車椅子収容体及び車椅子収納装置
【課題】汎用性があり、車椅子利用者が簡便に手間や労力をかけないで車椅子を車室内外に出し入れすることができる車椅子収容体及び車椅子収納装置を提供する。
【解決手段】車椅子を出し入れするための開口21Aを有する枠体21を備え、枠体21には、車椅子の車輪の外直径より小さい間隔で該車輪の車軸に沿って前後に並んで配置される一組の支持フレーム部22を含んで構成する。一組の支持フレーム部22上に車椅子が載置されている状態でロックレバー28が車椅子に当接して、ロックレバー28と一組の支持フレーム部22とで車椅子が支持される。
【解決手段】車椅子を出し入れするための開口21Aを有する枠体21を備え、枠体21には、車椅子の車輪の外直径より小さい間隔で該車輪の車軸に沿って前後に並んで配置される一組の支持フレーム部22を含んで構成する。一組の支持フレーム部22上に車椅子が載置されている状態でロックレバー28が車椅子に当接して、ロックレバー28と一組の支持フレーム部22とで車椅子が支持される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車椅子を収容する車椅子収容体とそれを備えた車椅子収容装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車椅子を自動車に載せる手法として、車両ルーフに取り付けたキャリアに収納ケースを搭載しておき、車椅子を昇降させて収納ケースから折り畳んだ車椅子を出し入れする方法がある(例えば特許文献1)。しかし、車両の全高が上がり、重心が高くなるばかりか、走行による空気抵抗、横風の影響も受けやすい。そこで、車両室内に車椅子を収納するための装置が開発されている。
【0003】
車椅子を車両室内に収納する装置として、例えば車椅子利用者自身が収納するタイプがある(例えば特許文献2乃至5)。
【0004】
例えば、車室内において一列目シートと二列目シートの間で床面に車椅子車載装置を配置して車椅子を車幅方向に出し入れすることが考えられている(例えば特許文献2及び4)。特許文献2に開示されている装置では、運転席後部に略車幅方向に沿って自動車開口部に端部を向けて床面上にガイドレールを設けておき、上部に湾曲した車椅子載置アームと、ガイドレールに沿って往復移動しかつ車椅子載置アームの一端に取り付けられる移動装置と、を設けている。この装置では、確かに、車椅子を車両の二列目シートの足元に収納することができるが、車椅子利用者が運転者である場合には非常に労力や手間がかかる。例えば、車椅子利用者が運転席に移った後、車両の外側を向いて車椅子を自分で折り畳み、かつ車椅子車載装置に向くように車椅子を揃えて、車椅子を車椅子車載装置に載せなければならない。車椅子を車両から降ろす場合も同様である。そこで、特許文献3では、特許文献2に開示されている装置を改良し、ガイドレールを車両デッキで運転席後部から斜め後方のコーナー部に向けて配置した車椅子収納装置を開示している。また、特許文献4に開示されている装置では、車椅子側に専用部品を設ける必要がある。このように、特殊な専用部品を用いることにより、車椅子の改造が必要となっている。
【0005】
上述したように、車椅子を車室内で移動するために車両床面側にレールなどのガイド部材を配設せず、車両室内のルーフ側にガイド部材を配設することも考えられている。例えば、特許文献5に開示されている装置では、車室内の上部に配置されるレールと、そのレールを案内して移動させると共に車椅子を昇降させるリフト装置と、を備え、このリフト装置を、車椅子に着脱される連結手段と、先端に連結手段が連結されている条体と、この条体を巻き取るドラム及びこのドラムを駆動する駆動装置で構成する。これにより、車椅子を車外から車室内に上げたり、車内で車椅子を寝かしたり起こしたり、移動させたり、車室内から車外に下ろしたりするときに、操作者に加わる車椅子の重量を軽減させている。特許文献5に開示されている装置では、レールは、自動車の運転席側のドア近傍から運転席の上を横断した後、助手席上で湾曲して後部左座席の上方を通り、後部左座席後方のリアウインドの近くまで設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−20554号公報
【特許文献2】特開2000−108770号公報
【特許文献3】特開2009−18689号公報
【特許文献4】特開2006−102214号公報
【特許文献5】特開平10−129335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、車椅子を車室内に収納する特許文献2乃至5の何れの装置においても、車椅子をそのまま載せたり吊るしたりしているので、車椅子のタイヤなどが泥で汚れているような場合には、車室内も泥などで汚れてしまう。
【0008】
また、車椅子利用者が一人で自動車を運転する場合、車椅子利用者自身が車椅子を自動車に収納しなければならないので、車椅子の車両への収納、取り出しの際には、車椅子利用者には健常者と比べてより労力が伴う。そのため、車椅子の車両への収納、取り出しは、可及的に労力や手間の負担を軽減できるようにすべきである。
【0009】
特許文献5に開示されている装置では、車両から車椅子を収納したり取り出したりする際に、車椅子が運転席の頭上を移動するため、運転者は自分の姿勢を大きく変えなければならない。しかも、収納時には、運転席のシートバックを倒す必要があるため、車椅子利用者が自分一人で自動車を運転する場合には適さない。特に降雨などにより車椅子に泥などが付着している場合には、車椅子利用者に汚れが付着する。この装置を車両に組み付け搭載する場合、車種によっては車室内での収納軌跡、即ちレールの形状を修正する必要がある。レールの形状が複雑になると、レールの単価そのものが高くなる。また、レールなどの部品が運転席頭上に常に配置されているため、運転操作の自由度も高くない。
【0010】
特許文献3に開示されている装置は、特許文献2に開示されている装置を改良したものであるが、車椅子を車内に収納した後に車椅子を収納装置に引っ掛ける必要があるため、腕が不自由な車椅子利用者にとってはその引っ掛け作業が困難である。
【0011】
さらに、特許文献2乃至5に開示されている装置では、車椅子をコンパクトに車室内に収納することができないという問題もある。例えば特許文献2に開示されている装置では、車幅方向で第2列目のシートのうち右側座席から左側座席にわたってガイドレールが配設されており、第2列目シートを有効活用することができない。その点、特許文献3では第2列目シートのうち左側座席には人が着座することはできる。しかし、第3列目シートは有効活用することができない。
【0012】
本発明は、以上のような課題に鑑み、汎用性があり、車椅子利用者が車椅子を簡便に手間や労力をかけないで車椅子を車室内外に出し入れすることができる車椅子収容体及び車椅子収納装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明における車椅子収容体は、車椅子を出し入れするための開口を有する枠体を備え、枠体が、車椅子の車輪の外直径より小さい間隔で該車輪の車軸に沿って前後に並んで配置される一組の支持フレーム部を含んで構成されており、一組の支持フレーム部上に車椅子が載置されている状態でロックレバーが車椅子に当接して、ロックレバーと一組の支持フレーム部とで車椅子が支持されることを特徴とする。
【0014】
本発明の車椅子収納装置は、本発明における車椅子収容体と、この車椅子収容体を出し入れする移動手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の車椅子収容体及びそれを備えた車椅子収納装置によれば、車椅子の車輪を下側から一組の支持フレーム部で支え、上側からロックレバーにより車椅子の背もたれ部を支えるため、車椅子が移動しないように車椅子収容体に収容することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る車椅子収納装置を車両に配備した状態を模式的に示す斜視図である。
【図2】図1に示す車椅子収納装置の斜視図である。
【図3】図2に示す車椅子収容体の斜視図である。
【図4】図3に示す左側のフレーム部材と操作部付きロックレバーとの接続態様を示す分解図である。
【図5】図4のV−V線に沿う断面図である。
【図6】図2に示すガイド壁部の平面図である。
【図7】図2に示す移動機構を示す斜視図である。
【図8】図2に示す移動機構の動作を示す図である。
【図9】レバーの変形例を示し、(A)第1の変形例を、(B)は第2の変形例を示す斜視図である。
【図10】本発明の第1の実施形態に係る車椅子収納装置の全体の動きを示す斜視図である。
【図11】車椅子を車椅子収容体に収容して移動機構により車両に収納する際の状態を、第2の回動機構の回動によりどのようになるかを段階的に示す模式図である。
【図12】車椅子収納手順の前半を示す模式図である。
【図13】図12の続きで、車椅子収納手順の後半を示す模式図である。
【図14】本発明の第2の実施形態に係る車椅子収容体の概略を示す斜視図である。
【図15】図14のXV−XVに沿う断面図である。
【図16】図14に示す自動ロック用のフレーム体に関して、(A)はロックレバーと後側支持フレーム部材との分解斜視図であり、(B)は組み立て斜視図である。
【図17】車椅子収容体で車椅子を収容する段階のステップの前半を模式的に示す図である。
【図18】車椅子収容体で車椅子を収容する段階のステップの後半を模式的に示す図である。
【図19】移動機構により車椅子収容体を車幅外方向に張り出し、車椅子を取り出す段階の前半のステップを模式的に示す図である。
【図20】移動機構により車椅子収容体を車幅外方向に張り出し、車椅子を取り出す段階の後半のステップを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の幾つかの実施形態について説明するが、本発明を本質的に変更しない範囲において適宜変更することができることは言うまでもない。
【0018】
〔第1実施形態〕
図1は本発明の第1の実施形態に係る車椅子収納装置を車両に配備した状態を模式的に示す斜視図で、図2は図1に示す車椅子収納装置の斜視図、図3は図2に示す車椅子収容体の斜視図である。図中、Fr,RH,Upは車両1の前方、車幅右方向、鉛直上方をそれぞれ示す記号である。
【0019】
〔車椅子収納装置10の全体構成について〕
本発明の第1実施形態に係る車椅子収納装置10は、図2に示すように、移動手段としての移動機構11と、移動機構11の先端側に取り付けられた車椅子収容体20と、を備えている。
【0020】
移動機構11は、車椅子収容体20を第1の軸回りに回動する第1の回動機構12と、第1の回動機構12を収容するケース13と、ケース13を先端側に取り付けたアーム部14と、アーム部14を第2の軸回りに回動する第2の回動機構15と、本体ケース16と、を備える。詳細については後述する。
【0021】
ここで、「第1の軸回り」とは、車両1の高さ方向に沿う軸、例えば鉛直軸線を意味する。「第2の軸回り」とは、車両1の前後方向に沿う軸、例えば車両前後に床面と平行に延びる軸線を意味する。何れの場合においても「沿う」とは必ずしもその方向に平行であることを意味せず、多少傾斜していてもよいという意味を包含している。この意味において、第1の回動機構12は車椅子収容体20を水平回動する手段であり、第2の回動機構15はアーム部14を上下方向に回動する手段である。
【0022】
車椅子収納装置10は、図1に示すように、車両1の前列シート2と後列シート3との間において前列シート2側の車両フロアに取り付けられている。この取り付けに際しては、前列シート2や後列シート3を車両1に組み付けるボルト孔などを利用してもよい。本発明の実施形態では、図1に示すように、車両1のドライバーが車椅子5を利用する者である場合を想定しており、図1に示すようにドライバーシートの後部座席が跳ね上げられており、ドライバーシートの後ろ側に車椅子収納装置10が配置されている。
【0023】
〔車椅子収容体20について〕
車椅子収容体20は、図3に示すように、車椅子を出し入れするための開口21Aを有するよう枠体21を備えている。枠体21は一組の支持フレーム部22を含んで構成されており、一組の支持フレーム部22は、車椅子5の車輪5Bの外直径L1より小さい間隔L2で車輪の車軸に沿って前後に並んで配設されている(後述する図11(C)参照)。
【0024】
枠体21について詳細に説明すると、図3に示すように、車椅子5を出し入れするための開口21Aを備えるよう枠体21が組み立てられている。枠体21の外側に開口21Aを除いてカバー部材26が張られていることが好ましい。車椅子5のフロントキャスタ5Aや車輪5Bに泥や埃が付着していても、車椅子5のフロントキャスタ5Aや車輪5Bが自動車のシートその他の各種の内装に直接接触しないため、泥や埃が内装等に付着しないからである。
【0025】
枠体21は、車椅子5の車輪5Bの外直径よりも小さい間隔で車輪5Bの車軸にほぼ平行に並んだ一組の支持フレーム部22を有するよう構成されている。すなわち、枠体21は、少なくとも、車椅子5を収容した状態において、車軸からみて斜め後方で車輪5Bを支持する後側の支持フレーム部22Rと、車軸からみて斜め前方で車輪5Bを支持する前側の支持フレーム部22Fと、で一組の支持フレーム部22を構成する。車輪5Bを転がしながら車椅子5を出し入れするため、前側の支持フレーム部22Fは断面寸法の小さい、柔軟性を有する素材で構成され、地面の凹凸に追従可能であることが望ましい。一方、後側の支持フレーム部22Rは、通常の厚みのパイプ等で構成する。ここで、後側の支持フレーム部22Rは常に地面等に接している必要はなく、前側の支持フレーム部22Fのみ地面等に着地するよう、収容体31を構成することが望ましい。
【0026】
枠体21についてさらに詳細に説明する。図2に示すように、枠体21は、上側のフレーム部材23Uと、左側のフレーム部材23Lと、右側のフレーム部材23Rと、後側のフレーム部材23Bと、前側のフレーム部材23Fと、を連結して構成されている。これらのフレーム部材の連結により、開口21Aを画成し、車椅子5の車輪5Bを支持することができるが、補強フレーム等を適宜設けてもよい。また、後述するように、カバー部材26が枠体21の開口21Aを除いた領域に張られている場合には、カバー部材26の定型性を維持するために、枠体21には所望の形状に沿った補強用のフレームがさらに必要となる。
【0027】
上側のフレーム部材23Uは、逆さ「コ」の字型に折れ曲げて形成されている。上側のフレーム部材23Uは、車椅子5の車軸方向に延びる上側縁部24Aと、この上側縁部24Aの左右両端からそれぞれ略鉛直方向に下降する左右の延長部24B,24Cと、で一体構成されている。
【0028】
左側のフレーム部材23Lは、鉛直に延びる左枠部24Dと、左枠部24Dの下端から斜め後方に傾斜する傾斜部24Eと、傾斜部24Eの下端で後ろに水平に延びる延長部24Fとで一体構成されている。同様に、右側のフレーム部材23Rは、鉛直に延びる右枠部24Gと、右枠部24Gの下端から後方に傾斜する傾斜部24Hと、傾斜部24Hの下端で後ろに水平に延びる延長部24Iとで一体構成されている。ここで、右枠部24Gは、左枠部24Dよりも開口21A側に出っ張っていることが好ましい。車椅子5を転がしながら鉛直軸回りに回転しつつ車椅子5を車椅子収容体20に収容する際のガイドの役目を果たすからである。
【0029】
後側のフレーム部材23Bは、左側のフレーム部材23Lにおける延長部24Fと右側のフレーム部材24Rにおける延長部24Iとを左右間で連結する。すなわち、後側のフレーム部材23Bは、車椅子5の車輪5Bを直接支持する後側の支持フレーム部24Jと、その両端から前方に延びる左右の延長部24K,24Lと、を含むよう折り曲げて構成されている。
【0030】
前側のフレーム部材23Fは、所定の厚みを有する帯状を成す部材で構成されており、前側のフレーム部材23Fは、収容する車椅子の車軸方向に延びて設けられる前側の支持フレーム部22Fと、前側の支持フレーム部22Fの左右両端からそれぞれ斜め後方に上昇して延びる延長部25A,25Bと、で一体構成されている。
【0031】
前側のフレーム部材23Fにおける左右の延長部25A,25Bは、それぞれ、対応する左右のフレーム部材23L,23Rにおける傾斜部24E,24Hに取り付けられている。なお、前側のフレーム部材23Fは、柔軟性のある帯状のゴムであっても、チェーンや鎖などであってもよい。
【0032】
枠体21のうち、左側のフレーム部材23Lと右側のフレーム部材23Rとには、操作部付きロックレバー27が揺動可能に取り付けられている。図4は、図3に示す左側のフレーム部材23Lと操作部付きロックレバー27との接続態様を示す分解図であり、図5は図4のV−V線に沿う断面図である。
【0033】
操作部付きロックレバー27は、車椅子5の背もたれ部5Cに当接して前述の一組の支持フレーム部22とで車椅子5を支持するロックレバー28と、このロックレバー28の一端部に取り付けられた操作レバー29とで、構成されている。ロックレバー28は、収容した車椅子5の車軸方向に延びるロック部28Aと、このロック部28Aの両端に対してそれぞれ略垂直に折れ曲がっている左右の延長部28B,28Cと、で構成されるよう折り曲げられている。
【0034】
左の延長部28Bには、例えば図4及び図5に示すように、軸部28Dとプランジャ28Eとが、左の延長部28Bに直交しかつ左枠部24Dの連結板24P側に突出するように設けられている。ここで、連結板24Pは、車椅子5を出し入れする開口16Cと逆向きに延びるように例えば左枠部24Dに設けられている。連結板24Pには、窪み24Mと貫通穴24Nとが、軸部28Dとプランジャ28Eとの位置関係に対応するように設けられている。一方、操作レバー29は、操作レバー本体部29Aがロック部28A及び左右の延長部28B,28Cがなす面に対して交差する方向に折り曲げられている。操作レバー本体部29Aのうち先端側には球状の操作部が取り付けられており、逆側はパイプを偏平して偏平部29Bが形成されている。偏平部29Bには貫通穴29Cが設けられている。
【0035】
図4には示していないが、ロックレバー28のうち延長部28B,28Cには複数のタップ即ち孔が設けられており、延長部28B,28Cがロック部28Aに嵌め込まれて寸法調整され、特定のタップにボルトなどが取り付けられている。これにより、ロックレバー28が車椅子の形状や寸法に調整することできる。ロックレバー28ではなく、操作レバー29に同様な寸法調整機能を設けてもよい。
【0036】
操作部付きレバー27は、枠体21に対して次のように取り付けられている。枠体21における連結板24Pには貫通穴24Nとプランジャ24Mとが設けられている。プランジャ24Mとは、スプリングの先端に玉が取り付けられたロック用の部品であり、常に外側に対して玉を押圧する。ロックレバー28には軸部28Dとプランジャ28Eとが連結板24P側に突出するように設けられ、操作レバー29には偏平部29Bに貫通穴29Cが設けられている。図4及び図5に示すように、ロックレバー28の軸部28Dが、連結板24Pの貫通穴24Nに対して内側から挿入され、貫通穴24Nから外側に突出した先端部にベアリング29Dを介在して操作レバー29の貫通穴29Cが挿入され、留め具29Eにより軸部28Dに締結されている。これにより、ロックレバー28及び操作レバー29を一体化し、かつ、ロック部28Aが後ろに倒れている状態において操作レバー本体部29Aの先端が上方を向くように、左側のフレーム部材23Lに揺動可能に取り付けられる。なお、同様に、延長部28Cは右枠部24Gに揺動可能に取り付けられている。
【0037】
ここで、連結板24Pにおける窪み24M及び貫通穴24Nとロックレバー28におけるプランジャ28Eとの位置関係について説明する。窪み24Mとプランジャ28Eとの位置関係は、ロック部28Aを後ろに倒した状態においてプランジャ28Eの玉が窪み24Mに入ればよい。これにより、操作レバー29を立ち上げてロック部28Aが後ろに倒れている状態では、操作部付きレバー27が揺動しないよう固定され、操作レバー29を前に倒してロック部28Aがロックされていない状態、即ちプランジャ28Eが窪み24Mに係合していない状態では、操作部付きレバー27が自由に揺動する。このように、操作部付きレバー27が枠体21に揺動可能にかつ、ロックレバー28が後ろに倒れている状態でロックが掛けられる。
【0038】
詳細は後述するが、車椅子5を車椅子収容体20に収めて、車椅子収容体20を浮上させると、車椅子5の自重により車椅子5とともに車椅子収容体20が僅かに下がる。この僅かに下がる状態に追従するため、かつ車椅子利用者Pのロック操作に対応することで、例えば操作部付きレバー27が途中で止まってロックが不完全な状態となるなどの人為的な曖昧さによる不都合を解消することができる。よって、操作レバー29の先端を立ち上げてロック部28Aを後ろに倒した状態では操作部付きレバー27にロックがかかった状態となり、それ以外の状態ではロックが解除されて、操作部付きレバー27が自由に揺動する。
【0039】
ここで、左の連結板24Pは、単に鉛直面状である必要はなく、車椅子利用者Pがロックを掛け易いように、操作レバー29が揺動する範囲を規制する規制部を設けてもよい。
【0040】
車椅子収容体20には、枠体21の内側に、枠体21の開口21Aを臨んで、ガイド壁30が車椅子5の左右に沿って設けられていることが好ましい。ガイド壁30は、奥側のガイド壁部30Aと左側のガイド壁部30Bと右側のガイド壁部30Cとで帯状をなしている。右側から車椅子5が収容される場合には、図6に示すように、右側のガイド壁部30Cよりも左側のガイド壁部30Bの方が長く、かつ、奥側のガイド壁部30Aになるにつれて左右のガイド壁部30B,30Cの間隔が狭くなっている方が好ましい。これは、車椅子5を完全に折り畳んだ後に、車椅子収容体20に車椅子5を収容しなくても、折り畳まれうる状態の車椅子5を車椅子収容体20に開口21Aから押し込むことで、左右のガイド壁部30B,30Cで挟まれて折り畳まれるからである。また、右側のガイド壁部30Cよりも左側のガイド壁部30Bの方が長くなっている。これにより、枠体21の開口21Aに対して真っ直ぐ対峙させなくても、車椅子5を左側のガイド壁部31Bに当てることが可能な範囲で、車椅子5の向きを自由にし、身体に無理のない角度で車椅子5を押して車椅子収容体20に収容することができる。
【0041】
〔移動機構11について〕
次に、移動機構11について説明する。図7は移動機構11を示す斜視図であり、図8は移動機構11の動作を示す図である。前述したように、移動機構11は、車椅子収容体20を第1の軸回りに回動する第1の回動機構12と、第1の回動機構12を収容するケース13と、ケース13を先端側に取り付けたアーム部14と、アーム部14を第2の軸回りに回動する第2の回動機構15と、本体ケース16と、を備える。
【0042】
〔アーム部14及び本体ケース16について〕
アーム部14は、上側アーム部材14Aと下側アーム部材14Bとで平行リンクをなすように構成されている。本体ケース16は一つのコーナー部に開口16Cを有しており、その開口16Cにアーム部14が挿入されている。本体ケース16は開口16Cが車幅外向き、図1に示す例ではLHの方向に向けて設置金具16Dにより車室床面に固定される。本体ケース16において、前後の壁部16Eには上側アーム支持部16A、下側アーム支持部16Bが架橋されている。
【0043】
上下のアーム部材14A,14Bの回動基点側に上下のアーム支持部16A,16Bが挿通しており、上下のアーム部材14A,14Bが上下のアーム支持部16A,16Bに回動可能になっていることで、結果として本体ケース16に対して回動可能になっている。上側アーム部材14A,下側アーム部材14Bは、何れも長手方向の寸法(長さ)が調整できるよう、例えばターンバックル方式を採用してもよい。なお、上側アーム支持部16A、下側アーム支持部16Bがアーム部14と一体となって、これらが本体ケース16の前後の壁部16Eに対して回動可能に取り付けられていても構わない。
【0044】
〔第2の回動機構について〕
本体ケース16内には第2の回動機構15が設けられ、第2の回動機構15は例えば下側アーム支持部16Bを回動しそれによりアーム部14全体が回動する。第2の回動機構15としては、色々考えられる。第2の回動機構15の構成として、例えば図7及び図8に示すように、アクチュエータ本体部17Aから作動部17Bが直線移動するので、この作動部17Bと下側アーム部材14Bの基端側との間に伝達部材としてのレバー18を設けることで、作動部17Bの直線移動をレバー18の回動移動に変換してアーム部14に伝達するとよい。レバー18と作動部17Bとは回動軸17Dにより連結している。
【0045】
詳細に説明すると、作動部17Bが車幅方向に直線移動するようアクチュエータ本体部17Aを配置し、本体ケース16の前後の壁部16Eに回動軸17Cを架橋して、この回動軸17Cにアクチュエータ本体部17Aの一端部を固定する。作動部17Bには下側アーム支持部16Bと平行に回動軸17Dが設けられており、回動軸17Dによりレバー18と連結している。なお、回動軸17Dは本体ケース16には固定されていない。アクチュエータ本体部17Aから作動部17Bが延出して作動部17Bが直線移動すると、回動軸17Cであるアクチュエータ固定軸部に対してアクチュエータ本体部17Aが揺動し、伝達部材としてのレバー18が下側アーム支持部16Bを中心に回動する。すると、上側アーム部材14A、下側アーム部材14Bがそれぞれ上側アーム支持部16A,下側アーム支持部16Bの回りに回動する。
【0046】
図9は、レバー18の変形例を示し、(A)は第1の変形例を、(B)は第2の変形例を示す。レバー18は、図9(A)に示すように下側アーム部材14Bを挟んで対峙するよう一方のレバー18A及び他方のレバー18Bの一対で構成してもよいし、図9(B)に示すように下側アーム部材14Bの軸に沿って一つのレバー18で構成してもよい。ここで、伝達部材としてのレバー18は下側アーム部材14Bと所定の鈍角をなすように、下側アーム部材14Bに溶接などにより取り付けられる。図9(A),(B)において、斜線を付した部位が溶接部分を示している。
【0047】
第2の回動機構15は例えば前述したように、下側アーム部材14Bの基端部側に伝達部材としてのレバー18が溶接等で固着されており、アクチュエータ本体部17Aは、車幅方向にほぼ平行に寝た状態のレバー18と逆側において、回動軸17Cに対して支持されている。アクチュエータ17はレバー18の先端に回動軸17Dを介在して取り付けられている。
【0048】
第2の回動機構15が上述したような構成を備えているので、アクチュエータ17において作動部17Bがアクチュエータ本体部17Aから車幅方向に延びたり引っ込んだりして図7の矢印Aの方向に往復する。すると、下側アーム支持部16Bに対してレバー18が回動軸17Dと共に図7の矢印Bの方向に回動する。それに併せて、アーム部14が下側アーム支持部16Bの軸回りに、矢印Cのように回動する。図8中において矢印Dは、後述するように、第1の回動機構12により回動軸部材12Aが回転する方向を示している。また、点線、実線、二点破線は、第2の回動機構15によりレバー18、アーム部14、ケース13がどのように移動するかを示している。
【0049】
第2の回動機構15は、図示した形態に限定されるものではなく、ギアを介在してもよい。作動部17Bは、空圧、油圧の何れで作動するものであってもよい。さらに、第2の回動機構15は図示を省略するが、電動モータを備えて、ギア等の減速機を介在させて、下側アーム支持部16Bを中心にアーム部14を回動するものであってもよい。
【0050】
〔第1の回動機構及びケースについて〕
ケース13は、図7に示すように、略直方体を呈しており、ケース13のコーナー部13Cには開口が形成されている。その開口にアーム部14の先端側が挿入されている。車両前後方向に沿って上下二段の軸部13A,13Bが上側アーム支持部16Aと下側アーム支持部16Bと平行になるようケース13の内部に取り付けられている。上側の軸部13Aは上側アーム部材14Aが回動可能に取り付けられ、下側の軸部13Bは下側アーム部材14Bが回動可能に取り付けられる。ケース13には回動軸部材12Aが車両高さ方向に沿って、好ましくは鉛直方向に平行に、回転可能に取り付けられており、回動軸部材12Aが前述の車椅子収容体20をケース13に回動可能に支持している。ケース13に対して車椅子収容体20を回動する回動機構、即ち第1の回動機構12については各種の形態が考えられる。
【0051】
第1の回動機構12の一つの形態を説明すると、例えば図7に示すように、電動モータ12Bがケース13に内蔵され、電動モータ12Bの回転軸が前述の回動軸部材12Aとして機能し、回動軸部材12Aがケース13から外に延出している。図7に示すように、回動軸部材12Aにはアタッチメント35が装着されており、アタッチメント35に対して車椅子収容体20における連結板24Pが取り付けられる。すなわち、連結板24Pは複数の取付穴24Qを有しており、適切な取付穴24Qに対して締付具35Aが挿入されてアタッチメント35に固定される(図2、図4参照)。図示しないが、回動軸部材12Aには、例えばギアで構成された減速機(図示せず)を介在してアタッチメント35が取り付けられても良い。
【0052】
〔第2の回動機構によるアーム部の回動について〕
再度図8を参照しながら、第2の回動機構15によるアーム部14の回動について説明する。第2の回動機構15は、車両前後方向に沿って延びる第2の軸回りにアーム部14を回動する。図7に示すように、第2の回動機構15では、車幅方向に沿って延びる方向にアクチュエータ本体部17Aが設置されており、回動軸17Cと上側アーム支持部16A及び下側アーム支持部16Bとの位置を変えないで、作動部17Bがアクチュエータ本体部17Aから延出したり引っ込んだりするので、その動作に対応して伝達部材としてのレバー18が下側アーム支持部16Bを中心に回動する。
【0053】
前述したように、伝達部材18には所定の鈍角をなすよう下側アーム部材14Bが固着されているので、伝達部材18の回動に伴い、アーム部14が反るように立ち上がったり(図7において点線で示す状態)、車室の床面にお辞儀をするようにアーム部14が倒れたりする(図7において二点破線で示す状態)。その際、アーム部14が上下のアーム部材14A,14Bで平行リンクを構成してなるので、アーム部14における上下の軸部13A,13Bを結ぶ線とケース13との姿勢は変わらず、ケース13の上面から突出している回動軸部材12Aの向きも略鉛直上方を向いたままである。
【0054】
〔車椅子収納装置10の全体の動きについて〕
以上の説明を前提に、車椅子収納装置10の全体の動きについて説明する。図10は本発明の第1の実施形態に係る車椅子収納装置10の全体の動きを示す斜視図である。
【0055】
図10に点線で示すように、アーム部14が反っている状態では、車椅子収容体20はケース13より車両後方側に位置しており、車椅子収容体20は開口21Aを車幅方向のうち右側に向いている。その状態において、第2の回動機構15がアーム部14を車両前後方向の軸回りに車両前方から見て反時計回りに所定角だけ回転すると、図10の実線で示す状態となる。さらに、第2の回動機構15がさらに所定角だけ回転すると共に第1の回動機構12が鉛直軸に沿って平面視で半時計回りに回転すると、図10の二点破線で示すように、車椅子収容体20が地面などに接触し得る状態となりかつ車椅子収容体20の開口21Aが車両前方を向く。車椅子収容体20を車両1に収納する場合は逆の手順を踏めばよい。
【0056】
〔車椅子収納手順について〕
図11は車椅子5を車椅子収容体20に収容して移動機構11により車両1に収納する際の状態を、第2の回動機構15の回動によりどのようになるかを段階的に示す模式図であり、図12は車椅子収納手順の前半を示す模式図、図13は図12の続きで、車椅子収納手順の後半を示す模式図である。
【0057】
図12(A)に示すように、車椅子5に乗った車椅子利用者Pは、前列シート2のサイドに位置し、前列シート2の脇に取り付けられている補助シート2Aを展開する。その際、車椅子収容体20は車室内であり、前列シート2の後ろ側でアーム部14がやや反るように立っている。車室内に収容された状態であってもよい。
【0058】
図12(A)に示す状態において、第2の回動機構15によりアーム部14を車両前方からみて反時計回りに回転する。すると、アーム部14がお辞儀をするように倒れる(図8において二点破線で示すアーム部14を参照)。その際、アーム部14は床面に平行になる必要はなく、車高に応じて上側及び下側のアーム支持部16A,16Bから路面を見下ろす方向に傾斜していてもよい。
【0059】
第2の回動機構15の回転に伴い、第1の回動機構12を平面視において反時計回りに回転することで(図10参照)、車椅子収容体20が平面視において反時計回りに回転する。すると、車椅子収容体20は後列シート3の略真横で、車室外に移動する。ここで、アーム部14を床面に平行ではなく見下ろす方向に傾斜することで、車椅子収容体20の前側の支持フレーム部22Fを路面上に載置することができる。
【0060】
このように、第1の回動機構12及び第2の回動機構15がそれぞれ動作することで、図12(B)に示すように、アーム部14が倒れ込み(矢印A)、アーム部14の先端、即ち、ケース13が車外にある状態となり、車椅子収容体20は、図12(A)に示す状態から平面視において約90度反時計回りに回り(矢印B)、車椅子収容体20が開口21Aを車両前方に向けて、車椅子収容体20が路面等に接触した状態となる。
【0061】
そこで、車椅子利用者は図1に示すように、車椅子5を畳んだ状態で車両後方に向けて押し、図11に順に示すように、操作レバー29を立ち上げてロックレバー28を倒してロックレバー28が車椅子5の背もたれ部5Cに当接してロックする。車椅子5を車両後方に押し、操作レバー29を立ち上げるという動作は、車椅子利用者にとっては通常行う範疇であるから車椅子利用者にとって無理なく行える。よって従来のように、車椅子を車椅子収納装置の特定の箇所に引っ掛けたりする必要がない。なお、図11の右側に示すように、一組の支持フレーム部、即ち、前側の支持フレーム部22Fと後側の支持フレーム部24Jとは、車椅子5の車輪5Bの外直径L1より小さい間隔L2で車輪5Bの車軸に沿って前後に並んで配置されている。
【0062】
そして、図1に示す状態において、第1の回動機構12及び第2の回動機構15がそれぞれ図12(A)に示す状態から(B)に示す状態になるまでの回転の向きと逆に回転する。すると、図13(A)に示すように、車椅子収容体20は第1の回動機構12により鉛直回りで平面視において時計回りに回転し、アーム部14が第2の回動機構15により車両前方からみて時計回りに回転する。
【0063】
第1の回動機構12及び第2の回動機構15による回動がそれぞれ終了すると、図13(B)に示すように、車椅子収容体20は、車椅子5を収容した状態で、前列シート2であるドライバーシートの後ろ側でアーム部14がやや反るように立っている。
【0064】
図13(B)に示す状態では、前列シート2であるドライバーシートに着座している車椅子利用者から、バックミラーを通じて車両後方(図中の矢印)を見ることができ、車椅子収容体20による後方視界への影響を少なくすることができる。
【0065】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態に係る車椅子収容体120について説明する。図14は本発明の第2の実施形態に係る車椅子収容体120の概略を示す斜視図であり、図15は図14のXV−XVに沿う断面図である。第1の実施形態における車椅子収容体20とは、車椅子収容体120に車椅子5を収容して移動機構11により車椅子収容体120を上昇すると、車椅子5が動かないように自動的にロックがされた状態となる点で異なる。
【0066】
車椅子収容体120においても、車椅子5を出し入れするための開口121Aを備えるよう枠体121が組み立てられている。枠体121の外側に開口121Aを除いてカバー部材122が張られていることが好ましい。
【0067】
図14に示すように、枠体121は、上側のフレーム部材123Uと左側のフレーム部材123Lと右側のフレーム部材123Rと前側のフレーム部材123Fとが連結して、さらに、自動ロック用のフレーム体126が左右のフレーム部材123L,123Rにスライド可能に取り付けられて構成されている。上側のフレーム部材123Uと左側のフレーム部材123Lと右側のフレーム部材123Rと前側のフレーム部材123Fとの連結により開口21Aを画成している。また、第1の実施形態と同様、カバー部材122が枠体121の開口121Aを除いた領域に張られている場合には、カバー部材126の定型性を維持するために、枠体121には所望の形状に沿った補強用のフレームがさらに必要となる。
【0068】
開口121Aを画成する上側のフレーム部材123U、左側のフレーム部材123L、右側のフレーム部材123R及び前側のフレーム部材123Fについて詳細に説明する。
【0069】
上側のフレーム部材123Uは、逆さ「コ」の字型に折れ曲げて形成されてなる。上側のフレーム部材123Uは、車椅子5の車軸方向に延びる上側縁部124Aと、この上側縁部124Aの左右両端からそれぞれ略鉛直方向に下降する左右の延長部124B,124Cと、で一体構成されている。
【0070】
左側のフレーム部123Lは、鉛直に延びる左枠部124Dと、左枠部124Dの下端から斜め後方に傾斜する傾斜部124Eと、で一体構成されている。同様に、右側のフレーム部123Rは、鉛直に延びる右枠部124Gと、右枠部124Gの下端から後方に傾斜する傾斜部124Hと、で一体構成されている。ここで、右側のガイド壁部131Cよりも左側のガイド壁部131Bの方が開口121A側に出っ張っていることが好ましい点は、第1の実施形態と同様である。
【0071】
前側のフレーム部材123Fは、所定の厚みを有する帯状を成す部材で構成されており、前側のフレーム部材123Fは、収容する車椅子の車軸方向に延びて設けられる前側の支持フレーム部122Fと、前側支持フレーム部の左右両端からそれぞれ斜め後方に上昇して延びる延長部125A,125Bと、で一体構成されている。
【0072】
前側のフレーム部材123Fにおける左右の延長部125A,125Bは、それぞれ、対応する左右のフレーム部材123L,123Rにおける傾斜部124E,124Hに取り付けられている。なお、前側のフレーム部材123Fが柔軟性のある帯状のゴムであっても、チェーンや鎖などであってもよい点は、第1の実施形態と同様である。
【0073】
自動ロック用のフレーム体126は、車椅子収容体120に収容されうる車椅子5をロックするためのロック部材127と、車椅子5の車輪5Bを支持する後側支持フレーム部材128と、左右の傾斜部124E,124Hにスライド可能に取り付けるための連結部材129L,129Rとを含んで構成されている。
【0074】
詳細には、ロック部材127は、車椅子5の車輪5Bの車軸方向に沿って設けられるロック部127Aとそのロック部127Aの両端側をほぼ垂直に折り曲げて左右に延びる左右の延長部127B,127Cとを有するよう、折り曲げられて構成されている。後側のフレーム部材128は、車椅子5の車輪5Bの車軸方向に沿って設けられる後側の支持フレーム部122Rと、その後側の支持フレーム部122Rの両端側をほぼ垂直に折り曲げて左右に延びる左右の延長部128A,128Bとを有するよう、折り曲げられて構成されている。そしてロック部材127における左右の延長部127B,127Cが後側のフレーム部材128における左右の延長部128A、128Bとそれぞれ連結されて、矩形状の枠が形成されている。自動ロック用のフレーム体126は、ロックレバー127と後側支持フレーム部材128とで取り付け現場で組み立て可能である。図16(A)に示すように、後側支持フレーム部材128における延長部128A,128Bの上側端部には複数のねじ穴が設けられ、ロックレバー127における延長部127B,127Cにも穴が設けられている。図16(B)に示すように、後側支持フレーム部材128の延長部128A,128Bがロックレバー127の延長部127B,127Cに挿入され、車椅子5の寸法に応じて何れかのねじ穴が選択され、ボルト127Eでねじ止めされる。これにより、自動ロック用のフレーム体126の寸法調整が可能となる。後側のフレーム部材128における左右の延長部128A,128Bにはそれぞれ左右の連結部材129L,129Rが溶接などにより連結されている。その際、左右の連結部材129L,129Rはロック部材127及び後側のフレーム部材128がなす面に対して交わるように、左右の延長部128A,128Bに接続されている。左右の連結部材129L,129Rの先端側は中空の筒状を成しており、その先端部、即ち、筒体129A,129Bはそれぞれ左右のフレーム部材123L,123Rの各傾斜部124E,124Hに装着されている。その際、筒体129A,129Bの上下の端部には、それぞれ、ドライベアリング129U,129Lを装着していることが好ましい。筒体129A,129Bが傾斜部124E,124Hに沿ってスライドし易くなるからである。
【0075】
さらに、傾斜部124E,124Hにはそれぞれスプリングコイル130L,130Rがそれぞれ装着されており、スプリングコイル130L,130Rの上端は、左右の連結部材129L,129Rの先端部、つまり筒体129A,129Bで規制され、スプリングコイル130L,130Rの下端は、前側のフレーム部材123Fにおける左右の延長部125A,125Bで規制されている。スプリングコイル130L,130Rの自然長は、左右の連結部材129L,129Rの先端部と左右の延長部125A,125Bとの間で傾斜部124E,124Hに沿った長さよりも短く設定されており、スプリングコイル130L,130Rは圧縮されている。これにより、常に、自動ロック用のフレーム部材126が上方に付勢されている。
【0076】
車椅子収容体120の場合においても、枠体121の開口121Aを臨んで、ガイド壁131が車椅子5の左右に沿って設けられていることが好ましい。ガイド壁131は、奥側のガイド壁部131Aと左側のガイド壁部131Bと右側のガイド壁部131Cとで帯状のガイド壁を構成しているが、右側から車椅子5が収容される場合には、右側のガイド壁部131Cよりも左側のガイド壁部131Bの方が長く、かつ、奥側のガイド壁部131Aになるにつれて左右のガイド壁部131B,131Cの間隔が狭くなっている方が好ましい。これは、車椅子5を完全に折り畳んだ後に、車椅子収容体120に車椅子5を収容しなくても、折り畳まれうる状態の車椅子5を車椅子収容体120に開口121Aから押し込むことで、左右のガイド壁部131B,131Cで挟まれて折り畳まれるからである。また、右側のガイド壁部131Cよりも左側のガイド壁部131Bの方が長くなっている。これにより、枠体121の開口121Aに対して真っ直ぐ対峙させなくても、車椅子5を左側のガイド壁部131Bに当てることが可能な範囲で、車椅子5の向きを自由にし、身体に無理のない角度で車椅子5を押して車椅子収容体120に収容することができる。
【0077】
枠体121のうち例えば左側のフレーム部材123Lには、連結板132が取り付けられており、連結板132には複数の取付穴が設けられているので、第1の実施形態と同様、車椅子収容体120も移動機構11に取り付けられる。すなわち、連結板132を、図7に示すように、アタッチメント35に締付具35Aで固定すればよい。
【0078】
次に、車椅子収容体120は自動的に車椅子5が移動しない状態、すなわちロック状態とすることができる点について説明する。図17及び図18は、車椅子収容体120が車椅子5を収容する段階のステップを模式的に示している。図17(A)に示すように、車椅子収容体120が路面等に接触した状態で、車椅子5を畳んで押し込む。すると、車椅子5の車輪5Bが後側の支持フレーム部122Rを斜め後方に押し下げる。図17(B)に示すように、自動ロック用のフレーム体が斜め後方に押し下げられる。すると、ロック部127Aが下がり、図18(A)に示すように、ロック部127Aが車椅子5の背もたれ部5Cと当接しうる状態となる。この状態で、車椅子収容体120が移動機構11により持ち上げられると、車椅子5の自重によりロック部127Aは下方に下がったままとなり、ロックがかかっている状態となる。車椅子収容体120が移動機構11により持ち上げられると、車椅子5の各車輪5Bは、前側の支持フレーム部122Fと後側の支持フレーム部122Rとロック部127Aとの三点で支持されることになる。
【0079】
次に、車椅子収容体120は自動的に車椅子5を取り出し可能な状態、すなわちロック解除状態とすることができる点について説明する。図19及び図20は、移動機構11により車椅子収容体120を車幅外方向に張り出し、車椅子5を取り出す段階の各ステップを模式的に示している。図19(A)に示すように、車椅子収容体120が移動機構11により降ろされつつある状況下では、車椅子5の各車輪5Bは、前側の支持フレーム部122Fと後側の支持フレーム部122Rとロック部127Aとの三点で支持されている。
【0080】
さらに、移動機構11により車椅子収容体120が降りると、図19(B)に示すように、車椅子5の車輪5Bが路面等に着地する。この状態でも、各車輪5Bは、前側の支持フレーム部122Fと後側の支持フレーム部122Rとロック部127Aとの三点で支持されている。この状態でさらに車椅子収容体120が降りてくると、前側の支持フレーム部122Fが路面等に着地し変形する。この段階で、図20(A)に示すように、後側の支持フレーム部122Rと車輪5Bとには僅かに隙間Δ1が生じる。すると、スプリングコイル130L,130Rが伸びて自動ロック用のフレーム体126が僅かに傾斜部124E,124Hに沿って上昇し、図20(B)に示すように、ロック部127Aと車椅子5の背もたれ部5Cとの間には隙間Δ2が生じる。これにより、隙間Δ2だけ車椅子5を開口側に引き出すことが可能になる。車椅子5を引き出すことによってさらに隙間Δ1が生じて前述の通りロック部127がさらに上昇して隙間Δ2が生じるという現象が繰り返されて車椅子を引き出すことが可能となる。したがって、車椅子5の背もたれ部5Cはロック部127Aの下を通過可能になり、車椅子5がロックされている状態が解除される。なお、図17乃至図20にはスプリングコイル190L,190Rは省略している。
【0081】
第2の実施形態では、車椅子5を固定するために第1の実施形態のように操作レバー29を操作する必要がない。
【0082】
以上、具体的に第1の実施形態では車椅子利用者自身が操作レバーにより車椅子を固定する場合、第2の実施形態では車椅子利用者が車椅子を車椅子収容体に載せるだけで車椅子を収容することができる場合を説明したが、次のような構成を採用しているので、その範囲において適宜変更することもできる。
【0083】
本発明の第1及び第2の実施形態では、車椅子5を出し入れするための開口21A,121Aを有する枠体21,121を備え、枠体21,121が、車椅子5の車輪5Bの外直径より小さい間隔L2で車輪5Bの車軸に沿って前後に並んで配置される一組の支持フレーム部22,122を含んで構成されている。よって、一組の支持フレーム部22,122上に車椅子5が載置されている状態でロックレバー28,127が車椅子5の背もたれ部5Cに当接して、ロックレバー28,127と一組の支持フレーム部22,122とで車椅子5を支持することができる。また、車椅子5の車輪5Bを下側から一組の支持フレーム部22,122で支え、上側からロックレバー28,127により車椅子5の背もたれ部を支えるため、車椅子5が移動しないように車椅子収容体20に収容することができる。即ち、前側の支持フレーム部22F,122Fと後側の支持フレーム部22R,122Rとで車輪5Bを持ち上げると、車椅子5の重心がフロントキャスタ5A側にあるため、車椅子5が前側に倒れるように傾く。その前かがみとなる動きをロックレバー28,127により抑える。
【0084】
さらに、枠体21,121に開口21A,121Aを塞がないようにカバー部材26,122が取り付けられている場合には、車椅子5の車輪5B等の汚れにより車室内が汚れない。さらに、枠体21,121には奥行きに沿ってガイド壁30,131が取り付けられている場合には、車椅子5を開口21A,121Aから押し込むことで、車椅子5を容易に収容することができる。
【0085】
一組の支持フレーム部22,122が前側の支持フレーム部22F,122Fと後側の支持フレーム部22R,122Rとでなり、前側の支持フレーム部22F,122Fが、車椅子5の車輪5Bが前側の支持フレーム部22F,122Fを乗り越えるのに支障のない厚みを有する場合や路面、床面その他の着地面の形状に沿う素材、例えばゴムなどの樹脂で構成されている場合には、着地面の凸凹に難なく追従してその凹凸を吸収することができ、車椅子5を収容体20,120に難なく収容することができる。
【0086】
枠体21が、上側フレーム部材23Uと、上側フレーム部材23Uの左側と連結する左側フレーム部材23Lと、上側フレーム部材23Uの右側と連結する右側フレーム部材23Rと、左側フレーム部材23Lの下側及び右側フレーム部材23Rの下側とを連結する後側の支持フレーム部22Rと、左側フレーム部材22Lと右側フレーム部材22Rとを連結する前側支持フレーム部22Fと、を含んで構成されており、ロックレバー28が左側フレーム部材23L及び右側フレーム部材23Rに揺動可能に取り付けられている。これにより、車椅子5を後ろに押し、車椅子5を収容体20に押し込まれた状態でロックレバー28を降ろすという、車椅子利用者にとって難なくできる操作により車椅子5を収容することできる。
【0087】
枠体121が、上側フレーム部材121Uと、上側フレーム部材121Uの左側と連結する左側フレーム部材121Lと、上側フレーム部材121Uの右側と連結する右側フレーム部材121Rと、左側フレーム部材121Lと右側フレーム部材121Rとを連結する前側支持フレーム部122Fと、を含んで構成される一方、自動ロック用のフレーム体126において後側支持フレーム部122Rとロックレバー127とが左右それぞれ接続され、かつ、連結部材129L,129Rが後側支持フレーム部122Rを左側フレーム部材123Lと右側フレーム部材123Rとにそれぞれ移動可能に装着され、連結部材129L,129Rが斜め上方に付勢されている。これにより、後側支持フレーム部122Rが車椅子5の車輪5Bにより押し下げられて、ロックレバー127により車椅子5が移動しないよう自動的にロックされる。
【0088】
さらに、移動機構11は、車両高さ方向に沿った軸の回りに車椅子収容体20,120を回動する第1の回動機構12と、第1の回動機構12を支持するアーム部14と、車両前後方向に沿った軸の回りにアーム部14を回動する第2の回動機構15と、を備えており、第2の回動機構15がアーム部14を立ち上げた状態では第1の回動機構12は車椅子収容体20をアーム部14より車両後側にあることで車椅子収容体20,120の開口21A,121Aが車幅方向を向き、第2の回動機構15がアーム部14を倒した状態では第1の回動機構12は車椅子収容体20,120を車幅外方向に向けることで車椅子収容体20,120の開口21A,121Aが車両前方を向く。
【0089】
よって、図1に示すように、車椅子収納装置10をコンパクトにできるため、前列シート2であるドライバーシートの後方シート3のみをチップアップするか撤去すればよく、助手席の後方シートには第三者を乗車させ、あるいは荷物を載せることも可能となり、車両1の室内空間を有効活用することができる。また、第1の回動機構12と第2の回動機構15とが連動して車椅子収容体20,120を移動するので、車室内に入れた車椅子収容体20,120を後列シートの脇などに移動することができる。これにより、ドライバーが車椅子利用者であっても、車椅子を折り畳んで、ドライバーシートに移って車両後方に押すだけで、車椅子5を車椅子収容体20,120に収めることができる。
【符号の説明】
【0090】
1:車両
2:前列シート
3:後列シート
5:車椅子
5A:フロントキャスタ(前輪)
5B:車輪
5C:背もたれ部(シートバック)
10:車椅子収納装置
11:移動機構
12:第1の回動機構
12A:回動軸部材
12B:電動モータ
13:ケース
13A:上側の軸部
13B:下側の軸部
13C:コーナー部
14:アーム部
14A:上側アーム部材
14B:下側アーム部材
15:第2の回動機構
16:本体ケース
16A:上側アーム支持部
16B:下側アーム支持部
16C:開口
16D:設置金具
16E:壁部
17:アクチュエータ
17A:アクチュエータ本体部
17B:作動部
17C,17D:回動軸
18,18A,18B:レバー(伝達部材)
20,120:車椅子収容体
21,121:枠体
21A,121A:開口
22,122:一組の支持フレーム部
22F,122F:前側の支持フレーム部
22R,122R:後側の支持フレーム部
23B:後側のフレーム部材
23F,123F:前側のフレーム部材
23L,123L:左側のフレーム部材
23R,123R:右側のフレーム部材
23U,123U:上側のフレーム部材
24A,124A:上側縁部
24B,24C,24F,24I,24K,24L,25A,25B,28B,28C,124B,124C,127B,127C,125A,125B,127A,127B,128A,128B:延長部
24D,124D:左枠部
24E,24H,124E,124H:傾斜部
24G,124G:右枠部
24J:後側のフレーム部
26,122:カバー部材
27:操作部付きロックレバー
28:ロックレバー
28A:ロック部
28D:軸部
28E:プランジャ
29:操作レバー
29A:操作レバー本体部
29B:偏平部
29C:貫通穴
29D:ベアリング
29E:留め具
30,131:ガイド壁
30A,131A:奥側ガイド壁部
30B,131B:右側ガイド壁部
30C,131C:左側ガイド壁部
126:自動ロック用のフレーム体
127:ロックレバー
127E:ボルト
128:後側支持フレーム部材
130L,131R:スプリングコイル(復帰バネ)
132:取付部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、車椅子を収容する車椅子収容体とそれを備えた車椅子収容装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車椅子を自動車に載せる手法として、車両ルーフに取り付けたキャリアに収納ケースを搭載しておき、車椅子を昇降させて収納ケースから折り畳んだ車椅子を出し入れする方法がある(例えば特許文献1)。しかし、車両の全高が上がり、重心が高くなるばかりか、走行による空気抵抗、横風の影響も受けやすい。そこで、車両室内に車椅子を収納するための装置が開発されている。
【0003】
車椅子を車両室内に収納する装置として、例えば車椅子利用者自身が収納するタイプがある(例えば特許文献2乃至5)。
【0004】
例えば、車室内において一列目シートと二列目シートの間で床面に車椅子車載装置を配置して車椅子を車幅方向に出し入れすることが考えられている(例えば特許文献2及び4)。特許文献2に開示されている装置では、運転席後部に略車幅方向に沿って自動車開口部に端部を向けて床面上にガイドレールを設けておき、上部に湾曲した車椅子載置アームと、ガイドレールに沿って往復移動しかつ車椅子載置アームの一端に取り付けられる移動装置と、を設けている。この装置では、確かに、車椅子を車両の二列目シートの足元に収納することができるが、車椅子利用者が運転者である場合には非常に労力や手間がかかる。例えば、車椅子利用者が運転席に移った後、車両の外側を向いて車椅子を自分で折り畳み、かつ車椅子車載装置に向くように車椅子を揃えて、車椅子を車椅子車載装置に載せなければならない。車椅子を車両から降ろす場合も同様である。そこで、特許文献3では、特許文献2に開示されている装置を改良し、ガイドレールを車両デッキで運転席後部から斜め後方のコーナー部に向けて配置した車椅子収納装置を開示している。また、特許文献4に開示されている装置では、車椅子側に専用部品を設ける必要がある。このように、特殊な専用部品を用いることにより、車椅子の改造が必要となっている。
【0005】
上述したように、車椅子を車室内で移動するために車両床面側にレールなどのガイド部材を配設せず、車両室内のルーフ側にガイド部材を配設することも考えられている。例えば、特許文献5に開示されている装置では、車室内の上部に配置されるレールと、そのレールを案内して移動させると共に車椅子を昇降させるリフト装置と、を備え、このリフト装置を、車椅子に着脱される連結手段と、先端に連結手段が連結されている条体と、この条体を巻き取るドラム及びこのドラムを駆動する駆動装置で構成する。これにより、車椅子を車外から車室内に上げたり、車内で車椅子を寝かしたり起こしたり、移動させたり、車室内から車外に下ろしたりするときに、操作者に加わる車椅子の重量を軽減させている。特許文献5に開示されている装置では、レールは、自動車の運転席側のドア近傍から運転席の上を横断した後、助手席上で湾曲して後部左座席の上方を通り、後部左座席後方のリアウインドの近くまで設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−20554号公報
【特許文献2】特開2000−108770号公報
【特許文献3】特開2009−18689号公報
【特許文献4】特開2006−102214号公報
【特許文献5】特開平10−129335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、車椅子を車室内に収納する特許文献2乃至5の何れの装置においても、車椅子をそのまま載せたり吊るしたりしているので、車椅子のタイヤなどが泥で汚れているような場合には、車室内も泥などで汚れてしまう。
【0008】
また、車椅子利用者が一人で自動車を運転する場合、車椅子利用者自身が車椅子を自動車に収納しなければならないので、車椅子の車両への収納、取り出しの際には、車椅子利用者には健常者と比べてより労力が伴う。そのため、車椅子の車両への収納、取り出しは、可及的に労力や手間の負担を軽減できるようにすべきである。
【0009】
特許文献5に開示されている装置では、車両から車椅子を収納したり取り出したりする際に、車椅子が運転席の頭上を移動するため、運転者は自分の姿勢を大きく変えなければならない。しかも、収納時には、運転席のシートバックを倒す必要があるため、車椅子利用者が自分一人で自動車を運転する場合には適さない。特に降雨などにより車椅子に泥などが付着している場合には、車椅子利用者に汚れが付着する。この装置を車両に組み付け搭載する場合、車種によっては車室内での収納軌跡、即ちレールの形状を修正する必要がある。レールの形状が複雑になると、レールの単価そのものが高くなる。また、レールなどの部品が運転席頭上に常に配置されているため、運転操作の自由度も高くない。
【0010】
特許文献3に開示されている装置は、特許文献2に開示されている装置を改良したものであるが、車椅子を車内に収納した後に車椅子を収納装置に引っ掛ける必要があるため、腕が不自由な車椅子利用者にとってはその引っ掛け作業が困難である。
【0011】
さらに、特許文献2乃至5に開示されている装置では、車椅子をコンパクトに車室内に収納することができないという問題もある。例えば特許文献2に開示されている装置では、車幅方向で第2列目のシートのうち右側座席から左側座席にわたってガイドレールが配設されており、第2列目シートを有効活用することができない。その点、特許文献3では第2列目シートのうち左側座席には人が着座することはできる。しかし、第3列目シートは有効活用することができない。
【0012】
本発明は、以上のような課題に鑑み、汎用性があり、車椅子利用者が車椅子を簡便に手間や労力をかけないで車椅子を車室内外に出し入れすることができる車椅子収容体及び車椅子収納装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明における車椅子収容体は、車椅子を出し入れするための開口を有する枠体を備え、枠体が、車椅子の車輪の外直径より小さい間隔で該車輪の車軸に沿って前後に並んで配置される一組の支持フレーム部を含んで構成されており、一組の支持フレーム部上に車椅子が載置されている状態でロックレバーが車椅子に当接して、ロックレバーと一組の支持フレーム部とで車椅子が支持されることを特徴とする。
【0014】
本発明の車椅子収納装置は、本発明における車椅子収容体と、この車椅子収容体を出し入れする移動手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の車椅子収容体及びそれを備えた車椅子収納装置によれば、車椅子の車輪を下側から一組の支持フレーム部で支え、上側からロックレバーにより車椅子の背もたれ部を支えるため、車椅子が移動しないように車椅子収容体に収容することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る車椅子収納装置を車両に配備した状態を模式的に示す斜視図である。
【図2】図1に示す車椅子収納装置の斜視図である。
【図3】図2に示す車椅子収容体の斜視図である。
【図4】図3に示す左側のフレーム部材と操作部付きロックレバーとの接続態様を示す分解図である。
【図5】図4のV−V線に沿う断面図である。
【図6】図2に示すガイド壁部の平面図である。
【図7】図2に示す移動機構を示す斜視図である。
【図8】図2に示す移動機構の動作を示す図である。
【図9】レバーの変形例を示し、(A)第1の変形例を、(B)は第2の変形例を示す斜視図である。
【図10】本発明の第1の実施形態に係る車椅子収納装置の全体の動きを示す斜視図である。
【図11】車椅子を車椅子収容体に収容して移動機構により車両に収納する際の状態を、第2の回動機構の回動によりどのようになるかを段階的に示す模式図である。
【図12】車椅子収納手順の前半を示す模式図である。
【図13】図12の続きで、車椅子収納手順の後半を示す模式図である。
【図14】本発明の第2の実施形態に係る車椅子収容体の概略を示す斜視図である。
【図15】図14のXV−XVに沿う断面図である。
【図16】図14に示す自動ロック用のフレーム体に関して、(A)はロックレバーと後側支持フレーム部材との分解斜視図であり、(B)は組み立て斜視図である。
【図17】車椅子収容体で車椅子を収容する段階のステップの前半を模式的に示す図である。
【図18】車椅子収容体で車椅子を収容する段階のステップの後半を模式的に示す図である。
【図19】移動機構により車椅子収容体を車幅外方向に張り出し、車椅子を取り出す段階の前半のステップを模式的に示す図である。
【図20】移動機構により車椅子収容体を車幅外方向に張り出し、車椅子を取り出す段階の後半のステップを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の幾つかの実施形態について説明するが、本発明を本質的に変更しない範囲において適宜変更することができることは言うまでもない。
【0018】
〔第1実施形態〕
図1は本発明の第1の実施形態に係る車椅子収納装置を車両に配備した状態を模式的に示す斜視図で、図2は図1に示す車椅子収納装置の斜視図、図3は図2に示す車椅子収容体の斜視図である。図中、Fr,RH,Upは車両1の前方、車幅右方向、鉛直上方をそれぞれ示す記号である。
【0019】
〔車椅子収納装置10の全体構成について〕
本発明の第1実施形態に係る車椅子収納装置10は、図2に示すように、移動手段としての移動機構11と、移動機構11の先端側に取り付けられた車椅子収容体20と、を備えている。
【0020】
移動機構11は、車椅子収容体20を第1の軸回りに回動する第1の回動機構12と、第1の回動機構12を収容するケース13と、ケース13を先端側に取り付けたアーム部14と、アーム部14を第2の軸回りに回動する第2の回動機構15と、本体ケース16と、を備える。詳細については後述する。
【0021】
ここで、「第1の軸回り」とは、車両1の高さ方向に沿う軸、例えば鉛直軸線を意味する。「第2の軸回り」とは、車両1の前後方向に沿う軸、例えば車両前後に床面と平行に延びる軸線を意味する。何れの場合においても「沿う」とは必ずしもその方向に平行であることを意味せず、多少傾斜していてもよいという意味を包含している。この意味において、第1の回動機構12は車椅子収容体20を水平回動する手段であり、第2の回動機構15はアーム部14を上下方向に回動する手段である。
【0022】
車椅子収納装置10は、図1に示すように、車両1の前列シート2と後列シート3との間において前列シート2側の車両フロアに取り付けられている。この取り付けに際しては、前列シート2や後列シート3を車両1に組み付けるボルト孔などを利用してもよい。本発明の実施形態では、図1に示すように、車両1のドライバーが車椅子5を利用する者である場合を想定しており、図1に示すようにドライバーシートの後部座席が跳ね上げられており、ドライバーシートの後ろ側に車椅子収納装置10が配置されている。
【0023】
〔車椅子収容体20について〕
車椅子収容体20は、図3に示すように、車椅子を出し入れするための開口21Aを有するよう枠体21を備えている。枠体21は一組の支持フレーム部22を含んで構成されており、一組の支持フレーム部22は、車椅子5の車輪5Bの外直径L1より小さい間隔L2で車輪の車軸に沿って前後に並んで配設されている(後述する図11(C)参照)。
【0024】
枠体21について詳細に説明すると、図3に示すように、車椅子5を出し入れするための開口21Aを備えるよう枠体21が組み立てられている。枠体21の外側に開口21Aを除いてカバー部材26が張られていることが好ましい。車椅子5のフロントキャスタ5Aや車輪5Bに泥や埃が付着していても、車椅子5のフロントキャスタ5Aや車輪5Bが自動車のシートその他の各種の内装に直接接触しないため、泥や埃が内装等に付着しないからである。
【0025】
枠体21は、車椅子5の車輪5Bの外直径よりも小さい間隔で車輪5Bの車軸にほぼ平行に並んだ一組の支持フレーム部22を有するよう構成されている。すなわち、枠体21は、少なくとも、車椅子5を収容した状態において、車軸からみて斜め後方で車輪5Bを支持する後側の支持フレーム部22Rと、車軸からみて斜め前方で車輪5Bを支持する前側の支持フレーム部22Fと、で一組の支持フレーム部22を構成する。車輪5Bを転がしながら車椅子5を出し入れするため、前側の支持フレーム部22Fは断面寸法の小さい、柔軟性を有する素材で構成され、地面の凹凸に追従可能であることが望ましい。一方、後側の支持フレーム部22Rは、通常の厚みのパイプ等で構成する。ここで、後側の支持フレーム部22Rは常に地面等に接している必要はなく、前側の支持フレーム部22Fのみ地面等に着地するよう、収容体31を構成することが望ましい。
【0026】
枠体21についてさらに詳細に説明する。図2に示すように、枠体21は、上側のフレーム部材23Uと、左側のフレーム部材23Lと、右側のフレーム部材23Rと、後側のフレーム部材23Bと、前側のフレーム部材23Fと、を連結して構成されている。これらのフレーム部材の連結により、開口21Aを画成し、車椅子5の車輪5Bを支持することができるが、補強フレーム等を適宜設けてもよい。また、後述するように、カバー部材26が枠体21の開口21Aを除いた領域に張られている場合には、カバー部材26の定型性を維持するために、枠体21には所望の形状に沿った補強用のフレームがさらに必要となる。
【0027】
上側のフレーム部材23Uは、逆さ「コ」の字型に折れ曲げて形成されている。上側のフレーム部材23Uは、車椅子5の車軸方向に延びる上側縁部24Aと、この上側縁部24Aの左右両端からそれぞれ略鉛直方向に下降する左右の延長部24B,24Cと、で一体構成されている。
【0028】
左側のフレーム部材23Lは、鉛直に延びる左枠部24Dと、左枠部24Dの下端から斜め後方に傾斜する傾斜部24Eと、傾斜部24Eの下端で後ろに水平に延びる延長部24Fとで一体構成されている。同様に、右側のフレーム部材23Rは、鉛直に延びる右枠部24Gと、右枠部24Gの下端から後方に傾斜する傾斜部24Hと、傾斜部24Hの下端で後ろに水平に延びる延長部24Iとで一体構成されている。ここで、右枠部24Gは、左枠部24Dよりも開口21A側に出っ張っていることが好ましい。車椅子5を転がしながら鉛直軸回りに回転しつつ車椅子5を車椅子収容体20に収容する際のガイドの役目を果たすからである。
【0029】
後側のフレーム部材23Bは、左側のフレーム部材23Lにおける延長部24Fと右側のフレーム部材24Rにおける延長部24Iとを左右間で連結する。すなわち、後側のフレーム部材23Bは、車椅子5の車輪5Bを直接支持する後側の支持フレーム部24Jと、その両端から前方に延びる左右の延長部24K,24Lと、を含むよう折り曲げて構成されている。
【0030】
前側のフレーム部材23Fは、所定の厚みを有する帯状を成す部材で構成されており、前側のフレーム部材23Fは、収容する車椅子の車軸方向に延びて設けられる前側の支持フレーム部22Fと、前側の支持フレーム部22Fの左右両端からそれぞれ斜め後方に上昇して延びる延長部25A,25Bと、で一体構成されている。
【0031】
前側のフレーム部材23Fにおける左右の延長部25A,25Bは、それぞれ、対応する左右のフレーム部材23L,23Rにおける傾斜部24E,24Hに取り付けられている。なお、前側のフレーム部材23Fは、柔軟性のある帯状のゴムであっても、チェーンや鎖などであってもよい。
【0032】
枠体21のうち、左側のフレーム部材23Lと右側のフレーム部材23Rとには、操作部付きロックレバー27が揺動可能に取り付けられている。図4は、図3に示す左側のフレーム部材23Lと操作部付きロックレバー27との接続態様を示す分解図であり、図5は図4のV−V線に沿う断面図である。
【0033】
操作部付きロックレバー27は、車椅子5の背もたれ部5Cに当接して前述の一組の支持フレーム部22とで車椅子5を支持するロックレバー28と、このロックレバー28の一端部に取り付けられた操作レバー29とで、構成されている。ロックレバー28は、収容した車椅子5の車軸方向に延びるロック部28Aと、このロック部28Aの両端に対してそれぞれ略垂直に折れ曲がっている左右の延長部28B,28Cと、で構成されるよう折り曲げられている。
【0034】
左の延長部28Bには、例えば図4及び図5に示すように、軸部28Dとプランジャ28Eとが、左の延長部28Bに直交しかつ左枠部24Dの連結板24P側に突出するように設けられている。ここで、連結板24Pは、車椅子5を出し入れする開口16Cと逆向きに延びるように例えば左枠部24Dに設けられている。連結板24Pには、窪み24Mと貫通穴24Nとが、軸部28Dとプランジャ28Eとの位置関係に対応するように設けられている。一方、操作レバー29は、操作レバー本体部29Aがロック部28A及び左右の延長部28B,28Cがなす面に対して交差する方向に折り曲げられている。操作レバー本体部29Aのうち先端側には球状の操作部が取り付けられており、逆側はパイプを偏平して偏平部29Bが形成されている。偏平部29Bには貫通穴29Cが設けられている。
【0035】
図4には示していないが、ロックレバー28のうち延長部28B,28Cには複数のタップ即ち孔が設けられており、延長部28B,28Cがロック部28Aに嵌め込まれて寸法調整され、特定のタップにボルトなどが取り付けられている。これにより、ロックレバー28が車椅子の形状や寸法に調整することできる。ロックレバー28ではなく、操作レバー29に同様な寸法調整機能を設けてもよい。
【0036】
操作部付きレバー27は、枠体21に対して次のように取り付けられている。枠体21における連結板24Pには貫通穴24Nとプランジャ24Mとが設けられている。プランジャ24Mとは、スプリングの先端に玉が取り付けられたロック用の部品であり、常に外側に対して玉を押圧する。ロックレバー28には軸部28Dとプランジャ28Eとが連結板24P側に突出するように設けられ、操作レバー29には偏平部29Bに貫通穴29Cが設けられている。図4及び図5に示すように、ロックレバー28の軸部28Dが、連結板24Pの貫通穴24Nに対して内側から挿入され、貫通穴24Nから外側に突出した先端部にベアリング29Dを介在して操作レバー29の貫通穴29Cが挿入され、留め具29Eにより軸部28Dに締結されている。これにより、ロックレバー28及び操作レバー29を一体化し、かつ、ロック部28Aが後ろに倒れている状態において操作レバー本体部29Aの先端が上方を向くように、左側のフレーム部材23Lに揺動可能に取り付けられる。なお、同様に、延長部28Cは右枠部24Gに揺動可能に取り付けられている。
【0037】
ここで、連結板24Pにおける窪み24M及び貫通穴24Nとロックレバー28におけるプランジャ28Eとの位置関係について説明する。窪み24Mとプランジャ28Eとの位置関係は、ロック部28Aを後ろに倒した状態においてプランジャ28Eの玉が窪み24Mに入ればよい。これにより、操作レバー29を立ち上げてロック部28Aが後ろに倒れている状態では、操作部付きレバー27が揺動しないよう固定され、操作レバー29を前に倒してロック部28Aがロックされていない状態、即ちプランジャ28Eが窪み24Mに係合していない状態では、操作部付きレバー27が自由に揺動する。このように、操作部付きレバー27が枠体21に揺動可能にかつ、ロックレバー28が後ろに倒れている状態でロックが掛けられる。
【0038】
詳細は後述するが、車椅子5を車椅子収容体20に収めて、車椅子収容体20を浮上させると、車椅子5の自重により車椅子5とともに車椅子収容体20が僅かに下がる。この僅かに下がる状態に追従するため、かつ車椅子利用者Pのロック操作に対応することで、例えば操作部付きレバー27が途中で止まってロックが不完全な状態となるなどの人為的な曖昧さによる不都合を解消することができる。よって、操作レバー29の先端を立ち上げてロック部28Aを後ろに倒した状態では操作部付きレバー27にロックがかかった状態となり、それ以外の状態ではロックが解除されて、操作部付きレバー27が自由に揺動する。
【0039】
ここで、左の連結板24Pは、単に鉛直面状である必要はなく、車椅子利用者Pがロックを掛け易いように、操作レバー29が揺動する範囲を規制する規制部を設けてもよい。
【0040】
車椅子収容体20には、枠体21の内側に、枠体21の開口21Aを臨んで、ガイド壁30が車椅子5の左右に沿って設けられていることが好ましい。ガイド壁30は、奥側のガイド壁部30Aと左側のガイド壁部30Bと右側のガイド壁部30Cとで帯状をなしている。右側から車椅子5が収容される場合には、図6に示すように、右側のガイド壁部30Cよりも左側のガイド壁部30Bの方が長く、かつ、奥側のガイド壁部30Aになるにつれて左右のガイド壁部30B,30Cの間隔が狭くなっている方が好ましい。これは、車椅子5を完全に折り畳んだ後に、車椅子収容体20に車椅子5を収容しなくても、折り畳まれうる状態の車椅子5を車椅子収容体20に開口21Aから押し込むことで、左右のガイド壁部30B,30Cで挟まれて折り畳まれるからである。また、右側のガイド壁部30Cよりも左側のガイド壁部30Bの方が長くなっている。これにより、枠体21の開口21Aに対して真っ直ぐ対峙させなくても、車椅子5を左側のガイド壁部31Bに当てることが可能な範囲で、車椅子5の向きを自由にし、身体に無理のない角度で車椅子5を押して車椅子収容体20に収容することができる。
【0041】
〔移動機構11について〕
次に、移動機構11について説明する。図7は移動機構11を示す斜視図であり、図8は移動機構11の動作を示す図である。前述したように、移動機構11は、車椅子収容体20を第1の軸回りに回動する第1の回動機構12と、第1の回動機構12を収容するケース13と、ケース13を先端側に取り付けたアーム部14と、アーム部14を第2の軸回りに回動する第2の回動機構15と、本体ケース16と、を備える。
【0042】
〔アーム部14及び本体ケース16について〕
アーム部14は、上側アーム部材14Aと下側アーム部材14Bとで平行リンクをなすように構成されている。本体ケース16は一つのコーナー部に開口16Cを有しており、その開口16Cにアーム部14が挿入されている。本体ケース16は開口16Cが車幅外向き、図1に示す例ではLHの方向に向けて設置金具16Dにより車室床面に固定される。本体ケース16において、前後の壁部16Eには上側アーム支持部16A、下側アーム支持部16Bが架橋されている。
【0043】
上下のアーム部材14A,14Bの回動基点側に上下のアーム支持部16A,16Bが挿通しており、上下のアーム部材14A,14Bが上下のアーム支持部16A,16Bに回動可能になっていることで、結果として本体ケース16に対して回動可能になっている。上側アーム部材14A,下側アーム部材14Bは、何れも長手方向の寸法(長さ)が調整できるよう、例えばターンバックル方式を採用してもよい。なお、上側アーム支持部16A、下側アーム支持部16Bがアーム部14と一体となって、これらが本体ケース16の前後の壁部16Eに対して回動可能に取り付けられていても構わない。
【0044】
〔第2の回動機構について〕
本体ケース16内には第2の回動機構15が設けられ、第2の回動機構15は例えば下側アーム支持部16Bを回動しそれによりアーム部14全体が回動する。第2の回動機構15としては、色々考えられる。第2の回動機構15の構成として、例えば図7及び図8に示すように、アクチュエータ本体部17Aから作動部17Bが直線移動するので、この作動部17Bと下側アーム部材14Bの基端側との間に伝達部材としてのレバー18を設けることで、作動部17Bの直線移動をレバー18の回動移動に変換してアーム部14に伝達するとよい。レバー18と作動部17Bとは回動軸17Dにより連結している。
【0045】
詳細に説明すると、作動部17Bが車幅方向に直線移動するようアクチュエータ本体部17Aを配置し、本体ケース16の前後の壁部16Eに回動軸17Cを架橋して、この回動軸17Cにアクチュエータ本体部17Aの一端部を固定する。作動部17Bには下側アーム支持部16Bと平行に回動軸17Dが設けられており、回動軸17Dによりレバー18と連結している。なお、回動軸17Dは本体ケース16には固定されていない。アクチュエータ本体部17Aから作動部17Bが延出して作動部17Bが直線移動すると、回動軸17Cであるアクチュエータ固定軸部に対してアクチュエータ本体部17Aが揺動し、伝達部材としてのレバー18が下側アーム支持部16Bを中心に回動する。すると、上側アーム部材14A、下側アーム部材14Bがそれぞれ上側アーム支持部16A,下側アーム支持部16Bの回りに回動する。
【0046】
図9は、レバー18の変形例を示し、(A)は第1の変形例を、(B)は第2の変形例を示す。レバー18は、図9(A)に示すように下側アーム部材14Bを挟んで対峙するよう一方のレバー18A及び他方のレバー18Bの一対で構成してもよいし、図9(B)に示すように下側アーム部材14Bの軸に沿って一つのレバー18で構成してもよい。ここで、伝達部材としてのレバー18は下側アーム部材14Bと所定の鈍角をなすように、下側アーム部材14Bに溶接などにより取り付けられる。図9(A),(B)において、斜線を付した部位が溶接部分を示している。
【0047】
第2の回動機構15は例えば前述したように、下側アーム部材14Bの基端部側に伝達部材としてのレバー18が溶接等で固着されており、アクチュエータ本体部17Aは、車幅方向にほぼ平行に寝た状態のレバー18と逆側において、回動軸17Cに対して支持されている。アクチュエータ17はレバー18の先端に回動軸17Dを介在して取り付けられている。
【0048】
第2の回動機構15が上述したような構成を備えているので、アクチュエータ17において作動部17Bがアクチュエータ本体部17Aから車幅方向に延びたり引っ込んだりして図7の矢印Aの方向に往復する。すると、下側アーム支持部16Bに対してレバー18が回動軸17Dと共に図7の矢印Bの方向に回動する。それに併せて、アーム部14が下側アーム支持部16Bの軸回りに、矢印Cのように回動する。図8中において矢印Dは、後述するように、第1の回動機構12により回動軸部材12Aが回転する方向を示している。また、点線、実線、二点破線は、第2の回動機構15によりレバー18、アーム部14、ケース13がどのように移動するかを示している。
【0049】
第2の回動機構15は、図示した形態に限定されるものではなく、ギアを介在してもよい。作動部17Bは、空圧、油圧の何れで作動するものであってもよい。さらに、第2の回動機構15は図示を省略するが、電動モータを備えて、ギア等の減速機を介在させて、下側アーム支持部16Bを中心にアーム部14を回動するものであってもよい。
【0050】
〔第1の回動機構及びケースについて〕
ケース13は、図7に示すように、略直方体を呈しており、ケース13のコーナー部13Cには開口が形成されている。その開口にアーム部14の先端側が挿入されている。車両前後方向に沿って上下二段の軸部13A,13Bが上側アーム支持部16Aと下側アーム支持部16Bと平行になるようケース13の内部に取り付けられている。上側の軸部13Aは上側アーム部材14Aが回動可能に取り付けられ、下側の軸部13Bは下側アーム部材14Bが回動可能に取り付けられる。ケース13には回動軸部材12Aが車両高さ方向に沿って、好ましくは鉛直方向に平行に、回転可能に取り付けられており、回動軸部材12Aが前述の車椅子収容体20をケース13に回動可能に支持している。ケース13に対して車椅子収容体20を回動する回動機構、即ち第1の回動機構12については各種の形態が考えられる。
【0051】
第1の回動機構12の一つの形態を説明すると、例えば図7に示すように、電動モータ12Bがケース13に内蔵され、電動モータ12Bの回転軸が前述の回動軸部材12Aとして機能し、回動軸部材12Aがケース13から外に延出している。図7に示すように、回動軸部材12Aにはアタッチメント35が装着されており、アタッチメント35に対して車椅子収容体20における連結板24Pが取り付けられる。すなわち、連結板24Pは複数の取付穴24Qを有しており、適切な取付穴24Qに対して締付具35Aが挿入されてアタッチメント35に固定される(図2、図4参照)。図示しないが、回動軸部材12Aには、例えばギアで構成された減速機(図示せず)を介在してアタッチメント35が取り付けられても良い。
【0052】
〔第2の回動機構によるアーム部の回動について〕
再度図8を参照しながら、第2の回動機構15によるアーム部14の回動について説明する。第2の回動機構15は、車両前後方向に沿って延びる第2の軸回りにアーム部14を回動する。図7に示すように、第2の回動機構15では、車幅方向に沿って延びる方向にアクチュエータ本体部17Aが設置されており、回動軸17Cと上側アーム支持部16A及び下側アーム支持部16Bとの位置を変えないで、作動部17Bがアクチュエータ本体部17Aから延出したり引っ込んだりするので、その動作に対応して伝達部材としてのレバー18が下側アーム支持部16Bを中心に回動する。
【0053】
前述したように、伝達部材18には所定の鈍角をなすよう下側アーム部材14Bが固着されているので、伝達部材18の回動に伴い、アーム部14が反るように立ち上がったり(図7において点線で示す状態)、車室の床面にお辞儀をするようにアーム部14が倒れたりする(図7において二点破線で示す状態)。その際、アーム部14が上下のアーム部材14A,14Bで平行リンクを構成してなるので、アーム部14における上下の軸部13A,13Bを結ぶ線とケース13との姿勢は変わらず、ケース13の上面から突出している回動軸部材12Aの向きも略鉛直上方を向いたままである。
【0054】
〔車椅子収納装置10の全体の動きについて〕
以上の説明を前提に、車椅子収納装置10の全体の動きについて説明する。図10は本発明の第1の実施形態に係る車椅子収納装置10の全体の動きを示す斜視図である。
【0055】
図10に点線で示すように、アーム部14が反っている状態では、車椅子収容体20はケース13より車両後方側に位置しており、車椅子収容体20は開口21Aを車幅方向のうち右側に向いている。その状態において、第2の回動機構15がアーム部14を車両前後方向の軸回りに車両前方から見て反時計回りに所定角だけ回転すると、図10の実線で示す状態となる。さらに、第2の回動機構15がさらに所定角だけ回転すると共に第1の回動機構12が鉛直軸に沿って平面視で半時計回りに回転すると、図10の二点破線で示すように、車椅子収容体20が地面などに接触し得る状態となりかつ車椅子収容体20の開口21Aが車両前方を向く。車椅子収容体20を車両1に収納する場合は逆の手順を踏めばよい。
【0056】
〔車椅子収納手順について〕
図11は車椅子5を車椅子収容体20に収容して移動機構11により車両1に収納する際の状態を、第2の回動機構15の回動によりどのようになるかを段階的に示す模式図であり、図12は車椅子収納手順の前半を示す模式図、図13は図12の続きで、車椅子収納手順の後半を示す模式図である。
【0057】
図12(A)に示すように、車椅子5に乗った車椅子利用者Pは、前列シート2のサイドに位置し、前列シート2の脇に取り付けられている補助シート2Aを展開する。その際、車椅子収容体20は車室内であり、前列シート2の後ろ側でアーム部14がやや反るように立っている。車室内に収容された状態であってもよい。
【0058】
図12(A)に示す状態において、第2の回動機構15によりアーム部14を車両前方からみて反時計回りに回転する。すると、アーム部14がお辞儀をするように倒れる(図8において二点破線で示すアーム部14を参照)。その際、アーム部14は床面に平行になる必要はなく、車高に応じて上側及び下側のアーム支持部16A,16Bから路面を見下ろす方向に傾斜していてもよい。
【0059】
第2の回動機構15の回転に伴い、第1の回動機構12を平面視において反時計回りに回転することで(図10参照)、車椅子収容体20が平面視において反時計回りに回転する。すると、車椅子収容体20は後列シート3の略真横で、車室外に移動する。ここで、アーム部14を床面に平行ではなく見下ろす方向に傾斜することで、車椅子収容体20の前側の支持フレーム部22Fを路面上に載置することができる。
【0060】
このように、第1の回動機構12及び第2の回動機構15がそれぞれ動作することで、図12(B)に示すように、アーム部14が倒れ込み(矢印A)、アーム部14の先端、即ち、ケース13が車外にある状態となり、車椅子収容体20は、図12(A)に示す状態から平面視において約90度反時計回りに回り(矢印B)、車椅子収容体20が開口21Aを車両前方に向けて、車椅子収容体20が路面等に接触した状態となる。
【0061】
そこで、車椅子利用者は図1に示すように、車椅子5を畳んだ状態で車両後方に向けて押し、図11に順に示すように、操作レバー29を立ち上げてロックレバー28を倒してロックレバー28が車椅子5の背もたれ部5Cに当接してロックする。車椅子5を車両後方に押し、操作レバー29を立ち上げるという動作は、車椅子利用者にとっては通常行う範疇であるから車椅子利用者にとって無理なく行える。よって従来のように、車椅子を車椅子収納装置の特定の箇所に引っ掛けたりする必要がない。なお、図11の右側に示すように、一組の支持フレーム部、即ち、前側の支持フレーム部22Fと後側の支持フレーム部24Jとは、車椅子5の車輪5Bの外直径L1より小さい間隔L2で車輪5Bの車軸に沿って前後に並んで配置されている。
【0062】
そして、図1に示す状態において、第1の回動機構12及び第2の回動機構15がそれぞれ図12(A)に示す状態から(B)に示す状態になるまでの回転の向きと逆に回転する。すると、図13(A)に示すように、車椅子収容体20は第1の回動機構12により鉛直回りで平面視において時計回りに回転し、アーム部14が第2の回動機構15により車両前方からみて時計回りに回転する。
【0063】
第1の回動機構12及び第2の回動機構15による回動がそれぞれ終了すると、図13(B)に示すように、車椅子収容体20は、車椅子5を収容した状態で、前列シート2であるドライバーシートの後ろ側でアーム部14がやや反るように立っている。
【0064】
図13(B)に示す状態では、前列シート2であるドライバーシートに着座している車椅子利用者から、バックミラーを通じて車両後方(図中の矢印)を見ることができ、車椅子収容体20による後方視界への影響を少なくすることができる。
【0065】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態に係る車椅子収容体120について説明する。図14は本発明の第2の実施形態に係る車椅子収容体120の概略を示す斜視図であり、図15は図14のXV−XVに沿う断面図である。第1の実施形態における車椅子収容体20とは、車椅子収容体120に車椅子5を収容して移動機構11により車椅子収容体120を上昇すると、車椅子5が動かないように自動的にロックがされた状態となる点で異なる。
【0066】
車椅子収容体120においても、車椅子5を出し入れするための開口121Aを備えるよう枠体121が組み立てられている。枠体121の外側に開口121Aを除いてカバー部材122が張られていることが好ましい。
【0067】
図14に示すように、枠体121は、上側のフレーム部材123Uと左側のフレーム部材123Lと右側のフレーム部材123Rと前側のフレーム部材123Fとが連結して、さらに、自動ロック用のフレーム体126が左右のフレーム部材123L,123Rにスライド可能に取り付けられて構成されている。上側のフレーム部材123Uと左側のフレーム部材123Lと右側のフレーム部材123Rと前側のフレーム部材123Fとの連結により開口21Aを画成している。また、第1の実施形態と同様、カバー部材122が枠体121の開口121Aを除いた領域に張られている場合には、カバー部材126の定型性を維持するために、枠体121には所望の形状に沿った補強用のフレームがさらに必要となる。
【0068】
開口121Aを画成する上側のフレーム部材123U、左側のフレーム部材123L、右側のフレーム部材123R及び前側のフレーム部材123Fについて詳細に説明する。
【0069】
上側のフレーム部材123Uは、逆さ「コ」の字型に折れ曲げて形成されてなる。上側のフレーム部材123Uは、車椅子5の車軸方向に延びる上側縁部124Aと、この上側縁部124Aの左右両端からそれぞれ略鉛直方向に下降する左右の延長部124B,124Cと、で一体構成されている。
【0070】
左側のフレーム部123Lは、鉛直に延びる左枠部124Dと、左枠部124Dの下端から斜め後方に傾斜する傾斜部124Eと、で一体構成されている。同様に、右側のフレーム部123Rは、鉛直に延びる右枠部124Gと、右枠部124Gの下端から後方に傾斜する傾斜部124Hと、で一体構成されている。ここで、右側のガイド壁部131Cよりも左側のガイド壁部131Bの方が開口121A側に出っ張っていることが好ましい点は、第1の実施形態と同様である。
【0071】
前側のフレーム部材123Fは、所定の厚みを有する帯状を成す部材で構成されており、前側のフレーム部材123Fは、収容する車椅子の車軸方向に延びて設けられる前側の支持フレーム部122Fと、前側支持フレーム部の左右両端からそれぞれ斜め後方に上昇して延びる延長部125A,125Bと、で一体構成されている。
【0072】
前側のフレーム部材123Fにおける左右の延長部125A,125Bは、それぞれ、対応する左右のフレーム部材123L,123Rにおける傾斜部124E,124Hに取り付けられている。なお、前側のフレーム部材123Fが柔軟性のある帯状のゴムであっても、チェーンや鎖などであってもよい点は、第1の実施形態と同様である。
【0073】
自動ロック用のフレーム体126は、車椅子収容体120に収容されうる車椅子5をロックするためのロック部材127と、車椅子5の車輪5Bを支持する後側支持フレーム部材128と、左右の傾斜部124E,124Hにスライド可能に取り付けるための連結部材129L,129Rとを含んで構成されている。
【0074】
詳細には、ロック部材127は、車椅子5の車輪5Bの車軸方向に沿って設けられるロック部127Aとそのロック部127Aの両端側をほぼ垂直に折り曲げて左右に延びる左右の延長部127B,127Cとを有するよう、折り曲げられて構成されている。後側のフレーム部材128は、車椅子5の車輪5Bの車軸方向に沿って設けられる後側の支持フレーム部122Rと、その後側の支持フレーム部122Rの両端側をほぼ垂直に折り曲げて左右に延びる左右の延長部128A,128Bとを有するよう、折り曲げられて構成されている。そしてロック部材127における左右の延長部127B,127Cが後側のフレーム部材128における左右の延長部128A、128Bとそれぞれ連結されて、矩形状の枠が形成されている。自動ロック用のフレーム体126は、ロックレバー127と後側支持フレーム部材128とで取り付け現場で組み立て可能である。図16(A)に示すように、後側支持フレーム部材128における延長部128A,128Bの上側端部には複数のねじ穴が設けられ、ロックレバー127における延長部127B,127Cにも穴が設けられている。図16(B)に示すように、後側支持フレーム部材128の延長部128A,128Bがロックレバー127の延長部127B,127Cに挿入され、車椅子5の寸法に応じて何れかのねじ穴が選択され、ボルト127Eでねじ止めされる。これにより、自動ロック用のフレーム体126の寸法調整が可能となる。後側のフレーム部材128における左右の延長部128A,128Bにはそれぞれ左右の連結部材129L,129Rが溶接などにより連結されている。その際、左右の連結部材129L,129Rはロック部材127及び後側のフレーム部材128がなす面に対して交わるように、左右の延長部128A,128Bに接続されている。左右の連結部材129L,129Rの先端側は中空の筒状を成しており、その先端部、即ち、筒体129A,129Bはそれぞれ左右のフレーム部材123L,123Rの各傾斜部124E,124Hに装着されている。その際、筒体129A,129Bの上下の端部には、それぞれ、ドライベアリング129U,129Lを装着していることが好ましい。筒体129A,129Bが傾斜部124E,124Hに沿ってスライドし易くなるからである。
【0075】
さらに、傾斜部124E,124Hにはそれぞれスプリングコイル130L,130Rがそれぞれ装着されており、スプリングコイル130L,130Rの上端は、左右の連結部材129L,129Rの先端部、つまり筒体129A,129Bで規制され、スプリングコイル130L,130Rの下端は、前側のフレーム部材123Fにおける左右の延長部125A,125Bで規制されている。スプリングコイル130L,130Rの自然長は、左右の連結部材129L,129Rの先端部と左右の延長部125A,125Bとの間で傾斜部124E,124Hに沿った長さよりも短く設定されており、スプリングコイル130L,130Rは圧縮されている。これにより、常に、自動ロック用のフレーム部材126が上方に付勢されている。
【0076】
車椅子収容体120の場合においても、枠体121の開口121Aを臨んで、ガイド壁131が車椅子5の左右に沿って設けられていることが好ましい。ガイド壁131は、奥側のガイド壁部131Aと左側のガイド壁部131Bと右側のガイド壁部131Cとで帯状のガイド壁を構成しているが、右側から車椅子5が収容される場合には、右側のガイド壁部131Cよりも左側のガイド壁部131Bの方が長く、かつ、奥側のガイド壁部131Aになるにつれて左右のガイド壁部131B,131Cの間隔が狭くなっている方が好ましい。これは、車椅子5を完全に折り畳んだ後に、車椅子収容体120に車椅子5を収容しなくても、折り畳まれうる状態の車椅子5を車椅子収容体120に開口121Aから押し込むことで、左右のガイド壁部131B,131Cで挟まれて折り畳まれるからである。また、右側のガイド壁部131Cよりも左側のガイド壁部131Bの方が長くなっている。これにより、枠体121の開口121Aに対して真っ直ぐ対峙させなくても、車椅子5を左側のガイド壁部131Bに当てることが可能な範囲で、車椅子5の向きを自由にし、身体に無理のない角度で車椅子5を押して車椅子収容体120に収容することができる。
【0077】
枠体121のうち例えば左側のフレーム部材123Lには、連結板132が取り付けられており、連結板132には複数の取付穴が設けられているので、第1の実施形態と同様、車椅子収容体120も移動機構11に取り付けられる。すなわち、連結板132を、図7に示すように、アタッチメント35に締付具35Aで固定すればよい。
【0078】
次に、車椅子収容体120は自動的に車椅子5が移動しない状態、すなわちロック状態とすることができる点について説明する。図17及び図18は、車椅子収容体120が車椅子5を収容する段階のステップを模式的に示している。図17(A)に示すように、車椅子収容体120が路面等に接触した状態で、車椅子5を畳んで押し込む。すると、車椅子5の車輪5Bが後側の支持フレーム部122Rを斜め後方に押し下げる。図17(B)に示すように、自動ロック用のフレーム体が斜め後方に押し下げられる。すると、ロック部127Aが下がり、図18(A)に示すように、ロック部127Aが車椅子5の背もたれ部5Cと当接しうる状態となる。この状態で、車椅子収容体120が移動機構11により持ち上げられると、車椅子5の自重によりロック部127Aは下方に下がったままとなり、ロックがかかっている状態となる。車椅子収容体120が移動機構11により持ち上げられると、車椅子5の各車輪5Bは、前側の支持フレーム部122Fと後側の支持フレーム部122Rとロック部127Aとの三点で支持されることになる。
【0079】
次に、車椅子収容体120は自動的に車椅子5を取り出し可能な状態、すなわちロック解除状態とすることができる点について説明する。図19及び図20は、移動機構11により車椅子収容体120を車幅外方向に張り出し、車椅子5を取り出す段階の各ステップを模式的に示している。図19(A)に示すように、車椅子収容体120が移動機構11により降ろされつつある状況下では、車椅子5の各車輪5Bは、前側の支持フレーム部122Fと後側の支持フレーム部122Rとロック部127Aとの三点で支持されている。
【0080】
さらに、移動機構11により車椅子収容体120が降りると、図19(B)に示すように、車椅子5の車輪5Bが路面等に着地する。この状態でも、各車輪5Bは、前側の支持フレーム部122Fと後側の支持フレーム部122Rとロック部127Aとの三点で支持されている。この状態でさらに車椅子収容体120が降りてくると、前側の支持フレーム部122Fが路面等に着地し変形する。この段階で、図20(A)に示すように、後側の支持フレーム部122Rと車輪5Bとには僅かに隙間Δ1が生じる。すると、スプリングコイル130L,130Rが伸びて自動ロック用のフレーム体126が僅かに傾斜部124E,124Hに沿って上昇し、図20(B)に示すように、ロック部127Aと車椅子5の背もたれ部5Cとの間には隙間Δ2が生じる。これにより、隙間Δ2だけ車椅子5を開口側に引き出すことが可能になる。車椅子5を引き出すことによってさらに隙間Δ1が生じて前述の通りロック部127がさらに上昇して隙間Δ2が生じるという現象が繰り返されて車椅子を引き出すことが可能となる。したがって、車椅子5の背もたれ部5Cはロック部127Aの下を通過可能になり、車椅子5がロックされている状態が解除される。なお、図17乃至図20にはスプリングコイル190L,190Rは省略している。
【0081】
第2の実施形態では、車椅子5を固定するために第1の実施形態のように操作レバー29を操作する必要がない。
【0082】
以上、具体的に第1の実施形態では車椅子利用者自身が操作レバーにより車椅子を固定する場合、第2の実施形態では車椅子利用者が車椅子を車椅子収容体に載せるだけで車椅子を収容することができる場合を説明したが、次のような構成を採用しているので、その範囲において適宜変更することもできる。
【0083】
本発明の第1及び第2の実施形態では、車椅子5を出し入れするための開口21A,121Aを有する枠体21,121を備え、枠体21,121が、車椅子5の車輪5Bの外直径より小さい間隔L2で車輪5Bの車軸に沿って前後に並んで配置される一組の支持フレーム部22,122を含んで構成されている。よって、一組の支持フレーム部22,122上に車椅子5が載置されている状態でロックレバー28,127が車椅子5の背もたれ部5Cに当接して、ロックレバー28,127と一組の支持フレーム部22,122とで車椅子5を支持することができる。また、車椅子5の車輪5Bを下側から一組の支持フレーム部22,122で支え、上側からロックレバー28,127により車椅子5の背もたれ部を支えるため、車椅子5が移動しないように車椅子収容体20に収容することができる。即ち、前側の支持フレーム部22F,122Fと後側の支持フレーム部22R,122Rとで車輪5Bを持ち上げると、車椅子5の重心がフロントキャスタ5A側にあるため、車椅子5が前側に倒れるように傾く。その前かがみとなる動きをロックレバー28,127により抑える。
【0084】
さらに、枠体21,121に開口21A,121Aを塞がないようにカバー部材26,122が取り付けられている場合には、車椅子5の車輪5B等の汚れにより車室内が汚れない。さらに、枠体21,121には奥行きに沿ってガイド壁30,131が取り付けられている場合には、車椅子5を開口21A,121Aから押し込むことで、車椅子5を容易に収容することができる。
【0085】
一組の支持フレーム部22,122が前側の支持フレーム部22F,122Fと後側の支持フレーム部22R,122Rとでなり、前側の支持フレーム部22F,122Fが、車椅子5の車輪5Bが前側の支持フレーム部22F,122Fを乗り越えるのに支障のない厚みを有する場合や路面、床面その他の着地面の形状に沿う素材、例えばゴムなどの樹脂で構成されている場合には、着地面の凸凹に難なく追従してその凹凸を吸収することができ、車椅子5を収容体20,120に難なく収容することができる。
【0086】
枠体21が、上側フレーム部材23Uと、上側フレーム部材23Uの左側と連結する左側フレーム部材23Lと、上側フレーム部材23Uの右側と連結する右側フレーム部材23Rと、左側フレーム部材23Lの下側及び右側フレーム部材23Rの下側とを連結する後側の支持フレーム部22Rと、左側フレーム部材22Lと右側フレーム部材22Rとを連結する前側支持フレーム部22Fと、を含んで構成されており、ロックレバー28が左側フレーム部材23L及び右側フレーム部材23Rに揺動可能に取り付けられている。これにより、車椅子5を後ろに押し、車椅子5を収容体20に押し込まれた状態でロックレバー28を降ろすという、車椅子利用者にとって難なくできる操作により車椅子5を収容することできる。
【0087】
枠体121が、上側フレーム部材121Uと、上側フレーム部材121Uの左側と連結する左側フレーム部材121Lと、上側フレーム部材121Uの右側と連結する右側フレーム部材121Rと、左側フレーム部材121Lと右側フレーム部材121Rとを連結する前側支持フレーム部122Fと、を含んで構成される一方、自動ロック用のフレーム体126において後側支持フレーム部122Rとロックレバー127とが左右それぞれ接続され、かつ、連結部材129L,129Rが後側支持フレーム部122Rを左側フレーム部材123Lと右側フレーム部材123Rとにそれぞれ移動可能に装着され、連結部材129L,129Rが斜め上方に付勢されている。これにより、後側支持フレーム部122Rが車椅子5の車輪5Bにより押し下げられて、ロックレバー127により車椅子5が移動しないよう自動的にロックされる。
【0088】
さらに、移動機構11は、車両高さ方向に沿った軸の回りに車椅子収容体20,120を回動する第1の回動機構12と、第1の回動機構12を支持するアーム部14と、車両前後方向に沿った軸の回りにアーム部14を回動する第2の回動機構15と、を備えており、第2の回動機構15がアーム部14を立ち上げた状態では第1の回動機構12は車椅子収容体20をアーム部14より車両後側にあることで車椅子収容体20,120の開口21A,121Aが車幅方向を向き、第2の回動機構15がアーム部14を倒した状態では第1の回動機構12は車椅子収容体20,120を車幅外方向に向けることで車椅子収容体20,120の開口21A,121Aが車両前方を向く。
【0089】
よって、図1に示すように、車椅子収納装置10をコンパクトにできるため、前列シート2であるドライバーシートの後方シート3のみをチップアップするか撤去すればよく、助手席の後方シートには第三者を乗車させ、あるいは荷物を載せることも可能となり、車両1の室内空間を有効活用することができる。また、第1の回動機構12と第2の回動機構15とが連動して車椅子収容体20,120を移動するので、車室内に入れた車椅子収容体20,120を後列シートの脇などに移動することができる。これにより、ドライバーが車椅子利用者であっても、車椅子を折り畳んで、ドライバーシートに移って車両後方に押すだけで、車椅子5を車椅子収容体20,120に収めることができる。
【符号の説明】
【0090】
1:車両
2:前列シート
3:後列シート
5:車椅子
5A:フロントキャスタ(前輪)
5B:車輪
5C:背もたれ部(シートバック)
10:車椅子収納装置
11:移動機構
12:第1の回動機構
12A:回動軸部材
12B:電動モータ
13:ケース
13A:上側の軸部
13B:下側の軸部
13C:コーナー部
14:アーム部
14A:上側アーム部材
14B:下側アーム部材
15:第2の回動機構
16:本体ケース
16A:上側アーム支持部
16B:下側アーム支持部
16C:開口
16D:設置金具
16E:壁部
17:アクチュエータ
17A:アクチュエータ本体部
17B:作動部
17C,17D:回動軸
18,18A,18B:レバー(伝達部材)
20,120:車椅子収容体
21,121:枠体
21A,121A:開口
22,122:一組の支持フレーム部
22F,122F:前側の支持フレーム部
22R,122R:後側の支持フレーム部
23B:後側のフレーム部材
23F,123F:前側のフレーム部材
23L,123L:左側のフレーム部材
23R,123R:右側のフレーム部材
23U,123U:上側のフレーム部材
24A,124A:上側縁部
24B,24C,24F,24I,24K,24L,25A,25B,28B,28C,124B,124C,127B,127C,125A,125B,127A,127B,128A,128B:延長部
24D,124D:左枠部
24E,24H,124E,124H:傾斜部
24G,124G:右枠部
24J:後側のフレーム部
26,122:カバー部材
27:操作部付きロックレバー
28:ロックレバー
28A:ロック部
28D:軸部
28E:プランジャ
29:操作レバー
29A:操作レバー本体部
29B:偏平部
29C:貫通穴
29D:ベアリング
29E:留め具
30,131:ガイド壁
30A,131A:奥側ガイド壁部
30B,131B:右側ガイド壁部
30C,131C:左側ガイド壁部
126:自動ロック用のフレーム体
127:ロックレバー
127E:ボルト
128:後側支持フレーム部材
130L,131R:スプリングコイル(復帰バネ)
132:取付部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車椅子を出し入れするための開口を有する枠体を備え、
上記枠体が、車椅子の車輪の外直径より小さい間隔で該車輪の車軸に沿って前後に並んで配置される一組の支持フレーム部を含んで構成されており、
上記一組の支持フレーム部上に車椅子が載置されている状態でロックレバーが車椅子に当接して、該ロックレバーと上記一組の支持フレーム部とで車椅子が支持される、車椅子収容体。
【請求項2】
さらに、前記枠体に前記開口を塞がないようにカバー部材が取り付けられている、請求項1に記載の車椅子収容体。
【請求項3】
前記枠体には奥行きに沿ってガイド壁が取り付けられている、請求項1に記載の車椅子収容体。
【請求項4】
前記一組の支持フレーム部が前側支持フレーム部と後側支持フレーム部とでなり、
前記前側の支持フレーム部が、路面、床面その他の着地面の形状に沿う素材で構成されている、請求項1に記載の車椅子収容体。
【請求項5】
前記枠体が、上側フレーム部材と、上記上側フレーム部材の左側と連結する左側フレーム部材と、上記上側フレーム部材の右側と連結する右側フレーム部材と、上記左側フレーム部材の下側及び右側フレーム部材の下側とを連結する前記後側支持フレーム部と、上記左側フレーム部材と右側フレーム部材とを連結する前記前側支持フレーム部と、を含み、
前記ロックレバーが上記左側フレーム部材及び上記右側フレーム部材に揺動可能に取り付けられている、請求項4に記載の車椅子収容体。
【請求項6】
前記枠体が、上側フレーム部材と、上記上側フレーム部材の左側と連結する左側フレーム部材と、上記上側フレーム部材の右側と連結する右側フレーム部材と、上記左側フレーム部材と右側フレーム部材とを連結する前記前側支持フレーム部と、を含み、
前記後側支持フレーム部と前記ロックレバーとが左右で接続されており、前記後側支持フレーム部が連結部材でもって上記左側フレーム部材と上記右側フレーム部材とに移動可能に装着されて、上記連結部材が斜め上方に付勢されている、請求項4に記載の車椅子収容体。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかに記載の車椅子収容体と、該車椅子収容体を出し入れする移動手段と、を備えた、車椅子収納装置。
【請求項8】
前記移動手段が、車両高さ方向に沿った軸の回りに前記車椅子収容体を回動する第1の回動機構と、該第1の回動機構を支持するアーム部と、車両前後方向に沿った軸の回りに上記アーム部を回動する第2の回動機構と、を備えており、
上記第2の回動機構が上記アーム部を立ち上げた状態では上記第1の回動機構は前記車椅子収容体を上記アーム部より後側に向けることで前記車椅子収容体の開口が車幅方向を向き、
上記第2の回動機構が上記アーム部を倒した状態では上記第1の回動機構は前記車椅子収容体を車幅外方向に向けることで前記車椅子収容体の開口が車両前方を向く、請求項7に記載の車椅子収納装置。
【請求項1】
車椅子を出し入れするための開口を有する枠体を備え、
上記枠体が、車椅子の車輪の外直径より小さい間隔で該車輪の車軸に沿って前後に並んで配置される一組の支持フレーム部を含んで構成されており、
上記一組の支持フレーム部上に車椅子が載置されている状態でロックレバーが車椅子に当接して、該ロックレバーと上記一組の支持フレーム部とで車椅子が支持される、車椅子収容体。
【請求項2】
さらに、前記枠体に前記開口を塞がないようにカバー部材が取り付けられている、請求項1に記載の車椅子収容体。
【請求項3】
前記枠体には奥行きに沿ってガイド壁が取り付けられている、請求項1に記載の車椅子収容体。
【請求項4】
前記一組の支持フレーム部が前側支持フレーム部と後側支持フレーム部とでなり、
前記前側の支持フレーム部が、路面、床面その他の着地面の形状に沿う素材で構成されている、請求項1に記載の車椅子収容体。
【請求項5】
前記枠体が、上側フレーム部材と、上記上側フレーム部材の左側と連結する左側フレーム部材と、上記上側フレーム部材の右側と連結する右側フレーム部材と、上記左側フレーム部材の下側及び右側フレーム部材の下側とを連結する前記後側支持フレーム部と、上記左側フレーム部材と右側フレーム部材とを連結する前記前側支持フレーム部と、を含み、
前記ロックレバーが上記左側フレーム部材及び上記右側フレーム部材に揺動可能に取り付けられている、請求項4に記載の車椅子収容体。
【請求項6】
前記枠体が、上側フレーム部材と、上記上側フレーム部材の左側と連結する左側フレーム部材と、上記上側フレーム部材の右側と連結する右側フレーム部材と、上記左側フレーム部材と右側フレーム部材とを連結する前記前側支持フレーム部と、を含み、
前記後側支持フレーム部と前記ロックレバーとが左右で接続されており、前記後側支持フレーム部が連結部材でもって上記左側フレーム部材と上記右側フレーム部材とに移動可能に装着されて、上記連結部材が斜め上方に付勢されている、請求項4に記載の車椅子収容体。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかに記載の車椅子収容体と、該車椅子収容体を出し入れする移動手段と、を備えた、車椅子収納装置。
【請求項8】
前記移動手段が、車両高さ方向に沿った軸の回りに前記車椅子収容体を回動する第1の回動機構と、該第1の回動機構を支持するアーム部と、車両前後方向に沿った軸の回りに上記アーム部を回動する第2の回動機構と、を備えており、
上記第2の回動機構が上記アーム部を立ち上げた状態では上記第1の回動機構は前記車椅子収容体を上記アーム部より後側に向けることで前記車椅子収容体の開口が車幅方向を向き、
上記第2の回動機構が上記アーム部を倒した状態では上記第1の回動機構は前記車椅子収容体を車幅外方向に向けることで前記車椅子収容体の開口が車両前方を向く、請求項7に記載の車椅子収納装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2011−250962(P2011−250962A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126298(P2010−126298)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
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