説明

車椅子用シートベルト装置

【課題】車椅子リフト移送装置に装備される車椅子用シートベルト装置において、従前のプラットホームに対する支持用柱状部材の配設を廃止しながら、車両内に車椅子を乗り入れた後におけるベルト装着作業について簡単なものにする。
【解決手段】ショルダベルト51の係止金具511は、車両内部Mに配設される係止バックル53に連結されることにより支持されるようになっている。また、プラットホーム21が車両外部の乗降位置に位置する場合には、ショルダベルト51の係止金具51は、プラットホーム21に配設される仮留金具63に一時的に仮留めする仮留め連結しておくことができる。これに対して、プラットホーム21が車両内部Mの乗載位置に位置する場合には、ショルダベルト51の係止金具51は、仮留金具63の一時的な仮留め連結から車両内部Mの係止バックル53の固定支持連結に連結状態を変更することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車椅子リフト移送装置に装備され車両に乗載される車椅子に着座する車椅子着座者の身体を拘束する車椅子用シートベルト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の自動車には、車椅子着座者を車椅子ごと乗載する、いわゆる福祉車両と称されるものがある。このような福祉車両は、車椅子着座者を車椅子ごと乗載するために車椅子リフト移送装置が装備されている(下記特許文献1参照)。この車椅子リフト移送装置は、概略、車椅子が載置されるプラットホームと、このプラットホームを車両外部から車両内部にリフト移送するリフト移送機構とを具備する。この車椅子リフト移送装置は、プラットホームを車両外部の道路面まで下ろされるようになっており、道路面に降ろされたプラットホームには車椅子ごと車椅子着座者が載置され、車椅子が載置されたプラットホームは、リフト移送機構により車両内部に入れられ、もって車椅子ごと車椅子着座者を乗載するようにしている。
【0003】
ところで、このように乗載した車椅子着座者にあっても、通常の乗員と同様にシートベルトの装着が要求される。すなわち、特許文献1にて開示される車椅子リフト移送装置にあっては、車椅子着座者の腰部を拘束するラップベルトと、肩口から腰にかけての上半身を拘束するショルダベルトとを具備するシートベルト装置が装備されている。
このシートベルト装置によれば、ラップベルトとショルダベルトとにより車椅子着座者の身体を拘束することができる。ここで、ラップベルトやショルダベルトを装着するには、次のような点に注意して装着作業が行われる。すなわち、ラップベルトやショルダベルトを装着するには、車椅子着座者の身体に確実に当たるように、車椅子のアームレストの下や車椅子の車輪のスポーク間にもベルトを通すことが要される。なお、これらのベルトを通す作業は、車椅子着座者が行うには難しいため、乗載を補助する者(以下、乗載補助員)が行うのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−304767
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、車椅子着座者の上半身を拘束するショルダベルトは、肩口側支持端を車椅子着座者の肩口の上方に配置させておきたい。このため、上記した特許文献1にて開示されるプラットホームには、このショルダベルトの肩口側支持端を支持するための支持用柱状部材が設けられている。しかしながら、このようにプラットホームの片側だけに支持用柱状部材が設けられていると、乗載補助員のベルトを通す作業が行い難いものとなってしまったり、プラットホーム自体のバランスが悪くなってしまったりする問題がある。このようなことから、プラットホームに対する支持用柱状部材の配設を廃止したいという声がある。
他方、ラップベルトやショルダベルトを装着する作業は、上記したようにベルトを通す場所に注意する点があり、作業として煩雑なものとなっている。このようなことから、狭い車両内に車椅子を乗り入れた後においては、ベルト装着作業については簡単なものにしておきたいという要請がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、本発明が解決しようとする課題は、車椅子リフト移送装置に装備され車両に乗載される車椅子に着座する車椅子着座者の身体を拘束する車椅子用シートベルト装置において、従前のプラットホームに対する支持用柱状部材の配設を廃止しながら、車両内に車椅子を乗り入れた後におけるベルト装着作業について簡単なものにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明に係る車椅子用シートベルト装置は、次の手段を採用する。
すなわち、本発明の第1の発明に係る車椅子用シートベルト装置は、車椅子が載置されるプラットホームと該プラットホームを車両外部の乗降位置から車両内部の乗載位置にリフト移送するリフト移送機構とを具備する車椅子リフト移送装置に装備され、該プラットホームに車椅子を積載する載置状態で該車椅子に着座する車椅子着座者の身体を拘束する車椅子用シートベルト装置であって、前記車椅子着座者の腰部を拘束するラップベルト部と、一端が前記車椅子着座者の腰部側となる腰部側支持端と、他端が該車椅子着座者の肩口側となる肩口側支持端とからなり、該車椅子着座者の肩口から腰にかけて斜めに掛けられ該車椅子着座者の上半身を拘束するショルダベルト部とを備え、前記ショルダベルト部の前記腰部側支持端は、前記プラットホームに配設されるプラットホーム側支持部に支持され、前記ショルダベルト部の前記肩口側支持端は、前記プラットホームに配設されるベルト仮留部、および前記車両内部に配設される連結本支持部のいずれに対しても連結可能であり、且つ前記プラットホームの乗降位置および前記プラットホームのリフト移送時に該ベルト仮留部に仮留め連結可能となっており、前記プラットホームが前記乗載位置に位置する場合では、前記ショルダベルト部の前記肩口側支持端は、前記ベルト仮留部との前記仮留め連結から、前記車両内部の前記連結本支持部との固定支持連結に、連結状態を変更可能に構成されていることを特徴とする。
【0008】
この第1の発明に係る車椅子用シートベルト装置によれば、ショルダベルト部の肩口側支持端は、車両内部に配設される連結本支持部に連結されることにより支持されるようになっているので、車椅子リフト移送装置により乗載された車椅子着座者の身体を拘束することができながら、従前のプラットホームに対する支持用柱状部材の配設を廃止することができる。これによって、支持用柱状部材の配設を廃止することによる様々なメリットを享受することができる。例えば、プラットホームに関するバランス向上、軽量化、およびコスト低減を図ることができる。さらに、プラットホームにおける車椅子載置領域は拡大することとなるので、例えば、乗載補助員のベルトを通す作業を行い易くしたり、車両後側視界を良好なものとしたり、載置する車椅子の種類についての許容範囲を拡げたりすることができる。
加えて、プラットホームにはベルト仮留部が配設されているので、プラットホームがリフト移送機構によりリフト移送される前の車両外部の乗降位置に位置する場合には、ショルダベルト部の肩口側支持端は、このベルト仮留部に一時的に仮留めする仮留め連結しておくことができる。これに対して、プラットホームがリフト移送機構によりリフト移送されることにより車両内部の乗載位置に位置する場合には、ショルダベルト部の肩口側支持端は、ベルト仮留部の仮留め連結から車両内部の連結本支持部の固定支持連結に、連結状態を変更することができる。これによって、ショルダベルト部を車椅子着座者の身体に確実に当たるように、車椅子のアームレストの下や車椅子の車輪のスポーク間に通したりする作業を、プラットホームが車両外部の乗降位置に位置する場合に行って、この状態で肩口側支持端を一時的に仮留めしておくことができる。その後、プラットホームが車両内部の乗載位置に位置する場合には、この肩口側支持端は、ベルト仮留部の仮留め連結から、車両内部の連結本支持部の固定支持連結に変更するだけの、簡単な作業とすることができる。
【0009】
第2の発明に係る車椅子用シートベルト装置は、前記第1の発明に係る車椅子用シートベルト装置において、前記ショルダベルト部はバックルに係止する係止金具を備え、前記プラットホームの前記ベルト仮留部と、前記車両内部の前記連結本支持部とは、前記係止金具が係止する共通化部品としての前記バックルにて構成されていることを特徴とする。
この第2の発明に係る車椅子用シートベルト装置によれば、ベルト仮留部と連結本支持部とは、ショルダベルト部に具備される係止金具が係止する共通化部品としてのバックルにて構成されているので、共通化部品によるメリットを享受することができる。すなわち、係止金具を係止するためのバックルを設置するにあたって、製造コストの低減を図ることができる上、設置上の作業性の向上を図ることができる。
【0010】
第3の発明に係る車椅子用シートベルト装置は、前記第1の発明に係る車椅子用シートベルト装置において、前記ショルダベルト部の前記肩口側支持端を、前記ベルト仮留部の仮留め連結から前記連結本支持部の固定支持連結に連結状態を変更するにあたって、前記ベルト仮留部に仮留め連結された前記ショルダベルト部の前記肩口側支持端の位置を、該仮留め連結された位置から上方もしくは後方の位置となる取出し位置に移動させる移動手段が前記ベルト仮留部に設けられていることを特徴とする。
この第3の発明に係る車椅子用シートベルト装置によれば、ベルト仮留部に仮留め連結されたショルダベルト部の肩口側支持端の位置を、仮留め連結された位置から上方もしくは後方の位置となる取出し位置に移動させる移動手段がベルト仮留部に設けられているので、この移動手段によって移動させるだけで、仮留め連結されたショルダベルト部の肩口側支持端の位置を、仮留め連結された位置から上方もしくは後方の位置となる取出し位置に位置させることができる。これによって、ショルダベルト部の肩口側支持端をベルト仮留部の仮留め連結から連結本支持部の固定支持連結に連結状態を変更するにあたって、このショルダベルト部の肩口側支持端を掴み易くすることができる。
【0011】
第4の発明に係る車椅子用シートベルト装置は、前記第3の発明に係る車椅子用シートベルト装置において、前記移動手段は、中間部が前記プラットホームに配設される手摺に対して回転可能に支持される回転式レバーであり、前記回転式レバーの基端側には該回転式レバーの回転を操作する操作部が設けられており、前記回転式レバーの先端側には前記ベルト仮留部が設けられていることを特徴とする。
この第4の発明に係る車椅子用シートベルト装置によれば、回転式レバーの操作部を操作することにより回転式レバーの回転させてベルト仮留部を車両内の取り易い位置に移動させて、このベルト仮留部に一時的に仮留めされる肩口側支持端を取り易い位置に移動させることができる。これによって、移動手段を少ない部材点数の構成とすることができるので、嵩張りを小さく且つ重量を軽くしながら、車両内に車椅子を乗り入れた後のベルト装着作業を、より便利なものとすることができる。
【0012】
第5の発明に係る車椅子用シートベルト装置は、前記第1の発明に係る車椅子用シートベルト装置において、前記プラットホーム側支持部は、前記プラットホームに載置状態の車椅子に対して該車椅子の幅方向の隣接位置に配設され、前記ショルダベルト部の前記肩口側支持端が仮留め連結される前記ベルト仮留部は、前記プラットホーム側支持部に対して、前記プラットホームに載置状態の車椅子を挟んで反対側位置に配設されていることを特徴とする。
この第5の発明に係る車椅子用シートベルト装置によれば、ショルダベルト部の肩口側支持端が仮留め連結されるベルト仮留部は、プラットホーム側支持部に対して、プラットホームに載置状態の車椅子を挟んで反対側位置に配設されているので、ショルダベルト部の肩口側支持端をベルト仮留部に仮留め連結した場合には車椅子着座者の身体を拘束することができ、プラットホームのリフト移送時にシートベルトとして機能させることができる。
【発明の効果】
【0013】
第1の発明に係る車椅子用シートベルト装置によれば、従前のプラットホームに対する支持用柱状部材の配設を廃止しながら、車両内に車椅子を乗り入れた後におけるベルト装着作業について簡単なものにすることができる。
第2の発明に係る車椅子用シートベルト装置によれば、ベルト仮留部と連結本支持部とを共通化部品として構成することによって、製造コスト低減および設置作業性向上を図ることができる。
第3の発明に係る車椅子用シートベルト装置によれば、ショルダベルト部の肩口側支持端をベルト仮留部の仮留め連結から連結本支持部の固定支持連結に連結状態を変更するにあたって、このショルダベルト部の肩口側支持端を掴み易いものとすることができる。
第4の発明に係る車椅子用シートベルト装置によれば、移動手段を少ない部材点数の構成とすることができるので、嵩張りを小さく且つ重量を軽くしながら、車両内に車椅子を乗り入れた後のベルト装着作業を、より便利なものとすることができる。
第5の発明に係る車椅子用シートベルト装置によれば、ショルダベルト部の肩口側支持端をベルト仮留部に仮留め連結した場合には車椅子着座者の身体を拘束することができ、プラットホームのリフト移送時にシートベルトとして機能させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施の形態に関する福祉車両の後側斜視を示す後側斜視図である。
【図2】図1の福祉車両後部側面視を示す側面視図である。
【図3】図1の車椅子用シートベルト装置の第1状態を示す後側模式図である。
【図4】図1の車椅子用シートベルト装置の第2状態を示す後側模式図である。
【図5】図1の車椅子用シートベルト装置の第3状態を示す後側模式図である。
【図6】図1の車椅子用シートベルト装置の第4状態を示す後側模式図である。
【図7】第2の実施の形態に関する福祉車両の後側斜視を示す後側斜視図である。
【図8】図7の車椅子用シートベルト装置の第1状態を示す後側模式図である。
【図9】図7の車椅子用シートベルト装置の第2状態を示す後側模式図である。
【図10】図7の車椅子用シートベルト装置の第3状態を示す後側模式図である。
【図11】図7の車椅子用シートベルト装置の第4状態を示す後側模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1の実施の形態]
以下、本発明に係る車椅子用シートベルト装置を実施するための最良の形態の一つである第1の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、第1の実施の形態に関する福祉車両10の後側斜視を示す後側斜視図である。図2は、図1の福祉車両10後部側面視を示す側面視図である。
図1および図2に示す福祉車両10は、車椅子着座者P(図1および図2には不図示)を車椅子Cごと乗載する車両である。この福祉車両10は、車椅子Cを乗載するように不図示のバックドアが開けられた状態を示している。なお、図示される車椅子Cは一般的に広く利用される車椅子である。また、図示符号Kは、不図示のバックドアが開けられることにより開かれた乗降開き口となっている。
この福祉車両10は、車椅子着座者Pを車椅子Cごと乗載するための車椅子リフト移送装置20が装備されている。この車椅子リフト移送装置20は、概略、プラットホーム21と、リフト移送機構25とを具備する。
プラットホーム21は、車椅子Cが載置されるものであり、車椅子Cを載せるための平板状の載置板22と、この載置板22をスライド移動させるためのスライド機構23とを備える。載置板22の前側には上方に突出する車椅子ストッパ部221が設けられており、載置板22の左右両側にはスライド機構23により案内されるスライドレール222が設けられている。なお、このスライド機構23は、このスライドレール222とともに、プラットホーム21をスライド移送するものである。このスライド移送は、後に説明するリフト移送機構25によるプラットホーム21のリフト移送とともになされる。
また、図2にも示すように、プラットホーム21の右側のスライドレール222上には、手摺24が設けられている。この手摺24は、プラットホーム21に設けられた右側のスライドレール222上に設けられている。この手摺24は、図示前後位置に設けられた2本の柱部241,242と、これらの2本の柱部241,242の上部同士を連結する手掴み部243とを備える。このようにして構成された手摺24は、車椅子着座者Pの手摺として機能するほかアームレストとしても機能する。
リフト移送機構25は、プラットホーム21を車両外部Nの乗降位置から車両内部Mの乗載位置にリフト移送するものである。なお、プラットホーム21の車両外部Nの乗降位置は、図1および図2に示す状態のプラットホーム21の位置である。これに対してプラットホーム21の車両内部Mの乗載位置は、詳細について図示していないが、プラットホーム21が車両内部Mの車室フロアLに載置されている状態のプラットホーム21の位置であり、次に説明するリフト移送機構25によりリフト移送された後の設定位置である。このリフト移送機構25は、概略、固定支持部26と、第1リンク部27と、第2リンク部28とを備える。固定支持部26は、福祉車両10内に固定される部分であり、第1リンク部27を回転可能に支持する。第1リンク部27は、4つの節が設けられた四節リンクであり、一端側が固定支持部26に回転可能に支持され、他端側が第2リンク部28を回転可能に支持している。第2リンク部28は、一端側が第1リンク部27に回転可能に支持され、他端側がスライド機構23を回転可能に支持している。このようにして、リフト移送機構25は、プラットホーム21を車両外部Nの乗降位置から車両内部Mの乗載位置にリフト移送させる。なお、このリフト移送機構25によりプラットホーム21をリフト移送させる際は、スライド機構23によりプラットホーム21をスライド移送している。
【0016】
上記したように構成されて車両内部Mに車椅子Cを乗載する車椅子リフト移送装置20には、車椅子用シートベルト装置30が装備されている。この車椅子用シートベルト装置30は、車両に乗載される車椅子Cに着座する車椅子着座者P(図1および図2には不図示)の身体を拘束するためのものである。
この車椅子用シートベルト装置30は、図1および図2に示すように、概略、ラップベルト装置40と、ショルダベルト装置50と、ベルト仮留め具60とを備える。なお、図3〜図6は福祉車両10を車椅子用シートベルト装置30を含むプラットホーム21を後側から模式的に図示する後側模式図である。ここで図3〜図6に図示される車椅子用シートベルト装置30は、車椅子着座者Pに対するベルト装着順序について順次図示するものである。詳しくは、図3は車椅子用シートベルト装置30のベルト装着第1状態であり、図4は車椅子用シートベルト装置30のベルト装着第2状態であり、図5は車椅子用シートベルト装置30のベルト装着第3状態であり、図6は車椅子用シートベルト装置30のベルト装着第4状態である。
すなわち、ラップベルト装置40は、図4等にも示すように、ラップベルト41によって車椅子着座者Pの腰部を拘束するためのものである。このラップベルト装置40は、概略、ラップベルト41と、リトラクタ42と、係止バックル43とを備える。
ラップベルト41は、本発明に係るラップベルト部に相当するものであり、車椅子着座者Pの腰部を拘束するように車椅子着座者Pの腰回りに延在して配置されるものである。このラップベルト41の基端側はリトラクタ42に巻き取られるようになっている。また、このラップベルト41の先端側には係止バックル43に係止するための係止金具411が取り付けられている。
リトラクタ42は、一般的に広く利用されるシートベルト用のリトラクタである。このリトラクタ42は、図1等にも示すように、プラットホーム21の右側に固定して配設されている。具体的には、リトラクタ42は、プラットホーム21の右側に固定して配設される手摺24の柱部242に、ブラケット421を介して固定して取り付けられている。
これに対して係止バックル43は、図1等に示すように、プラットホーム21の左側に固定して配設されている。この係止バックル43は、リトラクタ42から引き出されたラップベルト41の係止金具411を係止させるものであり、プラットホーム21に適宜固定される配設用ベルト431を介して固定して取り付けられている。
この係止バックル43に係止金具411を係止させた場合には、図4等に示すように、ラップベルト41は車椅子着座者Pの腰部を拘束するように車椅子着座者Pの腰回りに延在し、シートベルトのラップベルト部分が装着された状態となる。
【0017】
ショルダベルト装置50は、図6等にも示すように、ショルダベルト51によって車椅子着座者Pの上半身を拘束するための装置である。このショルダベルト装置50は、概略、ショルダベルト51と、リトラクタ52と、係止バックル53とを備える。なお、後に詳述するが、係止バックル53は、プラットホーム21に対してではなく車両内部Mに配設されるものとなっている。また、この係止バックル53は、共通化部品として構成される上記した係止バックル43と同一構成品となっている。
ショルダベルト51は、本発明に係るショルダベルト部に相当するものであり、車椅子着座者Pの肩口から腰にかけて斜めに掛けられるように延在して配置されるものであり、もって車椅子着座者Pの上半身を拘束する。このショルダベルト51の基端側はリトラクタ52に巻き取られるようになっている。また、このショルダベルト51の先端側には係止バックル53に係止するための係止金具511が取り付けられている。なお、このショルダベルト51の係止金具511は、本発明に係るショルダベルト部の肩口側支持端に相当する部分である。
リトラクタ52は、上記したリトラクタ42と同様、一般的に広く利用されるシートベルト用のリトラクタである。このリトラクタ52は、図1等にも示すように、プラットホーム21に載置状態の車椅子Cに対して車椅子Cの幅方向の隣接位置に配設されており、プラットホーム21の左側に固定して配設されている。具体的には、リトラクタ52は、プラットホーム21に適宜固定される配設用ベルト521を介して固定して取り付けられている。なお、このリトラクタ52は、車椅子リフト移送装置20のプラットホーム21に配設される本発明に係るプラットホーム側支持部に相当する部分である。このため、このリトラクタ52近くのショルダベルト51が、本発明に係るショルダベルト部の腰部側支持端に相当する部分となる。
これに対して係止バックル53は、図1および図2に示すように、福祉車両10の車両内部Mに配設されている。この係止バックル53は、リトラクタ52から引き出されたショルダベルト51の係止金具511を係止させるものである、この係止バックル53は、福祉車両10の車両内部Mの右側の後部ピラー15部分に対して、配設用ベルト531を介して固定して配設されている。
この係止バックル53に係止金具511を係止させた場合には、図6等に示すように、ショルダベルト51は車椅子着座者Pの上半身を拘束するように、車椅子着座者Pの肩口から腰にかけて斜めに掛けられるように延在し、シートベルトのショルダベルト部分が装着された状態となる。なお、この係止バックル53は、本発明に係る車両内部に配設される連結本支持部に相当する部分である。つまり、上記したショルダベルト51の肩口側支持端としての係止金具511を、係止バックル53に連結させることにより、ショルダベルト51は固定支持連結されたものとなって、この係止バックル53にて支持される。
【0018】
次に、ベルト仮留め具60について説明する。このベルト仮留め具60は、プラットホーム21が車両外部Nの乗降位置に位置する場合に、ショルダベルト51の肩口側支持端としての係止金具511を一時的に仮留めするように、この係止金具511を仮留め連結しておくことができる器具である。
このベルト仮留め具60は、図1および図2に示すように、上記した手摺24の手掴み部243に対して設けられるものである。このベルト仮留め具60は、手掴み部243の後端側に配設される回転支持連結部61と、この回転支持連結部61に回転可能に支持される回転式レバー62と、この回転式レバー62の前端側に配設される仮留金具63とを備える。
具体的には、回転支持連結部61は、上記した手摺24に対して、プラットホーム21の内側(図示手掴み部243の左側)位置に配設されている。この回転支持連結部61は、回転式レバー62の中間部を回転可能に軸支するように適宜のブラケット形状を有して形成される。
回転式レバー62は、中間部が回転支持連結部61により回転可能に軸支されるものであり、レバー状に適宜の折曲された丸棒にて形成される。このため、この回転式レバー62は、手摺24に対して回転可能に支持される。この回転式レバー62は、本発明に係る移動手段に相当する部分であり、次に説明する仮留金具63に一時的に仮留め連結されたショルダベルト51の係止金具511(肩口側支持端)の位置を、仮留め連結された位置から掴み易くする上後方取出し位置(図6に記載の2点鎖線位置)に移動させるためのものである。なお、この上後方取出し位置(図6に記載の2点鎖線位置)とは、プラットホーム21が車両内部Mの乗載位置に位置する場合に、車椅子Cが載置されたプラットホーム21の後側にいる乗載補助員が、仮留金具63に一時的に仮留め連結された係止金具511を掴み易い位置に設定されている。このため、後にも説明するが、仮留金具63(ベルト仮留部)に一時的に仮留めする仮留め連結から、係止バックル53(連結本支持部)の固定支持連結に連結状態を変更するにあたって、仮留金具63に一時的に仮留め連結されたショルダベルト51の係止金具511(肩口側支持端)の位置を後側にいる乗載補助員にとって掴み易い位置とすることができる。
ここで、この回転式レバー62の先端側と一致する図示前端側には、本発明に係るベルト仮留部としての仮留金具63が配設されている。この仮留金具63は、上記したリトラクタ52に対して、プラットホーム21に載置状態の車椅子Cを挟んで反対側位置に配設されている。この仮留金具63は、上記した回転式レバー62に対して、プラットホーム21の内側(図示回転式レバー62の左側)位置に配設されている。この仮留金具63は、図示するように、適宜のフック形状を有して形成されており、上記したショルダベルト51の係止金具511を引掛けることができるようになっている。つまり、このベルト仮留部としての仮留金具63には、プラットホーム21が車両外部Nの乗降位置に位置する場合に、ショルダベルト51の肩口側支持端としての係止金具511を、一時的に仮留めするように仮留め連結しておくことができる。
また、この回転式レバー62の基端側と一致する図示後端側には、この回転式レバー62の回転を操作する操作部64が設けられている。この操作部64は、リフト移送機構25がリフト移送することによりプラットホーム21が車両内部Mの乗載位置に位置する場合に、この車椅子Cが載置されたプラットホーム21の後側から乗載補助員が把持操作できるように構成されるものである。
【0019】
次に、上記した第1の実施の形態の車椅子用シートベルト装置30のベルト装着について、図3〜図6を参照しながら説明する。なお、図3〜図5に示すベルト装着第1状態〜ベルト装着第3状態においては、プラットホーム21がリフト移送機構25によりリフト移送される前の、プラットホーム21が車両外部Nの乗降位置に位置する場合に行われる作業である。これに対して、図6に示すベルト装着第4状態においては、プラットホーム21がリフト移送機構25によりリフト移送された後の、プラットホーム21が車両内部Mの乗載位置(車室フロアLに載置されている状態)に位置する場合に行われる作業である。
図3に示すベルト装着第1状態は、プラットホーム21に車椅子Cが載置されている状態となっている。このベルト装着第1状態では、ラップベルト41およびショルダベルト51は、それぞれのリトラクタ42,52に、格納されたままの状態となっている。
図4に示すベルト装着第2状態は、車椅子着座者Pに対してラップベルト41のみが装着された状態となっている。このベルト装着第2状態では、リトラクタ42からラップベルト41が引き出され、このラップベルト41の係止金具411を係止バックル43に係止させている。これにより、ラップベルト41は車椅子着座者Pの腰部を拘束するように車椅子着座者Pの腰回りに延在し、シートベルトのラップベルト部分が装着された状態となる。なお、図示では分かり難いが、ラップベルト41は、車椅子着座者Pの腰部を好適に拘束するように、車椅子Cの車輪のスポーク間に通され且つ車椅子Cのアームレスト下に通されるようになっている。
図5に示すベルト装着第3状態は、ショルダベルト51の係止金具511を、ベルト仮留め具60の仮留金具63に一時的に仮留めする仮留め連結する状態となっている。このベルト装着第3状態では、リトラクタ52からショルダベルト51が引き出され、このショルダベルト51の係止金具511を仮留金具63に引掛けており、これにより一時的に仮留めする仮留め連結したものとなる。なお、図示では分かり難いが、ショルダベルト51のリトラクタ52側(図示左側)にあっては、車椅子着座者Pの上半身を好適に拘束するように、車椅子Cの車輪のスポーク間に通され且つ車椅子Cのアームレスト下に通されるようになっている。
図6に示すベルト装着第4状態は、車両内部Mの係止バックル53(連結本支持部)に係止金具511を係止させる状態となっている。すなわち、ショルダベルト51の係止金具511を、ベルト仮留め具60の仮留金具63に一時的に仮留めされる仮留め連結から、車両内部Mの係止バックル53に固定支持される固定支持連結に、連結状態を変更する。なお、この際、上記したようにプラットホーム21はリフト移送機構25によりリフト移送されており、プラットホーム21は車両内部Mの乗載位置に位置している。ここで、乗載された車椅子Cの後側にいる乗載補助員(不図示)が、上記した回転式レバー62の操作部64を把持して回転操作すると、図6に示すようにベルト仮留め具60の仮留金具63は上後方に移動することとなる。そうすると、この仮留金具63に引っ掛かっていたショルダベルト51の係止金具511も仮留め連結された位置から上後方となる上後方取出し位置に移動して、乗載補助員にとって掴み易くなる上後方取出し位置(図6に記載の2点鎖線位置)に移動することとなる。ここで、乗載補助員は、この係止金具511を掴んで取り、車両内部Mの係止バックル53に固定支持される固定支持連結に、連結状態を変更することとなる。つまり、乗載補助員は、このショルダベルト51の係止金具511を、車両内部Mの係止バックル53に係止させる。
【0020】
上記した第1の実施の形態の車椅子用シートベルト装置30によれば、次のような作用効果を奏することができる。
すなわち、上記した車椅子用シートベルト装置30によれば、ショルダベルト51の係止金具511は、車両内部Mに配設される係止バックル53に連結されることにより支持されるようになっている。このため、車椅子リフト移送装置20により乗載された車椅子着座者Pの身体を拘束することができながら、従前のプラットホーム21に対する支持用柱状部材の配設を廃止することができる。これによって、支持用柱状部材の配設を廃止することに拠る様々なメリットを享受することができる。例えば、プラットホーム21に関するバランス向上、軽量化、およびコスト低減を図ることができる。さらに、プラットホーム21における車椅子載置領域は拡大することとなるので、例えば、乗載補助員のベルトを通す作業を行い易くしたり、車両後側視界を良好なものとしたり、載置する車椅子の種類についての許容範囲を拡げたりすることができる。
加えて、プラットホーム21には仮留金具63が配設されているので、プラットホーム21がリフト移送機構25によりリフト移送される前の車両外部Nの乗降位置に位置する場合には、ショルダベルト51の係止金具51は、この仮留金具63に一時的に仮留めする仮留め連結しておくことができる。これに対して、プラットホーム21がリフト移送機構25によりリフト移送されることにより車両内部Mの乗載位置に位置する場合には、ショルダベルト51の係止金具51は、仮留金具63の一時的な仮留め連結から車両内部Mの係止バックル53の固定支持連結に、連結状態を変更することができる。これによって、ショルダベルト51を車輪のスポーク間に通したり、ショルダベルト51を車椅子着座者Pの身体に確実に当たるように車椅子Cのアームレストの下に通したりする作業を、プラットホーム21が車両外部Nの乗降位置に位置する場合に行って、この状態で係止金具51を一時的に仮留めしておくことができる。その後、プラットホーム21が車両内部Mの乗載位置に位置する場合には、この係止金具51は、仮留金具63の一時的な仮留め連結から、車両内部Mの係止バックル53の固定支持連結に変更するだけの、簡単な作業とすることができる。
上記した車椅子用シートベルト装置30によれば、仮留金具63に一時的に仮留め連結されたショルダベルト51の係止金具51の位置を、掴み易くする上後方取出し位置に移動させる移動手段が仮留金具63に設けられているので、この移動手段によって移動させるだけで、一時的に仮留め連結されたショルダベルト51の係止金具51の位置を、仮留め連結された位置から掴み易くなる上後方取出し位置に位置させることができる。これによって、ショルダベルト51の係止金具51を仮留金具63の仮留め連結から係止バックル53の固定支持連結に連結状態を変更するにあたって、このショルダベルト51の係止金具51を掴み易いものとすることができる。
上記した車椅子用シートベルト装置30によれば、回転式レバー62の操作部64を操作することにより回転式レバー62の回転させて仮留金具63を車両内の取り易い位置に移動させる。このため、この仮留金具63に一時的に仮留めされる係止金具51を取り易い位置に移動させることができる。これによって、回転式レバー62を少ない部材点数の構成とすることができるので、嵩張りを小さく且つ重量を軽くしながら、車両内に車椅子Cを乗り入れた後のベルト装着作業を、より便利なものとすることができる。
【0021】
[第2の実施の形態]
以下、上記した車椅子用シートベルト装置30とは異なる構成となる、本発明に係る車椅子用シートベルト装置を実施するための最良の形態の一つである第2の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、この第2の実施の形態においては、上記した第1の実施の形態にて説明した部分と同一に構成される部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
図7は、第2の実施の形態に関する福祉車両10Aの後側斜視を示す後側斜視図である。また、図8〜図11は福祉車両10Aを車椅子用シートベルト装置30Aを含むプラットホーム21を後側から模式的に図示する後側模式図であり、車椅子着座者Pに対するベルト装着順序について順次図示するものである。詳しくは、図8は車椅子用シートベルト装置30Aのベルト装着第1状態であり、図9は車椅子用シートベルト装置30Aのベルト装着第2状態であり、図10は車椅子用シートベルト装置30Aのベルト装着第3状態であり、図11は車椅子用シートベルト装置30Aのベルト装着第4状態である。
図示するように、車椅子用シートベルト装置30Aは、ラップベルト部72とショルダベルト部73とを1本のウエビング71で構成するものである。すなわち、車椅子用シートベルト装置30Aは、図11等にも示すように、概略、1つのベルト装置70と、ベルト仮留め具80とを備える。
このベルト装置70は、1本のウエビング71にてラップベルト部72とショルダベルト部73との機能を確保するものである。このベルト装置70は、概略、1本のウエビング71と、リトラクタ75と、第1係止バックル76と、第2係止バックル77とを備える。
ウエビング71は、広く利用される3点式シートベルトのウエビングのように構成されるものであり、上記したラップベルト部72とショルダベルト部73とに機能を区分けするために、2つの係止金具721,731が設けられている。
すなわち、リトラクタ75から引き出されたウエビング71の中間部には、第1係止バックル76に係止する第1係止金具721が設けられている。この第1係止金具721は、第1係止バックル76に係止する金具本体722が一体化されるループ部723を備えて構成される。このループ部723は、ウエビング71を移動可能に挿通させるものである。このため、第1係止金具721は、このループ部723によってウエビング71の何れの位置にも位置することができるようになっており、ウエビング71を把持した状態(引っ張った状態)で、第1係止バックル76に金具本体722を係止させることができるものとなっている。なお、この第1係止金具721は、本発明に係るショルダベルト部の腰部側支持端に相当する部分である。
また、ウエビング71の先端側には第2係止バックル77に係止するための第2係止金具731が取り付けられている。この第2係止金具731は、上記した第1の実施の形態のショルダベルト51の係止金具511と同様に構成されるもので、本発明に係るショルダベルト部の肩口側支持端に相当する部分である。
リトラクタ75は、上記したリトラクタ42,52と同様、一般的に広く利用されるシートベルト用のリトラクタである。このリトラクタ75は、図7等にも示すように、プラットホーム21の右側に固定して配設されている。具体的には、リトラクタ75は、図9等にも示すように、プラットホーム21に適宜固定される配設用ブラケット751を介して固定して取り付けられている。
これに対して第1係止バックル76は、図7等に示すように、プラットホーム21の左側に固定して配設されている。この第1係止バックル76は、リトラクタ75から引き出されたウエビング71の第1係止金具721を係止させるものであり、プラットホーム21に載置状態の車椅子Cに対して車椅子Cの幅方向の隣接位置に配設されている。この第1係止バックル76は、プラットホーム21に適宜固定される配設用ベルト761を介して固定して取り付けられている。なお、この第1係止バックル76に第1係止金具721を係止させた場合には、図9等に示すように、ウエビング71の一部が車椅子着座者Pの腰部を拘束するように車椅子着座者Pの腰回りに延在し、シートベルトのラップベルト部分が装着されるようにウエビング71の一部がラップベルト部72として機能する状態となる。
また、第2係止バックル77は、図7および図11に示すように、福祉車両10Aの車両内部Mに配設されている。この第2係止バックル77は、リトラクタ75から引き出されたショルダベルト部73の第2係止金具731を係止させるものである、この第2係止バックル77は、福祉車両10Aの車両内部Mの右側の後部ピラー15部分に対して、配設用ベルト771を介して固定して配設されている。なお、この第2係止バックル77に第2係止金具731を係止させた場合には、図11等に示すように、ウエビング71の一部が車椅子着座者Pの上半身を拘束するように、車椅子着座者Pの肩口から腰にかけて斜めに掛けられるように延在し、シートベルトのショルダベルト部分が装着されるようにウエビング71の一部がショルダベルト部73として機能する状態となる。
【0022】
次に、ベルト仮留め具80について説明する。このベルト仮留め具80は、プラットホーム21が車両外部Nの乗降位置に位置する場合に、ショルダベルト部73の肩口側支持端としての第2係止金具731を一時的に仮留めするように、この第2係止金具731を仮留め連結しておくことができる器具である。
このベルト仮留め具80は、図7および図10に示すように、概略、本発明に係るベルト仮留部としての仮留係止バックル81と、この仮留係止バックル81を引出し可能に結合する引出し用ストラップ部85とを備える。
仮留係止バックル81は、第2係止金具731を係止可能とするバックル構造を有して構成されるものである。この仮留係止バックル81は、上記した第1係止バックル76に対して、プラットホーム21に載置状態の車椅子Cを挟んで反対側位置に配設されている。この仮留係止バックル81は、図7等に示すように、上記したリトラクタ75と隣接するようにプラットホーム21の右側に固定して配設されている。この仮留係止バックル81は、図7および図8に示すように、通常時においては第2係止金具731が係止されており、プラットホーム21に適宜固定される配設用ベルト811を介して固定して取り付けられている。なお、この仮留係止バックル81は、共通化部品として構成されるものであり、上記した第1係止バックル76と第2係止バックル77と同一構成品となっている。
引出し用ストラップ部85は、適宜の輪状に形成されるストラップであり、上記した配設用ベルト811に対して結合している。このため、この引出し用ストラップ部85を引っ張ると、配設用ベルト811と連動するように上記した仮留係止バックル81も引っ張られることとなる。なお、この引出し用ストラップ部85の引っ張りに応じて、仮留係止バックル81が連動して引っ張られ易いようにするために、配設用ベルト811に対する引出し用ストラップ部85の結合位置は、仮留係止バックル81に対して近接する位置に設定されている。
【0023】
次に、上記した第2の実施の形態の車椅子用シートベルト装置30Aのベルト装着について、図8〜図11を参照しながら説明する。なお、図8〜図11に示すベルト装着第1状態〜ベルト装着第3状態においては、プラットホーム21がリフト移送機構25によりリフト移送される前の、プラットホーム21が車両外部Nの乗降位置に位置する場合に行われる作業である。これに対して、図11に示すベルト装着第4状態においては、プラットホーム21がリフト移送機構25によりリフト移送された後の、プラットホーム21が車両内部Mの乗載位置(車室フロアLに載置されている状態)に位置する場合に行われる作業である。
図8に示すベルト装着第1状態は、プラットホーム21に車椅子Cが載置されている状態となっている。このベルト装着第1状態では、ウエビング71(72,73)がリトラクタ75に、格納されたままの状態となっている。なお、この際、ウエビング71(72,73)の先端側に取り付けられる第2係止金具731は、ベルト仮留め具80の仮留係止バックル81に対して係止した状態となっている。
図9に示すベルト装着第2状態は、車椅子着座者Pに対してラップベルト部72のみが装着された状態となっている。このベルト装着第2状態では、リトラクタ75からウエビング71(72,73)が引き出され、このウエビング71(72,73)の第1係止金具721を第1係止バックル76に係止させている。これにより、ラップベルト部72を含むウエビング71は車椅子着座者Pの腰部を拘束するように車椅子着座者Pの腰回りに延在し、シートベルトのラップベルト部分が装着された状態となる。なお、図示では分かり難いが、ラップベルト部72を含むウエビング71は、車椅子着座者Pの腰部を好適に拘束するように、車椅子Cの双方の車輪のスポーク間に通され且つ車椅子Cの双方のアームレスト下に通されるようになっている。なお、この際も、ウエビング71(72,73)の先端側に取り付けられる第2係止金具731は、ベルト仮留め具80の仮留係止バックル81に対して係止したままの状態となっている。
図10に示すベルト装着第3状態は、ベルト仮留め具80の仮留係止バックル81に対して係止したままの第2係止金具731を、一時的に取り外して再び係止させ、これにより一時的に仮留めする仮留め連結する状態となっている。この図10に示すベルト装着第3状態では、これまで車椅子Cの双方の車輪のスポーク間に通され且つ車椅子Cの双方のアームレスト下に通されていた図9に示すベルト装着第2状態から、ショルダベルト部73として機能させるウエビング71のみを、上方に引出し可能に付け替えるものとなっている。すなわち、仮留係止バックル81に係止する第2係止金具731を、一時的に係止を解除して取り外し、次いでショルダベルト部73として機能させるウエビング71のみを通されていた車椅子Cの右側の車輪のスポーク間から外し、さらにショルダベルト部73として機能させるウエビング71のみを通されていた車椅子Cの右側のアームレスト下から外す。そして、これらアームレストと車輪の上から、再び第2係止金具731を仮留係止バックル81に係止させる。このようなショルダベルト部73として機能させるウエビング71を引掛かりを除く作業をベルト装着第4状態に移る前に行うことにより、次に説明するベルト装着第4状態を達成できるものとなっている。この際、ショルダベルト部73の肩口側支持端となる第2係止金具731は、ベルト仮留め具80の仮留係止バックル81に係止することにより一時的に仮留めする仮留め連結する状態となっているので、車椅子着座者Pの身体を拘束することができ、プラットホーム21のリフト移送時に腰回りシートベルトのように機能させることができる。
図11に示すベルト装着第4状態は、車両内部Mの第2係止バックル77(連結本支持部)に第2係止金具731を係止させる状態となっている。すなわち、ショルダベルト部73の第2係止金具731を、ベルト仮留め具80の仮留係止バックル81に一時的に仮留めされる仮留め連結から、車両内部Mの第2係止バックル77に固定支持される固定支持連結に、連結状態を変更する。なお、この際、上記したようにプラットホーム21はリフト移送機構25によりリフト移送されており、プラットホーム21は車両内部Mの乗載位置に位置している。なお、詳細は図示されていないが、ここで乗載された車椅子Cの後側にいる乗載補助員(不図示)が、上記した引出し用ストラップ部85を把持して引き出すと、仮留係止バックル81も後方に引き出されることとなる。そうすると、この仮留金具63に引っ掛かっていたショルダベルト部73の第2係止金具731も仮留め連結された位置から後方となる後方取出し位置に引き出されることとなり、乗載補助員にとって掴み易くなる後方取出し位置に移動することとなる。ここで、乗載補助員は、この第2係止金具731を掴んで取り、車両内部Mの第2係止バックル77に固定支持される固定支持連結に、連結状態を変更することとなる。つまり、乗載補助員は、このショルダベルト部73の第2係止金具731を、車両内部Mの第2係止バックル77に係止させる。
【0024】
上記した第2の実施の形態の車椅子用シートベルト装置30Aによれば、上記した第1の実施の形態の車椅子用シートベルト装置30と同様な作用効果を奏することができる。具体的には、上記した車椅子リフト移送装置20により乗載された車椅子着座者Pの身体を拘束することができながら、従前のプラットホーム21に対する支持用柱状部材の配設を廃止することができるメリットを享受することができる。また、ウエビング71を車輪のスポーク間に通したり、ウエビング71を車椅子着座者Pの身体に確実に当たるように車椅子Cのアームレストの下に通したりする作業を、プラットホーム21が車両外部Nの乗降位置に位置する場合に行うことができる。つまり、プラットホーム21が車両内部Mの乗載位置に位置する場合には、車両内部Mの第2係止バックル77の固定支持連結に変更するだけの、簡単な作業でショルダベルト部73を装着することができる。
また、上記した車椅子用シートベルト装置30Aによれば、第2係止金具731の位置を、仮留め連結された位置から掴み易くなる後方取出し位置に位置させることができる。これによって、ショルダベルト部73の第2係止金具731を仮留係止バックル81の仮留め連結から第2係止バックル77の固定支持連結に連結状態を変更するにあたって、このショルダベルト部73の第2係止金具731を掴み易いものとすることができる。
また、上記した車椅子用シートベルト装置30Aによれば、掴み易くなる後方取出し位置に位置させるにあたっては、引出し用ストラップ部85を引き出すことによりなされるので、非常に簡易な構成とすることができる。これによって、嵩張りを非常に小さく且つ重量を非常に軽くしながら、車両内に車椅子を乗り入れた後のベルト装着作業を、より便利なものとすることができる。
また、上記した車椅子用シートベルト装置30Aによれば、仮留係止バックル81と、第2係止バックル77とは、ショルダベルト部73に具備される第2係止金具731が係止する共通化部品としてのバックルにて構成されているので、共通化部品によるメリットを享受することができる。すなわち、製造コストの低減を図ることができる上、設置上の作業性の向上を図ることができる。
【0025】
なお、本発明に係る車椅子用シートベルト装置にあっては、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜に変更することができる。
例えば、本発明に係る回転式レバーにあっては、中間部がプラットホームに配設される手摺に対して回転可能に支持されるものであれば、上記した実施の形態の形状や構造に限定されることなく、適宜の形状や構造が採用されるものであってよい。
また、これと同様に本発明に係る引出し用ストラップ部にあっては、ベルト仮留部を引出し可能に結合するものであれば、上記した実施の形態の形状や構造に限定されることなく、適宜の形状や構造が採用されるものであってよい。
また、本発明に係るベルト仮留部としての仮留金具63や仮留係止バックル81にあっては、リフト移送時においては車椅子Cに対して隣接位置に配設されるものであった。しかしながら、本発明に係るベルト仮留部の配設位置としては、このような隣接位置に限定されることなく、適宜の位置に配設されるものであってよい。
【符号の説明】
【0026】
10,10A 福祉車両
15 後部ピラー
20 車椅子リフト移送装置
21 プラットホーム
22 載置板
23 スライド機構
24 手摺
25 リフト移送機構
26 固定支持部
27 第1リンク部
28 第2リンク部
30,30A 車椅子用シートベルト装置
40 ラップベルト装置
41 ラップベルト(ラップベルト部)
42 リトラクタ
411 係止金具
43 係止バックル
50 ショルダベルト装置
51 ショルダベルト(ショルダベルト部)
511 係止金具(肩口側支持端)
52 リトラクタ(腰部側支持端、プラットホーム側支持部)
53 係止バックル(連結本支持部)
60 ベルト仮留め具
61 回転支持連結部
62 回転式レバー(移動手段)
63 仮留金具(ベルト仮留部)
64 操作部
70 ベルト装置
71 ウエビング
72 ラップベルト部
73 ショルダベルト部
75 リトラクタ
76 第1係止バックル(プラットホーム側支持部)
77 第2係止バックル(連結本支持部)
80 ベルト仮留め具
81 仮留係止バックル(ベルト仮留部)
85 引出し用ストラップ部(移動手段)
721 第1係止金具(腰部側支持端)
731 第2係止金具(肩口側支持端)
C 車椅子
L 車室フロア
M 車両内部の乗載位置
N 車両外部の乗降位置
P 車椅子着座者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車椅子が載置されるプラットホームと該プラットホームを車両外部の乗降位置から車両内部の乗載位置にリフト移送するリフト移送機構とを具備する車椅子リフト移送装置に装備され、該プラットホームに車椅子を積載する載置状態で該車椅子に着座する車椅子着座者の身体を拘束する車椅子用シートベルト装置であって、
前記車椅子着座者の腰部を拘束するラップベルト部と、一端が前記車椅子着座者の腰部側となる腰部側支持端と、他端が該車椅子着座者の肩口側となる肩口側支持端とからなり、該車椅子着座者の肩口から腰にかけて斜めに掛けられ該車椅子着座者の上半身を拘束するショルダベルト部とを備え、
前記ショルダベルト部の前記腰部側支持端は、前記プラットホームに配設されるプラットホーム側支持部に支持され、
前記ショルダベルト部の前記肩口側支持端は、前記プラットホームに配設されるベルト仮留部、および前記車両内部に配設される連結本支持部のいずれに対しても連結可能であり、且つ前記プラットホームの乗降位置および前記プラットホームのリフト移送時に該ベルト仮留部に仮留め連結可能となっており、
前記プラットホームが前記乗載位置に位置する場合では、前記ショルダベルト部の前記肩口側支持端は、前記ベルト仮留部との前記仮留め連結から、前記車両内部の前記連結本支持部との固定支持連結に、連結状態を変更可能に構成されていることを特徴とする車椅子用シートベルト装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車椅子用シートベルト装置において、
前記ショルダベルト部は、バックルに係止する係止金具を備え、
前記プラットホームの前記ベルト仮留部と、前記車両内部の前記連結本支持部とは、前記係止金具が係止する共通化部品としての前記バックルにて構成されていることを特徴とする車椅子用シートベルト装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車椅子用シートベルト装置において、
前記ショルダベルト部の前記肩口側支持端を、前記ベルト仮留部の仮留め連結から前記連結本支持部の固定支持連結に連結状態を変更するにあたって、前記ベルト仮留部に仮留め連結された前記ショルダベルト部の前記肩口側支持端の位置を、該仮留め連結された位置から上方もしくは後方の位置となる取出し位置に移動させる移動手段が前記ベルト仮留部に設けられていることを特徴とする車椅子用シートベルト装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車椅子用シートベルト装置において、
前記移動手段は、中間部が前記プラットホームに配設される手摺に対して回転可能に支持される回転式レバーであり、
前記回転式レバーの基端側には該回転式レバーの回転を操作する操作部が設けられており、前記回転式レバーの先端側には前記ベルト仮留部が設けられていることを特徴とする車椅子用シートベルト装置。
【請求項5】
請求項1に記載の車椅子用シートベルト装置において、
前記プラットホーム側支持部は、前記プラットホームに載置状態の車椅子に対して該車椅子の幅方向の隣接位置に配設され、
前記ショルダベルト部の前記肩口側支持端が仮留め連結される前記ベルト仮留部は、前記プラットホーム側支持部に対して、前記プラットホームに載置状態の車椅子を挟んで反対側位置に配設されていることを特徴とする車椅子用シートベルト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−173483(P2011−173483A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38153(P2010−38153)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)