説明

車椅子引き上げ装置

【課題】 回転検出板を使用すること無く、巻取部の回転状態を検出することができる車椅子引き上げ装置を提供する。
【解決手段】 ウインチユニットにドラムの回転を検出する為の検出部51を設け、検出部51に、検出光52を投光する発光部53と反射光54を受光する受光部55と制御回路を設ける。受光部55は、反射光54の強さに応じた電圧の信号を制御回路に出力し、制御回路は、受光部55からの入力電圧に応じて「H」信号又は「L」信号からなる出力信号56を出力する。発光部53からの検出光52がラチェット42の爪歯46へ向けて投光されるように位置決めし、受光部55が爪歯で46反射した反射光54を受光できる箇所に位置決めする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車椅子をベルトで引き上げる車椅子引き上げ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両後部室のフロア面と路面との間にスロープを掛け渡し、車椅子を後部室へ乗り入れる際には、車椅子引き上げ装置が利用されていた(例えば、特許文献1)。
【0003】
この車椅子引き上げ装置は、左右一対のウインチユニットを備えており、各ウインチユニットから引き出されたベルトを車椅子のフレームに係止して、両ウインチユニットを作動することにより、前記スロープに沿った前記車椅子の引き上げを補助できるように構成されている。
【0004】
図4は、一方のウインチユニット701を示す図であり、該ウインチユニット701には、駆動モータ702と、該駆動モータ702に接続されたクラッチ703と、該クラッチ703より延出する回転軸704に接続された巻取部705とが設けられている。該巻取部705には、ベルト706が巻き付けられるように構成されており、前記駆動モータ702を作動して前記ベルト706を巻き取ることによって、該ベルト706に係止された車椅子の引き上げを補助できるように構成されている。
【0005】
前記回転軸704には、ラチェット711が設けられており、ラチェット爪711aと共に、前記巻取部705の逆転を阻止するラチェット機構711bが構成されている。
【0006】
また、前記回転軸704には、図5にも示すように、周縁部に複数のスリット712,・・・を有した回転検出板713が設けられており、フォトセンサ714と共に回転センサ715を構成している。これにより、前記フォトセンサ714が前記回転検出板713の各スリット712を通過する光を検出することで、前記巻取部705の回転数を把握できるように構成されており、左右のウインチユニット701によるベルト706の巻取速度の同期がとれるように構成されている。
【特許文献1】特願2005−094663号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような車椅子引き上げ装置にあっては、ベルトの巻取量を検出するために、ウインチユニット701の回転軸704に巻取部705の回転状態を検出する為の回転検出板713を設けなければならなかった。
【0008】
これにより、部品点数が増加を招くとともに、前記回転検出板713の取り付けに苦労を要した。
【0009】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、回転検出板を使用すること無く、巻取部の回転状態を検出することができる車椅子引き上げ装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために本発明の請求項1の車椅子引き上げ装置にあっては、車椅子引き上げ用のベルトを巻き取る巻取部と、該巻取部と共に回転するラチェットと、前記巻取部の回転状態を検出する検出部とを備えた車椅子引き上げ装置において、前記検出部を、前記ラチェットの周縁に設けられた爪歯へ向けて検出光を投光する発光部と、前記爪歯で反射した前記検出光の反射光を受光して信号を出力する受光部とで構成した。
【0011】
すなわち、巻取部の回転状態を検出する検出部は、検出光を投光する発光部と、前記検出光の反射光を受光して信号を出力する受光部とからなり、前記発光部は、前記巻取部と共に回転するラチェットの爪歯へ向けて前記検出光を投光するように構成されている。
【0012】
このため、前記巻取部と共に前記ラチェットが回転した際には、該ラチェットの周縁に設けられた爪歯も回転し、前記発光部から前記検出光は、各爪歯に投光される毎に当該爪歯で反射する。そして、前記検出光の反射光は、各爪歯で反射される度に前記受光部で受光される。すると、該受光部からは、信号が出力されるので、この信号を検出することによって前記巻取部の回転が検出される。
【0013】
また、請求項2の車椅子引き上げ装置においては、前記発光部は、前記反射光の強さに応じて信号を出力する一方、前記発光部から投光された前記検出光と該検出光が照射される照射面との角度が、前記ラチェットの回転に伴って変化する前記爪歯の箇所に前記検出光を投光した。
【0014】
すなわち、ラチェットが回転した際には、この回転に伴って発光部から投光された検出光と該検出光が照射される照射面との角度が変化する。すると、前記受光部で受光される反射光の光量が可変し、当該受光部からは、この反射光の強さに応じて信号が出力される。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように本発明の請求項1の車椅子引き上げ装置にあっては、巻取部の逆転を防止するラチェットを有効利用することによって、前記巻取部の回転状態を検出することができる。
【0016】
このため、従来のように巻取部の回転軸に回転検出板を別途設けること無く、巻取部の回転状態を検出することができる。よって、前記回転検出板を廃止することができ、部品点数の削減を図ることができるとともに、回転検出板の取り付け作業を廃止することができる。
【0017】
また、請求項2の車椅子引き上げ装置においては、発光部からの検出光と該検出光が照射される照射面との角度がラチェットの回転に伴って変化する箇所に前記検出光を投光することによって、巻取部の回転状態を検出することができる。
【0018】
このため、ラチェットの爪歯において、比較的広い面積を有した傾斜面を前記照射面として利用することができる。よって、面積の狭い箇所を照射面として利用する場合と比較して、取り付け容易性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施の形態を図に従って説明する。図1は、本実施の形態にかかる車椅子引き上げ装置1を備えた車両2を示す図であり、この車椅子引き上げ装置1は、車両2の後部室3のフロア面4と路面5との間に掛け渡されたスロープ6に沿って車椅子7を引き上げる際に、該車椅子7の引き上げを補助する装置である。
【0020】
この車椅子引き上げ装置1は、車室内Iに設けられた図外の後席シートの下部に配置されており、当該車椅子引き上げ装置1のケーシング内には、図2に示すように、対を成すウインチユニット11,11が左右に設けられている。
【0021】
このウインチユニット11は、駆動モータ21を備えており、該駆動モータ21からの出力は、従来例と同様に(図4参照)、クラッチを介して回転軸22に伝達されるように構成されている。この回転軸22には、巻取部としてのドラム23が設けられており、該ドラム23は、中心部を構成する軸部24と、該軸部24の両側部に設けられた鍔部25,25とによって構成されている。前記軸部24には、ベルト26の終端部が固定されており、当該ベルト26を前記軸部24に巻き付けた状態で前記鍔部25,25間に保持できるように構成されている。
【0022】
前記ベルト26の先端には、フック31が設けられており、該フック31を、図1に示したように、前記車椅子7のフレーム32に係止できるように構成されている。これにより、前記ドラム23を回動して前記ベルト26を巻き取るに従って、当該ベルト26に係止された前記車椅子7を前記スロープ6に沿って車室内Iまで案内できるように構成されている。
【0023】
前記各ドラム23の側部には、図2に示したように、ラチェット機構41が設けられており(左方のみ図示)、該ラチェット機構41は、前記回転軸22に固定され前記ドラム23と共に回転するラチェット42と、該ラチェット42と係合する係合爪43とを備えている。前記ラチェット42の周縁には、図3に示すように、半径方向に起立した起立面44と、隣接した起立面44,44の基端と先端とを連設する傾斜面45とを備えた爪歯46が全周に渡って複数形成されており、前記傾斜面45には、メッキが施され光の反射率が高められている。
【0024】
前記係合爪43は、図2に示したように、基端部が回動自在に支持されており、その先端は前記ラチェット42周縁の各爪歯46と係合する方向へ向けてスプリングで付勢されている。これにより、この係合爪43が前記爪歯46の前記起立面44の基端に当接された状態で当該爪歯46と係合することによって、前記ドラム23のベルト巻取方向への回動は許容する一方、前記ドラム23のベルト引出方向への回転は阻止できるように構成されている。
【0025】
そして、前記各ウインチユニット11,11には、前記ドラム23の回転を検出する為の検出部51が設けられており、両ウインチユニット11,11のドラム23,23による各ベルト26,26の巻取速度が等速となるように、両ウインチユニット11,11の駆動モータ21,21を制御できるように構成されている。
【0026】
この検出部51は、図3に示したように、センサー部品によって構成されており、当該検出部51には、検出光52を投光する発光部53と、反射光54を受光する受光部55とを備えるとともに、制御回路を内蔵している。前記受光部55は、前記反射光54の強さに応じた電圧の電気信号を前記制御回路へ出力するように構成されており、該制御回路では、前記受光部55からの入力電圧に応じて「H」信号又は「L」信号からなる出力信号56を、ハーネス57を介して制御装置に出力するように構成されている。
【0027】
前記制御回路では、前記出力信号を「H」信号とする際に前記入力電圧と比較する第1閾値と、「L」信号とする際に前記入力電圧と比較する第2閾値とを任意の値に設定できるように構成されており、前記入力電圧が前記第1閾値より高い場合に「H」信号を出力する一方、前記入力電圧が前記第2閾値より低い場合には「L」信号を出力するように構成されている。
【0028】
この検出部51は、図外の固定ブラケットを介してケーシングに固定されており、この固定状態において、前記発光部53からの検出光52が前記ラチェット42の前記爪歯46へ向けて投光されるように位置決めされている。また、この固定状態において、前記受光部55が、前記爪歯で46反射した前記検出光52の反射光54を受光できる箇所に位置決めされている。
【0029】
また、前記検出光52が照射される照射位置は、前記爪歯46の前記傾斜面45に設定されており、当該ラチェット42が前記回転軸22の回転中心61を中心として回転した際に、前記検出光52の中心である光軸と、該検出光52が照射される前記傾斜面45が構成する照射面との角度αが前記ラチェット42の回転に伴って変化するように構成されている。
【0030】
これにより、この検出部51から出力される出力信号56によって前記ラチェット42と共に回転する前記ドラム23の回転状態を検出できるように構成されており、前記出力信号のH信号又はL信号の入力間隔から前記ドラム23の回転速度を検出することができる。また、前記H信号又はL信号のパルス数から前記ドラム23の回転数を把握できるように構成されている。
【0031】
以上の構成にかかる本実施の形態において、ベルト26を巻き取るドラム23の回転状態を検出する検出部51は、検出光52を投光する発光部53と、前記検出光52の反射光54を受光して電気信号を出力する受光部55とからなり、前記発光部53は、前記ドラム23と共に回転するラチェット42の爪歯46へ向けて前記検出光52を投光するように構成されている。
【0032】
そして、前記ドラム23と共に前記ラチェット42が回転した際には、この回転に伴って前記発光部53から投光された前記検出光52と、該検出光52が照射される照射面である傾斜面45との角度αが変化する。これにより、前記受光部55で受光される前記反射光54の光量が可変し、当該受光部55からは、この反射光54の強さに応じた電圧の信号が制御回路に出力される。
【0033】
すると、この制御回路では、前記受光部55からの入力電圧が予め定められた第1閾値より高い場合には「H」信号を、また前記入力電圧が予め定められた前記第2閾値より低い場合には「L」信号をハーネス57を介して制御装置へ出力する。これにより、当該制御装置では、このハーネス57からの出力信号56に基づいて前記ドラム23の回転状態を検出することができる。
【0034】
このように、前記ドラム23の逆転を防止するラチェット機構の41のラチェット42を有効利用することによって、前記ドラム23の回転状態を検出することができる。
【0035】
このため、従来のようにドラムの回転軸に回転検出板を別途設けること無く、ドラム23の回転状態を検出することができる。よって、前記回転検出板を廃止することができ、部品点数の削減を図ることができるとともに、回転検出板の取り付け作業を廃止することができる。
【0036】
そして、本実施の形態では、前記発光部53からの検出光52と該検出光52が照射される照射面との角度αが前記ラチェット42の回転に伴って変化する傾斜面45に前記検出光52を投光することによって、前記ドラム23の回転状態を検出している。
【0037】
このため、前記ラチェット42の爪歯46において、比較的面積の広い前記傾斜面45を照射面として利用することができる。したがって、前記爪歯46において、面積の狭い例えば起立面44を照射面として利用する構造上、取付時に高い位置決め精度を要する場合と比較して、取り付け容易性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施の形態を示す斜視図である。
【図2】同実施の形態のウインチユニットを示す模式図である。
【図3】同実施の形態の要部を示す拡大図である。
【図4】従来のウインチユニットを示す斜視図である。
【図5】同従来例の回転センサを示す説明図である。
【符号の説明】
【0039】
1 車椅子引き上げ装置
7 車椅子
11 ウインチユニット
23 ドラム
26 ベルト
42 ラチェット
45 傾斜面
46 爪歯
51 検出部
52 検出光
53 発光部
54 反射光
55 受光部
56 出力信号
α 角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車椅子引き上げ用のベルトを巻き取る巻取部と、該巻取部と共に回転するラチェットと、前記巻取部の回転状態を検出する検出部とを備えた車椅子引き上げ装置において、
前記検出部を、前記ラチェットの周縁に設けられた爪歯へ向けて検出光を投光する発光部と、前記爪歯で反射した前記検出光の反射光を受光して信号を出力する受光部とで構成したことを特徴とする車椅子引き上げ装置。
【請求項2】
前記発光部は、前記反射光の強さに応じて信号を出力する一方、
前記発光部から投光された前記検出光と該検出光が照射される照射面との角度が、前記ラチェットの回転に伴って変化する前記爪歯の箇所に前記検出光を投光したことを特徴とする請求項1記載の車椅子引き上げ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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