説明

車輪ボルト用穴の間に軸線方向切欠きを持つ車輪ボス

本発明は、車輪ボス(1)であって、中心区域(2)、それに半径方向に続く半径方向外側区域(3)、中心区域(2)から軸線方向に突出して車輪軸受を受入れる軸受区域(4)、及び軸線方向反対側にあって制動円板及び車輪リムを受入れる受入れ区域(20)を持ち、半径方向外側区域(3)に車輪ボルトを受入れる穴(5,6,7,8)が形成されているものに関する。すべての活荷重に耐えることができかつすべての作動条件で制動円板に確実な当接面を提供する特に軽い車輪ボスを実現するため、車輪ボス(1)が少なくとも若干の穴(5,6,7,8)の間に切欠き(9,10,11,12,13)を持ち、これらの切欠きが車輪ボス(1)の半径方向外側区域(3)の壁を完全に貫通し、それぞれの切欠き(9,10,11,12,13)の間に補強リブ(30)が形成されて、切欠き(9,10,11,12,13)の間の半径方向外側区域(3)を軸線方向に厚くしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪ボスであって、中心区域、それに半径方向に続く半径方向外側区域、中心区域から軸線方向に突出して車輪軸受を受け入れる軸受区域、及び軸線方向反対側にあって制動円板及び車輪リムを受入れる受入れ区域を持ち、半径方向外側区域に車輪ボルトを受入れる穴が形成されているものに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用の車輪ボスは、多くの構成例で当業者に周知である。それらは、自動車において駆動軸と車輪との結合部材として使用される。駆動軸との結合のため、車輪ボスは通常中心受入れ区域を持ち、この中心受入れ区域の差込み歯へ駆動軸の自由端が差込み可能である。車輪のリムを取付けるため、車輪ボスの半径方向外側区域にねじ山を持つ穴が形成され、制動円板を介して車輪ボルトがこれらの穴へねじ込み可能である。更に車輪ボスは、通常車輪リム又は制動円板を受入れかつ半径方向心出しするための軸線方向区域を持っている。
【0003】
車両の作動中に車輪と共に回転する質量を減少するため、このような車輪ボスが貫通しない材料切欠きを持っていることも公知であり、それにより車両の走行特性が改善される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の基礎になっている課題は、このような車輪ボスを発展させて、従来の車輪ボスと対比可能な寸法で、その質量が減少されるようにすることである。その際車輪ボスが、高い傾倒剛性及び湾曲剛性を持ち、車輪ボルトの締付けモーメントに関しても作動中に現れる力に関しても、制動円板及びリムの精確な案内を保証するようにする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題を解決するため、請求項1の特徴を持つ車輪ボスが設けられている。本発明の有利な展開及び構成は従属請求項からわかる。
【0006】
従って車輪ボスであって、中心区域、それに半径方向に続く半径方向外側区域、中心区域から軸線方向に突出して車輪軸受を受け入れる軸受区域、及び軸線方向反対側にあって制動円板及び車輪リムを受入れる受入れ区域を持ち、半径方向外側区域に車輪ボルトを受入れる穴が形成されているものが提案される。与えられた課題を解決するため更に、車輪ボスが少なくとも若干の穴の間に切欠きを持ち、これらの切欠きが車輪ボスの半径方向外側区域の壁を完全に貫通し、それぞれの切欠きの間に補強リブが形成されて、切欠きの間の半径方向外側区域を軸線方向に厚くしている。
【0007】
提案される構造によって、車両駆動軸に結合し、車輪軸受を受入れ、かつ制動円板及び車輪リムを受入れる軸線方向装置構成部分を持つ車輪ボスが提供される。更に車輪ボスは、車輪ボルト用穴及び貫通切欠きにより高度に軽量構造である半径方向外側区域を持っている。スポーク状補強リブにより車輪ボスはすべての活荷重に耐えることができる。それぞれの寸法及び/又は車輪ボスに対する機械的要求に応じて、車輪ボスを以下の特徴に従って構成することができる。
【0008】
好ましい実施形態では、切欠きが、半径方向外側区域のそれぞれ2つの穴の間に形成されている。それにより比較的軽い車輪ボスが提供されるけれども、車輪ボスを必ずしもこのように構成しなくてもよい。むしろ切欠きが例えば車輪ボルトを受入れるそれぞれ複数の孔を切欠きの間に含むことも可能である。
【0009】
本発明の別の展開にでは、補強リブが車輪ボスの一方の側にのみ形成されている。これは鋳造技術上の製造費及びそれによるこのような車輪ボスの製造費を減少する。その際軸受区域が車輪ボスから軸線方向に突出する車輪ボスの側に、補強リブが形成されているのがよい。この構造は、車輪ボスの補強リブのない反対側が、制動円板及び車輪リム用の平らな当接面を形成できる、という利点を伴っている。
【0010】
さらに補強リブが車輪ボルト用の穴を包囲するように形成されているのがよい。それによって、車輪ボルトを介して駆動トルクを車輪に伝達する車輪ボスの範囲が機械的に補強されて有利に形成される。
【0011】
切欠き及び補強リブが、半径方向外側区域の半径面内で、ほぼ台形状、腎臓状又は三角形状の断面を持っているのがよく、それにより一方では比較的多くの重量を形成する車輪ボスの材料が節約され、他方では補強リブが有利な形状を持っている。その際切欠きの短辺が半径方向内方へ車輪ボスの回転軸線の方へ向き、補強リブの短辺が半径方向外方へ向くように、これらの切欠きが車輪ボスに形成されている。
【0012】
本発明による車輪ボスの別の特徴は、中心区域が円錐状に形成され、その際中心区域が軸受区域の方へ軸線方向に先細になっていることである。これに関連して、切欠きが半径方向に中心区域の円錐状範囲の中まで延び、補強リブの半径方向内側端部が中心区域の半径方向外側端部に続いていると、有利である。
【0013】
車輪ボスにおけるできるだけ応力の小さい力推移を保証できるようにするため、本発明によれば、補強リブが、車輪ボスの回転方向に向く両方の端面及びこれら両方の端面を半径方向外側で結合する半径方向外側面を持ち、補強リブのそれぞれの半径方向外側面が、車輪ボスの円筒状周面に軸線方向に同一面をなして続くか又は引込んでいる。この構成は、同時にこのような車輪ボスの運搬及び組立ての際負傷の防止にも役立つ。
【0014】
これに関連して、補強リブが、車輪ボスの回転軸線に対して斜めの角をなしておりかつすべての補強リブ及び中心区域の半径方向外側端部を包囲する周面を持っていると有利である。
【0015】
最後に、補強リブがそれぞれ平らな半径面を持ち、それによりこれに関する鋳型及び車輪ボス自体の製造費が減少する。
【0016】
本発明が、添付図面により実施例について以下に詳細に説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1及び2から明らかなように、本発明により構成される車輪ボス1は、まず車輪ボス1の回転軸線21に対してほぼ直角に構成されている中心区域2を含んでいる。この中心区域2から回転軸線21に対して同軸的に、図示しない車輪軸受を受入れる軸受区域4、及びここには図示してない制動円板及び同様に図示してない車輪リムを保持して心出しする段付けされた受入れ区域20が延びている。軸受区域4は、その半径方向外面上に車輪軸受の内レースが取付け可能であり、その軸線方向穴には、駆動軸の軸線方向に歯を切られたジャーナルを受入れる差込み歯9が形成されている。軸受区域4の軸線方向自由端は環状隆起18により区画されている。
【0018】
この実施例では、車輪ボス1の中心区域2が回転軸線21に対して円錐状に形成され、この中心区域2の直径は、半径方向外側から軸受区域4の方へ減少している。中心区域2は、その直径が最大の周囲の所で、車輪ボス1の受入れ区域20上へ押しはめられる制動円板及び車輪リムの取付けに役立つ半径方向外側区域3へ移行している。少なくとも車輪リムは、車輪ボルトにより車輪ボス1の半径方向外側区域3に取付け可能である。そのため車輪ボルトは、図示しないねじ山を備えた穴5,6,7,8へねじ込まれる。
【0019】
車輪ボス1には、その半径壁を貫通する切欠き9,10,11,12,13が形成され、穴5,6,7,8の間に同じように分布して設けられている。図1及び2に示す実施例では、切欠き9,10,11,12,13は半径面内でほぼ台形状の断面形状を持っている。その際切欠きの周囲に関して長い方の辺は、半径方向外側区域3の半径方向外側に、また周囲に関して短い方の辺は半径方向内側に形成されている。これらの図1及び2が明らかに示すように、切欠き9,10,11,12,13は半径方向に円錐状中心区域2の中まで延びていてもよい。
【0020】
切欠き9,10,11,12,13は、軸受区域4の方へ見てそれぞれ3つの軸線方向区域14,15,16を持ち、これらのうち第1の軸線方向区域14は、回転軸線21に対してほぼ平行に又は半径方向外側区域3の半径面に対して直角に向く壁面を持ち、それに続く両方の軸線方向区域15,16の壁面は、互いに軸線方向に減少する90°より小さい異なる角で半径面に対して傾斜している。これにより車輪ボス1の材料組織を保証する切欠き9,10,11,12,13の縁の十分な面取りが行われる。
【0021】
更に別の有利な構成によれば、切欠き9,10,11,12,13はその半径方向内方にある側で円弧状推移17を持ち、かつ/又は全体として丸められた隅を持っている。それにより切欠き9,10,11,12,13はほぼ腎臓状の形状を持っている。切欠き9,10,11,12,13の縁及び辺の上述した形成によって、車輪ボス1内で応力の少ない力推移が実現される。
【0022】
本発明の重要な局面によれば、車輪ボス1が、その対向する半径面の少なくとも1つに、中心区域2から車輪ボス1の半径方向端部まで延びる補強リブ30を持っている。これらの補強リブ30はそれぞれ切欠き9,10,11,12,13の間に形成され、それにより上記の車輪ボルトを受入れる穴5,6,7,8の軸線方向長さを延長している。換言すれば、それにより車輪ボス1は、半径方向内側で中心区域2から始まって半径方向外方へ半径方向外側区域3の外側端部まで延びるスポーク状補強区域30を持っている。この構造により、非常に軽いけれども曲げに対して強い車輪ボスが構成されて、これに作用するすべての活荷重を損傷なしに吸収する。
【0023】
各補強リブ30は、これが車輪ボス1の回転方向に向く両方の端面31及びこれらの端面31を半径方向外側で結合する半径方向外側面33を持つように、構成されているのがよい。補強リブ30のそれぞれの半径方向外側面33は、車輪ボス1のほぼ円筒状の周面34に、軸線方向に同一面をなして続いている。更にこの車輪ボス1は包囲する周面32を持ち、この周面32は車輪ボス1の回転軸線1に対して傾斜角をなしており、かつ補強リブ30及び中心区域2の半径方向外側端部を包囲している。最後に補強リブ30は平らな半径面35を持っている。
【0024】
車輪ボス1の面31,32,33,34,35の上述した構成は、駆動軸から車輪ボス1へ供給されるトルクを、そこに取付けられる車輪リム又は制動円板へ応力の少ない応力で伝達するのを可能にし、輸送又は取付けの際車輪ボスを損傷なしに取扱うのを可能にする。
【0025】
制動円板及び車輪リム1用受入れ区域20を持つ車輪リムの裏側は、図2に示すように、半径方向外側区域3をなるべく平らに形成されて、制動円板及び/又は車輪リムのための周囲に関して波状でない当接面を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】 本発明により構成される車輪ボスを駆動及び車輪軸受側から見た図で示す。
【図2】 図1による車輪ボスを反対側から見た図で示す。
【符号の説明】
【0027】
1 車輪ボス
2 中心区域
3 半径方向外側区域
4 軸受区域
5〜8 車輪ボルト用の穴
9〜13 切欠き
14 第1の軸線方向区域
15 第2の軸線方向区域
16 第3の軸線方向区域
17 切欠きの円弧状推移
18 環状隆起
19 差込み歯
20 制動円板及び車輪リム用の受入れ区域
21 回転軸線
30 補強リブ
31 補強リブの端面
32 補強リブの周面
33 補強リブの半径方向外側面
34 車輪ボスの周面
35 補強リブの半径面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪ボス(1)であって、中心区域(2)、それに半径方向に続く半径方向外側区域(3)、中心区域(2)から軸線方向に突出して車輪軸受を受入れる軸受区域(4)、及び軸線方向反対側にあって制動円板及び車輪リムを受入れる受入れ区域(20)を持ち、半径方向外側区域(3)に車輪ボルトを受入れる穴(5,6,7,8)が形成されているものにおいて、車輪ボス(1)が少なくとも若干の穴(5,6,7,8)の間に切欠き(9,10,11,12,13)を持ち、これらの切欠きが車輪ボス(1)の半径方向外側区域(3)の壁を完全に貫通し、それぞれの切欠き(9,10,11,12,13)の間に補強リブ(30)が形成されて、切欠き(9,10,11,12,13)の間の半径方向外側区域(3)を軸線方向に厚くしていることを特徴とする、車輪ボス。
【請求項2】
切欠き(9,10,11,12,13)が、半径方向外側区域(3)のそれぞれの2つの穴(5,6,7,8)の間に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の車輪ボス。
【請求項3】
補強リブ(30)が車輪ボス(1)の一方の側にのみ形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の車輪ボス。
【請求項4】
軸受区域(4が車輪ボス(1)から軸線方向に突出する車輪ボス(1)の側に、補強リブ(30)が形成されていることを特徴とする、請求項3に記載の車輪ボス。
【請求項5】
補強リブ(30)が穴(5,6,7,8)を包囲するように形成されていることを特徴とする、請求項1〜4の1つに記載の車輪ボス。
【請求項6】
切欠き(9,10,11,12,13)お呼び補強リブ(30)が、半径方向外側区域の半径面内で、ほぼ台形状、腎臓状又は三角形状の断面を持っていることを特徴とする、請求項1〜5の1つに記載の車輪ボス。
【請求項7】
切欠き(9,10,11,12,13)の短辺が半径方向内方へ車輪ボス(1)の回転軸線(21)の方へ向き、補強リブの短辺が半径方向外方へ向くように、これらの切欠きが車輪ボスに形成されていることを特徴とする、請求項5に記載の車輪ボス。
【請求項8】
中心区域(2)が円錐状に形成され、その際中心区域(2)が軸受区域(4)の方へ軸線方向に先細になっていることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の車輪ボス。
【請求項9】
補強リブ(30)の半径方向内側端部が中心区域(2)の半径方向外側端部に続いていることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の車輪ボス。
【請求項10】
補強リブ(30)が、車輪ボス(1)の回転方向に向く両方の端面(31)及びこれら両方の端面(31)を半径方向外側で結合する半径方向外側面(33)を持ち、補強リブ(30)のそれぞれの半径方向外側面(33)が、車輪ボス(1)の円筒状周面(34)に軸線方向に同一面をなして続くか又は引込んでいることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の車輪ボス。
【請求項11】
補強リブ(30)が、車輪ボス(1)の回転軸線に対して斜めの角をなしておりかつすべての補強リブ(30)及び中心区域(2)の半径方向外側端部を包囲する周面(32)を持っていることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の車輪ボス。
【請求項12】
補強リブ(30)がそれぞれ平らな半径面(35)を持っていることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の車輪ボス。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−520642(P2009−520642A)
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−550627(P2008−550627)
【出願日】平成18年12月9日(2006.12.9)
【国際出願番号】PCT/DE2006/002194
【国際公開番号】WO2007/076773
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(506420843)シエフレル・コマンデイトゲゼルシヤフト (80)