説明

車両用2段押し下げスイッチ

【課題】操作スイッチの操作回数を低減すると共に、操作感、操作性の優れた車両用スイッチを提供する。
【解決手段】筐体11にばね15によって支持され、押しボタン13によって押し下げられることによって接点21,25が導通状態となると共に押し下げ方向に移動する第1段スイッチ20と、導通状態となった第1段スイッチ20によって押し下げられて接点31,35が導通状態となる第2段スイッチ30と、を備え、押しボタン13を押し下げると第1段スイッチ20のみが導通状態となり、更に押しボタン13を押し下げると第1段スイッチ20と第2段スイッチ30とが共に導通状態となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用2段押し下げスイッチの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動車用空調装置では、ファンスイッチ(以下、SW)が押されるたびに風量がLo→M1→M2→HIと増加していき、HIの次はLoに戻って以後これを繰り返す制御が行われている。また吹出口についてもモードSWが押されるたびに吹出口がベント→バイレベル→ヒートと顔の付近に吹き出すベント吹出口から足元に吹き出すヒート吹出口へ変化して、さらに押されるとベントに戻って以後これを繰り返す制御が行われている。
【0003】
しかしながら、この構成では変更されるパターンが一定であるために1回前のモードに設定する場合にはSWを何回も操作する必要があり操作が煩雑となるという問題があった。例えば、ブロアの風量がM1で設定されていてLoに減少させたいとする場合はファンSWを3回操作する必要がある。この間にファンはM2→HIと希望した方向とは逆に増加して不快感をあたえる。また吹出口を変更する場合では、バイレベルをベントにするにはモードSWを3回操作する必要があるうえに、モードダンパがヒート方向に移動してまたベント方向に移動するため、足元から風が吹き出したりベントになるまでの時間が長くなったりして操作上の不快感があるという問題があった(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
これに対して、特許文献1には、日射量を計測し、日射量によって風量を増加する方向か減少させる方向かを判定する風量変更方向判定手段を備え、スイッチを操作した際にスイッチ操作者の望む風量の変更方向を予測し、操作者の望む風量に少ない操作回数で到達することができる方法が提案されている。
【0005】
また、特許文献2には、車両のスライドドアの開閉を行う際に、スイッチ操作の回数を低減するために、1つのスイッチを短押しすると、スライドドアがアンロックされ、その後スイッチが押されている時間を計時し、長押しの時にはスライドドアを開動作させてから次の操作に移るようにして、1回の操作でアンロックと開動作ができるようにして操作回数が少なくなるようにしたスライドドア制御装置が提案されている。また、車両用の空調装置においても単一のスイッチを短押しした場合は通常に設定温度を1ステップずつ変化させ、長押しした場合には設定温度を早送りする機能を備え、1つのスイッチによる操作によって空調機器の制御を行うようにしているものがある。
【0006】
【特許文献1】特開平10−100637号公報
【特許文献2】特開2006−299567号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記のように、1つのスイッチを長押しした場合と短押しした場合によって設定状態が変化するようなスイッチは、短押しと長押しとの時間は制御機器のソフトウェアによって一義的に決まっているため、個々のユーザに好みに合わない場合があり、あるユーザには長押しによって制御が切り替わるまでの時間がちょうどよくても、他のユーザには冗長に感じられたり、逆に短すぎると感じられたりする場合がある。また、同じスイッチを押している間に機器の応答が変化してしまうことから、ユーザの側から見た場合、動作の切り替えタイミングがわかりにくく、逆に操作感の低下や操作性の低下を招くことがあった。
【0008】
そこで、本発明は、操作スイッチの操作回数を低減すると共に、操作感、操作性の優れた車両用スイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の車両用2段押し下げスイッチは、1つの押し下げ部により各接点を順次導通させる車両用2段押し下げスイッチであって、基体部と、基体部に弾性体によって支持され、押し下げ部によって押し下げられることによって接点が導通状態となると共に押し下げ方向に移動する第1段スイッチと、基体部に取付けられ、導通状態となった第1段スイッチによって押し下げられて接点が導通状態となる第2段スイッチと、を備え、押し下げ部を押し下げると第1段スイッチのみが導通状態となり、更に押し下げ部を押し下げると第1段スイッチと第2段スイッチとが共に導通状態となること、を特徴とする。
【0010】
本発明の車両用2段押し下げスイッチにおいて、第1段スイッチは、弾性体によって支持される基板と、基板に取付けられ、押し下げ部によって押し下げられる第1接点と、基板に固定される第2接点とを含み、第1接点と第2接点とが導通した状態で押し下げ方向に移動し、第2段スイッチは、導通した状態の第1段スイッチの基板によって押し下げられる第3接点と、基体部に固定され、基板によって押し下げられる第3接点に導通する第4接点とが設けられていること、としても好適である。
【0011】
本発明の車両用2段押し下げスイッチにおいて、第1段スイッチは、表面に凸となるよう成形された押し下げ部を有し、表面と反対側面に第1接点が設けられた弾性体の第1導電シートと、第1導電シートの表面と反対側にスペーサを介して重ね合わされ、第1接点に対向して設けられ、表面の押し下げ部を押し下げることによって第1接点に導通する第2接点が設けられた弾性体の第2導電シートと、を含み、第2段スイッチは、第2接点に導通し、第1導電シートの押し下げ部によって押し下げられる第2導電シートの第2接点の反対側の面に設けられた第3接点と、第2導電シートとスペーサを介して重ね合わされ、第3接点と対向する第4接点が設けられた第3導電シートとを含むこと、としても好適である。
【0012】
本発明の車両用2段押し下げスイッチは、1つの押しボタンにより各接点を順次導通する車両用2段押し下げスイッチであって、基体部と、基体部上に設けられた第1、第2接点と、基体部に取付けられた第1の弾性体によって基体部と距離をあけて支持される第3接点と、基体部に取付けられた第2の弾性体によって基体部との距離が第3接点よりも大きくなるように支持される第4接点と、押しボタンに当接するように第1の弾性体と押しボタンとの間に設けられ、押しボタンの押し下げによって第1の弾性体を弾性変形させ、第3接点を第1接点に向けて押し下げ、第3接点が第1接点に押し当たると基体部と押しボタンとの間の距離が短くなるように弾性変形する第3の弾性体と、押しボタンに当接するように第2の弾性体と押しボタンとの間に設けられ、押しボタンの押し下げによって第2の弾性体を弾性変形させ、第4接点を第2接点に向けて押し下げる突片と、を備え、第3の弾性体の押しボタン側端と第3接点との押し下げ方向の距離は、突片の押しボタン側端と第4接点との押し下げ方向の距離よりも長く、押しボタンが押し下げられると、第1の弾性体の変形によって第3接点と第1接点のみが当接して導通し、更に押しボタンが押し下げられると、第2及び第3の弾性体の変形によって第4接点が第2接点に当接して第3接点と第1接点及び第4接点と第2接点とがそれぞれ導通すること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、操作スイッチの操作回数を低減すると共に、操作感、操作性の優れた車両用スイッチを提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明する。図1に示すように、本発明の実施形態である車両用2段押し下げスイッチ10は、基体部である筐体11と、筐体11にスライド自在に取付けられた押し下げ部である押しボタン13と、筐体11に取付けられた弾性体であるばね15とばね15によって支持された第1段スイッチ20と、第1段スイッチ20の筐体11の底板11b側に設けられた台座14の上に固定された第2段スイッチ30と、を備えている。
【0015】
第1段スイッチ20は、ばね15を介して筐体11に支持されている基板12と、基板12の上に設けられ、内部にばねを含むヒンジ23とヒンジ23の周りに回転するアーム22とアーム先端の基板側に設けられた第1接点21と、基板12の上に設けられた第2接点25とを含んでいる。第2段スイッチ30は、内部にばねを含み台座14の上に取付けられたヒンジ33と、ヒンジ33の周りに回転するアーム32と、アーム32の先端の台座14の側に取付けられた第3接点31と、台座14の上に設けられた第4接点35とを含んでいる。
【0016】
第1段スイッチ20の第1接点21には電線24が接続され、第2接点25には電線26が接続されている。また、第2段スイッチ30の第3接点31には電線34が接続され、第4接点には電線36が接続されている。各電線24,26,34,36はそれぞれ車両空調用の制御装置37に接続されている。
【0017】
初期状態では、第1段スイッチ20のアーム22はヒンジ23内部のばねによって基板12から離れた位置に位置しており、第1接点21は第2接点25と離間し、導通していない状態となっている。そして、押しボタン13はアーム22先端の基板12と反対側に接し、ヒンジ23に設けられたばねの力で基板12と反対側に向かって押し上げられた状態となっている。また、第2段スイッチ30のアーム32もヒンジ33の内部のばねの力で台座14から離れた位置に位置しており、第3接点は第4接点と離間し、導通していない。そして、第1段スイッチ20の基板12と第2段スイッチ30のアーム32の台座14と反対側の先端との間には僅かに隙間ができている。
【0018】
図2に示すように、ユーザによって押しボタン13が第1段スイッチ20の基板12の方向に押し下げられると、押しボタン13の下面は、第1段スイッチ20のアーム22先端の基板12と反対側の面に当たり、ヒンジ23のばね力に抗してヒンジ23を回転させ、アーム22の先端を基板12に向かって押し下げ、アーム22の先端にある第1接点21を基板12に設けられている第2接点25に向かって押し下げる。この際、ばね15はヒンジ23の内部に取付けられたばねよりも固いことから、押しボタン13が押し下げられても、第1段スイッチ20の基板12の押し下げ方向の位置はほとんど変化せず、基板12と第2段スイッチ30のアーム32の先端との間には僅かな隙間が保たれた状態となっている。
【0019】
そして、更に押しボタン13が押し下げられると、第1接点21が基板12に固定されている第2接点25に当たり、第1接点21と第2接点25とが導通する。第1接点21と第2接点25とが導通すると、電線24,26とが導通状態となり、車両空調用の制御装置37は、例えば、ファンの風量を1ステップ増加させるような第1の動作信号を図示しない車両用空調装置に出力する。
【0020】
図3に示すように、更に押しボタン13を押し下げると、押しボタン13は第1接点21と基板12に固定されている第2接点25とを介して基板12を押し下げる。すると、押しボタン13の押し下げ力によって、第1段スイッチ20を支持しているばね15が圧縮され、基板12とともに第1段スイッチ20全体が押し下げ方向に向かって移動し、第1段スイッチ20の基板12は、第2段スイッチ30のアーム32の先端に当たり、アーム22の先端にある第3接点を台座14に固定されている第4接点に向かって押し下げる。そして、更に、押しボタン13を押し下げると第3接点31は第4接点35に当たり、第3接点と第4接点が導通する。第3接点と第4接点とが導通すると、電線34,36とが導通状態となり、車両空調用の制御装置37は、例えば、ファンの風量を連続的に増加させるような次の動作信号を図示しない車両用空調装置に出力する。
【0021】
ユーザによって押しボタン13の押し下げが解除されると、押しボタン13、ばね15及び各ヒンジ23,33の内部の設けられているばねの反発力によって台座14及び基板12から離れる方向に上昇して当初の位置に戻り、第1接点21と第2接点25、及び第3接点と第4接点は共に離間して、導通しない状態となる。すると、各電線24,26及び34,36は遮断状態となり、車両空調用の制御装置37は、先に出力した動作信号の出力を停止する。
【0022】
以上説明した本実施形態は、1つの押しボタン13を押し下げることによって2組の接点を順次導通させることができ、スイッチ操作の回数を低減することができるという効果を奏する。更に、ヒンジ23の内部の設けられているばねによる押しボタン13の押し下げ方向の反発力はばね15の押し下げ方向の反発力よりも小さく設定されていることから、第1段スイッチ20を導通状態とする際の押込み力と第2段スイッチ30を導通状態とする際に必要な押込み力とに差をつけることができ、押込み力によって第1段スイッチを押込んでいる状態か第2段スイッチを押し込んでいる状態かを判断することができるので、操作性、操作感を向上させることができるという効果を奏する。
【0023】
図4から図6を参照して他の実施形態について説明する。図1から図3を参照して説明した実施形態と同様の部分については同様の符号を付して説明を省略する。図4に示すように、本実施形態の車両用2段押し下げスイッチ40は、図1から図3を参照して説明した実施形態の押し下げ方向に設けられたばね15を基板12の部分に開口を持つ弾性板16としたものである。弾性板16は押し下げ方向移動すると押し下げ方向に反発力を持つものである。
【0024】
図4に示すように、本実施形態の車両用2段押し下げスイッチ40は、筐体11の側面11aに開口のある弾性板16が設けられ、弾性板16の開口部分に第1段スイッチ20の基板12が取付けられる様に構成されている。また、第2段スイッチ30は筐体11の底板11bに取付けられている。第1段スイッチ20は先に説明した実施形態と同様、基板12の上に設けられたヒンジ23とヒンジ23の周りに回転するアーム22とアーム先端の基板側に設けられた第1接点21と、基板12の上に設けられた第2接点25とを含み、第2段スイッチ30は、筐体11の底板11bに取付けられたヒンジ33とヒンジ33の周りに回転するアーム32とアーム32の先端の底板11bの側に取付けられた第3接点31と、底板11bの上に設けられた第4接点35とを含んでいる。
【0025】
弾性板16の押し下げ方向の反発力は各ヒンジ23,33の内部の設けられているばねによる押し下げ方向の反発力よりも大きくなるよう構成されている。弾性板16は樹脂などの薄板によって構成されていてもよいし、金属製の薄板によって構成されていてもよい。
【0026】
図5、図6に示すように、ユーザによって押しボタン13が押し下げられると、押しボタン13は第1接点21と基板12に固定されている第2接点25とを介して基板12を押し下げる。すると、押しボタン13の押し下げ力によって、第1段スイッチ20を支持している弾性板16が押し下げ方向にたわみ、基板12と共に第1段スイッチ20全体が押し下げ方向に向かって移動し、第1段スイッチ20の基板12は、第2段スイッチ30のアーム32の先端に当たり、第3接点を第4接点に向かって押し下げ、第3接点31は第4接点35に当たり、第3接点31と第4接点35とが導通する。
【0027】
ユーザによって押しボタン13の押し下げが解除されると、弾性板16及び各ヒンジ23,33の内部の設けられているばねの反発力によって第1接点21と第2接点25、及び第3接点31と第4接点35は共に離間して初期状態に戻る。
【0028】
以上説明した本実施形態は、先に説明した実施形態と同様の効果を奏すると共に、押し下げ方向に圧縮、伸縮するばね15に代わって弾性板16によって第1段スイッチ20の基板12を支持するように構成しているので、押し下げ方向の高さを低く抑えることができ、全体高さを薄くすることができ、狭い車両のコンソールなどに取付けやすくなるという効果を奏する。
【0029】
図7から図9を参照して別の他の実施形態について説明する。図7に示すように、本実施形態の車両用2段押し下げスイッチ50は、基体部である基板75の上に設けられた第3導電シート71と、第3導電シート71の基板75と反対側に重ね合わされたスペーサ65と、スペーサ65の第3導電シート71の反対側に重ね合わされた弾性体の第2導電シート61と、第2導電シート61の基板75と反対側に重ね合わされたスペーサ54と、スペーサ54の第2導電シート61と反対側に重ね合わされた弾性体の第1導電シート51とを備えている。
【0030】
各スペーサ54,65は同一の部位にそれぞれ孔55、66を備えている。第1導電シート51はスペーサ54の孔55の位置の基板75と反対方向の表面側に表面から凸となるように成形され、ユーザによって押し下げられる押し下げ部52を備え、押し下げ部52の基板75側には第1接点53が設けられている。第2導電シート61の第1導電シート51の側の第1接点53と対応する位置には、第2接点62が設けられている。また、第2導電シート61の第2接点62の反対側面には第3接点63が設けられている。第3導電シート71の第3接点63と対向する位置には第4接点72が設けられている。
【0031】
第1導電シート51は電線56に接続され、第2接点62と第3接点63とは第2導電シート61を介して導通しており、第2導電シート61は電線64に接続され、第3導電シート71は電線73に接続されている、各電線56,64,73はそれぞれ車両用空調装置の制御装置74に接続されている。
【0032】
初期状態においては、図7に示すように、第1接点53と第2接点62とはスペーサ54によって離間され、遮断状態となっており、第3接点と第4接点はスペーサ65によって離間され、遮断状態となっている。
【0033】
図8に示すように、ユーザによって第1導電シート51の押し下げ部52が押し下げられると、第1導電シート51は弾性変形して第1導電シート51はスペーサ54の孔55の中に押し下げられ、第1接点53が第2導電シート61の第2接点62に接し、第1接点53と第2接点63とは導通状態となる。すると、電線56と64とが導通状態となり、車両空調用の制御装置74は、例えば、ファンの風量を1ステップ増加させるような第1の動作信号を図示しない車両用空調装置に出力する。
【0034】
そして、図9に示すように、更にユーザによって押し下げ部52が押し下げられると、第1導電シート51は更に弾性変形し、第2導電シートを弾性変形させてスペーサ65の孔66の中に押し下げる。そして、第2導電シート61の第3接点63は第3導電シート71の第4接点72に接し、第3接点63と第4接点72とは導通状態となる。この際、第1接点53と第2接点62も導通状態となっていることから、第1から第4接点53,62,63,72が全て導通状態となる。そして電線56と64と73とが導通状態となる。第1接点53と第2接点62とが導通すると、車両空調用の制御装置74は、例えば、ファンの風量を1ステップ増加させるような動作信号を図示しない車両用空調装置に出力し、第3接点63と第4接点72とが導通すると、車両空調用の制御装置74は、例えば、ファンの風量を連続的に増加させるような次の動作信号を図示しない車両用空調装置に出力する。
【0035】
ユーザによって押し下げ部52の押し下げが解除されると、第1、第2導電シート51,61はその弾性力によって反発して上昇し、当初の状態に戻り、第1接点53と第2接点62、及び第3接点63と第4接点72とはそれぞれ離間して導通しない状態となる。すると、各電線56,64及び73は遮断状態となり、車両空調用の制御装置74は、先に出力した動作信号の出力を停止する。
【0036】
以上説明した本実施形態は、押し下げ部52の操作回数を低減することができるという効果の他に、第1接点と第2接点を接触させる際には第1導電シート51を弾性変形させるだけの力で押し下げ部52を押し下げ、第3接点と第4接点とを接触させる際には第1導電シート51と共に第2導電シート61を弾性変形させる力で押し下げ部52を押し下げるよう構成されていることから、第1接点53と第2接点62とを導通状態とする際の押込み力と更に第3接点63と第4接点72とを導通状態とする際に必要な押込み力とに差をつけることができ、押込み力によって第1接点53と第2接点62とを導通させている状態か、第3接点63と第4接点72とを導通させている状態かを判断することができるので、操作性、操作感を向上させることができるという効果を奏する。
【0037】
図10から図12を参照して、更に別の実施形態について説明する。図1から図9を参照して説明した実施形態と同様の部分については同様の符号を付して説明は省略する。図10に示すように、本実施形態の車両用2段押し下げスイッチ80は、押し下げ部である押しボタン13と、筐体11と、底板11bに共通の取付け部90を介して固定された第1の弾性体83と第2の弾性体86と、を備えている。筐体11の底板11bには、第1接点81と第2接点82とが設けられている。第1接点、第2接点は薄い接点であり、底板11bと略同一面に構成されている。
【0038】
第1の弾性体83は、筐体11の底板11bと反対側に凸となるように湾曲した形状で、底板11b側の第1接点81に対向する位置には、第1の弾性体83の湾曲部から底板11bに向かって延び、先端に第1接点81に接する第3接点85を備える突部84が設けられている。第1の弾性体83の底板11bと反対側には底板11bと反対側に向かってV字状に延びる第3の弾性体91が設けられている。第3の弾性体91の底板11bと反対側の端部は押しボタン13が当接するよう構成されている。
【0039】
第2の弾性体86は第1の弾性体83と同様に、底板11bと反対側に凸となるように湾曲した形状で、底板11b側の第2接点82に対向する位置には、第2の弾性体86の湾曲部から底板11bに向かって延び、先端に第2接点82に接する第4接点89を備える突部88が設けられている。第2の弾性体86の底板11bと反対側には底板11bと反対側に向かって延びる突片87が設けられている。突片87の底板11bと反対側の端部は押しボタン13が当接するよう構成されている。
【0040】
第2の弾性体86の突部88の先端の第4接点89と底板11bとの距離Hは、第1の弾性体83の突部84の先端の第3接点85と底板11bとの距離Hよりも大きく、第3接点85から押しボタン13に当接する第3の弾性体91の底板11bと反対方向の端面までの距離Lは、第4接点89から押しボタン13に当接する突片87の底板11bと反対方向の端面までの距離Lよりも長くなる様に構成されている。また、第1から第4の各接点81,82,85,89はそれぞれ電線95,96,97,98に接続されている。
【0041】
図10に示すように、初期状態では、押しボタン13の下面は第3の弾性体91と突片87の端面に当接し、各弾性体83,86に支持されて初期位置に保持されている。
【0042】
図11に示すように、ユーザによって押しボタン13が押し下げられると、押しボタン13に接している第3の弾性体91と突片87の端面が押しボタン13によって押し下げられ、第1、第2の弾性体83,86が底板11bの方向に向かって押し下げられるように弾性変形する。そして、図10に示す第3接点85と第1接点81との距離Hだけ第1の弾性体83が押し下げられると突部84の第3接点85が第1接点81に当たり、第1接点と第3接点とが導通する。一方、第4接点89と第2接点82との距離Hは距離Hよりも大きいため、第2接点と第4接点とは離間した状態を保っている。
【0043】
ユーザが更に押しボタン13を押し下げると、押しボタン13は更に第3の弾性体91の端面と突片87の端面を押し下げられ、第1の弾性体83の突部84が底板11bとの間に挟まれるので、第1の弾性体83はさらに弾性変形せず、第3の弾性体91のV字形状が開くように弾性変形する。また、第2の弾性体86は先端の第4接点89と第2接点の間に隙間があることから、突片87によって押し下げられると第2の弾性体86が底板11bに向かう方向に弾性変形する。そして、突部88は底板11bに向かって押し下げられ、第4の接点89が第2の接点85に接すると第4接点と第2接点とは導通し、押しボタン13と底板11bとの間に突片87と突部88とが挟まれると押しボタン13の押し下げは停止する。
【0044】
第1接点81と第3接点85、第2接点82と第4接点89とが導通するとそれぞれ電線95と97及び電線96,98とが導通する。そして、車両空調用の制御装置37はそれぞれの導通状態に応じて図1から図3を参照して説明した実施形態と同様の信号を出力する。
【0045】
ユーザが押しボタン13の押し下げを解除すると、押しボタン13は第1及び第2の弾性体83,86によって押し上げられ、初期位置に戻る。
【0046】
以上述べた実施形態は、図1から図3を参照して説明した実施形態と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施形態における車両用2段押し下げスイッチの断面図である。
【図2】本発明の実施形態における車両用2段押し下げスイッチの動作状態を示す説明図である。
【図3】本発明の実施形態における車両用2段押し下げスイッチの動作状態を示す説明図である。
【図4】本発明の他の実施形態における車両用2段押し下げスイッチの断面図である。
【図5】本発明の他の実施形態における車両用2段押し下げスイッチの動作状態を示す説明図である。
【図6】本発明の他の実施形態における車両用2段押し下げスイッチの動作状態を示す説明図である。
【図7】本発明の他の実施形態における車両用2段押し下げスイッチの断面図である。
【図8】本発明の他の実施形態における車両用2段押し下げスイッチの動作状態を示す説明図である。
【図9】本発明の他の実施形態における車両用2段押し下げスイッチの動作状態を示す説明図である。
【図10】本発明の他の実施形態における車両用2段押し下げスイッチの断面図である。
【図11】本発明の他の実施形態における車両用2段押し下げスイッチの動作状態を示す説明図である。
【図12】本発明の他の実施形態における車両用2段押し下げスイッチの動作状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0048】
10,40,50,80 車両用2段押し下げスイッチ、11 筐体、11b 底板、12 基板、13 押しボタン、14 台座、15 ばね、16 弾性板、20 第1段スイッチ、21,53,81 第1接点、22,32 アーム、23,33 ヒンジ、24,26,34,36,56,64,73 電線、25,62,82 第2接点、30 第2段スイッチ、31,63,85 第3接点、35,72,89 第4接点、37,74 制御装置、51 第1導電シート、52 押し下げ部、54,65 スペーサ、55,66 孔、61 第2導電シート、71 第3導電シート、75 基板、83 第1の弾性体、84,88 突部、86 第2の弾性体、87 突片、90 取付け部、91 第3の弾性体、H,H,L,L 距離。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの押し下げ部により各接点を順次導通させる車両用2段押し下げスイッチであって、
基体部と、
基体部に弾性体によって支持され、押し下げ部によって押し下げられることによって接点が導通状態となると共に押し下げ方向に移動する第1段スイッチと、
基体部に取付けられ、導通状態となった第1段スイッチによって押し下げられて接点が導通状態となる第2段スイッチと、を備え、
押し下げ部を押し下げると第1段スイッチのみが導通状態となり、更に押し下げ部を押し下げると第1段スイッチと第2段スイッチとが共に導通状態となること、
を特徴とする車両用2段押し下げスイッチ。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用2段押し下げスイッチであって、
第1段スイッチは、
弾性体によって支持される基板と、基板に取付けられ、押し下げ部によって押し下げられる第1接点と、基板に固定される第2接点とを含み、第1接点と第2接点とが導通した状態で押し下げ方向に移動し、
第2段スイッチは、
導通した状態の第1段スイッチの基板によって押し下げられる第3接点と、基体部に固定され、基板によって押し下げられる第3接点に導通する第4接点とが設けられていること、
を特徴とする車両用2段押し下げスイッチ。
【請求項3】
請求項1に記載の車両用2段押し下げスイッチであって、
第1段スイッチは、
表面に凸となるよう成形された押し下げ部を有し、表面と反対側面に第1接点が設けられた弾性体の第1導電シートと、第1導電シートの表面と反対側にスペーサを介して重ね合わされ、第1接点に対向して設けられ、表面の押し下げ部を押し下げることによって第1接点に導通する第2接点が設けられた弾性体の第2導電シートと、を含み、
第2段スイッチは、
第2接点に導通し、第1導電シートの押し下げ部によって押し下げられる第2導電シートの第2接点の反対側の面に設けられた第3接点と、第2導電シートとスペーサを介して重ね合わされ、第3接点と対向する第4接点が設けられた第3導電シートとを含むこと、
を特徴とする車両用2段押し下げスイッチ。
【請求項4】
1つの押しボタンにより各接点を順次導通する車両用2段押し下げスイッチであって、
基体部と、
基体部上に設けられた第1、第2接点と、
基体部に取付けられた第1の弾性体によって基体部と距離をあけて支持される第3接点と、
基体部に取付けられた第2の弾性体によって基体部との距離が第3接点よりも大きくなるように支持される第4接点と、
押しボタンに当接するように第1の弾性体と押しボタンとの間に設けられ、押しボタンの押し下げによって第1の弾性体を弾性変形させ、第3接点を第1接点に向けて押し下げ、第3接点が第1接点に押し当たると基体部と押しボタンとの間の距離が短くなるように弾性変形する第3の弾性体と、
押しボタンに当接するように第2の弾性体と押しボタンとの間に設けられ、押しボタンの押し下げによって第2の弾性体を弾性変形させ、第4接点を第2接点に向けて押し下げる突片と、を備え、
第3の弾性体の押しボタン側端と第3接点との押し下げ方向の距離は、突片の押しボタン側端と第4接点との押し下げ方向の距離よりも長く、
押しボタンが押し下げられると、第1の弾性体の変形によって第3接点と第1接点のみが当接して導通し、更に押しボタンが押し下げられると、第2及び第3の弾性体の変形によって第4接点が第2接点に当接して第3接点と第1接点及び第4接点と第2接点とがそれぞれ導通すること、
を特徴とする車両用2段押し下げスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−90948(P2009−90948A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−266254(P2007−266254)
【出願日】平成19年10月12日(2007.10.12)
【出願人】(000185617)小島プレス工業株式会社 (515)
【Fターム(参考)】