説明

車室用の照明装置

【課題】光源用のセンサスイッチとして機能する範囲を拡大し、照明レンズの薄型化や軽量化、デザイン性や演出効果の悪化防止を図ることができ、照明レンズのレンズ機能を損なうのを抑制できる車室用の照明装置を提供する。
【解決手段】車室天井に設置されるケース1と、ケース1に内蔵される照明用の回路基板2と、ケース1に嵌着されて回路基板2と光源4を被覆する照明レンズ10と、回路基板2と照明レンズ10間に介在される光透過性のセンサシート20とを備え、センサシート20を、回路基板2、及び照明レンズ10の裏面12から周壁13にかけて積層される可撓性の基材層22と、基材層22に形成されて照明レンズ10の裏面12に接触する電極層23と、基材層22に形成されて回路基板2のランド3に電気的に接続される電極端子と、基材層22に形成されて電極層23と電極端子24とを電気的に接続する導電ラインとから形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチ操作により自動車の車室を照明する車室用の照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来における車室用の照明装置は、図示しないが、四輪自動車の車室天井に設置される中空のケースと、このケースに内蔵される照明用の回路基板と、ケースに装着されて回路基板とその光源を被覆する透明な照明レンズと、この照明レンズに形成される光源点灯用の電極層とを備えて構成されている(特許文献1、2参照)。
【0003】
この車室用の照明装置は、回路基板表面の複数の電極に導電ゴム等からなる弾性の導通バーがそれぞれ立設され、照明レンズの回路基板に対向する裏面には、ユーザに操作される複数の電極層が所定の印刷法やスパッタリング法等により透明の薄膜に積層形成されており、この複数の電極層の一部に導通バーの先端部がそれぞれ電気的に圧接する。導通バーは、例えば弾性を有する円柱形や板片のゴムに導電性のフィラーが配合されることにより構成される。
【0004】
このような車室用の照明装置は、照明レンズの電極層に導体であるユーザの指が対向して静電容量が変化すると、回路基板の光源が点灯し、この光源の光線が照明レンズを透過して車室を照明するとともに、光線の照射により車室に所定のムードを醸し出して演出効果を発揮する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−230450号公報
【特許文献2】特開2010−105588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来における車室用の照明装置は、以上のように構成され、照明レンズの裏面に電極層が単に積層形成され、この電極層の一部が静電容量の検出用ではなく、電気的な接点用として別体の導通バーの先端部に接触するので、電極層の一部を光源用のセンサスイッチとして使用することに支障を来たす場合がある。また、電極層の一部に圧縮した導通バーの先端部が圧接し、照明レンズに絶えず圧力が作用するので、照明レンズの機械的強度を確保しなければならず、照明レンズの薄型化や軽量化を図ることができないおそれが少なくない。
【0007】
また、照明レンズの外部から導通バーが視認可能となるので、照明装置のデザイン性や体裁、演出効果が悪化するという問題がある。この問題の解消には、照明レンズに、導通バーを隠蔽する装飾等を施す方法が考えられるが、そうすると、照明レンズのレンズとして機能する領域が狭くなるという問題が新たに生じることとなる。
【0008】
本発明は上記に鑑みなされたもので、光源用のセンサスイッチとして機能する範囲を拡大し、照明レンズの薄型化や軽量化、デザイン性や演出効果の悪化防止を図ることができ、しかも、照明レンズのレンズ機能を損なうのを抑制できる車室用の照明装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明においては上記課題を解決するため、車室に設けられるケースと、このケースに内蔵される照明用の回路基板と、ケースに取り付けられて回路基板とその光源を覆う照明レンズと、回路基板と照明レンズとの間に介在される光透過性のセンサシートとを備え、照明レンズに接近する導体とセンサシートとの間の静電容量の変化により、回路基板の光源を点灯させ、この光源の光線を照明レンズに透過させて車室を照明するものであって、
センサシートは、回路基板、及び回路基板に対向する照明レンズの裏面から周壁にかけて設けられる可撓性の基材層と、この基材層に形成されて照明レンズの裏面に対向する電極層と、基材層に形成されて回路基板に電気的に接続される電極端子と、基材層に形成されて電極層と電極端子とを電気的に接続する導電ラインとを含んでなることを特徴としている。
【0010】
なお、回路基板に遮光板を取り付けて複数の照明空間を区画形成し、この複数の照明空間に回路基板の光源をそれぞれ位置させ、センサシートを複数枚としてその端部を遮光板の先端部で対向させるとともに、この対向した複数枚のセンサシートの端部間に0.3mm以下の隙間を形成することができる。
【0011】
また、センサシートの基材層に、光源用の拡散板あるいはライトガイド層を取り付けることができる。
さらに、センサシートを、ポリエチレンテレフタレート製の透明のフィルムに電極層、電極端子、導電ラインを透明の導電性ポリマーにより印刷することで形成することもできる。
【0012】
ここで、特許請求の範囲におけるケースは、有底の筒形でも良いし、筒形でも良い。また、センサシート、遮光板、拡散板、あるいはライトガイド層は、単数複数を特に問うものではない。センサシートは、回路基板と照明レンズとの間に介在されるが、具体的には、照明レンズの裏面にインサート成形法等からなる各種の成形法で一体化されたり、接着層や接着剤、粘着テープにより接着して一体化される。
【0013】
本発明によれば、電極層と照明用の回路基板とを従来の導通バー等からなる導通部材で接続するのではなく、電極層と電極端子とを一体に備えたセンサシートを回路基板に直接接続する。したがって、電極層に視覚的な障害となる導通部材を接触させる必要がなく、導通部材を省略することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、センサシートの光源用のセンサスイッチとして機能する範囲を拡大し、照明レンズの薄型化や軽量化を実現したり、デザイン性や演出効果の悪化防止を図ることができるという効果がある。また、照明レンズのレンズ機能を損なうのを抑制することができる。
【0015】
また、請求項2記載の発明によれば、複数枚のセンサシートの端部間の隙間が目立つことが少なく、照明装置のデザイン性や美観、体裁の向上が期待できる。
さらに、請求項3記載の発明によれば、光源から照射される光線の拡散や散乱が期待できるので、照明の輝度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る車室用の照明装置の実施形態を模式的に示す断面説明図である。
【図2】本発明に係る車室用の照明装置の実施形態におけるセンサシートを模式的に示す平面説明図である。
【図3】本発明に係る車室用の照明装置の第2の実施形態を模式的に示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明すると、本実施形態における車室用の照明装置は、図1や図2に示すように、四輪自動車の車室天井に設置される絶縁性のケース1と、このケース1に内蔵される照明用の回路基板2と、ケース1に嵌着されて回路基板2とその実装された複数の光源4を被覆する絶縁性の照明レンズ10と、回路基板2と照明レンズ10との間に介在される静電容量方式の一対のセンサシート20とを備え、照明レンズ10に接触するユーザの指とセンサシート20との間の静電容量の変化により、回路基板2の光源4を点灯させ、この光源4の光線を照明レンズ10に透過させて車室を照明する。
【0018】
ケース1は、図1に示すように、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアセタール等を含有する所定の成形材料を使用して中空の筒形に成形され、車室天井の前部、中央部、後部、左右の側部に適宜設置される。このケース1は、その内外周面に、照明レンズ10の脱落を規制する凹凸や螺子等が選択的に形成され、車室下方(図1の上方)に臨む開口面が照明レンズ10に被覆される。
【0019】
回路基板2は、図1に示すように、例えばプリント配線板からなり、表面に少なくとも電極であるランド3と光源4とがそれぞれ複数配設されており、ケース1の内底部に嵌着されて図示しない制御装置に電気的に接続される。この回路基板2の平坦な表面の中央部には、一対のセンサシート20を支持する暗色の遮光板5が立設され、この遮光板5が回路基板2と照明レンズ10との間に複数の照明空間6を区画形成する。
【0020】
遮光板5は例えばアクリル樹脂等からなり、各照明空間6には、ランド3と光源4とがそれぞれ位置する。各光源4としては、例えば消費電力が少ない小型のLEDや白熱電球等が使用され、図1の上方のセンサシート20に矢印で示す光線を照射するよう機能する。
【0021】
照明レンズ10は、同図に示すように、例えば回路基板2の複数のランド3と光源4とを被覆する凸型のレンズ本体11と、このレンズ本体11の回路基板2に対向する平坦な裏面12の周縁部から伸長してケース1内に嵌合される無端形の周壁13とを備え、これらレンズ本体11と周壁13とがポリカーボネート等を含有する所定の成形材料により一体成形される。
【0022】
レンズ本体11の表面14は、意匠性向上の観点から滑らかに湾曲して波紋やストライプに代表される模様等が適宜形成され、図示しないユーザの指により接触操作される。また、周壁13の内外周面には、ケース1からの脱落を規制する凹凸の係止部や螺子溝等が適宜形成される。
【0023】
一対のセンサシート20は、同図に示すように、照明レンズ10、具体的にはレンズ本体11の周壁13に包囲された裏面12等に位置決め接着して一体化され、先端部が遮光板5の平坦な先端面上で絶縁性確保の観点から隙間21を介して対向しており、この隙間21が0.3mm以下、好ましくは0.1〜0.3mm、より好ましくは0.1mm以下の長さとされる。これは、一対のセンサシート20の先端部が0.3mmを越えて対向すると、隙間21が目立ち、照明装置のデザイン性や美観が悪化するからである。
【0024】
各センサシート20は、図1や図2に示すように、回路基板2の表面、及び回路基板2に対向する照明レンズ10の裏面12から周壁13にかけて積層される可撓性の基材層22と、この基材層22表面の大部分に形成されて照明レンズ10の裏面12に接着される平面矩形の電極層23と、基材層22表面の末端部に形成されて回路基板2のランド3に電気的に接続される複数の電極端子24と、基材層22の表面に形成されて電極層23と複数の電極端子24とを電気的に接続する複数本の導電ライン25とを備え、光透過性や可撓性がそれぞれ付与される。
【0025】
基材層22は、例えば寸法安定性、耐熱性、光学特性等に優れるポリエチレンテレフタレート製の薄い透明のフィルムからなり、回路基板2から照明レンズ10にかけて断面略J字形に屈曲されており、回路基板2の表面周縁部と照明レンズ10の周壁13内面に接着される。この基材層22の裏面には、光源4からの光線を拡散させる白色印刷等が必要に応じて施される。
【0026】
電極層23、複数の電極端子24、複数本の導電ライン25は、透明の導電性ポリマー等を用いて薄膜にスクリーン印刷されたり、インクジェット印刷法等で印刷される。透明の電極層23はレンズ本体11の表面14に下方から対向し、複数本の透明の導電ライン25は回路基板2の表面と照明レンズ10の周壁13内面とに対向する。各導電ライン25は、例えば細長い線条に印刷され、必要に応じて屈曲形成される。
【0027】
上記構成において、照明レンズ10の表面14にユーザの指が接触すると、このユーザの指と対向するセンサシート20の電極層23との間の静電容量が変化し、この静電容量の変化を制御装置が検出して回路基板2の光源4を点灯させ、この光源4の光線がセンサシート20の基材層22、電極層23、照明レンズ10を順次透過して車室を照明するとともに、車室に所定のムードを醸し出して演出効果を発揮することとなる。
【0028】
この際、センサシート20の導電ライン25は、各照明空間6の中央等、換言すれば、照明レンズ10の有効透過エリア内に位置するのではなく、照明レンズ10の有効透過エリアから外れた周壁13内面に沿って密着しているので、光源4から照射される光線の透過性低下を招くことがない。
【0029】
上記構成によれば、電極層23、複数の電極端子24、及び複数本の導電ライン25を一体的に備えたセンサシート20を使用するので、従来の導通用の導通バーを確実に省略することができる。したがって、電極層23の全てを静電容量の検出用に用いることができ、光源4用のセンサスイッチとして機能する範囲を拡大させることができる。また、導通バーの省略により、照明レンズ10に絶えず圧力が作用することがないので、ケース1や照明レンズ10を肉厚にして機械的強度を特に確保する必要がない。したがって、照明レンズ10の薄型化や軽量化を図ることができる。
【0030】
また、照明レンズ10の外部から別体の導通バーが視認可能となることもないので、照明装置のデザイン性や体裁、演出効果の向上を図ることができ、しかも、照明レンズ10のレンズとして機能する領域の拡大も可能になる。また、照明レンズ10の表面14に導電ライン25が対向するのではなく、照明レンズ10の表面14から離れた回路基板2の表面と照明レンズ10の周壁13とに導電ライン25が対向するので、導電ライン25に対する指の接近に基づく誤検知防止が大いに期待できる。
【0031】
また、センサシート20の基材層22として、ポリエチレンテレフタレート製のフィルムを使用すれば、優れた耐熱性が期待できるので、照明装置内の熱により、寸法精度が不安定化するのを防止することが可能になる。さらに、電極層23、複数の電極端子24、複数本の導電ライン25をITO等の材料ではなく、導電性ポリマーで印刷すれば、基材層22の屈曲に伴い、電極層23、電極端子24、導電ライン25がひび割れして損傷するのを有効に防ぐことができる。
【0032】
次に、図3は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、センサシート20の基材層22の裏面に、光源4に上方から対向する光源4用の拡散板30を積層するようにしている。
拡散板30としては、特に限定されるものではないが、例えば電極層23の直下に位置するポリカーボネート製の板等があげられる。その他の部分については、上記実施形態と略同様であるので説明を省略する。
【0033】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、光源4から照射された光線が多方向に高輝度で拡散するので、照明の照度や輝度を向上させることができるのは明らかである。
【0034】
なお、上記実施形態では回路基板2の表面に電極であるランド3を形成したが、回路基板2の裏面にランド3を形成し、このランド3にセンサシート20の電極端子24を接続しても良い。また、照明レンズ10の裏面12や基材層22の裏面に、光線を拡散・散乱させる散乱模様を必要数形成しても良い。
【0035】
また、上記実施形態では基材層22表面の大部分に電極層23を単に印刷したが、電極層23をXY方向に分割してダイヤモンドパターン等に適宜形成しても良い。さらに、照明レンズ10の裏面12に光線用の散乱模様を形成し、選択した任意のセンサシート20の基材層22裏面に、光源4の光線を導光するシリコーンゴム等からなるライトガイド層を積層して輝度を向上させることもできる。
【符号の説明】
【0036】
1 ケース
2 回路基板
3 ランド
4 光源
5 遮光板
6 照明空間
10 照明レンズ
12 裏面
13 周壁
14 表面
20 センサシート
21 隙間
22 基材層
23 電極層
24 電極端子
25 導電ライン
30 拡散板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室に設けられるケースと、このケースに内蔵される照明用の回路基板と、ケースに取り付けられて回路基板とその光源を覆う照明レンズと、回路基板と照明レンズとの間に介在される光透過性のセンサシートとを備え、照明レンズに接近する導体とセンサシートとの間の静電容量の変化により、回路基板の光源を点灯させ、この光源の光線を照明レンズに透過させて車室を照明する車室用の照明装置であって、
センサシートは、回路基板、及び回路基板に対向する照明レンズの裏面から周壁にかけて設けられる可撓性の基材層と、この基材層に形成されて照明レンズの裏面に対向する電極層と、基材層に形成されて回路基板に電気的に接続される電極端子と、基材層に形成されて電極層と電極端子とを電気的に接続する導電ラインとを含んでなることを特徴とする車室用の照明装置。
【請求項2】
回路基板に遮光板を取り付けて複数の照明空間を区画形成し、この複数の照明空間に回路基板の光源をそれぞれ位置させ、センサシートを複数枚としてその端部を遮光板の先端部で対向させるとともに、この対向した複数枚のセンサシートの端部間に0.3mm以下の隙間を形成した請求項1記載の車室用の照明装置。
【請求項3】
センサシートの基材層に、光源用の拡散板あるいはライトガイド層を取り付けた請求項1又は2記載の車室用の照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−1190(P2012−1190A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−140865(P2010−140865)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】