説明

車載用電子装置およびその音楽データの音声認識辞書生成方法

【課題】 音声による指示に基づいて楽曲選択を可能とするオーディオ再生機能を備えた「車載用電子装置およびその音楽データの音声認識辞書生成方法」において、異なるデバイスに格納されている音楽データに対する音声認識辞書の作成が競合した場合の解決策を提供する。
【解決手段】 HDD内の音楽データおよび接続された外部デバイス内の音楽データから、楽曲選択のための音声認識辞書を生成する際に、音声認識辞書の生成における音楽データ格納デバイス単位での辞書生成進捗度を測定し、一方のデバイスの音楽データに対して音声認識辞書が生成されているときに、他方のデバイスの音楽データに対する音声認識辞書の生成要求がなされた場合に、その辞書生成進捗度に応じて、優先的に音声認識辞書を生成する音楽データの格納デバイスを決定し、決定された音楽データ格納デバイスを、その音楽データの音声認識辞書の生成が優先的になるように処理の対象デバイスを切換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用電子装置に関し、特に、音声による指示に基づいて楽曲選択を可能とするオーディオ再生機能を備えた車載用電子装置およびその音楽データの音声認識辞書生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車載用のAV(Audio Visual)機器やAV再生機能を搭載したナビゲーション装置などの車載用電子装置における多機能化が進んでいる。その音楽再生性能に関しては、音声楽曲検索(または、SBV(Song By Voice)とも言う)と称される、楽曲選択をユーザの音声によって行わせる技術が採用されてきており、運転に視覚を奪われるドライバーに取っては利便性が高いことから、一層の普及が期待されている。
【0003】
音声楽曲検索による楽曲選択を実現するためには、音楽データに格納されているメタ情報に基づいて、音声認識用の辞書を事前に生成する必要がある。そして電子装置に内蔵したHDD(Hard Disk Drive)などの大容量記憶デバイスに格納される音楽データの曲数によっては、すべての楽曲の辞書生成が完了するまでには分オーダーの時間が必要になる。通常、車載用電子装置に音楽CD(Compact Disc)を挿入すると、そこに格納されている音楽データは、その再生と並行してバックグラウンドで内蔵HDDにリッピングされるので、新しい音楽CDが再生されるたびに音声楽曲検索による音声認識辞書の生成作業が行われることになる。
【0004】
その一方で、mp3(MPEG Audio Layer-3:デジタル音声のための圧縮音声ファイルフォーマットの一種)などの普及によって、携帯型の音楽プレイヤーで音楽を聴いたり、USBメモリー(Universal Serial Busメモリー:USB規格のインタフェースを介して電子装置に接続可能な補助記憶装置)に音楽データを格納して持ち運んだりすることが一般的に行われている。このことから、近年の車載用電子装置においては、これら外部のデータ格納デバイスを接続するためのインタフェースを備え、そこに格納された音楽データを読み出して機器側で再生できるようにしたものがある。そしてこのような外部デバイスにおける音楽データを生成する際にも、前記音声楽曲検索による楽曲選択が望まれており、従って、電子装置側では、この種の外部デバイスが接続されそのデバイスが再生メディアとして選択された場合には、その再生に先立って音声認識辞書を生成する必要が生じる。
【0005】
この音声認識辞書の生成に関して、従来、以下のような問題がある。すなわち、内蔵HDDに格納された音楽データに対する音声認識辞書の生成が行われている最中に、ユーザが携帯音楽プレイヤーなどの外部デバイスを接続してその再生をおこなおうとした場合、システムは内蔵HDDの音楽データに対する音声認識辞書の生成を完了させてから、接続された外部デバイスの音楽データに対する音声認識辞書の生成を開始することになる。したがって、内蔵HDDの音楽データに対する辞書生成の進捗状況によっては、外部デバイスにおける音楽データに対する音声楽曲検索の利用を開始できるまでに分オーダーでの時間が掛かるという問題が生じる。また、外部デバイスにおける音楽データの辞書を生成中に、音楽CDが挿入されてその再生が所望された場合にも、外部デバイスにおける音楽データの辞書生成が完了してからHDDにリッピングされたデータに対する辞書生成が行われることとなるので、この場合にも再生を所望された音楽データに対する音声楽曲検索の利用までに時間が掛かるという問題がある。
【0006】
本件に関連してナビゲーション用の音声認識に掛かる時間を短縮する技術が、特許文献1に記載されている。すなわち特許文献1には、その重要度で認識対象語彙を多段に分けて1つの辞書に対する検索時間を短縮する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−62199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしこの技術は、一の辞書における語彙数を少なくして音声入力時における辞書検索時間を短くするものであって、本件で問題となっている辞書生成のための生成時間を短縮することに利用することはできない。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、音声楽曲検索による楽曲選択に掛かる音声認識辞書を生成する時間を短縮して、その利用が迅速にできるようにする車載用電子装置およびその音楽データの音声認識辞書生成方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る車載用電子装置は、音声による指示に基づいて楽曲選択を可能とするオーディオ再生手段と、多数の音楽データを蓄積する音楽データ記憶手段と、音楽データを蓄積した外部デバイスを接続して、その音楽データを前記オーディオ再生手段に読み出し可能とする外部デバイス接続手段と、前記音楽データ記憶手段内の音楽データおよび前記外部デバイス内の音楽データから、前記楽曲選択のための音声認識辞書を生成する音声認識辞書生成手段と、前記音声認識辞書生成手段における音楽データ格納デバイス単位での辞書生成進捗度を測定する辞書生成進捗度測定手段と、一の音楽データ格納デバイスの音楽データに対して音声認識辞書が生成されているときに、他の音楽データ格納デバイスの音楽データに対する音声認識辞書の生成要求がなされた場合に、前記辞書生成進捗度測定手段による辞書生成進捗度に応じて、優先的に音声認識辞書を生成する音楽データの格納デバイスを決定する優先デバイス決定手段と、前記優先デバイス決定手段により決定された音楽データ格納デバイスを、その音楽データが優先的に前記音声認識辞書生成手段により処理されるようにするデバイス切換え手段とを有する。
【0011】
好ましくは、前記優先デバイス決定手段は、前記外部デバイス接続手段に音楽データを蓄積した外部デバイスが接続されたときに、そのデータ格納デバイスに対する音声認識辞書の生成要求がなされたと判断して、優先的に音声認識辞書を生成する音楽データの格納デバイスを決定するものである。また、好ましくは、前記優先デバイス決定手段は、前記オーディオ再生手段による音楽データの再生対象として一の音楽データ格納デバイスが選択されたときに、そのデータ格納デバイスに対する音声認識辞書の生成要求がなされたと判断して、優先的に音声認識辞書を生成する音楽データの格納デバイスを決定するものである。
【0012】
また好ましくは、前記優先デバイス決定手段は、優先的に音声認識辞書を生成するよう決定された以外の音楽データ格納デバイスを、前記音声認識辞書生成手段による辞書生成を要求する待ち行列に入れて、優先された音楽データ格納デバイスにおける処理が終了した後に、前記待ち行列に入れられたデバイスが順次辞書生成の対象となるようにする。
【0013】
前記辞書生成進捗度測定手段は、好ましくは、前記音楽認識辞書生成手段による単位音楽データの平均処理時間に基づく、対象の音楽データ格納デバイスにおける音楽データの処理に必要な辞書生成予想時間と、辞書生成処理開始からの経過時間とからその進捗度を測定するものである。
【0014】
本発明はまた、音声による指示に基づいて楽曲選択を可能とするオーディオ再生手段と、多数の音楽データを蓄積する音楽データ記憶手段と、音楽データを蓄積した外部デバイスを接続して、その音楽データを前記オーディオ再生手段に読み出し可能とする外部デバイス接続手段とを有するナビゲーション装置における音楽データの音声認識辞書生成方法であって、前記音楽データ記憶手段内の音楽データおよび前記外部デバイス内の音楽データから、前記楽曲選択のための音声認識辞書を生成するステップと、前記音声認識辞書の生成における音楽データ格納デバイス単位での辞書生成進捗度を測定するステップと、一の音楽データ格納デバイスの音楽データに対して音声認識辞書が生成されているときに、他の音楽データ格納デバイスの音楽データに対する音声認識辞書の生成要求がなされた場合に、前記辞書生成進捗度に応じて、優先的に音声認識辞書を生成する音楽データの格納デバイスを決定するステップと、前記決定された音楽データ格納デバイスを、その音楽データの音声認識辞書の生成が優先的になるように処理の対象デバイスを切換えるステップとを有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、一の音楽データ格納デバイスに対する音声認識辞書の生成中に、他の音楽データ格納デバイスに対する辞書生成要求がなされた場合においても、その生成の進捗状況に応じて辞書生成を優先するデバイスを決定し必要に応じてその切換えを行うため、必要とされる音楽データに対する音声認識辞書の生成を短時間で作ることができるようになる。その結果、辞書生成に係るユーザーの待ち時間が短縮され、その利便性が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例に係るナビゲーション装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】本実施例の制御部124の主な特徴部分の機能ブロック図である。
【図3A】音声認識辞書生成プロセスを示すフローチャートである。
【図3B】音声認識辞書生成プロセスを示すフローチャートである。
【図4】従来構成に係る辞書生成要求プロセスと、本実施例に係る辞書生成要求プロセスにおける効果を検証するための比較グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。本実施の形態では、音声による指示に基づいて楽曲選択を可能とするオーディオ再生機能、その他のマルチメディア機能を備えたナビゲーション装置を例示する。
【実施例】
【0018】
図1は、本発明の実施例に係るナビゲーション装置の構成例を示すブロック図である。同図に示すように、ナビゲーション装置100は、音楽データやビデオデータを再生するオーディオ/ビデオ(AV)再生部102、地上波ディジタルテレビ放送およびAM、FM等のラジオ放送を受信するテレビ/ラジオチューナー104、目的地までの経路案内等を行うナビゲーション部106、音楽その他のデータを格納したCDやDVD(Digital Versatile Disc)をシステムに読み取るためのCD/DVD読取り部108、携帯音楽プレイヤーやUSBメモリーなどの外部デバイスを接続するための外部デバイス接続インタフェース110、ディスプレイ上のタッチパネルや操作ボタンを介してユーザーからの入力を受け取る入力部112、音声によるユーザーからの操作コマンドや楽曲選択指示を受け取る音声入力部114、スピーカから音声を出力する音声出力部116、ディスプレイに画像を表示する情報表示部118、道路地図に関するデータやプログラムデータ並びに音楽CDからリッピングした音楽データを格納するHDD120、HDD120から読み出したプログラムや各種データを実行・処理するためにこれらを一時的に記憶する主記憶122、各部を制御する制御部124を含んで構成される。図1のナビゲーション装置100の構成は、例示であり、これらすべての機能を包含しなくてもよいし、あるいは他の機能を包含するものであってもよい。
【0019】
オーディオ/ビデオ再生部102は、CD、DVD、半導体メモリ、HDD120などに記憶されたオーディオデータやビデオデータを再生する。後述するようにオーディオ/ビデオ再生部102は、音声入力部116からのユーザーによる楽曲選択の音声指示に基づいて、指定の楽曲を再生可能である。再生されたオーディオデータやビデオデータは、制御部124によって、音声出力部116および情報表示部118から出力される。
【0020】
テレビ/ラジオチューナー104は、制御部124によって選択されたチャンネルの地上波ディジタル放送の番組を受信し、受信したテレビ放送のストリーミングデータをリアルタイムでデコードし、そこから音声データ、映像データ、電子番組情報(EPG)や文字データなどのテキストデータを抽出する。制御部124は、テレビチューナー104からこれらの信号を受け取り、音声出力部116に番組の音声信号を出力させ、情報表示部118に番組の映像信号を表示させる。またテレビ/ラジオチューナー104は、制御部124によって選択されたチャンネルのラジオ放送を受信し、受信されたラジオ放送をデコードし、ステレオあるいはモノラルの音声データ、多重化された文字データなどを抽出し、抽出された音声データは、音声出力部116から出力される。
【0021】
ナビゲーション部106は、GPS衛星や自立航法センサを用いて自車位置を算出したり、目的地までの最適な経路の誘導などを行う。ナビゲーション部108が動作されるとき、制御部124は、情報表示部118に自車位置周辺の道路地図などを表示させる。また、ナビゲーションに関する音声案内を音声出力部116から出力させる。
【0022】
CD/DVD読取り部108は、音楽その他のデータを格納したCDや映像データや地図データを格納したDVDを読み取って、オーディオ/ビデオ再生部102による再生やナビゲーション部108による利用ができるようにする。音楽データを格納したCDをCD/DVD読取り部108に読み取らせた場合、制御部124はその再生と同時にその音楽データをHDD120にリッピングする。
【0023】
外部デバイス接続インタフェース110は、携帯音楽プレイヤーやUSBメモリーなどの外部デバイスを接続し、それらに格納されている音楽その他のデータをシステム上に読み出せるようにする。これら外部デバイスに格納されているデータが音楽データである場合、ユーザの選択指示にしたがって音楽データはオーディオ/ビデオ再生部102による再生の対象とされる。後述するように、これらの音楽データも音声入力による楽曲選択指示が可能となるよう、それらのメタ情報が読み出され音声認識辞書の生成に掛けられる。
【0024】
入力部112は、リモコン、マウス、タッチパネルなどの入力手段を含むことができる。ユーザーは、入力部112を介して、音楽の再生などのコントロールをしたり、テレビ放送のチャンネルを選択したり、動作させる機能を選択したり、その他必要な指示を与えることができる。入力部112には、音声入力部114による音声入力の開始および終了をシステム側に知らせるために、ハンドル周辺に設置した発話ボタンが含まれる。
【0025】
音声入力部114は、音声によるユーザーからの操作コマンドや楽曲選択指示を受け取る。音楽データの再生に係る楽曲選択の指示に関して、音声入力部114はユーザーからの音声による曲指定(通常は曲名)を受け取り、これは後述する楽曲の選択制御の処理を経て、その楽曲をオーディオ/ビデオ再生部102により再生する。音声入力部114には、ドライバーの音声を拾うためにハンドル周辺に設置された小型マイクが含まれる。
【0026】
音声出力部116は、音声信号を増幅し、増幅された音声信号を車内に配置されたスピーカから出力する。情報表示部118は、静止画や動画を表示するためのディスプレイを含む。さらにディスプレイには、入力部112の一手段としてのタッチパネルが搭載され、ユーザーからの入力を受け取ることができるようになっている。
【0027】
HDD120は、道路地図に関するデータやプログラムデータ並びに音楽CDからリッピングした音楽データを格納する大容量記憶装置である。HDD120には、後述する音声認識辞書生成部で生成された音声認識辞書データも格納される。音楽データに関しHDD120は、音楽CDがCD/DVD読取り部106に挿入されその再生が開始されると、そのすべての音楽データをここに格納し、蓄積していく。これによってユーザーは同じ楽曲を再度再生するときには、あらためて音楽CDをCD/DVD読取り部106に読み取らせる必要がなくなる。なお、近年ではSSD(Solid State Drive)などの不揮発性半導体メモリーを用いた大容量記憶装置の低価格化が進んでおり、上記データの格納のためにHDDに代えてあるいはこれと共にSSDなどの他の媒体による記憶装置を用いてもよい。
【0028】
主記憶122は、ユーザ操作などに基づいて選択されたプログラム、およびそのプログラムの制御の対象となるデータを一時的に保持する記憶エリアであり、通常、揮発性半導体メモリーにより構成される。制御部124は、中央処理装置、マイクロコンピュータ、マイクロプロセッサなどの装置を含み、主記憶122に読み出されたプログラムを実行し、各部の制御を行う。
【0029】
次に、本実施例の制御部124の主な特徴部分の機能ブロック図を図2に示す。なお、ここでは主として楽曲選択のための音声認識辞書の生成に係る制御のみについて説明し、システムにおける他の機能の部分については説明しない。制御部124は、本発明に係る機能構成として、音声コマンド解析部200、音声認識辞書生成部202、辞書生成進捗度測定部204、優先デバイス決定部206、デバイス切換え部208を有する。
【0030】
音声コマンド解析部200は、ユーザーによる音声入力を解析して対応するテキストデータを出力する。小型マイクを介して拾われたユーザーの音声は、音声入力部114でノイズ除去、正規化、ディジタル化などの処理を施され、音声コマンド解析部200に入力される。音声コマンド解析部200では、音響分析を行ってそこから特徴量を抽出し、認識デコーダにおいてその特徴量からテキストデータを得るなど、音声認識に係る周知の方法が用いられる。オーディオ/ビデオ再生部102の利用がユーザーによって選択されている場合、音声コマンド解析部200は、取得した音声信号を楽曲選択のための楽曲名として理解する。そして、これをキーとして音声認識辞書内を検索して一致する楽曲のデータをHDD120から読み出し、オーディオ/ビデオ再生部102で再生されるよう制御部124にその結果を返す。
【0031】
音声認識辞書生成部202は、音楽データに含まれる曲名その他のメタ情報に基づいて、音声による楽曲選択のための音声認識辞書を生成する。制御部124から、HDD120または外部デバイスに格納された音楽データ群に対する音声認識辞書の生成要求が送信されると、音声認識辞書生成部202は、その対象デバイス(本書ではこれを音楽データ格納デバイスと言うことがある)にアクセスして順次音楽データを読み出し、そこに含まれるメタ情報からその音楽データ呼び出しのための音声認識語(例えば楽曲名)を抽出し、その対象デバイスと関連付けてこれをHDD120の所定エリアに格納して辞書を生成していく。
【0032】
ここで音声認識辞書の生成要求は、例えば、CD/DVD読取り部108に音楽CDがセットされた状態で、オーディオ/ビデオ再生部102が制御の対象としてユーザーに選択され、あるいはその再生が開始されたときに、送信されるよう構成できる。また、携帯音楽プレイヤーなどの外部デバイスが外部デバイス接続インタフェース110に接続されたとき、あるいはその再生が開始されたときに、送信されるよう構成できる。この結果、一の音楽データ格納デバイス(例えばHDD120)に対する辞書生成要求がなされ音声認識辞書生成部202において音声辞書が生成されている最中に、別の音楽データ格納デバイス(携帯音楽プレイヤー)に対する辞書生成要求が送られ、生成要求が衝突するケースが生じる。
【0033】
さらに、オーディオ/ビデオ再生部102以外の機能(例えば、テレビ/ラジオチューナー106やナビゲーション部108)がその制御対象として選択されている場合においても、CPUの空き時間などに一定間隔でHDD120内や外部デバイス内をスキャニングして辞書未生成の音楽データを検出し、その生成を行わせるよう構成することもできる。ここで複数のデバイスにおいて辞書未生成の音楽データが検出された場合、その辞書生成の優先順位に関し、音楽データ数の少ないデバイスを優先する方法、最後に選択されていたデバイスを優先する方法、およびHDD120内を優先する方法、の何れの方法を採用してもよい。何れにせよ音声認識辞書は各デバイス毎に生成され独立して管理されることになる。
【0034】
辞書生成進捗度測定部204は、特定の音楽データ格納デバイスに対する前記辞書生成要求がなされてからの進捗度を測定する。ここで進捗度とは、対象デバイスに格納されたすべての音楽データに対して音声認識辞書を完成させるに必要な時間に対する進捗の割合を指す。一実施例として、標準的な単位音楽データに掛かる平均処理時間と、対象のデバイスに格納された音楽データのデータ数から辞書生成予想時間を求め、辞書生成処理の開始からの経過時間と対比させることによって進捗度を算出することができる。また別の例としては、処理完了までの残り予想時間をその進捗度とすることもできる。
【0035】
優先デバイス決定部206は、異なる音楽データ格納デバイス間での音声認識辞書生成要求が競合した場合に、優先的に処理すべきデバイスを決定するものである。すなわち、優先デバイス決定部206は、一の音楽データ格納デバイス(例えばHDD120)の音楽データに対して音声認識辞書が生成されているときに、他の音楽データ格納デバイス(例えば携帯音楽プレイヤー)の音楽データに対する音声認識辞書の生成要求がなされた場合に、辞書生成進捗度測定部204で測定された進捗度を参照し、基準値と比較して優先デバイスを決定する。一実施例として、処理中のデバイスに対する辞書生成が必要総処理時間の30%以内の進捗度であれば、他の音楽データ格納デバイスの処理を優先するよう決定する。もっとも他のパラメータ、例えば音楽データ格納デバイスに格納されている音楽データの量または数を勘案し、そのデータ量または数が少なく、辞書生成に掛かる時間が短く済むと予想される場合には、そのデバイスを優先するよう決定することもできる。また、進捗の基準値を100%に設定することによって、生成要求が競合した場合には、常に後から要求が来たデバイスを優先するよう制御することもできる。
【0036】
デバイス切換え部208は、前記優先デバイス決定部206の決定に基づいて、音声認識辞書の生成処理を行う対象デバイスを切換える。すなわち、優先デバイス決定部206において優先すべきデバイスが現在辞書生成中のデバイスと異なる場合には、辞書生成中のデバイスにおける処理を中断して、このデバイスを辞書生成要求の待ち行列に追加し、次いで優先されたデバイスにおける音楽データが音声認識辞書の生成対象となるように処理を切換える。
【0037】
次に、本実施例に係るナビゲーション装置における音声認識辞書の生成処理について、図3に示すフローチャートを参照して説明する。なお説明に際しては、HDD120に格納されている音楽データに対する音声認識辞書の生成中に、外部デバイス接続インタフェース110に音楽データを格納した外部デバイスが接続され、それによってその外部デバイスの音楽データに対する音声認識辞書の生成要求がなされた場合の例を中心にする。
【0038】
本処理300は、制御部124の音声認識辞書生成部202に対する、音声認識辞書の生成要求により開始される。最初のステップで、対象デバイスに格納されている全音楽データに対する辞書生成予想時間が算出される(ステップ301)。次いで、既に他のデバイスに対する辞書生成処理が行われているか判断され(ステップ302)、辞書生成が行われていないと判断された場合は、処理はステップ307に移り、その辞書生成要求に係るデバイスの音楽データに対する音声認識辞書の生成処理が開始される。
【0039】
一方で、既に他のデバイスに対する辞書生成がなされていると判断された場合には、その競合を解消するためのステップ303〜306の処理が実施される。ここで最初に、システムからユーザーが現在選択しているデバイス、つまりナビゲーション装置においてアクティブになっている機能がどれであるかの情報が取得される(ステップ303)。そして、この辞書生成要求がなされているデバイスが、ユーザーが選択しているデバイスであるか否かが判断される(ステップ304)。ここで辞書生成要求がユーザーが選択しているデバイス以外のデバイスに対してなされている場合は、その生成をすぐに行う必要がないので、辞書生成要求に係るデバイスを辞書生成要求のキューに追加する(ステップ313)。
【0040】
一方で、辞書生成要求がユーザーが選択しているデバイスに対してなされている場合は、処理はステップ305に移り、そこで他のデバイスに対し既に開始されている辞書生成の進捗状況を判断する。すなわち、その辞書生成の開始からの経過時間が既定値(例えば処理完了までの時間の30%)以内であるか判断され、そうである場合は、要求デバイスに対する処理の開始が遅れると判断して、現在進捗している外部デバイスの音楽データに対する辞書生成処理を中止し(ステップ306)、代わりに後から生成要求があったデバイスの音楽データに対する辞書生成を直ちに開始する(ステップ307)。ここで、中止の対象となったデバイスは、辞書生成要求のキューに追加される(ステップ313)。
【0041】
辞書生成要求に係るデバイスに格納されている音楽データに対する音声認識辞書の生成が開始されると、タイマーが起動して辞書生成時間の計測が開始され(ステップ308)、その経過はステップ305の判断において利用される。そのデバイスに含まれるすべての音楽データに対する辞書生成が完了したとき(ステップ309)、辞書生成時間の計測は終了され(ステップ310)、制御部124では音声認識辞書生成部202からの辞書生成完了の通知を取得する(ステップ311)。制御部124はこの通知を受けて、対象デバイスに対する音声認識による操作が可能になった旨の通知を情報表示部118を介してユーザーに通知する(ステップ312)。
【0042】
そして、処理はステップ314に移って、辞書作成待ちのデバイスがあるか判断される。ステップ313が実行され辞書生成要求のキュー内に要求に係るデバイスが登録されている場合には、キューから最初のデバイスが取り出され(ステップ315)、当該デバイスに対する本処理300が新たに開始される。この対象デバイスには、先の処理で処理を中止したデバイスも含まれるので、そのような場合は残りの音楽データに対する処理を再開することになる。キュー内の登録デバイスが無くなるまで本処理は繰り返され、対象デバイスが無くなった時点で終了する。
【0043】
図4は、従来構成に係る辞書生成要求プロセスと、本実施例に係る辞書生成要求プロセスにおける効果を検証するための比較グラフである。グラフは、内蔵HDDに格納された音楽データに対する音声認識辞書の生成処理が行われているときに、外部デバイスの音楽データに対する辞書生成要求がなされた場合の処理時間を比較している。同図(A)は従来構成に係るプロセスを示しており、内蔵HDDに対する辞書生成処理がHs点で開始され、R点において外部デバイスに対する処理要求がなされた場合を考える。この場合、その処理要求は一旦保留とされ、He点で内蔵HDDに対する処理が完了したときに、外部デバイスに対する処理が開始される(Es点)。そして、外部デバイスに対する処理が完了するEe点において、当該要求に係る外部デバイスの音楽データに対し、音声楽曲検索による楽曲選択の機能が利用可能になる。従って、その生成要求がなされてからその利用ができるまでの時間はt1となる。
【0044】
一方、同図(B)に示す本実施例におけるプロセスでは、内蔵HDDに対する辞書生成中にR点において外部デバイスに対する処理要求がなされた場合、その進捗度が既定値以内であれば内蔵HDDに対する処理が中止され、直ちに外部デバイスに対する処理が開始される(Es点)。そして、Es点で外部デバイスに対する処理が完了した後に、内蔵HDDに対する処理が再開されることになる。従って、外部デバイスに対する辞書生成要求がなされてからその利用ができるまでの時間はt2となる。その結果、従来構成に比べて本実施例に夜プロセスでは、外部デバイスにおける楽曲選択が可能になるまでの時間がt3時間短縮されることになる。
【0045】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨の範囲において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0046】
100:ナビゲーション装置 102:AV再生部
104:テレビ/ラジオチューナー 106:ナビゲーション部
108:CD/DVD読取り部 110:外部デバイス接続インタフェース
112:入力部 114:音声入力部
116:音声出力 118:情報表示部
120:HDD 122:主記憶
124:制御部 200:音声コマンド解析部
202:音声認識辞書生成部 204:辞書生成進捗度測定部
206:優先デバイス決定部 208:デバイス切換え部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声による指示に基づいて楽曲選択を可能とするオーディオ再生手段と、
多数の音楽データを蓄積する音楽データ記憶手段と、
音楽データを蓄積した外部デバイスを接続して、その音楽データを前記オーディオ再生手段に読み出し可能とする外部デバイス接続手段と、
前記音楽データ記憶手段内の音楽データおよび前記外部デバイス内の音楽データから、前記楽曲選択のための音声認識辞書を生成する音声認識辞書生成手段と、
前記音声認識辞書生成手段における音楽データ格納デバイス単位での辞書生成進捗度を測定する辞書生成進捗度測定手段と、
一の音楽データ格納デバイスの音楽データに対して音声認識辞書が生成されているときに、他の音楽データ格納デバイスの音楽データに対する音声認識辞書の生成要求がなされた場合に、前記辞書生成進捗度測定手段による辞書生成進捗度に応じて、優先的に音声認識辞書を生成する音楽データの格納デバイスを決定する優先デバイス決定手段と、
前記優先デバイス決定手段により決定された音楽データ格納デバイスを、その音楽データが優先的に前記音声認識辞書生成手段により処理されるようにするデバイス切換え手段と、
を有する車載用電子装置。
【請求項2】
前記優先デバイス決定手段は、前記外部デバイス接続手段に音楽データを蓄積した外部デバイスが接続されたときに、そのデータ格納デバイスに対する音声認識辞書の生成要求がなされたと判断して、優先的に音声認識辞書を生成する音楽データの格納デバイスを決定するものである、請求項1に記載の車載用電子装置。
【請求項3】
前記優先デバイス決定手段は、前記オーディオ再生手段による音楽データの再生対象として一の音楽データ格納デバイスが選択されたときに、そのデータ格納デバイスに対する音声認識辞書の生成要求がなされたと判断して、優先的に音声認識辞書を生成する音楽データの格納デバイスを決定するものである、請求項1に記載の車載用電子装置。
【請求項4】
前記優先デバイス決定手段は、優先的に音声認識辞書を生成するよう決定された以外の音楽データ格納デバイスを、前記音声認識辞書生成手段による辞書生成を要求する待ち行列に入れて、優先された音楽データ格納デバイスにおける処理が終了した後に、前記待ち行列に入れられたデバイスが順次辞書生成の対象となるようにする、請求項1から3の何れか1つに記載の車載用電子装置。
【請求項5】
前記辞書生成進捗度測定手段は、前記音楽認識辞書生成手段による単位音楽データの平均処理時間に基づく、対象の音楽データ格納デバイスにおける音楽データの処理に必要な辞書生成予想時間と、辞書生成処理開始からの経過時間とからその進捗度を測定するものである、請求項1に記載の車載用電子装置。
【請求項6】
音声による指示に基づいて楽曲選択を可能とするオーディオ再生手段と、多数の音楽データを蓄積する音楽データ記憶手段と、音楽データを蓄積した外部デバイスを接続して、その音楽データを前記オーディオ再生手段に読み出し可能とする外部デバイス接続手段とを有するナビゲーション装置における音楽データの音声認識辞書生成方法であって、
前記音楽データ記憶手段内の音楽データおよび前記外部デバイス内の音楽データから、前記楽曲選択のための音声認識辞書を生成するステップと、
前記音声認識辞書の生成における音楽データ格納デバイス単位での辞書生成進捗度を測定するステップと、
一の音楽データ格納デバイスの音楽データに対して音声認識辞書が生成されているときに、他の音楽データ格納デバイスの音楽データに対する音声認識辞書の生成要求がなされた場合に、前記辞書生成進捗度に応じて、優先的に音声認識辞書を生成する音楽データの格納デバイスを決定するステップと、
前記決定された音楽データ格納デバイスを、その音楽データの音声認識辞書の生成が優先的になるように処理の対象デバイスを切換えるステップと、
を有する車載用電子装置における音楽データの音声認識辞書生成方法。
【請求項7】
前記優先デバイスを決定するステップは、前記外部デバイス接続手段に音楽データを蓄積した外部デバイスが接続されたときに、そのデータ格納デバイスに対する音声認識辞書の生成要求がなされたと判断して、優先的に音声認識辞書を生成する音楽データの格納デバイスを決定するものである、請求項6に記載の車載用電子装置における音楽データの音声認識辞書生成方法。
【請求項8】
前記優先デバイスを決定するステップは、前記オーディオ再生手段による音楽データの再生対象として一の音楽データ格納デバイスが選択されたときに、そのデータ格納デバイスに対する音声認識辞書の生成要求がなされたと判断して、優先的に音声認識辞書を生成する音楽データの格納デバイスを決定するものである、請求項6に記載の車載用電子装置における音楽データの音声認識辞書生成方法。
【請求項9】
前記優先デバイスを決定するステップは、優先的に音声認識辞書を生成するよう決定された以外の音楽データ格納デバイスを、前記音声認識辞書生成を要求する待ち行列に入れて、優先された音楽データ格納デバイスにおける処理が終了した後に、前記待ち行列に入れられたデバイスが順次辞書生成の対象となるようにする、請求項6から8の何れか1つに記載の車載用電子装置における音楽データの音声認識辞書生成方法。
【請求項10】
前記辞書生成進捗度を測定するステップは、前記音楽認識辞書の生成に掛かる単位音楽データの平均処理時間に基づく、対象の音楽データ格納デバイスにおける音楽データの処理に必要な辞書生成予想時間と、辞書生成処理開始からの経過時間とからその進捗度を測定するものである、請求項6に記載の車載用電子装置における音楽データの音声認識辞書生成方法。
【請求項11】
音声による指示に基づいて楽曲選択を可能とするオーディオ再生手段と、
多数の音楽データを蓄積する音楽データ記憶手段と、音楽データを蓄積した外部デバイスを接続して、その音楽データを前記オーディオ再生手段に読み出し可能とする外部デバイス接続手段とを有するナビゲーション装置における音楽データの音声認識辞書生成プログラムであって、
前記音楽データ記憶手段内の音楽データおよび前記外部デバイス内の音楽データから、前記楽曲選択のための音声認識辞書を生成するステップと、
前記音声認識辞書の生成における音楽データ格納デバイス単位での辞書生成進捗度を測定するステップと、
一の音楽データ格納デバイスの音楽データに対して音声認識辞書が生成されているときに、他の音楽データ格納デバイスの音楽データに対する音声認識辞書の生成要求がなされた場合に、前記辞書生成進捗度に応じて、優先的に音声認識辞書を生成する音楽データの格納デバイスを決定するステップと、
前記決定された音楽データ格納デバイスを、その音楽データの音声認識辞書の生成が優先的になるように処理の対象デバイスを切換えるステップと、
を有する車載用電子装置における音楽データの音声認識辞書生成プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−215175(P2011−215175A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−80168(P2010−80168)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】