説明

軌道車両のためのコンクリート軌道

軌道プレート2に埋め込まれるシングルブロックまくらぎまたはマルチブロックまくらぎ3を有する軌道車両用コンクリート軌道において、
軌道プレート2は、亀裂を発生させるための、走行方向を横切って設けられる断面積削減領域およびこの断面積削減領域の両側にまたがる、少なくとも1つの横力伝達部材6を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道プレートに埋め込まれるシングルブロックまくらぎまたはマルチブロックまくらぎを有する軌道車両用コンクリート軌道に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート軌道は通常、高速および超高速の列車向けの鉄道区間に敷設されている。コンクリート軌道では、従来のバラス道床の代わりに、シングルブロックまくらぎまたはマルチブロックまくらぎが埋め込まれている軌道プレートが設けられる。
【0003】
従来のコンクリート軌道では、縦方向応力に起因する偶発的なコントロール不能の亀裂が発生することがある。偶発的な亀裂の発生は、それらの位置と方向とをコントロールすることができないので、好ましくない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
よって、本発明の課題は、偶発的な亀裂の発生を回避できる改善されたコンクリート軌道を創造することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題を解決するために、初めに述べた様態のコンクリート軌道において、軌道プレートは亀裂を発生させるための、走行方向を横切って設けられる断面積削減領域およびこの断面積削減領域の両側にまたがる、少なくとも1つの横力伝達部材を有することが提案される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、偶発的な亀裂の発生を回避できる改善されたコンクリート軌道が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明により軌道プレートに設けられる断面積削減領域によりコントロールされる亀裂形成が実現され、この結果、偶発的な亀裂の発生が防止される。断面積削減領域により、亀裂発生箇所を決定することができるわけである。走行方向を横切って設けられる断面積削減領域が存在するが、法定要件を満たすために、軌道プレートの1つのセグメントからその隣のセグメントへの横力の伝達は軌道プレートの製造のときに埋め込まれる横力伝達部材によりおこなわれる。
【0008】
本発明によるコンクリート軌道では、断面積削減領域を軌道プレートに設けられる溝または継ぎ目またはノッチないし切り込みとして形成することができる。この断面積削減領域は、たとえば、溝などを後から軌道プレートに切り込む方法の切削加工またはフライス加工により形成することができる。
【0009】
本発明によるコンクリート軌道の高度の耐久性を確保するため、断面積削減領域は環境の影響、特に浸透してくる水分に対して密封された状態にすることが可能であり、または密封されることができる。この方法により、浸透してくる水分による障害も効果的に防止される。
【0010】
本発明によるコンクリート軌道は、亀裂形成はコンクリート軌道の異なる領域における温度急変または温度変遷により、またはコンクリート収縮により惹き起こ(トリガー)されうるように構築することができる。この形態で構築されるコンクリート軌道では、亀裂は物理的な影響により自動的に発生するので、後になってからの人力または機械による亀裂形成は不要となる。
【0011】
本発明を更に具体化させ、断面積削減領域を軌道プレートに埋め込まれる部材により形成することが提案される。これらの部材は軌道プレートの製造の時点でコンクリート打ちしておくことができる。この、またはこれらの埋め込まれる部材は、部材に接する軌道プレートの区画の間の力の伝達を遮断するという特性を有し、そして、たとえば、温度差または他のトリガー要因により亀裂形成を標準破断箇所としての役割を果たす。この形態の代案として、軌道プレートに埋め込まれる部材は断面積削減領域の形成後に取り去ることができるように構築することも可能である。この代替案は埋め込まれる部材が軌道プレートの表面に設けられる場合に提供される。
【0012】
本発明に従い、埋め込まれる部材はロッド状に形成することができるし、または長方形またはくさび状またはサーベル状の形状を有することができる。代案として、埋め込まれる部材は平坦に形成することができ、特に好ましくはフォイルまたはシートメタル、またはプレートまたはテキスタイルとして形成することができる。
【0013】
この、またはこれらの埋め込まれる部材は、軌道および走行方向を横切って埋め込まれ、コンクリート軌道を横断方向において全部または一部を遮断する。
【0014】
本発明のコンクリート軌道では、特別の利点として、埋め込まれる部材を構成する素材はスチール、コンクリート、木材、樹脂である。
【0015】
本発明によるコンクリート軌道の横力伝達部材はロッド状またはバー状、あるいは水平ドウエルとして形成することができる。横力伝達部材を走行方向、すなわち、コンクリート軌道の縦方向に向けて配置すれば、特に優れた横力伝達が生まれる。
【0016】
本発明のコンクリート軌道の製造を簡易化するために、横力を伝達し、互いに間隔をとって予め組み込まれる複数の部材を用いることができる。横力伝達部材は軌道プレートの製造前に、たとえば、針金から成る保持治具に入れておくことができるし、または伝達部材の位置を固定するために間隔をとって互いに連結された状態にすることができる。
【0017】
横力伝達部材がまくらぎの格子補強体を貫通する形態、および/または横力伝達部材がまくらぎの格子補強体の突起している区画の側方および/または下方を貫通する形態、または横力伝達部材がまくらぎの別の適切な区画に固定される形態が採用されるならば、特に好ましい横力伝達部材固定方法が生まれる。
【0018】
本発明のコンクリート軌道では、横力伝達部材の長さは400から600mm、特に好ましくは500mmとすることができる。1つの横力伝達部材の直径は20から35mm、特に好ましくは25mmとすることができる。埋め込まれる2本の横力伝達部材の間の間隔は200から500mm、特に好ましくは250から300mmとすることができる。
【0019】
横力伝達部材はスチールまたは樹脂またはコンクリートまたはこれらの材料の組み合わせで構成することができ、特に好ましくは、部材が鉄筋コンクリートまたは樹脂繊維で製造されることである。横力伝達部材が皮膜、特に腐食防止層または樹脂ジャケットを有することも可能である。
【0020】
本発明のコンクリート軌道のさらにもう1つの利点としては、軌道プレートが縦方向補強部材を持っていないこと、または少なくとも貫通している縦方向補強部材を持っていないことである。
【0021】
本発明のコンクリート軌道の軌道プレートの下部構造は結合または非結合の支持層、たとえば、液圧結合支持層、バラス支持層、凍結防止層、フォイル層、ゲオテキスタイル層を包括することができる。液圧結合支持層は、その上側に突き出ている、横力伝達部材に対する支持体としての役割を果たすアンカー要素を備えることができる。コンクリート軌道はまた単純な基盤の上に設置することもできる。コンクリート軌道と基盤との間には分離層、滑り層、エラストマー層、または排水層を設けることもできる。
【0022】
コンクリート軌道の支持層、特に、液圧結合支持層は走行方向を横断して設けられる断面積削減領域、特に、溝または継ぎ目またはノッチを有することができる。代替案として、コンクリート軌道と基盤とは摩擦、カム、横力伝達要素、特にドウエル、または連結補強部材を介して互いに連結可能または連結状態とすることができる。
【実施例】
【0023】
本発明のそのほかの利点および詳細は実施例の以下の説明および図面により明らかとなる。図面は概念図であり、以下の内容である。
【0024】
図1 本発明のコンクリート軌道の第1の実施例図。
図2 本発明のコンクリート軌道の第2の実施例図。
【0025】
図1は固定軌道1として形成されるコンクリート軌道の透視図である。この固定軌道1はここで示す実施例ではほぼ350mmの高さを有する軌道プレート2を包括している。この軌道プレート2には、断面積削減領域を形成するために、規則的間隔で走行方向を横切って延びている、特定の幅と深さとを有する溝5が切り込んである。温度急変、温度変遷および/またはコンクリート収縮が発生すると、この溝は、軌道プレート2の表面に切り込まれた溝5が完全に亀裂するようにコントロールされる亀裂形成を促す。この結果、軌道プレート2の偶発的な亀裂が回避される。図1に見ることができるように、溝5の領域には、それらの溝を横断し、走行方向に平行に推移する複数の水平ドウエル6が、traverse force(横力)の伝達部材として軌道プレート2に埋め込まれる。この水平ドウエル6はそれぞれの溝5に対称的に設けられ、水平ドウエル6の長さの半分は軌道プレート2の一方の区画に、そして他の半分はその隣の、軌道プレート2の区画に位置を占める。これらの水平ドウエル6は完全に亀裂した溝5により互いに分離される、軌道プレート2の各区画の間の横力の伝達を保証する。
【0026】
示された実施例では、1つの水平ドウエルは長さ500mmを有し、その直径は25mmである。ドウエル6は250mmの間隔で埋め込まれている。腐食防止剤として各水平ドウエル6は樹脂皮膜を有する。ただし、これらの寸法表示はそれぞれの要求条件に応じて変わることがある。
【0027】
水平ドウエル6の埋め込みおよび位置決めを簡易化するため、水平ドウエルはそれぞれツーブロックまくらぎ3の格子構造体7に埋め込まれる。格子構造体7の存在により、固定軌道1の横方向に対する追加の補強体は省くことができる。
【0028】
さらに、水平ドウエル6が存在することにより、固定軌道1の追加のまたは別の縦方向補強体も省くことができるし、または大幅に減らすことができる。ただし、特殊な応用ケースでは、水平ドウエル6に加えて少なくとも固定軌道1の区画ごとに縦方向補強体を設けることは理に適っている。水平ドウエル6の使用により、縦方向補強体としての役割を果たす水平ドウエル6の接地の省略または大幅な簡易化ができるという別の利点がある。
【0029】
図1に示す実施例では、軌道プレート2はバラス支持層8の上に構築されている。同様に、軌道プレートはまた凍結防止層、フォイル、ゲオテキスタイル、コンクリートスラブ上の液圧結合支持層またはその他の結合支持層の上に構築することができる。
【0030】
図2は本発明の固定軌道の第2の実施例を示す。図1と同一の構成要素には同じ番号が与えられている。
【0031】
図1と同様に、軌道プレート2にはレール4を装架するためのツーブロックまくらぎ3が埋め込まれている。軌道プレート2は鋳込み合成物質(コンパウンド)が充填される横方向の溝5を有する。溝5の領域には走行方向に推移する水平ドウエル6が設けられ、これらの水平ドウエルは軌道プレート2の溝5によって分断される区画を連結している。
【0032】
第1の実施例と異なり、軌道プレート2の下には、ほぼ300mm高さを有する液圧結合支持層9が設けられる。液圧結合支持層9には鉱物混合剤が液圧結合剤によって固着されている。
【0033】
図2に見る通り、液圧結合支持層9は横方向に推移する溝10を有する。これらの溝は軌道プレート2の溝5の下に存在する。
【0034】
従って、温度変化が生じると軌道プレート2だけでなく液圧結合支持層9にもコントロールされる亀裂形成が生じる。液圧結合支持層9の下には凍結防止層11が設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明のコンクリート軌道の第1の実施例図。
【図2】本発明のコンクリート軌道の第2の実施例図。
【符号の説明】
【0036】
1 固定軌道 2 軌道プレート 3 まくら木
4 レール 5 溝 6 水平ドウエル
7 補強体 8 バラス支持層 9 液圧結合支持層
10 溝 11 凍結防止層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道プレートに埋め込まれるシングルブロックまくらぎまたはマルチブロックまくらぎを有する軌道車両用コンクリート軌道において、
軌道プレートは亀裂を発生させるための、走行方向を横切って設けられる断面積削減領域およびこの断面積削減領域の両側にまたがる、少なくとも1つの横力伝達部材を有することを特徴とする、コンクリート軌道。
【請求項2】
請求項1に掲げるコンクリート軌道において、断面積削減領域は軌道プレートに設けられる溝(5)または継ぎ目またはノッチとして形成されることを特徴とする、コンクリート軌道。
【請求項3】
請求項2に掲げるコンクリート軌道において、溝(5)または継ぎ目またはノッチは切削加工またはフライス加工により形成されることを特徴とする、コンクリート軌道。
【請求項4】
前記の請求項の1つに掲げるコンクリート軌道において、断面積削減領域は環境の影響、特に浸透してくる水分に対して密封された状態にすることが可能であり、または密封されることを特徴とする、コンクリート軌道。
【請求項5】
前記の請求項の1つに掲げるコンクリート軌道において、亀裂形成はコンクリート軌道の異なる領域における温度急変または温度変遷により、またはコンクリート収縮により惹き起こされうることを特徴とする、コンクリート軌道。
【請求項6】
前記の請求項の1つに掲げるコンクリート軌道において、断面積削減領域は軌道プレートに埋め込まれる部材により形成されることを特徴とする、コンクリート軌道。
【請求項7】
請求項6に掲げるコンクリート軌道において、軌道プレートに埋め込まれる部材は断面積削減領域の形成後に取り去ることができることを特徴とする、コンクリート軌道。
【請求項8】
請求項7に掲げるコンクリート軌道において、埋め込まれる部材はロッド状に形成されること、または長方形またはくさび状またはサーベル状の形状を有することを特徴とする、コンクリート軌道。
【請求項9】
請求項6または7に掲げるコンクリート軌道において、埋め込まれる部材は平坦に形成されることができ、特に好ましくはフォイルまたはシートメタル、またはプレートまたはテキスタイルとして形成されることを特徴とする、コンクリート軌道。
【請求項10】
請求項6から9までの1つに掲げるコンクリート軌道において、埋め込まれる部材を構成する素材は、スチール、コンクリート、木材、樹脂またはこれらの組合せであることを特徴とする、コンクリート軌道。
【請求項11】
前記の請求項の1つに掲げるコンクリート軌道において、横力伝達部材はロッド状またはバー状、あるいは水平ドウエル(6)として形成されることを特徴とする、コンクリート軌道。
【請求項12】
前記の請求項の1つに掲げるコンクリート軌道において、横力伝達部材は走行方向、すなわち、コンクリート軌道の縦方向に向けて配置されることを特徴とする、コンクリート軌道。
【請求項13】
前記の請求項の1つに掲げるコンクリート軌道において、コンクリート軌道は横力を伝達し、互いに間隔をとって予め組み込まれる複数の部材を有することを特徴とする、コンクリート軌道。
【請求項14】
請求項13に掲げるコンクリート軌道において、横力伝達部材は軌道プレートの製造前に、たとえば、針金から成る保持治具に入れておくことを特徴とする、コンクリート軌道。
【請求項15】
前記の請求項の1つに掲げるコンクリート軌道において、横力伝達部材がまくらぎ(3)の格子補強体(7)を貫通する形態、および/または横力伝達部材がまくらぎの格子補強体(7)の突起している区画の側方および/または下方を貫通する形態、または横力伝達部材がまくらぎの別の適切な区画に固定されることを特徴とする、コンクリート軌道。
【請求項16】
前記の請求項の1つに掲げるコンクリート軌道において、横力伝達部材の長さは400から600mm、特に好ましくは500mmであることを特徴とする、コンクリート軌道。
【請求項17】
前記の請求項の1つに掲げるコンクリート軌道において、横力伝達部材の直径は20から35mm、特に好ましくは25mmであることを特徴とする、コンクリート軌道。
【請求項18】
前記の請求項の1つに掲げるコンクリート軌道において、埋め込まれる2本の横力伝達部材の間の間隔は200から500mm、特に好ましくは250から300mmであることを特徴とする、コンクリート軌道。
【請求項19】
前記の請求項の1つに掲げるコンクリート軌道において、横力伝達部材はスチールまたは樹脂またはコンクリートまたはこれらの材料の組み合わせで構成することができ、特に好ましくは、部材が鉄筋コンクリートまたは樹脂繊維で製造されることを特徴とする、コンクリート軌道。
【請求項20】
前記の請求項の1つに掲げるコンクリート軌道において、横力伝達部材が皮膜、特に腐食防止層または樹脂ジャケットを有することを特徴とする、コンクリート軌道。
【請求項21】
前記の請求項の1つに掲げるコンクリート軌道において、軌道プレート(2)は縦方向補強部材を備えないこと、または少なくとも貫通している縦方向補強部材を備えていないことを特徴とする、コンクリート軌道。
【請求項22】
前記の請求項の1つに掲げるコンクリート軌道において、軌道プレート(2)の下部構造は、液圧結合支持層(9)、バラス支持層、凍結防止層、フォイル層、ゲオテキスタイル層または結合された支持層を包括することを特徴とする、コンクリート軌道。
【請求項23】
請求項22に掲げるコンクリート軌道において、液圧結合支持層は、その上側に突き出ている、横力伝達部材に対する支持体としての役割を果たすアンカー要素を備えることを特徴とする、コンクリート軌道。
【請求項24】
請求項22または23に掲げるコンクリート軌道において、コンクリート軌道の支持層、特に、液圧結合支持層(9)は走行方向を横断して設けられる断面積削減領域、特に、溝(10)または継ぎ目またはノッチを有することを特徴とする、コンクリート軌道。
【請求項25】
前記の請求項22から24の1つに掲げるコンクリート軌道において、コンクリート軌道と基盤とは摩擦、カム、横力伝達要素、特にドウエル、または連結補強部材を介して互いに連結可能または連結状態とすることを特徴とする、コンクリート軌道。
【請求項26】
前記の請求項の1つに掲げるコンクリート軌道において、コンクリート軌道は分岐器の領域に設けられうることを特徴とする、コンクリート軌道。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−524471(P2008−524471A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−545828(P2007−545828)
【出願日】平成17年11月26日(2005.11.26)
【国際出願番号】PCT/DE2005/002133
【国際公開番号】WO2006/063550
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(506311921)レール ワン ゲーエムベーハー (7)
【氏名又は名称原語表記】RAIL.ONE GmbH
【Fターム(参考)】