車室内快適性評価方法、車室内快適性評価装置、及び車室内快適性評価プログラム
【解決課題】高精度に演算された視覚的体積を用いて、高精度に車室内の快適性を評価することができるようにする。
【解決手段】視覚的体積は、乗員の視野に入る空間の体積で定義されており、底面が扇形の柱状空間の体積で定義されている。視覚的体積Vvは、遮蔽物がないと仮定した場合の視覚的体積Vv1から、視野遮蔽物によって視野が遮蔽されて死角となる網掛け部分の底面が扇形の柱状空間の体積の総和Vv2を減算することにより算出される。視覚的体積Vv1は、視野角と等しい中心角θ及び乗員の眼の焦点距離と等しい半径Rの扇形が底面となっている柱状空間の体積で定義されている。
【解決手段】視覚的体積は、乗員の視野に入る空間の体積で定義されており、底面が扇形の柱状空間の体積で定義されている。視覚的体積Vvは、遮蔽物がないと仮定した場合の視覚的体積Vv1から、視野遮蔽物によって視野が遮蔽されて死角となる網掛け部分の底面が扇形の柱状空間の体積の総和Vv2を減算することにより算出される。視覚的体積Vv1は、視野角と等しい中心角θ及び乗員の眼の焦点距離と等しい半径Rの扇形が底面となっている柱状空間の体積で定義されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車室内快適性評価方法、車室内快適性評価装置、及び車室内快適性評価プログラムに係り、特に、車室内の視覚的体積を含む関数に基づいて、車室内の快適性を評価する車室内快適性評価方法、車室内快適性評価装置、及び車室内快適性評価プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の車室内の快適性評価にあたって、設計段階において図面の寸法に基づいて総合的な快適性を予測しているが、図面の寸法などの限られた情報から車室内の総合的な快適性を予測することは困難視されてきた。
【0003】
近年多く用いられているミニバンに代表される多座席車両を例に取ると、車室内環境の特徴として、多彩なシートアレンジが設定されている点が挙げられるが、異なる車室内環境間の快適性を定量的に比較すること、例えば、乗車人数を6人としたときに、2人掛け3列の配置と3人掛け2列の配置との間で、快適性を定量的に比較することは困難視されてきた。
【0004】
ここで、快適性を定量的に評価する方法として、車室内の物理的体積と乗員の視覚による視覚的体積とに基づいて、快適性を評価する方法が知られている(非特許文献1)。
【非特許文献1】日産技報第33号(1993−6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記非特許文献1に記載の技術では、乗員の死角を考慮せずに視覚的体積を演算しているため、車室内の快適性を評価する上で、高精度に視覚的体積を演算することができない、という問題がある。
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、高精度に演算された視覚的体積を用いて、車室内の快適性を評価することができる車室内快適性評価方法、車室内快適性評価装置、及び車室内快適性評価プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために本発明の車室内快適性評価方法は、車室内のシート周りの空間の体積を表す物理的体積、及び前記シートに着座した乗員の視野に入る空間の体積を表す視覚的体積を含む関数に基づいて、車室内の快適性を評価する車室内快適性評価方法であって、前記視覚的体積として、遮蔽物が存在しないと仮定した場合の前記乗員の視野を表す扇形を底面とする柱状空間の体積から、前記遮蔽物によって前記乗員の死角となる空間の体積を減算した値を用いたことを特徴としている。
【0008】
また、本発明の車室内快適性評価装置は、車室内のシート周りの空間の体積を表す物理的体積を演算する第1の演算手段と、遮蔽物が存在しないと仮定した場合の前記シートに着座した乗員の視野を表す扇形を底面とする柱状空間の体積から、前記遮蔽物によって前記乗員の死角となる空間の体積を減算した値を、前記乗員の視野に入る空間の体積を表す視覚的体積として演算する第2の演算手段と、前記物理的体積及び前記視覚的体積を含む関数に基づいて、車室内の快適性を評価する評価手段とを含んで構成されている。
【0009】
本発明では、車室内のシート周りの空間の体積を表す物理的体積を演算し、また、遮蔽物が存在しないと仮定した場合のシートに着座した乗員の視野を表す体積であって、かつ、扇形を底面とする柱状空間の体積から、遮蔽物によって乗員の死角となる空間の体積を減算した値を、乗員の視野に入る空間の体積を表す視覚的体積として演算する。そして、物理的体積及び視覚的体積を含む関数に基づいて、車室内の快適性を評価する。
【0010】
このように、乗員の視野を表す扇形を底面とする柱状空間の体積から、遮蔽物によって乗員の死角となる空間の体積を減算することにより高精度に演算された視覚的体積を用い、視覚的体積を含む関数に基づいて、車室内の快適性を評価しているので、高精度に車室内の快適性を評価することができる。
【0011】
上記の扇形の半径を、乗員が目視可能な所定距離とすることができ、この所定距離を、乗員の眼の焦点距離とすることができる。これにより、更に高精度に演算された視覚的体積を用いるので、高精度に車室内の快適性を評価することができる。
【0012】
また、上記の扇形の中心角を、乗員の視野を表す視野角とすることができる。これにより、更に高精度に演算された視覚的体積を用いるので、高精度に車室内の快適性を評価することができる。
【0013】
また、上記の扇形の中心角を、車速が大きくなるに従って小さくなるように定めることができる。これにより、乗員の乗車状況を考慮して、更に高精度に演算された視覚的体積を用いるため、高精度に車室内の快適性を評価することができる。
【0014】
また、本発明の車室内快適性評価プログラムは、コンピュータを、車室内のシート周りの空間の体積を表す物理的体積を演算する第1の演算手段、遮蔽物が存在しないと仮定した場合の前記シートに着座した乗員の視野を表す扇形を底面とする柱状空間の体積から、前記遮蔽物によって前記乗員の死角となる空間の体積を減算した値を、前記乗員の視野に入る空間の体積を表す視覚的体積として演算する第2の演算手段、及び前記物理的体積及び前記視覚的体積を含む関数に基づいて、車室内の快適性を評価する評価手段として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明の車室内快適性評価方法、車室内快適性評価装置、及び車室内快適性評価プログラムによれば、乗員の視野を表す扇形を底面とする柱状空間の体積から、遮蔽物によって乗員の死角となる空間の体積を減算することにより高精度に演算された視覚的体積を用い、視覚的体積を含む関数に基づいて、車室内の快適性を評価しているので、高精度に車室内の快適性を評価することができる、という効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1に示すように、第1の実施の形態に係る車室内の快適性を評価する車室内快適性評価装置10は、自動車の車室内の快適性を評価するための車室内快適性評価プログラムにより後述する処理を実行するコンピュータにより構成されている。このコンピュータは、CPU50、ROM52、RAM54、ハードディスク56、キーボード58、マウス60、及びディスプレイ62を備えており、これらはバス64によって相互に接続されている。上記の車室内快適性評価プログラムは、記憶媒体としてのハードディスク56に予め記憶されている。
【0018】
この車室内快適性評価装置10によって実施される第1の実施の形態の車室内快適性の評価方法を、自動車の車室内のシート周りの空間の体積を表す物理的体積と、シートに着座した乗員の視野に入る空間の体積を表す視覚的体積と、乗員の乗車時間とによって定めた後述する快適性評価関数に基づいて、快適性を示す快適性値を算出する例を用いて説明する。この評価方法では、例えば、図2(A)に示すような2人掛け3列の自動車12における評価対象のシート14に着座している乗員16の快適性を評価することができる。
【0019】
まず、図3、4を用いて物理的体積について説明する。本実施の形態では、物理的体積は、シート周りの空間の体積で定義されており、頭上空間、足下空間、及び左右方向の余裕などの従来から自動車の評価において一般的に用いられてきた物理量により表されている。
【0020】
自動車12の車室内のシート14周りの空間を代表する定量的な指標としての物理的体積は、図3に示すような、車室の幅a、天井高さc、座面高さd、シートピッチe、及び足下ピッチfを用いて、図4に示すように、乗員一人あたりのシート周りの空間18Aを表す体積として、以下の(1)式によって算出される。
【0021】
【数1】
【0022】
ここで、nは、評価対象のシート14を含む1列のシートに着座している着座人数である。例えば、図2に示すように、1列のシートに3人掛けしている状態においては、2人掛けしている状態よりnが大きいため、上記の(1)式から、2人掛けしている状態より物理的体積は減少する。
【0023】
次に、視覚的体積について説明する。本実施の形態では、視覚的体積は、乗員の視野に入る空間の体積で定義されており、車内が広く見える効果や、乗員周りの障害物によって視野が遮蔽される影響などを表す物理量を用いて、乗員の視野に入る空間の体積を表している。
【0024】
ここで、視野に入る空間の体積を表す視覚的体積の算出方法を以下に示す。本実施の形態では、図5に示すように、視覚的体積を、底面が扇形の柱状空間の体積で定義した。この視覚的体積Vvは、以下の(2)式に示すように、遮蔽物がないと仮定した場合の視覚的体積Vv1から、視野遮蔽物によって視野が遮蔽されて死角となる網掛け部分の底面が扇形の柱状空間の体積の総和Vv2を減算することにより算出される。なお、(2)式のVv1、Vv2は、(3)式及び(4)式の各々によって定義されている。
【0025】
【数2】
【0026】
ここで、Rは扇形の半径、θは視野角の大きさと等しい大きさで表された扇形の角度、Hは視覚的体積の鉛直方向の高さ、mは視野遮蔽物の個数、Rui、Rviは乗員から視野遮蔽物までの距離、θui、θviは視野遮蔽物によって遮蔽される視野角、H´は視野遮蔽物の高さである。
【0027】
上記の(3)式では、扇形の面積πR2×(θ/2π)に鉛直方向の高さHを乗算して、視野遮蔽物がないと仮定した場合の視覚的体積を算出している。
【0028】
上記の(2)式〜(4)式により、図6に示すように、底面が扇形の柱状空間の体積Vv1から、シートやピラー、及び隣に着座している乗員などによって視野が遮蔽された網掛け部分の柱状空間の体積の総和Vv2を減算して、視覚的体積Vvの値を算出する。
【0029】
また、例えば、図2に示すように、1列のシートに3人掛けしている状態においては、2人掛けしている状態に比べ、隣に着座している乗員が遮蔽物として視野に入り視野遮蔽物が増加し、視野が遮蔽された網掛け部分の柱状空間の体積の総和Vv2が増加するため、視覚的体積Vvが減少する。
【0030】
また、視野遮蔽物がない限り、視野に入る空間の体積は、無限に大きくなり、扇形の半径もまた無限に大きくなるが、乗員の眼の焦点距離より遠方の空間は、視覚的体積の増分には寄与しないものと考えられるため、以下の式のように、扇形の半径Rとして、乗員の眼の焦点距離Fを適用するのが好ましい。
R=F
なお、焦点距離Fは、例えば、2mとすることができる。
【0031】
また、高速道路などにおいては、車速が大きくなるに従って、視界狭窄により視野が狭くなる傾向があるため、以下の(5)式に示すように、視野角としての扇形の角度θを車速の関数とすることにより、視覚的体積と車速とに関係性を持たせている。
【0032】
【数3】
【0033】
ここで、fは関数、vは車速であり、(5)式を上記の(3)式に代入することにより、車速vに応じて視覚的体積Vvを定めることができる。
【0034】
上記の(5)式の関数fは、車速vが大きくなるに従って小さくなるように定められており、例えば、v=0の時(静止時)には、f(0)=π、v=40(km/h)の時には、f(40)=100×π/180、v=70(km/h)の時には、f(70)=65×π/180、v=100(km/h)の時には、f(100)=40×π/180となるように定められている。
【0035】
また、視野遮蔽物が心理的に小さく見えるという効果に応じて、実際の視覚的体積より視覚的体積を増大させるための補正係数αを適用した、以下の(6)式に示す視覚的体積Vv´を快適性の評価に用いてもよい。
【0036】
【数4】
【0037】
上記の(6)式によって視覚的体積Vvを補正することにより、実際の視覚的体積Vvより、視覚的体積Vv´が増大して快適性が増大するという傾向を評価に取り入れることができる。
【0038】
また、底面が扇形の柱状空間を用いて視覚的体積を算出するときに、夜間の場合には窓の外が見えないことから、視覚的体積が減少するように扇形の半径Rを小さく設定してもよく、また、サンルーフを備えた車両ではサンルーフ使用時における上方視界が広くなるように、視界の鉛直方向の高さHを大きく設定するか、又は天井高さを高く設定するようにしてもよい。
【0039】
次に、快適性値を算出するための快適性評価関数について説明する。快適性評価関数は、以下のように定められている。まず、走行実験において、物理的体積及び視覚的体積を複数パターンで変化させて、各パターンにおいて走行時の車内における快適性を、5分毎に7段階評価(1〜7点)で回答してもらうことにより感応評価試験を行い、図7に示すような、乗車時間と快適性との関係を導出した。この関係は、全パターンにおいて平均的な傾向があり、一旦走行が始まると、最初は評点が低いものの、所定時間(例えば5分程度)経過するまで評点が過渡的に高くなり、その後走行時間が経過しても、評点はほとんど変化しない傾向があり、乗り込み時の評点から走行時の評点に斬近していく、という傾向が確認された。すなわち、評点は、初期の段階では、乗車時間の経過と共に、過渡的に大きくなり、時定数に相当する乗車時間を経過した後は、一定の値に維持される。そこで、このような傾向を以下の(7)式により定義した。
【0040】
【数5】
【0041】
ここで、fは快適性評価関数、Cs(t)は乗車時間t(分)における快適性値、Cs(0)は乗り込み時における快適性値、Cs(∞)は乗車時間∞と仮定したときの快適性値、Tは時定数(分)、tは乗車時間(分)である。なお、Cs(t)、Cs(0)、Cs(∞)は何れも最低1点、最高7点とする感応評価における評点である。
【0042】
ただし、
【0043】
【数6】
【0044】
とし、Vpは物理的体積(m3)、Vvは視覚的体積(m3)、a、b、a´、b´は係数(1/m3)、c、c´は定数である。
【0045】
また、走行実験で使われた自動車について、上述した(1)式〜(4)式より得られたVp、Vvの値を上記の(8)式、(9)式に代入して、評価試験の結果を用いて重回帰分析を行うことによりa〜c及びa´〜c´の各係数を求めた。また、時定数Tについては、例えば、図7のようにCs(5)とCs(∞)とがほぼ等しい場合に、T=2(分)とすると、
Cs(5)=Cs(∞)+0.08Cs(0)
となり、T=3とすると、
Cs(5)=Cs(∞)+0.19Cs(0)
となるため、Cs(5)がCs(∞)により近い値となるように、T=2と定めた。
【0046】
そして、上記のCs(0)、Cs(∞)、Tを(10)式に代入して整理し、快適性評価関数として以下の式を導出した。
【0047】
【数7】
【0048】
ここで、A=1.56、B=2.56、C=1.89、A´=1.66、B´=0.66、C´=0.68である。なお、このA〜C及びA´〜C´の値は7段階で評価した場合の例であり、評価段階及び評点の決定の仕方に応じて、A〜C及びA´〜C´の値は変化する。
【0049】
車室内の快適性を評価する前に、前もって上記の(10)式を導出しておき、車室内快適性評価プログラムに設定し、ハードディスク56に記憶しておく。そして、車室内の快適性を評価する際には、上記の(1)式〜(4)式で得られたVp、Vvを(10)式に代入することにより、時刻t(分)における快適性値Cs(t)を算出することができる。
【0050】
次に、本実施の形態に係る車室内快適性評価装置10の快適性評価プログラムによる処理ルーチンについて説明する。
【0051】
車室内快適性評価装置10において、図8に示す車室内の快適性を評価する処理ルーチンが実行され、まず、ステップ100では、評価対象のシート14回りの設計情報(車室の幅、天井高さ、座面高さ、シートピッチ、足下ピッチ)、評価対象のシート14に着座した乗員16の視野に関する視野情報(焦点距離、視野角、視界の高さ、視野遮蔽物の個数、乗員から視野遮蔽物までの距離、視野遮蔽物によって遮蔽される視野角、視野遮蔽物の高さ)、評価対象の着座人数、車速、及び乗車時間が入力されたか否かを判定し、オペレータによって、自動車の設計図面の寸法等に基づいて、設計情報及び視野情報が入力されると共に、快適性の評価対象の着座人数n、車速v、及び乗車時間tが入力されると、ステップ102において、ステップ100で入力された設計情報、着座人数nを用いて、上述した物理的体積の算出方法により、評価対象のシート14の一人当たりの物理的体積を演算する。
【0052】
次のステップ104では、ステップ100で入力された視野情報、車速vを用いて、上述した視覚的体積の算出方法により、評価対象のシート14に着座した乗員16の視覚的体積を演算する。
【0053】
そして、ステップ106において、前もって定められた快適性評価関数に、ステップ100で入力された乗車時間t、ステップ102、104で演算された物理的体積、及び視覚的体積を代入して、乗車時間tにおける快適性値を算出して、ステップ108で、算出された快適性値をディスプレイ62に表示して、車室内の快適性を評価する処理ルーチンを終了する。
【0054】
そして、様々な車内環境について、上記の処理ルーチンによって快適性値を算出し、算出された快適性値を定量的に比較して、各車内環境における快適性を評価する。
【0055】
以上説明したように、第1の実施の形態に係る車室内快適性評価装置によれば、乗員の視野を表す体積であって、かつ、扇形を底面とする柱状空間の体積から、視野遮蔽物によって乗員の死角となる空間の体積であって、扇形を底面とする柱状空間の体積を減算した値を視覚的体積として用い、物理的体積及び視覚的体積を含む快適性評価関数に基づいて、車室内の快適性を評価しているので、視覚的体積が高精度に演算され、これにより、高精度に車室内の快適性を評価することができる。
【0056】
また、乗員の視野を表す視野角を中心角とし、かつ乗員の眼の焦点距離を半径とした扇形を底面とする柱状空間を視覚的体積として用いることにより、視野角と乗員の眼の焦点距離とで定まる柱状空間によって、高精度に視覚的体積を表すことができるので、高精度に車室内の快適性を評価することができる。
【0057】
また、視覚的体積の扇形の中心角を、車速が大きくなるに従って小さくなるように定めることにより、乗員の視界狭窄を考慮して、更に高精度に演算された視覚的体積を用いるため、高精度に車室内の快適性を評価することができる。
【0058】
また、乗車時間を含む快適性評価関数を用いて、快適性値を算出して、車室内の快適性を評価することにより、乗員の乗車状況を考慮して、高精度に快適性評価を行うことができる。
【0059】
また、ミニバンなどの多座席車両におけるシートアレンジに本実施の形態の車室内快適性評価装置を適用することにより、異なるシートアレンジ間の差異を、設計段階から比較検討することができ、更に、乗車時間や乗車人数に応じた評価が可能なため、目的に応じて好ましいシートアレンジをデザインすることができる。また、シートアレンジのみならず、車室内の視野を遮蔽する物体のアレンジにも活用でき、より車内のデザインが優れたものになる。
【0060】
なお、上記の実施の形態では、物理的体積や視覚的体積を含む快適性評価関数を用いて快適性を評価する場合を例に説明したが、物理的体積や視覚的体積の他に、隣に着座している乗員との距離、乗員の胴幅とシート幅との比、及び乗員の肩幅と室内幅との比の少なくとも一つを更に含む快適性評価関数を用いて、快適性を評価するようにしてもよい。
【0061】
また、視覚的体積を算出する方法として、横方向の視野角のみを考慮する場合を例に説明したが、上下方向の視野角を更に考慮して、算出される視覚的体積の精度を更に向上させるようにしてもよい。この場合には、図11に示すように、視野遮蔽物によって視野が遮蔽されて死角となる網掛け部分の底面が扇形の柱状空間の体積Vv2の高さに、上下方向の視野角を反映させればよい。
【0062】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0063】
第2の実施の形態では、評価対象となる自動車のコンピュータに車室内快適性評価プログラムを搭載させた点と、シートの位置、着座人数、及び車速を自動車に設けられたセンサによって自動的に検出する点とが第1の実施の形態と主に異なっている。
【0064】
第2の実施の形態に係る車室内快適性評価装置は、評価対象となる自動車に設けられており、自動車のシートに乗員を着座させて走行させながら、車室内の快適性を評価することができる。
【0065】
図9に示すように、第2の実施の形態に係る車室内快適性評価装置110は、CPU、ROM、及びRAMから構成される制御回路124と、快適性の評価結果を表示するためのディスプレイ162と、ハードディスク156と、自動車の車速を検出する車速センサ140とを備えており、ディスプレイ162、ハードディスク156、及び車速センサ140の各々は、制御回路124に接続されている。また、ハードディスク156には、後述する処理ルーチンを実行するための車室内快適性評価プログラムが予め記憶されており、また、ハードディスク156には、評価対象のシート114回りの設計情報(室内幅、天井高さ、座面高さ)や、評価対象のシート114に着座した乗員16の視野に関する視野情報(焦点距離、視野角度、視野遮蔽物の個数、視野遮蔽物の位置、視野遮蔽物の高さ)が予め記憶されている。
【0066】
また、シート114は、図9の実線及び点線で示すように、シートレール120を介して、シートレール120上を車両前後方向に移動可能に設けられている。シートレール120の近傍には、シート114を車両前後方向に移動させるためのスライド用モータ122が設けられており、スライド用モータ122の正回転及び逆回転によってシート114が車両前後方向に移動される。
【0067】
スライド用モータ122は、制御回路124に接続されており、制御回路124によって回転が制御され、また、制御回路124には、パワーシートスイッチ132が接続されており、乗員16がパワーシートスイッチ132を操作することによって、スライド用モータ122の回転が制御されて、シート114が車両前後方向に移動される。
【0068】
また、制御回路124には、シートポジションセンサ126が接続されており、シートポジションセンサ126の検出結果が制御回路124に入力される。なお、シートポジションセンサ26は、例えば、床面側に固定された受光素子アレイとシート114に取り付けられた発光素子とから構成され、発光素子がシート14の下部に設けられており、発光素子が発光した光を、受光素子アレイのうちの何れの受光素子が受光したかによって、シート114の位置を検出する。また、ホール素子と磁石とによってシートポジションセンサを構成するようにしてもよい。
【0069】
また、制御回路124には、イグニッションスイッチ128、及びシート114に乗員16が着座しているときにオンするシートスイッチ130等が接続されている。
【0070】
また、スライド用モータ122、シートポジションセンサ126、シートスイッチ130、及びパワーシートスイッチ132からなる組は、複数のシート114の各々に設けられている。
【0071】
次に、第2の実施の形態に係る車室内快適性評価装置110の作用について説明する。
【0072】
イグニッションスイッチ128がオンされると、制御回路124において図10に示す車室内の快適性を評価するための処理ルーチンが起動される。まず、ステップ200では、快適性評価を開始するか否かを判定し、入力装置(図示省略)から開始指示が入力されると、ステップ202へ進み、評価対象のシート114に対するシートポジションセンサ126の検出結果を取り込み、シート114の位置を検出し、ステップ204では、評価対象のシート114の列の全てのシート114に設けられたシートスイッチ130からの信号に基づいて、着座人数nを検出する。
【0073】
そして、ステップ206では、車速センサ140から車速を検出し、次のステップ208において、制御回路124に設けられたカウンタ(図示省略)で計測されたイグニッションスイッチ128がオンされてからの経過時間を、乗車時間tとして取り込む。
【0074】
次のステップ210では、ステップ202で検出されたシート114の位置に基づいて、シートピッチ及び足下ピッチを算出し、ステップ212で、予め設定された設計情報をハードディスク156から読み込むと共に、算出されたシートピッチ、足下ピッチ、検出された着座人数n、及び読み込まれた設計情報を用いて、上述した物理的体積の算出方法により、評価対象のシート114の一人当たりの物理的体積を演算する。
【0075】
また、ステップ214において、予め設定された視野情報をハードディスク156から読み込み、ステップ202で検出されたシート114の位置、ステップ204におけるシートスイッチ130からの信号に基づいて乗員が着座していると判断されるシート114の位置、及び読み込まれた視野情報に基づいて、自動車の車内における視野遮蔽物までの距離、及び視野遮蔽物によって遮蔽される視野角を算出し、ステップ216で、算出された視野遮蔽物までの距離、遮蔽される視野角、読み込まれた視野情報、及び検出された車速を用いて、上述した視覚的体積の算出方法により、評価対象のシート114に着座する乗員16の視覚的体積を演算する。
【0076】
そして、ステップ218において、予めハードディスク156に記憶された快適性評価関数に、ステップ208で取り込んだ乗車時間t、ステップ212、216で演算された物理的体積、及び視覚的体積を代入して、乗車時間tにおける快適性値を算出して、ステップ220で、算出された快適性値をディスプレイ162に表示して、車室内の快適性を評価する処理ルーチンを終了する。
【0077】
以上説明したように、第2の実施の形態に係る車室内快適性評価装置によれば、自動車のシートに乗員を着座させて走行させながら、走行時における自動車の車速や乗車時間に対して、車室内の快適性を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】第1の実施の形態に係る車室内快適性評価装置を示した概略図である。
【図2】(A)は評価対象の自動車の2人掛け3列のシート配置における物理的体積及び視覚的体積を示すイメージ図、(B)は1列のシートが3人掛けとなっているシート配置における物理的体積及び視覚的体積を示すイメージ図である。
【図3】評価対象の自動車のシート周りの定量的な指標を示す図である。
【図4】評価対象の自動車のシート周りの空間を示す図である。
【図5】遮蔽物がないと仮定した場合の視覚的体積としての底面が扇形の柱状空間と、視野遮蔽物によって視野が遮蔽されて死角となる網掛け部分の柱状空間とを示すイメージ図である。
【図6】評価対象の自動車において乗員の視野に入る空間を示すイメージ図である。
【図7】走行実験における快適性評価と乗車時間との関係を示すグラフである。
【図8】第1の実施の形態に係る車室内快適性評価装置において実行される車室内の快適性を評価する処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図9】第2の実施の形態に係る車室内快適性評価装置を示した概略図である。
【図10】第2の実施の形態に係る車室内快適性評価装置において実行される車室内の快適性を評価する処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図11】遮蔽物がないと仮定した場合の視覚的体積としての底面が扇形の柱状空間と、視野遮蔽物によって視野が遮蔽されて死角となる網掛け部分の柱状空間との他の例を示すイメージ図である。
【符号の説明】
【0079】
10、110 車室内快適性評価装置
12 自動車
14、114 シート
16 乗員
124 制御回路
126 シートポジションセンサ
130 シートスイッチ
140 車速センサ
Vv 視覚的体積
【技術分野】
【0001】
この発明は、車室内快適性評価方法、車室内快適性評価装置、及び車室内快適性評価プログラムに係り、特に、車室内の視覚的体積を含む関数に基づいて、車室内の快適性を評価する車室内快適性評価方法、車室内快適性評価装置、及び車室内快適性評価プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の車室内の快適性評価にあたって、設計段階において図面の寸法に基づいて総合的な快適性を予測しているが、図面の寸法などの限られた情報から車室内の総合的な快適性を予測することは困難視されてきた。
【0003】
近年多く用いられているミニバンに代表される多座席車両を例に取ると、車室内環境の特徴として、多彩なシートアレンジが設定されている点が挙げられるが、異なる車室内環境間の快適性を定量的に比較すること、例えば、乗車人数を6人としたときに、2人掛け3列の配置と3人掛け2列の配置との間で、快適性を定量的に比較することは困難視されてきた。
【0004】
ここで、快適性を定量的に評価する方法として、車室内の物理的体積と乗員の視覚による視覚的体積とに基づいて、快適性を評価する方法が知られている(非特許文献1)。
【非特許文献1】日産技報第33号(1993−6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記非特許文献1に記載の技術では、乗員の死角を考慮せずに視覚的体積を演算しているため、車室内の快適性を評価する上で、高精度に視覚的体積を演算することができない、という問題がある。
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、高精度に演算された視覚的体積を用いて、車室内の快適性を評価することができる車室内快適性評価方法、車室内快適性評価装置、及び車室内快適性評価プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために本発明の車室内快適性評価方法は、車室内のシート周りの空間の体積を表す物理的体積、及び前記シートに着座した乗員の視野に入る空間の体積を表す視覚的体積を含む関数に基づいて、車室内の快適性を評価する車室内快適性評価方法であって、前記視覚的体積として、遮蔽物が存在しないと仮定した場合の前記乗員の視野を表す扇形を底面とする柱状空間の体積から、前記遮蔽物によって前記乗員の死角となる空間の体積を減算した値を用いたことを特徴としている。
【0008】
また、本発明の車室内快適性評価装置は、車室内のシート周りの空間の体積を表す物理的体積を演算する第1の演算手段と、遮蔽物が存在しないと仮定した場合の前記シートに着座した乗員の視野を表す扇形を底面とする柱状空間の体積から、前記遮蔽物によって前記乗員の死角となる空間の体積を減算した値を、前記乗員の視野に入る空間の体積を表す視覚的体積として演算する第2の演算手段と、前記物理的体積及び前記視覚的体積を含む関数に基づいて、車室内の快適性を評価する評価手段とを含んで構成されている。
【0009】
本発明では、車室内のシート周りの空間の体積を表す物理的体積を演算し、また、遮蔽物が存在しないと仮定した場合のシートに着座した乗員の視野を表す体積であって、かつ、扇形を底面とする柱状空間の体積から、遮蔽物によって乗員の死角となる空間の体積を減算した値を、乗員の視野に入る空間の体積を表す視覚的体積として演算する。そして、物理的体積及び視覚的体積を含む関数に基づいて、車室内の快適性を評価する。
【0010】
このように、乗員の視野を表す扇形を底面とする柱状空間の体積から、遮蔽物によって乗員の死角となる空間の体積を減算することにより高精度に演算された視覚的体積を用い、視覚的体積を含む関数に基づいて、車室内の快適性を評価しているので、高精度に車室内の快適性を評価することができる。
【0011】
上記の扇形の半径を、乗員が目視可能な所定距離とすることができ、この所定距離を、乗員の眼の焦点距離とすることができる。これにより、更に高精度に演算された視覚的体積を用いるので、高精度に車室内の快適性を評価することができる。
【0012】
また、上記の扇形の中心角を、乗員の視野を表す視野角とすることができる。これにより、更に高精度に演算された視覚的体積を用いるので、高精度に車室内の快適性を評価することができる。
【0013】
また、上記の扇形の中心角を、車速が大きくなるに従って小さくなるように定めることができる。これにより、乗員の乗車状況を考慮して、更に高精度に演算された視覚的体積を用いるため、高精度に車室内の快適性を評価することができる。
【0014】
また、本発明の車室内快適性評価プログラムは、コンピュータを、車室内のシート周りの空間の体積を表す物理的体積を演算する第1の演算手段、遮蔽物が存在しないと仮定した場合の前記シートに着座した乗員の視野を表す扇形を底面とする柱状空間の体積から、前記遮蔽物によって前記乗員の死角となる空間の体積を減算した値を、前記乗員の視野に入る空間の体積を表す視覚的体積として演算する第2の演算手段、及び前記物理的体積及び前記視覚的体積を含む関数に基づいて、車室内の快適性を評価する評価手段として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明の車室内快適性評価方法、車室内快適性評価装置、及び車室内快適性評価プログラムによれば、乗員の視野を表す扇形を底面とする柱状空間の体積から、遮蔽物によって乗員の死角となる空間の体積を減算することにより高精度に演算された視覚的体積を用い、視覚的体積を含む関数に基づいて、車室内の快適性を評価しているので、高精度に車室内の快適性を評価することができる、という効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1に示すように、第1の実施の形態に係る車室内の快適性を評価する車室内快適性評価装置10は、自動車の車室内の快適性を評価するための車室内快適性評価プログラムにより後述する処理を実行するコンピュータにより構成されている。このコンピュータは、CPU50、ROM52、RAM54、ハードディスク56、キーボード58、マウス60、及びディスプレイ62を備えており、これらはバス64によって相互に接続されている。上記の車室内快適性評価プログラムは、記憶媒体としてのハードディスク56に予め記憶されている。
【0018】
この車室内快適性評価装置10によって実施される第1の実施の形態の車室内快適性の評価方法を、自動車の車室内のシート周りの空間の体積を表す物理的体積と、シートに着座した乗員の視野に入る空間の体積を表す視覚的体積と、乗員の乗車時間とによって定めた後述する快適性評価関数に基づいて、快適性を示す快適性値を算出する例を用いて説明する。この評価方法では、例えば、図2(A)に示すような2人掛け3列の自動車12における評価対象のシート14に着座している乗員16の快適性を評価することができる。
【0019】
まず、図3、4を用いて物理的体積について説明する。本実施の形態では、物理的体積は、シート周りの空間の体積で定義されており、頭上空間、足下空間、及び左右方向の余裕などの従来から自動車の評価において一般的に用いられてきた物理量により表されている。
【0020】
自動車12の車室内のシート14周りの空間を代表する定量的な指標としての物理的体積は、図3に示すような、車室の幅a、天井高さc、座面高さd、シートピッチe、及び足下ピッチfを用いて、図4に示すように、乗員一人あたりのシート周りの空間18Aを表す体積として、以下の(1)式によって算出される。
【0021】
【数1】
【0022】
ここで、nは、評価対象のシート14を含む1列のシートに着座している着座人数である。例えば、図2に示すように、1列のシートに3人掛けしている状態においては、2人掛けしている状態よりnが大きいため、上記の(1)式から、2人掛けしている状態より物理的体積は減少する。
【0023】
次に、視覚的体積について説明する。本実施の形態では、視覚的体積は、乗員の視野に入る空間の体積で定義されており、車内が広く見える効果や、乗員周りの障害物によって視野が遮蔽される影響などを表す物理量を用いて、乗員の視野に入る空間の体積を表している。
【0024】
ここで、視野に入る空間の体積を表す視覚的体積の算出方法を以下に示す。本実施の形態では、図5に示すように、視覚的体積を、底面が扇形の柱状空間の体積で定義した。この視覚的体積Vvは、以下の(2)式に示すように、遮蔽物がないと仮定した場合の視覚的体積Vv1から、視野遮蔽物によって視野が遮蔽されて死角となる網掛け部分の底面が扇形の柱状空間の体積の総和Vv2を減算することにより算出される。なお、(2)式のVv1、Vv2は、(3)式及び(4)式の各々によって定義されている。
【0025】
【数2】
【0026】
ここで、Rは扇形の半径、θは視野角の大きさと等しい大きさで表された扇形の角度、Hは視覚的体積の鉛直方向の高さ、mは視野遮蔽物の個数、Rui、Rviは乗員から視野遮蔽物までの距離、θui、θviは視野遮蔽物によって遮蔽される視野角、H´は視野遮蔽物の高さである。
【0027】
上記の(3)式では、扇形の面積πR2×(θ/2π)に鉛直方向の高さHを乗算して、視野遮蔽物がないと仮定した場合の視覚的体積を算出している。
【0028】
上記の(2)式〜(4)式により、図6に示すように、底面が扇形の柱状空間の体積Vv1から、シートやピラー、及び隣に着座している乗員などによって視野が遮蔽された網掛け部分の柱状空間の体積の総和Vv2を減算して、視覚的体積Vvの値を算出する。
【0029】
また、例えば、図2に示すように、1列のシートに3人掛けしている状態においては、2人掛けしている状態に比べ、隣に着座している乗員が遮蔽物として視野に入り視野遮蔽物が増加し、視野が遮蔽された網掛け部分の柱状空間の体積の総和Vv2が増加するため、視覚的体積Vvが減少する。
【0030】
また、視野遮蔽物がない限り、視野に入る空間の体積は、無限に大きくなり、扇形の半径もまた無限に大きくなるが、乗員の眼の焦点距離より遠方の空間は、視覚的体積の増分には寄与しないものと考えられるため、以下の式のように、扇形の半径Rとして、乗員の眼の焦点距離Fを適用するのが好ましい。
R=F
なお、焦点距離Fは、例えば、2mとすることができる。
【0031】
また、高速道路などにおいては、車速が大きくなるに従って、視界狭窄により視野が狭くなる傾向があるため、以下の(5)式に示すように、視野角としての扇形の角度θを車速の関数とすることにより、視覚的体積と車速とに関係性を持たせている。
【0032】
【数3】
【0033】
ここで、fは関数、vは車速であり、(5)式を上記の(3)式に代入することにより、車速vに応じて視覚的体積Vvを定めることができる。
【0034】
上記の(5)式の関数fは、車速vが大きくなるに従って小さくなるように定められており、例えば、v=0の時(静止時)には、f(0)=π、v=40(km/h)の時には、f(40)=100×π/180、v=70(km/h)の時には、f(70)=65×π/180、v=100(km/h)の時には、f(100)=40×π/180となるように定められている。
【0035】
また、視野遮蔽物が心理的に小さく見えるという効果に応じて、実際の視覚的体積より視覚的体積を増大させるための補正係数αを適用した、以下の(6)式に示す視覚的体積Vv´を快適性の評価に用いてもよい。
【0036】
【数4】
【0037】
上記の(6)式によって視覚的体積Vvを補正することにより、実際の視覚的体積Vvより、視覚的体積Vv´が増大して快適性が増大するという傾向を評価に取り入れることができる。
【0038】
また、底面が扇形の柱状空間を用いて視覚的体積を算出するときに、夜間の場合には窓の外が見えないことから、視覚的体積が減少するように扇形の半径Rを小さく設定してもよく、また、サンルーフを備えた車両ではサンルーフ使用時における上方視界が広くなるように、視界の鉛直方向の高さHを大きく設定するか、又は天井高さを高く設定するようにしてもよい。
【0039】
次に、快適性値を算出するための快適性評価関数について説明する。快適性評価関数は、以下のように定められている。まず、走行実験において、物理的体積及び視覚的体積を複数パターンで変化させて、各パターンにおいて走行時の車内における快適性を、5分毎に7段階評価(1〜7点)で回答してもらうことにより感応評価試験を行い、図7に示すような、乗車時間と快適性との関係を導出した。この関係は、全パターンにおいて平均的な傾向があり、一旦走行が始まると、最初は評点が低いものの、所定時間(例えば5分程度)経過するまで評点が過渡的に高くなり、その後走行時間が経過しても、評点はほとんど変化しない傾向があり、乗り込み時の評点から走行時の評点に斬近していく、という傾向が確認された。すなわち、評点は、初期の段階では、乗車時間の経過と共に、過渡的に大きくなり、時定数に相当する乗車時間を経過した後は、一定の値に維持される。そこで、このような傾向を以下の(7)式により定義した。
【0040】
【数5】
【0041】
ここで、fは快適性評価関数、Cs(t)は乗車時間t(分)における快適性値、Cs(0)は乗り込み時における快適性値、Cs(∞)は乗車時間∞と仮定したときの快適性値、Tは時定数(分)、tは乗車時間(分)である。なお、Cs(t)、Cs(0)、Cs(∞)は何れも最低1点、最高7点とする感応評価における評点である。
【0042】
ただし、
【0043】
【数6】
【0044】
とし、Vpは物理的体積(m3)、Vvは視覚的体積(m3)、a、b、a´、b´は係数(1/m3)、c、c´は定数である。
【0045】
また、走行実験で使われた自動車について、上述した(1)式〜(4)式より得られたVp、Vvの値を上記の(8)式、(9)式に代入して、評価試験の結果を用いて重回帰分析を行うことによりa〜c及びa´〜c´の各係数を求めた。また、時定数Tについては、例えば、図7のようにCs(5)とCs(∞)とがほぼ等しい場合に、T=2(分)とすると、
Cs(5)=Cs(∞)+0.08Cs(0)
となり、T=3とすると、
Cs(5)=Cs(∞)+0.19Cs(0)
となるため、Cs(5)がCs(∞)により近い値となるように、T=2と定めた。
【0046】
そして、上記のCs(0)、Cs(∞)、Tを(10)式に代入して整理し、快適性評価関数として以下の式を導出した。
【0047】
【数7】
【0048】
ここで、A=1.56、B=2.56、C=1.89、A´=1.66、B´=0.66、C´=0.68である。なお、このA〜C及びA´〜C´の値は7段階で評価した場合の例であり、評価段階及び評点の決定の仕方に応じて、A〜C及びA´〜C´の値は変化する。
【0049】
車室内の快適性を評価する前に、前もって上記の(10)式を導出しておき、車室内快適性評価プログラムに設定し、ハードディスク56に記憶しておく。そして、車室内の快適性を評価する際には、上記の(1)式〜(4)式で得られたVp、Vvを(10)式に代入することにより、時刻t(分)における快適性値Cs(t)を算出することができる。
【0050】
次に、本実施の形態に係る車室内快適性評価装置10の快適性評価プログラムによる処理ルーチンについて説明する。
【0051】
車室内快適性評価装置10において、図8に示す車室内の快適性を評価する処理ルーチンが実行され、まず、ステップ100では、評価対象のシート14回りの設計情報(車室の幅、天井高さ、座面高さ、シートピッチ、足下ピッチ)、評価対象のシート14に着座した乗員16の視野に関する視野情報(焦点距離、視野角、視界の高さ、視野遮蔽物の個数、乗員から視野遮蔽物までの距離、視野遮蔽物によって遮蔽される視野角、視野遮蔽物の高さ)、評価対象の着座人数、車速、及び乗車時間が入力されたか否かを判定し、オペレータによって、自動車の設計図面の寸法等に基づいて、設計情報及び視野情報が入力されると共に、快適性の評価対象の着座人数n、車速v、及び乗車時間tが入力されると、ステップ102において、ステップ100で入力された設計情報、着座人数nを用いて、上述した物理的体積の算出方法により、評価対象のシート14の一人当たりの物理的体積を演算する。
【0052】
次のステップ104では、ステップ100で入力された視野情報、車速vを用いて、上述した視覚的体積の算出方法により、評価対象のシート14に着座した乗員16の視覚的体積を演算する。
【0053】
そして、ステップ106において、前もって定められた快適性評価関数に、ステップ100で入力された乗車時間t、ステップ102、104で演算された物理的体積、及び視覚的体積を代入して、乗車時間tにおける快適性値を算出して、ステップ108で、算出された快適性値をディスプレイ62に表示して、車室内の快適性を評価する処理ルーチンを終了する。
【0054】
そして、様々な車内環境について、上記の処理ルーチンによって快適性値を算出し、算出された快適性値を定量的に比較して、各車内環境における快適性を評価する。
【0055】
以上説明したように、第1の実施の形態に係る車室内快適性評価装置によれば、乗員の視野を表す体積であって、かつ、扇形を底面とする柱状空間の体積から、視野遮蔽物によって乗員の死角となる空間の体積であって、扇形を底面とする柱状空間の体積を減算した値を視覚的体積として用い、物理的体積及び視覚的体積を含む快適性評価関数に基づいて、車室内の快適性を評価しているので、視覚的体積が高精度に演算され、これにより、高精度に車室内の快適性を評価することができる。
【0056】
また、乗員の視野を表す視野角を中心角とし、かつ乗員の眼の焦点距離を半径とした扇形を底面とする柱状空間を視覚的体積として用いることにより、視野角と乗員の眼の焦点距離とで定まる柱状空間によって、高精度に視覚的体積を表すことができるので、高精度に車室内の快適性を評価することができる。
【0057】
また、視覚的体積の扇形の中心角を、車速が大きくなるに従って小さくなるように定めることにより、乗員の視界狭窄を考慮して、更に高精度に演算された視覚的体積を用いるため、高精度に車室内の快適性を評価することができる。
【0058】
また、乗車時間を含む快適性評価関数を用いて、快適性値を算出して、車室内の快適性を評価することにより、乗員の乗車状況を考慮して、高精度に快適性評価を行うことができる。
【0059】
また、ミニバンなどの多座席車両におけるシートアレンジに本実施の形態の車室内快適性評価装置を適用することにより、異なるシートアレンジ間の差異を、設計段階から比較検討することができ、更に、乗車時間や乗車人数に応じた評価が可能なため、目的に応じて好ましいシートアレンジをデザインすることができる。また、シートアレンジのみならず、車室内の視野を遮蔽する物体のアレンジにも活用でき、より車内のデザインが優れたものになる。
【0060】
なお、上記の実施の形態では、物理的体積や視覚的体積を含む快適性評価関数を用いて快適性を評価する場合を例に説明したが、物理的体積や視覚的体積の他に、隣に着座している乗員との距離、乗員の胴幅とシート幅との比、及び乗員の肩幅と室内幅との比の少なくとも一つを更に含む快適性評価関数を用いて、快適性を評価するようにしてもよい。
【0061】
また、視覚的体積を算出する方法として、横方向の視野角のみを考慮する場合を例に説明したが、上下方向の視野角を更に考慮して、算出される視覚的体積の精度を更に向上させるようにしてもよい。この場合には、図11に示すように、視野遮蔽物によって視野が遮蔽されて死角となる網掛け部分の底面が扇形の柱状空間の体積Vv2の高さに、上下方向の視野角を反映させればよい。
【0062】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0063】
第2の実施の形態では、評価対象となる自動車のコンピュータに車室内快適性評価プログラムを搭載させた点と、シートの位置、着座人数、及び車速を自動車に設けられたセンサによって自動的に検出する点とが第1の実施の形態と主に異なっている。
【0064】
第2の実施の形態に係る車室内快適性評価装置は、評価対象となる自動車に設けられており、自動車のシートに乗員を着座させて走行させながら、車室内の快適性を評価することができる。
【0065】
図9に示すように、第2の実施の形態に係る車室内快適性評価装置110は、CPU、ROM、及びRAMから構成される制御回路124と、快適性の評価結果を表示するためのディスプレイ162と、ハードディスク156と、自動車の車速を検出する車速センサ140とを備えており、ディスプレイ162、ハードディスク156、及び車速センサ140の各々は、制御回路124に接続されている。また、ハードディスク156には、後述する処理ルーチンを実行するための車室内快適性評価プログラムが予め記憶されており、また、ハードディスク156には、評価対象のシート114回りの設計情報(室内幅、天井高さ、座面高さ)や、評価対象のシート114に着座した乗員16の視野に関する視野情報(焦点距離、視野角度、視野遮蔽物の個数、視野遮蔽物の位置、視野遮蔽物の高さ)が予め記憶されている。
【0066】
また、シート114は、図9の実線及び点線で示すように、シートレール120を介して、シートレール120上を車両前後方向に移動可能に設けられている。シートレール120の近傍には、シート114を車両前後方向に移動させるためのスライド用モータ122が設けられており、スライド用モータ122の正回転及び逆回転によってシート114が車両前後方向に移動される。
【0067】
スライド用モータ122は、制御回路124に接続されており、制御回路124によって回転が制御され、また、制御回路124には、パワーシートスイッチ132が接続されており、乗員16がパワーシートスイッチ132を操作することによって、スライド用モータ122の回転が制御されて、シート114が車両前後方向に移動される。
【0068】
また、制御回路124には、シートポジションセンサ126が接続されており、シートポジションセンサ126の検出結果が制御回路124に入力される。なお、シートポジションセンサ26は、例えば、床面側に固定された受光素子アレイとシート114に取り付けられた発光素子とから構成され、発光素子がシート14の下部に設けられており、発光素子が発光した光を、受光素子アレイのうちの何れの受光素子が受光したかによって、シート114の位置を検出する。また、ホール素子と磁石とによってシートポジションセンサを構成するようにしてもよい。
【0069】
また、制御回路124には、イグニッションスイッチ128、及びシート114に乗員16が着座しているときにオンするシートスイッチ130等が接続されている。
【0070】
また、スライド用モータ122、シートポジションセンサ126、シートスイッチ130、及びパワーシートスイッチ132からなる組は、複数のシート114の各々に設けられている。
【0071】
次に、第2の実施の形態に係る車室内快適性評価装置110の作用について説明する。
【0072】
イグニッションスイッチ128がオンされると、制御回路124において図10に示す車室内の快適性を評価するための処理ルーチンが起動される。まず、ステップ200では、快適性評価を開始するか否かを判定し、入力装置(図示省略)から開始指示が入力されると、ステップ202へ進み、評価対象のシート114に対するシートポジションセンサ126の検出結果を取り込み、シート114の位置を検出し、ステップ204では、評価対象のシート114の列の全てのシート114に設けられたシートスイッチ130からの信号に基づいて、着座人数nを検出する。
【0073】
そして、ステップ206では、車速センサ140から車速を検出し、次のステップ208において、制御回路124に設けられたカウンタ(図示省略)で計測されたイグニッションスイッチ128がオンされてからの経過時間を、乗車時間tとして取り込む。
【0074】
次のステップ210では、ステップ202で検出されたシート114の位置に基づいて、シートピッチ及び足下ピッチを算出し、ステップ212で、予め設定された設計情報をハードディスク156から読み込むと共に、算出されたシートピッチ、足下ピッチ、検出された着座人数n、及び読み込まれた設計情報を用いて、上述した物理的体積の算出方法により、評価対象のシート114の一人当たりの物理的体積を演算する。
【0075】
また、ステップ214において、予め設定された視野情報をハードディスク156から読み込み、ステップ202で検出されたシート114の位置、ステップ204におけるシートスイッチ130からの信号に基づいて乗員が着座していると判断されるシート114の位置、及び読み込まれた視野情報に基づいて、自動車の車内における視野遮蔽物までの距離、及び視野遮蔽物によって遮蔽される視野角を算出し、ステップ216で、算出された視野遮蔽物までの距離、遮蔽される視野角、読み込まれた視野情報、及び検出された車速を用いて、上述した視覚的体積の算出方法により、評価対象のシート114に着座する乗員16の視覚的体積を演算する。
【0076】
そして、ステップ218において、予めハードディスク156に記憶された快適性評価関数に、ステップ208で取り込んだ乗車時間t、ステップ212、216で演算された物理的体積、及び視覚的体積を代入して、乗車時間tにおける快適性値を算出して、ステップ220で、算出された快適性値をディスプレイ162に表示して、車室内の快適性を評価する処理ルーチンを終了する。
【0077】
以上説明したように、第2の実施の形態に係る車室内快適性評価装置によれば、自動車のシートに乗員を着座させて走行させながら、走行時における自動車の車速や乗車時間に対して、車室内の快適性を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】第1の実施の形態に係る車室内快適性評価装置を示した概略図である。
【図2】(A)は評価対象の自動車の2人掛け3列のシート配置における物理的体積及び視覚的体積を示すイメージ図、(B)は1列のシートが3人掛けとなっているシート配置における物理的体積及び視覚的体積を示すイメージ図である。
【図3】評価対象の自動車のシート周りの定量的な指標を示す図である。
【図4】評価対象の自動車のシート周りの空間を示す図である。
【図5】遮蔽物がないと仮定した場合の視覚的体積としての底面が扇形の柱状空間と、視野遮蔽物によって視野が遮蔽されて死角となる網掛け部分の柱状空間とを示すイメージ図である。
【図6】評価対象の自動車において乗員の視野に入る空間を示すイメージ図である。
【図7】走行実験における快適性評価と乗車時間との関係を示すグラフである。
【図8】第1の実施の形態に係る車室内快適性評価装置において実行される車室内の快適性を評価する処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図9】第2の実施の形態に係る車室内快適性評価装置を示した概略図である。
【図10】第2の実施の形態に係る車室内快適性評価装置において実行される車室内の快適性を評価する処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図11】遮蔽物がないと仮定した場合の視覚的体積としての底面が扇形の柱状空間と、視野遮蔽物によって視野が遮蔽されて死角となる網掛け部分の柱状空間との他の例を示すイメージ図である。
【符号の説明】
【0079】
10、110 車室内快適性評価装置
12 自動車
14、114 シート
16 乗員
124 制御回路
126 シートポジションセンサ
130 シートスイッチ
140 車速センサ
Vv 視覚的体積
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内のシート周りの空間の体積を表す物理的体積、及び前記シートに着座した乗員の視野に入る空間の体積を表す視覚的体積を含む関数に基づいて、車室内の快適性を評価する車室内快適性評価方法であって、
前記視覚的体積として、遮蔽物が存在しないと仮定した場合の前記乗員の視野を表す扇形を底面とする柱状空間の体積から、前記遮蔽物によって前記乗員の死角となる空間の体積を減算した値を用いた車室内快適性評価方法。
【請求項2】
前記扇形の半径を、前記乗員が目視可能な所定距離とした請求項1記載の車室内快適性評価方法。
【請求項3】
前記所定距離を、前記乗員の眼の焦点距離とした請求項2記載の車室内快適性評価方法。
【請求項4】
前記扇形の中心角を、前記乗員の視野を表す視野角とした請求項1〜請求項3の何れか1項記載の車室内快適性評価方法。
【請求項5】
前記扇形の中心角を、車速が大きくなるに従って小さくなるように定めた請求項1〜請求項4の何れか1項記載の車室内快適性評価方法。
【請求項6】
車室内のシート周りの空間の体積を表す物理的体積を演算する第1の演算手段と、
遮蔽物が存在しないと仮定した場合の前記シートに着座した乗員の視野を表す扇形を底面とする柱状空間の体積から、前記遮蔽物によって前記乗員の死角となる空間の体積を減算した値を、前記乗員の視野に入る空間の体積を表す視覚的体積として演算する第2の演算手段と、
前記物理的体積及び前記視覚的体積を含む関数に基づいて、車室内の快適性を評価する評価手段と、
を含む車室内快適性評価装置。
【請求項7】
コンピュータを、
車室内のシート周りの空間の体積を表す物理的体積を演算する第1の演算手段、
遮蔽物が存在しないと仮定した場合の前記シートに着座した乗員の視野を表す扇形を底面とする柱状空間の体積から、前記遮蔽物によって前記乗員の死角となる空間の体積を減算した値を、前記乗員の視野に入る空間の体積を表す視覚的体積として演算する第2の演算手段、及び
前記物理的体積及び前記視覚的体積を含む関数に基づいて、車室内の快適性を評価する評価手段
として機能させるための車室内快適性評価プログラム。
【請求項1】
車室内のシート周りの空間の体積を表す物理的体積、及び前記シートに着座した乗員の視野に入る空間の体積を表す視覚的体積を含む関数に基づいて、車室内の快適性を評価する車室内快適性評価方法であって、
前記視覚的体積として、遮蔽物が存在しないと仮定した場合の前記乗員の視野を表す扇形を底面とする柱状空間の体積から、前記遮蔽物によって前記乗員の死角となる空間の体積を減算した値を用いた車室内快適性評価方法。
【請求項2】
前記扇形の半径を、前記乗員が目視可能な所定距離とした請求項1記載の車室内快適性評価方法。
【請求項3】
前記所定距離を、前記乗員の眼の焦点距離とした請求項2記載の車室内快適性評価方法。
【請求項4】
前記扇形の中心角を、前記乗員の視野を表す視野角とした請求項1〜請求項3の何れか1項記載の車室内快適性評価方法。
【請求項5】
前記扇形の中心角を、車速が大きくなるに従って小さくなるように定めた請求項1〜請求項4の何れか1項記載の車室内快適性評価方法。
【請求項6】
車室内のシート周りの空間の体積を表す物理的体積を演算する第1の演算手段と、
遮蔽物が存在しないと仮定した場合の前記シートに着座した乗員の視野を表す扇形を底面とする柱状空間の体積から、前記遮蔽物によって前記乗員の死角となる空間の体積を減算した値を、前記乗員の視野に入る空間の体積を表す視覚的体積として演算する第2の演算手段と、
前記物理的体積及び前記視覚的体積を含む関数に基づいて、車室内の快適性を評価する評価手段と、
を含む車室内快適性評価装置。
【請求項7】
コンピュータを、
車室内のシート周りの空間の体積を表す物理的体積を演算する第1の演算手段、
遮蔽物が存在しないと仮定した場合の前記シートに着座した乗員の視野を表す扇形を底面とする柱状空間の体積から、前記遮蔽物によって前記乗員の死角となる空間の体積を減算した値を、前記乗員の視野に入る空間の体積を表す視覚的体積として演算する第2の演算手段、及び
前記物理的体積及び前記視覚的体積を含む関数に基づいて、車室内の快適性を評価する評価手段
として機能させるための車室内快適性評価プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−320435(P2007−320435A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−152664(P2006−152664)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】
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