説明

車両用部品

【課題】炭素がTi−C結合の状態でドープされており、耐久性に優れ且つ可視光応答型光触媒として機能する炭素ドープ酸化チタン層を有する車両用部品を提供する。
【解決手段】少なくとも表面層がチタン、チタン合金、チタン合金酸化物又は酸化チタンからなる基体の表面をその表面温度が900〜1500℃となるように炭化水素を主成分とするガスの燃焼ガス雰囲気中で、又は該基体の表面に炭化水素を主成分とするガスの燃焼炎を直接当ててその基体の表面温度が900〜1500℃となるように加熱処理した部材により車両用の一部を構成する車両用部品を形成することによって得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
第1の発明は、少なくとも表面層が炭素ドープされた酸化チタン又はチタン合金酸化物からなる層を有し、該炭素がTi−C結合の状態でドープされた部材によって形成された車両用部品に関し、より詳しくは、炭素がTi−C結合の状態でドープされて形成されており、耐久性(高硬度、耐スクラッチ性、耐磨耗性、耐薬品性、耐熱性)に優れ且つ可視光応答型光触媒として機能する層を有する部材によって形成された車両用部品に関する。
また第2の発明は、表面の少なくとも一部に酸化チタン又はチタン合金酸化物からなる多数の突起部を有し、揮発性有機化合物(VOC)も容易に吸着でき、表面積が大きく且つ炭素ドープされているので光触媒としての活性が高く且つ可視光応答型光触媒として機能し、また硬度も高く、耐剥離性、耐摩耗性、耐薬品性、耐熱性に優れた部材によって形成された車両用部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、光触媒機能を呈する物質として二酸化チタンTiO2(本明細書、請求の範囲においては、単に、酸化チタンという)が知られている。チタン金属上に酸化チタン膜を形成する方法として、1970年代より、チタン金属上に陽極酸化によって酸化チタン膜を形成する方法、酸素を供給した電気炉中でチタン金属板上に熱的に酸化チタン膜を形成する方法、チタン板を都市ガスの1100〜1400℃の火炎中で加熱してチタン金属上に酸化チタン膜を形成する方法等が知られている(非特許文献1参照)。
【0003】
このような光触媒機能により消臭、抗菌、防曇や防汚の効果が得られる光触媒製品を製造する場合、一般的には、酸化チタンゾルをスプレーコーティング、スピンコーティング、ディッピング等により基体上に付与して成膜している(例えば、特許文献1〜3参照)が、そのように成膜された皮膜は剥離や摩耗が生じやすいので、長期に亘っての使用が困難であった。なお、スパッタリング法によって光触媒皮膜を成膜する方法も知られている(例えば、特許文献4〜5参照)。
【0004】
また、酸化チタンを光触媒として機能させるためには波長が400nm以下の紫外線が必要であるが、種々の元素をドープして可視光により機能する酸化チタン光触媒の研究が数多く実施されている。例えば、F、N、C、S、P、Ni等をそれぞれドープした酸化チタンを比較して、窒素ドープ酸化チタンが可視光応答型光触媒として優れているという報告がある(非特許文献2参照)。
【0005】
また、このように他元素をドープした酸化チタン光触媒としては、酸化チタンの酸素サイトを窒素等の原子で置換してなるチタン化合物、酸化チタンの結晶の格子間に窒素等の原子をドーピングしてなるチタン化合物、或いは酸化チタン結晶の多結晶集合体の粒界に窒素等の原子を配してなるチタン化合物からなる光触媒が提案されている(例えば、特許文献6〜9等参照)。しかしながら、そのような光触媒は耐摩耗性等の耐久性の点については必ずしも満足できるものではない。更に、例えば、天然ガス及び酸素の流量を調整することによって燃焼炎の温度が850℃付近に維持された天然ガス燃焼炎をチタン金属に当てることにより化学修飾酸化チタンであるn−TiO2-xCxが得られ、これが535nm以下の光を吸収する旨の報告がある(非特許文献3参照)。
【0006】
更に、CVD法又はPVD法などの各種製法により作製した結晶核を無機金属化合物又は有機金属化合物から成るゾル溶液中に入れるか、又は該結晶核にゾル溶液を塗布し、固化させ、熱処理して酸化チタン結晶を該結晶核より成長させることにより、その結晶核より成長させた酸化チタン結晶の結晶形状が柱状結晶を成すことで高活性な光触媒機能が得られることが知られている(例えば、特許文献10〜12参照)。しかしながら、その場合には単に基体上に置かれた種結晶から柱状結晶が成長するだけであるので、形成された柱状結晶は基体への付着強度が充分ではなく、それでそのようにして作製された光触媒は耐摩耗性等の耐久性の点については必ずしも満足できるものではない。
【0007】
なお、従来から、自動車の内装として用いられる部品や自動車の外部に装着して使用される部品などの自動車用部品を光触媒により形成することは提案されている(例えば、特許文献13〜14参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平09−241038号公報
【特許文献2】特開平09−262481号公報
【特許文献3】特開平10−053437号公報
【特許文献4】特開平11−012720号公報
【特許文献5】特開2001−205105号公報
【特許文献6】特開2001−205103号公報(特許請求の範囲)
【特許文献7】特開2001−205094号公報(特許請求の範囲)
【特許文献8】特開2002−95976号公報(特許請求の範囲)
【特許文献9】国際公開第01/10553号パンフレット(請求の範囲)
【特許文献10】特開2002−253975号公報
【特許文献11】特開2002−370027号公報
【特許文献12】特開2002−370034号公報
【特許文献13】特開2004−262338号公報
【特許文献14】特開2001−26216号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】A. Fujishima et al.、J. Electrochem. Soc. Vol. 122、No. 11、p. 1487-1489、November 1975
【非特許文献2】R. Asahi et al.、SCIENCE Vol. 293、2001年7月13日、p. 269-271
【非特許文献3】Shahed U. M. Khan et al.、SCIENCE Vol. 297、2002年9月27日、p. 2243-2245
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここで従来の酸化チタン系光触媒は、紫外線応答型のもの及び可視光応答型のものの何れも耐久性(高硬度、耐スクラッチ性、耐磨耗性、耐薬品性、耐熱性)に問題があり、実用化の面でのネックとなっていた。
【0011】
一方、自動車、オートバイ、自転車等の車両の部品は、悪路を含む様々な場所を走行するため汚れなどを避けることは困難であり、特に車両への設置部位やその部品自体の機能によっては汚れなどにおいて過酷な環境に置かれる。従って、車両用部品の形成に用いられる光触媒は、耐久性に優れていることが求められている。
【0012】
そこで第1の発明は、表面層として耐久性(高硬度、耐スクラッチ性、耐磨耗性、耐薬品性、耐熱性)に優れ且つ可視光応答型光触媒として機能する炭素ドープ酸化チタン層を有する車両用部品を提供することを目的としている。
【0013】
また、第2の発明は、VOCも容易に吸着でき、表面積が大きく且つ炭素ドープされているので光触媒としての活性が高く且つ可視光応答型光触媒として機能し、耐剥離性、耐摩耗性、耐薬品性、耐熱性に優れた車両用部品を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は上記の目的を達成するために鋭意検討した結果、表面層がチタン、チタン合金、チタン合金酸化物又は酸化チタンからなる基体の表面を、炭化水素を主成分とするガスの燃焼炎を用いて高温で加熱処理することにより、炭素がTi−C結合の状態でドープされており、耐久性(高硬度、耐スクラッチ性、耐磨耗性、耐薬品性、耐熱性)に優れ且つ可視光応答型光触媒として機能する炭素ドープ酸化チタンを表面層として有する車両用部品に適用するのに有用な部材(以下、「多機能材」という。)が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0015】
即ち、本発明の第1の車両用部品は、少なくとも表面層が炭素ドープ酸化チタン層からなり、該炭素がTi−C結合の状態でドープされており、耐久性に優れ且つ可視光応答型光触媒として機能する多機能材(第1の多機能材)によって形成されたことを特徴とする。
【0016】
さらに、本発明者は上記の目的を達成するために鋭意検討した結果、少なくとも表面層がチタン、酸化チタン、チタン合金又はチタン合金酸化物からなる基体の表面に不飽和炭化水素、特にアセチレンの燃焼炎を直接当てて特定の条件下で加熱処理するか、又は該基体の表面を特定の条件下で不飽和炭化水素、特にアセチレンの燃焼排ガス雰囲気中で加熱処理することによって、該表面層内部に酸化チタン又はチタン合金酸化物からなる微細柱が林立している層が形成されること、該微細柱が林立している層を該表面層に沿う方向で切断させて該基体上の少なくとも一部に該酸化チタン又はチタン合金酸化物からなる微細柱が林立している層が露出している部材と、薄膜上に酸化チタン又はチタン合金酸化物からなる多数の連続した狭幅突起部及び該突起部上に林立している微細柱が露出している部材とが得られること、即ち、この両者とも表面の少なくとも一部に酸化チタン又はチタン合金酸化物からなる多数の突起部を有していること、この両者とも有用な多機能材であること、また該酸化チタン又はチタン合金酸化物からなる突起部である微細柱、連続した狭幅突起部が炭素ドープされていることにより、光触媒活性が高く、可視光応答型光触媒として機能し、更にVOCも容易に吸着でき、硬度も高く、耐剥離性、耐摩耗性、耐薬品性、耐熱性に優れた多機能材が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0017】
即ち、本発明の第2の車両用部品は、表面の少なくとも一部に酸化チタン又はチタン合金酸化物からなる多数の突起部を有しており、例えば、表面の少なくとも一部に酸化チタン又はチタン合金酸化物からなる微細柱が林立している層が露出しているか又は薄膜上に酸化チタン又はチタン合金酸化物からなる多数の連続した狭幅突起部及び該突起部上に林立している微細柱が露出しており、該突起部、例えば該微細柱、該狭幅突起部が炭素ドープされた多機能材(第2の多機能材)によって形成されたことを特徴とする。
【0018】
本発明は、種々の車両用部品の少なくとも一部を第1の多機能材又は第2の多機能材で形成するものである。
【発明の効果】
【0019】
第1の多機能材は、耐久性(高硬度、耐スクラッチ性、耐磨耗性、耐薬品性、耐熱性)に優れ且つ可視光応答型光触媒として機能するので、可視光応答型光触媒として使用できるだけでなく、従来硬質クロムめっきが利用されていた種々の車両用部品にも有意に利用できる。また、基材の電位を低下させて孔食や全面腐食、並びに応力腐食割れ等の防止等を目的とする車両用部品への応用が期待できる。
【0020】
第2の多機能材は、光触媒活性が高く、可視光応答型光触媒として機能し、更にVOCも容易に吸着でき、硬度も高く、耐剥離性、耐摩耗性、耐薬品性、耐熱性に優れている。
【0021】
そこで、車両用部品を第1の多機能材又は第2の多機能材で形成することにより軽量化することができるのみならず、硬度の高さ等の優れた耐久性を有し、また可視光応答型光触媒の優れた効果を備えた車両用部品を提供することができる。
【0022】
なお、耐久性を重視するなら第1の多機能材を用いるのが好ましく、光触媒活性の高さを重視するなら第2の多機能材を用いるのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】試験例1の皮膜硬度試験の結果を示す図である。
【図2】試験例5のXPS分析の結果を示す図である。
【図3】試験例6の光電流密度の波長応答性を示す図である。
【図4】試験例7の光エネルギー変換効率の試験結果を示す図である。
【図5】試験例8の消臭試験の結果を示す図である。
【図6】試験例9の防汚試験の結果を示す写真である。
【図7】試験例11の結果を示す図である。
【図8】実施例11及び12で得られた炭素ドープ酸化チタン層の光透過状態を示す写真である。
【図9】実施例11で得られた炭素ドープ酸化チタン層の表面状態を示す写真である。
【図10】実施例13で得られた車両用部品の状態を示す顕微鏡写真である。
【図11】薄膜上に白色の酸化チタンからなる多数の連続した狭幅突起部及び突起部上に林立している微細柱が露出している小片部材3の薄膜側表面の状態を示す顕微鏡写真である。
【図12】薄膜上に白色の酸化チタンからなる多数の連続した狭幅突起部及び突起部上に林立している微細柱が露出している小片部材3の多数の連続した狭幅突起部及び該突起部上に林立している微細柱が露出している側の表面の状態示す顕微鏡写真である。
【図13】白色の酸化チタンからなる微細柱が林立している層2の状態を示す顕微鏡写真である。
【図14】試験例15(防汚試験)の結果を示すグラフである。
【図15】試験例16(結晶構造と結合状態)の結果を示すグラフである。
【図16】実施例19における加熱時間120秒後のSEM写真である。
【図17】実施例19における加熱時間180秒後のSEM写真である。
【図18】実施例19における加熱時間480秒後のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0025】
本実施形態の車両用部品は、部材の少なくとも一部に所定の多機能材を使用している点に特徴を有する。そこで、以下では、まず、この多機能材について詳細に説明し、その後、この多機能材(車両用部品材)を用いた車両用部品について説明する。
【0026】
[多機能材について]
本発明の車両用部品に使用される第1の多機能材は、少なくとも表面層がチタン、チタン合金、チタン合金酸化物又は酸化チタンからなる基体の表面を、例えば、炭化水素を主成分とするガスの燃焼炎を用いて高温で加熱処理することにより製造することができるが、この少なくとも表面層がチタン、チタン合金、チタン合金酸化物又は酸化チタンからなる基体は、その基体の全体がチタン、チタン合金、チタン合金酸化物又は酸化チタンの何れかで構成されていても、或いは表面部形成層と心材とで構成されていてそれらの材質が異なっていてもよい。また、その基体の形状については、高硬度、耐スクラッチ性、耐磨耗性、耐薬品性、耐熱性等の耐久性が望まれる最終商品形状(平板状や立体状)や、表面に可視光応答型光触媒機能を有することが望まれる最終商品形状であってもよい。
【0027】
少なくとも表面層がチタン、チタン合金、チタン合金酸化物又は酸化チタンからなる基体が表面部形成層と心材とで構成されていてそれらの材質が異なっている場合には、その表面部形成層の厚さは形成される炭素ドープ酸化チタン層の厚さと同一であっても(即ち、表面部形成層全体が炭素ドープ酸化チタン層となる)、厚くてもよい(即ち、表面部形成層の厚さ方向の一部が炭素ドープ酸化チタン層となり、一部がそのまま残る)。また、その心材の材質は第1の発明の製造方法における加熱処理の際に燃焼したり、溶融したり、変形したりするものでなければ、特に制限されることはない。例えば、心材として鉄、鉄合金、非鉄合金、セラミックス、その他の陶磁器、高温耐熱性ガラス等を用いることができる。このような薄膜状の表面層と心材とで構成されている基体としては、例えば、心材の表面にチタン、チタン合金、チタン合金酸化物又は酸化チタンからなる皮膜をスパッタリング、蒸着、溶射等の方法で形成したもの、あるいは、市販の酸化チタンゾルをスプレーコーティング、スピンコーティングやディッピングにより心材の表面上に付与して皮膜を形成したもの等を挙げることができる。
【0028】
また、第1の多機能材は、炭素ドープされた酸化チタン又はチタン合金酸化物からなる層と中間層と心材とで構成されており、該中間層がチタン、チタン合金、チタン合金酸化物又は酸化チタンであり、該心材がチタン、チタン合金及び酸化チタン以外の材質で構成されていてもよい。
【0029】
上記のチタン合金として公知の種々のチタン合金を用いることができ、特に制限されることはない。例えば、Ti−6Al−4V、Ti−6Al−6V−2Sn、Ti−6Al−2Sn−4Zr−6Mo、Ti−10V−2Fe−3Al、Ti−7Al−4Mo、Ti−5Al−2.5Sn、Ti−6Al−5Zr−0.5Mo−0.2Si、Ti−5.5Al−3.5Sn−3Zr−0.3Mo−1Nb−0.3Si、Ti−8Al−1Mo−1V、Ti−6Al−2Sn−4Zr−2Mo、Ti−5Al−2Sn−2Zr−4Mo−4Cr、Ti−11.5Mo−6Zr−4.5Sn、Ti−15V−3Cr−3Al−3Sn、Ti−15Mo−5Zr−3Al、Ti−15Mo−5Zr、Ti−13V−11Cr−3Al等を用いることができる。
【0030】
第1の多機能材の製造においては、炭化水素、特にアセチレンを主成分とするガスの燃焼炎を用いることができ、特に還元炎を利用することが望ましい。第1の多機能材の製造においてはこの炭化水素を主成分とするガスとは炭化水素を少なくとも50容量%含有するガスを意味し、例えば、アセチレンを少なくとも50容量%含有し、適宜、空気、水素、酸素等を混合したガスを意味する。この多機能材の製造においては、炭化水素を主成分とするガスがアセチレンを50容量%以上含有することが好ましく、炭化水素がアセチレン100%であることが最も好ましい。不飽和炭化水素、特に三重結合を有するアセチレンを用いた場合には、その燃焼の過程で、特に還元炎部分で、不飽和結合部分が分解して中間的なラジカル物質が形成され、このラジカル物質は活性が強いので炭素ドープが生じ易いと考えられる。
【0031】
第1の多機能材の製造において、加熱処理する基体の表面層がチタン又はチタン合金である場合には、該チタン又はチタン合金を酸化する酸素が必要であり、その分だけ空気又は酸素を含んでいる必要がある。
【0032】
第1の多機能材の製造においては、表面層がチタン、チタン合金、チタン合金酸化物又は酸化チタンからなる基体の表面を、炭化水素を主成分とするガスの燃焼炎を用いて高温で加熱処理するが、この場合に、基体の表面に炭化水素を主成分とするガスの燃焼炎を直接当てて高温で加熱処理しても、そのような基体の表面を炭化水素を主成分とするガスの燃焼ガス雰囲気中で高温で加熱処理してもよく、この加熱処理は例えば炉内で実施することができる。燃焼炎を直接当てて高温で加熱処理する場合には、上記のような燃料ガスを炉内で燃焼させ、その燃焼炎を該基体の表面に当てればよい。燃焼ガス雰囲気中で高温で加熱処理する場合には、上記のような燃料ガスを炉内で燃焼させ、その高温の燃焼ガス雰囲気を利用する。
【0033】
加熱処理については、基体の表面温度が900〜1500℃、好ましくは1000〜1200℃となり、基体の表面層として炭素がTi−C結合の状態でドープされた炭素ドープ酸化チタン層が形成されるように加熱処理する必要がある。基体の表面温度が900℃未満で終わる加熱処理の場合には、得られる炭素ドープ酸化チタン層を有する基体の耐久性は不十分となり、且つ可視光下での光触媒活性も不十分となる。一方、基体の表面温度が1500℃を超える加熱処理の場合には、加熱処理後の冷却時にその基体表面部から極薄膜の剥離が生じ、第1の発明で目的としている耐久性(高硬度、耐スクラッチ性、耐磨耗性、耐薬品性、耐熱性)の効果が得られない。又、基体の表面温度が900〜1500℃の範囲内となる加熱処理の場合であっても、加熱処理時間が長くなると、加熱処理後の冷却時にその基体表面部から極薄膜の剥離が生じ、第1の発明で目的としている耐久性(高硬度、耐スクラッチ性、耐磨耗性、耐薬品性、耐熱性)の効果が得られないので、加熱処理後の冷却時にその基体表面部に剥離をもたらさない程度の時間であることが必要である。即ち、その加熱処理時間は該表面層を炭素がTi−C結合の状態でドープされた炭素ドープ酸化チタン層とするのに十分な時間であるが加熱後の冷却時にその基体表面部からの極薄膜の剥離をもたらすことのない時間である必要がある。この加熱処理時間は加熱温度と相関関係にあるが、約400秒以下であることが好ましい。
【0034】
第1の多機能材の製造においては、加熱温度及び加熱処理時間を調整することにより炭素を0.3〜15at%、好ましくは1〜10at%含有する炭素がTi−C結合の状態でドープされた炭素ドープ酸化チタン層を比較的容易に得ることができる。炭素のドープ量が少ない場合には炭素ドープ酸化チタン層は透明であり、炭素のドープ量が増えるに従って炭素ドープ酸化チタン層は半透明、不透明となる。従って、透明な板状心材の上に透明な炭素ドープ酸化チタン層を形成することにより耐久性(高硬度、耐スクラッチ性、耐磨耗性、耐薬品性、耐熱性)に優れ且つ可視光応答型光触媒として機能する透明板を得ることができ、また、表面に有色模様を有する板上に透明な炭素ドープ酸化チタン層を形成することにより耐久性(高硬度、耐スクラッチ性、耐磨耗性、耐薬品性、耐熱性)に優れ且つ可視光応答型光触媒として機能する化粧板を得ることができる。なお、少なくとも表面層がチタン、チタン合金、チタン合金酸化物又は酸化チタンからなる基体が表面部形成層と心材とで構成されていてその表面部形成層の厚さが500nm以下である場合には、その表面部形成層の融点近傍まで加熱すると、海に浮かぶ多数の小島状の起伏が表面に生じて半透明となる。
【0035】
炭素がTi−C結合の状態でドープされた炭素ドープ酸化チタン層を有する多機能材においては、炭素ドープ酸化チタン層の厚さは10nm以上であることが好ましく、高硬度、耐スクラッチ性、耐摩耗性を達成するためには50nm以上であることが一層好ましい。炭素ドープ酸化チタン層の厚さが10nm未満である場合には、得られる炭素ドープ酸化チタン層を有する多機能材の耐久性は不十分となる傾向がある。炭素ドープ酸化チタン層の厚さの上限については、コストと達成される効果とを考慮する必要があるが、特に制限されるものではない。
【0036】
第1の多機能材の炭素ドープ酸化チタン層は、前記した非特許文献3に記載されているような化学修飾酸化チタンや、従来から提案されている種々の原子又はアニオンXをドープしてなるチタン化合物Ti−O−Xを含有する酸化チタンとは異なり、炭素を比較的多量に含有し、ドープされた炭素がTi−C結合の状態で含まれている。この結果として、耐スクラッチ性、耐磨耗性等の機械的強度が向上し、ビッカース硬度が著しく増大すると考えられる。また、耐熱性も向上する。
【0037】
第1の多機能材の炭素ドープ酸化チタン層は、300以上、好ましくは500以上、さらに好ましくは700以上、最も好ましくは1000以上のビッカース硬度を有している。1000以上のビッカース硬度は硬質クロムめっきの硬度よりも固いものである。従って、第1の多機能材は、従来硬質クロムめっきが利用されていた種々のものに有意に利用できる。
【0038】
第1の多機能材の炭素ドープ酸化チタン層は、紫外線は勿論、400nm以上の波長の可視光にも応答し、光触媒として有効に作用するものである。従って、第1の多機能材は可視光応答型光触媒として使用することができ、室外は勿論、室内でも光触媒機能を発現する。また、第1の多機能材の炭素ドープ酸化チタン層は接触角3°以下の超親水性を示す。
【0039】
更に、第1の多機能材の炭素ドープ酸化チタン層は耐薬品性にも優れており、1M硫酸及び1M水酸化ナトリウムのそれぞれの水溶液に一週間浸漬した後、皮膜硬度、耐摩耗性及び光電流密度を測定し、処理前の測定値と比較したところ、有為な変化はみられなかった。因みに、市販の酸化チタン皮膜については、一般的にはバインダーはその種類によって酸又はアルカリに溶解するので膜が剥離してしまい、耐酸性、耐アルカリ性がほとんどない。
【0040】
本発明の車両用部品に使用される第2の多機能材は、少なくとも表面層がチタン、酸化チタン、チタン合金又はチタン合金酸化物からなる基体の表面を例えば不飽和炭化水素、特にアセチレンの燃焼炎で加熱処理して、該表面層内部に酸化チタン又はチタン合金酸化物からなる微細柱が林立している層を形成させ、次いで、例えば熱応力、剪断応力、引張力を与えて、該微細柱が林立している層を該表面層に沿う方向で切断させて該基体上の少なくとも一部に、普通には該基体上の大部分に該酸化チタン又はチタン合金酸化物からなる微細柱が林立している層が露出している部材と、薄膜上に酸化チタン又はチタン合金酸化物からなる多数の連続した狭幅突起部及び該突起部上に林立している微細柱が露出している部材とを得ることにより製造できる。
【0041】
この少なくとも表面層がチタン、酸化チタン、チタン合金又はチタン合金酸化物からなる基体は、その基体の全体がチタン、酸化チタン、チタン合金又はチタン合金酸化物の何れかで構成されていてもよく、或いはチタン、酸化チタン、チタン合金又はチタン合金酸化物からなる表面部形成層とその他の材質からなる心材とで構成されていてもよい。また、その基体の形状については、光触媒活性及び/又は超親水性が望まれる如何なる最終商品形状(平板状や立体状)であってもよい。
【0042】
少なくとも表面層がチタン、酸化チタン、チタン合金又はチタン合金酸化物からなる基体が、チタン、酸化チタン、チタン合金又はチタン合金酸化物からなる表面部形成層とその他の材質からなる心材とで構成されている場合には、その表面部形成層の厚さ(量)は形成される酸化チタン又はチタン合金酸化物からなる微細柱が林立している層の量に匹敵する厚さであっても(即ち、表面部形成層全体が酸化チタン又はチタン合金酸化物からなる微細柱が林立している層となる)、それより厚くてもよい(即ち、表面部形成層の厚さ方向の一部が酸化チタン又はチタン合金酸化物からなる微細柱が林立している層となり、残部が変化しないでそのまま残る)。また、その心材の材質は第2の多機能材の製造における加熱処理の際に燃焼したり、溶融したり、変形したりするものでなければ、特に制限されることはない。例えば、心材として鉄、鉄合金、非鉄合金、ガラス、セラミックス、その他の陶磁器を用いることができる。このような薄膜状の表面層と心材とで構成されている基体としては、第1の発明で記載されたものと、同様のものを使用することができる。この表面層の厚さについては好ましくは0.5μm以上、より好ましくは4μm以上である。
【0043】
チタン合金としては、公知の種々のチタン合金を用いることができ、特に制限されることはなく、第1の多機能材と同様のものが用いられる。
【0044】
第2の多機能材の製造においては、例えば、不飽和炭化水素、特にアセチレンを主成分とするガスの燃焼炎を用い、特に還元炎を利用することが望ましい。第2の多機能材の製造においては不飽和炭化水素を少なくとも50容量%含有するガス、例えば、アセチレンを少なくとも50容量%含有し、適宜、空気、水素、酸素等を混合したガスを用いることが好ましい。第2の多機能材の製造においては、燃料成分がアセチレン100%であることが最も好ましい。不飽和炭化水素、特に三重結合を有するアセチレンを用いた場合には、その燃焼の過程で、特に還元炎部分で、不飽和結合部分が分解して中間的なラジカル物質が形成され、このラジカル物質は活性が強いので炭素ドープが生じ易く、ドープされた炭素がTi−C結合の状態で含まれる。このように微細柱に炭素ドープが生じると微細柱の硬度が高くなり、結果として多機能材の硬度、耐磨耗性等の機械的強度が向上し、耐熱性も向上する。
【0045】
第2の多機能材の製造においては、表面層がチタン、酸化チタン、チタン合金又はチタン合金酸化物からなる基体の表面に燃焼炎を直接当てて加熱処理するか、又は該基体の表面を燃焼排ガス雰囲気中で加熱処理するのであるが、この加熱処理は例えばガスバーナーにより、或いは炉内で実施することができる。燃焼炎を直接当てて高温で加熱処理する場合には、ガスバーナーにより、その燃焼炎を該基体の表面に当てればよい。燃焼排ガス雰囲気中で高温で加熱処理する場合には、上記のような燃料ガスを炉内で燃焼させ、その高温の燃焼排ガスを含む雰囲気を利用すればよい。
【0046】
加熱処理については、少なくとも表面層がチタン、酸化チタン、チタン合金又はチタン合金酸化物からなる該表面層内部に酸化チタン又はチタン合金酸化物からなる微細柱が林立している層を形成させ、次いで、例えば熱応力、剪断応力、引張力を与えて、該微細柱が林立している層を該表面層に沿う方向で切断させて該基体上の少なくとも一部に該酸化チタン又はチタン合金酸化物からなる微細柱が林立している層が露出している部材と、薄膜上に該酸化チタン又はチタン合金酸化物からなる多数の連続した幅狭突起部及び該突起部上に林立している微細柱が露出している部材とを得ることが可能なように、加熱温度、加熱処理時間を調整する必要がある。この加熱処理は600℃以上の温度で実施することが好ましい。
【0047】
このような条件下で加熱処理することにより、微細柱が林立している層の高さが1〜20μm程度であり、その上の薄膜の厚さが0.1〜10μm程度であり、微細柱の平均太さが0.2〜3μm程度である中間体が形成される。その後に、例えば熱応力、剪断応力、引張力を与えて、該微細柱が林立している層を該表面層に沿う方向で切断させることにより、該基体上の少なくとも一部に該酸化チタン又はチタン合金酸化物からなる微細柱が林立している層が露出している部材(即ち、基体上の微細柱が林立している層の上に存在していた薄膜の全部又は大部分が剥離するが、微細柱が林立している層の上に存在していた薄膜の一部が剥離しないで残ることがある)と、薄膜上に酸化チタン又はチタン合金酸化物からなる多数の連続した狭幅突起部及び該突起部上に林立している微細柱が露出している部材とを得る。
【0048】
熱応力を与えて微細柱が林立している層を表面層に沿う方向で切断させる場合には、例えば、基体の表面及び裏面の何れか一方を冷却するか、又は加熱することにより基体の表面と裏面との間に温度差を設ける。この冷却方法として例えば上記の熱い中間体の表面又は裏面の何れかを冷却用物体、例えばステンレスブロックと接触させるか、冷気(常温の空気)を上記の熱い中間体の表面又は裏面の何れかに吹き付ける。上記の熱い中間体を放冷しても熱応力が生じるが、その程度は低い。
【0049】
剪断応力を与えて微細柱が林立している層を表面層に沿う方向で切断させる場合には、例えば、上記の中間体の表面及び裏面に摩擦力により相対的に逆方向の力を与える。また、引張力を与えて微細柱が林立している層を表面層に沿う方向で切断させる場合には、例えば、真空吸着盤等を用いて上記の中間体の表面及び裏面をそれらの面の垂直方向で逆方向に引張る。なお、基体上の少なくとも一部に該酸化チタン又はチタン合金酸化物からなる微細柱が林立している層が露出している部材のみを利用する場合には、上記の中間体の薄膜上に酸化チタン又はチタン合金酸化物からなる多数の連続した狭幅突起部及び該突起部上に林立している微細柱が露出している部材に相当する部分を研磨、スパッタリング等によって除去することもできる。
【0050】
上記のようにして得られた基体上の少なくとも一部に酸化チタン又はチタン合金酸化物からなる微細柱が林立している層が露出している部材においては、微細柱が林立している層を表面層に沿う方向で切断させた微細柱の高さ位置によって微細柱が林立している層の高さが変化するが、微細柱が林立している層の高さは一般的には1〜20μm程度であり、微細柱の平均太さが0.5〜3μm程度である。この部材はVOCを容易に吸着でき、表面積が大きいので光触媒としての活性が高く、更には皮膜硬度も高く、耐剥離性、耐摩耗性、耐薬品性、耐熱性にも優れた多機能材である。
【0051】
一方、上記のようにして得られた薄膜上に酸化チタン又はチタン合金酸化物からなる多数の連続した狭幅突起部及び該突起部上に林立している微細柱が露出している部材は小片状となり、各小片上の突起部の高さは2〜12μm程度であり、該微細柱の高さは微細柱が林立している層を表面層に沿う方向で切断させた微細柱の高さ位置によって変化するが、微細柱が林立している層の高さは一般的には1〜5μm程度であり、微細柱の平均太さが0.2〜0.5μm程度である。しかし、微細柱が林立している層を表面層に沿う方向で切断させる条件によっては微細柱がほとんど存在しないで多数の連続した幅狭突起部が露出している場合もある。この部材もVOCを吸着でき、表面積が大きいので光触媒としての活性が高い。また、この部材はそのまま用いることも粉砕して用いることもでき、その粉砕物もVOCを容易に吸着でき、表面積が大きいので光触媒としての活性が高い。
【0052】
第2の多機能材においては、酸化チタン又はチタン合金酸化物からなる微細柱、多数の連続した狭幅突起部及び該突起部上に林立している微細柱が炭素ドープされているので、紫外線は勿論、400nm以上の波長の可視光にも応答し、光触媒として特に有効に作用し、可視光応答型光触媒として使用することができ、室外は勿論、室内でも光触媒機能を発現する。
【0053】
第2の多機能材を構成する酸化チタン又はチタン合金酸化物からなる微細柱が林立している層の各々の微細柱の形状については、図10及び図13の顕微鏡写真から判断されるように、角柱状、円柱状、角錐状、円錐状、逆角錐状若しくは逆円錐状等で、基板の表面とは直角方向又は傾斜した方向に真っ直ぐ伸びているもの、湾曲又は屈曲しながら伸びているもの、枝状に分岐して伸びているもの、それらの複合体状のもの等がある。また、その全体形状としては、霜柱状、起毛カーペット状、珊瑚状、列柱状、積木で組み立てられた柱状等の種々の表現で示すことができる。また、それらの微細柱の太さ、高さ、その付け根(底面)の大きさ等は加熱条件等により変化する。
【0054】
薄膜状に酸化チタン又はチタン合金酸化物からなる多数の連続した狭幅突起部及び該突起部上に林立している微細柱が露出している部材は、図12の顕微鏡写真から判断されるように、その多数の連続した幅狭突起部はクルミの殻の外側の外見、軽石の外見をしていると見ることができ、また各々の連続した狭幅突起部は湯じわやちぢみ状の模様が屈曲していると見ることができる。また、該突起部上に林立している微細柱の形状は上記した基体上の微細柱が林立している層の各々の微細柱の形状と同様であるが、微細柱と薄膜との接合部で切断されるものが多いので、該突起部上に林立している微細柱の密度は上記の基体上の微細柱が林立している層の微細柱の密度よりも一般的に小さくなる。
【実施例】
【0055】
以下に、実施例及び比較例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。
【0056】
[実施例1〜3]
アセチレンの燃焼炎を用い、厚さ0.3mmのチタン板をその表面温度が約1100℃となるように加熱処理することにより、表面層として炭素がTi−C結合の状態でドープされた炭素ドープ酸化チタン層を有するチタン板を形成した。1100℃での加熱処理時間をそれぞれ5秒(実施例1)、3秒(実施例2)、1秒(実施例3)に調整することにより炭素ドープ量及び炭素ドープ酸化チタン層の厚さが異なる炭素ドープ酸化チタン層を有するチタン板を形成した。
【0057】
この実施例1〜3で形成された炭素がTi−C結合の状態でドープされた炭素ドープ酸化チタン層について蛍光X線分析装置で炭素含有量を求めた。その炭素含有量に基づいてTiO2-xCxの分子構造を仮定すると、実施例1については炭素含有量8at%、TiO1. 76C0.24、実施例2については炭素含有量約3.3at%、TiO1.90C0.10、実施例3については炭素含有量1.7at%、TiO1.95C0.05であった。また、実施例1〜3で形成された炭素がTi−C結合の状態でドープされた炭素ドープ酸化チタン層は、水滴との接触角が2°程度の超親水性であった。
【0058】
[比較例1]
市販されている酸化チタンゾル(石原産業製STS−01)を厚さ0.3mmのチタン板にスピンコートした後、加熱して密着性を高めた酸化チタン皮膜を有するチタン板を形成した。
【0059】
[比較例2]
SUS板上に酸化チタンがスプレーコートされている市販品を比較例2の酸化チタン皮膜を有する基体とした。
【0060】
試験例1(ビッカース硬度)
実施例1の炭素がTi−C結合の状態でドープされた炭素ドープ酸化チタン層及び比較例1の酸化チタン皮膜について、ナノハードネステスター(NHT)(スイスのCSM Instruments製)により、圧子:ベルコビッチタイプ、試験荷重:2mN、負荷除荷速度:4mN/minの条件下で皮膜硬度を測定したところ、実施例1の炭素がTi−C結合の状態でドープされた炭素ドープ酸化チタン層はビッカース硬度が1340と高い値であった。一方、比較例1の酸化チタン皮膜のビッカース硬度は160であった。
【0061】
これらの結果を図1に示す。なお、参考のため、硬質クロムメッキ層及びニッケルメッキ層のビッカース硬度の文献値(友野、「実用めっきマニュアル」、6章、オーム社(1971)から引用)を併せて示す。実施例1の炭素がTi−C結合の状態でドープされた炭素ドープ酸化チタン層は、ニッケルメッキ層や硬質クロムメッキ層よりも高硬度であることは明らかである。
【0062】
試験例2(耐スクラッチ性)
実施例1の炭素がTi−C結合の状態でドープされた炭素ドープ酸化チタン層及び比較例1の酸化チタン皮膜について、マイクロスクラッチテスター(MST)(スイスのCSM Instruments製)により、圧子:ロックウェル(ダイヤモンド)、先端半径200μm、初期荷重:0N、最終荷重:30N、負荷速度:50N/min、スクラッチ長:6mm、ステージ速度:10.5mm/minの条件下で耐スクラッチ性試験を実施した。スクラッチ痕内に小さな膜の剥離が起こる「剥離開始」荷重及びスクラッチ痕全体に膜の剥離が起こる「全面剥離」荷重を求めた。その結果は第1表に示す通りであった。
【表1】

【0063】
この表からも明らかなように、実施例Aの炭素ドープ酸化チタン表層が比較例1の酸化チタン皮膜よりも耐スクラッチ性に優れていることが分かる。
【0064】
試験例3(耐摩耗性)
実施例1の炭素がTi−C結合の状態でドープされた炭素ドープ酸化チタン層及び比較例1の酸化チタン皮膜について、高温トライボメーター(HT−TRM)(スイスのCSM Instruments製)により、試験温度:室温及び470℃、ボール:直径12.4mmのSiC球、荷重:1N、摺動速度:20mm/sec、回転半径:1mm、試験回転数:1000回転の条件下で摩耗試験を実施した。
【0065】
この結果、比較例1の酸化チタン皮膜については、室温及び470℃の両方について剥離が発生したが、実施例1の炭素がTi−C結合の状態でドープされた炭素ドープ酸化チタン層については、室温及び470℃の両方の条件下で有意なトレース摩耗は検出されなかった。
【0066】
試験例4(耐薬品性)
実施例1の炭素がTi−C結合の状態でドープされた炭素ドープ酸化チタン層を有するチタン板を1M硫酸水溶液及び1M水酸化ナトリウム水溶液にそれぞれ室温で1週間浸漬した後、上記の皮膜硬度、耐摩耗性、及び後記する光電流密度を測定したところ、浸漬の前後で、結果に有意な差は認められなかった。即ち、実施例1の炭素がTi−C結合の状態でドープされた炭素ドープ酸化チタン層は高い耐薬品性を有することが認められた。
【0067】
試験例5(炭素がTi−C結合の状態でドープされた炭素ドープ酸化チタン層の構造)
実施例1の炭素がTi−C結合の状態でドープされた炭素ドープ酸化チタン層について、X線光電子分光分析装置(XPS)で、加速電圧:10kV、ターゲット:Alとし、2700秒間Arイオンスパッタリングを行い、分析を開始した。このスパッタ速度がSiO2膜相当の0.64Å/sとすると、深度は約173nmとなる。そのXPS分析の結果を図2に示す。結合エネルギーが284.6eVである時に最も高いピークが現れる。これはCls分析に一般的に見られるC−H(C)結合であると判断される。次に高いピークが結合エネルギー281.7eVである時に見られる。Ti−C結合の結合エネルギーが281.6eVであるので、実施例1の炭素ドープ酸化チタン層中ではCがTi−C結合としてドープされていると判断される。なお、炭素ドープ酸化チタン層の深さ方向の異なる位置の11点でXPS分析を行った結果、全ての点で281.6eV近傍に同様なピークが現れた。
【0068】
また、炭素ドープ酸化チタン層と基体との境界でもTi−C結合が確認された。従って、炭素ドープ酸化チタン層中のTi−C結合により硬度が高くなっており、また、炭素ドープ酸化チタン層と基体との境界でのTi−C結合により皮膜剥離強度が著しく大きくなっていることが予想される。
【0069】
試験例6(波長応答性)
実施例1〜3の炭素がTi−C結合の状態でドープされた炭素ドープ酸化チタン層及び比較例1、2の酸化チタン皮膜の波長応答性をOriel社のモノクロメーターを用いて測定した。具体的には、それぞれの層、皮膜に対し、0.05M硫酸ナトリウム水溶液中で対極との間に電圧を0.3V印加し、光電流密度を測定した。
【0070】
その結果を図3に示す。図3には、得られた光電流密度jpを照射波長に対して示してある。実施例1〜3の炭素がTi−C結合の状態でドープされた炭素ドープ酸化チタン層の波長吸収端は、490nmに及んでおり、炭素ドープ量の増大に伴って光電流密度が増大することが認められた。なお、ここには示していないが、炭素ドープ量が10at%を越えると電流密度が減少する傾向になり、さらに15at%を越えるとその傾向は顕著になることがわかった。よって、炭素ドープ量が1〜10at%程度に最適値があることが認められた。一方、比較例1、2の酸化チタン皮膜では、光電流密度が著しく小さく、且つ波長吸収端も410nm程度であることが認められた。
【0071】
試験例7(光エネルギー変換効率)
実施例1〜3の炭素がTi−C結合の状態でドープされた炭素ドープ酸化チタン層及び比較例1、2の酸化チタン皮膜について、式
η=jp(Ews−Eapp)/I
で定義される光エネルギー変換効率ηを求めた。ここで、Ewsは水の理論分解電圧(=1.23V)、Eappは印加電圧(=0.3V)、Iは照射光強度である。この結果を図4に示す。図4は光エネルギー変換効率ηを照射光波長に対して示してある。
【0072】
図4から明らかなように、実施例1〜3の炭素がTi−C結合の状態でドープされた炭素ドープ酸化チタン層の光エネルギー変換効率は著しく高く、波長450nm付近での変換効率が比較例1、2の酸化チタン皮膜の紫外線領域(200〜380nm)での変換効率より優れていることが認められた。また、実施例1の炭素がTi−C結合の状態でドープされた炭素ドープ酸化チタン層の水分解効率は、波長370nmで約8%であり、350nm以下では10%を越える効率が得られることがわかった。
【0073】
試験例8(消臭試験)
実施例1及び2の炭素がTi−C結合の状態でドープされた炭素ドープ酸化チタン層及び比較例1の酸化チタン皮膜について、消臭試験を実施した。具体的には、消臭試験に一般的に用いられるアセトアルデヒドを炭素ドープ酸化チタン層を有する基体と共に1000mlのガラス容器に封入し、初期の吸着による濃度減少の影響が無視できるようになってから、UVカットフィルタ付き蛍光灯にて可視光を照射し、所定の照射時間毎にアセトアルデヒド濃度をガスクロマトグラフィーで測定した。なお、各皮膜の表面積は8.0cm2とした。
【0074】
この結果を図5に示す。図5には、アセトアルデヒド濃度を可視光照射後の経過時間に対して示してある。実施例1及び2の炭素ドープ酸化チタン層のアセトアルデヒド分解速度は、比較例1の酸化チタン皮膜のアセトアルデヒド分解速度の約2倍以上の高い値となっており、また、炭素ドープ量が多く、光エネルギー変換効率の高い実施例1の炭素ドープ酸化チタン層の方が、実施例2の炭素ドープ酸化チタン層と比較して分解速度が高いことがわかった。
【0075】
試験例9(防汚試験)
実施例1の炭素ドープ酸化チタン層及び比較例1の酸化チタン皮膜について、防汚試験を実施した。各皮膜を(財)電力中央研究所内の喫煙室内に設置し、145日後の表面の汚れを観察した。なお、この喫煙室内には太陽光の直接の入射はない。
【0076】
この結果を示す写真を図6に示す。比較例1の酸化チタン皮膜の表面には脂が付着し、薄い黄色を呈していたが、実施例1の炭素ドープ酸化チタン層の表面は特に変化がみられず、清浄に保たれており、防汚効果が十分に発揮されたことが認められた。
【0077】
[実施例4〜7]
実施例1〜3と同様にアセチレンの燃焼炎を用い、厚さ0.3mmのチタン板を、第2表に示す表面温度で第2表に示す時間の間加熱処理することにより、表面層として炭素ドープ酸化チタン層を有するチタン板を形成した。
【0078】
[比較例3]
天然ガスの燃焼炎を用い、厚さ0.3mmのチタン板を、第2表に示す表面温度で第2表に示す時間の間加熱処理した。
【0079】
試験例10
実施例4〜7の炭素ドープ酸化チタン層及び比較例3の皮膜について、上記の試験例1と同様にしてビッカース硬度(HV)を測定した。それらの結果を第2表に示す。また、実施例4〜11で形成された炭素ドープ酸化チタン層は、水滴との接触角が2°程度の超親水性であった。
【表2】

【0080】
第2表に示すデータから明らかなように、天然ガスの燃焼ガスで表面温度が850℃になるように加熱処理した場合にはビッカース硬度160の皮膜しか得られなかったが、表面温度が1000℃以上になるようにアセチレンの燃焼ガスを用いて加熱処理した実施例4〜7の場合にはビッカース硬度1200の炭素ドープ酸化チタン層が得られた。
【0081】
試験例11
実施例4〜7の炭素ドープ酸化チタン層及び比較例1及び3の酸化チタン皮膜について、試験例6と同様に、0.05M硫酸ナトリウム水溶液中で対極との間に電圧を0.3V印加し、300nm〜520nmの光を照射して光電流密度を測定した。その結果を図7に示す。図7には、得られた光電流密度jpを電位ECP(V vs. SSE)に対して示してある。
【0082】
アセチレンの燃焼ガスを用いて表面温度が1000〜1200℃になるように加熱処理して得た実施例4〜6の炭素ドープ酸化チタン層は、相対的に光電流密度が大きく優れていることがわかった。一方、表面温度が850℃になるように加熱処理して得た比較例3の酸化チタン及び表面温度が1500℃になるように加熱処理して得た実施例7の炭素ドープ酸化チタン層は光電流密度が相対的に小さいことがわかった。
【0083】
[実施例8]
アセチレンの燃焼炎を用い、厚さ0.3mmのTi−6Al−4V合金板をその表面温度が約1100℃となるように加熱処理することにより、表面層が炭素ドープ酸化チタンを含有するチタン合金からなる合金板を形成した。1100℃での加熱処理時間を60秒とした。このようにして形成された炭素ドープ酸化チタンを含有する層は水滴との接触角が2°程度の超親水性であり、また実施例4で得られた炭素ドープ酸化チタン層と同様な光触媒活性を示した。
【0084】
[実施例9]
厚さ0.3mmのステンレス鋼板(SUS316)の表面にスパッタリングによって膜厚が約500nmのチタン薄膜を形成した。アセチレンの燃焼炎を用い、その表面温度が約900℃となるように加熱処理することにより、表面層として炭素ドープ酸化チタン層を有するステンレス鋼板を形成した。900℃での加熱処理時間を15秒とした。このようにして形成された炭素ドープ酸化チタン層は水滴との接触角が2°程度の超親水性であり、また、実施例4で得られた炭素ドープ酸化チタン層と同様な光触媒活性を示した。
【0085】
[実施例10]
粒径20μmの酸化チタン粉末をアセチレンの燃焼炎中に供給し、燃焼炎中に所定時間滞留させてその表面温度が約1000℃となるように加熱処理することにより、表面層として炭素ドープ酸化チタン層を有するチタン粉末を形成した。1000℃での加熱処理時間を4秒とした。このようにして形成された炭素ドープ酸化チタン層を有するチタン粉末、実施例4で得られた炭素ドープ酸化チタン層と同様な光触媒活性を示した。
【0086】
[実施例11〜12]
厚さ1mmのガラス板(パイレックス(登録商標))の表面にスパッタリングによって膜厚が約100nmのチタン薄膜を形成した。アセチレンの燃焼炎を用い、その表面温度が1100℃(実施例11)、又は1500℃(実施例12)となるように加熱処理することにより、表面層として炭素ドープ酸化チタン層を有するガラス板を形成した。1100℃、又は1500℃での加熱処理時間を10秒とした。このようにして形成された炭素ドープ酸化チタン層は表面温度が1100℃の場合には図8(a)に写真で示すように透明であったが、表面温度が1500℃の場合には図9に示すように海に浮かぶ多数の小島状の起伏が表面に生じており、図8(b)に示すように半透明となった。
【0087】
[実施例13〜16]
厚さ0.3mmのチタン板の表面を、アセチレンの燃焼炎により、第3表に示す表面層温度で第3表に示す時間加熱処理した。その後その燃焼炎を当てた表面を厚さ30mmのステンレスブロックの平らな面と接触させて冷却すると、チタン板表面の大部分に白色の酸化チタンからなる微細柱が林立している層が露出している部材と、薄膜上に白色の酸化チタンからなる多数の連続した狭幅突起部及び該突起部上に林立している微細柱が露出している小片部材とに分離した。即ち、加熱処理で表面層内部に形成された酸化チタンからなる微細柱が林立している層がその後の冷却で該微細柱が林立している層が該表面層に沿う方向で切断された。このようにして実施例13〜16を得た。
【0088】
図10は、実施例13で得られた部材の顕微鏡写真であり、チタン板表面1上に白色の酸化チタンからなる微細柱が林立している層2が露出しており、薄膜上に白色の酸化チタンからなる多数の連続した狭幅突起部及び該突起部上に林立している微細柱が露出している小片部材3がその層2上の一部に残っているの状態を示している。なお、実施例13〜16の製造法ではチタン板表面1は露出しないが、図10の顕微鏡写真は微細柱が林立している層2の一部を除去した状態を示している。図11は薄膜上に白色の酸化チタンからなる多数の連続した狭幅突起部及び該突起部上に林立している微細柱が露出している小片部材3の薄膜側表面の状態を示す顕微鏡写真であり、図12は薄膜上に白色の酸化チタンからなる多数の連続した狭幅突起部及び該突起部上に林立している微細柱が露出している小片部材3の多数の連続した狭幅突起部及び該突起部上に林立している微細柱が露出している側の表面の状態示す顕微鏡写真であり、図13は白色の酸化チタンからなる微細柱が林立している層2の状態を示す顕微鏡写真である。
【0089】
[実施例17]
厚さ0.3mmのTi−6Al−4V合金板の表面を、アセチレンの燃焼炎により、第3表に示す表面層温度で第3表に示す時間加熱処理した。その後その燃焼炎を当てた表面を厚さ30mmのステンレスブロックの平らな面と接触させて冷却すると、チタン合金板表面の大部分にチタン合金酸化物からなる微細柱が林立している層が露出している部材と、薄膜上にチタン合金酸化物からなる多数の連続した狭幅突起部及び該突起部上に林立している微細柱が露出している小片部材とに分離した。
【0090】
[実施例18]
厚さ0.3mmのステンレス鋼板(SUS316)の表面に電子ビーム蒸着によって膜厚が約3μmのチタン薄膜を形成した。その薄膜表面を、アセチレンの燃焼炎により、第3表に示す表面層温度で第3表に示す時間加熱処理した。その後その燃焼炎を当てた表面を厚さ30mmのステンレスブロックの平らな面と接触させて冷却すると、ステンレス鋼板表面の大部分に白色の酸化チタンからなる微細柱が林立している層が露出している部材と、薄膜上に白色の酸化チタンからなる多数の連続した狭幅突起部及び該突起部上に林立している微細柱が露出している小片部材とに分離した。
【0091】
[比較例4]
市販されている酸化チタンゾル(石原産業製STS−01)を厚さ0.3mmのチタン板にスピンコートした後、加熱して密着性を高めた酸化チタン皮膜を有するチタン板を形成した。
【0092】
試験例12(引っかき硬度試験:鉛筆法)
実施例13〜18で得られた基板表面に微細柱が林立している層が露出している部材の微細柱側表面について、JIS K 5600−5−4(1999)に基づき、三菱鉛筆株式会社製ユニ1H〜9H鉛筆を用いて鉛筆引っかき硬度試験を実施した。その結果は第3表に示す通りであった。即ち、全ての試験片について9Hの鉛筆を用いた場合にも損傷は認められなかった。
【0093】
試験例13(耐薬品性試験)
実施例13〜18で得られた基板表面に微細柱が林立している層が露出している部材を1M硫酸水溶液及び1M水酸化ナトリウム水溶液にそれぞれ室温で1週間浸漬し、水洗し、乾燥させた後、上記の引っかき硬度試験:鉛筆法を実施した。その結果は第3表に示す通りであった。即ち、全ての試験片について9Hの鉛筆を用いた場合にも損傷は認められず、高い耐薬品性を有することが認められた。
【0094】
試験例14(耐熱性試験)
実施例13〜18で得られた基板表面に微細柱が林立している層が露出している部材を管状炉内に入れ、大気雰囲気下で室温から1時間かけて500℃まで昇温させ、500℃の恒温で2時間保持し、更に1時間かけて室温まで静置冷却した後、上記の引っかき硬度試験:鉛筆法を実施した。その結果は第3表に示す通りであった。即ち、全ての試験片について9Hの鉛筆を用いた場合にも損傷は認められず、高い耐熱性を有することが認められた。
【表3】

【0095】
試験例15(防汚試験)
試料として、実施例16で得られた基板表面に微細柱が林立している層が露出している表面積8cm2の部材及び比較例4で得られた酸化チタン皮膜を有する表面積8cm2のチタン板を用いて防汚試験を実施した。具体的には、それらの試料をそれぞれ、約10μmol/Lの濃度に調整したメチレンブルー水溶液80mL中に浸漬し、初期の吸着による濃度減少の影響が無視できるようになってから、松下電器産業株式会社製のUVカットフィルター付き蛍光灯により可視光を照射し、所定の照射時間毎に波長660nmにおけるメチレンブルー水溶液の吸光度をHACH社製水質検査装置DR/2400で測定した。その結果は図14に示す通りであった。
【0096】
図14から、実施例16で得られた基板表面に微細柱が林立している層が露出している部材は、比較例4で得られた酸化チタン皮膜を有するチタン板に比較して、メチレンブルーの分解速度が速く、防汚効果が高いことが分かる。
【0097】
試験例16(結晶構造と結合状態)
実施例15で得られた基板表面に微細柱が林立している層が露出している部材の微細柱から得た試料についてX線解析(XRD)を行った結果、ルチル型の結晶構造を有することが判明した。
【0098】
また、実施例15で得られた基板表面に微細柱が林立している層が露出している部材の微細柱部分について、X線光電子分光分析装置(XPS)で、加速電圧:10kV、ターゲット:Alとし、2700秒間Arイオンスパッタリングを行い、分析を開始した。このスパッタ速度がSiO2膜相当の0.64Å/sとすると、深度は約173nmとなる。そのXPS分析の結果は図15に示す通りであった。結合エネルギーが284.6eVである時に最も高いピークが現れる。これはCls分析に一般的に見られるC−H(C)結合であると判断される。次に高いピークが結合エネルギー281.6eVである時に見られる。Ti−C結合の結合エネルギーが281.6eVであるので、実施例15の微細柱中ではCがTi−C結合としてドープされていると判断される。なお、微細柱の高さ位置の異なる位置の14点でXPS分析を行った結果、全ての点で281.6eV近傍に同様なピークが現れた。
【0099】
[実施例19]
試験片として直径32mm、厚さ0.3mmの円板を用い、その表面を表面温度が約1150℃に維持されるようにアセチレンの燃焼炎により加熱した。第一の試験片については加熱時間120秒の時点で加熱を止めて放冷した。第二の試験片については180秒の時点で加熱を止めて放冷した。第三の試験片については480秒間加熱し、直ちにその燃焼炎を当てた表面を厚さ30mmのステンレスブロックの平らな面と接触させて冷却した。この冷却によりチタン板表面から薄膜が剥離し、その下から白色の酸化チタンからなる微細柱が林立している層が露出している部材が得られた。これらの3枚の試験片について、セイコーインスツルメンツ社製FIB−SEM装置SMI8400SEを用いて試験片表面に3μm×12μmで深さ10μmの穴を掘り、その側面及び底面をキーエンス社製SEM装置VE7800により観察を行った。120秒後の試験片のSEM写真は図16であり、180秒後の試験片のSEM写真は図17であり、480秒後の試験片のSEM写真は図18である。180秒後の図17では皮膜下部に微細柱構造の兆候が現れ始めており、更に火炎処理を続けることで微細柱長く伸びて本発明で目的とするような微細柱構造が形成されると考えられる。
【0100】
[具体例]
以下に、第1の発明および第2の発明として形成される車両用部品の具体例について説明する。
【0101】
本発明の車両用部品には、例えば自動車、オートバイ、自転車の駆動部品、ボディ、装飾品、外装品、内装品など、車両用を構成する各種の部品が含まれる。特に、その設置部位や機能などによって、耐久性(高硬度、耐スクラッチ性、耐磨耗性、耐薬品性、耐熱性)や優れた光触媒効果が求められる部品が、本発明の車両用部品に含まれる。
【0102】
具体的には、本発明の車両用部品として、例えば、自動車、オートバイ又は自転車等の車両のエキゾーストパイプキャップ、マフラー、ホイールキャップ、光シリンダーヘッド、コンロッド、エンジンバルブ、ブレーキパッド、スプロケット、各種ベアリング、タイヤハウジングモール、スタビライザ、アウトリガー、ドアの下部に設けられるステップ、フロントグリル、ワイパを構成する金具、ルーフキャリア、ルーフモール、アンダーモール、クールパネル、魚搬送バン、トラックのバン、バン用エアピュリファイア、光オイルエレメントユニット、光エアーインテークエレメントなどが挙げられる。
【0103】
エキゾーストパイプキャップは、エキゾーストパイプにおける排気ガスの出口部分に使用されるキャップである。エキゾーストパイプにおける排気ガスの出口部分は、ススによって汚れ易いため、頻繁に洗浄することが必要になっている。このため、エキゾーストパイプキャップを上述した車両用部品材によって形成するようにすれば、防汚の効果を得ることができるため、頻繁に洗浄を行わなくても、清潔な状態を維持することができるようになる。これと同様にマフラー内部に上述の部材を採用することでこの部分へのススの付着を抑制することができ、またマフラーの外周面にこの部材を採用してやれば、マフラー外周面に傷や汚れを付きにくくしてやることができる。
【0104】
ホイールキャップは、自動車の車輪の外側取り付け部につける円盤状のおおいである。締め付けボルトなどを保護する役割があり、装飾をも兼ねる。ホイールカバーともいう。ホイールキャップは、ブレーキパッドやブレーキシューの磨耗ススなどにより汚れ易い。このため、上述した車両用部品材によってホイールキャップを形成するようにすれば、防汚の効果を得ることができるため、清潔な状態を維持することができ、装飾効果も維持することができるようになる。
【0105】
光シリンダーヘッドは、エンジンの頭頂部に設けられるヘッドカバーであり、装飾性が重視されているため、防汚性が求められる。この光シリンダーヘッドを上述した車両用部品材によって形成すれば、防汚の効果を得ることができるため、清潔な状態を維持することができ、装飾効果も維持することができるようになる。
【0106】
コンロッドはエンジン内部で使われる動力伝達部品であり、クランクシャフトとピストンを連結する働きを有する連結ロッドである。エンジンバルブは、シリンダ内に燃料や空気を送り込み、また、シリンダ内から排気を排出するために開閉する弁である。ブレーキパッド(ブレーキシューを含む)は、駆動輪と連結されたディスク等の摩擦面を挟止または当接することで駆動輪の回転運動を熱エネルギに変換するためのものである。スプロケットは、チェーンやベルトを使い力を伝達するための歯車のことである。ベアリングは機械の回転部分を効率良く回転させる為に用いられる部品であり、回転運動をともなう機械のほとんどに組み込まれている。これらの部品は他の部品と高速に摺動するため、これを上述した部材によって形成してやることで、その耐久性を向上させてやることができる。
【0107】
タイヤハウジングモールは、タイヤが取り付けられている部分の周囲に取り付けられた飾りであって、装飾性が重視されている。このタイヤハウジングモールを上述した車両用部品材によって形成するようにすれば、防汚の効果を得ることができるため、清潔な状態を維持することができ、装飾効果も維持することができるようになる。
【0108】
スタビライザは、自動車がカーブしているときに遠心力によって車体が傾いてしまうことを抑制するパーツであり、アンチロールバー、スウェイバーともいう。スタビライザは、例えば、自動車の左右に設けられているサスペンションアームをコの字型のバネ鋼で連結し、自動車が傾いたときに発生するバネ鋼のねじれの反発を利用して、自動車の傾きを抑制する。このスタビライザを上述した車両用部品材によって形成するようにすれば、スタビライザを清潔な状態に維持することができ、上述した耐久性や優れた光触媒効果を得ることもできる。
【0109】
アウトリガーは、車台から例えば横方向に引き出されて使用される横足(例えば2本、4本)を意味し、消防車やキャンピングカーなどの大型車に搭載されることが多い。アウトリガーは、停車時における自動車の揺れ防止のために用いられる。このアウトリガーを上述した車両用部品材によって形成するようにすれば、アウトリガーを清潔な状態に維持することができ、上述した耐久性や優れた光触媒効果を得ることもできる。
【0110】
ドアの下部に設けられるステップは、乗車あるいは下車するときの足場として用いられる。このステップは、ワゴン車やトラックなどの座席が比較的高い位置にある自動車に設けられている。自動車に設けられているステップは、特に車外に設けられている場合には、道路からの跳ね返りによる汚れや、排気ガスの汚れによって黒ずんでしまう。このステップを上述した車両用部品材によって形成するようにすれば、ステップを清潔な状態に維持することができ、上述した耐久性や優れた光触媒効果を得ることもできる。
【0111】
フロントグリルは、エンジンルーム内に外気を導入するための空気取り入れ口を意味する。フロントグリルは、空気を取り込むという性質上、道路からの跳ね返りによる汚れ、排気ガスの汚れ、走行中にぶつかってこびりついた虫の死骸による汚れなどが付着する。こびりついた虫の死骸による汚れは、乾燥すると落ちにくくなってしまう。このフロントグリルを上述した車両用部品材によって形成するようにすれば、フロントグリルを清潔な状態に維持することができ、上述した耐久性や優れた光触媒効果を得ることもできる。
【0112】
ワイパは、ワイパーモータと、ワイパーリンクと、ワイパーアームと、ワイパーブレードによって構成される。なお、ワイパーブレードは、往復回転運動によりガラス面上の雨・ホコリなどを払拭する。ワイパにおけるワイパーブレードを保持する金具には、フロントグリルと同様に、各種の汚れが付着しやすい。このワイパーブレードを保持する金具を上述した車両用部品材によって形成するようにすれば、その金具を清潔な状態に維持することができ、上述した耐久性や優れた光触媒効果を得ることもできる。
【0113】
ルーフキャリアは、自動車の屋根の上に設置される荷物置台である。ルーフキャリアには、箱型のものや柵型のものがある。このルーフキャリアを上述した車両用部品材によって形成するようにすれば、ルーフキャリアを清潔な状態に維持することができ、上述した耐久性や優れた光触媒効果を得ることもできる。
【0114】
ルーフモールは、ルーフ部の左右両側に取り付けられた飾りであって、装飾のためだけでなく、雨水の流れの整流、つなぎ目の覆い、手や指などの保護、他の部品の押さえなどの役割を果たす。ルーフモールは、その装飾性が重要で、デザインの要点ともなっている。このルーフモールを上述した車両用部品材によって形成するようにすれば、ルーフモールを清潔な状態に維持することができ、上述した耐久性や優れた光触媒効果を得ることもできる。
【0115】
アンダーモールは、ドアなどの自動車のボディの下周りに配設される装飾板であり、自動車のボディの下側を路上からの飛び石などから守る機能を有する。このアンダーモールを上述した車両用部品材によって形成するようにすれば、アンダーモールを清潔な状態に維持することができるとともに、硬度が高くなるので防護性能が向上する。さらに、上述した耐久性や優れた光触媒効果を得ることもできる。
【0116】
クールパネルは、保冷車や冷凍車として用いられるバントラックの外装板である。このクールパネルを上述した車両用部品材によって形成するようにすれば、超親水性能によってクールパネルに常に水皮膜が形成されるので、防汚効果が得られるとともに、蒸発潜熱による表面温度の低下を促すことができるようになる。
【0117】
魚搬送バンは、海水や淡水とともに魚介類が入れられる水槽を備えた後部荷室である。この魚搬送バンを構成する水槽の内側を上述した車両用部品材によって形成し、バンに設置された紫外線照射部によって水槽の内側に紫外線を照射するようにすれば、魚搬送バンを構成する水槽を清潔な状態に維持することができる。よって、魚介類を生きたまま搬送する場合であっても、搬送中の鮮度や病気の伝染を防ぐことができるようになる。上記のように、バンに設置された紫外線照射部によって、炭素ドープ酸化チタン皮膜を有する水槽の内側に紫外線を照射するようにしているので、魚搬送バンに自己浄化性能を持たせることができるようになる。
【0118】
トラックのバンは、トラックを構成する後部荷室である。このトラックのバンを上述した車両用部品材によって形成するようにすれば、そのバンを清潔な状態に維持することができるとともに、優れた耐食性と強靭性によって長期的に使用することができるようになる。車台・シャーシは一般に5年〜7年で廃棄されるが、バンについては繰り返し長期的に使用することが可能となるため、新車購入時のコスト負担が軽減される。また、バンの寿命が延びるので、環境に対する負荷を大幅に低減させることができる。また、トラックのバンを上述した車両用部品材によって形成するようにすれば、冷却効果や防汚性能を付与することができるようにもなる。
【0119】
バン用エアピュリファイアは、トラックを構成する後部荷室に設置される空気清浄器である。浄化方式は、ろ過式であっても静電式であってもよい。この例においては、後部荷室の内側全面を上述した車両用部品材によって形成するとともに、バン用エアピュリファイアのフィルタとして炭素ドープ酸化チタン皮膜を有する金属チタン製のフィルタとし、さらに、後部荷室に設置された紫外線照射部によって後部荷室の内側およびバン用エアピュリファイアのフィルタに紫外線を照射するようにすれば、光触媒効果によってバン用エアピュリファイアのフィルタを浄化しながら、そのバン用エアピュリファイアによって後部荷室の空気を洗浄することができるようになる。
【0120】
また、本発明の車両用部品が、以下に示す光オイルエレメントユニットや、光エアーインテークエレメントであるとしてもよい。
【0121】
光オイルエレメントユニットは、上述した車両用部品材によって形成されたフィルタを内蔵したオイルエレメントユニット(潤滑油浄化装置)と、フィルタに紫外線を照射する紫外線照射部とを含む。従来のオイルエレメントユニットにおいては、エンジンオイルの汚れをろ過するためのフィルタが汚れると、内蔵しているそのフィルタが交換されていた。このため、フィルタの廃棄に伴う環境問題が発生していた。これに対し、上述した本例の光オイルエレメントユニットでは、炭素ドープ酸化チタン皮膜を有する金属チタン製のフィルタが用いられ、そのフィルタに紫外線照射部によって紫外線が照射されるので、光触媒効果によってフィルタが浄化されることになる。よって、フィルタの交換寿命を大幅に延ばすことができ、フィルタを長期間使用することができるようになり、環境に対する負荷を大幅に低減させることができる。また、上記の光オイルエレメントユニットにおいて、フィルタの寿命が自動車の寿命以上となるように調整(例えば紫外線照射部による紫外線の照射量などを調整する)すれば、フィルタの交換は全く不要となり、いわゆる「自己完結型」のオイルエレメントユニットを実現することができる。
【0122】
光エアーインテークエレメントは、上述した車両用部品材によって形成されたフィルタを内蔵したエアーインテークエレメントと、フィルタに紫外線を照射する紫外線照射部とを含む。従来のエアーインテークエレメントにおいては、エンジンをに送るために外部から取り込まれた空気を浄化するためのフィルタが汚れると、内蔵しているそのフィルタが交換されていた。このため、フィルタの廃棄に伴う環境問題が発生していた。これに対し、上述した本例の光エアーインテークエレメントでは、炭素ドープ酸化チタン皮膜を有する金属チタン製のフィルタが用いられ、そのフィルタに紫外線照射部によって紫外線が照射されるので、光触媒効果によってフィルタが浄化されることになる。よって、フィルタの交換寿命を大幅に延ばすことができ、フィルタを長期間使用することができるようになり、環境に対する負荷を大幅に低減させることができる。また、上記の光エアーインテークエレメントにおいて、フィルタの寿命が自動車の寿命以上となるように調整(例えば紫外線照射部による紫外線の照射量などを調整する)すれば、フィルタの交換は全く不要となり、いわゆる「自己完結型」のエアーインテークエレメントを実現することができる。
【0123】
本発明では、上記のような車両用部品の少なくとも一部が、少なくとも表面層が炭素ドープされた酸化チタン又はチタン合金酸化物からなる層を有し、該炭素がTi−C結合の状態でドープされている。
【0124】
あるいは、本発明では、上記のような車両用部品の少なくとも一部が、表面の少なくとも一部に酸化チタン又はチタン合金酸化物からなる多数の突起部を有しており、該突起部が炭素ドープされている。
【0125】
このように構成されることで、車両用部品を耐久性に優れたものとすることができ、特に、防汚を効果を有し装飾性を損なうことが防止された車両用部品や、交換寿命が大幅に延長された車両用部品などを提供することができる。
【0126】
なお、本発明の車両用部品は、上記に挙げたものに限られず、後付け防汚板、大型防汚ホイールキャップ、衛生通い箱などの他の部品であってもよい。
【符号の説明】
【0127】
1 基体の表面
2 微細柱
3 薄膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車、オートバイ、自転車等の車両の一部を構成する車両用部品であって、
基体の表面層の少なくとも一部が、炭素がTi−C結合の状態でドープされた酸化チタン又はチタン合金酸化物からなる炭素ドープ酸化チタン層を有する、ことを特徴とする車両用部品。
【請求項2】
自動車、オートバイ、自転車等の車両の一部を構成する車両用部品であって、
基体の表面層の少なくとも一部が、炭素ドープされた酸化チタン又はチタン合金酸化物からなる多数の突起部を有する炭素ドープ酸化チタン層からなる、ことを特徴とする車両用部品。
【請求項3】
自動車、オートバイ、自転車等の車両の一部を構成する車両用部品であって、
基体の表面層の少なくとも一部に、炭素ドープされた酸化チタン又はチタン合金酸化物からなる微細柱が林立している層が露出している、ことを特徴とする車両用部品。
【請求項4】
薄膜上に酸化チタン又はチタン合金酸化物からなる多数の連続した狭幅突起部及び該突起部上に林立している微細柱が露出しており、該突起部及び該微細柱が炭素ドープされている、ことを特徴とする請求項2記載の車両用部品。
【請求項5】
ドープされた炭素がTi−C結合の状態で含まれている、ことを特徴とする請求項2、3又は4記載の車両用部品。
【請求項6】
炭素ドープされた酸化チタン又はチタン合金酸化物からなる層が炭素を0.3〜15at%含有している、ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の車両用部品。
【請求項7】
炭素ドープされた酸化チタン又はチタン合金酸化物からなる層と心材とで構成されており、該心材がチタン、チタン合金、チタン合金酸化物又は酸化チタンである、ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の車両用部品。
【請求項8】
炭素ドープされた酸化チタン又はチタン合金酸化物からなる層と中間層と心材とで構成されており、該中間層がチタン、チタン合金、チタン合金酸化物又は酸化チタンであり、該心材がチタン、チタン合金及び酸化チタン以外の材質で構成されている、ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の車両用部品。
【請求項9】
表面層の炭素ドープされた酸化チタン又はチタン合金酸化物からなる層がTi−C結合を介してその下層のチタン、チタン合金、チタン合金酸化物又は酸化チタンに結合されている、ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の車両用部品。
【請求項10】
自動車、オートバイ、自転車等の車両のエキゾーストパイプキャップ、マフラー、ホイールキャップ、光シリンダーヘッド、コンロッド、エンジンバルブ、ブレーキパッド、スプロケット、各種ベアリング、タイヤハウジングモール、スタビライザ、アウトリガー、ドアの下部に設けられるステップ、フロントグリル、ワイパを構成する金具、ルーフキャリア、ルーフモール、アンダーモール、クールパネル、魚搬送バン、トラックのバン、バン用エアピュリファイア、光オイルエレメントユニット、光エアーインテークエレメントのいずれかである、ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の車両用部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−98346(P2011−98346A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289149(P2010−289149)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【分割の表示】特願2006−16372(P2006−16372)の分割
【原出願日】平成18年1月25日(2006.1.25)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】