説明

車両用荷物積下装置

【課題】 装着のためのコストを低減することができ、容易に荷物の積み下ろしを行うことができる車両用荷物積下装置の提供。
【解決手段】 車両11の開口部12近傍に設けられて車両11への荷物の積み下ろしを行う車両用荷物積下装置20であって、開口部12に沿って延在し延在方向両側が車両側に軸支される駆動軸25と、駆動軸25の外周部から延設される保持アーム39と、駆動軸25に接続されるとともに、外部動力源32の駆動力によって駆動軸25をその軸線回りに回動させる駆動部23とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の開口部近傍に設けられて車両への荷物の積み下ろしを行う車両用荷物積下装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の開口部近傍に設けられて車両への車椅子の積み下ろしを行う車椅子収納装置であって、車両の開口部に対し一側に偏って配置されたフレームと、このフレームに回動可能に軸支された吊下アームと、この吊下アームの先端部から延出し延出先端側が開口部の中央側に向くように屈曲するアームパイプとを有し、アームパイプに車椅子を引っ掛け、この状態でアームパイプおよび吊下アームをフレームに対して人力により回動させることで、車椅子を車両に対し積み下ろしする装置がある(例えば特許文献1参照)。この車椅子収納装置においては、操作力を助勢するためにガススプリングが設けられている。
【特許文献1】特開平11−137605号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記した車椅子収納装置では、車両の開口部に対し一側に偏ってフレームが配置されており、このフレームに対し軸支された吊下アームから延出するアームパイプの先端側が開口部の中央側に位置しているため、アームパイプに引っ掛けて車椅子を積み下ろしする際に、フレームに非常に大きな曲げモーメントが生じることになる。このため、フレームが取り付けられる車両側に補強を行う必要があり、装着のためのコストが高いという問題があった。また、操作力を助勢するガススプリングを有するものの、あくまで補助的なものであるため、車椅子の積み下ろしにかなりの人力が必要であり、高齢者や女性などには困難であることに変わりはない。
【0004】
したがって、本発明は、装着のためのコストを低減することができ、容易に荷物の積み下ろしを行うことができる車両用荷物積下装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、車両(例えば実施形態における車両11)の開口部(例えば実施形態におけるリヤ開口部12)近傍に設けられて車両への荷物の積み下ろしを行う車両用荷物積下装置(例えば実施形態における車両用荷物積下装置20)であって、前記開口部に沿って延在し延在方向両側が車両側に軸支される駆動軸(例えば実施形態における駆動軸25)と、該駆動軸の外周部から延設される保持アーム(例えば実施形態における保持アーム39)と、前記駆動軸に接続されるとともに、外部動力源(例えば実施形態における電動回転ツール32)の駆動力によって前記駆動軸をその軸線回りに回動させる駆動部(例えば実施形態における駆動部23)とを有することを特徴としている。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記駆動部は、前記外部動力源を接続させる接続部(例えば実施形態における接続部30)を有し該接続部に接続された前記外部動力源の回転を減速させるギアボックスであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係る発明によれば、駆動部が外部動力源の駆動力によって駆動軸をその軸線回りに回動させると、駆動軸の外周部から延設された保持アームが回動することになって、この保持アームに引っ掛けられた荷物の積み下ろしを行うことになる。ここで、駆動軸が開口部に沿って延在し延在方向両側が車両側に軸支されるため、車両の開口部に対し一側に偏って軸支される場合に比して曲げモーメントが小さくなり、車両側に補強を行う必要がなくなる。また、構造が簡単になるため、車両への付け外しが容易となる。よって、装着のためのコストを低減することができる。さらに、駆動軸が開口部に沿って延在しているため、車室内への侵入量が少なく、シートなどの移動に支障をきたすことがない。加えて、外部動力源の駆動力を用いるため、人力で荷物を積み下ろしする場合と比較して、荷物の積み下ろしが容易にできる。さらに、外部動力源の駆動力を用いるため、車室内に電源コードを這わせる必要がなくなる。加えて、必要に応じて後付けが容易に可能である。
【0008】
請求項2に係る発明によれば、駆動部が、外部動力源を接続させる接続部を有しこの接続部に接続された外部動力源の回転を減速させるギアボックスであるため、外部動力源として回転力を発生させる例えば汎用の電動回転ツール等を用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の一実施形態の車両用荷物積下装置を図面を参照して以下に説明する。なお、以下の説明において用いる前後左右は、車両における前後左右である。
【0010】
図1は、車両11の後部を示す斜視図であって、後部には、上部の車幅方向に沿う軸線を中心に回動する、説明の便宜上図示を略したテールゲートで開閉されるリヤ開口部12が形成されている。この車両11は、例えば三列目シート等の後部座席13より後側の荷室(車室)16の底面を構成するリヤフロア14が、リヤ開口部12の下縁部と位置を合わせた、いわゆる掃き出しフロアとなっている。
【0011】
本実施形態の車両用荷物積下装置20は、上記した車両11のリヤ開口部12の近傍に設けられて車両11への荷物の積み下ろしを行うものである。
【0012】
車両用荷物積下装置20は、車両11のリヤ開口部12の車幅方向一側(具体的には右側)の側縁部に近接してリヤフロア14に取り付けられた駆動部23と、リヤ開口部12の車幅方向逆側(具体的には左側)の側縁部に近接してリヤフロア14に取り付けられた支持部24と、棒状をなすとともに一側が駆動部23に回転可能に軸支され、逆側が支持部24に回転可能に軸支された駆動軸25とを有している。これにより、駆動軸25は、リヤ開口部12に沿い且つリヤ開口部12の略全幅にわたって延在するとともに延在方向の両側が車両11側のリヤフロア14に駆動部23および支持部24を介して軸支される。
【0013】
支持部24は、リヤフロア14に取り付けられる取付板部27と、この取付板部27から車幅方向に対し直交する姿勢で鉛直に立ち上がる支持板部28とを有しており、この支持板部28の上部に駆動軸25の一端部が回転可能に軸支される。
【0014】
駆動部23は、その前部に駆動軸25の他端部を回転可能に軸支しており、その後部に後方つまりリヤ開口部12側に向いて、接続部30が回転可能に設けられている。ここで、駆動部23内には、図示は略すが接続部30の回転方向を90°変えるとともに回転を減速させて駆動軸25に伝達する複数のギアが設けられており、よって、駆動部23はギアボックスとなっている。また、駆動部23には車幅方向外側の上部に段状に切り欠かれた段部31が形成されている。この段部31は図5に示すように車椅子のフットレストなどを避けるための切り欠きである。
【0015】
ここで、駆動部23自体に動力源は設けられておらず、接続部30が、別途用意される汎用インパクトドライバ等の小型ハンディユニットタイプの電動回転ツール(外部動力源)32に接続され、この電動回転ツール32の回転駆動力で回転させられる。電動回転ツール32の回転部33は、図示は略すが、例えば所定の規格化された六角穴を有するソケット状をなしており、駆動部23の接続部30には、図2に示すように、回転部33の六角穴に嵌合可能な六角柱状の嵌合部35が設けられている。これにより、電動回転ツール32の回転部33の六角穴に駆動部23の接続部30の嵌合部35を嵌合させて電動回転ツール32を所定の一方向に回転させると、その駆動力で接続部30から複数のギアを介して駆動軸25がその軸線回りに回転することになり、電動回転ツール32を上記とは逆方向に回転させると、その駆動力で駆動軸25がその軸線回りに上記とは逆方向に回転することになる。つまり、駆動部23は、駆動軸25に接続されるとともに、別途の電動回転ツール32の駆動力によって駆動軸25をその軸線回りに回動させる。
【0016】
駆動軸25には、図1に示すように、その支持部24側の端部近傍の外周部に保持アーム39が固定されている。この保持アーム39は、駆動軸25に固定され駆動軸25からその半径方向に延出する延出アーム部37と、この延出アーム部37の延出先端から車幅方向に沿ってリヤ開口部12の車幅方向中央側に向け延出する保持アーム部38とを有する略L字状をなしている。この保持アーム39は、車幅方向において、少なくともその保持アーム部38の荷物の保持位置が支持部24と駆動部23との間に配置されることになり、この実施形態では、保持アーム39の全体が支持部24と駆動部23との間に配置されている。この保持アーム39は、図3に示すように、延出アーム部37が駆動軸25からリヤフロア14に沿って後方に延出する状態では、保持アーム部38がリヤ開口部12から外側に突出することになり、また、図1に示すように延出アーム部37が駆動軸25から上方に延出する状態では、その全体が荷室16内に収まる大きさとされている。
【0017】
この保持アーム39には、その保持アーム部38に、図4に示すように、例えば折り畳まれた状態の車椅子40の座部シート41が引っ掛けられることになる。また、図示は略すが、別途の支持ベルト等を介して他の比較的重量のある荷物等が引っ掛けられることになる。このようにして、保持アーム39に引っ掛けられた車椅子40あるいは他の重量物を、駆動軸25および保持アーム39を回動させることで、車両11に対し積み下ろしする。
【0018】
例えば、図1に示すように、延出アーム部37が駆動軸25から上方に延出することで保持アーム39が後部座席13の後面に沿って立ち上がる収納状態から、駆動部23の接続部30の嵌合部35に電動回転ツール32の回転部33を嵌合させ、この状態で電動回転ツール32の回転部33を所定の方向に回転させると、駆動部23の接続部30が回転し、図示せぬ複数のギアで回転が減速されて駆動軸25を回動させることになる。すると、駆動軸25に固定された保持アーム39が回動し、図3に示すように、延出アーム部37を後方に延出させて保持アーム部38をリヤ開口部12から後方に突出させることになる。
【0019】
この状態で電動回転ツール32を停止させ、折り畳まれた状態で路面に載置されている車椅子40を走行させて、図4に示すように、その上側に凸状をなして折り畳まれた座部シート41を保持アーム部38の上側に掛ける状態とする。そして、電動回転ツール32の回転部33を逆方向に回転させると、駆動軸25が逆方向に回動し、図5に示すように、駆動軸25に固定された保持アーム39が保持アーム部38を荷室16の内側に入り込むように旋回させる。これにより、保持アーム部38に座部シート41において引っ掛かっている車椅子40が、路面から持ち上げられ、保持アーム部38の後部座席13の後面への近接で、リヤフロア14上に積まれるとともに後部座席13の後面へ当接する。この状態で電動回転ツール32を停止させる。なお、駆動部23は、段部31によって車椅子40との干渉をさけるようになっている。
【0020】
そして、図6に示すように、この状態で車椅子40を後側から覆うように弾性のネット43を展設して、車椅子40を後部座席13の後面とネット43とで挟持する。後部座席13およびリヤフロア14の適宜の位置には、ネット43を展設するためのフック44が設けられている。これにより、車椅子40を確実に車両11側に固定できることになる。なお、車椅子40に後側からバンドを掛け、このバンドと後部座席13の後面とで車椅子40を挟持しても良い。
【0021】
他方、車椅子40を上記のように車両11に搭載した状態から、ネット43を外し、駆動部23の接続部30の嵌合部35に電動回転ツール32の回転部33を嵌合させて、電動回転ツール32の回転部33を所定の方向に回転させると、駆動軸25および保持アーム39が回動し、保持アーム39が延出アーム部37を後方に延出させて保持アーム部38をリヤ開口部12から後方に突出させることになる。これにより、保持アーム部38に座部シート41において引っ掛かっている車椅子40が、リヤフロア14から路面に降ろされる。この状態で電動回転ツール32を停止させ、路面に載置されている車椅子40を走行させて、座部シート41から保持アーム部38を抜き、その後、電動回転ツール32の回転部33を逆方向に回転させて、保持アーム39を荷室16に収納する。
【0022】
なお、図示は略すが、車椅子40を積み下ろしする際に、リヤフロア14からリヤ開口部12を介して外側に垂れ下げられることで車両11側を保護する保護カバーを設けることも可能である。この保護カバーが設けられている場合には、車椅子40を車両11に積んだ後、この車椅子40を保護カバーで覆った状態でネット43により後部座席13に保持させることになる。
【0023】
以上に述べた本実施形態の車両用荷物積下装置20によれば、駆動部23が電動回転ツール32の駆動力によって駆動軸25をその軸線回りに回動させると、駆動軸25の外周部から延設された保持アーム39が回動することになって、この保持アーム39に引っ掛けられた車椅子40等の荷物の積み下ろしを行うことになる。ここで、駆動軸25がリヤ開口部12に沿って延在し延在方向両側が車両側に駆動部23および支持部24で軸支されるため、車両11のリヤ開口部12に対し一側に偏って軸支される場合に比して曲げモーメントが小さくなり、車両11側に補強を行う必要がなくなる。また、構造が簡単になるため、車両11への付け外しが容易となる。よって、装着のためのコストを低減することができる。さらに、駆動軸25がリヤ開口部12に沿って延在しているため、車室11内への侵入量が少なく、後部座席13などの移動に支障をきたすことがない。加えて、電動回転ツール32の駆動力を用いるため、人力で車椅子40等の荷物を積み下ろしする場合と比較して、車椅子40等の荷物の積み下ろしが容易にできる。さらに、電動回転ツール32の駆動力を用いるため、車室内に電源コードを這わせる必要がなくなる。
【0024】
また、駆動部23が、電動回転ツール32を接続させる接続部30を有しこの接続部30に接続された電動回転ツール32の回転を減速させるギアボックスであり、回転力を発生させる汎用の電動回転ツール32を用いることができる。
【0025】
なお、電動回転ツール32としては、上記のように規格化された六角穴を有する汎用のものを用いる以外に、専用の嵌合構造部を有するものを用いても良い。さらに、電動回転ツール32としては、内蔵された充電式のバッテリを有するものや、車内電源から電力を得るもの、さらにはこれらの組み合わせが可能なもの等を用いることができる。
【0026】
加えて、図7に示すように、保持アーム39の保持アーム部38の中間部に、リヤ開口部12から後方に突出した状態で下方に凹状をなす段差部45を形成し、この段差部45の幅を車椅子40の座部シート41の長さより若干長くすれば、座部シート41を段差部45に掛けることで保持アーム39に対し車椅子40を最適な位置に保持させることができ、積み下ろしの際の不要な移動をも規制できることになる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態の車両用荷物積下装置が適用された車両の後部を示す斜視図であって、保持アームの車両への収納状態を示すものである。
【図2】本発明の一実施形態の車両用荷物積下装置の駆動部側を示す車両後方から見た図である。
【図3】本発明の一実施形態の車両用荷物積下装置が適用された車両の後部を示す斜視図であって、保持アームの車両からの突出状態を示すものである。
【図4】本発明の一実施形態の車両用荷物積下装置が適用された車両の後部を示す斜視図であって、車両からの突出した保持アームに車椅子を引っ掛けた状態を示すものである。
【図5】本発明の一実施形態の車両用荷物積下装置が適用された車両の後部を示す斜視図であって、車椅子を車両に積んだ状態を示すものである。
【図6】本発明の一実施形態の車両用荷物積下装置が適用された車両の後部を示す斜視図であって、車椅子を車両に積んでネットで保持した状態を示すものである。
【図7】本発明の一実施形態の車両用荷物積下装置が適用された車両の後部を示す斜視図であって、車両用荷物積下装置の変形例を示すものである。
【符号の説明】
【0028】
11 車両
12 リヤ開口部(開口部)
20 車両用荷物積下装置
23 駆動部
25 駆動軸
30 接続部
32 電動回転ツール(外部動力源)
39 保持アーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の開口部近傍に設けられて車両への荷物の積み下ろしを行う車両用荷物積下装置であって、
前記開口部に沿って延在し延在方向両側が車両側に軸支される駆動軸と、
該駆動軸の外周部から延設される保持アームと、
前記駆動軸に接続されるとともに、外部動力源の駆動力によって前記駆動軸をその軸線回りに回動させる駆動部とを有することを特徴とする車両用荷物積下装置。
【請求項2】
前記駆動部は、前記外部動力源を接続させる接続部を有し該接続部に接続された前記外部動力源の回転を減速させるギアボックスであることを特徴とする請求項1記載の車両用荷物積下装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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