口39bを備える。短絡孔39は、出口経路開閉ドア9aによって、短絡孔39の出口39bを閉、入口経路開閉ドア8bによって、短絡孔39の入口39aを閉とされる構成となっている。また、入口管15b、ケース10a、仕切り板17及び容器天面23は、入口経路6(不図示)を形成し、容器天面23、仕切り板17、ケース10a及び出口管16bは、出口経路7(不図示)を形成している。
【0091】
入口経路開閉ドア8による密閉性を高めるため、芳香剤保持容器5の天面23上の空気流入用開口部3の周縁に、ライニングを貼ることが好ましい。出口経路開閉ドア9による密閉性を高めるため、芳香剤保持容器5の天面23上の空気流出用開口部4の周縁に、ライニングを貼ることが好ましい。また、出口経路開閉ドア9aによる密閉性を高めるため、短絡孔39の出口39bの周縁に、ライニングを貼ることが好ましい。入口経路開閉ドア8bによる密閉性を高めるため、短絡孔39の入口39aの周縁に、ライニングを貼ることが好ましい。
【0092】
図13において、本実施形態における動作を説明する。図13(a)において、入口経路開閉ドア8aは、空気流入用開口部3aを開き、出口経路開閉ドア9aは、空気流出用開口部4aを開き、入口経路開閉ドア8bは、空気流入用開口部3bを閉じ、出口経路開閉ドア9bは、空気流出用開口部4bを閉じる。この時、出口経路開閉ドア9aは、短絡孔39の出口39bを閉じる。入口15から入口経路6に流し込まれた空気流19は、空気流入用開口部3aから収容空間2a内に流れ込み、芳香剤1aの芳香成分を含有して芳香成分を含む空気流29aとなる。芳香成分を含む空気流29aは、収容空間2a内から空気流出用開口部4aを通り、出口経路7に流れ込む。この構成によれば、全ての空気流19を収容空間2aに流入させることができ、空気流19を効率的に使って芳香成分を供給することができる。芳香成分を含む空気流29aは、空気流20aとして出口16を通じて、図6で示すように、出口配管29の端部31bから流出し、車室内に供給される。そして、所定時間経過後、図13(b)に示す状態へ移行する。
【0093】
図13(b)に示すように、入口経路開閉ドア8aは、空気流入用開口部3aを閉じ、出口経路開閉ドア9aは、空気流出用開口部4aを閉じ、入口経路開閉ドア8bは、空気流入用開口部3bを閉じ、出口経路開閉ドア9bは、空気流出用開口部4bを閉じる。同時に、出口経路開閉ドア9aが短絡孔39の出口39bを開とする。入口15から入口経路6に流し込まれた空気流19は、仕切り板17に設けられた短絡孔39の入口39aから短絡孔39の出口39bを通じて出口経路7へ流れ込み、芳香成分が含まれない空気流20bとして出口16を通じて、図6で示すように、出口配管29の端部31bから流出し、車室内に供給される。この構成によれば、芳香成分を切り換える際に、出口経路7から出口配管29の間に残っていた芳香成分を排気することができる。
【0094】
このとき、入口経路6及び出口経路7は、全ての空気流入用開口部3及び空気流出用開口部4が閉のときに直結した経路となるように構成されている。このような構成とすることで、いずれかの空気流入用開口部3及び空気流出用開口部4が開であった時に供給していた芳香成分を、芳香成分が含まれない空気流20bによって排気することができる。このとき、芳香成分の供給を停止しているが、空気流入用開口部3及び空気流出用開口部4を密閉することによって、芳香成分の浪費を防ぐことができる。
【0095】
次に、図13(b)の状態から、所定時間経過後、図13(c)に示す状態へ移行する。図13(c)において、入口経路開閉ドア8bは、空気流入用開口部3bを開き、出口経路開閉ドア9bは、空気流出用開口部4bを開き、入口経路開閉ドア8aは、空気流入用開口部3aを閉じ、出口経路開閉ドア9aは、空気流出用開口部4aを閉じる。この時、入口経路開閉ドア8bは、短絡孔39の入口39aを閉じる。入口15から入口経路6に流し込まれた空気流19は、空気流入用開口部3bから収容空間2b内に流れ込み、芳香剤1bの芳香成分を含有して芳香成分を含む空気流29cとなる。芳香成分を含む空気流29cは、収容空間2b内から空気流出用開口部4bを通り、出口経路7に流れ込む。この構成によれば、全ての空気流19を収容空間2bに流入させることができ、空気流19を効率的に使って芳香成分を供給することができる。芳香成分を含む空気流29cは、空気流20aとして出口16を通じて、図6で示すように、出口配管29の端部31bから流出し、車室内に供給される。そして、所定時間経過後、図13(b)に示す状態へ移行する。
【0096】
以降、(a)→(b)→(c)→(b)→(a)…の順に繰り返し往復動作させることによって、車室内に、空気流20a、空気流20b、空気流20c、空気流20b、空気流20a…の順に繰り返し供給される。或いは必要に応じて、(a)と(b)を繰り返し動作させることによって、車室内に、空気流20aと空気流20bは交互に供給され、又は(b)と(c)を繰り返し動作させることによって、車室内に、空気流20bと空気流20cは交互に供給される。なお、図6に示される芳香成分を含む空気流20は、空気流20a、空気流20b、空気流20cを含む。
【0097】
なお、車両用芳香装置102における貯留と供給の動作については、前述した車両用芳香装置101における貯留と供給の動作と同様であるため、説明を省略する。
【符号の説明】
【0098】
100:第一実施形態に係る車両用芳香装置
101:第二実施形態に係る車両用芳香装置
102:第三実施形態に係る車両用芳香装置
1、1a、1a:芳香剤
2、2a、2b:収容空間
3、3a、3b:空気流入用開口部
4、4a、4b:空気流出用開口部
5:芳香剤保持容器
6:入口経路
7:出口経路
8、8a、8b:入口経路開閉ドア
9、9a、9b:出口経路開閉ドア
10:本体部
10a:ケース
10b:カバー
11:アクチュエータ
12、12a、12b:回転軸
13、13a、13b、13c、13d:回転軸
14:カム
15:入口
15a:入口開口部
15b:入口管
15c:ケース10aと入口管15bとの接合部
15d:ケース10aと入口管15bとの接合部15cにある開口部
16:出口
16a:出口開口部
16b:出口管
16c:ケース10aと出口管16bとの接合部
16d:ケース10aと出口管16bとの接合部16cにある開口部
17:仕切り板
18、18a、18b:仕切り板開口部
19:空気流
20:芳香成分を含む空気流
20a:空気流30aと空気流29aが混合された空気流
20b:芳香成分が含まれない空気流
20c:空気流30cと空気流29cが混合された空気流
21:軌道溝
22:容器内仕切り板
23:容器天面
24a:入口側空間
24b:出口側空間
25、25a、25b:アーム
26、26a、26b:ピン
27:アクチュエータ軸
28:入口配管
29:出口配管
29a:芳香剤1aの芳香成分を含む空気流
29c:芳香剤1bの芳香成分を含む空気流
30a:収容空間2a内に流れ込まなかった他の空気流
30c:収容空間2b内に流れ込まなかった他の空気流
31a:入口配管の端部
31b:出口配管の端部
32:ブロア
33:空気流
34:吹き出し空気流
35:フィルタ
36:エバポレータ
39:短絡孔
39a:短絡孔の入口
39b:短絡孔の出口
40:フットドア
41:ベントドア
42:デフドア
43:袋
44:ダミー部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香剤を収容するための複数の収容空間、並びに、前記収容空間ごとに設けられた空気流入用開口部及び空気流出用開口部を備える芳香剤保持容器と、前記芳香剤保持容器が取り付けられ、前記各空気流入用開口部の開閉を行う入口経路開閉ドア及び前記各空気流出用開口部の開閉を行う出口経路開閉ドアを備える本体部とを有し、前記芳香剤の芳香成分を空気流に含有させて車室内に間欠的に供給可能な車両用芳香装置において、
前記収容空間の容積が、前記芳香剤ごとにそれぞれ異なることを特徴とする車両用芳香装置。
【請求項2】
前記入口経路開閉ドア及び前記出口経路開閉ドアは、同期して前記空気流入用開口部及び前記空気流出用開口部を開閉し、
一方の収容空間に設けられた前記空気流入用開口部及び前記空気流出用開口部を閉としたとき、他方の収容空間に設けられた前記空気流入用開口部及び前記空気流出用開口部を開又は閉とし、
前記他方の収容空間に設けられた前記空気流入用開口部及び前記空気流出用開口部を閉としたとき、前記一方の収容空間に設けられた前記空気流入用開口部及び前記空気流出用開口部を開又は閉とすることを特徴とする請求項1に記載の車両用芳香装置。
【請求項3】
前記芳香剤は、固体状又は芳香剤を担持したセラミック体であることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の車両用芳香装置。
【請求項4】
前記芳香剤は、寸法が大きく重量が重い芳香剤A及び芳香剤Aよりも寸法が小さくかつ重量が小さい芳香剤Bであり、芳香剤Aは、容積が小さい収容空間Xに収容できない大きさを有するとともに、容積が大きい収容空間Yに収容できる大きさを有し、かつ、芳香剤Bは、収容空間Xに収容できる大きさを有することを特徴とする請求項1、2又は3のいずれかに記載の車両用芳香装置。
【請求項5】
前記芳香剤は、芳香成分の検知閾値の大きな芳香剤及び該芳香剤よりも検知閾値の小さな芳香剤であり、前記検知閾値の大きな芳香剤は、大きな収容空間に収容され、前記検知閾値の小さな芳香剤は、前記大きな収容空間よりも小さな収容空間に収容されることを特徴とする請求項1、2、3又は4のいずれかに記載の車両用芳香装置。
【請求項6】
前記芳香剤は、芳香成分の蒸発速度が大きい芳香剤及び該芳香剤よりも蒸発速度が小さい芳香剤であり、
前記蒸発速度の大きな芳香剤は、小さな収容空間に収容され、前記蒸発速度の小さな芳香剤は、前記小さな収容空間よりも大きな収容空間に収容され、或いは、前記蒸発速度の大きな芳香剤は、大きな収容空間に収容され、前記蒸発速度の小さな芳香剤は、前記大きな収容空間よりも小さな収容空間に収容されることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5のいずれかに記載の車両用芳香装置。
【請求項7】
前記収容空間は、容器内仕切り板による収容空間の仕切り割合によって又は収容空間に収容するダミー部材の体積によって容積を異ならせることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6のいずれかに記載の車両用芳香装置。
【請求項8】
前記芳香剤保持容器は、樹脂で形成され又は樹脂を主体として形成されることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6又は7のいずれかに記載の車両用芳香装置
【請求項9】
前記樹脂はポリプロピレンであり、前記芳香剤保持容器は肉厚が1.8mm以上、3.2mm以下で形成されていることを特徴とする請求項8に記載の車両用芳香装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−179787(P2010−179787A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−25396(P2009−25396)
【出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(500309126)株式会社ヴァレオサーマルシステムズ (282)
【Fターム(参考)】