説明

車両走行情報比較システム

【課題】
車両の走行に関わるエネルギー消費を、ある車両が実際に走行した走行時の条件に基づいて、エネルギー消費特性が異なる車両間で可能にする。
【解決手段】
車両に搭載した情報装置によって、車両の速度、加速度、走行路の勾配、エネルギー消費量などの走行情報を取得する。
また、自車と比較対象車両のエネルギー消費推定モデルを用い、前記走行情報が示す走行条件と同等の走行を、比較対象の車両が行った場合のエネルギー消費の推定を行う。
さらに、比較する車両間でエネルギー源が異なる場合は、比較可能な値にエネルギー消費を換算して出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に自動車に搭載される情報機器を含み、車両走行時のエネルギー消費に関わる情報を取得し、エネルギー消費特性が異なる車両でのエネルギー消費を比較するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
乗用車などの自動車の動力の多様化が進みつつある。特に、石油資源の枯渇の懸念に対する省エネルギー化や、二酸化炭素排出量削減などの環境対策の観点から、電気自動車の実用化が取り組まれ、現実のものとなりつつある。
【0003】
また、車両において車載情報機器の利用が盛んになってきており、代表的な情報機器として、カーナビゲーション装置がある。当初は、装置内に持つ地図データと、人工衛星から取得する情報に基づいて、自車位置の表示や、目的地までの経路案内などを行うものであった。近年、カーナビゲーション装置は、携帯電話などの通信手段を用いて外部とネットワーク接続し、外部との情報連携機能を持つようになっている。
【0004】
車両に設置され、外部との情報連携機能を持つ装置は、カーナビゲーション装置に限定されるものではなく、ナビゲーション機能を持たない装置が情報連携を行う場合もある。車両における情報連携機能やサービスを総称して、テレマティクス(Telematics)と称する場合がある。
【0005】
情報連携機能を用いた、燃料消費削減に関係する従来技術として、「情報提供サービスシステム、情報提供方法および端末装置」(特許文献1)が存在する。これは、「複数個の移動体に備えられた端末装置などにより、現在位置を示す位置情報、速度等の走行状態を含む移動体情報が通信網を介して送信され、これを受けた情報提供センター内のサーバ等により、各移動体から前記通信網を介して取得した移動体情報に基づいて、運転技術情報を作成し、該運転技術情報に対して、前記移動体情報に基づいて設定された少なくともひとつのランキンググループ内での順位付けを行い、当該順位付けされた運転技術情報を各移動体へ提供する」(要約参照)ものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−208696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
車両のエネルギー消費の特性は、車両の種類によってさまざまに異なる。たとえば、ガソリンエンジンを動力源とする車両であれば、エンジンの排気量やエンジンの回転特性の違い、車両の重量などの要因で異なる。電気を動力源とする車両であれば、電気モータの種類などの要因で異なる。
【0008】
また、一定距離あたりの走行で消費されるエネルギー量などで表される、いわゆる燃費も、実際に走行したときの速度や、どのような加速を行ったか等によって変化する。車両メーカが公表する、定められた条件において測定した燃費の値は、車両の特性を示す指標として、車両の使用者が、車両を選択する際の目安のひとつとなっている。
【0009】
しかし、実際に車両を走行した場合は、走行の条件がさまざまに異なっているため、車両メーカが公表している燃費と実際の走行時の燃費とは、異なる結果になる場合がほとんどである。そのため、車両を購入する際などに、車両の種類を選択する条件の一つとして、燃費特性のよしあしを参考にすることはあっても、実際に車両を走行した場合の燃費を推定したり、ほかの車両と比較したりすることは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ある車両の走行情報をもとにして、別のエネルギー消費特性をもつ車両で、同様の走行を行った場合のエネルギー消費の推定や、他の車両との比較を可能にする。
【0011】
車両のエネルギー消費は、車両のエネルギー消費特性だけでなく、走行時の速度や加速度や走行路の勾配などの、実際の走行時の条件によって異なる。走行時の速度や加速度は、走行時の周囲の車両の動きや、走行路の制限速度などに制約を受ける。特に、走行経路が渋滞している場合では、周囲の車両の動きに大きく制約された走行を余儀なくされる。そのため、別の車両で走行を行ったとしても、類似した速度や加速度で走行する、とみなすことができる。
【0012】
また、走行路の勾配は、走行経路の選択によっておおむね決まるものであり、走行経路は車両の使用者の使用目的によって選択される。そのため、ある車両による走行を、別の車両で同様に行った場合のエネルギー消費を推定し、比較することにより、エネルギーコストの経済性や、車両の使用の環境負荷を判断することが可能である。
【0013】
具体的には、本発明は、車両の走行についての情報を取得し、取得した走行情報に基づき、エネルギー消費量を推定して出力するシステムを提供する。
【0014】
当該システムは、車両の走行情報として、当該車両の走行位置、速度、加速度、走行路の勾配のうち少なくともひとつを取得し、該走行情報に基づき、推定対象車両のエネルギー消費の推定を行い、推定結果を出力する、ことを特徴とする。
【0015】
さらに、エネルギー消費の推定対象となる推定対象車両について、車両の走行情報からエネルギー消費量を推定するためのエネルギー消費推定モデルを備え、エネルギー消費推定モデルに、車両の走行情報を入力して、推定対象車両のエネルギー消費の推定を行ってもよい。
【0016】
走行情報は、さらに、走行情報の取得元車両のエネルギー消費量を含み、同一の走行状態における、取得元車両のエネルギー消費量と、推定対象車両の推定エネルギー消費量とを、出力してもよい。
【0017】
さらに、走行情報の取得元車両に関わるエネルギー消費推定モデルを備え、走行情報の取得元車両について、該走行情報と、エネルギー消費推定モデルと、に基づき、取得元車両のエネルギー消費の推定を行い、同一の走行状態における、取得元車両の推定エネルギー消費量と、推定対象車両の推定エネルギー消費量とを、出力してもよい。
【0018】
さらに、該推定処理を車両に搭載する車載情報装置によって行ってもよい。
【0019】
また、本発明のエネルギー消費推定システムは、車載情報装置と、情報センタ装置、とからなり、
情報センタ装置は、比較対象車両に関わる走行情報と、当該走行情報にかかわるエネルギー消費量とが蓄積されたデータベースを備え、車載情報装置から、車載情報装置が取得した走行情報を受信し、受信した走行情報に基づき、データベースの蓄積された走行情報を検索し、取得した走行情報に類似する走行情報におけるエネルギー消費量を抽出するものであってもよい。
【0020】
さらに、センタ装置は、抽出したエネルギー消費量を車載情報装置に送信し、車載情報装置は、受信した推定対象車両について抽出されたエネルギー消費量を出力してもよい。
【0021】
上記態様によれば、ある車両が実際に走行した際のエネルギー消費と、該車両とはエネルギー消費特性が異なる車両が、同様の条件で走行したと仮定した場合のエネルギー消費の推定結果とを比較することが可能になる。
【発明の効果】
【0022】
ある車両が実際に走行した際のエネルギー消費を推定することや、当該車両とはエネルギー消費特性が異なる車両が、同様の条件で走行したと仮定した場合のエネルギー消費を推定することや、これらの推定結果を比較することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例1の全体構成を例示する図である。
【図2】ある車両におけるエネルギー消費を推測するためのモデルを例示する図である。
【図3】エネルギー消費の比較出力を例示する図である。
【図4】エネルギー消費推定プログラムの概略処理内容を例示するフローチャートである。
【図5】実施例2の全体構成を例示する図である。
【図6】実施例2の処理フローの概要を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本願発明の実施例を、図面を用いて説明する。なお、本願発明の実施の形態は、この実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0025】
図1が実施例1の全体構成図である。
【0026】
車載情報装置(10)は、CPU(101)、主記憶装置(102)、外部記憶装置(103)、入力装置(104)、表示装置(105)、記憶媒体入出力装置(106)、バスなどの内部通信線(107)からなる。外部記憶装置(103)には、後述するエネルギー消費推定プログラム(109)とエネルギー消費推定モデル(110)が格納されている。
【0027】
また、該車載情報装置(10)は、各種センサ(11)と接続し、車両の走行情報を入手する。各種センサ(11)は車載情報装置(10)に直接接続されていてもよい。あるいは車両内の情報網を介して接続されていてもよい。
【0028】
本実施例では、速度、加速度、走行路の勾配、エネルギー消費量を各々対応する各種センサ(11)から取得する。エネルギー消費は、電気自動車の場合は、電力消費量であってよい。ここで、エネルギー消費量をセンサから取得することとしているが、該車両のエネルギー消費を、該車両の速度、加速度、走行路の勾配などのパラメータと、後述する該車両のエネルギー消費を推定するためのエネルギー消費モデルと、から推定することとしてもよい。
【0029】
車載情報装置(10)には、比較対象となる車両のエネルギー消費を推定するために必要な、エネルギー消費推定モデル(110)が設定されている。エネルギー消費推定モデルは、車両の速度、加速度、走行路の勾配など、車両の走行情報から、モデルの対象である車両のエネルギー消費量を推定するための、計算方法である。計算の具体的な方法は、要求する計算の精度などに応じて、具体的に定めればよい。また、推定に用いる走行情報も、前記の車両の速度、加速度、走行路の勾配に限定されるものではない。
【0030】
たとえば、車両への人や荷物などの積載重量を取得し、エネルギー消費量を推定するための要素として加えてもよい。積載重量は、車両に設けた重量センサによって、取得してもよい。あるいは、速度、勾配、動力の出力トルクと加速度の関係から、そのときの車両の重量を推定してもよい。あるいは、車両の使用者に、車両の乗車人数や積載貨物の重量を入力させてもよい。
【0031】
エネルギー消費推定モデル(110)は、車載情報装置(10)にあらかじめ設定されているものであってよい。あるいは、車載情報装置(10)に複数のモデル(110)を用意しておき、車両の使用者が比較対象を選択するものであってもよい。あるいは、エネルギー消費推定モデル(110)をソフトウェアモジュールとして記憶媒体に格納し、車載情報装置(10)に読み取らせ、エネルギー消費推定プログラム(109)から呼び出すことにしてもよい。あるいは、エネルギー消費推定モデルをソフトウェアモジュールとして通信経由で車載情報装置(10)に導入することにしてもよい。
【0032】
なお、本実施例で説明する処理内容は、主記憶装置(102)または外部記憶装置(103)に格納されているエネルギー消費推定プログラム(109)をCPU(101)が実行することにより具現化される。当該プログラムは、予め主記憶装置(102)または外部記憶装置(103)に格納されていてもよいし、図示していない着脱可能な記憶媒体または通信媒体(すなわちネットワークまたはそれを伝播するデジタル信号や搬送波)を介して、主記憶装置(102)または外部記憶装置(103)に導入されてもよい。
【0033】
本実施例においては、エネルギー消費推定モデルとして、図2に示す車両の速度(201)、加速度(202)、走行路の勾配(203)の3次元のパラメータと、そのパラメータに対するエネルギー消費の単位距離あたりの値(204)を対応付けたものを用いる。これ以外のモデルを用いてもよい。
【0034】
たとえば、速度が20から30Km/時、加速度が-0.1から0.1(すなわちほぼ定速走行)、走行路の勾配が1/100から2/100(すなわち100メートルあたり1から2メートルの上り勾配)の条件に対して、エネルギー消費が98cc/Km(すなわち1キロメートルの走行あたり、ガソリン98ccを消費する)としたモデルとなっている。このようなモデルを、エネルギー消費の推定を行う比較対象の車両に対して、必要なパラメータの範囲について用意する。
【0035】
なお、該当車両自体のエネルギー消費も走行情報からの推定によって求める場合は、該当車両についてもモデルも用意する。パラメータを区切る間隔や値の精度は、エネルギー消費推定の目的にかなうように設定してよい。また、図2に示した表形式のモデルではなく、数式によるモデルなどであってもよく、エネルギー消費推定の目的にかなうものを適用してよい。
【0036】
図3と図4を参照し、エネルギー消費推定モデル(110)に基づく、エネルギー消費推定プログラム(109)の処理内容を説明する。図3は、エネルギー消費の比較出力を例示する図であり、図4は、エネルギー消費推定プログラムの概略処理内容を例示するフローチャートである。
【0037】
該車載情報装置(10)が起動されると、所定の時間間隔で、車両の走行情報を各種センサ(11)から取得する(ステップ601)。所定の時間間隔は、たとえば、毎秒ごとであってよい。あるいは、走行距離センサを接続し、10メートルごとなどの一定の走行距離ごとに走行情報を取得するなどしてもよい。
【0038】
該車載情報装置(10)は、取得した走行情報を比較対象車両のエネルギー消費推定モデルに当てはめ、比較対象車両のエネルギー消費量の推定値を得る(ステップ602)。
【0039】
該車載情報装置(10)は、走行情報として取得したエネルギー消費量の積算値(301)と、走行情報とエネルギー消費推定モデルから求めた比較対象の車両のエネルギー消費量の推定値の積算値(302)を表示する(ステップ603)。エネルギー消費量の積算値の表示に代えて、エネルギー消費量の瞬時値を表示することとしてもよい。
【0040】
積算値の表示と共に、瞬時値をグラフ(303)として表示するなどしてもよい。そのような表示は、走行情報として取得したエネルギー消費量と、走行情報から推定した比較対象の車両のエネルギー消費量の推定値の各々の瞬時値を、時系列に記録し、グラフ化することで実現できる。
【0041】
該車両の走行情報として取得するエネルギー消費量は、該車両のエネルギー源に応じて選択してよい。たとえば、ガソリンをエネルギー源とする車両においては、エンジンに噴射したガソリンの体積であってよい。
【0042】
エネルギー源が異なる場合に、比較のための換算を行って表示してもよい。たとえば、ガソリンの単位体積あたりのエネルギー量を電力量に換算するための係数を用意し、エネルギー消費推定モデルによって推定した燃料消費の体積を、電力消費量に換算して表示してもよい。
【0043】
比較結果を、車載情報装置(10)の外部にデータとして出力しても良い。出力方法は、記憶媒体に記録する方法や、車載情報装置(10)から外部の情報装置への通信によって行う方法が可能である。そのような出力方法の詳細は、適切な知識を持つ当業者には明らかである。
【0044】
比較結果ではなく、車両走行情報を車載情報装置(10)の外部に出力しても良い。出力された車両走行情報を、車載情報装置(10)以外の情報装置に読み込ませ、該情報装置においてエネルギー消費の推定やその出力を行わせてもよい。
【0045】
あるいは、比較対象は、ひとつの車両ではなく、複数の車両との比較を行ってもよい。その場合は、複数の車両のエネルギー消費推定モデルを持ち、比較対象車両それぞれのモデルを用いて、エネルギー消費量の推定を行えばよい。
【実施例2】
【0046】
実施例1は、車載情報装置(10)において比較を行う例であったが、本実施例においては、車載情報装置(10)から走行情報を受信する情報センタにおいて、比較を行う。
【0047】
図5に本実施例の全体構成を示す。車載情報装置(10)は、CPU(101)、主記憶装置(102)、外部記憶装置(103)、入力装置(104)、表示装置(105)、記憶媒体入出力装置(106)、バスなどの内部通信線(107)からなる。さらに、車載情報装置(10)は、人工衛星からの電波の受信による位置の把握(いわゆるGPS機能)(401)などによって、走行位置を把握することを可能とする。
【0048】
車載情報装置(10)は通信部(402)を持ち、無線通信によって、所定の情報センタ装置(12)とネットワーク(13)を介して通信を行う。これら車載情報装置(10)の動作は、CPU(101)がプログラム(111)を実行することによって実現される。また、情報センタ装置(12)の動作も、プログラム(419)を実行することによって実現される。
【0049】
これらのプログラムも、予め主記憶装置(102)または外部記憶装置(103)に格納されていてもよいし、図示していない着脱可能な記憶媒体または通信媒体(すなわちネットワークまたはそれを伝播するデジタル信号や搬送波)を介して、主記憶装置(102)または外部記憶装置(103)に導入されてもよい。
【0050】
図6を参照して、実施例2の処理フローの概要を説明する。
【0051】
情報センタ装置(12)の通信装置(411)は、ネットワーク(13)を介して、車載情報装置(10)が取得した(ステップ501)走行情報を受け取り(ステップ502)、該車載情報装置(10)を識別する識別子と対応付けて、受け取った走行情報を記憶装置(414)に蓄積する(ステップ503)。該車載情報装置(10)との対応付けは、車載情報装置(10)と情報センタ装置(12)との間で、車載情報装置(10)を識別する情報の授受を行うことで可能である。
【0052】
車載情報装置(10)が情報センタ装置(12)に送る走行情報は、走行位置とエネルギー消費量を少なくとも含む。走行情報は、車載情報装置(10)から情報センタ装置(12)に、車両の走行に合わせて、逐次送信されることとしてもよい。あるいは、車載情報装置(10)内に、時刻情報と対応付けていったん蓄積し、所定のタイミングで一括して情報センタ装置(12)に送信することとしてもよい。
【0053】
また、車載情報装置(10)は、走行情報として、走行位置とエネルギー消費量に加えて、ほかの情報を送信してもよい。ほかの情報とは、たとえば、速度や加速度、走行路の勾配や、乗車者や荷物の積載重量等であってもよい。
【0054】
情報センタ装置(12)は、走行位置の変化から、速度や走行経路などの走行状況を把握することが可能である(ステップ507)。情報センタ装置(12)は、地図情報を記憶装置に持ち、速度や走行経路の把握に利用することが可能である。また、地図情報に各地点の高度情報を含めることで、走行経路の勾配を把握することも可能である。
【0055】
情報センタ装置(12)では、蓄積した車両の走行情報をもとに、走行情報を送信した車両とは異なる車両のエネルギー消費推定モデル(420)を用いて、モデルに対応する車両が走行した場合のエネルギー消費量の推定を行う(ステップ511)。エネルギー消費推定モデルは、実施例1と同様に、図2に示すモデルを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0056】
あるいは、比較元の車両の走行条件に適合する走行情報が、情報センタ装置(12)で蓄積している過去の車両の走行実績の中に、比較対象の車両について存在する場合は、その過去の実績データを用いてエネルギー消費量の推定を行ってもよい(ステップ512)。すなわち、たとえば、車両Aの走行情報をもとに車両Bと比較を行う場合に、車両Aのある走行区間Cの走行条件に適合する走行実績が、過去の車両Bの走行実績の中に存在する場合は、該当走行区間Cの車両Bのエネルギー消費量の推定は、モデルを用いて行うのではなく、車両Bの走行区間Cでの該当する走行実績でのエネルギー消費量を適用することとしてもよい。
【0057】
走行条件との適合は、条件が完全に一致する場合に限らず、条件に所定の範囲を設け、その範囲に含まれる場合に適合するとみなすこととしてもよい。適合する走行実績が複数存在する場合は、適合する走行実績の平均値などの統計処理を施すなどしてエネルギー消費量を求めてもよい。
【0058】
なお、ここで比較対象とする車両は、車両の型式で特定される、設計上の走行性能を同一にする車種によって指定されることを想定しているが、これに限定されない。たとえば、詳細な走行性能が異なる車種をいくつかまとめたカテゴリを設定して、このカテゴリを比較対象としても差し支えない。
【0059】
比較結果は、情報端末や車載情報装置(10)から情報センタ装置(12)に、Webブラウザなどを用いてネットワーク経由で情報を要求し(ステップ508)、情報センタ装置(12)から情報端末や車載情報装置(10)にデータを出力し(ステップ513)、比較結果を表示させてもよい(ステップ514)。あるいは、データベースや帳票などに、一括出力することとしてもよい。
【0060】
情報端末は、車載情報装置(10)であってもよい。
【0061】
情報端末からの情報要求時に、比較出力の対象となる走行情報を指定することを可能としてもよい(ステップ509)。その場合、特定の日付や時刻によって指定することや、ある月などの期間を指定することによってもよい。あるいは、走行位置を指定することで、対象走行情報を指定することとしてもよい。あるいは、高速道路走行時など、所定の条件に適合する走行情報を指定することとしてもよい。
【0062】
比較対象の車両は、情報端末からの情報の要求時に、比較対象の車両を指定することとしてもよい(ステップ510)。あるいは、情報センタ装置(12)にあらかじめ設定しておくこととしてよい。また、複数の車両を比較対象に指定できるようにしても差し支えない。
【0063】
エネルギー消費を費用に換算して出力する場合には、どのようにエネルギー源を取得したかによって、費用が異なる。情報センタ装置(12)は、車両のエネルギー源の取得方法と、その費用を把握し、エネルギー消費の費用の換算に反映する。車両がエネルギー源を取得した場合、すなわち電気自動車であれば充電を行った場合や、ガソリン車であれば給油を行った場合(ステップ504)に、車載情報装置(10)から情報センタ装置(12)にエネルギー取得の通知を行い(ステップ505)、情報センタ装置(12)が通知された情報を蓄積する(ステップ506)ことで、可能となる。
【0064】
特に、電気自動車の場合には、車両の減速時に回生ブレーキを用いることで、回生エネルギーとしてエネルギーを取得することが可能である。回生エネルギーとして得たエネルギーは、費用0として計算に反映してもよい。回生エネルギーを得たことを、車載情報装置(10)が情報センタ装置(12)に送信することで、情報センタ装置(12)はそれを把握することとしてもよい。
【0065】
あるいは、車載情報装置(10)が、車両の残存電力量を情報センタ装置(12)に報告し、情報センタ装置(12)において、車両の走行中に残存電力量が増加した場合に、回生エネルギーからエネルギーを得たと判定してもよい。
【0066】
電気自動車を自宅や利用者の企業などで充電した場合は、その自宅や企業での電力会社との契約による電気料金に応じた計算を行う。これは、電力会社との契約の種別を情報センタ装置(12)に登録し、計算時に契約の種別に応じた料金体系を用いて計算することで可能となる。利用時間帯によって料金が異なる場合は、充電を行った時間帯に応じた料金を適用して計算を行う。
【0067】
自動車以外の電力使用と合算した料金になっている場合や、月単位などでの総電力使用量で電力単価が決定する場合などには、単価が確定した時点で、料金を計算しなおすなどしてもよい。
【0068】
太陽電池を用いた自家発電などで得た電力を用いた場合は、その電力単価を反映した計算を行ってもよい。
【0069】
自宅外の電力供給場所(以下、電力スタンドと記す)での電力取得を行った場合は、その電力スタンドでの電力の単価を反映した計算を行ってもよい。なお、電力スタンドは、従来のガソリンスタンドが、電気自動車に対して電力を供給するものであってもよい。あるいは、駐車場所の提供とあわせて、充電を行えるような電気自動車向けの施設などであってもよい。
【0070】
ガソリンをエネルギー源とする車両であれば、補給したガソリンスタンドによるガソリン単価を反映した計算を行ってもよい。
【0071】
電力や燃料などのエネルギー源取得の際に、エネルギー源提供装置が、車載情報装置(10)に、供給しているエネルギー源の料金あるいは単価を通知し、車載情報装置(10)が情報センタ装置(12)にその料金あるいは単価と取得したエネルギー量を送信することで、情報センタ装置(12)はそのエネルギーの費用を計算することが可能である。
【0072】
あるいは、車載情報装置(10)はエネルギー源の取得位置を情報センタ装置(12)に送信し、情報センタ装置(12)はその取得位置と対応付けることで、エネルギー取得の費用を把握することとしてもよい。たとえば、ガソリンを補充したガソリンスタンド位置情報から、そのガソリンスタンドでのガソリンの販売単価を取得し、それを用いて計算することとしてもよい。
【0073】
あるいは、詳細なエネルギー源の取得費用の把握は行わず、平均的な単価を適用することによって、計算することとしてもよい。
【0074】
あるいは、エネルギー消費量を二酸化炭素排出量に換算して出力するなどしてもよい。二酸化炭素排出量に換算する場合に、エネルギー源の種類に応じた換算を行うこととしてもよい。特に、電気自動車において、回生エネルギーや太陽電池による発電による電力に対しては、二酸化炭素排出量を0とみなすような換算を行ってもよい。
【符号の説明】
【0075】
10:車載情報装置、11:センサ、12:情報センタ、13:ネットワーク、101:CPU、102:主記憶装置、103:外部記憶装置、104:入力装置、105、414:表示装置、106:記憶媒体入出力装置、107:バス、109:エネルギー消費推定プログラム、110、420:エネルギー消費推定モデル、111:車載情報装置プログラム、301:エネルギー消費量の積算値、302:比較対象車両のエネルギー消費量の推定値の積算値、303:エネルギー消費量の瞬時値のグラフ、401:GPS装置、402、411:通信部、419:情報センタ装置プログラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行についての情報を取得し、取得した前記走行情報に基づき、エネルギー消費量を推定して出力するシステムであって、
前記車両の走行情報として、当該車両の走行位置、速度、加速度、走行路の勾配のうち少なくともひとつを取得し、
該走行情報に基づき、推定対象車両のエネルギー消費の推定を行い、
前記推定結果を出力する
ことを特徴とするエネルギー消費推定システム。
【請求項2】
請求項1に記載のエネルギー消費推定システムであって、
さらに、エネルギー消費の推定対象となる推定対象車両について、車両の走行情報からエネルギー消費量を推定するためのエネルギー消費推定モデルを備え、
前記エネルギー消費推定モデルに、前記車両の走行情報を入力して、前記推定対象車両のエネルギー消費の推定を行う
ことを特徴とするエネルギー消費推定システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載のエネルギー消費推定システムであって、
前記走行情報は、さらに、前記走行情報の取得元車両のエネルギー消費量を含み、
同一の走行状態における、前記取得元車両のエネルギー消費量と、前記推定対象車両の推定エネルギー消費量とを、出力する
ことを特徴とするエネルギー消費推定システム。
【請求項4】
請求項1または2に記載のエネルギー消費推定システムであって、
さらに、前記走行情報の取得元車両に関わるエネルギー消費推定モデルを備え、
前記走行情報の取得元車両について、該走行情報と、前記エネルギー消費推定モデルと、に基づき、前記取得元車両のエネルギー消費の推定を行い、
同一の走行状態における、前記取得元車両の推定エネルギー消費量と、前記推定対象車両の推定エネルギー消費量とを、出力する
ことを特徴とするエネルギー消費推定システム。
【請求項5】
請求項1ないし4いずれか一に記載のエネルギー消費推定システムであって、
該推定処理を車両に搭載する車載情報装置によって行う
ことを特徴とするエネルギー消費推定システム。
【請求項6】
請求項1に記載のエネルギー消費推定システムであって、
車載情報装置と、情報センタ装置、とからなり、
前記情報センタ装置は、
比較対象車両に関わる前記走行情報と、当該走行情報にかかわるエネルギー消費量とが蓄積されたデータベースを備え、
前記車載情報装置から、前記車載情報装置が取得した前記走行情報を受信し、
受信した前記走行情報に基づき、前記データベースの蓄積された前記走行情報を検索し、
取得した前記走行情報に類似する走行情報におけるエネルギー消費量を抽出する
ことを特徴とするエネルギー消費推定システム。
【請求項7】
請求項6に記載のエネルギー消費推定システムであって、
前記センタ装置は、抽出した前記エネルギー消費量を前記車載情報装置に送信し、
前記車載情報装置は、受信した推定対象車両について抽出されたエネルギー消費量を出力する
ことを特徴とするエネルギー消費推定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−271749(P2010−271749A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120474(P2009−120474)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】