説明

車輌用灯具

【課題】 透光カバーとランプハウジングの溶着による良好な結合状態を確保する。
【解決手段】 透光カバー3に設けられた溶着部8の溶着面9がランプハウジング2に形成された被溶着面2aに押し付けられた状態で溶着ヘッド100から溶着部に対してレーザ光Rが照射され透光カバーとランプハウジングが溶着によって結合され、溶着ヘッドは溶着面に沿って移動されると共に移動時に溶着面の向きに応じて角度が変動され、溶着ヘッドの移動方向において隣接する領域における溶着面の向きの角度変化量が0.5°/mm以下にされた。これにより溶着部の全体においてレーザ光が溶着面に対して一定の角度の範囲で入射されるように溶着ヘッドの角度が変動され、透光カバーとランプハウジングの溶着による良好な結合状態を確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車輌用灯具に関する。詳しくは、透光カバーの溶着面に関して溶着ヘッドの移動方向において隣接する領域における向きの角度変化量を所定の値以下にして透光カバーとランプハウジングの溶着による良好な結合状態を確保する技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
車輌用灯具は、少なくとも一方に開口されたランプハウジングとランプハウジングの開口を閉塞するようにしてランプハウジングに結合された透光カバーとを備え、透光カバーとランプハウジングによって構成された灯具外筐の内部空間に光源が配置されている。
【0003】
このような車輌用灯具において、透光カバーとランプハウジングを結合する方法として溶着による方法がある(例えば、特許文献1参照)。溶着による透光カバーとランプハウジングの結合は、透光カバーに設けられた溶着部の溶着面がランプハウジングに形成された被溶着面に押し付けられた状態において、レーザ溶着装置の溶着ヘッドから溶着部に対してレーザ光が照射されることにより行われる。
【0004】
レーザ光は溶着部における溶着面の反対側の面(外表面)から溶着部に入射され、透光カバーの溶着面とランプハウジングの被溶着面とが接する部分に照射され、溶着面と被溶着面が溶融されて透光カバーとランプハウジングが結合される。このとき溶着ヘッドは環状に形成された溶着部に沿って移動され、溶着部に沿って移動される溶着ヘッドから出射されるレーザ光が溶着面に対して垂直に入射されるように溶着面の向きに追従して溶着ヘッドの角度が随時変動される。
【0005】
このように移動時に溶着ヘッドの角度が変動されてレーザ光が溶着面に対して垂直に入射されることにより、レーザ光の溶着面におけるエネルギー分布に大きなバラツキが生じず、溶着部の全体において透光カバーとランプハウジングの間の良好な結合状態を確保することが可能となる。
【0006】
【特許文献1】特開2008−4487号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、透光カバーは車輌の形状等に応じて種々の形状に形成されており、溶着部の溶着面の向きも位置によって異なるように形成されているため、上記したように、レーザ光が溶着面に対して垂直に入射されるように溶着面の向きに追従して溶着ヘッドの角度が変動される。
【0008】
ところが、レーザ溶着装置の性能には一定の限度があるため、溶着面の向きの変化の度合いによっては、溶着ヘッドが溶着面の向きに追従して変動されなくなる可能性がある。
【0009】
溶着ヘッドが溶着面の向きに追従して変動されなくなると、追従が行われなくなった部分においてレーザ光が溶着面に対して垂直に照射されずエネルギー分布が大きく変動してしまい、透光カバーとランプハウジングの間の結合不良を生じるおそれがある。
【0010】
そこで、本発明車輌用灯具は、透光カバーとランプハウジングの溶着による良好な結合状態を確保することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
車輌用灯具は、上記した課題を解決するために、透光カバーに設けられた溶着部の溶着面がランプハウジングに形成された被溶着面に押し付けられた状態で溶着ヘッドから前記溶着部に対してレーザ光が照射され前記透光カバーと前記ランプハウジングが溶着によって結合された車輌用灯具であって、前記溶着ヘッドは前記溶着面に沿って移動されると共に移動時に前記溶着面の向きに応じて角度が変動され、前記溶着ヘッドの移動方向において隣接する領域における前記溶着面の向きの角度変化量が0.5°/mm以下にされたものである。
【0012】
従って、車輌用灯具にあっては、溶着部の全体においてレーザ光が溶着面に対して一定の角度の範囲で入射されるように溶着ヘッドの角度が変動される。
【発明の効果】
【0013】
本発明車輌用灯具は、透光カバーに設けられた溶着部の溶着面がランプハウジングに形成された被溶着面に押し付けられた状態で溶着ヘッドから前記溶着部に対してレーザ光が照射され前記透光カバーと前記ランプハウジングが溶着によって結合された車輌用灯具であって、前記溶着ヘッドは前記溶着面に沿って移動されると共に移動時に前記溶着面の向きに応じて角度が変動され、前記溶着ヘッドの移動方向において隣接する領域における前記溶着面の向きの角度変化量が0.5°/mm以下にされている。
【0014】
従って、溶着ヘッドの溶着面に対する追従性が高く、レーザ光の溶着面に対する入射角度が常に一定になるように溶着面の向きに応じて溶着ヘッドの角度が変動され、透光カバーとランプハウジングの溶着による良好な結合状態を確保することができる。
【0015】
請求項2に記載した発明にあっては、前記溶着ヘッドの移動方向において隣接する領域における前記溶着面の前記移動方向と直交する向きの角度変化量が0.5°/mm以下にされている。
【0016】
従って、溶着ヘッドの移動方向において隣接する領域における溶着面の前記移動方向と直交する向きが変化している場合においてレーザ光の溶着面に対する入射角度が常に一定になるように溶着面の向きに応じて溶着ヘッドの角度を変動させることができ、透光カバーとランプハウジングの溶着による一層良好な結合状態を確保することができる。
【0017】
請求項3に記載した発明にあっては、前記溶着面の少なくとも一部が前記溶着部における前記溶着面の反対側の面である外表面に対して傾斜されている。
【0018】
従って、溶着面の向きを透光カバーの形状や外表面の向きに拘わらず自由に設定し、溶着面の向きの角度変化量を0.5°/mm以下に容易に形成することができる。
【0019】
請求項4に記載した発明にあっては、前記透光カバーが射出成形により樹脂材料によって形成され、前記透光カバーの外周部を前記ランプハウジングとの溶着が行われない非溶着部として設け、前記溶着部を前記非溶着部の内周側に前記非溶着部に連続して設け、前記溶着部における前記非溶着部側の一端の厚みをXとし、前記溶着部における他端の厚みをYとし、前記非溶着部における最大の厚みをZとしたときに、前記厚みXが前記厚みY及び前記最大の厚みZより小さくなるようにしている。
【0020】
従って、溶着面の全体の厚みが厚くならず、また、溶着面の最小の厚みが非溶着部の最大の厚みより薄くなり、溶着面の厚みを可能な限り薄くすることができ、透光カバーの射出成形時におけるヒケの発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明車輌用灯具を実施するための最良の形態について添付図面を参照して説明する。
【0022】
車輌用灯具1は、図1に示すように、前方に開口された凹部を有するランプハウジング2とランプハウジング2の開口面を閉塞し透明な樹脂材料によって形成された透光カバー3とを備え、ランプハウジング2と透光カバー3によって灯具外筐4が構成されている。
【0023】
灯具外筐4の内部には図示しない光源が配置されている。車輌用灯具1において光源から光が出射されると、出射された光が透光カバー3を透過されて外部へ照射される。
【0024】
ランプハウジング2の外周部における先端面は被溶着面2aとして形成されている。
【0025】
透光カバー3は、例えば、無色透明にされた第1の部分5と赤色等の所定の色が付され有色透明にされた第2の部分6とから成る。第2の部分6は第1の部分5を外周側から囲む位置に設けられている。
【0026】
透光カバー3の外周部は非溶着部7として設けられている(図2参照)。透光カバー3における非溶着部7の内側に連続する部分は溶着部8とされ、溶着部8はランプハウジング2の被溶着面2aに対向する面が溶着面9として形成されている。
【0027】
透光カバー3は車輌やランプハウジング2の形状等に応じて種々の形状に形成されており、溶着部8の溶着面9の向きも位置によって異なるようにされた部分を有している。
【0028】
図3及び図4に透光カバー3の溶着面9の各一部を示す。
【0029】
溶着面9は、例えば、図3に示すように、長手方向(周方向)に延びる緩やかな曲面状に形成された曲面部9aを有しており、また、図4に示すように、長手方向に延びる緩やかな曲面状に形成されると共に短手方向において緩やかに湾曲する曲面部9bをも有している。溶着面9の曲面部9a、9bは、その位置によらず向きが異なるようにされている。
【0030】
また、溶着面9は平面部9cも有している。溶着面9の平面部9cは、その位置によって向きが同じにされている。
【0031】
溶着面9は少なくとも一部が溶着部8における溶着面9の反対側の面である外表面10に対して傾斜されている(図2参照)。
【0032】
溶着面9の長手方向(周方向)はレーザ溶着装置の溶着ヘッド100が移動される移動方向に一致される。従って、溶着ヘッド100は溶着面9に沿って移動される。
【0033】
溶着ヘッド100は、透光カバー3の溶着面9がランプハウジング2の被溶着面2aに押し付けられランプハウジング2と透光カバー3が図示しない保持部材に保持された状態においてランプハウジング2と透光カバー3に対して移動される。尚、透光カバー3の溶着面9がランプハウジング2の被溶着面2aに押し付けられた状態のランプハウジング2と透光カバー3が溶着ヘッド100に対して移動されてもよい。
【0034】
溶着ヘッド100からは溶着面9に対して溶着を行うためのレーザ光Rが出射され、溶着ヘッド100は移動時に溶着面9の向きに応じて角度が変動可能とされている。
【0035】
溶着面9は、上記したように、一部が曲面部9a、9bとされており、曲面部9a、9bは傾斜角度が以下のような条件を満足するように形成されている(図5参照)。
【0036】
溶着面9において距離L、Lとして1mmずつの等間隔の位置A、位置B、位置Cに関する接線をそれぞれ接線As、接線Bs、接線Csとし、接線Asと接線Bsが為す角度を角度αとし、接線Bsと接線Csが為す角度を角度βとする。距離L、Lは溶着ヘッド100の移動方向における距離である。
【0037】
このとき角度αと角度βは何れも0.5°以下にされている。尚、図5には、理解を容易にするために、各距離や各角度を誇張して示している。
【0038】
このように車輌用灯具1にあっては、溶着ヘッド100の移動方向において隣接する領域における溶着面9の向きの角度変化量が溶着面9の全体に亘って0.5°/mm以下にされている。従って、溶着ヘッド100の移動方向において溶着面9の全体に亘って角度変化量が小さいため、溶着ヘッド100の溶着面9に対する追従性が高く、溶着ヘッド100は出射されるレーザ光Rの溶着面9に対する入射角度が常に垂直(90°)になるように溶着面9の向きに応じて角度が変動される。
【0039】
上記には、溶着ヘッド100の移動方向において隣接する領域における溶着面9の向きの角度変化量が0.5°/mm以下にされた例を示したが、これに加え、溶着ヘッド100の移動方向に直交する方向において隣接する領域における溶着面9の向きの角度変化量を0.5°/mm以下にしてもよい。
【0040】
例えば、長手方向に延びる緩やかな曲面状に形成されると共に短手方向において緩やかに湾曲する曲面部9b(図4参照)について、溶着ヘッド100の移動方向において隣接する領域における前記移動方向と直交する向きの角度変化量を0.5°/mm以下にすることが可能である。
【0041】
このように溶着ヘッド100の移動方向において隣接する領域における溶着面9の前記移動方向と直交する向きの角度変化量を0.5°/mm以下にすることにより、溶着ヘッド100の移動方向において隣接する領域における溶着面9の前記移動方向と直交する向きが変化している場合においてレーザ光Rの溶着面9に対する入射角度が常に垂直(90°)になるように溶着面9の向きに応じて溶着ヘッド100の角度を変動させることができる。
【0042】
次に、透光カバー3の非溶着部7と溶着部8の関係について説明する(図6参照)。
【0043】
上記したように、透光カバー3の外周部は非溶着部7として設けられ、非溶着部7の内側に連続する部分が溶着部8として設けられている。
【0044】
溶着部8における非溶着部7側の一端の厚みをXとし、溶着部8における他端の厚みをYとし、非溶着部7における最大の厚みをZとすると、透光カバー2にあっては、厚みXが厚みYより小さく、かつ、厚みXが最大の厚みZより小さくなるように形成されている。
【0045】
非溶着部7と溶着部8を上記のような寸法関係にすることにより、溶着面9の全体の厚みが厚くならず、また、溶着面9の最小の厚みが非溶着部7の最大の厚みより薄くなり、溶着面9の厚みを可能な限り薄くすることができ、射出成形時におけるヒケの発生を抑制することができる。
【0046】
以上に記載した通り、車輌用灯具1にあっては、溶着ヘッド100の移動方向において隣接する領域における溶着面9の向きの角度変化量が0.5°/mm以下にされている。
【0047】
従って、溶着ヘッド100の溶着面9に対する追従性が高く、レーザ光Rの溶着面9に対する入射角度が常に垂直(90°)になるように溶着面9の向きに応じて溶着ヘッド100の角度が変動され、透光カバー3とランプハウジング2の溶着による良好な結合状態を確保することができる。
【0048】
上記した最良の形態において示した各部の形状及び構造は、何れも本発明を実施するに際して行う具体化のほんの一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならないものである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図2乃至図6と共に本発明の最良の形態を示すものであり、本図は車輌用灯具の概略分解斜視図である。
【図2】溶着部にレーザ光が照射されている状態を示す拡大断面図である。
【図3】溶着部の一例を示す拡大斜視図である。
【図4】溶着部の別の一例を示す拡大斜視図である。
【図5】溶着面の角度変化量を説明するための模式図である。
【図6】溶着面と非溶着部の関係を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1…車輌用灯具、2…ランプハウジング、2a…被溶着面、3…透光カバー、7…非溶着部、8…溶着部、9…溶着面、10…外表面、100…溶着ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光カバーに設けられた溶着部の溶着面がランプハウジングに形成された被溶着面に押し付けられた状態で溶着ヘッドから前記溶着部に対してレーザ光が照射され前記透光カバーと前記ランプハウジングが溶着によって結合された車輌用灯具であって、
前記溶着ヘッドは前記溶着面に沿って移動されると共に移動時に前記溶着面の向きに応じて角度が変動され、
前記溶着ヘッドの移動方向において隣接する領域における前記溶着面の向きの角度変化量が0.5°/mm以下にされた
ことを特徴とする車輌用灯具。
【請求項2】
前記溶着ヘッドの移動方向において隣接する領域における前記溶着面の前記移動方向と直交する向きの角度変化量が0.5°/mm以下にされた
ことを特徴とする請求項1に記載の車輌用灯具。
【請求項3】
前記溶着面の少なくとも一部が前記溶着部における前記溶着面の反対側の面である外表面に対して傾斜されている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車輌用灯具。
【請求項4】
前記透光カバーが射出成形により樹脂材料によって形成され、
前記透光カバーの外周部を前記ランプハウジングとの溶着が行われない非溶着部として設け、
前記溶着部を前記非溶着部の内周側に前記非溶着部に連続して設け、
前記溶着部における前記非溶着部側の一端の厚みをXとし、
前記溶着部における他端の厚みをYとし、
前記非溶着部における最大の厚みをZとしたときに、
前記厚みXが前記厚みY及び前記最大の厚みZより小さくなるようにした
ことを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3に記載の車輌用灯具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−129056(P2012−129056A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279070(P2010−279070)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】