説明

軌道自動自転車の後輪浮上維持装置

【課題】 軌道用自動自転車において、後輪のレールからの浮上状態を確実に維持することのできる装置を提供する。
【解決手段】 前後それぞれ一対の車輪1,1´でレールR上に受支される車体2の前記後輪1´側に横架した回動軸5の両端にレールRに対応させて、腕片6を突設する。該腕片6の先端に設けた転子7を前記回動軸5の前後に移動させて該転子7を前記レールRより接離させる操作杆8を、基部において、前記回動軸5のいずれか一端に起伏自在に取付ける。そして、前記操作杆8に施錠解放レバー21の操作によってばね付勢に抗して上昇する施錠片14を設け、該施錠片14の先端14aが前記操作杆8の倒伏方向に係止する受止手段16を前記車体2に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線路の巡回検査時などで用いる、ランプコイルを組込んだ動力エンジンを搭載した軌道自動自転車に概して用いる後輪浮上維持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
前後それぞれ一対の車輪でレール上に受支される車体の前記後輪側に横架した回動軸の両端にそれぞれレールに対応させて腕片を突設し、該腕片の先端に設けた転子を前記回動軸の前後に移動させて前記レールより接離させる、起伏自在の操作杆を、基部において前記回動軸の一端に取付けた、軌道自動自転車の後輪浮上装置は公知であり(例えば、特許文献1)、この浮上装置を備えた軌道自動自転車は、ランプコイルを組込んだ動力エンジンを搭載し、例えば、夜間の停車時の作業に際し、前記浮上装置を利用して後輪を浮上させ、浮上状態を維持させつつ後輪を空転させ照明を得るようになっている。
【0003】
要するに、前記従来例は、操作杆を起立させることにより転子を回動軸の後方側から前方側へ移動させつつレールに接触すなわちレール上に載せて後輪を浮上させ、かつ、転子を回動軸の後方側から前方側に移動させてレールと接触させてその位置を保つことにより、浮上状態を維持するようになっている。
【0004】
【特許文献1】実開平6−20155号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来例は、所謂トグル機構を利用した構成を採るので、理論的には当該浮上状態を維持できるものではあるが、現場に於いて適用してみると、作業者の接触や風圧等によって維持が解かれ、解かれるばかりでなく、エンジンが駆動状態にあるため逸走することがあり、なお一層の浮上状態の維持が期待されている。
【0006】
本発明は、斯様な期待に答えるために提案するもので、後輪の浮上状態の維持を確実に行うことのできる装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前後それぞれ一対の車輪でレール上に受支される車体の前記後輪側に横架した回動軸の両端に、レールに対応させて腕片を突設し、該腕片の先端に設けた転子を前記回動軸の前後に移動させて前記レールより接離させる操作杆を、基部において、前記回動軸のいずれか一端に起伏自在に取付けた軌道自動自転車の後輪浮上装置において、前記操作杆に施錠解放レバーの操作によってばね付勢に抗して上昇する施錠片を設け、該施錠片の先端が前記操作杆の倒伏方向に係止する受止手段を前記車体に設けた、構成とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、軌道自動自転車に事物の接触や風圧などの外力が作用して、レール上より転子が離脱(浮上)使用としても、該転子を動かす操作杆が、施錠片の先端のばね付勢による受止手段に対する係止により、その動作(倒伏)が規制され、浮上状態を確実に維持することができ、また、施錠解放レバーの操作によって、操作杆による走行状態へ復帰ができる状態に簡単に行うことができ、操作勝手上も良好な装置を提供できる。
【実施例】
【0009】
図面は、本発明に係る軌道自動自転車の後輪浮上維持装置の実施例を示し、図1は正面図、図2は図1の一部拡大図、図3は図2の横断面図、図4は他の実施例の要部の一部欠截図である。
【0010】
本発明を適用した軌道自動自転車Aは、前後それぞれ一対の車輪1,1´で受支する車体2に動力エンジン3等々の機器を搭載し、後輪1´側を駆動輪としてレールR上を自在に走行するものである。
【0011】
前記車体2の後輪1´側には軸受4によって支持した回動軸5を横架し、該回動軸5の両端(一方の後輪1´側と他方の後輪側)に前記レールRに対応させて腕片6を突設し(腕片同士間においては同方向に)、該腕片6の先端には前記レールR上を接離する転子7を枢着してある。
【0012】
転子7は、前記腕片6の回動軸5からの突出方向によって、回動軸5の回動(この回動によって回動軸5の両端の腕片6は同一動作をする)による腕片6の揺動に伴って該回動軸5の前後に移動する。
【0013】
図示、8は前記一方の回動軸5に設けた操作杆で、操作杆8は、円筒体をほぼへの字状に屈曲して構成し、基部側の折曲げ部片8aを前記腕片6の延長線上に存するような角度を持たせて前記回動軸5に止着して回動軸5と一体的に成し、先端部(上端部)を車体2に装置した座席Sの近傍に配し、その倒伏操作と一体的に前記腕片6を揺動させ、転子7のレールRとの接離を行うものである。
【0014】
この操作杆8には施錠装置9を構成する装置基材10をボルト11とナット12によって締付け、装置基材10は下端側に案内筒部13、上端側に支持部片17を備えて成り、案内筒部13には先端(下端)14aが該案内筒部13を出入する施錠片14を摺嵌し、施錠片14は該施錠片14を案内筒部13の後壁との間に介在させたコイルばね15の付勢によって案内筒13より常時突出するように付勢され、その先端14aが受止手段16に係止して前記操作杆8の倒伏を規制する。
【0015】
また、装置基材10の前記支持部片17には樹脂管18の一端を止着し、該樹脂管18に貫通させた線材(慨し、ピアノ線)19の一端を、前記樹脂管18より導出して前記支持部片17を通じて、基部を前記施錠片14に接続して前記案内部13より導出した仲介杆20の後端に、接続してある。
【0016】
樹脂管18の他端は、前記操作杆8の先端側に突設した部片8bに止着し、該他端より導出した前記線材19の他端を前記部片8bに基部において揺動自在に枢着した施錠解放レバー21に接続してある。
【0017】
そして、図1の二点鎖線で示す倒伏状態(このとき転子7は回動軸5の後側すなわち後輪1´側にある)から回動軸5を中心に回動(図示時計廻り方向に)させて操作杆8を起立させると、転子7は回動軸5の前方側すなわち前輪1側に移動してレールR上に載置され、該載置状態が保持されて後輪1´はレールR上から浮上する(図示の場合は、レールRに対する前輪1の位置がレールR上で転動できる位置関係を示す)。
【0018】
この浮上状態時に、コイルばね15の付勢によって、施錠片14の先端14aは、操作杆8の倒伏方向の動作に対応して受止手段16に係止し、該倒伏動作を規制して後輪1´の浮上状態は維持される。
【0019】
そして、作業終了後に、施錠解放レバー21を軸を中心に回動して線材19を牽引すると、コイルばね15の付勢に抗して施錠片14の先端14aは受止手段16から離脱し、この離脱状態を保持した状態のまま操作杆8を回動軸5を中心に回動させて、倒伏状態に戻すことにより軌道自動自転車Aの走行時の状態を得られるのである。
【0020】
なお、図1乃至図3で示す第一実施例の受止手段16は、U字ボルト23とナット24を用いて車体2を構成するフレームに固着した取付板24の一端に立設した受止板25の上端を前記施錠片14の先端14aの前方において相対する位置に配し、操作杆8が倒伏しようとしたとき、前記先端14aが取付板24の上端に接するようにしたものである。
【0021】
図4で示す第二実施例の受止手段16は、第一実施例と同様にU字ボルト23とナット24を用いてリング板27を前記フレームに固着し、該リング板27の受止孔28に施錠片先端14aが第一実施例と同様ばね付勢によって係止して操作杆8の倒伏を規制するようにしたものである。
【0022】
第一実施例と第二実施例は、受止手段16の構成と図示のように装置基材10の操作杆8に対する配置関係の点を異にするだけで残余の点は同様である。
【0023】
操作杆8は符号2Aで示す車体フレームの存在によって図1時計廻り方向には回動(倒伏)しない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】正面図。
【図2】図1の一部拡大図。
【図3】図2の横断面図。
【図4】他の実施例の要部の一部欠截図。
【符号の説明】
【0025】
1 前輪
1´ 後輪
2 車体
5 回動軸
6 腕片
7 転子
8 操作杆
14 施錠片
14a 先端
16 受止手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後それぞれ一対の車輪でレール上に受支される車体の前記後輪側に横架した回動軸の両端に、レールに対応させて腕片を突設し、該腕片の先端に設けた転子を前記回動軸の前後に移動させて前記レールより接離させる操作杆を、基部において、前記回動軸のいずれか一端に起伏自在に取付けた軌道自動自転車の後輪浮上装置において、前記操作杆に施錠解放レバーの操作によってばね付勢に抗して上昇する施錠片を設け、該施錠片の先端が前記操作杆の倒伏方向に係止する受止手段を前記車体に設けた、浮上維持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−208543(P2009−208543A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−51807(P2008−51807)
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【出願人】(391030125)保線機器整備株式会社 (39)