説明

車載制御システム、無線通信システム、車載制御システムの制御方法、及び統合通信ECU

【課題】OMA DMを使用する車外のサーバが、同一の車両内に設けられた、複数のECUと無線通信を行うことを容易にする。
【解決手段】車載制御システムでは、車両に設けられた複数のECUと、前記車両に設けられ、前記複数のECUと車両内の通信回線を介して接続され、OMA DMに準拠したプロトコルに従って、前記ECUのプログラムを更新するためのデータと、前記複数のECUからログを車両外のサーバが収集するためのデータとのうち、少なくとも一方を該サーバと無線で送受信し、該データに基づいて、該プログラムの更新、及び該ログの収集の少なくとも一方を実行する統合通信ECUと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ECU(Electronic Control Unit)を管理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の自動車等の車両では、多数のECUが用いられている。これらのECUの中には、車外の装置との間で無線通信機能を有しないものがある。
【0003】
無線通信機能を持たないECUや、そのECUが管理する機器に重大な品質問題やトラブルが発生すると、エンジニアや保守者は、ECUを車両から取り出したり、車両に通信ケーブルを接続したりして、調査または修理のための情報をECUから取得する必要があった。このため、ユーザに車両とともに来店してもらったり、エンジニア等が車両の駐車場所まで出張したりする必要があった。
【0004】
ユーザまたはエンジニアに対して、そのような手間がかからないようにするために、ECUとの無線通信を可能とする方法が考えられている。
【0005】
ECUに無線通信機能がなくとも、そのECUに、DCM(Data Communication Module)などの無線通信モジュールを外部接続または内蔵し、非特許文献1に記載されたソフトウェアなどをECUに搭載することで、車外のサーバが、そのECUとの無線通信できるようになる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】“デバイスマネジメントソフトウェア”、[online]、[平成21年11月26日検索]、インターネット、<URL:http://www.nec.co.jp/netsoft/nc7000-dm/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、非特許文献1に記載されたソフトウェア及び無線通信モジュールを使用しても、1つの車両内に多くのECUが設けられている場合、車外のサーバが、それらのECUとの無線通信を可能にすることが困難となる場合があった。
【0008】
特許文献1に記載されたソフトウェアは、OMA DM(Open Mobile Alliance-Device Management)に準拠したデバイス管理規格を採用しているが、この規格は、クライアントが1つの装置であることを前提として、サーバがクライアントを管理するものである。
【0009】
ところが、現在の車両には、多数のECUが搭載されているので、それらをOMA DMのクライアントとする場合、それらの1つ1つに無線通信モジュールおよびソフトウェアを設けなければならない。このため、車外のサーバが、同一の車両内の多くのECUとの無線通信を可能にすることが困難であった。
【0010】
本発明は、OMA DMを使用する車外のサーバが、同一の車両内に設けられた、複数のECUと無線通信を行うことを容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の車載制御システムは、車両に設けられた複数のECUと、前記車両に設けられ、前記複数のECUと車両内の通信回線を介して接続され、OMA DMに準拠したプロトコルに従って、前記ECUのプログラムを更新するためのデータと、前記複数のECUからログを車両外のサーバが収集するためのデータとのうち、少なくとも一方を該サーバと無線で送受信し、該データに基づいて、該プログラムの更新、及び該ログの収集の少なくとも一方を実行する統合通信ECUと、を有する車載制御システムである。
【0012】
本発明の無線通信システムは、本発明の車載制御システムと、前記車両の外に設置され、前記OMA DMに準拠したプロトコルに従って、前記ECUのプログラムを更新するためのデータと、前記複数のECUからログをサーバ自身が収集するためのデータとのうち、少なくとも一方を前記統合通信ECUと無線で送受信するサーバと、を有する。
【0013】
本発明の車載制御システムの制御方法は、複数のECUを備える車両に設けられ、該複数のECUと車両内の通信回線を介して接続された統合通信ECUが、OMA DMに準拠したプロトコルに従って、前記ECUのプログラムを更新するためのデータと、前記複数のECUからログを車両外のサーバが収集するためのデータとのうち、少なくとも一方を該サーバと無線で送受信し、前記データに基づいて、該プログラムの更新、及び該ログの収集の少なくとも一方を実行する、車載制御システムの制御方法である。
【0014】
本発明の統合通信ECUは、複数のECUを備える車両内通信回線で使用される通信プロトコルのデータ形式と、前記OMA DMに準拠したプロトコルのデータ形式とを相互に変換する変換手段と、前記OMA DMに準拠したプロトコルに従って、前記ECUのプログラムを更新するためのデータと、前記複数のECUからログを車両外のサーバが収集するためのデータとのうち、少なくとも一方を該サーバと無線通信手段を介して送受信し、該データに基づいて、該プログラムの更新、及び該ログの収集の少なくとも一方を、前記変換手段を介して実行するデバイス管理手段と、前記データを前記サーバとの間で送受信する無線通信手段と、を有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、統合通信ECUは、OMA DMに準拠したプロトコルに従ってECUのプログラムを更新するためのデータと、複数のECUからログを車両外のサーバが収集するためのデータとのうち、少なくとも一方をサーバと無線で送受信するので、無線通信機能を持たないECUが車両内に複数あっても、その車両に1つの統合通信ECUを設けるだけで、その統合通信ECUを介して、OMA DMを使用するサーバが複数のECUと無線通信することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態の無線通信システムの一構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の無線通信システムの動作を示すシーケンス図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の無線通信システムの動作を示すシーケンス図である。
【図4】本発明の第1の実施形態の無線通信システムの一構成例を示すブロック図である。
【図5】本発明の第1の実施形態の無線通信システムの一構成例を示すブロック図である。
【図6】本発明の第1の実施例の無線通信システムの一構成例を示すブロック図である。
【図7】本発明の第2の実施例の無線通信システムの一構成例を示すブロック図である。
【図8】本発明の第3の実施例の無線通信システムの一構成例を示すブロック図である。
【図9】本発明の第4の実施例の無線通信システムの一構成例を示すブロック図である。
【図10】本発明の第5の実施例の無線通信システムの一構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施形態)
本発明を実施するための第1の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施形態の無線通信システム1の一構成例を示すブロック図である。同図を参照すると、無線通信システム1は、車載制御システム10と、リモートシステムサーバ20とを有する。車載制御システム10と、リモートシステムサーバ20とは、無線通信網30を介して接続される。
【0018】
車載制御システム10は、自動車などの車両に搭載される制御システムである。車載制御システム10は、情報系ECU101などの複数の情報系ECUと、制御系ECU102などの複数の制御系ECUと、統合通信ECU105とを有する。これらのECUは、同じ車両内に搭載される。
【0019】
それぞれの情報系ECUと、統合通信ECUは、情報系LAN103を介して接続され、それぞれの制御系ECUと、統合通信ECUは、制御系LAN104を介して接続される。
【0020】
各情報系ECUは、OS(Operation System)を有し、OS内のプログラムを実行することによりカーナビゲーション装置やオーディオ装置など(不図示)を制御する。
【0021】
各制御系ECUは、OS(Operation System)を有し、OS内のプログラムを実行することによりエンジン、ブレーキ、エアコン、またはメーターなど(不図示)を制御する。また、制御系ECUのうち、少なくとも1以上は、センサーを有し、そのセンサーで所定の物理量を計測したり、計測結果に基づいて故障を検知したりする。制御系ECUは、計測結果や、故障の検知結果などのイベントを時系列でログに記録し、制御系LAN104を介して、ログを統合通信ECU105へ送信する。
【0022】
図1において、各ECUに搭載されているOSや、制御系ECUが有するセンサーは省略している。
【0023】
統合通信ECU105は、情報系LAN IF1051、情報系LAN変換部1052、制御系LAN IF1053、制御系LAN変換部1054、デバイス管理部1055、および無線通信部1059を有する。デバイス管理部1055は、ソフトウェア更新アプリ1056、ログ収集アプリ1057、および機能制限アプリ1058を有する。
【0024】
情報系LAN IF1051は、統合通信ECU105を情報系LAN103に接続して、統合通信ECU105が情報系LAN103を介して情報系ECUと通信を行うための通信インターフェースである。
【0025】
情報系LAN変換部1052は、情報系LAN103の通信プロトコルのデータ形式と、無線通信網30の通信プロトコルのデータ形式とを相互に変換する。
【0026】
制御系LAN IF1053は、統合通信ECU105を制御系LAN104に接続して、統合通信ECU105が制御系LAN104を介して制御系ECUと通信を行うための通信インターフェースである。
【0027】
制御系LAN変換部1054は、制御系LAN104の通信プロトコルのデータ形式と、無線通信網30の通信プロトコルのデータ形式とを相互に変換する。
【0028】
デバイス管理部1055は、OMA DM(open mobile alliance-device management)に準拠した規格におけるクライアントとして動作し、情報系ECUまたは制御系ECUのソフトウェアを更新したり、制御系ECUからログを収集したりする。
【0029】
具体的には、デバイス管理部1055は、ソフトウェア更新アプリ1056を実行することにより、情報系ECUまたは制御系ECUのOSを更新する。更新方法の詳細については、図2で後述する。
【0030】
また、デバイス管理部1055は、ログ収集アプリ1057を実行することにより、制御系ECUが記録したログを収集する。ログの収集方法の詳細については、図3で後述する。
【0031】
デバイス管理部1055は、機能制限アプリ1058を実行することにより、スマートキーを制御するECUのソフトウェアを更新して、スマートキーの機能を制限する。
【0032】
無線通信部1059は、無線通信網30を介してリモートシステムサーバ20と無線通信を行う。
【0033】
リモートシステムサーバ20は、デバイス管理部201を有する。デバイス管理部201は、ソフトウェア更新アプリ202、ログ収集アプリ203、および機能制限アプリ204を有する。リモートシステムサーバ20は、例えば、自動車メーカーのオペレータにより運用される。
【0034】
デバイス管理部201は、OMA DMに準拠した規格におけるサーバとして動作し、情報系ECUまたは制御系ECUのソフトウェアを更新するように指示したり、制御系ECUからのログの収集を指示したりする。
【0035】
具体的には、デバイス管理部201は、ソフトウェア更新アプリ202を実行することにより、統合通信ECU105に、情報系ECUまたは制御系ECUのOSを更新させる。
【0036】
また、デバイス管理部1055は、ログ収集アプリ203を実行することにより、統合通信ECU105に、制御系ECUが記録したログを収集させる。
【0037】
デバイス管理部105は、機能制限アプリ204を実行することにより、統合通信ECU105に、スマートキーの機能を制限させる。
【0038】
図2および図3を参照して、無線通信システム1の動作について説明する。図2は、無線通信システム1が、ソフトウェアの更新を行う動作を示すフローチャートである。
【0039】
この動作は、例えば、リモートシステムサーバ20のオペレータにより、ソフトウェア更新のための操作が行われたときに開始する。
【0040】
デバイス管理部201は、オペレータの操作に従って、ソフトウェアの更新を要求するリクエストを生成する(ステップS1)。デバイス管理部201は、そのリクエストを、OMA DMに準拠したプロトコルで受信できるデータ形式に変換する。デバイス管理部201は、そのデータを、無線通信網30を介して無線通信部1059へ送信する(ステップS2)。
【0041】
無線通信部1059は、デバイス管理部201は、デバイス管理部201から受信したデータを、デバイス管理部1055へ転送する(ステップS3)。
【0042】
デバイス管理部1055は、OMA DMに準拠したプロトコルに従って、ソフトウェア更新のためのデータを無線通信部1059から受信する(ステップS4)。
【0043】
デバイス管理部1055は、ソフトウェア更新アプリ1056を実行し、受信したデータに基づいてソフトウェアの更新処理方法を詳細に設定し、その設定方法でのソフトウェアの更新を要求するリクエストを生成する(ステップS5)。デバイス管理部1055は、そのリクエストを含むデータを情報系LAN変換部1052へ送信する(ステップS6)。
【0044】
情報系LAN変換部1052は、デバイス管理部1055から受信したデータを、情報系LAN103で使用する通信プロトコルで送受信できるデータ形式に変換して、情報系LAN IF1051へ転送する(ステップS7)。
【0045】
情報系LAN IF1051は、情報系LAN変換部1052から受信したデータを情報系ECU101へ転送する(ステップS8)。
【0046】
情報系ECU101は、情報系LAN IF1051から、更新を要求するリクエストを受信する(ステップS9)。情報系ECU101は、そのリクエストに応じて、ソフトウェアを更新する(ステップS10)。ステップS10の後、無線通信システム1は、ソフトウェアを更新するための動作を終了する。
【0047】
統合通信ECU105が、機能制限アプリ1058を実行して、制御系ECUのソフトウェアを更新する場合の動作も、図2に示した動作と同様である。
【0048】
図3は、無線通信システム1が、ログを収集する動作を示すフローチャートである。この動作は、例えば、リモートシステムサーバ20のオペレータにより、ログの収集のための操作が行われたときに開始する。
【0049】
デバイス管理部201は、オペレータの操作に従って、ログの収集を要求するリクエストを生成する(ステップS21)。デバイス管理部201は、そのリクエストを、OMA DMに準拠したプロトコルで受信できるデータ形式に変換し、無線通信網30を介して無線通信部1059へ送信する(ステップS22)。
【0050】
無線通信部1059は、デバイス管理部201は、デバイス管理部201から受信したデータを、デバイス管理部1055へ転送する(ステップS23)。
【0051】
デバイス管理部1055は、OMA DMに準拠したプロトコルに従って、無線通信部1059から、ログ収集のリクエストを含むデータを受信する(ステップS24)。
【0052】
デバイス管理部1055は、ログ収集アプリ1057を実行し、ログの収集方法を詳細に設定し、その設定方法でのログの収集を要求するリクエストを生成する(ステップS25)。デバイス管理部1055は、そのリクエストを含むデータを情報系LAN変換部1052へ送信する(ステップS26)。
【0053】
情報系LAN変換部1052は、デバイス管理部1055から受信したデータを、情報系LANで使用する通信プロトコルで送受信できるデータ形式に変換して、情報系LAN IF1053へ転送する(ステップS27)。
【0054】
情報系LAN IF1053は、情報系LAN変換部1052から受信したデータを情報系ECU101へ転送する(ステップS28)。
【0055】
情報系ECU101は、情報系LAN IF1053から、ログの収集のリクエストを受信する(ステップS29)。情報系ECU101は、そのリクエストに応じて、ログを収集する(ステップS30)。
【0056】
情報系ECU101は、収集したログを、制御系LAN IF1053、制御系LAN変換部1054、デバイス管理部1055、および無線通信部1059を介して、デバイス管理部201へ送信する(ステップS31〜S35)。
【0057】
デバイス管理部201は、無線通信部1059からログを受信し、ログの内容を解析したり、表示したりする(ステップSS36)。ステップS36の後、無線通信システム1は、ログを収集するための動作を終了する。
【0058】
前述したように、統合通信ECU105と、リモートシステムサーバ20との間の無線通信には、OMA DMに対応する通信規格を採用している。このため、図4に示すように、車両の移動により、統合通信ECU105およびリモートシステムサーバ20があるモバイルネットワーク30に接続された状態から、異なるモバイルネットワーク31に接続された状態に移行しても、ローミングにより接続が維持される。従って、統合通信ECU105は、ソフトウェアの更新や、ログの収集の動作を継続することができる。
【0059】
なお、本実施形態では、統合通信ECU105は、情報系ECUおよび制御系ECUを含むECU群を管理する構成としている。しかし、統合通信ECU101が管理するECUは、複数であればよく、それらの種別は制限されない。統合通信ECU101が管理するECUの全てを情報系ECUとしてもよいし、全てを制御系ECUとしてもよい。また、統合通信ECU101が管理するECUには、ボディ系ECUが含まれていてもよい。
【0060】
また、本実施形態では、統合通信ECU105のデバイス管理部1055は、ソフトウェア更新アプリ1056、ログ収集アプリ1057、および機能制限アプリ1058を全て有する構成としている。しかし、デバイス管理部1055は、管理する対象のECUに応じて、必要な数および種類のアプリケーションを有していればよく、アプリケーションの数や種類は限定されない。
【0061】
ログの収集やソフトウェアの更新のほか、OMA DMのプロトコルで可能なサービスを提供するためのアプリケーションを搭載できる。例えば、ECUを遠隔診断するためのアプリケーションや、情報系ECUへマルチメディアデータを送信するためのアプリケーションなどを搭載してもよい。
【0062】
既にアプリケーションが搭載されていても、デバイス管理部1055に、更にアプリケーションを追加することが可能である。例えば、図5に示すように、ソフトウェア更新アプリ1056のみが搭載されている場合を想定する。ログを収集する機能を追加するとき、設計者や開発者は、ログ収集アプリを統合通信ECU105およびリモートシステムサーバ20に追加する。スマートキーなどの機能を制限するサービスを追加するとき、設計者や開発者は、機能制限アプリを統合通信ECU105およびリモートシステムサーバ20に追加する。
【0063】
このように車載制御システム10と車外のリモートシステムサーバ20を接続する処理をデバイス管理部1055で共用することで、個別に接続処理を開発しなくてよくなる。このため、図5に示したように、サービスを追加する場合、開発を効率化できる。
【0064】
本実施形態では、図2および図3に示したように、オペレータによる操作を、ソフトウェア更新、またはログの収集のトリガーとしていたが、所定の時刻になったことや、特定のイベントが発生したことをトリガーとしてもよい。
【0065】
以上説明したように、本実施形態によれば、統合通信ECUは、OMA DMに準拠したプロトコルに従ってECUのプログラムを更新するためのデータと、複数のECUからログを車両外のサーバが収集するためのデータとのうち、少なくとも一方をサーバと無線で送受信するので、無線通信機能を持たないECUが車両内に複数あっても、その車両に1つの統合通信ECUを設けるだけで、その統合通信ECUを介して、OMA DMを使用するサーバが複数のECUと無線通信することが可能となる。
【0066】
(第1の実施例)
図6を参照して、本発明の第1の実施形態の第1の実施例について説明する。図6は、本実施例の無線通信システム1aの一構成例を示すブロック図である。本実施例の無線通信システム1aは、統合通信ECU105がカーナビECUを管理する。
【0067】
図6を参照すると、無線通信システム1aは、車載制御システム10aおよびリモートシステムサーバ20aを有する。車載制御システム10aは、制御系ECUを有さず、カーナビECU101aを含む複数の情報系ECUを有する。
【0068】
また、車載制御システム10aは、情報系LAN IF1051、情報系LAN変換部1052、制御系LAN IF1053、および制御系LAN変換部1054の代わりに、MOST IF1051a、およびMOST変換部1052aを有し、デバイス管理部1055において、ソフトウェア更新アプリ1056のみを有する。
【0069】
そして、情報系ECUと、統合通信ECU105は、MOST(Media Oriented Systems Transport)ネットワーク103aを介して接続されている。
【0070】
リモートシステムサーバ20aは、デバイス管理部201において、ソフトウェア更新アプリ202のみを有する。
【0071】
カーナビECU101aは、カーナビゲーション装置を制御するECUである。MOST IF1051aは、統合通信ECU105をMOSTネットワーク103aに接続して、統合通信ECU105が情報系ECUと、MOSTネットワーク103aを介して通信を行うための通信インターフェースである。
【0072】
MOST変換部1052aは、MOSTネットワーク103aの通信プロトコルのデータ形式と、無線通信網30の通信プロトコルのデータ形式とを相互に変換する。
【0073】
デバイス管理部201は、図2に示した方法で、カーナビECU101aのソフトウェアを更新する。
【0074】
以上説明したように、本実施例によれば、統合通信ECUがサーバから無線で受信したデータでプログラムを更新するので、ECUの中に無線通信機能を持たないECUがあっても、そのECUとサーバとが統合通信ECUを介して無線通信することが可能となる。
【0075】
(第2の実施例)
図7を参照して、本発明の第1の実施形態の第2の実施例について説明する。図7は、本実施例の無線通信システム1bの一構成例を示すブロック図である。本実施例の無線通信システム1bは、統合通信ECU105がエンジン制御ECUからログを収集する。
【0076】
図7を参照すると、無線通信システム1bは、車載制御システム10bおよびリモートシステムサーバ20bを有する。車載制御システム10bは、情報系ECUを有さず、エンジン制御ECU102bを含む複数の制御系ECUを有する。
【0077】
また、車載制御システム10bは、情報系LAN IF1051、情報系LAN変換部1052、制御系LAN IF1053、および制御系LAN変換部1054の代わりに、CAN IF1053b、およびCAN変換部1054bを有し、デバイス管理部1055において、ログ収集アプリ1057のみを有する。
【0078】
そして、情報系ECUと、統合通信ECU105とは、CAN(Controller Area Network)104bを介して接続されている。
【0079】
リモートシステムサーバ20bは、デバイス管理部201において、ログ収集アプリ203のみを有する。
【0080】
エンジン制御ECU102bは、エンジンを制御するECUである。CAN IF1053bは、統合通信ECU105をCAN104bに接続して、統合通信ECU105が情報系ECUと、CAN104bを介して通信を行うための通信インターフェースである。
【0081】
CAN変換部1054bは、CAN104bの通信プロトコルのデータ形式と、無線通信網30の通信プロトコルのデータ形式とを相互に変換する。
【0082】
デバイス管理部201は、図3に示した方法で、エンジン制御ECU102bが記録したログを収集する
以上説明したように、本実施例によれば、ECUで記録されたログを統合通信ECUが無線でサーバへ送信するので、ECUの中に無線通信機能を持たないECUがあっても、そのECUとサーバとが統合通信ECUを介して無線通信することが可能となる。
【0083】
(第3の実施例)
図8を参照して、本発明の第1の実施形態の第3の実施例について説明する。図8は、本実施例の無線通信システム1cの一構成例を示すブロック図である。本実施例の無線通信システム1cは、統合通信ECU105がスマートキーECUの機能を制限する。
【0084】
図8を参照すると、無線通信システム1cは、車載制御システム10cおよびリモートシステムサーバ20cを有する。車載制御システム10cは、情報系ECUを有さず、スマートキーECU102cを含む複数のECUを有する。
【0085】
また、車載制御システム10cは、情報系LAN IF1051、情報系LAN変換部1052、制御系LAN IF1053、および制御系LAN変換部1054の代わりに、LIN IF1053c、およびLIN変換部1054cを有し、デバイス管理部1055において、機能制限アプリ1058のみを有する。
【0086】
そして、情報系ECUと、統合通信ECU105とは、LIN(local interconnect network)104cを介して接続されている。
【0087】
リモートシステムサーバ20cは、デバイス管理部201において、機能制限アプリ204のみを有する。
【0088】
スマートキーECU102cは、スマートキー装置を制御するECUである。LIUN IF1053cは、統合通信ECU105をLINネットワーク104aに接続して、統合通信ECU105がスマートキーECU102cと、LINネットワーク104cを介して通信を行うための通信インターフェースである。
【0089】
LIN変換部1054cは、LINネットワーク104cの通信プロトコルのデータ形式と、無線通信網30の通信プロトコルのデータ形式とを相互に変換する。
【0090】
車両が盗難されて、自動車メーカーのサービスオペレータがエンドユーザーからの要求によって、スマートキーの機能をロックする場面を想定する。この場合、エンドユーザーからの盗難通知を受けた自動車メーカーのサービスオペレータは、機能の制限を要求するための操作を行う。デバイス管理部201は、操作に応じて、図2に示した方法で、スマートキーの機能を制限する。
【0091】
以上説明したように、本実施例によれば、機能制限のリクエストを統合通信ECUが無線で受信し、スマートキーの機能を制限するので、ECUの中に無線通信機能を持たないECUがあっても、車外から機能制限を行うことができる。
【0092】
(第4の実施例)
図9を参照して、本発明の第1の実施形態の第4の実施例について説明する。図9は、本実施例の無線通信システム1dの一構成例を示すブロック図である。本実施例の無線通信システム1cは、既存のソフトウェア更新機能を流用している。
【0093】
図9を参照すると、無線通信システム1dは、車載制御システム10dおよびリモートシステムサーバ20dを有する。車載制御システム10dは、ソフトウェア更新プログラム1056の代わりに、ソフトウェア更新アプリ1056dを有する。
【0094】
このソフトウェア更新アプリ1056dは、情報系LAN変換部1052に直接接続されている。デバイス管理部1055は、ソフトウェア更新アプリ1056dを介して、情報系LAN変換部1052と接続される。
【0095】
スマートシステムサーバ20dは、ソフトウェア更新アプリ202の代わりに、ソフトウェア更新アプリ202dおよび情報系LAN変換部205を有する。
【0096】
ソフトウェア更新アプリ202dは、オペレータの操作に従って、更新を要求するリクエストを生成し、そのリクエストを情報系LAN変換部205へ送信する。情報系LAN変換部205は、リクエストを情報系LANのプロトコルで送受信可能なデータに変換して、無線通信部1059へ送信する。
【0097】
デバイス管理部1055は、無線通信部1059を介して受信したデータをソフトウェア更新アプリ1056dへ転送する。
【0098】
ソフトウェア更新アプリ1056dは、情報系ECUのソフトウェアの更新方法を詳細に設定し、情報系LAN変換部1052および情報系LAN IF1051を介して、情報系ECU101に対し、ソフトウェアの更新を要求する。情報系ECU101は、要求に応じて、ソフトウェアの更新を実行する。
【0099】
以上説明したように、本実施例によれば、ソフトウェア更新アプリ1056d、ソフトウェア更新アプリ202d、および情報系LAN変換部1052が既に無線通信システム1に存在している場合、これらに、デバイス管理部1055等を追加するだけで、ログ収集機能や、機能制限サービスを容易に追加することができる。
【0100】
(第5の実施例)
図10を参照して、本発明の第1の実施形態の第5の実施例について説明する。図10は、本実施例の無線通信システム1eの一構成例を示すブロック図である。本実施例の無線通信システム1eは、統合通信ECU105がハイブリッド制御ECUを管理する。
【0101】
図10を参照すると、無線通信システム1eは、車載制御システム10eおよびリモートシステムサーバ20eを有する。車載制御システム10eは、エンジン制御ECU102bの代わりに、ハイブリッド制御ECU102eを有する。
【0102】
また、車載制御システム10eは、デバイス管理部1055において、ログ収集アプリ1057を更に有する。
【0103】
リモートシステムサーバ20bは、デバイス管理部201において、ログ収集アプリ203を更に有する。
【0104】
ハイブリッド制御ECU102eは、ハイブリッドシステムを制御するECUである。
【0105】
デバイス管理部1055は、図3に示した方法で、ハイブリッド制御ECU102eが記録したログを収集し、図2に示した方法でハイブリッド制御ECU102eのソフトウェアを更新する。
【0106】
本実施例の無線通信システム1eの利用方法の一例について説明する。例えば、自動車メーカーの走行試験者がハイブリッドECU102eの制御ソフトウェアの更新をする場合を想定する。
【0107】
走行試験者は、車載制御システム10eが搭載された車両に乗り、試験走行を行う。そして、走行試験者は、リモートシステムサーバ20eにおいて、ログを収集するための操作を行う。
【0108】
デバイス管理部1055は、図3に示した方法で、ハイブリッド制御ECU102eが記録したログを収集する。
【0109】
走行試験者は、収集されたログを閲覧して、ハイブリッド制御に最適な設定のソフトウェアを選択し、リモートシステムサーバ20eにおいて、選択したソフトウェアで更新するための操作を行う。
【0110】
デバイス管理部1055は、図2に示した方法でハイブリッド制御ECU102eのソフトウェアを更新する。
【0111】
このように、ログの収集と、ソフトウェアの更新を繰り返すことにより、ハイブリッド制御が最適化される。
【0112】
以上説明したように、本実施例によれば、ハイブリッドシステムを制御するECUに無線通信機能がなくとも、そのECUと無線通信することが可能となり、更にハイブリッドシステムの制御を最適化することが容易となる。
【符号の説明】
【0113】
1、1a、1b、1c、1d、1e 無線通信システム
10、10a、10b、10c、10d、10e 車載制御システム
20、20a、20b、20c、20d、20e リモートシステムサーバ
30 無線通信網
31、32 モバイルネットワーク
101 情報系ECU
102 制御系ECU
103 情報系LAN
104 制御系LAN
105 統合通信ECU
201 デバイス管理部
202 ソフトウェア更新アプリ
203 ログ収集アプリ
204 機能制限アプリ
1051 情報系LAN IF
1052 情報系LAN変換部
1053 制御系LAN IF
1054 制御系LAN変換部
1055 デバイス管理部
1056 ソフトウェア更新アプリ
1057 ログ収集アプリ
1058 機能制限アプリ
1059 無線通信部
101a カーナビECU
103a MOST
1051a カーナビECU
1052a MOST変換部
102b エンジン制御ECU
104b CAN
1053b CAN IF
1054b CAN変換部
102c スマートキーECU
104c LIN
1053c LIN IF
1054c LIN変換部
1056d ソフトウェア更新アプリ
202d ソフトウェア更新アプリ
205 情報系LAN変換部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられた複数のECUと、
前記車両に設けられ、前記複数のECUと車両内の通信回線を介して接続され、OMA DMに準拠したプロトコルに従って、前記ECUのプログラムを更新するためのデータと、前記複数のECUからログを車両外のサーバが収集するためのデータとのうち、少なくとも一方を該サーバと無線で送受信し、該データに基づいて、該プログラムの更新、及び該ログの収集の少なくとも一方を実行する統合通信ECUと、
を有する車載制御システム。
【請求項2】
前記統合通信ECUは、
車両内の通信回線で使用される通信プロトコルのデータ形式と、前記OMA DMに準拠したプロトコルのデータ形式とを相互に変換する変換部と、
前記OMA DMに準拠したプロトコルに従って、前記ECUのプログラムを更新するためのデータと、前記複数のECUからログを車両外のサーバが収集するためのデータとのうち、少なくとも一方を該サーバと無線通信部を介して送受信し、該データに基づいて、該プログラムの更新、及び該ログの収集の少なくとも一方を、前記変換部を介して実行するデバイス管理部と、
前記データを前記サーバとの間で送受信する無線通信部と、
を有する、請求項1に記載の車載制御システム。
【請求項3】
前記複数のECUは、カーナビゲーション装置を制御するカーナビECUを含み、
前記統合通信ECUは、前記カーナビECUのプログラムの更新を実行する、請求項1又は2に記載の車載制御システム。
【請求項4】
前記複数のECUは、エンジンを制御するエンジン制御ECUを含み、
前記統合通信ECUは、前記エンジン制御ECUからのログの収集を実行する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車載制御システム。
【請求項5】
前記複数のECUは、スマートキー装置を制御するスマートキーECUを含み、
前記統合通信ECUは、前記スマートキーECUの機能を制限するためのデータを前記サーバから無線で受信し、該データに基づいてスマートキーECUの機能を制限する、該請求項1乃至4のいずれか1項に記載の車載制御システム。
【請求項6】
前記複数のECUは、ハイブリッドシステムを制御するハイブリッド制御ECUを含み、
前記統合通信ECUは、前記ハイブリッド制御ECUのプログラムを更新するとともに、該ハイブリッド制御ECUからログを収集する、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の車載制御システム。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の車載制御システムと、
前記車両の外に設置され、前記OMA DMに準拠したプロトコルに従って、前記ECUのプログラムを更新するためのデータと、前記複数のECUからログをサーバ自身が収集するためのデータとのうち、少なくとも一方を前記統合通信ECUと無線で送受信するサーバと、
を有する無線通信システム。
【請求項8】
複数のECUを備える車両に設けられ、該複数のECUと車両内の通信回線を介して接続された統合通信ECUが、OMA DMに準拠したプロトコルに従って、前記ECUのプログラムを更新するためのデータと、前記複数のECUからログを車両外のサーバが収集するためのデータとのうち、少なくとも一方を該サーバと無線で送受信し、
前記データに基づいて、該プログラムの更新、及び該ログの収集の少なくとも一方を実行する、車載制御システムの制御方法。
【請求項9】
複数のECUを備える車両内通信回線で使用される通信プロトコルのデータ形式と、前記OMA DMに準拠したプロトコルのデータ形式とを相互に変換する変換手段と、
前記OMA DMに準拠したプロトコルに従って、前記ECUのプログラムを更新するためのデータと、前記複数のECUからログを車両外のサーバが収集するためのデータとのうち、少なくとも一方を該サーバと無線通信手段を介して送受信し、該データに基づいて、該プログラムの更新、及び該ログの収集の少なくとも一方を、前記変換手段を介して実行するデバイス管理手段と、
前記データを前記サーバとの間で送受信する無線通信手段と、
を有する統合通信ECU。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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