説明

車両運搬車

【課題】車両の逸走をより確実に防ぐことができる車両運搬車を提供する。
【解決手段】作業アクチュエータ22〜24によって作動する作業装置が積載されるとともに、車両の走行を規制するためのパーキングブレーキ33を備えた車両運搬車において、作業アクチュエータ22〜24に対する操作を受け付ける操作部30と、操作部30が受け付けた操作に基づいて作業アクチュエータ22〜24を作動するコントローラCと、を備える。コントローラCは、パーキングブレーキ33が車両の走行を規制する規制状態にある場合に、操作部30が受け付けた操作に基づいて作業アクチュエータ22〜24を作動し、パーキングブレーキ33が車両の走行を許可する解除状態にある場合に、作業アクチュエータ22〜24の作動を制限する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を積載可能な荷台が車体に移動可能に設けられた車両運搬車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示すように、車両を積載可能な荷台がアクチュエータの作動によって移動する車両運搬車が知られている。こうした車両運搬車においては、車輪止めなどの対策を施すことにより、作業中に車両が逸走するのを防ぐようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−247147
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような車両運搬車においては、積載車両の荷重や、荷台格納時の衝撃などによって、車両運搬車を逸走させる大きな力が作用する。そのため、車両運搬車の逸走をより確実に防止するためのさらなる対策が望まれている。
【0005】
本発明の目的は、車両の逸走をより確実に防ぐことができる車両運搬車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、作業アクチュエータによって作動する作業装置が積載されるとともに、車両の走行を規制するためのパーキングブレーキを備えた車両運搬車において、前記作業アクチュエータに対する操作を受け付ける操作手段と、前記操作手段が受け付けた操作に基づいて前記作業アクチュエータを作動する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記パーキングブレーキが車両の走行を規制する規制状態にある場合に、前記操作手段が受け付けた操作に基づいて前記作業アクチュエータを作動するとともに、前記パーキングブレーキが車両の走行を許可する解除状態にある場合に、前記作業アクチュエータの作動を制限することを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、車両走行用のエンジンにPTO装置を介して接続可能であって、前記エンジンの出力によって前記作業アクチュエータに作動油を供給する油圧ポンプを備え、前記制御手段は、前記パーキングブレーキが前記規制状態にある場合に、前記PTO装置を制御して前記エンジンと油圧ポンプとの接続を可能にするとともに、前記パーキングブレーキが前記解除状態にある場合に、前記エンジンと油圧ポンプとの接続を制限することを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、前記作業アクチュエータに作動油を供給する油圧ポンプと、前記油圧ポンプを駆動する電動モータと、を備え、前記制御手段は、前記パーキングブレーキが前記規制状態にある場合に、前記電動モータの駆動を可能にするとともに、前記パーキングブレーキが前記解除状態にある場合に、前記電動モータの駆動を制限することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、パーキングブレーキによって車両の走行が規制されている場合にのみ、作業アクチュエータが作動可能となるので、作業中に作用する荷重や衝撃による車両の逸走を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態の車両運搬車を示す図である。
【図2】車両運搬車の作動系統を示す図である。
【図3】PTOスイッチ操作時の処理を示すフローチャートである。
【図4】電動駆動スイッチ操作時の処理を示すフローチャートである。
【図5】作業アクチュエータを作動する操作がなされたときの処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1〜図5を用いて本発明の実施形態について説明する。
図1(a)は車両運搬車の左側面図、図1(b)は車両運搬車の上面図、図1(c)は車両運搬車を後方側面図である。
図1に示すように、本実施形態の車両運搬車Aは、車体1に前輪2および後輪3が支持されており、車両の前方側には運転席を有するキャビン4が設けられている。このキャビン4の車両後方側では、車両の前後方向に延設する左右一対の傾斜フレーム5,5が車体1に支持されており、この傾斜フレーム5,5に対して荷台6がスライド自在に懸架されている。この荷台6の前方側には、ワイヤを繰り入れまたは繰り出しするウインチ7が設けられ、また、荷台6の後方端部には、運搬対象車両を自走によって荷台6に積載する際に、路面と荷台6との段差を解消する道板8が設けられている。
【0012】
次に、図2を用いて、車両運搬車Aの作動系統について説明する。
車体1には、車両運搬車Aが走行するための駆動源であるエンジンEが設けられている。このエンジンEの出力軸には、PTO装置10が接続されており、このPTO装置10によって第1油圧ポンプP1とエンジンEとが接続されたり、その接続が断たれたりするようになっている。
【0013】
また、エンジンEにはオルタネータ11が接続されており、オルタネータ11によって発電された電力がメインバッテリ12に蓄えられるようになっている。このメインバッテリ12には、サブバッテリチャージャー13を介してサブバッテリ14が接続されており、オルタネータ11からメインバッテリ12に電力供給が行われる際の余剰電流が、サブバッテリ14に蓄えられるようにしている。
【0014】
そして、サブバッテリ14には電動モータMが接続されており、サブバッテリ14からの電力供給によって電動モータMが駆動すると、この電動モータMに連結された第2油圧ポンプP2が作動することとなる。
このように、本実施形態においては、第1油圧ポンプP1はエンジンEを駆動源とし、第2油圧ポンプP2は電動モータMを駆動源としているが、これら両油圧ポンプP1,P2から吐出された作動油は、いずれも油圧通路20に吐出される。
【0015】
この油圧通路20には、コントロールバルブCVa〜CVcが接続されており、これら全てのコントロールバルブCVa〜CVcが図示の中立位置にあるときに、油圧通路20に吐出された作動油が、タンク通路21を介してタンクTに還流するようになっている。
なお、コントロールバルブCVaは、上記した荷台6を車両の前後方向に移動させる伸縮シリンダ22への作動油の給排を制御し、コントロールバルブCVbは、上記した道板8を格納したり張り出したりする道板用シリンダ23への作動油の給排を制御するものである。また、コントロールバルブCVcは、上記したウインチ7に設けられたウインチ用モータ24への作動油の給排を制御するものである。
【0016】
そして、これら各コントロールバルブCVa〜CVcを切り換え制御するのがコントローラC(本発明の制御手段に相当する)である。このコントローラCは、リモートコントローラRとの間で無線通信可能に構成されており、リモートコントローラRから入力する操作信号に基づいて、各コントロールバルブCVa〜CVcを切り換え制御することとなる。
具体的には、リモートコントローラRは、各アクチュエータに対する操作を受け付ける操作部30(本発明の操作手段に相当する)を備えており、この操作部30から入力する操作信号に基づいて、コントローラCが対応するコントロールバルブCVa〜CVcを切り換え制御する。
【0017】
また、コントローラCは、電動駆動スイッチ32がON操作されると、サブバッテリ14と電動モータMとの接続回路上に設けられた電力供給許可スイッチ32aをONする(閉じる)とともに、電動駆動スイッチ32がOFF操作されると、上記の電力供給許可スイッチ32aをOFFする(開く)。
ただし、電力供給許可スイッチ32aがONされただけでは電動モータMが駆動することはなく、電力供給許可スイッチ32aと、この電力供給許可スイッチ32aとは別に設けられたモータ駆動スイッチ34との双方がONした場合にのみ、サブバッテリ14から電動モータMに電力が供給されることとなる。なお、このモータ駆動スイッチ34は、コントロールバルブCVa〜CVcを切り換える操作信号が操作部30から入力したことを条件としてONされる。したがって、電力供給許可スイッチ32aがONした状態というのは、電動モータMが駆動可能な状態になったことを意味しているに過ぎず、電動モータMの駆動状態を示すものではない。
【0018】
次に、図3〜図5を用いて、コントローラCの制御について説明する。図3に示す処理は、エンジンEの出力によって作業を行うにあたって、オペレータがPTOスイッチ31を操作した場合のコントローラCの処理を示す図である。
【0019】
リモートコントローラRからPTOスイッチ31をONする操作信号が入力すると、コントローラCは、パーキングブレーキ33がON(車両の走行を規制する規制状態)しているか否かを判定する(ステップS1)。その結果、パーキングブレーキ33がONしていると判定した場合には、エンジンEと第1油圧ポンプP1とを接続するようにPTO装置10を制御する(ステップS2)。一方、パーキングブレーキ33がOFF(車両の走行を許可する解除状態)していると判定した場合には、エラーであることを報知して当該処理を終了する(ステップS3)。
【0020】
このように、PTO装置10を接続すべく、PTOスイッチ31をONする操作信号が入力したとしても、パーキングブレーキ33が解除されている場合には、PTO装置10を接続しないようにしている。言い換えれば、パーキングブレーキ33によって車両運搬車Aの走行が規制されている場合に限ってのみ、エンジンEと油圧ポンプPとが接続されることとなる。
【0021】
次に、電動モータMの出力によって作業を行うにあたって、オペレータが電動駆動スイッチ32を操作した場合のコントローラCの処理について、図4を用いて説明する。
【0022】
リモートコントローラRから電動駆動スイッチ32をONする操作信号が入力すると、コントローラCは、パーキングブレーキ33がONしているか否かを判定する(ステップS11)。その結果、パーキングブレーキ33がONしていると判定した場合には、電力供給許可スイッチ32aをONする(ステップS12)。一方、パーキングブレーキ33がOFFしていると判定した場合には、エラーであることを報知して当該処理を終了する(ステップS13)。
なお、ステップS12において電力供給許可スイッチ32aがONされても、電動モータMは即座に駆動するものではなく、電力供給許可スイッチ32aがONされた状態で操作部30から操作信号が入力することによって、はじめて電動モータMが駆動することとなる。
【0023】
このように、電動モータMを駆動可能とすべく、電動駆動スイッチ32をONする操作信号が入力したとしても、パーキングブレーキ33が解除されている場合には、電動モータMへの電力供給がなされないようにしている。言い換えれば、パーキングブレーキ33によって車両運搬車Aの走行が規制されている場合に限ってのみ、電動モータMへの電力供給が可能となる。
【0024】
次に、操作部30から作業アクチュエータを作動する操作信号が入力した場合のコントローラCの処理について、図5を用いて説明する。
【0025】
リモートコントローラRから、コントロールバルブCVa〜CVcのいずれかを切り換える操作信号が入力すると、コントローラCは、パーキングブレーキ33がONしているか否かを判定する(ステップS21)。その結果、パーキングブレーキ33がOFFしていると判定した場合には、エラーを報知して当該処理を終了する(ステップS26)。
【0026】
一方、ステップS21において、パーキングブレーキ33がONしていると判定した場合に、PTOスイッチ31がONしていれば(ステップS22のYES)、入力した操作信号に応じてコントロールバルブCVを切り換える(ステップS25)。
また、PTOスイッチ31がOFFしており(ステップS22のNO)、電動駆動スイッチ32がONしている場合(ステップS23のYES)には、モータ駆動スイッチ34をONして電動モータMを駆動する(ステップS24)とともに、コントロールバルブCVを切り換える(ステップS25)。
なお、PTOスイッチ31および電動駆動スイッチ32の双方がOFFされている場合には、ステップS26においてエラー報知を行って当該処理を終了する。
【0027】
以上のように、本実施形態によれば、パーキングブレーキ33が解除された状態では、エンジンEの出力によっても、また、電動モータMの出力によっても作業が行われることがなくなり、作業中における車両運搬車Aの逸走を確実に防止することができる。
【0028】
なお、本実施形態における荷台6、ウインチ7および道板8が本発明の作業装置に相当し、これらの作業装置を作動する伸縮シリンダ22、道板用シリンダ23およびウインチ用モータ24が本発明の作業アクチュエータに相当するものである。ただし、荷台6、ウインチ7および道板8の全てを本発明の作業装置とする必要はない。例えば、荷台6については、パーキングブレーキがONしている場合に限って作動することとし、ウインチ7および道板8については、パーキングブレーキの状態とは無関係に作動するようにしても構わない。この場合には、荷台6が本発明の作動装置となり、伸縮シリンダ22が本発明の作業アクチュエータとなる。
【0029】
また、本実施形態においては、第1油圧ポンプP1および第2油圧ポンプP2を設ける構成としたが、エンジンと電動モータとを1つの油圧ポンプに対して接続可能に構成してもよい。
さらには、本実施形態においては、作業アクチュエータの駆動源として、エンジンEと電動モータMとを設けることとしたが、エンジンEと電動モータMとのいずれか一方のみを作業アクチュエータの駆動源としても構わない。
また、本実施形態においては、PTO装置10を断接したり、電動モータMへの電力供給を不可能としたりすることで、作業アクチュエータの作動を制限することとしたが、作業アクチュエータの作動を制限する方法はこれに限らない。例えば、パーキングブレーキ33がONしている場合には、操作部30から操作信号が入力してもコントロールバルブCVa〜CVcを切り換えないようにコントローラCが制御することとしてもよい。
【符号の説明】
【0030】
6 荷台
7 ウインチ
8 道板
10 PTO装置
22 伸縮シリンダ
23 道板用シリンダ
24 ウインチ用モータ
30 操作部
31 PTOスイッチ
32 電動駆動スイッチ
33 パーキングブレーキ
A 車両運搬車
C コントローラ
CV コントロールバルブ
E エンジン
M 電動モータ
P1 第1油圧ポンプ
P2 第2油圧ポンプ
R リモートコントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業アクチュエータによって作動する作業装置が積載されるとともに、車両の走行を規制するためのパーキングブレーキを備えた車両運搬車において、
前記作業アクチュエータに対する操作を受け付ける操作手段と、
前記操作手段が受け付けた操作に基づいて前記作業アクチュエータを作動する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記パーキングブレーキが車両の走行を規制する規制状態にある場合に、前記操作手段が受け付けた操作に基づいて前記作業アクチュエータを作動するとともに、前記パーキングブレーキが車両の走行を許可する解除状態にある場合に、前記作業アクチュエータの作動を制限することを特徴とする車両運搬車。
【請求項2】
車両走行用のエンジンにPTO装置を介して接続可能であって、前記エンジンの出力によって前記作業アクチュエータに作動油を供給する油圧ポンプを備え、
前記制御手段は、
前記パーキングブレーキが前記規制状態にある場合に、前記PTO装置を制御して前記エンジンと油圧ポンプとの接続を可能にするとともに、前記パーキングブレーキが前記解除状態にある場合に、前記エンジンと油圧ポンプとの接続を制限することを特徴とする請求項1記載の車両運搬車。
【請求項3】
前記作業アクチュエータに作動油を供給する油圧ポンプと、
前記油圧ポンプを駆動する電動モータと、を備え、
前記制御手段は、
前記パーキングブレーキが前記規制状態にある場合に、前記電動モータの駆動を可能にするとともに、前記パーキングブレーキが前記解除状態にある場合に、前記電動モータの駆動を制限することを特徴とする請求項1または2記載の車両運搬車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−121503(P2012−121503A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275045(P2010−275045)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(000148759)株式会社タダノ (419)