説明

車両用風向調整装置

【課題】ダクト内を流れる空調風の全量を狙ったルーバ角により高い自由度にて風向きコントロールを行うことができる車両用風向調整装置を提供すること。
【解決手段】ダクトの空調風吹出し口の位置に複数のルーバを開閉可能に設けた車両用風向調整装置において、前記複数のルーバは、エアカーテン吹出し口6を囲むダクト端面のうち、一辺のダクト端面に沿って設定した第1回動軸21を中心として開閉動作する第1エアカーテンルーバ11と、一辺のダクト端面とは対向する他の一辺のダクト端面に沿って設定した第2回動軸22を中心として開閉動作する第2エアカーテンルーバ21を有する手段とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダクトの空調風吹出し口の位置に複数のルーバを開閉可能に設けた車両用風向調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用風向調整装置としては、両端が開口する筒状ケースの一端側に形成された湾曲する空気吹出し口に、リンクにより連繋された複数のルーバが開閉自在に設けられ、かつ前記ルーバによる空気吹出し口の全閉時、前記各ルーバが空気吹出し口の湾曲に沿って格納されると共に、前記ルーバとリンクの間を、前記ルーバによる空気吹出し口の全開時、前記各ルーバが同一方向を向くようリンクで連結したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3507950号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の車両用風向調整装置にあっては、筒状ケースの一端側に形成された空気吹出し口に、同一方向を向くようリンクにより連繋された複数のルーバを開閉自在に設ける構成であるため、空気吹出し口の中間部分は、隣接するルーバでのエアガイドとなり、風向調整性が得られるものの、空気吹出し口の最端部は、ルーバと筒状ケースの内面によるエアガイドとなり、風向調整性が得られない。
【0004】
このように、従来の車両用風向調整装置は、空気吹出し口の最端部においてエアガイドが稼働せず、風向きが安定しない構成であるため、空気吹出し口からの全ての吹出し風の方向を同一方向に向けるという風向調整性を得ることができず、例えば、風向きを狭い範囲で規定するエアカーテンを形成できない。また、複数のルーバは全て平行関係を保ちながら開閉するものであるため、吹出し風を集中させるノズル的な風向調整性や吹出し風を拡散させるディフューザ的な風向調整性を得ることができず、例えば、吹出しモードに最適な自由度の高い風向きコントロールができない、という問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、ダクト内を流れる空調風の全量を狙ったルーバ角により高い自由度にて風向きコントロールを行うことができる車両用風向調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明では、ダクトの空調風吹出し口の位置に複数のルーバを開閉可能に設けた車両用風向調整装置において、
前記複数のルーバは、前記空調風吹出し口を囲むダクト端面のうち、一辺のダクト端面に沿って設定した第1回動軸を中心として開閉動作する第1ルーバと、一辺のダクト端面とは対向する他の一辺のダクト端面に沿って設定した第2回動軸を中心として開閉動作する第2ルーバを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
よって、本発明の車両用風向調整装置にあっては、空調風吹出し口からの風向調整時、第1ルーバは、一辺のダクト端面に沿って設定した第1回動軸を中心として開閉動作し、第2ルーバは、一辺のダクト端面とは対向する他の一辺のダクト端面に沿って設定した第2回動軸を中心として開閉動作する。
すなわち、第1ルーバと第2ルーバは、対向する一対のダクト端面を任意のルーバ角にて延長する可動ダクト部材となり、ダクト内を流れる空調風の全量が、第1ルーバと第2ルーバの間を通過して吹き出される。
このため、第1ルーバと第2ルーバのルーバ角度を、ダクトの空調風の吹出し軸線に対して所定の角度に設定することにより、風向きを調整することができる。さらに、例えば、第1ルーバと第2ルーバを互いに平行設定とすると、全ての吹出し風を平行風にして吹き出すことができる。また、例えば、第1ルーバと第2ルーバをルーバ先端に向かって互いに近づける設定とすると、全ての吹出し風をノズル風にして吹き出すことができる。また、例えば、第1ルーバと第2ルーバをルーバ先端に向かって互いに遠ざける設定とすると、全ての吹出し風をディフューザ風にして吹き出すことができる。
この結果、ダクト内を流れる空調風の全量を狙ったルーバ角により高い自由度にて風向きコントロールを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の車両用風向調整装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0009】
まず、構成を説明する。
図1は実施例1の車両用風向調整装置が適用された自動車を示す概略側面図である。
実施例1の車両用風向調整装置が適用された自動車は、図1に示すように、フロントベントダクト1と、フロントベント吹出し口2,2と、リア空調ユニット3(空調ユニット)と、ルーフダクト4(ダクト)と、ルーフベント吹出し口5と、エアカーテン吹出し口6(空調風吹出し口)と、サイドウインドウ7と、リア空調風戻し吹出し口8と、を備えている。
【0010】
前記フロントベントダクト1は、図外のフロント空調ユニットから車両後方に延びると共に、センターピラーに沿って上方に延びて配設される。このフロントベントダクト1のセンターピラー部には、後席の乗員に対して前側方の下部と中間部からベント風を吹き出すフロントベント吹出し口2,2を設けている。なお、フロントベント吹出し口2,2には、風向を手動により調整する可動ルーバを有する。
【0011】
前記リア空調ユニット3は、後席シートの後部のリアパネル内部位置に配置され、冷風と温風の混合風による空調風を作り出し、空調風をルーフダクト4に導く。
前記ルーフダクト4は、リア空調ユニット3からの空調風をサイドウインドウ7の上部に沿って導くダクトであり、このルーフダクト4には、ダクト先端部に後席の乗員に対して前側方の上部からベント風を吹き出すルーフベント吹出し口5を設けている。なお、ルーフベント吹出し口5には、風向を手動により調整する可動ルーバを有する。
【0012】
前記エアカーテン吹出し口6は、その開口形状を細長い方形による開口形状とし、前記ルーフダクト4からの空調風をサイドウインドウ7に向かって吹き出す吹出し口である。なお、リア空調風戻し吹出し口8は、リア空調ユニット3が作動時であって、ルーフベント吹出し口5とエアカーテン吹出し口6が全閉時、ルーフダクト4から送られてきた空調風をリア空調ユニット3側に戻す吹出し口である。
【0013】
図2は実施例1の車両用風向調整装置の右側エアカーテン吹出し口を示す図1のA−A線断面図である。図3は実施例1の車両用風向調整装置の第1エアカーテンルーバの第1回動軸と第2エアカーテンルーバの第2回動軸とルーフカバーの第3回動軸を駆動する駆動ギア機構と駆動モータと駆動制御系を示す斜視図である。
【0014】
実施例1の車両用風向調整装置は、図2および図3に示すように、ルーフダクト4と、エアカーテン吹出し口6と、ルーフ9と、ルーフライニング10と、第1エアカーテンルーバ11(第1ルーバ)と、第2エアカーテンルーバ12(第2ルーバ)と、ルーフカバー13と、第1回動軸21と、第2回動軸22と、第3回動軸23と、駆動ギア機構30(同調駆動機構)と、駆動モータ40(動力源)と、フレキシブルワイヤ41と、リア空調コントローラ50(風向調整駆動制御手段)と、リアコントロールパネル51と、を備えている。
【0015】
前記ルーフダクト4は、図2に示すように、ルーフ9とルーフライニング10の間の斜め空間14に配置されている。このルーフダクト4のダクト断面は、車室内空間を狭めることがないように扁平断面形状としている。そして、ルーフダクト4のサイドウインドウ7側下端部に、ルーフダクト4の軸線方向に沿った一対の長辺ダクト端面と、ルーフダクト4の軸線直交方向の一対の短辺ダクト端面により囲まれた細長い方形による開口形状を持つエアカーテン吹出し口6が開口されている。
【0016】
前記第1エアカーテンルーバ11は、図2に示すように、サイドウインドウ7側の長辺ダクト端面に沿って設定した第1回動軸21を中心として開閉動作するルーバである。この第1エアカーテンルーバ11は、図2に示す閉鎖位置から図面左回りに最大開放位置(図7参照)まで回動する。
【0017】
前記第2エアカーテンルーバ12は、図2に示すように、車室内側の長辺ダクト端面に沿って設定した第2回動軸22を中心として開閉動作するルーバである。この第2エアカーテンルーバ12は、図2に示す閉鎖位置から図面左回りに最大開放位置(図7参照)まで回動し、回動角度は第1エアカーテンルーバ11より大きい。
【0018】
前記ルーフカバー13は、図2に示すように、ルーフライニング10に開口した空調風吹出し開口部15の位置に、前記ルーフダクト4側の第3回動軸23を中心とする回動により空調風吹出し開口部15を開閉するカバーである。このルーフカバー13は、図2に示す閉鎖位置から図面右回りに最大開放位置(図7参照)まで回動する。なお、このルーフカバー13の車室側表面には、ルーフライニング10の内面と同一材質(例えば、不織布)が貼り付けてある。
【0019】
前記駆動ギア機構30は、第1エアカーテンルーバ11の第1回動軸21と第2エアカーテンルーバ12の第2回動軸22とルーフカバー13の第3回動軸23を、1つの駆動モータ40を用いて駆動する同調駆動機構である。この駆動ギア機構30は、図2に示すように、第1回動軸21と第2回動軸22と第3回動軸23の軸端部が露出するルーフダクト4の側部位置に設定されている。そして、駆動ギア機構30は、図3に示すように、第1回動軸21の軸端部に設けられた第1ギア31と、第2回動軸22の軸端部に設けられた第2ギア32と、第3回動軸23の軸端部に設けられた第3ギア33と、前記第1ギア31に噛み合う第1アイドラーギア34と、該第1アイドラーギア34と前記第3ギア33に噛み合うと共に、駆動モータ40により回転駆動される主駆動ギア35と、前記第1ギア31と前記第2ギア32に噛み合う第2アイドラーギア36と、による複数の噛み合いギア構成とされる。なお、ギア歯数は、第1ギア31>主駆動ギア35>第2ギア32>第3ギア33>第1アイドラーギア34>第2アイドラーギア36という関係に設定している。
【0020】
前記駆動モータ40は、リア空調ユニット3が配置された後席シートの後部位置(例えば、リアパネル内部位置やトランクルーム等)に設定され、図3に示すように、フレキシブルワイヤ41を介して前記駆動ギア機構30の主駆動ギア35を回転駆動する。
【0021】
前記リア空調コントローラ50は、選択された吹出しモードに応じて前記駆動モータ40を駆動制御する風向調整駆動制御手段であり、リアコントロールパネル51への操作に応じて吹出しモード(エアカーテン吹出し口の閉モード、サイドエアカーテンモード、ルーフサイドベントモード、サイドウインドウデフモード等)が選択される。
【0022】
次に、作用を説明する。
従来の車両用風向調整装置は、図4に示すように、筒状ケースの一端側に形成された空気吹出し口に、同一方向を向くようリンクにより連繋された複数のルーバを開閉自在に設ける構成である。
このため、空気吹出し口の中間部分は、隣接するルーバでのエアガイドとなり、風向きを曲げるという風向調整性が得られるものの、空気吹出し口の最端部は、ルーバと筒状ケースの内面によるエアガイドとなり、風向調整性が得られず、風向きが曲がり難い。
【0023】
このように、空気吹出し口の最端部においてエアガイドが稼働しないという従来装置の解決課題に対して、ルーバの設定位置を、ダクト内部位置からダクト端面位置に移すという点に着目し、空調風吹出し口からの風向調整時、第1ルーバは、一辺のダクト端面に沿って設定した第1回動軸を中心として開閉動作し、第2ルーバは、一辺のダクト端面とは対向する他の一辺のダクト端面に沿って設定した第2回動軸を中心として開閉動作する構成を採用した。
【0024】
この構成を採用したことにより、第1ルーバと第2ルーバは、対向する一対のダクト端面を任意のルーバ角にて延長する可動ダクト部材となり、ダクト内を流れる空調風の全量が、第1ルーバと第2ルーバの間を通過して吹き出される。この結果、ダクト内を流れる空調風の全量を狙ったルーバ角により高い自由度にて風向きコントロールを行うことができる。
【0025】
以下、実施例1の車両用風向調整装置による風向調整作用を、「エアカーテン吹出し口の閉モード時」、「サイドエアカーテンモード時」、「ルーフサイドベントモード時」、「サイドウインドウデフモード時」に分けて説明する。
【0026】
[エアカーテン吹出し口の閉モード時]
エアカーテン吹出し口6の閉モード時には、図2に示すように、リア空調コントローラ50において、第1エアカーテンルーバ11によりエアカーテン吹出し口6を塞ぎ、第2エアカーテンルーバ12をルーフダクト4に沿った回避位置とし、ルーフカバー13により空調風吹出し開口部15を塞ぐように、駆動モータ40に連結されるフレキシブルワイヤ41の位置(=主駆動ギア35の位置)が制御される。
【0027】
したがって、エアカーテン吹出し口6が塞がれるばかりでなく、ルーフカバー13により空調風吹出し開口部15が塞がれることで、エアカーテン吹出し口6の存在すら車内の乗員が気付かないものとなる。特に、実施例1では、ルーフカバー13の車室側表面に、ルーフライニング10の内面と同一材質が貼り付けてあるため、ルーフライニング10とルーフカバー13とが一体化し、見栄えも向上する。
【0028】
[サイドエアカーテンモード時]
図5は実施例1の車両用風向調整装置におけるサイドエアカーテンモード時の風向調整作用説明図である。
【0029】
サイドエアカーテンモード時には、図5に示すように、リア空調コントローラ50において、ルーフカバー13により空調風吹出し開口部15を開き、第1エアカーテンルーバ11と第2エアカーテンルーバ12を、サイドウインドウ7に沿って平行配置とするように、駆動モータ40に連結されるフレキシブルワイヤ41の位置(=主駆動ギア35の位置)が制御される。
【0030】
つまり、主駆動ギア35を閉モード時の位置から回動角度θだけ回動させると、第1エアカーテンルーバ11が図5の左回りにθ1だけ回動し、第2エアカーテンルーバ12が図5の左回りにθ2(>θ1)だけ回動し、両エアカーテンルーバ11,12は、サイドウインドウ7に沿った平行配置となる。
【0031】
したがって、サイドウインドウ7から横日射が車室内に入り込む時に、サイドエアカーテンモードを選択すると、サイドウインドウ7の内側位置に、冷風等によるエアカーテンが形成され、車室内の温度上昇が抑えられ、冷房性能の向上を達成することができると共に、後席乗員への輻射熱を低減することができる。
【0032】
このサイドエアカーテンモード時、両エアカーテンルーバ11,12は、サイドウインドウ7に沿った平行配置で固定しても良いが、リア空調コントローラ50において、主駆動ギア35を、回動角度θ位置を中心として正逆回動させることにより、サイドウインドウ7に沿って平行配置とした第1エアカーテンルーバ11と第2エアカーテンルーバ12を、平行度が保たれる微小角度範囲(例えば、±5°程度)でスイングさせることができる。
【0033】
したがって、サイドエアカーテンモードの選択時に主駆動ギア35を正逆回動させた場合、両エアカーテンルーバ11,12がスイングルーバとなり、実質的にエアカーテン厚が増すため、ルーバ固定モードの場合に比べ、乗員への輻射熱をより効果的に低減することができる。
【0034】
[ルーフサイドベントモード時]
図6は実施例1の車両用風向調整装置におけるルーフサイドベントモード時の風向調整作用説明図である。
【0035】
冷風を吹き出すルーフサイドベントモード時、図6に示すように、リア空調コントローラ50において、ルーフカバー13により空調風吹出し開口部15を開き、第1エアカーテンルーバ11と第2エアカーテンルーバ12を、車室内に向けて傾斜配置にすると共に、第1エアカーテンルーバ11の車室内に向けた傾斜角度を第2エアカーテンルーバ12の車室内に向けた傾斜角度より大きな角度に設定するように、駆動モータ40に連結されるフレキシブルワイヤ41の位置(=主駆動ギア35の位置)が制御される。
【0036】
つまり、主駆動ギア35を閉モード時の位置から平行配置の回動角度θより僅かに小さい角度(θ−α)だけ回動させると、第1エアカーテンルーバ11が図6の左回りに(θ1−a)だけ回動し、第2エアカーテンルーバ12が図6の左回りに(θ2−b)だけ回動する。この場合、第1エアカーテンルーバ11がサイドウインドウ7に沿った位置からの傾き角度aより、第2エアカーテンルーバ12がサイドウインドウ7に沿った位置からの傾き角度bの方が大きくなることで、両エアカーテンルーバ11,12は、車室内側に向き、かつ、エアカーテン吹出し口6の吹出し幅より開かれることになる。
【0037】
したがって、乗員センサ等により後席に乗員が着座していないことが検出された場合、冷風を吹き出すルーフサイドベントモードを選択することにより、エアカーテン吹出し口6から拡散する冷風が後席の車室内に向かって吹き出され、後席車室を効果的に冷却することができる。
【0038】
[サイドウインドウデフモード時]
図7は実施例1の車両用風向調整装置におけるサイドウインドウデフモード時の風向調整作用説明図である。
【0039】
サイドウインドウデフモード時、図7に示すように、リア空調コントローラ50において、ルーフカバー13により空調風吹出し開口部15を開き、第1エアカーテンルーバ11と第2エアカーテンルーバ12を、サイドウインドウ7に向けて傾斜配置にすると共に、第1エアカーテンルーバ11のサイドウインドウ7に向けた傾斜角度より第2エアカーテンルーバ12のサイドウインドウ7に向けた傾斜角度を大きな角度に設定するように、駆動モータ40に連結されるフレキシブルワイヤ41の位置(=主駆動ギア35の位置)が制御される。
【0040】
つまり、主駆動ギア35を閉モード時の位置から平行配置の回動角度θより僅かに大きな角度(θ+β)だけ回動させると、第1エアカーテンルーバ11が図7の左回りに(θ1+c)だけ回動し、第2エアカーテンルーバ12が図7の左回りに(θ2+d)だけ回動する。この場合、第1エアカーテンルーバ11がサイドウインドウ7に沿った位置からの傾き角度cより、第2エアカーテンルーバ12がサイドウインドウ7に沿った位置からの傾き角度dの方が大きくなることで、両エアカーテンルーバ11,12は、車サイドウインドウ7側に向き、かつ、エアカーテン吹出し口6の吹出し幅より閉じられることになる。
【0041】
したがって、夏季においては、エアカーテン吹出し口6から冷風を、サイドウインドウ7に向かってノズル風により強く吹き出すことにより、サイドウインドウ7を結露の無いレベルまで冷却することができると共に、後席乗員へのサイドウインドウ7からの輻射熱を低減することができる。一方、冬季においては、エアカーテン吹出し口6から温風をサイドウインドウ7に向かってノズル風により強く吹き出すことにより、サイドウインドウ7の窓曇りを防止することができると共に、サイドウインドウ7を温めることで、後席乗員が奪われる輻射熱を低減することができる。
【0042】
次に、効果を説明する。
実施例1の車両用風向調整装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0043】
(1) ダクトの空調風吹出し口の位置に複数のルーバを開閉可能に設けた車両用風向調整装置において、前記複数のルーバは、前記空調風吹出し口(エアカーテン吹出し口6)を囲むダクト端面のうち、一辺のダクト端面に沿って設定した第1回動軸21を中心として開閉動作する第1ルーバ(第1エアカーテンルーバ11)と、一辺のダクト端面とは対向する他の一辺のダクト端面に沿って設定した第2回動軸22を中心として開閉動作する第2ルーバ(第2エアカーテンルーバ21)を有するため、ダクト内を流れる空調風の全量を狙ったルーバ角により高い自由度にて風向きコントロールを行うことができる。
【0044】
(2) 前記ダクトは、車載の空調ユニットからの空調風をサイドウインドウ7の上部に沿って導くルーフダクト4であり、前記空調風吹出し口は、その開口形状を、一対の長辺ダクト端面と一対の短辺ダクト端面により囲まれた細長い方形による開口形状とし、前記ルーフダクト4からの空調風をサイドウインドウ7に向かって吹き出すエアカーテン吹出し口6であり、前記第1ルーバは、サイドウインドウ7側の長辺ダクト端面に設定された第1エアカーテンルーバ11であり、前記第2ルーバは、車室内側の長辺ダクト端面に設定された第2エアカーテンルーバ12であるため、ルーフダクト4内を流れる空調風の全量によるエアカーテンを狙ったルーバ角により風向き調整できると共に、エアカーテンの選択態様として平行風やノズル風やディフューザ風を形成することができる。
【0045】
(3) 前記ルーフダクト4は、ルーフ9とルーフライニング10の間の空間に配置され、前記ルーフライニング10に開口した空調風吹出し開口部15の位置に、前記ルーフダクト4側の第3回動軸13を中心とする回動により空調風吹出し開口部15を開閉するルーフカバー13と、前記第1エアカーテンルーバ11の第1回動軸21と前記第2エアカーテンルーバ12の第2回動軸22と前記ルーフカバー13の第3回動軸23を、1つの動力源(駆動モータ40)を用いて駆動する同調駆動機構(駆動ギア機構30)と、選択された吹出しモードに応じて前記動力源を駆動制御する風向調整駆動制御手段(リア空調コントローラ50)と、を設けたため、1つの動力源のみを用いながら、第1エアカーテンルーバ11と第2エアカーテンルーバ12とルーフカバー13の開閉動作制御を行うことができる。
【0046】
(4) 前記風向調整駆動制御手段(リア空調コントローラ50)は、エアカーテン吹出し口6の閉モード時、前記第1エアカーテンルーバ11によりエアカーテン吹出し口6を塞ぎ、前記第2エアカーテンルーバ12をルーフダクト4に沿った回避位置とし、前記ルーフカバー13により空調風吹出し開口部15を塞ぐため、エアカーテン吹出し口6の閉モードの選択時、エアカーテン吹出し口6が車室内に露出せず、高級車感を醸し出す見栄えを達成することができる。
【0047】
(5) 前記風向調整駆動制御手段(リア空調コントローラ50)は、サイドエアカーテンモード時、前記ルーフカバー13により空調風吹出し開口部15を開き、前記第1エアカーテンルーバ11と前記第2エアカーテンルーバ12を、サイドウインドウ7に沿って平行配置とするため、サイドウインドウ7から横日射が車室内に入り込む時に、サイドエアカーテンモードを選択すると、冷房性能の向上を達成することができると共に、後席乗員への輻射熱を低減することができる。
【0048】
(6) 前記風向調整駆動制御手段(リア空調コントローラ50)は、サイドエアカーテンモード時、サイドウインドウ7に沿って平行配置とした第1エアカーテンルーバ11と第2エアカーテンルーバ12を、平行度が保たれる微小角度範囲でスイングさせるため、サイドエアカーテンモードの選択時、両エアカーテンルーバ11,12をスイングさせることで、ルーバ固定モードの場合に比べ、乗員への輻射熱をより効果的に低減することができる。
【0049】
(7) 前記風向調整駆動制御手段(リア空調コントローラ50)は、冷風を吹き出すルーフサイドベントモード時、前記ルーフカバー13により空調風吹出し開口部15を開き、前記第1エアカーテンルーバ11と前記第2エアカーテンルーバ12を、車室内に向けて傾斜配置にすると共に、第1エアカーテンルーバ11の車室内に向けた傾斜角度を第2エアカーテンルーバ12の車室内に向けた傾斜角度より大きな角度に設定するため、後席に乗員が着座していないことが検出された場合、冷風を吹き出すルーフサイドベントモードを選択することにより、エアカーテン吹出し口6から拡散する冷風により後席車室を効果的に冷却することができる。
【0050】
(8) 前記風向調整駆動制御手段(リア空調コントローラ50)は、サイドウインドウデフモード時、前記ルーフカバー13により空調風吹出し開口部15を開き、前記第1エアカーテンルーバ11と前記第2エアカーテンルーバ12を、サイドウインドウ7に向けて傾斜配置にすると共に、第1エアカーテンルーバ11のサイドウインドウ7に向けた傾斜角度より第2エアカーテンルーバ12のサイドウインドウ7に向けた傾斜角度を大きな角度に設定するため、夏季に冷風をノズル風により強く吹き出すサイドウインドウデフモードを選択することにより、サイドウインドウ7を結露の無いレベルまで冷却することができると共に、後席乗員へのサイドウインドウ7からの輻射熱を低減することができる。加えて、冬季に温風をノズル風により強く吹き出すサイドウインドウデフモードを選択することにより、サイドウインドウ7の窓曇りを防止することができると共に、後席乗員が奪われる輻射熱を低減することができる。
【0051】
(9) 前記同調駆動機構は、複数の噛み合いギア31,32,33,34,35,36による駆動ギア機構30であり、前記動力源は、前記駆動ギア機構30の主駆動ギア35を、フレキシブルワイヤ41を介して回転駆動する駆動モータ40であり、前記駆動ギア機構30は、第1回動軸21と第2回動軸22と第3回動軸23の軸端部が露出するルーフダクト4の側部位置に設定し、前記駆動モータ40は、リア空調ユニット3が配置された後席シートの後部位置に設定したため、駆動ギア機構30と駆動モータ40の分離配置により、車室内空間を狭めることなく、駆動ギア機構30と駆動モータ40を設定することができる。ちなみに、駆動ギア機構と駆動モータを一体配置とすると、現状のルーフ9とルーフライニング10の間の空間を拡大する必要があり、その拡大分、車室内空間を狭めることになる。
【0052】
以上、本発明の車両用風向調整装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0053】
実施例1では、細長い方形による開口形状のエアカーテン吹出し口を囲む一対の長辺ダクト端面に2つのエアカーテンルーバを設定する例を示したが、空調風吹出し口の開口形状は如何なる形状であっても良い。要するに、複数のルーバは、空調風吹出し口を囲むダクト端面のうち、一辺のダクト端面に沿って設定した第1回動軸を中心として開閉動作する第1ルーバと、一辺のダクト端面とは対向する他の一辺のダクト端面に沿って設定した第2回動軸を中心として開閉動作する第2ルーバを有するものであれば、実施例1には限られることはない。
【産業上の利用可能性】
【0054】
実施例1では、自動車の後席側サイドエアカーテンを形成する車両用風向調整装置への適用例を示した。しかし、自動車の前席側サイドエアカーテンを形成する車両用風向調整装置へも適用できるし、また、サイドエアカーテンに限らず、ベントやフットやデフ等の吹出し口の位置に設けられた現状の風向調整ルーバに代えて適用することもできる。要するに、ダクトの空調風吹出し口の位置に複数のルーバを開閉可能に設けた車両用風向調整装置であれば適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】実施例1の車両用風向調整装置が適用された自動車を示す概略側面図である。
【図2】実施例1の車両用風向調整装置の右側エアカーテン吹出し口を示す図1のA−A線断面図である。
【図3】実施例1の車両用風向調整装置の第1エアカーテンルーバの第1回動軸と第2エアカーテンルーバの第2回動軸とルーフカバーの第3回動軸を駆動する駆動ギア機構と駆動モータと駆動制御系を示す斜視図である。
【図4】従来の車両用風向調整装置の一例を示す風向調整作用説明図である。
【図5】実施例1の車両用風向調整装置におけるサイドエアカーテンモード時の風向調整作用説明図である。
【図6】実施例1の車両用風向調整装置におけるルーフサイドベントモード時の風向調整作用説明図である。
【図7】実施例1の車両用風向調整装置におけるサイドウインドウデフモード時の風向調整作用説明図である。
【符号の説明】
【0056】
1 フロントベントダクト
2 フロントベント吹出し口
3 リア空調ユニット(空調ユニット)
4 ルーフダクト(ダクト)
5 ルーフベント吹出し口
6 エアカーテン吹出し口(空調風吹出し口)
7 サイドウインドウ
8 リア空調風戻し吹出し口
9 ルーフ
10 ルーフライニング
11 第1エアカーテンルーバ(第1ルーバ)
12 第2エアカーテンルーバ(第2ルーバ)
13 ルーフカバー
14 斜め空間
15 空調風吹出し開口部
21 第1回動軸
22 第2回動軸
23 第3回動軸
30 駆動ギア機構(同調駆動機構)
40 駆動モータ(動力源)
41 フレキシブルワイヤ
50 リア空調コントローラ(風向調整駆動制御手段)
51 リアコントロールパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダクトの空調風吹出し口の位置に複数のルーバを開閉可能に設けた車両用風向調整装置において、
前記複数のルーバは、前記空調風吹出し口を囲むダクト端面のうち、一辺のダクト端面に沿って設定した第1回動軸を中心として開閉動作する第1ルーバと、一辺のダクト端面とは対向する他の一辺のダクト端面に沿って設定した第2回動軸を中心として開閉動作する第2ルーバを有することを特徴とする車両用風向調整装置。
【請求項2】
請求項1に記載された車両用風向調整装置において、
前記ダクトは、車載の空調ユニットからの空調風をサイドウインドウの上部に沿って導くルーフダクトであり、
前記空調風吹出し口は、その開口形状を、一対の長辺ダクト端面と一対の短辺ダクト端面により囲まれた細長い方形による開口形状とし、前記ルーフダクトからの空調風をサイドウインドウに向かって吹き出すエアカーテン吹出し口であり、
前記第1ルーバは、サイドウインドウ側の長辺ダクト端面に設定された第1エアカーテンルーバであり、
前記第2ルーバは、車室内側の長辺ダクト端面に設定された第2エアカーテンルーバであることを特徴とする車両用風向調整装置。
【請求項3】
請求項2に記載された車両用風向調整装置において、
前記ルーフダクトは、ルーフとルーフライニングの間の空間に配置され、
前記ルーフライニングに開口した空調風吹出し開口部の位置に、前記ルーフダクト側の第3回動軸を中心とする回動により空調風吹出し開口部を開閉するルーフカバーと、
前記第1エアカーテンルーバの第1回動軸と前記第2エアカーテンルーバの第2回動軸と前記ルーフカバーの第3回動軸を、1つの動力源を用いて駆動する同調駆動機構と、
選択された吹出しモードに応じて前記動力源を駆動制御する風向調整駆動制御手段と、
を設けたことを特徴とする車両用風向調整装置。
【請求項4】
請求項3に記載された車両用風向調整装置において、
前記風向調整駆動制御手段は、エアカーテン吹出し口の閉モード時、前記第1エアカーテンルーバによりエアカーテン吹出し口を塞ぎ、前記第2エアカーテンルーバをルーフダクトに沿った回避位置とし、前記ルーフカバーにより空調風吹出し開口部を塞ぐことを特徴とする車両用風向調整装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載された車両用風向調整装置において、
前記風向調整駆動制御手段は、サイドエアカーテンモード時、前記ルーフカバーにより空調風吹出し開口部を開き、前記第1エアカーテンルーバと前記第2エアカーテンルーバを、サイドウインドウに沿って平行配置とすることを特徴とする車両用風向調整装置。
【請求項6】
請求項5に記載された車両用風向調整装置において、
前記風向調整駆動制御手段は、サイドエアカーテンモード時、サイドウインドウに沿って平行配置とした第1エアカーテンルーバと第2エアカーテンルーバを、平行度が保たれる微小角度範囲でスイングさせることを特徴とする車両用風向調整装置。
【請求項7】
請求項3乃至請求項6の何れか1項に記載された車両用風向調整装置において、
前記風向調整駆動制御手段は、冷風を吹き出すルーフサイドベントモード時、前記ルーフカバーにより空調風吹出し開口部を開き、前記第1エアカーテンルーバと前記第2エアカーテンルーバを、車室内に向けて傾斜配置にすると共に、第1エアカーテンルーバの車室内に向けた傾斜角度を第2エアカーテンルーバの車室内に向けた傾斜角度より大きな角度に設定することを特徴とする車両用風向調整装置。
【請求項8】
請求項3乃至請求項7の何れか1項に記載された車両用風向調整装置において、
前記風向調整駆動制御手段は、サイドウインドウデフモード時、前記ルーフカバーにより空調風吹出し開口部を開き、前記第1エアカーテンルーバと前記第2エアカーテンルーバを、サイドウインドウに向けて傾斜配置にすると共に、第1エアカーテンルーバのサイドウインドウに向けた傾斜角度より第2エアカーテンルーバのサイドウインドウに向けた傾斜角度を大きな角度に設定することを特徴とする車両用風向調整装置。
【請求項9】
請求項3乃至請求項8の何れか1項に記載された車両用風向調整装置において、
前記同調駆動機構は、複数の噛み合いギアによる駆動ギア機構であり、
前記動力源は、前記駆動ギア機構の主駆動ギアを、フレキシブルワイヤを介して回転駆動する駆動モータであり、
前記駆動ギア機構は、第1回動軸と第2回動軸と第3回動軸の軸端部が露出するルーフダクトの側部位置に設定し、
前記駆動モータは、リア空調ユニットが配置された後席シートの後部位置に設定したことを特徴とする車両用風向調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−12636(P2009−12636A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−177372(P2007−177372)
【出願日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】