説明

車輪ストッパー

【課題】軽量化と強度確保を両立させた新たな車輪ストッパーを提供する。
【解決手段】車輪ストッパー10は、平板状のベース120からストッパー部140を床面上向きに立ち上げ、このストッパー部140における第1側壁160は、有底の有底部150を頂上としてベース120に到って、車輪の干渉部位となる。そして、車輪ストッパー10は、第1側壁160それ自体が隆起して車輪幅方向に延びる凸条220と第1小凸条222と第2小凸条224とを備え、ベース120にて、ストッパー部140の開口部の三方を取り囲む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪と干渉してストッパーとして機能する車輪ストッパーに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車輪ストッパーは、駐車場等における車止めとして多用されており、種々の構造が提案されている(例えば、特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−278224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この特許文献では、車輪がマウントされるマウント部を、車輪干渉部と一体とした上で、これらを中空として、その中空部にハニカム材を充填して、軽量化が図られている。しかしながら、車輪ストッパーは、人手による運搬やその設置が必要であることから、車輪ストッパーとしての実用に耐えるだけの強度を確保した上で、作業負荷の軽減のために更なる軽量化が求められるに至った。
【0005】
本発明は、上述した従来の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、軽量化と強度確保を両立させた新たな車輪ストッパーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決することを目的としてなされたものであり、以下の構成を採用した。
【0007】
[適用1:車輪ストッパー]
車輪ストッパーであって、
床面に設置されるベースと、
前記床面の側で開口した有底の凸形状をなして前記ベースから床面上向きに立ち上がるストッパー部とを備え、
該ストッパー部は、前記有底部を頂上として該頂上から前記ベースに到る第1側壁をストッパー機能を果たす車輪干渉部位とし、該第1側壁自体が隆起した凸条を前記第1側壁に複数有した上で、前記第1側壁と、これに向かい合う第2側壁と、前記第1側壁の幅方向端部側において前記第1側壁から前記第2側壁に掛けて延びて対向する第3側壁とで前記凸形状をなし、
前記ベースは、前記第1側壁の端部と、前記対向する第3側壁の端部とを含んで、前記ストッパー部を取り囲む
ことを要旨とする。
【0008】
上記構成を備える車輪ストッパーでは、床面に設置されるベースからストッパー部を床面上向きに立ち上げ、このストッパー部における第1側壁は、有底部を頂上として該頂上から前記ベースに到って、ストッパー機能を果たす車輪干渉部位となる。そして、上記構成を備える車輪ストッパーは、車輪干渉部位となる第1側壁と、これに向かい合う第2側壁と、第1側壁の幅方向端部側において第1側壁から第2側壁に掛けて延びて対向する第3側壁とでストッパー部の凸形状をなして、ストッパー部の強度を確保した上で、第1側壁に凸条を複数有して、これら凸条をストッパー部の第1側壁自体が隆起したものとする。よって、上記構成を備える車輪ストッパーでは、凸形状をなす一側壁であって車輪干渉部位となる第1側壁の強度を、当該第1側壁に複数設けた凸条にて高める。また、このストッパー部を、第1側壁の端部と、第1側壁の幅方向端部側において第1側壁から第2側壁に掛けて延びて対向する第3側壁の端部とを含んでベースにて取り囲むことで、このベースにてストッパー部をその開口部において補強できる。これらの結果、上記構成の車輪ストッパーによれば、有底の凸形状をなすストッパー部の補強に当たって他の部材を用いる必要がないので、軽量化を図ることができると共に、ストッパー部の第1側壁自体が隆起した複数の凸条による補強とベースによる補強により、実用に耐える強度についてもこれを確保できる。この場合、上記構成の車輪ストッパーは、ベースから有底のストッパー部を立ち上げた上で凸条についても第1側壁自体を隆起させていることから、凸形状のストッパー部の内外壁面形状に倣った金型による鋼板のプレス成型や樹脂の型成型により、容易に製造でき、コスト低減を図ることもできる。この場合、前記ストッパー部における前記複数の凸条のそれぞれを、前記第1側壁の幅方向に延ばして平行となるようにできる。
【0009】
上記した車輪ストッパーは、次のような態様とすることができる。例えば、第1側壁の幅方向に延びて平行な前記複数の凸条の一つを、前記ベースから立ち上がる前記第1側壁の基部に位置するようにできる。こうすれば、第1側壁の基部側の凸条(以下、基部側凸条)は、車輪がストッパー部の第1側壁に干渉する以前に、車輪と当接する。このため、基部側凸条への車輪当接により、車両操作者は、まもなく車輪が第1側壁に干渉することを察知できるので、その後のブレーキ操作を経た停車操作が簡便となる。
【0010】
また、前記ストッパー部について、これを、前記第1側壁と対向する第2側壁に、前記第1側壁の側に凸となるよう窪んだ凹所を前記頂上から前記第2側壁の端部に掛けて有するものとできる。こうすれば、第2側壁についても凹所にて補強できるので、ストッパー部の強度を更に高めることができる。
【0011】
更に、前記ストッパー部の前記開口から組み込まれる補強材を備えるようにした上で、この補強材を、前記第2側壁の端部から前記頂上に掛けて延び、前記第2側壁の内壁面に接合する板状の第1材と、前記第1材に接合されて前記第1材から前記第1側壁の側に延び、前記第1側壁の内壁面と前記頂上の内壁面とにそれぞれ当接する板状の第2材とを有するものとできる。こうすれば、ストッパー部をその内部から補強できるので、更なる強度向上を図ることができる。この場合、補強材は、板材に過ぎないので、軽量化を損なわないようにできる。そして、この補強材における前記第1材を屈曲形成して、この第1材にて前記第2側壁の前記凹所を取り囲むようにした上で、前記第2材を前記第1材の両端の側に有するようにすれば、ストッパー部の内部からの補強が確実となると共に、補強材の位置ズレも抑制できる。
【0012】
この他、前記ストッパー部における前記第2側壁の端部を前記ベースよりも延ばし、該端部を凹凸が連続した凹凸端部とするようにすれば、凹凸端部が床面と接触することで、車輪ストッパーのズレを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】参考例の車輪ストッパー100をその正面上方から見た斜視図である。
【図2】車輪ストッパー100の正面図である。
【図3】車輪ストッパー100の右側面図である。
【図4】車輪ストッパー100の平面図である。
【図5】車輪ストッパー100の底面図である。
【図6】車輪ストッパー100の背面図である。
【図7】車輪ストッパー100をその背面上方から見た斜視図である。
【図8】正面中央にて車輪ストッパー100を破断して示す概略断面図である。
【図9】図6における端部250の一部位を拡大して示す説明図である。
【図10】実施例の車輪ストッパー10をその正面上方から見た斜視図である。
【図11】車輪ストッパー10の正面図である。
【図12】車輪ストッパー10の右側面図である。
【図13】車輪ストッパー10の平面図である。
【図14】車輪ストッパー10の底面図である。
【図15】車輪ストッパー10の背面図である。
【図16】車輪ストッパー10をその背面上方から見た斜視図である。
【図17】正面中央にて車輪ストッパー10を破断して示す概略断面図である。
【図18】本実施例の車輪ストッパー10の製造の様子を概略的に示す説明図である。
【図19】車輪と車輪ストッパー10との関係を示しつつ車輪ストッパーとしての機能を説明する説明図である。
【図20】変形例の補強材300を示す概略斜視図である。
【図21】補強材300の組み込みの様子を車輪ストッパー10の背面側から示す説明図である。
【図22】補強材300の組み込み済みの状態を車輪ストッパー10の底面の側から示す説明図である。
【図23】補強材300を組み込んだ状態で車輪ストッパー10を断面視して示す説明図である。
【図24】他の変形例の補強材300Aを示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、その実施例を図面に基づき説明する。まず、本実施例の車輪ストッパー10の前提となる参考例の車輪ストッパー100について説明する。図1は参考例の車輪ストッパー100をその正面上方から見た斜視図、図2は車輪ストッパー100の正面図、図3は車輪ストッパー100の右側面図、図4は車輪ストッパー100の平面図、図5は車輪ストッパー100の底面図、図6は車輪ストッパー100の背面図、図7は車輪ストッパー100をその背面上方から見た斜視図、図8は正面中央にて車輪ストッパー100を破断して示す概略断面図である。この場合、車輪ストッパー100の左側面図は、右側面図と対称に現れる。また、図1の斜視図から図7の斜視図において、図中に水平或いは垂直もしくは斜めに平行に記された細線、および曲線状に平行に記された細線は、表面の陰影を表す線である。
【0015】
これら各図に示すように、車輪ストッパー100は、ベース120とストッパー部140とを備える。ベース120は、平板状をなし、図示するxy平面に相当する床面に設置される。ストッパー部140は、図8の断面端面図に示すように、床面の側で開口した有底の凸形状をなして、ベース120から床面上向きに立ち上がり、図示する鉛直方向のz方向に延びる。そして、このストッパー部140は、凸形状における有底部150を頂上とし、この有底部150からベース120に到る第1側壁160をストッパー機能を果たす車輪干渉部位とし、この第1側壁160と、これに向かい合う第2側壁180と、第1側壁160の幅方向端部側において第1側壁160から第2側壁180に掛けて延びて対向する第3側壁200R、200Lとで凸形状をなす。その上で、ベース120から立ち上がったストッパー部140は、第1側壁160の基部に、当該基部の第1側壁160それ自体が隆起して第1側壁160の幅方向に延びる凸条220を備える。この凸条220は、ベース120と平行となるような上面を備えた上で、ベース120の側に延びる。この場合、第1側壁160の幅方向は、車輪ストッパー100の使用時において車輪幅方向となる。
【0016】
ベース120は、対向する第3側壁200Rと第3側壁200Lの側に延びたベース縁部120R、120Lを備え、これら左右の縁部にて、第1側壁160の端部と、対向する第3側壁200Rと第3側壁200Lの端部とを含んで、ストッパー部140をその開口周りに三方を取り囲む。そして、ベース120は、図1における前端側とベース縁部120R、120Lとに、床面固定用のアンカーボルト等のための貫通孔130を備える。この場合、図8の断面端面図に示すように、ベース120は、貫通孔130が設けられる端縁部で囲まれた領域において、ストッパー部140の側に平板状のまま凸とされている。
【0017】
凸条220は、既述したように第1側壁160の基部に設けられている。よって、図示しない車輪がベース120の側から転動すると、その車輪は、ストッパー部140の第1側壁160と干渉する以前に凸条220に当接することになる。
【0018】
また、ストッパー部140は、第1側壁160と対向する第2側壁180に、第1側壁160の側に凸となるよう窪んだ凹所240を備える。この凹所240は、第2側壁180の中央において、有底部150から第2側壁180の端部に掛けて延びている。
【0019】
更に、ストッパー部140は、図2の正面図、図3の側面図、図6の背面図、図8の概略断面図等に示すように、第2側壁180の端部250をベース120の底面よりも延ばしている。この端部250については、平坦な端面の端部とできるほか、次のようにすることもできる。図9は図6における端部250の一部位を拡大して示す説明図である。図示するように、第2側壁180の端部250を、凹凸が連続した凹凸端部とするようにもできる。そして、このように端部250をベース120の底面よりも延ばして凹凸端部とすれば、凹凸端部の端部250が床面と接触することで、車輪ストッパー10のズレを抑制できる。なお、車輪ストッパー100は、その形成に用いた薄板鋼板の厚みに比して、ストッパー部140の立ち上げ高さが各段に大きいことから、図8の概略断面図では、ベース120と第1側壁160、当該側壁の凸条220と、有底部150および凹所240については断面描画され、第2側壁180と端部250については、外郭線が描画されている。
【0020】
本実施例の車輪ストッパー10は、上記した参考例の車輪ストッパー100の構造を踏襲した上で、次の構成を有する。なお、上記の参考例の車輪ストッパー100と同一の部材については、同じ符号を用いてその説明を省略する。図10は実施例の車輪ストッパー10をその正面上方から見た斜視図、図11は車輪ストッパー10の正面図、図12は車輪ストッパー10の右側面図、図13は車輪ストッパー10の平面図、図14は車輪ストッパー10の底面図、図15は車輪ストッパー10の背面図、図16は車輪ストッパー10をその背面上方から見た斜視図、図17は正面中央にて車輪ストッパー10を破断して示す概略断面図である。この場合、車輪ストッパー10の左側面図は、右側面図と対称に現れる。また、図10の斜視図から図16の斜視図において、図中に水平或いは垂直もしくは斜めに平行に記された細線、および曲線状に平行に記された細線は、表面の陰影を表す線である。
【0021】
これら各図に示すように、本実施例の車輪ストッパー10にあっても、既述した車輪ストッパー100と同様、平板状のベース120からストッパー部140を立ち上げて備え、床面に設置される。本実施例の車輪ストッパー10は、そのストッパー部140の第1側壁160に、当該第1側壁自体が隆起した凸条220を側壁基部に備えるほか、この凸条と平行に第1側壁160の幅方向に延びる第1小凸条222と第2小凸条224を備える。なお、第1側壁160の幅方向は、車輪ストッパー10の使用時において車輪の幅方向となる。
【0022】
本実施例の車輪ストッパー10は、そのベース120にて既述したようにストッパー部140をその開口周りに三方を取り囲む他、ベース120の上面に、車輪滑り止め用の円形突起122を点在配置して備える。この円形突起122は、ベース120に乗り上げた車輪の滑り止めの機能を果たし、その点在の様子については、縞模様としたり、車輪ストッパー10のユーザーの所望するロゴマーク様にしたりすることもできる。後者の場合には、円形突起122がユーザーを区別する銘板、いわゆるネイムプレートとして機能する。
【0023】
本実施例の車輪ストッパー10は、ベース120から立ち上がった第1側壁160にその基部側から当該側壁自体が隆起した凸条220と第1小凸条222と第2小凸条224とを有する。第1小凸条222と第2小凸条224は、第1側壁160の一部が円弧状に隆起する凸条とされている。この場合、車輪ストッパー10にあっても、その形成に用いた薄板鋼板の厚みに比して、ストッパー部140の立ち上げ高さが各段に大きいことから、図17の概略断面図では、ベース120と第1側壁160、当該側壁の凸条220と第1小凸条222と第2小凸条224、有底部150および凹所240については断面描画され、第2側壁180と端部250については、外郭線が描画されている。そして、図17からも判るように、凸条220を含む第1小凸条222と第2小凸条224の各凸条は、ストッパー部140の開口側から見えれば、第1側壁160、それ自体が陥没して形成されたものであり、凹所240は第2側壁180の中央部位が第1側壁160の側、つまりストッパー部140の内側(内部空間側)に凸となる。よって、次のようにして製造できる。図18は本実施例の車輪ストッパー10の製造の様子を概略的に示す説明図である。
【0024】
図示するように、車輪ストッパー10の製造工程は、大きく二つに分かれる。まず第1は、凹所240を有しない形状のストッパー部140をベース120から立ち上げて成型し、第2に、ストッパー部140の第2側壁180に凹所240を成型する。これら各工程においては、金型セットの都合上、更に細分化することもできる。第1の成型では、図18(A)に示すように、凹金型の下型と凸金型の上型を対向配置し、その間に、ワークWをセットする。このワークWは、板厚が1〜3mm程度の薄板鋼板、例えばステンレス鋼板であり、上下の金型による型成型に処され、車輪ストッパー10の中間成型品となる。下型は、そのキャビティーKの金型面を、車輪ストッパー10のベース120およびストッパー部140の外側形状に倣った形状とし、上型は、凸型Tの金型面を車輪ストッパー10のベース120およびストッパー部140の内側形状に倣った形状とする。この場合、ストッパー部140の成型のための金型面は、凹所240を備えない第2側壁180に倣ったものとなる。そして、ストッパー部140の立ち上がり高さ、即ちワークWのプレス代は、板厚に対して数十倍であるので、ワークWは深絞り成型に処されることになる。上記したワークWの板厚は、上記した数値範囲に限定されるものではなく、深絞りようのプレス能力や車輪ストッパー10の重量を勘案して種々採択できる。上記した中間成型品の成型に続く第2の成型では、図18(B)に示すように、上記の中間成型品の内側に内型を入り込ませ、外型を内型に近接させて後成型を行い、凹所240を第2側壁180に成型する。この場合、内型が形成するキャビティーKと、外型の金型面は、第2側壁180の中央において第1側壁160の側に窪んだ凹所240の形状に倣ったものとなる。
【0025】
以上説明した本実施例の車輪ストッパー10は、床面に設置される平板状のベース120からストッパー部140を床面上向きに立ち上げ、このストッパー部140における第1側壁160を、有底部150を頂上として該頂上からベース120に到って、ストッパー機能を果たす車輪干渉部位とする。図19は車輪と車輪ストッパー10との関係を示しつつ車輪ストッパーとしての機能を説明する説明図である。図示するように、本実施例の車輪ストッパー10は、ストッパー部140を、車輪WHのほぼ1/3の高さまでベース120から立ち上げているので、車輪WHがストッパー部140の第1側壁160に干渉することで、車輪WHの転動をそれ以上起こさないようにするストッパーとしての機能を確実に果たす。この場合、ストッパー部140の立ち上げ高さを、車輪WHの径の半分ほどとすることもできる。
【0026】
その一方、本実施例の車輪ストッパー10は、車輪の干渉部位となる第1側壁160と第2側壁180とを向かい合わせ、この両側壁に掛けて第3側壁200R、200Lを延ばして対向させ、ストッパー部140を、その開口周りを上記の側壁で取り囲んだ有底の凸形状のものとする。このため、本実施例の車輪ストッパー10によれば、ベース120から立ち上がったストッパー部140の強度を確保する。その上で、本実施例の車輪ストッパー10は、第1側壁160に、その基部からから凸条220と第1小凸条222と第2小凸条224を第1側壁160の幅方向(車輪幅方向)に平行に並べて備え、これら凸条を第1側壁160自体が隆起したものとする。よって、本実施例の車輪ストッパー10によれば、車輪WHの干渉部位となる第1側壁160の強度を、当該第1側壁に設けた凸条220と第1小凸条222および第2小凸条224にて高めることができる。
【0027】
加えて、本実施例の車輪ストッパー10では、開口を有するストッパー部140を、第1側壁160とその両側の第3側壁200Rと第3側壁200Lの端部を含んでベース120とそのベース縁部120Rおよびベース縁部120Lにて取り囲む。このため、ストッパー部140をその開口部においてベース120にて補強できる。これらの結果、本実施例の車輪ストッパー10によれば、有底の凸形状をなすストッパー部140の補強に当たって他の部材を用いる必要がないので、軽量化を図ることができる。しかも、本実施例の車輪ストッパー10によれば、ストッパー部140の第1側壁160それ自体が隆起した凸条220と第1小凸条222と第2小凸条224による補強とベース120による補強により、実用に耐える強度についてもこれを確保できる。
【0028】
上記した本実施例の車輪ストッパー10は、平板状のベース120から有底のストッパー部140を立ち上げた上で第1側壁160の凸条220と第1小凸条222と第2小凸条224についても第1側壁160それ自体が隆起したものとした。よって、図18で説明したように、ベース120およびストッパー部140の外側形状に倣った形状のキャビティーKを有する下型と、ベース120およびストッパー部140の内側形状に倣った形状の金型面を有する凸型Tの上型とを用いたワークW(薄板鋼板)の深絞り成型により、本実施例の車輪ストッパー10を容易に製造でき、コスト低減を図ることもできる。
【0029】
また、本実施例の車輪ストッパー10では、ストッパー部140の第1側壁160をベース120から立ち上げた上で、この第1側壁160の基部に凸条220を有する。よって、図19に示すように、車輪WHがベース120に乗り上げてから第1側壁160の側に転動すると、その車輪WHは、ストッパー部140の第1側壁160と干渉する以前に凸条220に当接する。このため、凸条220への車輪WHの当接により、車両操作者は、まもなく車輪WHが第1側壁160に干渉することを察知できるので、その後のブレーキ操作を経た停車操作が簡便となる。この場合、車輪WHが凸条220を乗り換えて転動しても、その車輪WHは既述したように第1側壁160と干渉して、それ以上の転動が起きないようになる。
【0030】
また、本実施例の車輪ストッパー10は、車輪WHと干渉する第1側壁160に対向する第2側壁180のほぼ中央に、凹所240を備え、この凹所240を第1側壁160の側に凸となるよう窪んだ凹所とし、有底部150から第2側壁180の端部に掛けて有する。よって、本実施例の車輪ストッパー10によれば、第2側壁180についても凹所240にて補強できるので、ストッパー部140の強度を更に高めることができる。これらの結果、本実施例の車輪ストッパー10では、1〜3mmの板厚の薄板鋼板(ステンレス鋼板)を用いるに過ぎないにしても、実用に耐える強度確保の実効性が高まる。
【0031】
次に、ストッパー部140の強度を更に高める変形例について説明する。図20は変形例の補強材300を示す概略斜視図である。
【0032】
図示するように、この補強材300は、既述した車輪ストッパー10と同様の薄板鋼板の屈曲成型材であり、図における背面側に傾斜した第1壁材310を備え、当該壁材の両端から第2壁材320R、320Lを突出して備える。第1壁材310は、その中央に、より傾斜した凹形状の溝部330を備え、左右の第2壁材320R、320Lは、図における前方側に屈曲部322を有する。第1壁材310と第2壁材320R、320Lおよび屈曲部322は、その下端がいわゆる面一とされているので、補強材300は、図示するように自立する。
【0033】
第2壁材320Rは、その上端輪郭を、屈曲部322の側から湾曲して傾斜する傾斜受け座324とし、当該受け座に、第1受け座326と第2受け座328とを備え、傾斜受け座324の上端を天井受け座340とする。この天井受け座340は、既述した車輪ストッパー10のストッパー部140における有底部150の内径面形状に合致する形状とされ、傾斜受け座324は、ストッパー部140における第1側壁160の内壁面形状に合致する形状とされている。第1受け座326と第2受け座328についても、それぞれ第1側壁160の第1小凸条222と第2小凸条224の内壁面形状と合致する形状とされている。第2壁材320Lについても同様である。また、第1壁材310および左右の第2壁材320R、320Lの立ち上がり高さは、車輪ストッパー10のベース120の底面からストッパー部140における有底部150の内壁面までの高さと同じとされている。その上で、溝部330は、ストッパー部140の第2側壁180における凹所240とその傾斜程度が同じで、左右の第1壁材310と協働して、ストッパー部140の内側から凹所240を取り囲むように形成されている。つまり、第1壁材310は、溝部330の両側範囲において、第2側壁180の内壁面、詳しくは凹所240の内側側面と合致するよう形成されている。
【0034】
この補強材300は、次のようにして車輪ストッパー10に組み込まれる。図21は補強材300の組み込みの様子を車輪ストッパー10の背面側から示す説明図、図22は補強材300の組み込み済みの状態を車輪ストッパー10の底面の側から示す説明図、図23は補強材300を組み込んだ状態で車輪ストッパー10を断面視して示す説明図である。
【0035】
図21の白抜き矢印で示すように、補強材300は、ストッパー部140に対してその底面側の開口から組み込まれる。図22に示す組み込み完了状態では、補強材300は、第1壁材310を第2側壁180の端部から有底部150に掛けて延ばして、第2側壁180の内壁面に接合させる。また、第1壁材310に左右で接合した第2壁材320R、320Lについては、これらを、第1壁材310からストッパー部140の第1側壁160の側に延ばす。そして、補強材300は、第1側壁160の内壁面に第2壁材320R、320Lの傾斜受け座324を当接させ、有底部150の内壁面には天井受け座340を、第1小凸条222と第2小凸条224の内壁面にはそれぞれ第1受け座326と第2受け座328を当接させる。第2側壁180の凹所240については、既述したように、溝部330と第1壁材310とでこれを取り囲む。この場合、第2側壁180や凹所240の内壁面にて接着剤にて補強材300を接着固定したり、凹所240の底部でのスポット溶接等により補強材300を固定するようにできる。
【0036】
以上説明した変形例によれば、ストッパー部140の開口から組み込んだ補強材300により、ストッパー部140をその内部から補強できるので、ストッパー部140について更なる強度向上を図ることができる。そして、補強材300は、薄板鋼板の屈曲成型材であることから、車輪ストッパー10の軽量化を損なうことがない。また、補強材300は、溝部330とその左右の第1壁材310にて第2側壁180の凹所240を取り囲んだ上で、第1壁材310の両端側で第2壁材320R、320Lにてストッパー部140を補強する。よって、ストッパー部140をその内部から高い実効性で補強できると共に、補強材300の位置ズレも起こさないようにできる。
【0037】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこのような実施の形態になんら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々なる態様での実施が可能である。例えば、上記の実施例では、薄板鋼板の深絞り成型により車輪ストッパー10を製造したが、図18で説明した金型を樹脂成型用の金型として、樹脂成型品の車輪ストッパー10とできる。樹脂製の車輪ストッパー10であれば、各部位の肉厚を10〜20mm程度としても、軽量化と強度確保とを両立できる。
【0038】
また、ストッパー部140の第2側壁180については、凹所240を有しない平板状で傾斜した側壁とできるほか、左右の第3側壁200Rと第2壁材320Lとにおいて第1側壁160の側に湾曲して傾斜した側壁とすることもできる。
【0039】
この他、補強材300については、次のように変形することもできる。図24は他の変形例の補強材300Aを示す概略斜視図である。図示するように、この補強材300Aは、既述した補強材300と異なり、溝部330を備えず、向かい合う第1壁材310と屈曲部322との間に第2壁材320を接合して備える。傾斜受け座324等を有する点では、補強材300と同一である。この変形例の補強材300Aは、ストッパー部140の内部において、凹所240の両側の第2側壁180の内壁面に第1壁材310が接合するよう組み込まれ、補強材300と同様にストッパー部140をその内部から補強する。
【0040】
また、本実施例では、凸条220をベース120と平行な上面を有するものとしたが、第1小凸条222や第2小凸条224と同じような第1側壁160の壁面が円弧状に隆起した凸条とすることもできる。この他、本実施例では、凸条220を始めとする凸条を、第1側壁160の幅方向に平行に並べて備えるようにしたが、第1小凸条222のように第1側壁160の壁面が円弧状に隆起した凸条を、第1側壁160の有底部150からベース120の側に延ばして、複数設けるようにしたり、有底部150からベース120の側に向けて斜めに複数も受けるようにすることもできる。こうしても、ストッパー部140の強度を確保できる。
【符号の説明】
【0041】
10…車輪ストッパー
100…車輪ストッパー
120…ベース
120L…ベース縁部
120R…ベース縁部
122…円形突起
130…貫通孔
140…ストッパー部
150…有底部
160…第1側壁
180…第2側壁
200L…第3側壁
200R…第3側壁
220…凸条
222…第1小凸条
224…第2小凸条
240…凹所
250…端部
300…補強材
300A…補強材
310…第1壁材
320…第2壁材
320L…第2壁材
320R…第2壁材
322…屈曲部
324…傾斜受け座
326…第1受け座
328…第2受け座
330…溝部
340…天井受け座
W…ワーク
K…キャビティー
T…凸型
WH…車輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪ストッパーであって、
床面に設置されるベースと、
前記床面の側で開口した有底の凸形状をなして前記ベースから床面上向きに立ち上がるストッパー部とを備え、
該ストッパー部は、前記有底部を頂上として該頂上から前記ベースに到る第1側壁をストッパー機能を果たす車輪干渉部位とし、該第1側壁自体が隆起した凸条を前記第1側壁に複数有した上で、前記第1側壁と、これに向かい合う第2側壁と、前記第1側壁の幅方向端部側において前記第1側壁から前記第2側壁に掛けて延びて対向する第3側壁とで前記凸形状をなし、
前記ベースは、前記第1側壁の端部と、前記対向する第3側壁の端部とを含んで、前記ストッパー部を取り囲む
車輪ストッパー。
【請求項2】
前記ストッパー部は、前記複数の凸条のそれぞれを前記第1側壁の幅方向に延ばして前記第1側壁に平行に有する請求項1に記載の車輪ストッパー。
【請求項3】
前記複数の凸条の一つは、前記ベースから立ち上がる前記第1側壁の基部に位置する請求項2に記載の車輪ストッパー。
【請求項4】
前記ストッパー部は、前記第2側壁に、前記第1側壁の側に凸となるよう窪んだ凹所を前記頂上から前記第2側壁の端部に掛けて有する請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の車輪ストッパー。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4いずれかに記載の車輪ストッパーであって、
更に、
前記ストッパー部の前記開口から組み込まれる補強材を備え、
該補強材は、
前記第2側壁の端部から前記頂上に掛けて延び、前記第2側壁の内壁面に接合する板状の第1材と、
前記第1材に接合されて前記第1材から前記第1側壁の側に延び、前記第1側壁の内壁面と前記頂上の内壁面とにそれぞれ当接する板状の第2材とを有する
車輪ストッパー。
【請求項6】
前記補強材は、前記第1材を前記第2側壁の前記凹所を取り囲むよう屈曲形成して備え、前記第2材を前記第1材の両端の側に有する請求項5に記載の車輪ストッパー。
【請求項7】
前記ストッパー部は、前記第2側壁の端部を前記ベースの底面よりも延ばし、該端部を凹凸が連続した凹凸端部とする請求項1ないし請求項6いずれかに記載の車輪ストッパー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2012−131440(P2012−131440A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286933(P2010−286933)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(592209984)株式会社泰生工業 (6)