説明

車椅子のホイール構造

【目的】 車椅子の購入後にハンドリムとホイールとの間隔(クリアランス)を容易に変更することができる車椅子のホイール構造を提供する。
【構成】 メインホイールと、ハンドリムと、当該ハンドリムを前記メインホイールに取り付けるハンドリム取付手段とを具え、当該ハンドリム取付手段を構成する部材が前記メインホイールとハンドリムとの間のクリアランスを規定している車椅子のホイール構造において、前記クリアランスを規定する部材が前記メインホイール及び前記ハンドリムと別部材であり、異なるクリアランスを規定する同種類の部材と交換できるように構成した。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は車椅子のホイール構造に関し、特に、車椅子の購入後にハンドリムとホイールとの間隔(クリアランス)を容易に変更することができる車椅子のホイール構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
図5は、従来の車椅子のホイール構造の構成を示す分解斜視図である。
図5に示すように、車椅子のホイールは、メインホイール10と、その脇に取り付けられるハンドリム1とから構成されている。このハンドリム1は円形のパイプからなり、このパイプの内側に複数の支持棒2が溶接されている。支持棒2の先端はそれぞれ平坦に形成され、平坦面のほぼ中央には所定の径を有する孔3が開けられている。一方、メインホイール10のリムの内側面11には、前記ハンドリムの支持棒2に対応する箇所にそれぞれブラインドナット(雌ねじ構造)
12が設けられており、ハンドリム1に設けられた支持棒先端の孔3と、このブラインドナット12とをボルト35で固定して、ハンドリム1をメインホイール10に取り付けるようにしている。
【0003】
車椅子の用途は、病院や空港等で複数常備され必要に応じて貸し出されるような公共的なものと、障害者が個人的に使用するものに大別することができる。前者は標準規格品と呼ばれおよそ標準的な構造及び寸法で作られるが、障害者が個人的に使用するようなものは、その使用者の体の寸法や障害の度合いに適したオーダーメイドのものが制作される。このようなオーダーメイドの車椅子では、ハンドリムの太さ、外径、材質、メインホイールとハンドリムとの間隔(クリアランス)が使用者の好みに応じて選択される。上述したような従来の車椅子では、メインホイールとハンドリム間のクリアランスはハンドリムに固定されている支持棒の長さで決まるため、支持棒の長さが適当なハンドリムを選択して、使用者がハンドリムを握りやすいクリアランスとする。
【0004】
【考案が解決しようとする課題】
上述したように従来の車椅子はハンドリム1のリングと支持棒2が溶接により固定されているため、メインホイールとハンドリムのクリアランス(以下、単にクリアランスともいう)は購入時に選択したハンドリムの支持棒の長さによって決定してしまい、その後は容易に変更できるものではなかった。しかしながら、ハンドリムのクリアランスの設定は使用者の感覚や使い勝手に依存するため、車椅子の座席の寸法や高さといったサイズの問題とは異なり、実際にある程度の期間使用した後にその不具合に気付くといった場合が少くない。又、車椅子の販売元でクリアランスを設定して自宅に持ち帰った後に、実生活に即して購入後に使用者がクリアランスを変更したいと考える場合もある。
【0005】
このような場合にハンドリムのクリアランスを変更するには、従来の車椅子では支持棒がハンドリムに溶接されているため、新たにハンドリムを購入してハンドリム全体を交換するしかなかった。又、車椅子の使用者が外出先でハンドリムのクリアランスを変更したいときは、支持棒の長さの異なるハンドリムを持って外出して、外出先で交換しなければならず、持ち運びが不便であった。このような問題を解決するために、本考案の目的は、車椅子の購入後にハンドリムのクリアランスを容易に変更することができ、クリアランスの変更に必要な交換部品が安価で、小さく嵩張らない車椅子のホイール構造を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本考案の車椅子のホイール構造は、メインホイールと、ハンドリムと、当該ハンドリムを前記メインホイールに取り付けるハンドリム取付手段とを具え、当該ハンドリム取付手段を構成する部材が前記メインホイールとハンドリムとの間のクリアランスを規定している車椅子のホイール構造において、前記クリアランスを規定する部材が前記メインホイール及び前記ハンドリムと別部材であり、異なるクリアランスを規定する同種類の部材と交換できるように構成したことを特徴とする。
【0007】
このように、本考案によれば、メインホイールとハンドリムの間に部材を設け、この部材によってメインホイールとハンドリムとの間のクリアランスを規定するように構成すると共に、この部材を交換可能として、異なるクリアランスを規定する部材に替えることによってクリアランスを変更するようにしているため、クリアランスを変更する際にハンドリム全体を交換していた従来の車椅子のホイール構造に比して、交換部品が格段に小さくて済む。従って、メインホイールとハンドリム間のクリアランスを容易かつ安価に変更することができる。
尚、この部材には長さ(高さ)の異なるナットや、長さあるいはねじ長の異なるボルトを好適に用いることができる。
【0008】
【考案の実施の形態】 本考案の車椅子のホイール構造の実施の形態を、図面を参照して以下に説明する。
図1は、本考案にかかるホイール構造の実施の形態の構成を示す分解斜視図である。図1に示す実施形態では、ハンドリム20は等間隔に設けられた4カ所の取付箇所にてメインホイール10に取り付けられている。図2は、この取付箇所のうち1カ所の構成を拡大して示す図である。
【0009】
図2に示すように、車椅子のメインホイール10のリムの内側面11にはブラインドナット12が設けられており、一方、ハンドリム20の内側(メインホイール側)の側面にはブラインドナット21が設けられている。ハンドリム20側のブラインドナット21に、ヘッド31が板状に形成されたプレートヘッドボルト30を取り付け、このプレートヘッドボルト30のヘッド31のほぼ中心を貫通する孔32を介してメインホイール側のブラインドナット12にボルト35を取り付けることによって、ハンドリム20をメインホイール10に固定するようにしている。
【0010】
プレートヘッドボルト30は、ナット40を介してハンドリム20に設けたブラインドナット21に取り付けられている。このナット40の高さによってメインホイール10とハンドリム20との間のクリアランスが決定される。図3は、本実施の形態のホイール構造に用いるハンドリム取付部材を示す図である。本形態の取付部材は長さの異なる4種類のナット40a〜40dと、長さの異なる2種類のプレートヘッドボルト30a,30bから成る。各ナット40a〜40dは同じ内径を、又、各プレートヘッドボルト30a,bは同じ外径を有しており、それぞれ同種類の部材と交換可能である。尚、本例では4カ所でハンドリムを取り付けるようにしているため、各部品は4個ずつ揃っている。このような長さの異なるプレートヘッドボルト30a,bとナット40a〜40dから、車椅子の使用者の要求に応じて適当な長さの部材を選択することによって、メインホイール10とハンドリム20との間のクリアランスを調整する。
【0011】
本実施形態のホイール構造におけるハンドリムの取り付け工程を説明する。
先ず、所望するクリアランスにおよそ適合する長さのナット40を選択して、このナットに適した長さのプレートヘッドボルト30を螺合させる。長めのナット(40a,40b)には長いプレートヘッドボルト30aを、短めのナット(40c,40d)には短い方のプレートヘッドボルト30bを組み合わせるようにする。ナット40の端部からプレートヘッドボルト30のねじ部33の先端を突出させ、ハンドリム20のブラインドナット21にねじ込んで、プレートヘッドボルト30をハンドリム20に取り付ける。この際に、各取付箇所のプレートヘッドボルト30のプレートヘッド32がメインホイール10のリムの内側面11に沿うようにして、ワッシャ36を介してボルト35でプレートヘッドボルト30をメインホイール10に固定する。
【0012】
この工程において、ハンドリム20をメインホイール10へ取り付ける前にプレートヘッドボルト30とブラインドナット21の螺合状態を調節することによって、更にクリアランスの微調整を行うことができる。例えば、プレートヘッドボルト30のねじピッチを1mmに構成して、ハンドリム20のブラインドナット21とプレートヘッドボルト30との螺合状態を調整すると、ボルト1/2回転で0.5mm、ボルト1回転で1mmのクリアランスの微調整を行うことができる。必要に応じてプレートヘッドボルト30を数回あるいは数回半回転させ、所望するクリアランスを得た後に、ハンドリム20をメインホイール10に取り付ける。メインホイール10に固定するとプレートヘッドボルト30は最早回転しなくなり、クリアランスが狂ったりボルト30がブラインドナット21から抜け落ちたりすることはない。
【0013】
このように、本考案のホイール構造は、ハンドリム20とは別体の交換可能な部材(プレートヘッドボルト30及びナット40)にてハンドリム20をメインホイール10に取り付けており、これらの部材を長さの異なるものに交換することによって、メインホイール10とハンドリム20との間のクリアランスを変えることができる。すなわち、予め数種類の長さの異なるプレートヘッドボルト30及びナット40を用意しておき、顧客の要望に合わせてそれらを組み合わせてクリアランスを設定することができる。プレートヘッドボルト30やナット40はハンドリム全体に比して安価に製造又は販売する事ができるため、リングを含むハンドリム全体を交換するより遥かに安価にクリアランスを変更することが可能になる。又、外出先にてハンドリムのクリアランスを変更したいような場合にも、長さの異なるプレートヘッドボルトとナットを数種類携帯して外出すれば良く、嵩張らない。
【0014】
又、本考案のホイール構造によれば、異なるクリアランスにて溶接されたハンドリム全体を新たに購入するという従来のクリアランス変更方法に比して、交換部品であるナット(及びプレートヘッドボルト)のみを新たに購入するだけで済むため、クリアランスの変更にかかるコストを大幅に下げることができる。
【0015】
以上、本考案の実施の形態を詳細に説明したが、本考案の車椅子のホイール構造は上述した実施形態の構成に限るものではなく、他にも様々な変形例を適用することができる。例えば、本実施形態ではハンドリムの取付部材をリングに等間隔で4カ所に配設しているが、3カ所あるいは5カ所以上に設けるようにしても良い。又、プレートヘッドボルトのプレートヘッドの形状や、ナットの外周の形状等も使用状況や生産工程等に応じて変化させても良い。
【0016】
その他、上述した実施形態ではナット40の高さでクリアランスを決定しているが、図4に示すように、ねじが途中までしか切られていないプレートヘッドボルト50を長さを変えて数種類用意し、これを交換することによってハンドリムのクリアランスを変更するようにしても良い。尚、図4において図2に示す構成要素と同一のものには同じ番号を付し、その説明は省略する。
【0017】
【考案の効果】
上記に詳細に説明したように、本考案にかかる車椅子のホイール構造は、従来溶接によって固定的に取り付けられていたハンドリムの支持棒を着脱、交換可能なプレートヘッドボルト及びナットで構成し、ハンドリムのクリアランスを変更するときにはこれらプレートヘッドボルト及びナットを交換するようにしている。従って、車椅子の購入後にクリアランスを変更したいときに、必要な交換部品が安価で、かつ嵩張らないホイール構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本考案にかかる車椅子のホイール構造の実施の形態の構成を示す分解斜視図である。
【図2】図2は、図1に示すホイール構造の一部の構成を拡大して示す斜視図である。
【図3】図3(a)〜(d)は、本実施の形態にかかる長さの異なるナットの構成を示す側面図、図3(e)及び(f)は長さの異なるプレートヘッドボルトの構成を示す側面図である。
【図4】図4は、本考案のホイール構造の実施の形態の変形例の構成を示す斜視図である。
【図5】図5は、従来の車椅子のホイール構造の構成を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
10 メインホイール
12,21 ブラインドナット
1,20 ハンドリム
30,50 プレートヘッドボルト
35 ボルト
40 ナット

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 メインホイールと、ハンドリムと、当該ハンドリムを前記メインホイールに取り付けるハンドリム取付手段とを具え、当該ハンドリム取付手段を構成する部材が前記メインホイールとハンドリムとの間のクリアランスを規定している車椅子のホイール構造において、前記クリアランスを規定する部材が前記メインホイール及び前記ハンドリムと別部材であり、異なるクリアランスを規定する同種類の部材と交換できるように構成したことを特徴とする車椅子のホイール構造。
【請求項2】 前記ハンドリム取付手段がハンドリムに設けられた雌ねじ構造と、当該雌ねじ構造に螺合するボルトとを具えると共に、前記クリアランスを規定する部材が前記ボルトに螺合するナットであって、当該ナットを長さの異なる他のナットと交換することによって前記クリアランスが変更されることを特徴とする請求項1に記載の車椅子のホイール構造。
【請求項3】 前記ハンドリム取付手段がハンドリムに設けられた雌ねじ構造を有すると共に、前記クリアランスを規定する部材が前記雌ねじ構造に螺合するボルトであって、当該ボルトを長さの異なる他のボルト、又は、ねじ長の異なる他のボルトと交換することによって前記クリアランスが変更されることを特徴とする請求項1に記載の車椅子のホイール構造。
【請求項4】 請求項2に記載の車椅子のホイール構造において、前記ボルトのヘッドを板状に形成してその中央を貫通する孔を設けると共に、前記ハンドリム取付手段が、前記メインホイールのリムの内側面に設けた第2の雌ねじ構造と、前記第2の雌ねじ構造に螺合する第2のボルトとを具え、前記孔を介して前記第2のボルトを前記第2の雌ねじ構造に螺合させて前記ハンドリムをメインホイールに取り付けることを特徴とする車椅子のホイール構造。
【請求項5】 請求項3に記載の車椅子のホイール構造において、前記ボルトのヘッドを板状に形成してその中央を貫通する孔を設けると共に、前記ハンドリム取付手段が、前記メインホイールのリムの内側面に設けた第2の雌ねじ構造と、前記第2の雌ねじ構造に螺合する第2のボルトとを具え、前記孔を介して前記第2のボルトを前記第2の雌ねじ構造に螺合させて前記ハンドリムをメインホイールに取り付けることを特徴とする車椅子のホイール構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【登録番号】第3045741号
【登録日】平成9年(1997)11月19日
【発行日】平成10年(1998)2月13日
【考案の名称】車椅子のホイール構造
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願平9−7119
【出願日】平成9年(1997)7月29日
【出願人】(593175936)株式会社オーエックスエンジニアリング (6)