車内ひったくり防止器具
【課題】ベルトなどの可撓条体を使用しないときに、運転などの邪魔にならず、見た目にもよい車内ひったくり防止器具が望まれている。
【解決手段】車内ひったくり防止器具1は、箱状に形成された器具本体Aの後端部にバックル用差込金具2が設けられ、器具本体Aの前端部には、カバンなどに設けられた輪部分に通される可撓条体の末端部が接続されるとともに、可撓条体の自由側端部に設けられた先端金具60を係脱自在に係止する係止部40が設けられている器具において、器具本体Aに回動自在に内蔵された可撓条体巻取り用の巻取りドラムと、器具本体Aの前端部に形成された条体出入口Iから引き出された可撓条体をその引出位置で係脱自在に保持する保持機構E(78)と、を備えている。
【解決手段】車内ひったくり防止器具1は、箱状に形成された器具本体Aの後端部にバックル用差込金具2が設けられ、器具本体Aの前端部には、カバンなどに設けられた輪部分に通される可撓条体の末端部が接続されるとともに、可撓条体の自由側端部に設けられた先端金具60を係脱自在に係止する係止部40が設けられている器具において、器具本体Aに回動自在に内蔵された可撓条体巻取り用の巻取りドラムと、器具本体Aの前端部に形成された条体出入口Iから引き出された可撓条体をその引出位置で係脱自在に保持する保持機構E(78)と、を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車助手席上に置いたバッグ、カバン等をひったくり犯罪から守る為の車内ひったくり防止器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、新しい型の自動車の助手席の下には、乗員の着座を検知する着座センサーがセットされている。この着座センサーは、荷重が一定以上の荷物、バッグ、カバン等過ぎる物を置いたり、それらの荷重がいくぶん軽かったとしても振動や揺れたりする事で、人間が座ったものと誤感知し、シートベルト装着を促す警告音が鳴り出して止まらなくなる。この警告音解除の為には、いちいちシートベルトを引っ張ってきて助手席のシートベルト用バックル(以下、バックルと略称する)にセットするか、荷物を助手席に置く事を断念するかのどちらかを選択しなければならないが、どちらを選択しても大変不便なものである。更には、この助手席に置いたバッグ、カバン等が、信号待ちをしている間に突如助手席の窓ガラスを割られて奪い去られるという、ひったくり犯罪が多発していて、その対策が望まれている。
【0003】
そこで、この種のひったくり犯罪に対処する器具として、下記の特許文献1に記載された本発明者創案のものが知られている。特許文献1記載の器具は、器具本体の一端部にバックル用差込金具が設けられており、器具本体の他端部には、一定長のベルトの末端部が接続されている。また、器具本体の他端部には、ベルトの自由側端部に設けられた先端金具を係脱自在に係止する係止部が設けられている。この車内ひったくり防止器具では、そのバックル用差込金具を助手席のシートベルト用バックルに差し込んだのち、ベルトを助手席上のバッグ、カバン等の輪部分に通してきて先端金具を本体器具の係止部に係止させることにより、助手席上に置かれているバッグ、カバン等をひったくりから守るようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4250663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の車内ひったくり防止器具を車のシートベルト用バックルにセットすれば、上記のような警告音を解除する事ができ、もちろんひったくり対応もできる。しかしながら、特許文献1の車内ひったくり防止器具は、一定の長さのベルトが器具本体から露出したままである為、警告音解除のみが目的であってベルトを使用しないときは、ベルトが邪魔になることがある。また、荷物を積んだ状態での長時間運転の時は、警告音解除の為に車内ひったくり防止器具をシートベルト用バックルに装着した状態を保たねばならず、この時も、一定の長さのベルトが車のゆれや振動により、時には不特定な動きをすることが考えられる。これに加え、ギアチェンジ等も含めて左手も動かす中で、この左手にベルトが触れる可能性があり、時にはこれが運転ミスにつながりかねない。そして、車内ひったくり防止器具を装着しっぱなしでは一定の長さを有するベルトの放置となり、車中の見た目の景観もいまひとつ芳しくない。
【0006】
ところで、シートベルトの差込金具が装着されるバックルの装着口は、車種により浅いものから深いものまで種々ある。また、特許文献1の車内ひったくり防止器具は、バックルに装着された差込金具を取り外すための操作ボタンが器具本体内で移動する構造となっている。従って、装着口の深いバックル対応用として形成された長い差込金具を、装着口の浅いバックルに装着した場合には、差込金具の長さが余って前記の操作ボタンがバックルの取外しボタンに届かないので、差込金具自体を浅いバックル対応の物に変更しなければならない。また、特許文献1の車内ひったくり防止器具を適切でない車種に使用すると、バックルから外すのに器具本体カバー上部の隙間からドライバー等を用いてバックルの取外しボタンを押さなければ外れないということもある。すなわち、特許文献1記載の車内ひったくり防止器具は車種毎のひったくり対応にのみ使用できる器具ということになる。従って、上記した警告音解除の為に、この車内ひったくり防止器具をどの車種のバックルに対し何の心配も持たずに使用する事は出来ない。
【0007】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであって、ベルトなどの可撓条体を使用しないときに、運転などの邪魔にならず、見た目にもよい車内ひったくり防止器具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る車内ひったくり防止器具は、箱状に形成された器具本体の一端部にバックル用差込金具が設けられ、器具本体の他端部には、カバンなどに設けられた輪部分に通される可撓条体の末端部が接続されるとともに、可撓条体の自由側端部に設けられた先端金具を係脱自在に係止する係止部が設けられている車内ひったくり防止器具において、器具本体に回動自在に内蔵された可撓条体巻取り用の巻取りドラムと、器具本体の他端部に形成された条体出入口から引き出された可撓条体をその引出位置で係脱自在に保持する保持機構と、を備えている構成にしてある。
【0009】
また、前記構成において、器具本体の係止部の内壁に形成された壁側貫通孔と、係止部に係止された状態の先端金具の、前記壁側貫通孔と対向する位置に形成された金具側貫通孔と、器具本体に設けられて壁側貫通孔および金具側貫通孔に通されるロック棒と、器具本体の上面に配置されるとともにロック棒と連結された第1操作ボタンと、を備え、第1操作ボタンの操作によりロック棒が壁側貫通孔および金具側貫通孔を貫通するように構成されているものである。
【0010】
そして、前記した各構成において、可撓条体が平鋼板で構成され、器具本体が、バックル用差込金具を有する本体基台と、巻取りドラムを内蔵し条体出入口および係止部を有する揺動台と、から構成されるとともに、揺動台が、本体基台の他端部でバックル用差込金具の上面と交差する方向に屈折自在に枢支されるものである。
【0011】
更に、前記した各構成において、器具本体の一端部側面からバックル用差込金具の上面に沿う方向に出没する出没子と、器具本体の上面に配置されるとともに出没子と連結された第2操作ボタンと、を備え、バックル用差込金具が車両のシートベルト用バックルに装着されている状態で第2操作ボタンを操作することにより、出没子が器具本体の一端部側面から突出してシートベルト用バックルの取外しボタンを押すように構成されているものである。
【0012】
また、前記した各構成において、バックル用差込金具が、シートベルト装着センサー付きのシートベルト用バックルに着脱自在に装着可能な形状に形成されているものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る車内ひったくり防止器具によれば、器具本体に回動自在に内蔵された可撓条体巻取り用の巻取りドラムと、器具本体の他端部に形成された条体出入口から引き出された可撓条体をその引出位置で係脱自在に保持する保持機構とを備えているので、使用しないときは器具本体内の巻取りドラムに可撓条体を巻き取れるので、器具全体としてコンパクトで見栄えがよく、可撓条体が運転などの邪魔になるということもない。また、引き出した可撓条体から手を離すと、可撓条体は巻取りドラムにより巻き取られようとするが、保持機構を用いることにより、可撓条体から手を離しても器具本体内に戻すことなく可撓条体をその位置で留めて保持することができる。
【0014】
また、器具本体の上面に配置される第1操作ボタンの操作によりロック棒が壁側貫通孔および金具側貫通孔を貫通するように構成したものでは、先端金具と係止部との係止状態にロック棒による係止状態も加わるから、確実にロックすることができる。これにより、先端金具および可撓条体を通した座席上のカバンなどを、ひったくりなどから確実に守ることができる。
【0015】
そして、可撓条体を平鋼板で構成するとともに、器具本体を本体基台と揺動台とから構成したものでは、平鋼板は強靭であるうえ弾性的に曲げることができ、ばね戻り力も利用することができる。しかしながら、平鋼板を曲げ得る方向は板面と平行の方向ではなく、板面と交差する方向である。そこで、本体基台の他端部で揺動台をバックル用差込金具の平面と交差する方向に屈折させると、可撓条体を助手席の上方位置に曲げて向わせることができ、カバンなどの輪部分に確実かつ容易に通せるようになる。
【0016】
更に、器具本体の上面に配置される第2操作ボタンの操作により出没子が器具本体の一端部側面から突出してシートベルト用バックルの取外しボタンを押すように構成されたものでは、シートベルト用バックルに差し込まれたバックル用差込金具の装着を解除させることができる。因みに、この構成がない場合は、装着状態にある器具本体とシートベルト用バックルの間に指が入りにくい。そのために、取外しボタンを押すことができず、バックル用差込金具の装着を解除できないことがある。
【0017】
バックル用差込金具が、シートベルト装着センサー付きのシートベルト用バックルに着脱自在に装着される形状に形成されているものでは、そのシートに重い荷物を置いて着座センサーが感知するような場合でも、車内ひったくり防止器具のバックル用差込金具をシートベルト用バックルに装着するだけで、警告音や装着促進表示を解除することができる。尚、バックル用差込金具は幅を狭く形成しておくとよい。そのように狭く形成しておくと、シートベルト用バックルの幅の広いものでも対応でき、差入れ長を長くすることができる。これにより、近年の多種多様な車種のシートベルト用バックルに対応して使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る車内ひったくり防止器具を示し、(a)は斜め後ろから見た全体外観図、(b)は斜め前から見た全体外観図である。
【図2】前記車内ひったくり防止器具の本体基台を示す分解斜視図である。
【図3】前記本体基台のパーツ物の側壁、鉄棒などを示す分解斜視図である。
【図4】前記車内ひったくり防止器具の揺動台を示す分解斜視図である。
【図5】前記車内ひったくり防止器具の密閉固定貫通ロック構造に用いる各部品を示す分解斜視図である。
【図6】前記車内ひったくり防止器具および平断面にした揺動台を示す平面図である。
【図7】前記車内ひったくり防止器具のL型切込溝近傍を示す部分正断面図である。
【図8】前記車内ひったくり防止器具の巻取りドラムを示す分解斜視図である。
【図9】(a)は前記巻取りドラムに使用される平コイルバネの外観図、(b)は末端部を輪にしたベルトおよびベルト先端のL型金具を示す外観図である。
【図10】(a)は前記車内ひったくり防止器具のスイッチカバーやふくらみなどを示す分解斜視図、(b)はベルト先端のL型金具を示す部分斜視図、(c)は巻取りドラムおよびこれに巻かれたベルトを示す外観図である。
【図11】前記車内ひったくり防止器具の揺動台の屈折動作を示す動作説明図である。
【図12】ブレーキ構造に用いる各部品を示す分解斜視図である。
【図13】(a)は前記車内ひったくり防止器具を車のバックルに装着した状態を示す平断面図、(b)は車の助手席のバックルの正面図である。
【図14】前記車内ひったくり防止器具を車の助手席のシートベルト用バックルに使用したものを示し、(a)はシートベルト用バックルに車内ひったくり防止器具を装着した状態を示す説明図、(b)はバックルに装着した車内ひったくり防止器具の揺動台を本体基台から引き出して屈折させ、ベルトを引き出してバッグなどの取っ手輪部に通した後に係止させた状態を示す説明図である。
【図15】前記車内ひったくり防止器具の揺動台を本体基台から屈折させた状態および引き出したベルトのL型金具をL型切込溝に係止させた状態をそれぞれ破線で示す動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下に述べる実施形態は本発明を具体化した一例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものでない。図1は本発明の一実施形態に係る車内ひったくり防止器具を示し、(a)は斜め後ろから見た全体外観図、(b)は斜め前から見た全体外観図である。
図1において、この実施形態に係る車内ひったくり防止器具1は、箱状に形成された器具本体Aを備えて構成されている。器具本体Aは、バックル用差込金具(以下、差込金具と略称する)2を有する本体基台Bと、本体基台Bの上面に前後スライド自在に配備され、且つ、本体基台Bの前端部近傍位置で差込金具2の上面と直交する方向(下向き)に揺動する揺動台Cとから構成されている。揺動台Cの前側面には、カバンなどに設けられた輪部分に通されるベルト64(本発明の可撓条体の例、図9(b)参照)を出し入れするベルト出入口I(本発明の条体出入口の例)と、ベルト64の自由側端部に取り付けられたL型金具60(本発明の先端金具の例)を係脱自在に係止するL型切込溝40(本発明の係止部の例)とが設けられている。そして、揺動台Cの後側面には、前述のベルト出入口Iから引き出されたベルト64をその引出位置で係脱自在に係止保持する保持機構Eが配備されている。
【0020】
この発明の実施形態を更に詳しく順次説明する。まず、本体基台Bは、図2に示すように、後端部に差込金具2を有するとともに左右両側部に側壁4A,4Bが立設された差込金具台2Aと、側壁4A,4Bの上面に載せて取り付けられる滑り台7と、滑り台7上の左右両側に設置されるパーツ物の側壁17A,17B(図3参照)とを備えている。差込金具2は、どの車種のシートベルト用バックルFにも装着可能なように、比較的幅狭な形状に形成されている。尚、図2中の符号において、14A〜14Hはそれぞれ側壁4A,4Bまたは滑り台7の左右辺部に形成されていてボルト15を通されるボルト穴、12A〜12Dはそれぞれ滑り台7の四隅部に形成されていてボルト16を通されるボルト穴、13A〜13Dはそれぞれ側壁4A,4Bの前後端部に形成されていてボルト穴12D〜12Aを通ったボルト16を螺止するボルト受である。また、8A,8Bは後述するL型スイッチ65の二本の角棒66,66の上面を収容して前後に案内する削り込み分、3A,3BはL型スイッチ65の飛び出しを止めるストッパー、10A,10BはL型スイッチ65のふくらみ68が入り込む切込、9はL型スイッチ65の縦柱67が入り込む切込、5はL型スイッチ65のバネ76の他端を係止する切込6を有する突起、11A,11Bは後述する揺動台Cを下向きに揺動させるように差込金具台2Aと滑り台7の前方にそれぞれ形成された切込である。
【0021】
そして、前記した揺動台Cは、本体基台Bにおける側壁17A,17Bの間で滑り台7上に設置される。側壁17A,17Bの内側面には、図3に示すように、前後に長い横溝18A,18Bが形成されている。これら対面する横溝18A,18B内には、揺動台Cの左右側面から突出した鉄棒22の両端が収容される。尚、図3中の符号において、24A〜24Dは側壁4A,4Bのボルト穴14A〜14Dと滑り台7のボルト穴14F〜14Hを通されたボルト15,15,15,15を螺止するボルト受、12E〜12Hはボルト16,16,16,16を通すボルト穴である。ボルト穴12E〜12Hを通されたボルト16,16,16,16は、更に滑り台7の12A〜12Dを通されて側壁4A,4Bのボルト受13A〜13Dで螺止される。これにより、本体基台Bが強固な箱体となる。また、21Aは鉄球、19Aは丸板、20Aは押しバネであり、これらは後述する揺動台Cの横穴32に収容される。23A,23Bはそれぞれ側壁17Bの内側面に形成されて前記の鉄球21Aが出し入れ自在に入り込む窪みである。
【0022】
また、揺動台Cは、図4に示すように、箱土台25と、側壁パーツ26と、箱土台25および側壁パーツ26の上面に載せて取り付けられる蓋27とを備えている。作業上邪魔になるので、片一方の側壁25Aは箱土台25と一体に構成され、他方の側壁パーツ26は別パーツ物を用いて箱を形成するようにした。ベルト64を引っ張り出す側を箱の前側とすれば、箱土台25と一体の側壁25Aは左側に配置される。そして、箱の前辺部には、ベルト出入口I(本発明の条体出入口の例)と、ベルト先端のL型金具60(本発明の先端金具の例:L型形状のものに限らず)を固定させるL型切込溝40とが設けられる。L型切込溝40は、それぞれ箱土台25と一体構成の、溝側壁J(本発明の内壁の例)と、この溝側壁Jに対面する位置の溝側壁K(本発明の内壁の例)との間に、前上方から見て逆L字状に形成されている。
更に、このL型切込溝40とその周辺を説明する。側壁26に近い側の溝側壁Jに二つの横穴37,38を設ける。一つはその溝側壁Jに貫通して形成された横穴37(本発明の壁側貫通孔の例)である。この横穴37を貫きL型切込溝40を渡った対岸位置の溝側壁Kにも、その一直線上に位置した所に横穴M(本発明の壁側貫通孔の例)が掘られている。これにより、L型切込溝40に入ったL型金具60の貫通穴62(本発明の金具側貫通孔の例)を溝側壁Jの横穴37を通ってきた鉄棒52A(本発明のロック棒の例)が貫通して溝対岸の溝側壁Kの横穴Mに入り、L型切込溝40の両溝側壁J,Kの横穴37,Mで鉄棒52Aを受けた状態でL型金具64を固定させる事となる。
【0023】
前記の構成を詳しく説明すると、揺動台Cからベルト64を引き出して発明を遂行していく為に、ベルト64の先端は、L型金具60にかしめ61A,61B(図9(b)参照)で固着されている。その場合、ベルト64の先端をL型金具60に添え、押え板や同型の金具で挟み、それらとともにかしめで固定しても良い。ベルト64のかしめ61A,61Bの間に、貫通穴62と鉄球受窪63を形成してある。そして、ベルト出入口Iから引っ張り出されたベルト64は保持機構Eにより係止保持されて戻らず、その位置で留められる。そこで、L型金具60をバッグ、カバン等の取っ手を通したのち手前に戻してベルト64をu字型状とし、戻したL型金具60を器具本体AのL型切込溝40に入れれば、L型金具60がL型切込溝40にひっかかるから引っ張っても外れない。このL型切込溝40はL型金具60を入れやすいように上縁部全体が擂鉢状に形成されている。そして、L型金具60がL型切込溝40に落とし込まれると、L型金具60の下部に形成された鉄球受窪63に、落とし込まれたL型切込溝40の溝側壁Jの横穴38から一部分が突出した鉄球21Bが入り込み、これでL型金具60を軽く位置決めさせる。この場合、鉄球21Bは横穴38から飛び出てしまうのではなく、出口の小さい横穴38から一部分が突出した状態で鉄球受窪63に入り込む。これにより、L型金具60が所定のロック位置で位置決め保持される。
尚、図4中の符号で、35は側壁33に設けられていてブレーキスイッチ78を引く引きバネ20Dの端部を掛止するためのバネ受け輪部、41はスライドする密閉蓋54と接触する溝側壁J,Kの上面の削られた部分、44で示す点線内は蓋27の下面を蓋厚さの半分まで削った部分、43は蓋27に形成されていてL型切込溝40および溝側壁J,Kの上方位置に配置される穴であり、この穴43の下面側に密閉蓋54が配備される。
【0024】
更に、溝側壁Jの内側には、図5に示すような左右移動自在の箱52が配備される。箱52の左側面には鉄棒52Aが突設されている。そして、密閉蓋54(本発明の第1操作ボタンの例)が、上方からネジ穴57を通したネジ58により箱52上面のネジ受け53にネジ止め固定される。この密閉蓋54は、L型切込溝40の溝側壁Jの上面と蓋27の下面との間に配置される。蓋27の下方でスライドする密閉蓋54の前部と両側は、それぞれ密閉蓋厚さの半分を密閉蓋上部側で少々削り、密閉蓋後部はスライドする分と少々の余分の分も含めて密閉蓋厚さの半分を密閉蓋上部側で削る。尚、図5中の符号で、56で示す点線外方部分は密閉蓋54の上面を蓋厚さの半分を削った部分を示している。この密閉蓋54の削った部分が当たる蓋27の下部をこの分と同等の厚さだけ削る。蓋54と蓋27の厚さが一緒ならば、密閉蓋54は蓋27と一体の厚さとなり、削り合った分で固定されて作動することになる。密閉蓋54の裏面と接する面は全体に微量に削る。これで、密閉蓋54は自由にスライドできる。蓋27は揺動台Cに乗り、蓋中央下面の凹み48で心棒28の上端を回動自在に支持して、自身のボルト穴45A〜45Dを通されたボルト50,50,50,50が揺動台Cの側壁下部のボルト受け42A〜42Dに螺止されて、揺動台C全体が留められる。
【0025】
そこで、図7に示すように、密閉蓋54をスライドさせて、L型金具60が落とし込まれているL型切込溝40を覆うと、同時に密閉蓋54と一体の鉄棒52Aもスライドして溝側壁Jの横穴37を通り抜け、更にL型切込溝40に入ったL型金具60の貫通穴62を貫通して、反対側の溝側壁Kの横穴Mに入り込む。この時、スライドする密閉蓋54は、密閉蓋54の下面に設けられている二箇所の窪み55A,55B(図7参照)に、溝側壁J上面の縦穴39内に収容されている押しバネ20Cで押し上げられた鉄球21Cが入り込んで、密閉蓋54をその全開位置と全閉位置とで位置決めするようになっている。
従って、図6に示すように、箱52がスライドして密閉蓋54による密閉状態を作り、鉄球21Cで自身を位置決め保持させ、同時に密閉した中で密閉蓋52の鉄棒52Aでロックをする事となる。すなわち、ベルト64先端のL型金具60は、密閉蓋54で密閉された状態でのL型切込溝40への固定と、鉄棒52Aの貫通による貫通ロックとの二箇所固定にされる。このような二箇所でL型金具60が完全に固定される二箇所固定式の密閉固定貫通ロック方式を採用しているので、ひったくりからバッグ、カバン等を確実に守る事ができる。
【0026】
そして、この車内ひったくり防止器具1はひったくりに耐えなければならないので、巻取ドラムDや心棒28はもちろんのこと、心棒28との間の側壁25Aと側壁パーツ26にも厚みを持たせた強度の高いものとする。また、巻取りドラムDは、図8、図9、図10(b)、図10(c)に示すように、鍔縁95を片一方のみに形成したドラム本体93と、ドラム本体93の他側面に装着される鍔縁89付きのドラム側壁パーツ87とを備えている。一方、ベルト64の端は輪100とした接点部分が2箇所のかしめ61C,61Dで止められる。この輪100をドラム本体93の鍔縁の無い側から巻取面94におおいかぶせるように侵入させる。更に、かしめ61C,61Dの上に穴付きのベルト押え板90を置き、この上からベルト64のベルト貫通孔99と巻取面94のボルト穴98を通してドラム内空洞97内まで貫通させたドラム貫通ボルト92を、ドラム内空洞97側からワッシャー85B、ワッシャーバネ86Bおよび受ナット91を用いてネジ止めする。このとき、ドラム内部空洞97内に収容した、ベルト64を巻取る力を付与する為の平コイルバネ101外端の穴102にも、前記のドラム貫通ボルト92を通し押さえワッシャ103も用いてネジ止めする。尚、平コイルバネ101の内側の端104(図9(a)参照)を差し込んで止める為の縦割りの切込み29を心棒28に形成するが、これも強度を保つ為、切込み29は心棒28の上部から入れ根元より少しあがった所までとする。この切込み29がない心棒28の根元の所で巻取りドラムDの穴96Aを受ける事とし、この切込み29がない分に該当する平コイルバネ101の端部分はその部分を狭める事とする。このように、揺動台C内に配備された巻取りドラムDに巻き取られるベルト64としては、こわばることなく、その上下面と直角の方向に自由に曲げられる平スチール製の帯板(平鋼板)を用いた。また、ベルト64を巻取りドラムDに巻き取る為のコイルバネも平コイルバネ101を用いてある。このベルト64は平コイルバネ101のバネ力で巻き取られ、引っ張り出す時は引き戻されない為の保持機構Eとともに揺動台C内に設けられる。
【0027】
尚、本発明の可撓条体としては、前記した平スチールの他に、ワイヤー、そして上述のスチールも含めこれにコーティングを施したものや、強度のある布やナイロン、合成物、また、それ等を組み合わせたり編んだりしたものも考えられる。ベルト64の長さは、揺動台Cから引っ張り出した先端部を座席のバッグ、カバン等の取っ手の輪部に通したのちにu字型に戻して揺動台Cに装着できるだけの長さであればよい。このベルト64をドラム本体93の巻取面94にセットし、更にドラム内側壁とさせる部分88に強度を持たせるようにした円盤状で穴96Bを有するドラム側壁パーツ87を、ドラム本体93にセットすると、巻取りドラムDが完成する。この巻取りドラムDは鍔縁89,95を持っているのでベルト64が巻取面94からずり落ちない。そして、巻取りドラムDはその穴96A,96Bが心棒28に装着されて回動自在に支持される。尚、図10(c)中の符号で、59はベルト64を巻取りドラムDの巻取面94に巻いた状態を示している。
【0028】
この実施形態では、可撓条体として平スチール板製のベルト64を使用している。このベルト64はその広い平たん面が上面および下面となるように置かれた状態で、その平たん面に対して上下方向には自由に曲がるが、左右の薄い側面の方向にはほとんど曲がることは無い。一方、シートベルト用バックルFはその差込口L(図13(b)参照)が縦長に配置されている。この縦長の差込口Lに縦向きで差込まれる差込金具2と一体の器具本体Aから引っ張り出されるベルト64は、構造上横向きになっている心棒28にセットされた巻取りドラムDから引き出される。そのため、縦型の差込口Lを有するバックルFに対し、その平たん面を水平にして器具本体Aから車内に引き出されたベルト64は上下に曲がりながらフロントガラス方向にしか進めず、左方の助手席上にあるバッグ、カバン等に向けては進められない。このような問題は、縦向きにして差込まれた差込金具2に対し器具本体Aを助手席方向に屈曲させたL字型固定形状に形成すれば解決するが、それではL字型に形成された器具本体自体がコンパクトにならず、バックル装着時にかさばって邪魔になるという問題が生じる。
【0029】
そこで、前段落の問題点を解決する為の発明を説明する。図4に示すように、揺動台Cにおける箱土台25上の右側後端部には、強度を保つ為に、ここだけの側壁33が立設されている。この側壁33は、箱土台25上に固定された側壁パーツ26の丁度内側となる所に設けられている。また、側壁33の上面にはネジ受34が形成されている。そして、蓋27のネジ穴47を通ったネジ49がネジ受34でねじ止め固定されることにより、蓋27が固定される。これにより、この側壁33は尚いっそう強度が高くなる。そして、側壁25Aおよび側壁31に、左右方向に貫通する鉄棒通し穴30Cが形成され、鉄棒通し穴30Cの穴心と同軸位置の側壁33に鉄棒通し穴30Bが形成され、箱土台25の右辺部に配備された側壁パーツ26の鉄棒通し穴30Bと同軸位置にも鉄棒通し穴30Aが形成されている。一方、箱土台25上の左側後端部には、側壁25Aと一体の側壁31が形成されている。これらの鉄棒通し穴30A,30B,30Cには、鉄棒22が通される。この鉄棒22の両端は側壁25Aおよび側壁パーツ26の外側面から突出しており、側壁17A,17Bの横溝18A,18Bで収受される。
【0030】
そして、シートベルト装着警告音誤作動解除の時は、上述の滑り台7と側壁17A,17B間の中の所定位置に揺動台Cを保持してコンパクトにした状態で、本体基台Bに設けた差込金具2をバックルFに差込む事により誤作動警告音の発生が解除される。助手席に置いた物がバッグ、カバン等重要な時は、図11に示すように、揺動台Cを前向きに引っ張ると、揺動台Cの左右両側に出ている鉄棒22が側壁17A,17Bの横溝18A,18B内で案内され揺動台Cを前方向に誘導する。滑り台7とその下方の差込金具台2Aには、両側にある側壁17A,17Bの厚さ分をそれぞれ残して、それぞれの平面が側壁17A,17Bの終点よりも短くなるように、切り込み11Bおよび切り込み11Aが形成されている。従って、これらの切り込み11A,11Bの存在により、揺動台Cが横溝18A,18Bの終点に達したときに(図11中の2点鎖線で示す揺動台C)、揺動台Cを受けるべき滑り台7と差込金具台2Aの台面が存在しない。すなわち、揺動台Cは下向きに方向を変えて屈折する事ができる。これにより、縦向きに差込まれた差込金具2と同等にセットされた揺動台Cを引っ張り出して屈折させると(図11中の破線で示す揺動台Cおよび図15中の破線参照)、揺動台Cが差込金具2の裏面側を向く。すなわち、図14(b)に示すように、揺動台Cがイコール助手席108の方向に向く事となる。そこで、揺動台Cからベルト64を引っ張り出し、先端のL型金具60をその延長線上にある助手席108上のバッグ107やカバン等の取っ手を通してきて折り返すことができる。更に、揺動台CのL型切込溝40にL型金具60を落とし込み、密閉蓋54をスライドさせて密閉固定貫通ロックを行なうことで、バッグ107やカバン等を、車内ひったくり防止器具1を介してシートベルト用バックルFに完全に固定させ、これにより助手席108上の重要物をひったくりから確実に守ることができる。
【0031】
そして、溝側壁Jには、揺動台C内とL型切込溝40とを連通する横穴38が形成されている。横穴38はL型切込溝40側の出口が小さな開口径として形成されている。この横穴38内に鉄球21Bをしのばせ、横穴38の入口から押しバネ20Bで鉄球21Bを押し込み、鉄球21Bの後方から丸板19Bを入れる。横穴38の入口部分には雌ネジ部38Aを切っておき、この雌ネジ部38Aにネジ51を螺止して横穴38の入口を封止する。このネジ51が入る分と丸板19Bの大きさは横穴38と同等でも少々大きくてもよい。ネジ51で丸板19Bごしに押しバネ20Bを横穴38内に押し込み固定して溝側に押しバネ20Bの力で鉄球21Bの一部分が顔をのぞかせるようにする。そして、L型切込溝40にベルト先端のL型金具60が落ち込んできた時、横穴38の出口から顔をのぞいている鉄球21BがL型金具60の鉄球受窪63に入り込み、L型金具60を所定位置に位置決め固定させる。これにより、続く鉄棒52Aの貫通動作を円滑にする事ができる。
【0032】
揺動台Cが側壁17A,17Bの間に納まっている時と、引っ張り出されて屈折した時のそれぞれで、揺動台Cを動かさぬように一時固定する為、側壁25Aと一体の側壁31が左右方向に厚く形成されている。この厚くした側壁31の貫通穴30Cの上方位置に有底状の横穴32(図4参照)を開け、この横穴32内に押しバネ20Aと鉄球21Aをしのばせ、押しバネ20Aで横穴32から鉄球21A(図3参照)を外向きに押す事とする。この場合、押しバネ20Aと鉄球21Aとの間に丸板19Aを置くとよい。この鉄球21Aを受ける窪み23Aは、揺動台Cの外側に位置する側壁17Bの内側面後部で、納まっている状態の揺動台Cから出ている鉄棒22を受ける事となる横溝18Bの丁度上方位置に設けられる。これらの窪み23Aと鉄球21Aにより、収まっている時の揺動台Cを位置決め保持させる。
【0033】
そして、揺動台Cを引っ張りだすと、側壁17Bの窪み23Aに押しバネ20Aで押されて入っていた鉄球21Aが圧力を受ける為、押しバネ20Aを押し戻して窪み23Aから這い出す事となる。鉄球21Aは押しバネ20Aを押し戻して横穴32内に戻る格好となりつつも押しバネ20Aで押されているから、横溝18Bの上方位置で側壁17Bの内側面を、転動しながら揺動台Cと同体で前進する。そして、横溝18Bの終点(溝前端)に鉄棒22がつき当たると、揺動台Cはその位置で停止する。その後、揺動台Cを下向きに押すと、揺動台Cが本体基台Bに対し下向きに揺動してほぼ直角に屈折する。このとき、鉄球21Aは横溝18Bの終点の上方位置を通り越しながら円を描くように揺動台Cと同体で移動し、今度は横溝18Bの前方位置に設けた窪み23Bに入り込んで、屈折した揺動台Cをその位置で位置決め保持させる。このように、上述の側壁17Bの横溝18Bの終点の前方位置に窪み23Bを設けた事で、揺動台Cが屈折した時、鉄球21Aも進路を曲げて窪み23Bに丁度に入り込み、揺動台Cを屈折させた状態で固定させることができる。
【0034】
そして、図12に示すように、保持機構Eは、ブレーキスイッチ78を主体として構成されている。このブレーキスイッチ78は、ワッシャー85Aとワッシャーバネ86Aを通したボルト77が通されるボルト穴81と、ボルト穴81よりも一端側に設けられて指で押される操作箇所83と、ボルト穴81よりも他端側に設けられてベルト64に押し付けられる作用箇所82と、作用箇所82を常にベルト64に押し付ける方向にバネ付勢する引きバネ20Dの一端を掛止するバネ受け輪部80と、ブレーキスイッチ78の上面でボルト穴81と作用箇所82間の位置に設けられたツマミ突起78Aと、を有している。ツマミ突起78Aはその先端部が蓋27の上面から突出するように蓋27の長穴27Aを通される。一方、揺動台Cにおける箱土台25上の後部の側壁31と側壁33との間は、側壁が無く開口部となっている。この開口部に前記のブレーキスイッチ78が配備される。この場合、ブレーキスイッチ78と巻取りドラムDとの間には、揺動台Cを横一直線に貫く鉄棒22があるので、鉄棒22と干渉させないよう、作用箇所82はその途中にブレーキスイッチ78に切れ込み79が形成され、これにより鉄棒22の下方に入り込む部分84は細く形成されている。ブレーキスイッチ78は、巻取りドラムDに巻かれたベルト64に対し摺接・離間するように、箱土台25後部のボルト受36と蓋27後部のボルト穴46を通したボルト77で揺動自在に軸支される。もし、箱土台25のネジ受け36が少ないなら、ここのネジ受け面の所だけ箱土台25に厚みを持たせて、その分ブレーキスイッチ78の対面箇所をへこませてもよい。前記した引きバネ20Dの他端は、鉄棒通し穴30Bを有する側壁33のブレーキスイッチ78寄り側面に形成されたバネ受け輪部35に掛止されている。すなわち、平コイルバネ101で常時巻取りドラムDに巻かれているベルト64は、ブレーキスイッチ78によりドラム外部からブレーキがかけられる。これで、引っ張り出されたベルト64は、手を離しても引きバネ20Dによりブレーキスイッチ78先端の作用箇所82により押圧されて保持固定されるので、戻ることが無い。そして、ベルト64を巻き取る時は、ツマミ突起78Aを外部から指などで蓋27の長穴27Aの長手方向に沿って押す事で作用箇所82によるベルト64の保持が解除され、平コイルバネ101の戻りバネ力によりベルト64が巻き取られる。
【0035】
また、この車内ひったくり防止器具1は、図13および図14(a)に示すように、バックルFに固定させる為に差込金具2がバックルFの差込口Lに差込まれる。このバックルFは汎用品であり、箱状のケーシングNと、ケーシングN内に配備されており差込金具2の留め穴に係脱自在に係合して差込金具2をロックするロック爪Pと、外部からの押動によりロック爪Pを動作させて差込金具2のロック状態を解除する取外しボタンGと、差込金具2が装着されたことを検知する例えば磁力利用式のシートベルト装着センサーHとを備えている。但し、差込まれた器具本体AはバックルFの差込口Lの直近に位置するので、器具本体AとバックルFとの間に指を差し入れられない。そのために、バックルFの取外しボタンGを指で押せないこととなる。
【0036】
これを解決するために、車内ひったくり防止器具1においては差込金具台2Aの側壁4A,4B間で滑り台7下方の空間に、シートベルト用バックルFの取外しボタンGを押してバックルFから差込金具2を外す為の、図10(a)に示すようなL型スイッチ65が配備されている。このL型スイッチ65は、三本の角棒66,71,66を並べて固定されるが、中角棒71は一本としたならばバネ76が接続される分短く、スライド量が短くなるので、スライド量を長くする為、前記した三本とする意味がある。この中角棒71を角棒66,66からせり出させ、これでバックルFの取外しボタンGのど真ん中を押せる事になる。角棒66,66よりも上面を下げた上述の中角棒71の先端部に縦柱67が立設され、この縦柱67の下部前側にバックルFの取外しボタンGを押す為のふくらみ68(本発明の出没子の例)が取り付けられる。本体基台Bの後端部側面から差込金具2の上面に沿う前後方向に出没するふくらみ68と、縦柱67とは、通常時は揺動台Cの後端部側面内にすべてが収まるようになっている。そのために、揺動台Cの蓋27および箱土台25に、縦柱67を収める切込9,9が形成されている。揺動台Cの直上位置で指で押せるように、スイッチカバー73(本発明の第2操作ボタンの例)が縦柱67の上端に連結される。縦柱67は、スイッチカバー73が揺動台Cの27の上面に露出するような高さ寸法に設定される。L型スイッチ65が外部に向けてスライドする時に、上面が高い二本の角棒66,66の上面の接触する分だけ、滑り台7の下面を削り込み分8A,8B(図2参照)のように長溝状に削り込む。そこに、この二本の角棒66,66の上部を入り込ませる事で、外部へのスライド動作がぶれず円滑になる。そこで、差込金具2が車両のバックルFに装着されている状態でスイッチカバー73を後向きに押してスライド操作すると、ふくらみ68が揺動台Cの後端部側面から突出するようになっているので、バックルFに装着・セットを可能とするための差込金具2の長短に関係なく、全ての車種のバックルFの取外しボタンGを押す事ができる。これにより、差込金具2を確実に取り外すことができる。
【0037】
上述したように、二本の角棒66,66の先端は、スライド量が長くなるように本体基台B内の突起5近くまでとして、そこから横向けに、滑り台7裏面を削り込んだ分だけ上面が低くなった袖70A,70Bが取り付けられる。L型スイッチ65が本体基台Bから出て行ってしまわないように、本体基台Bの差込金具2側の出口にストッパー3A,3Bが設けられ、これらのストッパー3A,3Bで袖70A,70Bを止めるようになっている。せり出した中角棒71の後端部の位置における二本の角棒66,66の上面に、切込み69が形成され、この切込み69に横板74が落とし込まれる。横板74は、二本の角棒66,66の真ん中となる部分が滑り台7裏面の削りこんだ分だけ下げて形成され、スライドの邪魔とならないように、その真ん中に切込75が形成されている。この切込75にバネ76の一端部が留められ、バネ76の他端部は差込金具台2Aの前端の左右中央部に設置された突起5の切込6に留められ、このバネ76でL型スイッチ65を前向きに戻すようにしてある。尚、図10(a)中の符号で、72はL型スイッチ65を引き戻すバネ76が入る角棒66,66間の箇所を示している。
【0038】
他方で、既述したように、差込金具2はシートベルト装着センサーH付きのシートベルト用バックルF(図13(a)参照)に着脱自在に装着可能な形状に形成されている。従って、ひったくられる事のない荷物等を助手席に置いたときに着座センサーが感知して警告音が鳴り出した場合、コンパクトな器具本体Aの差込金具2をどの車種のバックルFにも差込むだけで、シートベルト装着センサーHのセンサー感知が解除されて警告音やシート装着促進表示が止まる。バックルFからの取り外しもスイッチカバー73の操作一つで簡単にできる。また、器具本体Aはコンパクトにできている為、器具本体AをバックルFに差込んだままでも助手席への荷物の積み下ろしを容易に行なうことができる。更には、バックルFに差込んだままでの長時間運転もベルト64がコンパクトな器具本体Aに巻き取られているので、ベルト64に手などが当たって運転の邪魔をすると言う事も無く、シンプルでコンパクトであるため、差込んだ状態での車中の景観も良い。
【0039】
上述してきたあらゆる発明を駆使して車内ひったくり防止器具1を完成させたが、この車内ひったくり防止器具1を軽くする為に、滑り台、パーツの側壁、ドラム本体、ドラム側壁パーツ、ブレーキスイッチ、L型スイッチ、密閉蓋、収納器具のパーツの側壁、収納器具の蓋、スイッチカバーなどはABS樹脂など粘硬質のプラスチックで構成してもよい。
また、上記では磁力利用式のシートベルト装着センサーHを有するバックルFに装着可能な差込金具2を例示したが、磁力利用式以外のシートベルト装着センサー、例えば差込金具側面の溝部を機械的に検知してシートベルト装着を検出するセンサーを有するバックルに適用できるよう、差込金具の側面に検出用溝を形成してもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 車内ひったくり防止器具
2 差込金具(バックル用差込金具)
37 横穴(壁側貫通孔)
40 L型切込溝
52A 鉄棒(ロック棒)
54 密閉蓋(第1操作ボタン)
60 L型金具
62 貫通穴(金具側貫通孔)
64 ベルト(可撓条体)
68 ふくらみ(出没子)
73 スイッチカバー(第2操作ボタン)
A 器具本体
B 本体基台
C 揺動台
D 巻取りドラム
E 保持機構
F シートベルト用バックル
G 取外しボタン
H シートベルト装着センサー
I ベルト出入口(条体出入口)
J 溝側壁(内壁)
K 溝側壁(内壁)
M 横穴(壁側貫通孔)
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車助手席上に置いたバッグ、カバン等をひったくり犯罪から守る為の車内ひったくり防止器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、新しい型の自動車の助手席の下には、乗員の着座を検知する着座センサーがセットされている。この着座センサーは、荷重が一定以上の荷物、バッグ、カバン等過ぎる物を置いたり、それらの荷重がいくぶん軽かったとしても振動や揺れたりする事で、人間が座ったものと誤感知し、シートベルト装着を促す警告音が鳴り出して止まらなくなる。この警告音解除の為には、いちいちシートベルトを引っ張ってきて助手席のシートベルト用バックル(以下、バックルと略称する)にセットするか、荷物を助手席に置く事を断念するかのどちらかを選択しなければならないが、どちらを選択しても大変不便なものである。更には、この助手席に置いたバッグ、カバン等が、信号待ちをしている間に突如助手席の窓ガラスを割られて奪い去られるという、ひったくり犯罪が多発していて、その対策が望まれている。
【0003】
そこで、この種のひったくり犯罪に対処する器具として、下記の特許文献1に記載された本発明者創案のものが知られている。特許文献1記載の器具は、器具本体の一端部にバックル用差込金具が設けられており、器具本体の他端部には、一定長のベルトの末端部が接続されている。また、器具本体の他端部には、ベルトの自由側端部に設けられた先端金具を係脱自在に係止する係止部が設けられている。この車内ひったくり防止器具では、そのバックル用差込金具を助手席のシートベルト用バックルに差し込んだのち、ベルトを助手席上のバッグ、カバン等の輪部分に通してきて先端金具を本体器具の係止部に係止させることにより、助手席上に置かれているバッグ、カバン等をひったくりから守るようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4250663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の車内ひったくり防止器具を車のシートベルト用バックルにセットすれば、上記のような警告音を解除する事ができ、もちろんひったくり対応もできる。しかしながら、特許文献1の車内ひったくり防止器具は、一定の長さのベルトが器具本体から露出したままである為、警告音解除のみが目的であってベルトを使用しないときは、ベルトが邪魔になることがある。また、荷物を積んだ状態での長時間運転の時は、警告音解除の為に車内ひったくり防止器具をシートベルト用バックルに装着した状態を保たねばならず、この時も、一定の長さのベルトが車のゆれや振動により、時には不特定な動きをすることが考えられる。これに加え、ギアチェンジ等も含めて左手も動かす中で、この左手にベルトが触れる可能性があり、時にはこれが運転ミスにつながりかねない。そして、車内ひったくり防止器具を装着しっぱなしでは一定の長さを有するベルトの放置となり、車中の見た目の景観もいまひとつ芳しくない。
【0006】
ところで、シートベルトの差込金具が装着されるバックルの装着口は、車種により浅いものから深いものまで種々ある。また、特許文献1の車内ひったくり防止器具は、バックルに装着された差込金具を取り外すための操作ボタンが器具本体内で移動する構造となっている。従って、装着口の深いバックル対応用として形成された長い差込金具を、装着口の浅いバックルに装着した場合には、差込金具の長さが余って前記の操作ボタンがバックルの取外しボタンに届かないので、差込金具自体を浅いバックル対応の物に変更しなければならない。また、特許文献1の車内ひったくり防止器具を適切でない車種に使用すると、バックルから外すのに器具本体カバー上部の隙間からドライバー等を用いてバックルの取外しボタンを押さなければ外れないということもある。すなわち、特許文献1記載の車内ひったくり防止器具は車種毎のひったくり対応にのみ使用できる器具ということになる。従って、上記した警告音解除の為に、この車内ひったくり防止器具をどの車種のバックルに対し何の心配も持たずに使用する事は出来ない。
【0007】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであって、ベルトなどの可撓条体を使用しないときに、運転などの邪魔にならず、見た目にもよい車内ひったくり防止器具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る車内ひったくり防止器具は、箱状に形成された器具本体の一端部にバックル用差込金具が設けられ、器具本体の他端部には、カバンなどに設けられた輪部分に通される可撓条体の末端部が接続されるとともに、可撓条体の自由側端部に設けられた先端金具を係脱自在に係止する係止部が設けられている車内ひったくり防止器具において、器具本体に回動自在に内蔵された可撓条体巻取り用の巻取りドラムと、器具本体の他端部に形成された条体出入口から引き出された可撓条体をその引出位置で係脱自在に保持する保持機構と、を備えている構成にしてある。
【0009】
また、前記構成において、器具本体の係止部の内壁に形成された壁側貫通孔と、係止部に係止された状態の先端金具の、前記壁側貫通孔と対向する位置に形成された金具側貫通孔と、器具本体に設けられて壁側貫通孔および金具側貫通孔に通されるロック棒と、器具本体の上面に配置されるとともにロック棒と連結された第1操作ボタンと、を備え、第1操作ボタンの操作によりロック棒が壁側貫通孔および金具側貫通孔を貫通するように構成されているものである。
【0010】
そして、前記した各構成において、可撓条体が平鋼板で構成され、器具本体が、バックル用差込金具を有する本体基台と、巻取りドラムを内蔵し条体出入口および係止部を有する揺動台と、から構成されるとともに、揺動台が、本体基台の他端部でバックル用差込金具の上面と交差する方向に屈折自在に枢支されるものである。
【0011】
更に、前記した各構成において、器具本体の一端部側面からバックル用差込金具の上面に沿う方向に出没する出没子と、器具本体の上面に配置されるとともに出没子と連結された第2操作ボタンと、を備え、バックル用差込金具が車両のシートベルト用バックルに装着されている状態で第2操作ボタンを操作することにより、出没子が器具本体の一端部側面から突出してシートベルト用バックルの取外しボタンを押すように構成されているものである。
【0012】
また、前記した各構成において、バックル用差込金具が、シートベルト装着センサー付きのシートベルト用バックルに着脱自在に装着可能な形状に形成されているものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る車内ひったくり防止器具によれば、器具本体に回動自在に内蔵された可撓条体巻取り用の巻取りドラムと、器具本体の他端部に形成された条体出入口から引き出された可撓条体をその引出位置で係脱自在に保持する保持機構とを備えているので、使用しないときは器具本体内の巻取りドラムに可撓条体を巻き取れるので、器具全体としてコンパクトで見栄えがよく、可撓条体が運転などの邪魔になるということもない。また、引き出した可撓条体から手を離すと、可撓条体は巻取りドラムにより巻き取られようとするが、保持機構を用いることにより、可撓条体から手を離しても器具本体内に戻すことなく可撓条体をその位置で留めて保持することができる。
【0014】
また、器具本体の上面に配置される第1操作ボタンの操作によりロック棒が壁側貫通孔および金具側貫通孔を貫通するように構成したものでは、先端金具と係止部との係止状態にロック棒による係止状態も加わるから、確実にロックすることができる。これにより、先端金具および可撓条体を通した座席上のカバンなどを、ひったくりなどから確実に守ることができる。
【0015】
そして、可撓条体を平鋼板で構成するとともに、器具本体を本体基台と揺動台とから構成したものでは、平鋼板は強靭であるうえ弾性的に曲げることができ、ばね戻り力も利用することができる。しかしながら、平鋼板を曲げ得る方向は板面と平行の方向ではなく、板面と交差する方向である。そこで、本体基台の他端部で揺動台をバックル用差込金具の平面と交差する方向に屈折させると、可撓条体を助手席の上方位置に曲げて向わせることができ、カバンなどの輪部分に確実かつ容易に通せるようになる。
【0016】
更に、器具本体の上面に配置される第2操作ボタンの操作により出没子が器具本体の一端部側面から突出してシートベルト用バックルの取外しボタンを押すように構成されたものでは、シートベルト用バックルに差し込まれたバックル用差込金具の装着を解除させることができる。因みに、この構成がない場合は、装着状態にある器具本体とシートベルト用バックルの間に指が入りにくい。そのために、取外しボタンを押すことができず、バックル用差込金具の装着を解除できないことがある。
【0017】
バックル用差込金具が、シートベルト装着センサー付きのシートベルト用バックルに着脱自在に装着される形状に形成されているものでは、そのシートに重い荷物を置いて着座センサーが感知するような場合でも、車内ひったくり防止器具のバックル用差込金具をシートベルト用バックルに装着するだけで、警告音や装着促進表示を解除することができる。尚、バックル用差込金具は幅を狭く形成しておくとよい。そのように狭く形成しておくと、シートベルト用バックルの幅の広いものでも対応でき、差入れ長を長くすることができる。これにより、近年の多種多様な車種のシートベルト用バックルに対応して使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る車内ひったくり防止器具を示し、(a)は斜め後ろから見た全体外観図、(b)は斜め前から見た全体外観図である。
【図2】前記車内ひったくり防止器具の本体基台を示す分解斜視図である。
【図3】前記本体基台のパーツ物の側壁、鉄棒などを示す分解斜視図である。
【図4】前記車内ひったくり防止器具の揺動台を示す分解斜視図である。
【図5】前記車内ひったくり防止器具の密閉固定貫通ロック構造に用いる各部品を示す分解斜視図である。
【図6】前記車内ひったくり防止器具および平断面にした揺動台を示す平面図である。
【図7】前記車内ひったくり防止器具のL型切込溝近傍を示す部分正断面図である。
【図8】前記車内ひったくり防止器具の巻取りドラムを示す分解斜視図である。
【図9】(a)は前記巻取りドラムに使用される平コイルバネの外観図、(b)は末端部を輪にしたベルトおよびベルト先端のL型金具を示す外観図である。
【図10】(a)は前記車内ひったくり防止器具のスイッチカバーやふくらみなどを示す分解斜視図、(b)はベルト先端のL型金具を示す部分斜視図、(c)は巻取りドラムおよびこれに巻かれたベルトを示す外観図である。
【図11】前記車内ひったくり防止器具の揺動台の屈折動作を示す動作説明図である。
【図12】ブレーキ構造に用いる各部品を示す分解斜視図である。
【図13】(a)は前記車内ひったくり防止器具を車のバックルに装着した状態を示す平断面図、(b)は車の助手席のバックルの正面図である。
【図14】前記車内ひったくり防止器具を車の助手席のシートベルト用バックルに使用したものを示し、(a)はシートベルト用バックルに車内ひったくり防止器具を装着した状態を示す説明図、(b)はバックルに装着した車内ひったくり防止器具の揺動台を本体基台から引き出して屈折させ、ベルトを引き出してバッグなどの取っ手輪部に通した後に係止させた状態を示す説明図である。
【図15】前記車内ひったくり防止器具の揺動台を本体基台から屈折させた状態および引き出したベルトのL型金具をL型切込溝に係止させた状態をそれぞれ破線で示す動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下に述べる実施形態は本発明を具体化した一例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものでない。図1は本発明の一実施形態に係る車内ひったくり防止器具を示し、(a)は斜め後ろから見た全体外観図、(b)は斜め前から見た全体外観図である。
図1において、この実施形態に係る車内ひったくり防止器具1は、箱状に形成された器具本体Aを備えて構成されている。器具本体Aは、バックル用差込金具(以下、差込金具と略称する)2を有する本体基台Bと、本体基台Bの上面に前後スライド自在に配備され、且つ、本体基台Bの前端部近傍位置で差込金具2の上面と直交する方向(下向き)に揺動する揺動台Cとから構成されている。揺動台Cの前側面には、カバンなどに設けられた輪部分に通されるベルト64(本発明の可撓条体の例、図9(b)参照)を出し入れするベルト出入口I(本発明の条体出入口の例)と、ベルト64の自由側端部に取り付けられたL型金具60(本発明の先端金具の例)を係脱自在に係止するL型切込溝40(本発明の係止部の例)とが設けられている。そして、揺動台Cの後側面には、前述のベルト出入口Iから引き出されたベルト64をその引出位置で係脱自在に係止保持する保持機構Eが配備されている。
【0020】
この発明の実施形態を更に詳しく順次説明する。まず、本体基台Bは、図2に示すように、後端部に差込金具2を有するとともに左右両側部に側壁4A,4Bが立設された差込金具台2Aと、側壁4A,4Bの上面に載せて取り付けられる滑り台7と、滑り台7上の左右両側に設置されるパーツ物の側壁17A,17B(図3参照)とを備えている。差込金具2は、どの車種のシートベルト用バックルFにも装着可能なように、比較的幅狭な形状に形成されている。尚、図2中の符号において、14A〜14Hはそれぞれ側壁4A,4Bまたは滑り台7の左右辺部に形成されていてボルト15を通されるボルト穴、12A〜12Dはそれぞれ滑り台7の四隅部に形成されていてボルト16を通されるボルト穴、13A〜13Dはそれぞれ側壁4A,4Bの前後端部に形成されていてボルト穴12D〜12Aを通ったボルト16を螺止するボルト受である。また、8A,8Bは後述するL型スイッチ65の二本の角棒66,66の上面を収容して前後に案内する削り込み分、3A,3BはL型スイッチ65の飛び出しを止めるストッパー、10A,10BはL型スイッチ65のふくらみ68が入り込む切込、9はL型スイッチ65の縦柱67が入り込む切込、5はL型スイッチ65のバネ76の他端を係止する切込6を有する突起、11A,11Bは後述する揺動台Cを下向きに揺動させるように差込金具台2Aと滑り台7の前方にそれぞれ形成された切込である。
【0021】
そして、前記した揺動台Cは、本体基台Bにおける側壁17A,17Bの間で滑り台7上に設置される。側壁17A,17Bの内側面には、図3に示すように、前後に長い横溝18A,18Bが形成されている。これら対面する横溝18A,18B内には、揺動台Cの左右側面から突出した鉄棒22の両端が収容される。尚、図3中の符号において、24A〜24Dは側壁4A,4Bのボルト穴14A〜14Dと滑り台7のボルト穴14F〜14Hを通されたボルト15,15,15,15を螺止するボルト受、12E〜12Hはボルト16,16,16,16を通すボルト穴である。ボルト穴12E〜12Hを通されたボルト16,16,16,16は、更に滑り台7の12A〜12Dを通されて側壁4A,4Bのボルト受13A〜13Dで螺止される。これにより、本体基台Bが強固な箱体となる。また、21Aは鉄球、19Aは丸板、20Aは押しバネであり、これらは後述する揺動台Cの横穴32に収容される。23A,23Bはそれぞれ側壁17Bの内側面に形成されて前記の鉄球21Aが出し入れ自在に入り込む窪みである。
【0022】
また、揺動台Cは、図4に示すように、箱土台25と、側壁パーツ26と、箱土台25および側壁パーツ26の上面に載せて取り付けられる蓋27とを備えている。作業上邪魔になるので、片一方の側壁25Aは箱土台25と一体に構成され、他方の側壁パーツ26は別パーツ物を用いて箱を形成するようにした。ベルト64を引っ張り出す側を箱の前側とすれば、箱土台25と一体の側壁25Aは左側に配置される。そして、箱の前辺部には、ベルト出入口I(本発明の条体出入口の例)と、ベルト先端のL型金具60(本発明の先端金具の例:L型形状のものに限らず)を固定させるL型切込溝40とが設けられる。L型切込溝40は、それぞれ箱土台25と一体構成の、溝側壁J(本発明の内壁の例)と、この溝側壁Jに対面する位置の溝側壁K(本発明の内壁の例)との間に、前上方から見て逆L字状に形成されている。
更に、このL型切込溝40とその周辺を説明する。側壁26に近い側の溝側壁Jに二つの横穴37,38を設ける。一つはその溝側壁Jに貫通して形成された横穴37(本発明の壁側貫通孔の例)である。この横穴37を貫きL型切込溝40を渡った対岸位置の溝側壁Kにも、その一直線上に位置した所に横穴M(本発明の壁側貫通孔の例)が掘られている。これにより、L型切込溝40に入ったL型金具60の貫通穴62(本発明の金具側貫通孔の例)を溝側壁Jの横穴37を通ってきた鉄棒52A(本発明のロック棒の例)が貫通して溝対岸の溝側壁Kの横穴Mに入り、L型切込溝40の両溝側壁J,Kの横穴37,Mで鉄棒52Aを受けた状態でL型金具64を固定させる事となる。
【0023】
前記の構成を詳しく説明すると、揺動台Cからベルト64を引き出して発明を遂行していく為に、ベルト64の先端は、L型金具60にかしめ61A,61B(図9(b)参照)で固着されている。その場合、ベルト64の先端をL型金具60に添え、押え板や同型の金具で挟み、それらとともにかしめで固定しても良い。ベルト64のかしめ61A,61Bの間に、貫通穴62と鉄球受窪63を形成してある。そして、ベルト出入口Iから引っ張り出されたベルト64は保持機構Eにより係止保持されて戻らず、その位置で留められる。そこで、L型金具60をバッグ、カバン等の取っ手を通したのち手前に戻してベルト64をu字型状とし、戻したL型金具60を器具本体AのL型切込溝40に入れれば、L型金具60がL型切込溝40にひっかかるから引っ張っても外れない。このL型切込溝40はL型金具60を入れやすいように上縁部全体が擂鉢状に形成されている。そして、L型金具60がL型切込溝40に落とし込まれると、L型金具60の下部に形成された鉄球受窪63に、落とし込まれたL型切込溝40の溝側壁Jの横穴38から一部分が突出した鉄球21Bが入り込み、これでL型金具60を軽く位置決めさせる。この場合、鉄球21Bは横穴38から飛び出てしまうのではなく、出口の小さい横穴38から一部分が突出した状態で鉄球受窪63に入り込む。これにより、L型金具60が所定のロック位置で位置決め保持される。
尚、図4中の符号で、35は側壁33に設けられていてブレーキスイッチ78を引く引きバネ20Dの端部を掛止するためのバネ受け輪部、41はスライドする密閉蓋54と接触する溝側壁J,Kの上面の削られた部分、44で示す点線内は蓋27の下面を蓋厚さの半分まで削った部分、43は蓋27に形成されていてL型切込溝40および溝側壁J,Kの上方位置に配置される穴であり、この穴43の下面側に密閉蓋54が配備される。
【0024】
更に、溝側壁Jの内側には、図5に示すような左右移動自在の箱52が配備される。箱52の左側面には鉄棒52Aが突設されている。そして、密閉蓋54(本発明の第1操作ボタンの例)が、上方からネジ穴57を通したネジ58により箱52上面のネジ受け53にネジ止め固定される。この密閉蓋54は、L型切込溝40の溝側壁Jの上面と蓋27の下面との間に配置される。蓋27の下方でスライドする密閉蓋54の前部と両側は、それぞれ密閉蓋厚さの半分を密閉蓋上部側で少々削り、密閉蓋後部はスライドする分と少々の余分の分も含めて密閉蓋厚さの半分を密閉蓋上部側で削る。尚、図5中の符号で、56で示す点線外方部分は密閉蓋54の上面を蓋厚さの半分を削った部分を示している。この密閉蓋54の削った部分が当たる蓋27の下部をこの分と同等の厚さだけ削る。蓋54と蓋27の厚さが一緒ならば、密閉蓋54は蓋27と一体の厚さとなり、削り合った分で固定されて作動することになる。密閉蓋54の裏面と接する面は全体に微量に削る。これで、密閉蓋54は自由にスライドできる。蓋27は揺動台Cに乗り、蓋中央下面の凹み48で心棒28の上端を回動自在に支持して、自身のボルト穴45A〜45Dを通されたボルト50,50,50,50が揺動台Cの側壁下部のボルト受け42A〜42Dに螺止されて、揺動台C全体が留められる。
【0025】
そこで、図7に示すように、密閉蓋54をスライドさせて、L型金具60が落とし込まれているL型切込溝40を覆うと、同時に密閉蓋54と一体の鉄棒52Aもスライドして溝側壁Jの横穴37を通り抜け、更にL型切込溝40に入ったL型金具60の貫通穴62を貫通して、反対側の溝側壁Kの横穴Mに入り込む。この時、スライドする密閉蓋54は、密閉蓋54の下面に設けられている二箇所の窪み55A,55B(図7参照)に、溝側壁J上面の縦穴39内に収容されている押しバネ20Cで押し上げられた鉄球21Cが入り込んで、密閉蓋54をその全開位置と全閉位置とで位置決めするようになっている。
従って、図6に示すように、箱52がスライドして密閉蓋54による密閉状態を作り、鉄球21Cで自身を位置決め保持させ、同時に密閉した中で密閉蓋52の鉄棒52Aでロックをする事となる。すなわち、ベルト64先端のL型金具60は、密閉蓋54で密閉された状態でのL型切込溝40への固定と、鉄棒52Aの貫通による貫通ロックとの二箇所固定にされる。このような二箇所でL型金具60が完全に固定される二箇所固定式の密閉固定貫通ロック方式を採用しているので、ひったくりからバッグ、カバン等を確実に守る事ができる。
【0026】
そして、この車内ひったくり防止器具1はひったくりに耐えなければならないので、巻取ドラムDや心棒28はもちろんのこと、心棒28との間の側壁25Aと側壁パーツ26にも厚みを持たせた強度の高いものとする。また、巻取りドラムDは、図8、図9、図10(b)、図10(c)に示すように、鍔縁95を片一方のみに形成したドラム本体93と、ドラム本体93の他側面に装着される鍔縁89付きのドラム側壁パーツ87とを備えている。一方、ベルト64の端は輪100とした接点部分が2箇所のかしめ61C,61Dで止められる。この輪100をドラム本体93の鍔縁の無い側から巻取面94におおいかぶせるように侵入させる。更に、かしめ61C,61Dの上に穴付きのベルト押え板90を置き、この上からベルト64のベルト貫通孔99と巻取面94のボルト穴98を通してドラム内空洞97内まで貫通させたドラム貫通ボルト92を、ドラム内空洞97側からワッシャー85B、ワッシャーバネ86Bおよび受ナット91を用いてネジ止めする。このとき、ドラム内部空洞97内に収容した、ベルト64を巻取る力を付与する為の平コイルバネ101外端の穴102にも、前記のドラム貫通ボルト92を通し押さえワッシャ103も用いてネジ止めする。尚、平コイルバネ101の内側の端104(図9(a)参照)を差し込んで止める為の縦割りの切込み29を心棒28に形成するが、これも強度を保つ為、切込み29は心棒28の上部から入れ根元より少しあがった所までとする。この切込み29がない心棒28の根元の所で巻取りドラムDの穴96Aを受ける事とし、この切込み29がない分に該当する平コイルバネ101の端部分はその部分を狭める事とする。このように、揺動台C内に配備された巻取りドラムDに巻き取られるベルト64としては、こわばることなく、その上下面と直角の方向に自由に曲げられる平スチール製の帯板(平鋼板)を用いた。また、ベルト64を巻取りドラムDに巻き取る為のコイルバネも平コイルバネ101を用いてある。このベルト64は平コイルバネ101のバネ力で巻き取られ、引っ張り出す時は引き戻されない為の保持機構Eとともに揺動台C内に設けられる。
【0027】
尚、本発明の可撓条体としては、前記した平スチールの他に、ワイヤー、そして上述のスチールも含めこれにコーティングを施したものや、強度のある布やナイロン、合成物、また、それ等を組み合わせたり編んだりしたものも考えられる。ベルト64の長さは、揺動台Cから引っ張り出した先端部を座席のバッグ、カバン等の取っ手の輪部に通したのちにu字型に戻して揺動台Cに装着できるだけの長さであればよい。このベルト64をドラム本体93の巻取面94にセットし、更にドラム内側壁とさせる部分88に強度を持たせるようにした円盤状で穴96Bを有するドラム側壁パーツ87を、ドラム本体93にセットすると、巻取りドラムDが完成する。この巻取りドラムDは鍔縁89,95を持っているのでベルト64が巻取面94からずり落ちない。そして、巻取りドラムDはその穴96A,96Bが心棒28に装着されて回動自在に支持される。尚、図10(c)中の符号で、59はベルト64を巻取りドラムDの巻取面94に巻いた状態を示している。
【0028】
この実施形態では、可撓条体として平スチール板製のベルト64を使用している。このベルト64はその広い平たん面が上面および下面となるように置かれた状態で、その平たん面に対して上下方向には自由に曲がるが、左右の薄い側面の方向にはほとんど曲がることは無い。一方、シートベルト用バックルFはその差込口L(図13(b)参照)が縦長に配置されている。この縦長の差込口Lに縦向きで差込まれる差込金具2と一体の器具本体Aから引っ張り出されるベルト64は、構造上横向きになっている心棒28にセットされた巻取りドラムDから引き出される。そのため、縦型の差込口Lを有するバックルFに対し、その平たん面を水平にして器具本体Aから車内に引き出されたベルト64は上下に曲がりながらフロントガラス方向にしか進めず、左方の助手席上にあるバッグ、カバン等に向けては進められない。このような問題は、縦向きにして差込まれた差込金具2に対し器具本体Aを助手席方向に屈曲させたL字型固定形状に形成すれば解決するが、それではL字型に形成された器具本体自体がコンパクトにならず、バックル装着時にかさばって邪魔になるという問題が生じる。
【0029】
そこで、前段落の問題点を解決する為の発明を説明する。図4に示すように、揺動台Cにおける箱土台25上の右側後端部には、強度を保つ為に、ここだけの側壁33が立設されている。この側壁33は、箱土台25上に固定された側壁パーツ26の丁度内側となる所に設けられている。また、側壁33の上面にはネジ受34が形成されている。そして、蓋27のネジ穴47を通ったネジ49がネジ受34でねじ止め固定されることにより、蓋27が固定される。これにより、この側壁33は尚いっそう強度が高くなる。そして、側壁25Aおよび側壁31に、左右方向に貫通する鉄棒通し穴30Cが形成され、鉄棒通し穴30Cの穴心と同軸位置の側壁33に鉄棒通し穴30Bが形成され、箱土台25の右辺部に配備された側壁パーツ26の鉄棒通し穴30Bと同軸位置にも鉄棒通し穴30Aが形成されている。一方、箱土台25上の左側後端部には、側壁25Aと一体の側壁31が形成されている。これらの鉄棒通し穴30A,30B,30Cには、鉄棒22が通される。この鉄棒22の両端は側壁25Aおよび側壁パーツ26の外側面から突出しており、側壁17A,17Bの横溝18A,18Bで収受される。
【0030】
そして、シートベルト装着警告音誤作動解除の時は、上述の滑り台7と側壁17A,17B間の中の所定位置に揺動台Cを保持してコンパクトにした状態で、本体基台Bに設けた差込金具2をバックルFに差込む事により誤作動警告音の発生が解除される。助手席に置いた物がバッグ、カバン等重要な時は、図11に示すように、揺動台Cを前向きに引っ張ると、揺動台Cの左右両側に出ている鉄棒22が側壁17A,17Bの横溝18A,18B内で案内され揺動台Cを前方向に誘導する。滑り台7とその下方の差込金具台2Aには、両側にある側壁17A,17Bの厚さ分をそれぞれ残して、それぞれの平面が側壁17A,17Bの終点よりも短くなるように、切り込み11Bおよび切り込み11Aが形成されている。従って、これらの切り込み11A,11Bの存在により、揺動台Cが横溝18A,18Bの終点に達したときに(図11中の2点鎖線で示す揺動台C)、揺動台Cを受けるべき滑り台7と差込金具台2Aの台面が存在しない。すなわち、揺動台Cは下向きに方向を変えて屈折する事ができる。これにより、縦向きに差込まれた差込金具2と同等にセットされた揺動台Cを引っ張り出して屈折させると(図11中の破線で示す揺動台Cおよび図15中の破線参照)、揺動台Cが差込金具2の裏面側を向く。すなわち、図14(b)に示すように、揺動台Cがイコール助手席108の方向に向く事となる。そこで、揺動台Cからベルト64を引っ張り出し、先端のL型金具60をその延長線上にある助手席108上のバッグ107やカバン等の取っ手を通してきて折り返すことができる。更に、揺動台CのL型切込溝40にL型金具60を落とし込み、密閉蓋54をスライドさせて密閉固定貫通ロックを行なうことで、バッグ107やカバン等を、車内ひったくり防止器具1を介してシートベルト用バックルFに完全に固定させ、これにより助手席108上の重要物をひったくりから確実に守ることができる。
【0031】
そして、溝側壁Jには、揺動台C内とL型切込溝40とを連通する横穴38が形成されている。横穴38はL型切込溝40側の出口が小さな開口径として形成されている。この横穴38内に鉄球21Bをしのばせ、横穴38の入口から押しバネ20Bで鉄球21Bを押し込み、鉄球21Bの後方から丸板19Bを入れる。横穴38の入口部分には雌ネジ部38Aを切っておき、この雌ネジ部38Aにネジ51を螺止して横穴38の入口を封止する。このネジ51が入る分と丸板19Bの大きさは横穴38と同等でも少々大きくてもよい。ネジ51で丸板19Bごしに押しバネ20Bを横穴38内に押し込み固定して溝側に押しバネ20Bの力で鉄球21Bの一部分が顔をのぞかせるようにする。そして、L型切込溝40にベルト先端のL型金具60が落ち込んできた時、横穴38の出口から顔をのぞいている鉄球21BがL型金具60の鉄球受窪63に入り込み、L型金具60を所定位置に位置決め固定させる。これにより、続く鉄棒52Aの貫通動作を円滑にする事ができる。
【0032】
揺動台Cが側壁17A,17Bの間に納まっている時と、引っ張り出されて屈折した時のそれぞれで、揺動台Cを動かさぬように一時固定する為、側壁25Aと一体の側壁31が左右方向に厚く形成されている。この厚くした側壁31の貫通穴30Cの上方位置に有底状の横穴32(図4参照)を開け、この横穴32内に押しバネ20Aと鉄球21Aをしのばせ、押しバネ20Aで横穴32から鉄球21A(図3参照)を外向きに押す事とする。この場合、押しバネ20Aと鉄球21Aとの間に丸板19Aを置くとよい。この鉄球21Aを受ける窪み23Aは、揺動台Cの外側に位置する側壁17Bの内側面後部で、納まっている状態の揺動台Cから出ている鉄棒22を受ける事となる横溝18Bの丁度上方位置に設けられる。これらの窪み23Aと鉄球21Aにより、収まっている時の揺動台Cを位置決め保持させる。
【0033】
そして、揺動台Cを引っ張りだすと、側壁17Bの窪み23Aに押しバネ20Aで押されて入っていた鉄球21Aが圧力を受ける為、押しバネ20Aを押し戻して窪み23Aから這い出す事となる。鉄球21Aは押しバネ20Aを押し戻して横穴32内に戻る格好となりつつも押しバネ20Aで押されているから、横溝18Bの上方位置で側壁17Bの内側面を、転動しながら揺動台Cと同体で前進する。そして、横溝18Bの終点(溝前端)に鉄棒22がつき当たると、揺動台Cはその位置で停止する。その後、揺動台Cを下向きに押すと、揺動台Cが本体基台Bに対し下向きに揺動してほぼ直角に屈折する。このとき、鉄球21Aは横溝18Bの終点の上方位置を通り越しながら円を描くように揺動台Cと同体で移動し、今度は横溝18Bの前方位置に設けた窪み23Bに入り込んで、屈折した揺動台Cをその位置で位置決め保持させる。このように、上述の側壁17Bの横溝18Bの終点の前方位置に窪み23Bを設けた事で、揺動台Cが屈折した時、鉄球21Aも進路を曲げて窪み23Bに丁度に入り込み、揺動台Cを屈折させた状態で固定させることができる。
【0034】
そして、図12に示すように、保持機構Eは、ブレーキスイッチ78を主体として構成されている。このブレーキスイッチ78は、ワッシャー85Aとワッシャーバネ86Aを通したボルト77が通されるボルト穴81と、ボルト穴81よりも一端側に設けられて指で押される操作箇所83と、ボルト穴81よりも他端側に設けられてベルト64に押し付けられる作用箇所82と、作用箇所82を常にベルト64に押し付ける方向にバネ付勢する引きバネ20Dの一端を掛止するバネ受け輪部80と、ブレーキスイッチ78の上面でボルト穴81と作用箇所82間の位置に設けられたツマミ突起78Aと、を有している。ツマミ突起78Aはその先端部が蓋27の上面から突出するように蓋27の長穴27Aを通される。一方、揺動台Cにおける箱土台25上の後部の側壁31と側壁33との間は、側壁が無く開口部となっている。この開口部に前記のブレーキスイッチ78が配備される。この場合、ブレーキスイッチ78と巻取りドラムDとの間には、揺動台Cを横一直線に貫く鉄棒22があるので、鉄棒22と干渉させないよう、作用箇所82はその途中にブレーキスイッチ78に切れ込み79が形成され、これにより鉄棒22の下方に入り込む部分84は細く形成されている。ブレーキスイッチ78は、巻取りドラムDに巻かれたベルト64に対し摺接・離間するように、箱土台25後部のボルト受36と蓋27後部のボルト穴46を通したボルト77で揺動自在に軸支される。もし、箱土台25のネジ受け36が少ないなら、ここのネジ受け面の所だけ箱土台25に厚みを持たせて、その分ブレーキスイッチ78の対面箇所をへこませてもよい。前記した引きバネ20Dの他端は、鉄棒通し穴30Bを有する側壁33のブレーキスイッチ78寄り側面に形成されたバネ受け輪部35に掛止されている。すなわち、平コイルバネ101で常時巻取りドラムDに巻かれているベルト64は、ブレーキスイッチ78によりドラム外部からブレーキがかけられる。これで、引っ張り出されたベルト64は、手を離しても引きバネ20Dによりブレーキスイッチ78先端の作用箇所82により押圧されて保持固定されるので、戻ることが無い。そして、ベルト64を巻き取る時は、ツマミ突起78Aを外部から指などで蓋27の長穴27Aの長手方向に沿って押す事で作用箇所82によるベルト64の保持が解除され、平コイルバネ101の戻りバネ力によりベルト64が巻き取られる。
【0035】
また、この車内ひったくり防止器具1は、図13および図14(a)に示すように、バックルFに固定させる為に差込金具2がバックルFの差込口Lに差込まれる。このバックルFは汎用品であり、箱状のケーシングNと、ケーシングN内に配備されており差込金具2の留め穴に係脱自在に係合して差込金具2をロックするロック爪Pと、外部からの押動によりロック爪Pを動作させて差込金具2のロック状態を解除する取外しボタンGと、差込金具2が装着されたことを検知する例えば磁力利用式のシートベルト装着センサーHとを備えている。但し、差込まれた器具本体AはバックルFの差込口Lの直近に位置するので、器具本体AとバックルFとの間に指を差し入れられない。そのために、バックルFの取外しボタンGを指で押せないこととなる。
【0036】
これを解決するために、車内ひったくり防止器具1においては差込金具台2Aの側壁4A,4B間で滑り台7下方の空間に、シートベルト用バックルFの取外しボタンGを押してバックルFから差込金具2を外す為の、図10(a)に示すようなL型スイッチ65が配備されている。このL型スイッチ65は、三本の角棒66,71,66を並べて固定されるが、中角棒71は一本としたならばバネ76が接続される分短く、スライド量が短くなるので、スライド量を長くする為、前記した三本とする意味がある。この中角棒71を角棒66,66からせり出させ、これでバックルFの取外しボタンGのど真ん中を押せる事になる。角棒66,66よりも上面を下げた上述の中角棒71の先端部に縦柱67が立設され、この縦柱67の下部前側にバックルFの取外しボタンGを押す為のふくらみ68(本発明の出没子の例)が取り付けられる。本体基台Bの後端部側面から差込金具2の上面に沿う前後方向に出没するふくらみ68と、縦柱67とは、通常時は揺動台Cの後端部側面内にすべてが収まるようになっている。そのために、揺動台Cの蓋27および箱土台25に、縦柱67を収める切込9,9が形成されている。揺動台Cの直上位置で指で押せるように、スイッチカバー73(本発明の第2操作ボタンの例)が縦柱67の上端に連結される。縦柱67は、スイッチカバー73が揺動台Cの27の上面に露出するような高さ寸法に設定される。L型スイッチ65が外部に向けてスライドする時に、上面が高い二本の角棒66,66の上面の接触する分だけ、滑り台7の下面を削り込み分8A,8B(図2参照)のように長溝状に削り込む。そこに、この二本の角棒66,66の上部を入り込ませる事で、外部へのスライド動作がぶれず円滑になる。そこで、差込金具2が車両のバックルFに装着されている状態でスイッチカバー73を後向きに押してスライド操作すると、ふくらみ68が揺動台Cの後端部側面から突出するようになっているので、バックルFに装着・セットを可能とするための差込金具2の長短に関係なく、全ての車種のバックルFの取外しボタンGを押す事ができる。これにより、差込金具2を確実に取り外すことができる。
【0037】
上述したように、二本の角棒66,66の先端は、スライド量が長くなるように本体基台B内の突起5近くまでとして、そこから横向けに、滑り台7裏面を削り込んだ分だけ上面が低くなった袖70A,70Bが取り付けられる。L型スイッチ65が本体基台Bから出て行ってしまわないように、本体基台Bの差込金具2側の出口にストッパー3A,3Bが設けられ、これらのストッパー3A,3Bで袖70A,70Bを止めるようになっている。せり出した中角棒71の後端部の位置における二本の角棒66,66の上面に、切込み69が形成され、この切込み69に横板74が落とし込まれる。横板74は、二本の角棒66,66の真ん中となる部分が滑り台7裏面の削りこんだ分だけ下げて形成され、スライドの邪魔とならないように、その真ん中に切込75が形成されている。この切込75にバネ76の一端部が留められ、バネ76の他端部は差込金具台2Aの前端の左右中央部に設置された突起5の切込6に留められ、このバネ76でL型スイッチ65を前向きに戻すようにしてある。尚、図10(a)中の符号で、72はL型スイッチ65を引き戻すバネ76が入る角棒66,66間の箇所を示している。
【0038】
他方で、既述したように、差込金具2はシートベルト装着センサーH付きのシートベルト用バックルF(図13(a)参照)に着脱自在に装着可能な形状に形成されている。従って、ひったくられる事のない荷物等を助手席に置いたときに着座センサーが感知して警告音が鳴り出した場合、コンパクトな器具本体Aの差込金具2をどの車種のバックルFにも差込むだけで、シートベルト装着センサーHのセンサー感知が解除されて警告音やシート装着促進表示が止まる。バックルFからの取り外しもスイッチカバー73の操作一つで簡単にできる。また、器具本体Aはコンパクトにできている為、器具本体AをバックルFに差込んだままでも助手席への荷物の積み下ろしを容易に行なうことができる。更には、バックルFに差込んだままでの長時間運転もベルト64がコンパクトな器具本体Aに巻き取られているので、ベルト64に手などが当たって運転の邪魔をすると言う事も無く、シンプルでコンパクトであるため、差込んだ状態での車中の景観も良い。
【0039】
上述してきたあらゆる発明を駆使して車内ひったくり防止器具1を完成させたが、この車内ひったくり防止器具1を軽くする為に、滑り台、パーツの側壁、ドラム本体、ドラム側壁パーツ、ブレーキスイッチ、L型スイッチ、密閉蓋、収納器具のパーツの側壁、収納器具の蓋、スイッチカバーなどはABS樹脂など粘硬質のプラスチックで構成してもよい。
また、上記では磁力利用式のシートベルト装着センサーHを有するバックルFに装着可能な差込金具2を例示したが、磁力利用式以外のシートベルト装着センサー、例えば差込金具側面の溝部を機械的に検知してシートベルト装着を検出するセンサーを有するバックルに適用できるよう、差込金具の側面に検出用溝を形成してもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 車内ひったくり防止器具
2 差込金具(バックル用差込金具)
37 横穴(壁側貫通孔)
40 L型切込溝
52A 鉄棒(ロック棒)
54 密閉蓋(第1操作ボタン)
60 L型金具
62 貫通穴(金具側貫通孔)
64 ベルト(可撓条体)
68 ふくらみ(出没子)
73 スイッチカバー(第2操作ボタン)
A 器具本体
B 本体基台
C 揺動台
D 巻取りドラム
E 保持機構
F シートベルト用バックル
G 取外しボタン
H シートベルト装着センサー
I ベルト出入口(条体出入口)
J 溝側壁(内壁)
K 溝側壁(内壁)
M 横穴(壁側貫通孔)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱状に形成された器具本体の一端部にバックル用差込金具が設けられ、器具本体の他端部には、カバンなどに設けられた輪部分に通される可撓条体の末端部が接続されるとともに、可撓条体の自由側端部に設けられた先端金具を係脱自在に係止する係止部が設けられている車内ひったくり防止器具において、
器具本体に回動自在に内蔵された可撓条体巻取り用の巻取りドラムと、
器具本体の他端部に形成された条体出入口から引き出された可撓条体をその引出位置で係脱自在に保持する保持機構と、を備えていることを特徴とする車内ひったくり防止器具。
【請求項2】
器具本体の係止部の内壁に形成された壁側貫通孔と、係止部に係止された状態の先端金具の、前記壁側貫通孔と対向する位置に形成された金具側貫通孔と、器具本体に設けられて壁側貫通孔および金具側貫通孔に通されるロック棒と、器具本体の上面に配置されるとともにロック棒と連結された第1操作ボタンと、を備え、第1操作ボタンの操作によりロック棒が壁側貫通孔および金具側貫通孔を貫通するように構成されている請求項1に記載の車内ひったくり防止器具。
【請求項3】
可撓条体が平鋼板で構成され、器具本体が、バックル用差込金具を有する本体基台と、巻取りドラムを内蔵し条体出入口および係止部を有する揺動台と、から構成されるとともに、揺動台が、本体基台の他端部でバックル用差込金具の上面と交差する方向に屈折自在に枢支される請求項1または請求項2に記載の車内ひったくり防止器具。
【請求項4】
器具本体の一端部側面からバックル用差込金具の上面に沿う方向に出没する出没子と、器具本体の上面に配置されるとともに出没子と連結された第2操作ボタンと、を備え、バックル用差込金具が車両のシートベルト用バックルに装着されている状態で第2操作ボタンを操作することにより、出没子が器具本体の一端部側面から突出してシートベルト用バックルの取外しボタンを押すように構成されている請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の車内ひったくり防止器具。
【請求項5】
バックル用差込金具が、シートベルト装着センサー付きのシートベルト用バックルに着脱自在に装着可能な形状に形成されている請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の車内ひったくり防止器具。
【請求項1】
箱状に形成された器具本体の一端部にバックル用差込金具が設けられ、器具本体の他端部には、カバンなどに設けられた輪部分に通される可撓条体の末端部が接続されるとともに、可撓条体の自由側端部に設けられた先端金具を係脱自在に係止する係止部が設けられている車内ひったくり防止器具において、
器具本体に回動自在に内蔵された可撓条体巻取り用の巻取りドラムと、
器具本体の他端部に形成された条体出入口から引き出された可撓条体をその引出位置で係脱自在に保持する保持機構と、を備えていることを特徴とする車内ひったくり防止器具。
【請求項2】
器具本体の係止部の内壁に形成された壁側貫通孔と、係止部に係止された状態の先端金具の、前記壁側貫通孔と対向する位置に形成された金具側貫通孔と、器具本体に設けられて壁側貫通孔および金具側貫通孔に通されるロック棒と、器具本体の上面に配置されるとともにロック棒と連結された第1操作ボタンと、を備え、第1操作ボタンの操作によりロック棒が壁側貫通孔および金具側貫通孔を貫通するように構成されている請求項1に記載の車内ひったくり防止器具。
【請求項3】
可撓条体が平鋼板で構成され、器具本体が、バックル用差込金具を有する本体基台と、巻取りドラムを内蔵し条体出入口および係止部を有する揺動台と、から構成されるとともに、揺動台が、本体基台の他端部でバックル用差込金具の上面と交差する方向に屈折自在に枢支される請求項1または請求項2に記載の車内ひったくり防止器具。
【請求項4】
器具本体の一端部側面からバックル用差込金具の上面に沿う方向に出没する出没子と、器具本体の上面に配置されるとともに出没子と連結された第2操作ボタンと、を備え、バックル用差込金具が車両のシートベルト用バックルに装着されている状態で第2操作ボタンを操作することにより、出没子が器具本体の一端部側面から突出してシートベルト用バックルの取外しボタンを押すように構成されている請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の車内ひったくり防止器具。
【請求項5】
バックル用差込金具が、シートベルト装着センサー付きのシートベルト用バックルに着脱自在に装着可能な形状に形成されている請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の車内ひったくり防止器具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−274907(P2010−274907A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54350(P2010−54350)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【特許番号】特許第4568793号(P4568793)
【特許公報発行日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(305008754)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【特許番号】特許第4568793号(P4568793)
【特許公報発行日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(305008754)
【Fターム(参考)】
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