説明

車両用計器

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ムーブメントの指針軸に取付けられた指針により文字板上に車両情報を表示する車両用計器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から車両用計器として、図3に示すようなものが知られている。この形式のものは、交差コイル型計器といわれ、互いに交差する磁界を発生する一対のコイルにそれぞれ計測量に応じて変化する電流を流し、それぞれのコイルが発生する磁界を合成した合成磁界の方向にマグネットロータを回転させ、このマグネットロータとともに回転する指針で計測量の表示を行うものである。
【0003】図3において、1はコイルボビンを示し、上ボビン1aと、下ボビン1bとで構成されている。2は上ボビン1aと下ボビン1bとで回転自在に支持された指針軸を示し、上端部は上ボビン1aから突出している。
【0004】3はマグネットロータを示し、S極およびN極の形成された円板状で、中心が指針軸2に固定され、コイルボビン1の内側に配設されている。5A,5Bはコイルボビン1の外側に互いに交差する方向に巻回されたコイル、6はムーブメントケースを示し、このムーブメントケース6は、コイルボビン1およびコイル5A,5Bを収容し、コイル5A,5Bが発生する磁界が他の部分に影響しないように磁界を遮断するものである。上記したコイルボビン1〜ムーブメントケース6などによってムーブメント10が構成されている。
【0005】11は文字板を示し、裏面にムーブメント10が取り付けられ、孔11aから指針軸2の上端部が突出している。また、文字板11の裏側にはプリズム15が配置されていて、図示せぬ光源からの光を導き文字板11を光らせる働きをしている。12は指針を示し、孔11aから突出した指針軸2の上端部に固定されている。13はメータケースを示し、奥側にムーブメント10が位置するように文字板11が取り付けられ、前面に見返し板14が取り付けられている。上記したムーブメント10〜見返し板14により車両用計器20が構成されている。
【0006】上記のように構成された車両用計器20は、図に示すように、通常は指針軸2が斜めになるようにインストルメントパネル内に取り付けられる。そして、計測量に応じて変化する電流をコイル5A,5Bに流すと、それぞれのコイル5A,5Bが発生する磁界を合成した合成磁界の方向にマグネットロータ3は回転するので、指針軸2および指針12も一緒に回転し、文字板11の目盛を指示するので、計測量を視認することができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところが、車両用計器が斜めに配置されることにより、図4に示すように、指針軸2を受ける上下ボビン1a,1bの軸受部1aa,1bbには、マグネットロータ3や指針軸2の荷重Wが斜め方向にそれぞれNとして掛り、特に指針12がブラックフェース用の大型になると、指針12の重量が影響して軸受部の摩擦力が大きくなり、車両用計器20の指針12の回転にヒステリシスが発生するという問題が生じる。指針の重量とヒステリシスの幅との関係を示すと図5に示すようになる。
【0008】本発明は、指針の重量を軽くするように作用させ、ヒステリシスの軽減を図った車両用計器の提供を目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、ムーブメントの指針軸に取付けられた指針により文字板上に車両情報を表示する車両用計器において、前記指針の指針基部或いは指針キャップを樹脂マグネットで形成して第1のマグネットとするとともに、該第1のマグネットと対向する位置に第2のグネットを配置して、これら第1及び第2のマグネットの磁気作用により指針軸に対する指針の荷重を軽減するように構成したことを特徴としている。
【0010】この場合に、第2のマグネットを指針の上側に配置し、第2のマグネットと第1のマグネットとを互いに吸引するように着磁してもよい
【0011】
【作用】本発明は、上述のように構成されているので、指針軸に対する指針の荷重は、指針の指針基部或いは指針キャップを形成する樹脂マグネットである第1のマグネットと該第1のマグネットと対向する位置に配置された第2のマグネットとの相互の磁気作用によって、軽減される。第2のマグネットが指針の上側に配置され、第2のマグネットと第1のマグネットとが互いに吸引するように着磁されている場合には、指針は第2のマグネットによって吊り上げられるようになる
【0012】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づき説明する。なお、従来の技術の項で説明したものと同一または相当する部分には同一符号を付し説明を省略する。図1には、本発明の一実施例が模式図で示されている。この車両用計器20が従来の項で説明したものと異なる点は、先ず第1に指針の指針基部或いは指針キャップ12aが樹脂マグネットで形成されており、上側がN極で下側がS極に着磁されている点である。この指針基部或いは指針キャップ12aは、本発明にいう第1のマグネットに相当するものである。
【0013】次に異なる部分は、文字板11に光を導くプリズム(導光板)15の形状であるが、プリズム15の上側に一体成形によってL字上のアーム15aを形成した点である。そして、そのアーム15aの先端部の下側に、指針キャップ12aと対向するように第2のマグネット16を配置した点である。この第2のマグネット16は、下側がS極で上側がN極に着磁されている。なお、アーム15aへの第2のマグネット16の配置は、接着剤によって接着してもよく、あるいは熱溶着でおこなってもよく、また埋め込んでもよい。また、第2のマグネット16と指針基部或いは指針キャップ12aの着磁方向をそれぞれ逆にしてもよい。なお、図中の17はアーム15aが見えないように遮蔽する遮蔽板である。
【0014】この車両用計器20は、上述のようになっているので、指針12は第2のマグネット16と指針基部或いは指針キャップ12aとの吸引力で上方向に吊り上げられるように作用するので、指針軸2に掛かる指針12の荷重は軽減され、ムーブメント10の軸受部に掛かる指針軸2の摩擦力も軽減されるため、ヒステリシスは減少することになる。
【0015】次に、本発明の参考例について説明する。図2には、本発明の参考例が模式図で示されている。図に示すように、指針基部或いは指針キャップ12aの下側にリング状の第1のマグネット18が取付けられており、この第1のマグネット18に対向する位置であるプリズム15の下側が円形に穿設された穴15bにリング状の第2のマグネット16が配置されている。第1のマグネット18は、下側がS極で上側がN極に着磁されており、第2のマグネット16は上側がS極で下側がN極に着磁されていて、これらマグネット18,16は互いに反発するように作用する。
【0016】なお、プリズム15の穴15bへの第2のマグネット16の配置は、接着剤によって接着してもよく、あるいは熱溶着でおこなってもよく、また埋め込んでもよい。また、指針基部或いは指針キャップ12aの下側への第1のマグネット18の取付けも、同様に、接着剤によって接着してもよく、あるいは熱溶着でおこなってもよい。なお、第1のマグネット18と第2のマグネット16との着磁方向はそれぞれ逆にしてもよい。
【0017】この車両用計器20は、上述のようになっているので、指針12は第1のマグネット18と第2のマグネット16との反発力で上方向に押上られるように作用するので、指針軸2に掛かる指針12の荷重は軽減され、ムーブメント10の軸受部に掛かる指針軸2の摩擦力も軽減されるため、ヒステリシスは減少することになる。
【0018】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、ムーブメントの指針軸に取付けられた指針により文字板上に車両情報を表示する車両用計器において、前記指針の指針基部或いは指針キャップを樹脂マグネットで形成して第1のマグネットとするとともに、該第1のマグネットと対向する位置に第2のマグネットを配置して、れら第1及び第2のマグネットの磁気作用により指針軸に対する指針の荷重を軽減するように構成したので、指針軸と軸受部との摩擦力が減少し、計器のヒステリシスを減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の模式図である。
【図2】本発明の参考例の模式図である。
【図3】従来から知られている車両用計器の断面図である。
【図4】従来から知られている車両用計器の不具合を説明する図である。
【図5】指針重量と計器の指示ヒステリシスとの関係を示す図である。
【符号の説明】
1 コイルボビン
1a 上ボビン
1aa 軸受部
1b 下ボビン
1bb 軸受部
2 指針軸
10 ムーブメント
11 文字板
12 指針
12a 指針キャップ(第1のマグネット)
16 第2のマグネット
18 第1のマグネット

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ムーブメントの指針軸に取付けられた指針により文字板上に車両情報を表示する車両用計器において、前記指針の指針基部或いは指針キャップを樹脂マグネットで形成して第1のマグネットとするとともに、該第1のマグネットと対向する位置に第2のマグネットを配置して、これら第1及び第2のマグネットの磁気作用により指針軸に対する指針の荷重を軽減するように構成したことを特徴とする車両用計器。
【請求項2】 前記第2のマグネットは指針の上方に配置され、第2のマグネットと前記第1のマグネットとは互いに吸引するように着磁されていることを特徴とする請求項1記載の車両用計器。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【特許番号】特許第3189195号(P3189195)
【登録日】平成13年5月18日(2001.5.18)
【発行日】平成13年7月16日(2001.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−155730
【出願日】平成6年7月7日(1994.7.7)
【公開番号】特開平8−21853
【公開日】平成8年1月23日(1996.1.23)
【審査請求日】平成9年7月29日(1997.7.29)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【参考文献】
【文献】特開 平7−140172(JP,A)
【文献】実開 平5−52768(JP,U)
【文献】実公 平2−34619(JP,Y2)