説明

車輪懸架装置

【課題】キャンバ剛性を確保して操縦安定性を確保できる車輪懸架装置を提供する。
【解決手段】車輪懸架装置10は、車体11にサスペンションアーム12を介して支持部材14が設けられ、支持部材にホイールリム23が回転自在に支持され、ホイールリムにタイヤ31が設けられている。このホイールリムは、タイヤを支持する内側環状部および外側環状部と、内側環状部および外側環状部から半径方向中心側に突出された環状突出部26とを備えている。この環状突出部は、車体側に設けられた内壁27と、内壁に対して車幅方向外側に設けられた外壁28とを備えている。そして、内壁および外壁が支持部材で回転自在に挟持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体にサスペンションアームを介して支持部材が設けられ、支持部材に車輪が回転自在に支持された車輪懸架装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両は、通常、車体にサスペンションアームを介してナックルなどの支持部材が設けられ、この支持部材に車輪が回転自在に支持されている。
ところで、サスペンションアームのなかには、キャンバ角の変化を抑えるためにキャンバ剛性を確保するように構成したものがある。
【0003】
このサスペンションアームによれば、キャンバ剛性を確保することで、例えば車両の旋回走行において車輪に横力が入力される際に、入力された横力で車輪のキャンバ角を変化させないように保つことが可能である。
このように、車輪のキャンバ角を変化させないように保つことで、車両の操縦安定性を良好に確保することができる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−1110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、通常の車輪は、タイヤがリムに取り付けられ、リムにディスクホイールが一体に設けられている。そして、このディスクホイールがナックルなどの支持部材にボルト止めされている。
この通常の車輪によれば、車両の旋回などで横力が入力される際に、ディスクホイールが弾性変形して車輪のキャンバ角が変化する虞がある。
【0006】
この対策として、ディスクホイールの肉厚寸法を大きくしてディスクホイールの弾性変形を抑え、車輪のキャンバ角を変化させないようにすることが考えられる。
しかし、ディスクホイールの肉厚寸法を大きくすると、ディスクホイールの重量が増して車両のばね下重量(質量)が増加する。
【0007】
車両のばね下重量(質量)が増加すると、例えば、車輪が路面の凹凸形状に追従し難くなり、車輪の接地性および乗り心地に影響を与える虞がある。
車輪の接地性に影響を与えることで、操縦安定性を良好に確保し難くなることが考えられる。
【0008】
本発明は、キャンバ剛性を確保して操縦安定性を良好に確保することができる車輪懸架装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、車体にサスペンションアームを介して支持部材が設けられ、前記支持部材にホイールリムが回転自在に支持され、前記ホイールリムにタイヤが設けられた車輪懸架装置において、前記ホイールリムは、前記タイヤの内周部を支持する環状部と、前記環状部から半径方向中心側に突出された環状突出部と、を備え、前記環状突出部は、前記車体側に設けられた内壁と、前記内壁に対して車幅方向外側に設けられた外壁と、を備え、前記内壁および前記外壁を前記支持部材で回転自在に挟持したことを特徴とする。
【0010】
請求項2は、前記環状突出部は、前記内壁および前記外壁間にドラム部を備え、前記ドラム部および前記支持部材間の空間に、前記ホイールリムの回転を制動する制動手段を備え、前記制動手段のシュー部材を前記ドラム部に押し付けて前記ホイールリムを制動可能としたことを特徴とする。
【0011】
請求項3は、前記支持部材は、前記サスペンションアームに連結されるとともに前記内壁を第1ベアリングを介して回転自在に支持するナックル部と、前記ナックル部の車幅方向外側に設けられて前記外壁を第2ベアリングを介して回転可能に支持するホイールカバー部と、を備え、前記ホイールカバー部および前記ナックル部を一体に組み付けることで、前記環状突出部の前記内壁および前記外壁を回転可能に挟持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、ホイールリムに、環状部から半径方向中心側に突出された環状突出部を備えた。そして、この環状突出部の内壁および外壁を支持部材で回転自在に挟持した。
よって、支持部材でホイールリムを直接支持することができるので、従来技術のディスクホイールを不要にできる。
【0013】
ここで、支持部材はホイールリム(すなわち、車輪)を回転自在に支持する部材であり剛性の高い部材である。
よって、例えば、車両の旋回時などでタイヤ(車輪)に横力が入力した際に、入力した横力で支持部材が弾性変形することを防ぐことができる。
これにより、車輪のキャンバ剛性を確保してキャンバ角が変化することを抑えて操縦安定性を良好に確保することができる。
【0014】
請求項2に係る発明では、環状突出部にドラム部を備え、このドラム部に制動手段のシュー部材を押し付けてホイールリム(したがって、車輪)を制動可能とした。
ドラム部にシュー部材を押し付けることで、ドラム部およびシュー部材間に摩擦熱が発生する。
ドラム部およびシュー部材間に発生した摩擦熱をドラム部を経てタイヤの内部空間に伝えることができる。
【0015】
内部空間に摩擦熱を伝えることで、内部空間に伝えられた熱でタイヤを内壁側から暖めることができる。タイヤを暖めることで、例えば、寒冷地(特に、雪道)においてタイヤの表面温度を適正に確保することができる。
これにより、タイヤの路面に対するグリップ性を高めることができ、操縦安定性を一層良好に確保することができる。
【0016】
また、制動時に発生した摩擦熱をドラム部を経てタイヤの内部空間に伝えることで、発生した摩擦熱をタイヤ全体に伝えることができる。
よって、内部空間に伝えられた熱でタイヤ全体を内壁側から暖めることができる。
これにより、例えば、寒冷地(特に、雪道)においてタイヤ全体の表面温度を適正に確保することができ、操縦安定性を一層良好に確保することができる。
【0017】
さらに、ホイールリムの環状突出部でドラム部を兼用することで、通常のドラム部と比較してドラム部のドラム外径やドラム幅を大きく確保することができる。
これにより、制動手段の制動能力を高めることができ、操縦安定性を一層良好に確保することができる。
【0018】
加えて、ホイールリムの環状突出部でドラム部を兼用することで、通常のドラム部を不要にできる。
このように、通常のドラム部を不要にすることで、部品点数を抑えて構成の簡素化や軽量化を図ることができる。
【0019】
請求項3に係る発明では、支持部材をナックル部およびホイールカバー部の2部材で構成した。そして、ナックル部およびホイールカバー部を一体に組み付けることで、環状突出部の内壁および外壁を回転可能に挟持するようにした。
このように、ナックル部およびホイールカバー部を一体に組み付けるだけで、車輪のキャンバ剛性を確保することができるので、組付け性(すなわち、生産性)を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る車輪懸架装置を示す断面図である。
【図2】図1の車輪懸架装置を分解した状態で示す断面図である。
【図3】図1の3−3線断面図である。
【図4】図1の4部拡大図である。
【図5】図3の車輪懸架装置からナックル部を除去した状態を示す側面図である。
【図6】図1の6矢視図である。
【図7】本発明に係る車輪懸架装置を組み付ける手順を説明する図である。
【図8】本発明に係る車輪懸架装置の車輪に横力が入力した場合の例を説明する図である。
【図9】本発明に係る制動手段で車輪を制動する例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0022】
実施例に係る車輪懸架装置10について説明する。
図1、図2に示すように、車輪懸架装置10は、車体11の側部11aに設けられたサスペンションアーム12と、サスペンションアーム12に設けられた支持部材14と、支持部材14に回転自在に支持された車輪16と、車輪16および支持部材14間に設けられた制動手段18とを備えている。
【0023】
サスペンションアーム12は、一例として、支持部材14(ナックル部45)の上アーム部52を車体11の側部11aに連結するアッパリンク21と、支持部材14(ナックル部45)の一対の下アーム部53を車体11の側部11aに連結する一対のロアリンク22とを備えている。
【0024】
車輪16は、支持部材14に回転自在に支持されたホイールリム23と、ホイールリム23に設けられたタイヤ31とを備えている。
【0025】
ホイールリム23は、鉄やアルミを含む金属製、あるいは非金属も含む複合材からなる部材である。
このホイールリム23は、タイヤ31の内側内周部(内周部)31aを支持する内側環状部(環状部)24と、タイヤ31の外側内周部(内周部)31bを支持する外側環状部(環状部)25と、内側環状部24および外側環状部25から半径方向中心側に突出された環状突出部26とを備えている。
【0026】
内側環状部24および外側環状部25は、車輪16の車軸34に対して平行に形成された環状の部位である。
内側環状部24および外側環状部25から環状突出部26が半径方向中心側に突出されている。
【0027】
環状突出部26は、車体11側に設けられた内壁27と、内壁27に対して車幅方向外側に設けられた外壁28と、内壁27および外壁28間にドラム部29とを備えている。
この環状突出部26は、内壁27、外壁28およびドラム部29で略富士山状に形成され、内面26aがタイヤ31の内部空間32に対峙している。
【0028】
内壁27は、内側環状部24から半径方向中心側で、かつ、車幅方向外端に向けて傾斜状に張り出された環状の傾斜壁である。
この内壁27に、第1ベアリング36の外ころ支持部39(図4参照)を受け入れる内側環状溝27aが形成されている。
【0029】
外壁28は、外側環状部25から半径方向中心側で、かつ、車幅方向内端に向けて傾斜状に張り出された環状の傾斜壁である。
この外壁28に、第2ベアリング41の外ころ支持部44(図4参照)を受け入れる外側環状溝28aが形成されている。
外壁28の先端28bおよび内壁27の先端27bにドラム部29が一体に設けられている。
【0030】
ドラム部29は、車軸34に対して平行に形成され、制動手段18の一対のシュー部材61が押し付けられる環状の部位である。
このドラム部29は、通常用いられているドラムブレーキのドラムを兼用する部材である。
このように形成された環状突出部26は、支持部材14に第1ベアリング36および第2ベアリング41を介して回転自在に支持されている。
【0031】
支持部材14は、内壁27を支えるナックル部45と、外壁28を支えるホイールカバー部46と、ナックル部45およびホイールカバー部46を一体に組み付けるボルト47およびロックナット48とを備えている。
【0032】
図1、図3に示すように、ナックル部45は、サスペンションアーム12に連結されるとともに、車輪16(環状突出部26)の内壁27を第1ベアリング36を介して回転自在に支持する部材である。
【0033】
このナックル部45は、外形が円形状に形成されたナックル本体51と、ナックル本体51の上部から上方に向けて延出された上アーム部52と、ナックル本体51の下部近傍から斜め下方に向けて延出された一対の下アーム部53とを有している。
上アーム部52および一対の下アーム部53は、ナックル本体51から一定の間隔をおいて放射状(半径方向外側に向けて)に突出されている。
【0034】
ナックル本体51は、外形が円形状に形成され、取付孔51cが同軸上に形成されている。この取付孔51cにボルト47が圧入されることにより、ボルト47がナックル本体51に同軸上に固着されている。
ナックル本体51にボルト47が固着されることにより、ボルト47のねじ部47aがナックル本体51から車幅方向外端に向けて突出されている。
【0035】
上アーム部52は、ナックル本体51の上部から上方に向けて延出され、外面に上凹部52aが形成されている。
一対の下アーム部53は、ナックル本体51の一対の下部近傍から斜め下方に向けて延出され、外面に下凹部53aが形成されている。
上アーム部52に上凹部52aを形成するとともに下アーム部53に下凹部53aを形成することで、上アーム部52および下アーム部53の肉厚寸法を薄くして軽量化を図ることができる。
【0036】
上アーム部52の先端部52bおよび一対の下アーム部53の先端部53bに第1ベアリング36が支持されている。
図4、図5に示すように、第1ベアリング36は、上アーム部52の先端部52bおよび一対の下アーム部53の先端部53b(図1参照)に設けられた内ころ支持部37と、各内ころ支持部37に回転自在に支持されたころ38と、各ころ38を回転自在に支える環状の外ころ支持部39とを有する。
【0037】
内ころ支持部37は、上アーム部52の先端部52bに形成された上収容溝52cや、一対の下アーム部53の先端部53bに形成された下収容溝53cに収容されている。
環状の外ころ支持部39は、内壁27の内側環状溝27aに収容されている。
【0038】
図1、図6に示すように、ホイールカバー部46は、ナックル部45の車幅方向外側に設けられて、車輪16(環状突出部26)の外壁28を第2ベアリング41を介して回転可能に支持する部材である。
このホイールカバー部46は、外周が円形状に形成され、外面に複数の凹部46aが形成されている。
また、ホイールカバー部46は、同軸上に貫通孔46bが形成されている。
【0039】
ホイールカバー部46に複数の凹部46aを形成することで、ホイールカバー部46の肉厚寸法を薄くして軽量化を図ることができる。
貫通孔46bにボルト47が貫通され、貫通孔46bからねじ部47aが突出されている。
【0040】
ホイールカバー部46の外周部46cに環状の第2ベアリング41が支持されている。
図4、図6に示すように、第2ベアリング41は、ホイールカバー部46の外周に沿って設けられた環状の内ころ支持部42と、環状の内ころ支持部42に回転自在に支持された複数のころ43と、複数のころ43を回転自在に支える環状の外ころ支持部44とを有する。
【0041】
環状の内ころ支持部42は、ホイールカバー部46の外周に沿って形成された上収容溝46dに収容されている。
環状の外ころ外支持部44は、外壁28の外側環状溝28aに収容されている。
【0042】
図1、図2に示すように、ナックル部45に圧入したボルト47がホイールカバー部46の貫通孔46bに貫通され、貫通孔46bから突出されたねじ部47aにロックナット48がねじ結合されている。
【0043】
この状態で、ホイールカバー部46およびナックル部45が支持部材14として一体に組み付けられている。
一体に組み付けられた支持部材14で環状突出部26の内壁27および外壁28がホイールカバー部46およびナックル部45で回転可能に挟持されている。
【0044】
すなわち、環状突出部26の内壁27が第1ベアリング36を介してナックル部45(上アーム部52の先端部52bおよび一対の下アーム部53の先端部53b)に回転自在に支持されている。
また、環状突出部26の外壁28が第2ベアリング41を介してホイールカバー部46の外周部46cに回転自在に支持されている。
【0045】
これにより、ホイールカバー部46およびナックル部45が一体に組み付けられることで、環状突出部26(すなわち、車輪16)がホイールカバー部46およびナックル部45で回転自在に挟持(支持)されている。
【0046】
ここで、ホイールカバー部46およびナックル部45が一体に組み付けられることで支持部材14が構成されている。
この支持部材14で環状突出部26(車輪16)を直接支持することができるので、従来技術のディスクホイールを不要にできる。
【0047】
ところで、ホイールカバー部46およびナックル部45が一体に組み付けられた支持部材14は剛性の高い部材である。
よって、例えば、車両の旋回時などでタイヤ31(車輪16)に横力が入力した際に、入力した横力で支持部材14が弾性変形することを防ぐことができる。
これにより、車輪のキャンバ剛性を確保して操縦安定性を良好に確保することができる。
【0048】
図1、図3に示すように、ホイールカバー部46およびナックル部45で環状突出部26(すなわち、車輪16)を回転自在に挟持した状態において、支持部材14およびドラム部29間に収容空間56が形成される。
そして、支持部材14およびドラム部29間の収容空間56に、ホイールリム23(車輪16)の回転を制動する制動手段18が備えられている。
【0049】
図5に示すように、制動手段18は、ドラム部29の内周面に沿って配置された一対のシュー部材61と、一対のシュー部材61を回動自在に支えるアンカ62と、一対のシュー部材61をドラム部29に向けて押し広げるホイールシリンダ63とを備えている。
制動手段18は、通常用いられているドラムブレーキ装置と同じ構成である。
【0050】
一対のシュー部材61は、それぞれの略中央に長孔(図示せず)が形成され、各長孔に保持ピン64が差し込まれ、保持ピン64がホイールカバー部46およびナックル部45の一方に取り付けられている。
よって、一対のシュー部材61は、各保持ピン64を介してホイールカバー部46およびナックル部45の一方に移動自在に支持されている。
一対のシュー部材のうち一方がトレーリングシューであり、他方がリーディングシューである。
【0051】
この制動手段18によれば、一対のシュー部材61をホイールシリンダ63でドラム部29に向けて押し広げることで、一対のシュー部材61がドラム部29に押し付けられる。
図3〜図5においては、制動手段18の構成の理解の容易化を図るために一対のシュー部材61をドラム部29に押し付けた状態を示す。
一対のシュー部材61をドラム部29に押し付けることで、一対のシュー部材61でホイールリム23(すなわち、車輪16)を制動することができる。
【0052】
ここで、ドラム部29に一対のシュー部材61を押し付けることで、ドラム部29およびシュー部材61間に摩擦熱が発生する。
ドラム部29およびシュー部材61間に発生した摩擦熱をドラム部29を経てタイヤ31の内部空間32(図1参照)に伝えることができる。
【0053】
図1に示す内部空間32に摩擦熱を伝えることで、内部空間32に伝えられた熱でタイヤ31を内壁27側から暖めることができる。
タイヤ31を暖めることで、例えば、寒冷地(特に、雪道)においてタイヤ31の表面温度を適正に確保することができ、タイヤ31の路面71に対するグリップ性を高めることができる。
【0054】
さらに、図5に示すように、車輪16の環状突出部26でドラム部29を兼用することで、通常のドラム部と比較してドラム部29のドラム外径Dやドラム幅W(図4参照)を大きく確保することができる。
これにより、制動手段18の制動能力を高めることができ、操縦安定性を一層良好に確保することができる。
【0055】
加えて、車輪16の環状突出部26でドラム部29を兼用することで、通常のドラム部を不要にできる。
このように、通常のドラム部を不要にすることで、部品点数を抑えて構成の簡素化や軽量化を図ることができる。
【0056】
つぎに、車輪懸架装置10を組み付ける手順を図7に基づいて説明する。
図7に示すように、制動手段18の一対のシュー部材61をホイールカバー部46およびナックル部45の一方に保持ピン64(図5参照)で取り付ける。
一対のシュー部材61を取り付けた後、ナックル部45のボルト47をホイールカバー部46の貫通孔46bに矢印Aの如く貫通する。
【0057】
ボルト47を貫通孔46bに貫通させて、貫通孔46bから突出したねじ部47aにロックナット48をねじ結合する。
ねじ部47aにロックナット48をねじ結合することでホイールカバー部46およびナックル部45を矢印Bの如く一体に組み付ける。
【0058】
この状態において、ホイールカバー部46で外壁28を第2ベアリング41を介して回転自在に支持するとともに、ナックル部45で内壁27を第1ベアリング36を介して回転自在に支持する。
すなわち、一体に組み付けられたホイールカバー部46およびナックル部45で、環状突出部26(内壁27および外壁28)を回転可能に挟持する。
【0059】
ここで、ナックル部45およびホイールカバー部46の2部材で、剛性の高い支持部材14が構成される。
剛性の高い支持部材14で環状突出部26の内壁27および外壁28を回転可能に挟持することで、車輪16のキャンバ剛性を確保することができる。
このように、ナックル部45およびホイールカバー部46を一体に組み付けるだけで、車輪16のキャンバ剛性を確保することができるので、組付け性(すなわち、生産性)を高めることができる。
【0060】
ついで、車輪懸架装置10の車輪16に横力F1,F2が入力した場合の例を図8に基づいて説明する。
図8に示すように、車両の走行中に左右方向に旋回することにより、車輪16に横力F1や横力F2が矢印方向に入力する。
【0061】
車輪16の環状突出部26のうち内壁27が第1ベアリング36を介してナックル部45の上アーム部52および一対の下アーム部53で回転自在に支えられている。
さらに、車輪16の環状突出部26のうち外壁28が第2ベアリング41を介してホイールカバー部46の外周部46cで回転自在に支えられている。
【0062】
ここで、ホイールカバー部46およびナックル部45を一体に組み付けることにより、従来のディスクホイール式に比べて、タイヤ31(車輪16)に対する支持剛性を大幅に向上させることができる。
よって、例えば、車両の旋回時などでタイヤ31(車輪16)に横力F1や横力F2が入力した際に、入力した横力F1や横力F2で支持部材14が弾性変形することを防ぐことができる。
これにより、車輪16のキャンバ剛性を確保してキャンバ角が変化することを抑えて操縦安定性を良好に確保することができる。
【0063】
つぎに、車輪懸架装置10の車輪16を制動手段18で制動する例を図9に基づいて説明する。
図9(a)に示すように、制動手段18の一対のシュー部材61をホイールシリンダ63(図5参照)でドラム部29に向けて押し広げることで、一対のシュー部材61をドラム部29に押し付ける。
【0064】
一対のシュー部材61をドラム部29に押し付けることで、一対のシュー部材61でホイールリム23(車輪16)を制動する。
ここで、ドラム部29に一対のシュー部材61を押し付けることで、ドラム部29およびシュー部材61間に摩擦熱が発生する。
【0065】
図9(b)に示すように、ドラム部29は、金属製の部材であり、金属製のホイールリム23と一体型の全金属製、あるいは、非鉄・非金属、複合材製のホイールリム23との組み合わせからなる。
このドラム部29を有する環状突出部26は、内面26aがタイヤ31の内部空間32に対峙している。
よって、制動時に発生した摩擦熱をドラム部29を経て環状突出部26全域(範囲E)に効率よく伝えることができる。
【0066】
環状突出部26全域(範囲E)に伝えられた摩擦熱を環状突出部26全域からタイヤ31の内部空間32に矢印Cの如く伝えることができる。
環状突出部26から内部空間32に伝えられた摩擦熱をタイヤ31全体に矢印Dの如く伝えることができる。
よって、内部空間32に伝えられた熱でタイヤ31全体を内壁31c側から効率よく暖めることができる。
【0067】
タイヤ31全体を内壁31c側から効率よく暖めることで、例えば、寒冷地(特に、雪道)においてタイヤ31全体の表面温度を適正に確保することができる。
これにより、タイヤ接地面の融雪を促進させることができ、雪上路面71に対するグリップ性を高めることができ、操縦安定性を一層良好に確保することができる。
また、ドライ路面71においても、タイヤ31表面の適切な発熱はグリップ性を高めるうえで有効である。
【0068】
すなわち、車輪懸架装置10によれば、図8に示すように、車輪16のキャンバ剛性を確保してキャンバ角が変化することを抑え、さらに、図9に示すように、タイヤ31全体の表面温度を適正に確保してタイヤ31の路面(雪上路面やドライ路面)71に対するグリップ性を高めることで操縦安定性を好適に確保することができる。
【0069】
なお、本発明に係る車輪懸架装置は、前述した実施例に限定されるものではなく適宜変更、改良などが可能である。
例えば、前記実施例で示したナックル部45に円盤状のシャッタプレートを同軸上に回転自在に設けることも可能である。
シャッタプレートを回動させて、上アーム部52および下アーム部53間の空間や、一対の下アーム部53間の空間を開閉させることが可能になる。
シャッタプレートを用いて空間を開閉させることで、制動時の摩擦熱をタイヤ13側へ伝える量を路面(雪上路面やドライ路面)71の状態に合わせて調整できる。
【0070】
また、前記実施例で示した車輪懸架装置10、車体11、サスペンションアーム12、支持部材14、制動手段18、ホイールリム23、内側環状部24、外側環状部25、環状突出部26、内壁27、外壁28、ドラム部29、第1ベアリング36、第2ベアリング41、ナックル部45およびホイールカバー部46などの形状や構成は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、車体にサスペンションアームを介して支持部材が設けられ、支持部材に車輪が回転自在に支持された車輪懸架装置を備えた自動車への適用に好適である。
【符号の説明】
【0072】
10…車輪懸架装置、11…車体、12…サスペンションアーム、14…支持部材、16…車輪、18…制動手段、23…ホイールリム、24…内側環状部(環状部)、25…外側環状部(環状部)、26…環状突出部、27…内壁、28…外壁、29…ドラム部、31…タイヤ、31a…内側内周部(内周部)、31b…外側内周部(内周部)、36…第1ベアリング、41…第2ベアリング、45…ナックル部、46…ホイールカバー部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体にサスペンションアームを介して支持部材が設けられ、前記支持部材にホイールリムが回転自在に支持され、前記ホイールリムにタイヤが設けられた車輪懸架装置において、
前記ホイールリムは、
前記タイヤの内周部を支持する環状部と、
前記環状部から半径方向中心側に突出された環状突出部と、
を備え、
前記環状突出部は、
前記車体側に設けられた内壁と、
前記内壁に対して車幅方向外側に設けられた外壁と、を備え、
前記内壁および前記外壁を前記支持部材で回転自在に挟持したことを特徴とする車輪懸架装置。
【請求項2】
前記環状突出部は、前記内壁および前記外壁間にドラム部を備え、
前記ドラム部および前記支持部材間の空間に、前記ホイールリムの回転を制動する制動手段を備え、
前記制動手段のシュー部材を前記ドラム部に押し付けて前記ホイールリムを制動可能としたことを特徴とする請求項1記載の車輪懸架装置。
【請求項3】
前記支持部材は、
前記サスペンションアームに連結されるとともに前記内壁を第1ベアリングを介して回転自在に支持するナックル部と、
前記ナックル部の車幅方向外側に設けられて前記外壁を第2ベアリングを介して回転可能に支持するホイールカバー部と、
を備え、
前記ホイールカバー部および前記ナックル部を一体に組み付けることで、前記環状突出部の前記内壁および前記外壁を回転可能に挟持することを特徴とする請求項1または請求項2記載の車輪懸架装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−25339(P2012−25339A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−168350(P2010−168350)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)