説明

車両用電源線及び車両用電源線の異常検出装置

【課題】 デッドショートやレアショート等の電源線異常を高い信頼性をもって検出し得る簡易な構成の車両用電源線及び車両用電源線の異常検出装置を提案すること。
【解決手段】 板状のサーミスタ23の一面に磁界を遮蔽する板状の導電部材でなる第1の導体24を設けると共に、当該サーミスタ23の他面に電界を遮蔽する板状の導電部材でなる第2の導体25を設けた構成の温度検知電線22を、主電源線を巻回するように配設し、サーミスタ23の抵抗変化に応じて温度検知電線22から得られる出力に基づいて電源線の異常を検出するようにした。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は車両用電源線及び車両用電源線の異常検出装置に関し、特に当該電源線に完全ショート(デッドショート)や断続ショート(レアショート)等の異常が発生したことを検出する場合に適用して好適なものである。
【0002】
【従来の技術】従来、車両においては、一般にバッテリやオルタネータ等の電源部により発生させた電源を複数の電線から構成されたワイヤハーネスと呼ばれる電源線を介して各負荷に供給するようになっている。
【0003】このワイヤハーネス1は一般に、図5に示すように、各導電線2をポリ塩化ビニルなどの絶縁被覆層3で被覆し、さらにそれらをビニルテープ4等により集束した構成となっている。そして各導電線2を介して負荷にバッテリやオルタネータにより発生された電源が供給されるようになっている。
【0004】ここで導線2の中で特に大電流を必要とする負荷に接続される導電線2はヒュージブルリンクに接続されており、これによりバッテリやオルタネータ等の電源部の電圧変動時や導電線2のデッドショート時に発生する過大電流による各負荷の破損やワイヤハーネス1の劣化を防止できるようになっている。
【0005】ところで、車両では、絶縁被膜層3が経年劣化したり、車両エッジ部との接触、磨耗等により、導電線2がボディーに接触し、いわゆるデッドショートやレアショート状態になる場合がある。このときヒュージブルリンクが溶断して導電線2の電流が遮断されれば問題ないが、ヒュージブルリンクの溶断特性によっては必ずしもヒュージブルリンクが溶断するとは限らない。このような場合、絶縁被膜層3が発熱する結果、絶縁被膜層3がさらに劣化していくおそれがある。
【0006】そこで従来、図6に示すように、ワイヤハーネスを流れる電流波形を検出し、この電流波形に基づいてワイヤハーネスのデッドショートやレアショートの有無を判断して、ワイヤハーネスにデッドショートやレアショートが発生している場合に警報を発する装置が提案されている(特開昭61−139216号公報参照)。
【0007】すなわちこの装置では、バッテリ5と負荷6とを接続するワイヤハーネス7上に設けた電流センサ8によりワイヤハーネス7を流れる電流値を検出し、この電流値を電流変化検出回路9で微分し、ディジタル化回路10を介して波形識別回路11に送出する。
【0008】波形識別回路11はディジタル化回路10の出力に基づいて、ワイヤハーネス7に流れている電流が正常負荷のオンオフによるものか、デッドショートによるものか、又はレアショートによるものかを識別する。そしてデッドショートやレアショートによるものであった場合には、ブレーカ12を遮断状態とすると共に警報装置13からワイヤハーネス7が損傷していることを表す警報を発するようになっている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、図6の装置のように異常電流検出することでワイヤハーネス7の異常を検出する方法は、ワイヤハーネス7の損傷に起因する異常を検出するには、これとは別の要因、すなわち負荷電流のばらつき、温度、バッテリ残量に応じて変化する電流値を考慮した検出処理を行わなければならない。この結果、電源線異常の検出処理が複雑化すると共にそのための構成も複雑にならざるを得なかった。
【0010】また実際上、図6のような装置では、ワイヤハーネス7を構成する各導電線毎に電流値の検出を行わなければならないため、部品点数も非常に多くならざるを得なかった。
【0011】さらに負荷6や車両に搭載された種々の電気部品から発生するノイズによって、各回路が誤動作する場合があり、異常検出の信頼性の点で未だ不十分であった。
【0012】本発明は以上の点を考慮してなされたもので、デッドショートやレアショート等の電源線異常を高い信頼性をもって検出し得る簡易な構成の車両用電源線及び車両用電源線の異常検出装置を提案しようとするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】かかる課題を解決するため本発明により成された請求項1に記載の車両用電源線は、一端がバッテリやオルタネータ等の電源部に接続されると共に他端が負荷等の電源供給対象に接続され、電源部の電源を電源供給対象に供給する車両用電源線(20)において、電源部と電源供給対象とを電気的に接続する導電線と当該導電線を被覆する電気的絶縁材とでなる主電源線(21)と、主電源線(21)を巻回するように設けられ、主電源線(21)の温度を検出する温度検知電線(22)とを備え、温度検知電線(22)は、温度変化に応じて抵抗値が変化する板状のサーミスタ(23)と、当該板状のサーミスタ(23)のうち温度検知電線(22)が主電源線(21)に巻回されたときの主電源線(21)に対向する面側に配設された第1の導体(24)と、板状のサーミスタ(23)のうち温度検知電線(22)が主電源線(21)に巻回されたときの主電源線(21)に対向する面と反対の面側に配設された第2の導体(25)とを備え、第1の導体(24)及び又は第2の導体(25)は、電界を遮蔽する板状の導電部材により形成されているようにした。
【0014】以上の構成において、主電源線(21)にデッドショートやレアショートが発生すると主電源線(21)の温度がある温度まで上昇する。このときサーミスタ(23)の温度もこれに伴って上昇することになるので、サーミスタ(23)から主電源線(21)の温度上昇に応じた温度検出出力が得られ、かくしてこの温度検出出力に基づいて主電源線(21)の異常を容易に検出できるようになる。またサーミスタ(23)に電圧を印加するために設けられた第1の導体(24)と第2の導体(25)の両方又はいずれか一方が電界を遮蔽する板状の導電部材により形成されていることにより、オルタネータ等から発生する電界ノイズの主電源線(21)への伝搬が防止される。
【0015】また本発明により成された請求項2に記載の車両用電源線は、一端がバッテリやオルタネータ等の電源部に接続されると共に他端が負荷等の電源供給対象に接続され、電源部の電源を電源供給対象に供給する車両用電源線(20)において、電源部と電源供給対象とを電気的に接続する導電線と当該導電線を被覆する電気的絶縁材とでなる主電源線(21)と、主電源線(21)を巻回するように設けられ、主電源線(21)の温度を検出する温度検知電線(22)とを備え、温度検知電線(22)は、温度変化に応じて抵抗値が変化する板状のサーミスタ(23)と、当該板状のサーミスタ(23)のうち温度検知電線(22)が主電源線(21)に巻回されたときの主電源線(21)に対向する面側に配設された第1の導体(24)と、板状のサーミスタ(23)のうち温度検知電線(22)が主電源線(21)に巻回されたときの主電源線(21)に対向する面と反対の面側に配設された第2の導体(25)とを備え、第1の導体(24)及び又は第2の導体(25)は、磁界を遮蔽する板状の導電部材により形成されているようにした。
【0016】以上の構成において、主電源線(21)にデッドショートやレアショートが発生すると主電源線(21)の温度がある温度まで上昇する。このときサーミスタ(23)の温度もこれに伴って上昇することになるので、サーミスタ(23)から主電源線(21)の温度上昇に応じた温度検出出力が得られ、かくしてこの温度検出出力に基づいて主電源線(21)の異常を容易に検出できるようになる。またサーミスタ(23)に電圧を印加するために設けられた第1の導体(24)と第2の導体(25)の両方又はいずれか一方が磁界を遮蔽する板状の導電部材により形成されていることにより、車両制御用のCPU等から発生する磁界ノイズの主電源線(21)への伝搬が防止される。
【0017】また本発明により成された請求項3に記載の車両用電源線は、一端がバッテリやオルタネータ等の電源部に接続されると共に他端が負荷等の電源供給対象に接続され、電源部の電源を電源供給対象に供給する車両用電源線(20)において、電源部と電源供給対象とを電気的に接続する導電線と当該導電線を被覆する電気的絶縁材とでなる主電源線(21)と、主電源線(21)を巻回するように設けられ、主電源線(21)の温度を検出する温度検知電線(22)とを備え、温度検知電線(22)は、温度変化に応じて抵抗値が変化する板状のサーミスタ(23)と、当該板状のサーミスタ(23)のうち温度検知電線(22)が主電源線(21)に巻回されたときの主電源線(21)に対向する面側に配設された第1の導体(24)と、板状のサーミスタ(23)のうち温度検知電線(22)が主電源線(21)に巻回されたときの主電源線(21)に対向する面と反対の面側に配設された第2の導体(25)とを備え、第1及び第2の導体(24)、(25)のうち、一方は電界を遮蔽する板状の導電部材により形成されていると共に他方は磁界を遮蔽する板状の導電部材により形成されているようにした。
【0018】以上の構成において、主電源線(21)にデッドショートやレアショートが発生すると主電源線(21)の温度がある温度まで上昇する。このときサーミスタ(23)の温度もこれに伴って上昇することになるので、サーミスタ(23)から主電源線(21)の温度上昇に応じた温度検出出力が得られ、かくしてこの温度検出出力に基づいて主電源線(21)の異常を容易に検出できるようになる。またサーミスタ(23)に電圧を印加するために設けられた第1の導体(24)と第2の導体(25)の一方は電界を遮蔽する板状の導電部材により形成されていると共に他方は磁界を遮蔽する板状の導電部材により形成されているので、オルタネータ等から発生する電界ノイズ及び車両制御用のCPU等から発生する磁界ノイズの主電源線(21)への伝搬が防止される。
【0019】また本発明により成された請求項4に記載の車両用電源線の異常検出装置(40)は、請求項1、請求項2又は請求項3に記載の車両用電源線(20)と、第1及び第2の導体(24)、(25)を介してサーミスタ(23)に電圧を印加する電圧印加手段と、サーミスタ(23)により得られる温度検出出力に基づいて主電源線(21)が所定温度以上になったことを検出する異常検出手段と、異常検出手段により異常が検出されたことをユーザに告知するための告知手段とを備えるようにした。
【0020】以上の構成において、この車両用電源線の異常検出装置(40)は、主電源線(21)にデッドショートやレアショートに起因する過電流が流れていることを、簡易な構成でかつ高い信頼性をもって検出してユーザに知らせることができる。
【0021】また本発明により成された請求項5に記載の車両用電源線の異常検出装置(20)は、請求項4の異常検出手段は、サーミスタ(23)を含む抵抗ブリッジ回路から出力される2つの出力を比較することにより主電源線(21)が所定温度以上になったことを検出するようにした。
【0022】この結果、抵抗ブリッジ回路の抵抗値を適宜選定すれば、容易に前記所定温度を設定できるようになる。またブリッジ回路から出力される2つの出力を比較するようにしているので、サーミスタ(23)の温度上昇による抵抗変化分を良好に反映した比較処理を行うことができ、この結果異常検出の精度を一段と向上させることができる。
【0023】さらに本発明により成された請求項6に記載の車両用電源線の異常検出装置(40)は、請求項4又は請求項5の構成に加えて、サーミスタ(23)が短絡したことを検出する短絡検出手段(42)を備えるようにした。
【0024】以上の構成において、短絡検出手段(42)によってサーミスタ(23)の短絡が検出され、かつ異常検出手段によって主電源線(21)の温度上昇が検出されるということは、主電源線(21)に車両のボディーが食い込んで主電源線(21)自体にデッドショートやレアショートが生じている可能性が高いことを意味する。これに対して、短絡検出手段(42)によってサーミスタ(23)の短絡が検出されず、かつ異常検出手段によって主電源線(21)の温度上昇が検出されるということは、負荷の故障による負荷ショートによって主電源線(21)に過電流が流れている可能性が高いことを意味する。
【0025】このように異常検出手段と短絡検出手段(42)の両方の検出結果に基づき、主電源線(21)に異常電流が流れている原因がどの箇所にあるのかを特定できるようになる。この結果、ユーザは特定された異常部品を交換又は修理すれば、容易に異常電流を解消することができるようになる。
【0026】
【発明の実施の形態】以下、図面に基づき本発明の一実施形態を説明する。
【0027】図1において、20は本発明による車両用電源線を示し、それぞれ導電線と当該導電線を被覆する電気的絶縁材とでなる複数の主電源線21の一端が電源ボックス30に接続されている。また複数の主電源線21の他端はそれぞれ対応する負荷(図示せず)に接続されている。ここで電源ボックス30は、図示しない電源線によりバッテリやオルタネータ等の電源部に接続されており、電源部の電源を各主電源線21に分配するようになっている。
【0028】また車両用電源線20においては、主電源線21の温度を検出するための温度検知電線22が主電源線21を巻回するように設けられている。さらに車両用電源線20においては、温度検知電線22の外側からビニルテープ31を巻回することにより、複数の主電源線21及び温度検知電線22を集束するようになっている。
【0029】温度検知電線22は、図2に示すように構成されている。温度検知電線22は、温度変化に応じて抵抗値が変化する板状のサーミスタ23を有する。この実施形態の場合、サーミスタ23としてはNTC型のプラスチックサーミスタが用いられている。
【0030】また温度検知電線22においては、サーミスタ23のうち温度検知電線20が主電源線21に巻回されたときの主電源線21に対向する面側に、磁界を遮蔽する板状の導電部材でなる第1の導体24が設けられている。さらに温度検知電線22においては、サーミスタ23のうち温度検知電線20が主電源線21に巻回されたときのサーミスタ23の外側の面には、電界を遮蔽する板状の導電部材でなる第2の導体25が設けられている。そして、第1及び第2の導体24、25の外側には塩化ビニル等でなる絶縁シート26が被覆されている。ここで第1の導体24としては例えば銅やアルミ系、若しくはフェライトが用いられている。また第2の導体25としては、鉄などが用いられている。
【0031】かくして車両用電源線20においては、サーミスタ23の抵抗変化により主電源線21の温度を検出することができると共に、第1の導体24により車両制御用のCPU等から発生する磁界ノイズの主電源線21への伝搬を防止でき、かつ第2の導体25によりオルタネータ等から発生する電界ノイズの主電源線21への伝搬を防止できるようになされている。
【0032】次に図3に、温度検知電線22の電源ボックス30への接続部分の構成を示す。温度検知電線22の第1の導体24はボンディングワイヤ27Aを介して接続端子28Aに接続されていると共に、第2の導体25はボンディングワイヤ27Bを介して接続端子28Bに接続されている。また第1及び第2の導体24,25と接続端子28A、28Bとの接続部分は、樹脂29によりモールドされている。
【0033】ここで接続端子28Aは電源ボックス30内の接地ラインに接続されると共に、接続端子28Bは電源ボックス30内の電源供給ラインに接続される。これにより、第2の導体25の電位が第1の導体24の電位よりも高くなることにより、サーミスタ23を介して第2の導体25から第1の導体24へと電流が流れるようになる。
【0034】次に図4に、本発明による車両用電源線の異常検出装置40の構成を示す。異常検出装置40は、サーミスタ23、抵抗R1、R2及び可変抵抗R3でなるブリッジ回路を有する。そしてブリッジ回路の抵抗R1と抵抗R2の間の節点を介して電源が印加されると共に、サーミスタ23と可変抵抗R3の間の節点が接地されている。
【0035】またサーミスタ23と抵抗R1の間の節点がコンパレータ41の反転入力端に接続されていると共に、抵抗R2と可変抵抗R3の間の節点がコンパレータ41の非反転入力端に接続されている。コンパレータ41の出力端はリレーL1に接続されており、リレーL1はコンパレータ41から正電位が出力されるとオン動作するようになされている。
【0036】また異常検出装置40においては、サーミスタ23と抵抗R1の間の節点が反転増幅器42の反転入力端に接続されている。反転増幅器42の出力端はラッチ回路43及びインバータ44を介してリレーL2及びリレーL3に接続されており、リレーL2及びリレーL3はインバータ44から正電位が出力されるとオン動作するようになされている。
【0037】また異常検出装置40においては、温度異常表示ランプ50及び短絡異常表示ランプ51が設けられており、温度異常表示ランプ50はリレーL1及びL2が共にオン動作したときに点灯し、短絡異常表示ランプ51はリレーL3がオン動作したときに点灯するようになっている。
【0038】以上の構成において、負荷故障等の連続短絡や主電源線21のショートにより主電源線21に過電流が流れると主電源線21の絶縁皮膜層の温度が上昇する。このときサーミスタ23の温度もこれに伴って上昇するので当該サーミスタ23の抵抗値が小さくなる。この結果、サーミスタ23と抵抗R1の間の節点の電位が抵抗R2と可変抵抗R3の間の節点の電位よりも下がるので、コンパレータ41からは正電位が出力されるようになり、リレーL1がオン動作する。
【0039】また温度検知電線22の絶縁シート26が車両のボディーとの接触により摩耗して当該ボディーがサーミスタ23まで達すると、サーミスタ23は短絡状態となるので、サーミスタ23と抵抗R1の間の節点の電位は零電位となる。このとき反転増幅器42からは負電位の出力が得られ、この状態がラッチ回路43で保持される。この結果、増幅機能を有するインバータ44からは正電位が継続して出力されるようになり、リレーL2及びL3がオン動作する。
【0040】因みに、ラッチ回路43の保持動作は解除スイッチ45がオンされたときに解除される。この解除スイッチ45がオンされるタイミングは、例えばイグニッションキースイッチがオンポジションからオフポジションに切り換えられたタイミングで行うようにすればよい。
【0041】かくして異常検出装置40においては、温度検知電線22が損傷してボディーとの接触によりサーミスタ23が短絡状態になると、短絡異常表示ランプ51が点灯する。これによりユーザは、現在の状態がボディーの食い込みが主電源線21にまで至る前段階であり、やがて主電源線21にボディーの食い込みによるショートやレアショートが生じるであろうことを予め知ることができる。
【0042】また異常検出装置40においては、温度検知電線22が損傷してボディーとの接触によりサーミスタ23が短絡状態になり、かつ主電源線21の温度が上昇すると、温度異常表示ランプ50が点灯する。これによりユーザは、現在の状態がボディーの食い込みが主電源線21にまで達し、これが原因で主電源線21にデッドショートやレアショートが発生していることを知ることができる。
【0043】かくして以上の構成によれば、板状のサーミスタ23の一面に磁界を遮蔽する板状の導電部材でなる第1の導体24を設けると共に、当該サーミスタ23の他面に電界を遮蔽する板状の導電部材でなる第2の導体25を設けた構成の温度検知電線22を、主電源線21を巻回するように配設し、サーミスタ23の抵抗変化に応じて温度検知電線22から得られる出力に基づいて電源線の異常を検出するようにしたことにより、デッドショートやレアショート等の電源線異常を高い信頼性をもって検出し得ると共に主電源線21へのノイズの伝搬を防止し得る簡易な構成の車両用電源線20及び車両用電源線の異常検出装置40を実現し得る。
【0044】またサーミスタ23を含む抵抗ブリッジ回路から出力される2つの出力を比較することにより主電源線21が所定温度以上になったことを検出するようにしたことにより、抵抗ブリッジ回路の可変抵抗値R3を適宜選定すれば、容易に前記所定温度を設定できるようになる。またブリッジ回路から出力される2つの出力を比較するようにしているので、サーミスタ23の温度上昇による抵抗変化分を良好に反映した比較処理を行うことができ、この結果異常検出の精度を一段と向上させることができる。
【0045】またサーミスタ23の温度上昇を検出するのに加えて、サーミスタの短絡の有無を検出するようにしたことにより、主電源線21に異常電流が流れている原因がどの箇所にあるのか(主電源線21にあるのか又は負荷にあるのか)を特定できるようになる。この結果、ユーザは特定された異常部品を交換又は修理すれば、容易に異常電流を解消することができるようになる。
【0046】なお上述の実施形態においては、車両用電源線の異常検出装置40を図4に示すような回路構成により形成した場合について述べたが、本発明の車両用電源線の異常検出装置はこれに限らず、要はサーミスタ23により得られる温度検出出力に基づいて主電源線21が所定温度以上になったことを検出する異常検出手段と、異常検出手段により異常が検出されたことをユーザに告知するための告知手段とを設けるようにすればよい。
【0047】また上述の実施形態においては、サーミスタ23が短絡状態になり、かつ主電源線21の温度が上昇したときに、温度異常表示ランプ50を点灯させる場合について述べたが、リレーL2を省略して、単に主電源線21の温度が上昇したとき温度異常表示ランプ50を点灯させるようにしてもよい。
【0048】
【発明の効果】上述のように請求項1に記載の発明によれば、一端がバッテリやオルタネータ等の電源部に接続されると共に他端が負荷等の電源供給対象に接続され、電源部の電源を電源供給対象に供給する車両用電源線において、電源部と電源供給対象とを電気的に接続する導電線と、当該導電線を被覆する電気的絶縁材とでなる主電源線と、主電源線を巻回するように設けられ、主電源線の温度を検出する温度検知電線と備え、温度検知電線は、温度変化に応じて抵抗値が変化する板状のサーミスタと、当該板状のサーミスタのうち温度検知電線が主電源線に巻回されたときの主電源線に対向する面側に配設された第1の導体と、当該板状のサーミスタのうち温度検知電線が主電源線に巻回されたときの主電源線に対向する面と反対の面側に配設された第2の導体とを備え、第1の導体及び又は第2の導体は、電界を遮蔽する板状の導電部材により形成されているようにしたことにより、簡易な構成によりデッドショートやレアショート等の電源線異常を高い信頼性をもって検出し得ると共にオルタネータ等から発生する電界ノイズの主電源線への伝搬を防止し得る車両用電源線を実現できる。
【0049】また請求項2に記載の発明によれば、第1の導体及び又は第2の導体は、磁界を遮蔽する板状の導電部材により形成されているようにしたことにより、簡易な構成によりデッドショートやレアショート等の電源線異常を高い信頼性をもって検出し得ると共に車両制御用のCPU等から発生する磁界ノイズの主電源線への伝搬を防止し得る車両用電源線を実現できる。
【0050】また請求項3に記載の発明によれば、第1及び第2の導体のうち、一方は電界を遮蔽する板状の導電部材により形成されていると共に他方は磁界を遮蔽する板状の導電部材により形成されているようにしたことにより、簡易な構成によりデッドショートやレアショート等の電源線異常を高い信頼性をもって検出し得ると共にオルタネータ等から発生する電界ノイズ及び車両制御用のCPU等から発生する磁界ノイズの主電源線への伝搬を防止し得る車両用電源線を実現できる。
【0051】また請求項4に記載の発明によれば、請求項1、請求項2又は請求項3に記載の車両用電源線と、第1及び第2の導体を介してサーミスタに電圧を印加する電圧印加手段と、サーミスタにより得られる温度検出出力に基づいて主電源線が所定温度以上になったことを検出する異常検出手段と、異常検出手段により異常が検出されたことをユーザに告知するための告知手段とを備えるようにしたことにより、主電源線にデッドショートやレアショートに起因する過電流が流れていることを、簡易な構成でかつ高い信頼性をもって検出してユーザに知らせることができる車両用電源線の異常検出装置を実現し得る。
【0052】また請求項5に記載の発明によれば、請求項4の異常検出手段は、サーミスタを含む抵抗ブリッジ回路から出力される2つの出力を比較することで主電源線が所定温度以上になったことを検出するようにしたことにより、主電源線の種類に応じて容易に異常検出温度を設定できると共に異常検出の精度を一段と向上させることができる車両用電源線の異常検出装置を実現し得る。
【0053】また請求項6に記載の発明によれば、請求項4又は請求項5の構成に加えて、サーミスタが短絡したことを検出する短絡検出手段を備えるようにしたことにより、異常検出手段と短絡検出手段の両方の検出結果に基づき、主電源線に異常電流が流れている原因がどの箇所にあるのかを特定できる車両用電源線の異常検出装置を実現し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態による車両用電源線の構成の説明に供する略線的斜視図である。
【図2】温度検知電線の構成を示す略線的斜視図である。
【図3】温度検知電線の電源ボックスへの接続部分の構成を示す断面図である。
【図4】実施の形態による車両用電源線の異常検出装置の回路構成を示す接続図である。
【図5】ワイヤハーネスの構成を示す略線的斜視図である。
【図6】従来のワイヤハーネスの異常検出装置の構成を示す接続図である。
【符号の説明】
20 車両用電源線
21 主電源線
22 温度検知電線
23 サーミスタ
24 第1の導体
25 第2の導体
40 車両用電源線の異常検出装置
42 反転増幅器(短絡検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 一端がバッテリやオルタネータ等の電源部に接続されると共に他端が負荷等の電源供給対象に接続され、前記電源部の電源を前記電源供給対象に供給する車両用電源線において、前記電源部と前記電源供給対象とを電気的に接続する導電線と、当該導電線を被覆する電気的絶縁材とでなる主電源線と、前記主電源線を巻回するように設けられ、前記主電源線の温度を検出する温度検知電線とを具え、前記温度検知電線は、温度変化に応じて抵抗値が変化する板状のサーミスタと、当該板状のサーミスタのうち前記温度検知電線が前記主電源線に巻回されたときの前記主電源線に対向する面側に配設された第1の導体と、当該板状のサーミスタのうち前記温度検知電線が前記主電源線に巻回されたときの前記主電源線に対向する面と反対の面側に配設された第2の導体とを具え、前記第1の導体及び又は前記第2の導体は、電界を遮蔽する板状の導電部材により形成されていることを特徴とする車両用電源線。
【請求項2】 一端がバッテリやオルタネータ等の電源部に接続されると共に他端が負荷等の電源供給対象に接続され、前記電源部の電源を前記電源供給対象に供給する車両用電源線において、前記電源部と前記電源供給対象とを電気的に接続する導電線と、当該導電線を被覆する電気的絶縁材とでなる主電源線と、前記主電源線を巻回するように設けられ、前記主電源線の温度を検出する温度検知電線とを具え、前記温度検知電線は、温度変化に応じて抵抗値が変化する板状のサーミスタと、当該板状のサーミスタのうち前記温度検知電線が前記主電源線に巻回されたときの前記主電源線に対向する面側に配設された第1の導体と、当該板状のサーミスタのうち前記温度検知電線が前記主電源線に巻回されたときの前記主電源線に対向する面と反対の面側に配設された第2の導体とを具え、前記第1の導体及び又は前記第2の導体は、磁界を遮蔽する板状の導電部材により形成されていることを特徴とする車両用電源線。
【請求項3】 一端がバッテリやオルタネータ等の電源部に接続されると共に他端が負荷等の電源供給対象に接続され、前記電源部の電源を前記電源供給対象に供給する車両用電源線において、前記電源部と前記電源供給対象とを電気的に接続する導電線と、当該導電線を被覆する電気的絶縁材とでなる主電源線と、前記主電源線を巻回するように設けられ、前記主電源線の温度を検出する温度検知電線とを具え、前記温度検知電線は、温度変化に応じて抵抗値が変化する板状のサーミスタと、当該板状のサーミスタのうち前記温度検知電線が前記主電源線に巻回されたときの前記主電源線に対向する面側に配設された第1の導体と、当該板状のサーミスタのうち前記温度検知電線が前記主電源線に巻回されたときの前記主電源線に対向する面と反対の面側に配設された第2の導体とを具え、前記第1及び第2の導体のうち、一方は電界を遮蔽する板状の導電部材により形成されていると共に他方は磁界を遮蔽する板状の導電部材により形成されていることを特徴とする車両用電源線。
【請求項4】 請求項1、請求項2又は請求項3に記載の車両用電源線と、前記第1及び第2の導体を介して前記サーミスタに電圧を印加する電圧印加手段と、前記サーミスタにより得られる温度検出出力に基づいて前記主電源線が所定温度以上になったことを検出する異常検出手段と、前記異常検出手段により異常が検出されたことをユーザに告知するための告知手段とを具えることを特徴とする車両用電源線の異常検出装置。
【請求項5】 前記異常検出手段は、前記サーミスタを含む抵抗ブリッジ回路から出力される2つの出力を比較することにより前記主電源線が所定温度以上になったことを検出することを特徴とする請求項4に記載の車両用電源線の異常検出装置。
【請求項6】 さらに、前記サーミスタが短絡したことを検出する短絡検出手段を具えることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の車両用電源線の異常検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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