説明

車椅子用階段昇降機

【課題】 車椅子の利用者にとって快適であると共に、良好な操作性が得られる車椅子用階段昇降機を提供する。
【解決手段】 車椅子用階段昇降機10によると、伸縮シリンダ5からなる傾斜駆動手段は、クローラ駆動部3に設けた傾斜センサ51からの傾斜検出信号に基づいて、クローラ駆動部3の傾斜検出がなされていない場合には、最大の設定角度(例えば、40°)の中間角度(例えば、20°)で傾斜駆動を停止させ、クローラ駆動部3の傾斜検出がなされた場合には、最大の設定角度まで傾斜駆動を実行し、クローラ駆動部3の傾斜が検出されなくなった場合には、クローラ駆動部3に対する車椅子搭載部2の傾斜角度を減少する駆動を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車椅子を搭載して階段を昇降する車椅子用階段昇降機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車椅子用階段昇降機としては下記特許文献1に記載のものが知られている。この従来技術を図1によって説明する(同図(a)が平地移動状態、同図(b)が階段昇降状態を示している)。この車椅子用階段昇降機1の主要構成は、車椅子搭載部2とクローラ駆動部3からなり、車椅子搭載部2の端部(搭載される車椅子Kの後方側端部)がクローラ駆動部3に対して枢支軸4で枢支され、一端が車椅子搭載部2に軸支されると共に他端がクローラ駆動部3に軸支された伸縮シリンダ5の伸縮動作によって、クローラ駆動部3に対して車椅子搭載部2を傾斜させることができる構成になっている。
【0003】
車椅子搭載部2は、左右に車椅子搭載フロア21を形成し、その下にブリッジ収納空間22が形成されるフレーム20を備え、このフレーム20に前述した伸縮シリンダ5の一端が軸支されている。また、このフレーム20には、例えば前輪1輪,後輪2輪の車輪23A,23Bが装着されており、前述の伸縮シリンダ5を最も縮めた状態では図1(a)に示すように車輪23A,23Bが接地して、クローラ駆動部3を地面から離間させることで、車輪23A,23Bによって平地走行ができるようになっている。
【0004】
そして、車椅子搭載部2には、その端部(搭載される車椅子Kの後方側端部)付近に、保持ハンドル体24がフレーム20に対してほぼ直交するように立設されている。この保持ハンドル体24には上端部に握り部24A及び操作部25が設けられており、車椅子用階段昇降機1の操縦者が握り部24Aを握った状態で操作部25を操作して、前述の伸縮シリンダ5の伸縮操作及びクローラ駆動部3の駆動操作を行うことができるようになっている。また、保持ハンドル体24には安全ベルト26が装備されており、この安全ベルト26を車椅子Kの利用者K1に被着させて連結金具26Aを結合することで車椅子Kを保持ハンドル体24に固定できるようになっている。
【0005】
クローラ駆動部3は、一端が側面視ソリ状に上向く左右一対の軌道フレーム30を有し、この軌道フレーム30の他端部が駆動モータ31と減速機(図示省略)とを一体化する減速機ケース(図示省略)を介して左右に連結され、また、軌道フレーム30間が連結部材を介して左右に連結されることで、フレーム構造の本体を形成しており、この一端側に駆動モータ31の電源となるバッテリ32を搭載している。
【0006】
また、減速機の出力軸である左右一対の駆動軸33にはそれぞれ駆動輪34が取り付けられ、この駆動輪34と軌道フレーム30の一端側ソリ状先端に取り付けられた左右一対の遊動輪35との間にベルトクローラ36が巻装され、このベルトクローラ36は、クローラ駆動部3の下側においては軌道フレーム30に形成された接地ガイド部30A及びソリ状部に形成された傾斜ガイド部30Bに案内されて移動し、上側においては枢支軸4に軸支された押さえローラ37に押さえられて、図1(b)に示すように、階段Sの角部に対して2段以上に跨って接して階段を昇降するようになっている。
【0007】
このような従来の車椅子用階段昇降機1では、平地で、図示省略のブリッジをブリッジ収納空間22から引き出し、このブリッジ上を車椅子Kが乗り上がることで、図1(a)に示すように車椅子搭載フロア21上に車椅子Kを載置する。そして、安全ベルト26を車椅子Kの利用者K1に被着させて連結金具26Aを結合させた後に、操作部25を操作して伸縮シリンダ5を伸張させ、車椅子搭載部2をクローラ駆動部3に対して後傾姿勢にする。
【0008】
その後、階段を上る場合には、操作部25の操作によって駆動モータ31を駆動させて、クローラ駆動部3のソリ状部におけるベルトクローラ36の傾斜を階段の一段目に当てることでクローラ駆動部3を階段上に乗り上げ、図1(b)に示すような状態で階段を上る。また、階段を下りる場合には、クローラ駆動部3のソリ状部とは逆側からベルトクローラ36を階段上に乗せ、図1(b)に示すような状態で階段を下る。
【0009】
【特許文献1】特許2551862号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような従来技術において、車椅子搭載部2のクローラ駆動部3に対する傾斜角度は、階段Sをクローラ駆動部3が上り下りする際(図1(b)に示す状態)に、車椅子搭載フロア21上に搭載された車椅子Kが水平に対して若干後傾姿勢になるように設定されている。すなわち、車椅子用階段昇降機1の上り下り可能な最大階段傾斜角度が35度に設定されている場合には、車椅子搭載部2のクローラ駆動部3に対する傾斜角度を40度に設定して、階段を上り下りする際に車椅子フロア21の水平に対する角度が5度程後傾するように設定しており、これによって、車椅子搭載フロア21上に搭載されている車椅子Kの利用者K1に安心感を与えている。
【0011】
しかしながら、このような従来の車椅子用階段昇降機1によると、階段を上り下りする前後の平地や階段途中の踊り場において、クローラ駆動部3が水平状態に近づくと、クローラ駆動部3に対して車椅子搭載部2は、階段の傾斜角度に若干の後傾角度を加えた角度(階段の傾斜角度が35度の場合は約40度)だけ後傾姿勢になっているので、大きく後ろに傾いた状態になり、車椅子搭載フロア21上に搭載されている車椅子Kの利用者K1は天井に視線を向けるような状態になって快適でない。
【0012】
また、ほぼ水平状態のクローラ駆動部3に対して車椅子搭載部2が大きく後傾姿勢になっている状態では、車椅子搭載部2の保持ハンドル体24が後ろに傾くことによって後方に大きなスペースが必要になり、狭い踊り場等においては充分な操作スペースを確保することができなくなるという問題が生じる。
【0013】
本発明は、このような従来技術が抱える問題を解消して、車椅子の利用者にとって快適であると共に、良好な操作性が得られる車椅子用階段昇降機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような目的を達成するための本発明の特徴は以下のとおりである。
【0015】
階段上を走行可能なベルトクローラを備えると共に、該ベルトクローラを駆動する駆動手段を備えたクローラ駆動部と、車椅子搭載フロアを備え、搭載された車椅子を固定する保持ハンドル体が端部に立設され、該端部にて前記クローラ駆動部の枢支軸に枢支された車椅子搭載部と、前記車椅子搭載フロアに搭載された車椅子が階段昇降中に水平よりやや後傾姿勢になるように前記クローラ駆動部に対して前記車椅子搭載部を設定角度傾斜させる傾斜駆動手段とを備えた車椅子用階段昇降機において、前記クローラ駆動部に設けた傾斜センサからの傾斜検出信号に基づいて、前記傾斜駆動手段は、前記クローラ駆動部の傾斜検出がなされていない場合には、前記設定角度の中間角度で傾斜駆動を停止させ、前記クローラ駆動部の傾斜検出がなされた場合には、前記設定角度まで傾斜駆動を実行し、前記クローラ駆動部の傾斜が検出されなくなった場合には、前記クローラ駆動部に対する前記車椅子搭載部の傾斜角度を減少する駆動を実行することを特徴とする。
【0016】
このような特徴によると、クローラ駆動部に設けた傾斜センサからの傾斜検出信号に基づいて、クローラ駆動部の傾斜検出がなされていない場合、すなわち、クローラ駆動部が平地にある場合には、傾斜駆動手段を駆動させても、クローラ駆動部に対する車椅子搭載部の傾斜角度は設定角度(階段昇降中に車椅子搭載フロアに搭載された車椅子が水平よりやや後傾姿勢になるような傾斜角度)に至らず、その中間角度で傾斜駆動が停止される。したがって、平地では車椅子搭載フロア上の車椅子が大きく後ろ向きに傾斜することはなく、車椅子の利用者に不快感を与えることがない。
【0017】
そして、クローラ駆動部が階段に差し掛かってクローラ駆動部に設けた傾斜センサが傾斜検出信号を出力すると、傾斜駆動手段は傾斜駆動を実行して、クローラ駆動部に対して設定角度まで車椅子搭載部を傾斜させるので、クローラ駆動部が階段を昇降中は車椅子搭載フロアに搭載された車椅子が水平よりやや後傾姿勢になって、車椅子利用者にとって安心且つ安定した状態で階段の昇降を行うことができる。この際に、傾斜センサの傾斜検出角度を前述の中間角度より小さい角度に設定しておくことで、クローラ駆動部が階段を徐々に上り始める際に、車椅子搭載フロアが水平に対して前傾する前に傾斜駆動手段の駆動が実行されて、設定角度の傾斜を確保することが可能になる。
【0018】
また、クローラ駆動部が階段を昇降している状態から床面や踊り場等の平地に至ると、クローラ駆動部の傾斜検出がオンからオフになり、これを検出してクローラ駆動部に対する車椅子搭載部の傾斜角度を減少する駆動がなされる。これによって、クローラ駆動部が踊り場等に至ると直ちに傾斜角度が減少することになって、車椅子搭載部端部の保持ハンドル体は垂直に近い状態に立ち上がるので、車椅子用階段昇降機の後方に大きなスペースを要することもない。
【0019】
前述の傾斜駆動手段の具体例としては、一端が車椅子搭載部に軸支されると共に他端がクローラ駆動部に軸支された伸縮シリンダと、この伸縮シリンダの伸縮動作を制御する制御手段とを備えるものによって構成することができる。これによると、従来技術と同様に、伸縮シリンダの伸縮によってクローラ駆動部に対して車椅子搭載部を傾斜させることができ、これを制御することで前述の動作を実現することができる。
【0020】
更には、前述の制御手段の具体例としては、クローラ駆動部に固定されたリミットスイッチと、クローラ駆動部と車椅子搭載部との枢支軸の回りを車椅子搭載部の傾斜に応じて回動して所定傾斜角度でリミットスイッチを作動させる傾斜位置検出カムとを備えるものによって構成することができる。これによると、前述の中間角度で傾斜駆動を停止させる角度位置の設定を傾斜位置検出カムのカム形態で行い、それによるリミットスイッチの出力によって傾斜駆動の停止を実行することができる。また、制御手段の具体例はこれに限らず、伸縮シリンダの伸縮程度を検出する検出手段を備えるようなものでもよい。
【発明の効果】
【0021】
このような特徴を有する本発明によると、車椅子の利用者にとって快適であると共に、良好な操作性が得られる車椅子用階段昇降機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図2は本発明の実施形態に係る車椅子用階段昇降機を示す説明図である。発明の実施形態に係る車椅子用階段昇降機10の基本構成は、前述した従来技術と何ら変わりがない。したがって、共通箇所には同一符号を付して重複説明を一部省略する。
【0023】
本発明の実施形態に係る車椅子用階段昇降機10は、階段S上を走行可能なベルトクローラ36を備えると共に、ベルトクローラ36を駆動する駆動手段を備えたクローラ駆動部3と、車椅子搭載フロア21を備え、搭載された車椅子Kを固定する保持ハンドル体24が端部に立設され、端部にてクローラ駆動部3の枢支軸4に枢支された車椅子搭載部2と、車椅子搭載フロア21に搭載された車椅子Kが階段昇降中に水平よりやや後傾姿勢になるようにクローラ駆動部3に対して車椅子搭載部2を設定角度傾斜させる傾斜駆動手段とを備える。
【0024】
ここでは、傾斜駆動手段は、一端が車椅子搭載部2に軸支されると共に他端がクローラ駆動部3に軸支された伸縮シリンダ5と、伸縮シリンダ5の伸縮動作を制御する制御手段を備えるものを例示するが、傾斜駆動手段としてはこれに限らず、他の駆動手段でクローラ駆動部3に対して車椅子搭載部2を傾斜させるものであってもよい。そして、この実施形態における制御手段は、制御部(制御回路)50、クローラ駆動部3に設けられる傾斜センサ51、枢支軸4の回りに設けられる傾斜位置センサ52を含み、操作部25からの操作信号と傾斜センサ51,傾斜位置センサ52の検出信号に応じて伸縮シリンダ5の伸縮動作を制御するものである。
【0025】
図3に傾斜位置センサ52の例を示す。この傾斜位置センサ52は、クローラ駆動部3側に固定された2つのリミットスイッチ52A,52Bと、クローラ駆動部3に対して車椅子搭載部2を枢支する枢支軸4の回りを車椅子搭載部2の傾斜に応じて回動して所定傾斜角度でリミットスイッチ52A,52Bを作動させる傾斜位置検出カム52Cを備える。52Dはリミットスイッチ52A,52Bをクローラ駆動部3に固定するための固定部材である。
【0026】
この傾斜位置センサ52によると、クローラ駆動部3に対する車椅子搭載部2の傾斜角度が増大して、リミットスイッチ52A,52Bに対して傾斜位置検出カム52Cが回転すると、傾斜位置検出カム52CのS1点でリミットスイッチ52Aが作動(ON)して伸縮シリンダ5の停止信号が出力される。また、クローラ駆動部3に対する車椅子搭載部2の傾斜角度が減少して、リミットスイッチ52A,52Bに対して傾斜位置検出カム52Cが回転すると、傾斜位置検出カム52CのS2点でリミットスイッチ52Bが作動(ON)して伸縮シリンダ5の停止信号が出力される。クローラ駆動部3に対する車椅子搭載部2の傾斜角度を検出する傾斜位置センサとしては、このような例に限らず、伸縮シリンダ5の伸縮程度を直接検出するようなセンサであっても良い。
【0027】
図4によって、本発明の実施形態に係る車椅子用階段昇降機10の動作を傾斜駆動手段の動作を中心に説明する(以下の説明における符号に関しては、図1〜3の符号を合わせて参照のこと)。
【0028】
同図(a)は、平地Hでの移動・搬送状態を示している。この状態では、伸縮シリンダ5を最も縮めた状態にしてクローラ駆動部3を地面から離間させ、車椅子搭載部2の車輪23A,23Bを接地させて、この車輪23A,23Bによる移動・搬送を可能にしている。車椅子搭載部2に車椅子Kを載せる際には、操作部25の操作によって伸縮シリンダ5を若干伸張してベルトクローラ36を接地させることで機体を地面に固定し、従来技術と同様に車椅子搭載部2のフレームからブリッジを引き出して、車椅子Kをブリッジを介して車椅子搭載部2の車椅子搭載フロア21上に載置させる。
【0029】
そして、安全ベルト26によって車椅子Kを保持ハンドル体24に固定した後、操作部25を操作することで、伸縮シリンダ5を作動させてクローラ駆動部3に対して車椅子搭載部2を傾斜駆動させる。この傾斜駆動が開始されて、クローラ駆動部3に対して車椅子搭載部2の傾斜角度が増大し、設定された中間角度(例えば、20°で)になると、傾斜位置検出カム52CのS1点でリミットスイッチ52Aが作動(ON)して、傾斜駆動が停止される(同図(b)参照)。
【0030】
すなわち、クローラ駆動部3に設けた傾斜センサ51がクローラ駆動部3の水平に対する傾斜を検出していない状態では、操作部25を操作してクローラ駆動部3に対して車椅子搭載部2を傾斜駆動させても、設定された中間角度で傾斜駆動が停止されることになり、車椅子搭載部2が大きく後方に傾斜することによる不快感を車椅子搭載フロア21上に搭載された車椅子Kの利用者に与えることはない。
【0031】
同図(b)に示す状態でクローラ駆動部3を駆動させて、クローラ駆動部3を階段Sに進入させる。そして、同図(c)に示すように、クローラ駆動部3の水平に対する傾斜角度が傾斜センサ51の検出角度(例えば、15°)に達すると、この傾斜センサ51の検出信号に基づいて自動で伸縮シリンダ5の伸張動作が再開され、クローラ駆動部3に対する車椅子搭載部2の傾斜駆動が実行される。
【0032】
ここで、クローラ駆動部3の水平に対する傾斜が徐々に大きくなるが、同時にクローラ駆動部3に対する車椅子搭載部2の傾斜駆動も進行するので、車椅子搭載フロア21の水平に対する角度が下向きなる不安定な状態には至らない。この際、傾斜センサ51の検出角度(例えば、15°)を前述の中間角度(例えば、20°)より小さく設定しておけば、クローラ駆動部3が階段Sを上り始めて車椅子搭載フロア21が水平になる前にクローラ駆動部3に対する車椅子搭載部2の傾斜駆動が再開されることになり、車椅子搭載フロア21上の車椅子利用者に不安感を与えることがない。
【0033】
そして、クローラ駆動部3が階段S上を移動する同図(d)に示す状態では、クローラ駆動部3の水平に対する傾斜角度は階段Sの角度(ここでは、35°)になるが、クローラ駆動部3に対する車椅子搭載部2の傾斜角度は最大の設定角度(例えば、40°)になるので、車椅子搭載フロア21に搭載された車椅子Kは水平よりやや後傾姿勢の状態になり、安定した状態で階段S上を移動することができる。
【0034】
その後、クローラ駆動部3が平地H(踊り場等)に到達して、クローラ駆動部3の水平に対する傾斜角度が小さくなり、傾斜センサ51の検出角度に達すると傾斜センサ51からの検出信号がオンからオフになるので、これに基づいてクローラ駆動部3に対する車椅子搭載部2の傾斜角度を減少する駆動が実行される。そして、クローラ駆動部3に対して車椅子搭載部2の傾斜角度が減少して、傾斜位置検出カム52CのS2点でリミットスイッチ52Bが作動(ON)すると、傾斜駆動が停止されることになる(同図(e)参照)。
【0035】
すなわち、クローラ駆動部3が踊り場等の平地Hに到達すると、速やかに車椅子搭載部2の傾斜角度が減少することになるので、車椅子搭載部2が大きく後方に傾斜することによる不快感を車椅子搭載フロア21上に搭載された車椅子Kの利用者に与えることがなく、また、速やかに保持ハンドル体24が立ち上がるので、狭い踊り場等においても充分な操作スペースを確保することができる。
【0036】
また、階段Sを下る場合も同様であり、図4(e)に示す中間角度(例えば、20°)の状態から、クローラ駆動部3が水平に対して傾斜したことを傾斜センサ51が検出すると、クローラ駆動部3に対して車椅子搭載部2の傾斜駆動が実行されて、最大の設定角度(例えば、40°)になり(図4(d)参照)、また、クローラ駆動部3が平地に至り傾斜センサ51がオンからオフになると、速やかに車椅子搭載部2の傾斜角度が減少することになる。
【0037】
以上説明したとおり、本発明の実施形態に係る車椅子用階段昇降機10によると、伸縮シリンダ5等からなる傾斜駆動手段は、クローラ駆動部3に設けた傾斜センサ51からの傾斜検出信号に基づいて、クローラ駆動部3の傾斜検出がなされていない場合には、最大の設定角度(例えば、40°)の中間角度(例えば、20°)で傾斜駆動を停止させ、クローラ駆動部3の傾斜検出がなされた場合には、最大の設定角度まで傾斜駆動を実行し、クローラ駆動部3の傾斜が検出されなくなった場合には、クローラ駆動部3に対する車椅子搭載部2の傾斜角度を減少する駆動を実行する。これによって、平地Hで車椅子搭載部2が大きく後方に傾斜することによる不快感を車椅子搭載フロア21上に搭載された車椅子Kの利用者に与えることがなく、また、平地Hで後方に余計なスペースを要することもない。したがって、車椅子Kの利用者にとって快適であると共に、良好な操作性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】従来技術(本発明の前提構成)の説明図である。
【図2】本発明の実施形態に係る車椅子用階段昇降機を説明する説明図である。
【図3】本発明の実施形態における傾斜位置センサの例を示す説明図である。
【図4】本発明の実施形態に係る車椅子用階段昇降機の動作を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0039】
1,10 車椅子用階段昇降機
2 車椅子搭載部
20 フレーム
21 車椅子搭載フロア
22 ブリッジ収納空間
23A,23B 車輪
24 保持ハンドル体
25 操作部
26 安全ベルト
3 クローラ駆動部
30 軌道フレーム
31 駆動モータ
32 バッテリ
33 駆動軸
34 駆動輪
35 遊動輪
36 ベルトクローラ
37 押さえローラ
4 枢支軸
5 伸縮シリンダ
50 制御部(制御回路)
51 傾斜センサ
52 傾斜位置センサ
52A,52B リミットスイッチ
52C 傾斜位置検出カム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
階段上を走行可能なベルトクローラを備えると共に、該ベルトクローラを駆動する駆動手段を備えたクローラ駆動部と、
車椅子搭載フロアを備え、搭載された車椅子を固定する保持ハンドル体が端部に立設され、該端部にて前記クローラ駆動部の枢支軸に枢支された車椅子搭載部と、
前記車椅子搭載フロアに搭載された車椅子が階段昇降中に水平よりやや後傾姿勢になるように前記クローラ駆動部に対して前記車椅子搭載部を設定角度傾斜させる傾斜駆動手段とを備えた車椅子用階段昇降機において、
前記クローラ駆動部に設けた傾斜センサからの傾斜検出信号に基づいて、前記傾斜駆動手段は、前記クローラ駆動部の傾斜検出がなされていない場合には、前記設定角度の中間角度で傾斜駆動を停止させ、前記クローラ駆動部の傾斜検出がなされた場合には、前記設定角度まで傾斜駆動を実行し、前記クローラ駆動部の傾斜が検出されなくなった場合には、前記クローラ駆動部に対する前記車椅子搭載部の傾斜角度を減少する駆動を実行することを特徴とする車椅子用階段昇降機。
【請求項2】
前記傾斜駆動手段は、一端が前記車椅子搭載部に軸支されると共に他端が前記クローラ駆動部に軸支された伸縮シリンダと、該伸縮シリンダの伸縮動作を制御する制御手段とを備えることを特徴とする請求項1に記載された車椅子用階段昇降機。
【請求項3】
前記制御手段は、前記クローラ駆動部に固定されたリミットスイッチと、前記枢支軸の回りを前記車椅子搭載部の傾斜に応じて回動して所定傾斜角度で前記リミットスイッチを作動させる傾斜位置検出カムとを備えることを特徴とする請求項2に記載された車椅子用階段昇降機。
【請求項4】
前記制御手段は、前記伸縮シリンダの伸縮程度を検出する検出手段を備えることを特徴とする請求項2に記載された車椅子用階段昇降機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−25822(P2006−25822A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−204478(P2004−204478)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【出願人】(000106634)株式会社サンワ (6)