説明

軒先ユニット及び該軒先ユニットを用いた建物の施工方法

【課題】軒の出がない(極めて小さい)建物の周囲に外部足場を設置しなくとも、軒先周囲の作業を安全且つ正確に行うことができると共に、意匠性の高い軒先ユニット及び該軒先ユニットを用いた建物の施工方法を提供する。
【解決手段】建物本体1の軒先に取り付けられる軒先ユニット100は、鼻隠し部材20と、鼻隠し部材20の内面に設けられ、軒先ユニット100を建物躯体3に固定するための軒先ユニット取付部材30と、鼻隠し部材20から屋外方向へ突設され、桁行方向に沿って配置される軒樋70を支持する樋受け部材50と、を備える。鼻隠し部材20は、上方に配設されて軒先ユニット取付部材30及び樋受け部材50が取着される上方板21と、上方板21に固定されて下端部が外壁面材2に固定される下方板22と、上方板21及び下方板22に固定され、下方板22よりも屋内側に配設される下方板補強プレート23と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等の各種建物に取り付けられる軒先ユニット及び該軒先ユニットを用いた建物の施工方法に係り、特に、狭小地において軒先周囲で行われる作業を安全に行うことが可能であり、意匠性に優れた軒先ユニット及び該軒先ユニットを用いた建物の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、現場での施工作業を簡略化するために、軒天部材や鼻隠し部材などの軒先部材を予め一体化した軒先ユニットを、建物躯体に対して取り付ける技術が知られている。
そして、このような軒先ユニットが取り付けられる建物の施工時には、軒先周囲で行われる作業における安全性を確保するために、建物の屋根部周囲において、地面等から外部足場が設置される。しかしながら、例えば、狭小地に建物を建設する場合には、このような外部足場を設置することが困難な場合がある。
【0003】
そこで、特許文献1には、図14に示すように、作業者が軒先周囲の作業時等に転落することを防止するために、軒先ユニット100’に転落防止部材500’を設置可能とする技術が提案されている。特許文献1の軒先ユニット100’においては、建物本体の屋外側に張り出して配設される軒天部材Rの端部を覆うように配設された鼻隠し部材20’に、転落防止部材500’を着脱可能な支持部材40’が取着されている。
【0004】
そして、特許文献1の軒先ユニット100’は、建物の屋内側から転落防止部材500’が支持部材40’に対して着脱可能な構成を備えているため、作業者は、狭小地における軒先周囲の作業を安全に行うことができる。また、複数の軒先部材を個別に設置するのではなくユニット化することにより、建物の屋内側からそのユニットを建物躯体に設置可能となり、狭小地であっても安全且つ正確に作業することができる。
【0005】
ところで、近年では、住宅が密集した市街地等において、軒先の張り出しを極めて小さくし、敷地の境界線に建物の外壁を近接させて建物が建設されることが多くなっている。このような場合においては、軒天部材を設けず、軒の出を有さない軒先構造が多く用いられる。
【0006】
このような技術として、例えば、特許文献2及び特許文献3に、軒天部材(特許文献2には「軒天井」、特許文献3には「軒裏板」と記載されている)を備えない軒先構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−7012号公報
【特許文献2】特許第3255603号公報
【特許文献3】特開平11−81590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、特許文献1の軒先ユニット100’は、図14に示すように、鼻隠し部材20’が軒天部材Rの端部を覆うように配設された構成であり、建物躯体から屋外側にむかって軒天部材Rが張り出すように配設される。したがって、特許文献1の軒先ユニット100’は、敷地の境界線に外壁が極めて近接した建物のように、軒先の張り出しが許容されない程度の狭小地に建設される建物や、デザイン上、軒先の張り出しを備えない建物に対して適用することができないという問題があった。
【0009】
また、特許文献1において、軒先部材のユニット化に伴い、さまざまな部材が鼻隠し部材20’に取り付けられるため、鼻隠し部材20’は高い剛性を備えることが要求されるため、鋼製化されている。しかし、鋼製化された鼻隠し部材20’は1枚の鋼板で形成されており、形状や色など、意匠性において自由度が高くなく、デザイン的な制限があった。
【0010】
一方、特許文献2及び特許文献3には、複数の板材によって構成される鼻隠し部材(特許文献2には「鼻隠し板」、特許文献3には「上部鼻隠板」及び「下部鼻隠板」と記載されている)が開示されており、形状や色の異なる板材によって鼻隠し部材を構成することにより、軒先の意匠性を高めることができる。
【0011】
しかし、特許文献2及び特許文献3は、建物の外壁に対して取付部材(特許文献2には「取り付け板」、特許文献3には「下部鼻隠板受け金具」と記載されている)を設置した後、その取付部材に対して鼻隠し部材を構成する複数の部材を取着する構成であるため、建物の屋根部周囲において外部足場を設け、建物の屋外側から鼻隠し部材を取着する必要がある。したがって、外部足場を設けることが難しい狭小地では取着作業を安定して行うのが難しく、作業者が安全に取着作業を行うことが難しい場合がある。
【0012】
また、特許文献2及び特許文献3では、鼻隠し部材が複数の板材によって形成されるため、十分な強度を得ることが難しい場合があり、特許文献1の軒先ユニット100’のように、鼻隠し部材の屋外側に大きな荷重のかかる部材(例えば、転落防止部材500’を支持する支持部材40’)を取着することができない。したがって、十分な強度を有し、さらに高い意匠性を備えた鼻隠し部材が望まれていた。
【0013】
本発明は、上記不都合を解決するためになされたものであり、その目的は、軒の出がない(または、極めて小さい)建物の周囲に外部足場を設置しなくとも、軒先周囲の作業をより安全且つ正確に行うことができると共に、軒先の意匠性の高い軒先ユニット及び該軒先ユニットを用いた建物の施工方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、高い意匠性の鼻隠し部材において、大きな荷重のかかる部材を取着した場合であっても、その荷重に耐えうる強度を備えた鼻隠し部材を備えた軒先ユニット及び該軒先ユニットを用いた建物の施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題は、本発明の軒先ユニットによれば、建物本体の軒先に取り付けられ、軒樋を取着可能な軒先ユニットであって、前記軒先を覆うように配設される鼻隠し部材と、該鼻隠し部材の前記建物本体側の内面に設けられ、前記軒先ユニットを建物躯体に固定するための軒先ユニット取付部材と、前記鼻隠し部材から前記建物本体の屋外方向へ突設され、前記軒樋を支持する樋受け部材と、を備え、前記鼻隠し部材は、上方に配設されて前記軒先ユニット取付部材及び前記樋受け部材が取着される上方板と、該上方板及び外壁面材に固定される下方板と、前記上方板及び前記下方板に固定され、前記下方板よりも前記建物本体の屋内側に対向して配設される下方板補強プレートと、を備えてなること、により解決される。
【0015】
このように、本発明の軒先ユニットは、建物本体の軒先に設置される各軒先部材、すなわち、鼻隠し部材、樋受け部材等が一体にユニット化されているため、狭小地等のように外部足場を設置することができない場合であっても、軒先周囲の作業を安全且つ正確に行うことができる。そして、上記構成の軒先ユニットは、軒天部材が備えられておらず、鼻隠し部材が外壁面材に固定される構成である。したがって、軒先の張り出しがない(または、極めて小さい)建物に対して好適に設置される。
また、鼻隠し部材が従来のように一枚の板材によって構成されるのではなく、複数の板材によって構成されているため、例えば、上方板と下方板との色を異なる色、形状にすることができる。このとき、上方板は、軒先ユニット取付部材や、樋受け部材等が取着されるために、剛性の高い鋼板が用いられるが、下方板補強プレートが備えられているため、下方板を構成する板材は剛性に関する制約をあまり受けることがなく、材料選定の自由度が向上する。また、下方板は板厚を薄くすることも可能であるために加工性が向上し、その形状を複雑なものにすることができる。したがって、下方板は色や形状においても自由度が向上する。
このように、本発明の軒先ユニットは、鼻隠し部材において上方板、下方板を備えることにより、建物の外観に大きく寄与する鼻隠し部材の材料、形状や色などの自由度が向上し、意匠性を高めることができる。
さらに、下方板補強プレートが、上方板と下方板とに固定され、下方板と対向するように配設されることにより、下方板と下方板補強プレートにおいて閉断面構造となるため、鼻隠し部材の強度を向上させることができる。これにより、複数の板材を組み合わせることにより意匠性を向上させた鼻隠し部材において、高い剛性を備えることもまた可能となるため、鼻隠し部材に、大きな荷重の加わる部材(例えば、転落防止部材等)を取着することもできる。
【0016】
また、前記鼻隠し部材の外面から前記建物本体の屋外方向へ突設されると共に前記軒樋の上方に配置され、転落防止部材を上方から着脱可能なように、前記転落防止部材を下方から支持する支持部材をさらに備え、該支持部材は、前記鼻隠し部材に取り付けられてなると好適である。
このように、本発明の軒先ユニットにおいて、柵等の転落防止部材が着脱可能な支持部材をさらに備えていると、転落防止部材を取着することができる。その結果、狭小地等の外部足場を設置することが難しい場合であっても、軒先に転落防止部材を設置可能であるため、建物の屋根葺き作業等のように軒先よりも上方で行われる作業を安全に行うことができる。
【0017】
さらに、前記上方板と前記下方板とを互いに固定する固定手段は、前記軒樋が配設される高さと略同じ高さ、または該高さよりも上方に配設されてなると好ましい。
このように、上方板と下方板とを互いに固定する固定手段(ボルト−ナット等)が軒樋と同じ高さ、または軒樋よりも上方に配設されることにより、固定手段自体や、上方板と下方板との境界部分が下方から目視されることがないため、より外観が良好となる。
【0018】
また、前記上方板は、前記樋受け部材が取着される上方板化粧面部と、該上方板化粧面部の下方端部から前記建物本体の屋内方向へ延設された上方板下面部と、を有し、前記下方板は、前記上方板化粧面部と重ねられる下方板固定部と、該下方板固定部の下方端部から前記建物本体の屋内方向へ延設された下方板中間部と、該下方板中間部から下方に延設された下方板化粧面部と、を有すると好適である。
このような構成とすることにより、上方板の下方は側面視で略鉤状、下方板の上方は側面視で略Z字状に形成される。そして、上方板の略鉤状部分と下方板の略Z字状の部分を組み合わせることにより、上方板化粧面部と下方板化粧面部とが段差をもって配設されるため、意匠性に優れた外観とすることができる。
【0019】
さらにこのとき、前記上方板には、複数の換気口が形成されてなると好ましい。
本発明の軒先ユニットは、上記のように、軒天部材を備えない構成である。従来、軒天部材に換気口を備えることにより、小屋裏換気を確保する技術が知られているが、本発明の軒先ユニットは、鼻隠し部材に換気口を形成することにより、十分な小屋裏換気を確保することができる。このような構成とすることにより、軒下から換気口が視認されることなく、外観上の美観が損なわれることがない。
また、上方板には、軒先ユニット取付部材及び樋受け部材が備えられているため、下方板と比較して強度が高く、換気口を形成する部材として特に好適である。上方板に換気口を備えることにより、軒樋の設置後は換気口が軒下から視認されなくなるため、外観を損なうことがなく、特に好適である。
【0020】
また、このとき、前記上方板の前記建物本体の屋内側に、保温板を取着するための保温板固定部材をさらに備えてなると好適である。
このように、軒先ユニットにおいて保温板を取着するための部材を備えることにより、軒先において保温板を取着する作業を容易に行うことができる。
【0021】
さらに、前記課題は、本発明の軒先ユニットを用いた建物の施工方法によれば、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の軒先ユニットを用いた建物の施工方法であって、前記建物本体の前記建物躯体を構築する建物躯体構築工程と、前記建物躯体構築工程の後に、前記軒先ユニット取付部材を、前記建物躯体から前記建物本体の屋外方向へ突設された建物側取付部材に仮固定する軒先ユニット仮固定工程と、前記軒先ユニット仮固定工程の後に、前記軒先ユニットを前記建物本体の屋内側から前記建物側取付部材に本固定する軒先ユニット本固定工程と、を備えたこと、により解決される。
このように、本発明の軒先ユニットを用いた建物の施工方法は、上記の軒先ユニットを用いるため、軒先の張り出しがない(または、極めて小さい)建物であっても、建物の屋内側から作業することができるため、周囲に外部足場を設置することなく、軒先周囲の作業をより安全且つ正確に行うことができる。
また、複数の軒先部材を個別に建物本体に取り付ける作業を行う必要がないため、軒先の外観が作業者の熟練度に依存することなく、常に軒先の外観を一定にすることができる。このとき、複数の部材によって構成される鼻隠し部材もユニット化されているため、鼻隠し部材の外観もまた良好にすることができる。
さらに、工期の短縮化を図ることが可能である。
【0022】
このとき、前記建物躯体構築工程の後に、転落防止部材を支持部材に取り付ける転落防止部材取付工程を備えると好ましい。
このように、転落防止部材を支持部材に取着することにより、軒先よりも上方で行われる作業を安全に行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明に係る軒先ユニット及び該軒先ユニットを用いた建物の施工方法によれば、軒先の張り出し(軒の出)がない(または、極めて小さい)建物の周囲に外部足場を設置しなくとも、軒先作業時における作業者の転落や転倒を確実に防止し、作業の安全性を確保することができる。このように、建物の周囲に外部足場を設置しなくとも、建物の屋内側から容易に軒先ユニットを設置することができ、作業の安全が確保されるため、作業者は軒先周囲の作業を正確に行うことができる。
そして、本発明の軒先ユニットは鼻隠し部材を複数の部材で形成しているため、材料選定の自由度が向上すると共に、色や形状等のデザインの自由度が向上するため、意匠性の高い軒先ユニットを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係る軒先ユニットが建物本体に取り付けられた状態を示す斜視図である。
【図2】建物本体に対する軒先ユニットの取付状態を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る鼻隠し部材の斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る軒樋を設置した後の軒先ユニットの斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る鼻隠し部材の断面図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係る鼻隠し部材の断面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る連結部材の斜視図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る連結部材を装着する過程を示す斜視図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る連結部材を装着した後の斜視図である。
【図10】図9のI−I線に相当する断面図である。
【図11】他の実施形態に係る連結部材の斜視図である。
【図12】他の実施形態に係る連結部材と、鼻隠し部材の断面図である。
【図13】本発明の一実施形態に係る軒先ユニットを用いた建物の施工方法を示すフローチャート図である。
【図14】従来の軒先ユニットの取付状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る一実施形態について、図1乃至図13を参照して説明する。なお、以下に説明する部材、配置等は、本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変することができることは勿論である。
【0026】
図は、本発明の実施形態を示すものであり、図1乃至図5、図7乃至図10及び図13は、本発明の一実施形態に係る軒先ユニットに係り、図1は軒先ユニットが建物本体に取り付けられた状態を示す斜視図、図2は建物本体に対する軒先ユニットの取付状態を示す断面図、図3は鼻隠し部材の斜視図、図4は軒樋を設置した後の軒先ユニットの斜視図、図5は鼻隠し部材の断面図、図7は連結部材の斜視図、図8は連結部材を装着する過程を示す斜視図、図9は連結部材を装着した後の斜視図、図10は図9のI−I線に相当する断面図、図13は軒先ユニットを用いた建物の施工方法を示すフローチャート図である。
また、図6、図11及び図12は本発明の他の実施形態に係り、図6は鼻隠し部材の断面図、図11は連結部材の斜視図、図12は連結部材と、鼻隠し部材の断面図である。
【0027】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る建物本体1は、外壁面材2の上方に設けられる軒桁3と、軒桁3上に配置される屋根パネル4と、を備えている。軒桁3は、小屋梁5を桁行方向に連結する横架材であり、例えば、断面略H形状の鉄製の部材により形成されている。この軒桁3は、建物本体1の主要構造物の一つを構成するものであり、特許請求の範囲に記載の「建物躯体」に相当する。なお、本明細書中、建物本体1の屋内側を、「屋内側」、建物本体1の屋外側を「屋外側」と記載し、「内面」とは、各部材の屋内側の面、「外面」とは各部材の屋外側の面を示すものとする。
【0028】
屋根パネル4は、垂木4aと、野地材4bと、屋根葺き材4cと、を備えている。そして軒桁3上には、垂木4a、野地材4b、屋根葺き材4cが順にビスやボルト等によって固定されている。また、屋根パネル4の先端部4dのさらに屋外方向には、広小舞が備えられておらず、ルーフィングが延設されており、後述する鼻隠し部材20の上方板21にビス等により固定されている。このように、本実施形態では、屋根パネル4及び鼻隠し部材20を連結することにより、これらの建物本体1に対する取付強度をより強固なものとしている。
【0029】
軒の出の幅に関し、従来のように大きな軒の出を有する場合、すなわち、軒天部材(軒天板)を備える場合は、軒の出の幅が310mm〜830mm程度であるものが一般的であったが、本発明の軒の出の幅は、上記値よりも極めて小さい軒先ユニット100を提供するものである。本発明の軒先ユニット100の軒の出の幅は、より具体的には、132mm程度とすることができ、本発明は、軒の出の極めて小さい軒先ユニット100を提供するものである。
【0030】
次に、腕木部材10に取り付けられる軒先ユニット100について図2乃至図6を参照して説明する。
図2に示すように、軒先ユニット100は、鼻隠し部材20と、軒先ユニット取付部材30と、支持部材40と、樋受け部材50とを備え、これらは工場等において予め一体的に製作される。この軒先ユニット100は建物本体1の桁行方向に沿って2以上に分割されて複数設けられている。また、軒先ユニット100は、鼻隠し部材20の下方に、建物本体1の外壁面材2と軒先ユニット100の鼻隠し部材20との間の気密を保つシール部材29を備えていても良い。
【0031】
このように、軒先部品である鼻隠し部材20、軒先ユニット取付部材30、支持部材40、及び樋受け部材50を予めユニットとして一体化した構成であるため、軒先工事の作業工程を大幅に削減することができると共に、作業効率を格段に向上させることができる。また、軒先ユニット100を工場等で製作することが可能であるため、軒先周囲の品質の均一化を図ることができる。
【0032】
<鼻隠し部材20>
鼻隠し部材20は、建物本体1の軒先を覆う位置に配置され、複数のSUSや鉄板等からなる板材によって形成されている。
具体的には、図5に示すように、鼻隠し部材20は、上方に配設される上方板21と、上方板21に固定されてその下端部が外壁面材2に固定される下方板22と、上方板21及び下方板22に少なくとも一部が固定されると共に下方板22よりも建物本体1の屋内側に配設される下方板補強プレート23とを備えている。
【0033】
このように、鼻隠し部材20を複数の板材(上方板21及び下方板22)によって形成することにより、鼻隠し部材20の形状や色を任意にデザインすることができる。したがって、軒先の意匠性において極めて優れた軒先ユニット100を提供することができる。
【0034】
上方板21の屋外側の面(外面)には、建物本体1の屋外方向へ突設され、桁行方向に沿って配置される軒樋70を支持する樋受け部材50が取着されている。したがって、上方板21は、樋受け部材50や支持部材40等の荷重に耐えうる強度を備える必要があるため、下方板22と比較して厚さが同等以上の板材によって形成されていると好ましい。一例として、上方板21の板厚は1.2mm程度であると好ましい。
【0035】
また、さらに上方板21の外面には、転落防止部材500を上方から着脱可能なように、下方から支持する支持部材40が取着されていても良い。
この支持部材40は、軒樋70よりも上方に配置され、樋受け部材50と同様に、建物本体1の屋外方向へ突設されているとよい。支持部材40を軒樋70よりも上方に配設すると、軒下から支持部材40が極めて目視されにくくなり、支持部材40によって外観を損なうことがなく、好適である。
【0036】
図3及び図5に示すように、上方板21及び下方板22は、互いにその一部が重ねられて固定され、鼻隠し部材20を構成している。なお、本明細書中、上方板21と下方板22とが重ねられた部分をそれぞれ固定部としての上方板固定部21a、下方板固定部22aと称する。
【0037】
図4は、軒先ユニット100の樋受け部材50に、軒樋70を取着した後の状態を示すものである。固定手段28は、軒樋70が配設される高さと略同じ高さ、または軒樋70よりも高い位置となるように配設されている。このような構成とすることにより、鼻隠し部材20の上方板固定部21a、下方板固定部22aを連結して固定する固定手段28が軒樋70によって隠れるような位置となるため、下方から視認されにくくなり、外観が良好な鼻隠し部材20とすることができる。また、上方板21及び下方板22の境界部分もまた視認しにくくなるため、好適である。
【0038】
(上方板21の構成)
図5は、鼻隠し部材20の断面図である。図5に示すように、上方板21は、上記の支持部材40及び樋受け部材50等が取着される上方板化粧面部21bと、上方板化粧面部21bの上端部から建物本体1側斜め上方へ曲折して延びる上方板上面部21cと、上方板上面部21cの建物本体1側の端部から下方へ曲折して延びる上側突設部21dと、上方板化粧面部21bの下端部から建物本体1側へ曲折して延びる上方板下面部21eと、上方板下面部21eの建物本体1側の端部から上方へ曲折して延びる下側突設部21fとを有し、これらは一体的に形成されている。したがって、上方板21は、断面略コ字状に形成されている。なお、上方板化粧面部21bの下方の一部(上方板固定部21a)には、以下で詳述する下方板22の一部が重ねられ、ボルト−ナット等の固定手段28によって固定されている。
【0039】
そして、上方板21の上方板化粧面部21bの上方には、建物本体1の屋外方向から屋内方向に貫通する複数の換気口21gが桁行方向に隣り合って設けられていてもよい。換気口21gは、主として小屋裏換気を行うために設けられ、上方板化粧面部21bの上方であって、水切材60によって覆われる位置に形成されている(図2参照)。換気口21gは、上方板化粧面部21bを切り起こして開口部を覆うように形成されたリブ21hを備えているため、鼻隠し部材20の強度を確保すると共に、十分な数の換気口21gを備えることができ、換気のために必要な通気量を確保することができる。
【0040】
また、換気口21gにはリブ21hが備えられているため、リブ21hの側方から通気され、建物本体1の屋外側からは雨水や雪が入りにくいという効果も奏する。なお、本実施形態においては換気口21gにリブ21hを備えた例を示しているが、上方板化粧面部21bの上方に固定された水切材60によって水等の侵入を十分に防ぐと共に鼻隠し部材20の十分な強度を確保することができれば、換気口21gの形状は、リブ21hを備えない切り抜き形状、すなわち開口した形状としても良い。
【0041】
従来のように軒天部分、軒裏見切り部分等に換気口を設けるのではなく、鼻隠し部材20の上方板化粧面部21bに換気口21gを形成することにより、下方から換気口が視認されることが無いため、意匠上も好適である。また、軒裏見切り部分に換気口を設けた場合、雨水の侵入防止のため、別途部材を設置する必要があり、さらに、軒裏見切り材の形状が複雑になるため経費が嵩むが、本発明のように、鼻隠し部材20に換気口21gを形成することにより、複雑な構成とすることなく、経費を抑えることができる。さらにまた、軒先ユニット100の鼻隠し部材20に換気口21gを備えた構成とすると、軒先の全周にわたって換気を確保することが可能となるため、十分な換気量を確保することができる。なお、軒先ユニット100が設置される箇所に応じて、鼻隠し部材20に換気口21gを備えない構成としても良いのは勿論である。
【0042】
そして、上方板21の上方板化粧面部21bの建物本体1側の面の一部には、図5のように、防火ダンパー24や、換気口経路カバー25が取付られていても良い。防火ダンパー24及び換気口経路カバー25は、換気口21gと対応する位置であって、上方板21において建物本体1の屋内側に取り付けられる。上方板21は、建物本体1の屋内側の面にボルト−ナット等の接合手段によって係止される。このように、上方板21は、防火ダンパー24及び換気口経路カバー25を取着するため、下側突設部21fや上方板化粧面部21bの一部をさらに伸張するか、或いはその他の板材を取着した構成としても良い。
【0043】
さらに、上方板21の屋内側において、保温板27を配設するため、保温板固定部材26が取着されている構成としても良い。図5では、保温板固定部材26は、上側突設部21dと、換気口経路カバー25との間に架設される構成を示したが、特にこれに限定されるものではなく、その固定箇所、形状はこれに限定されるものではない。保温板固定部材26を構成する材料は、保温板27を十分な強度をもって保持することが可能であれば特に限定されないが、可撓性を有するバンド等を用いることができる。
【0044】
上方板21の屋内側には、さらに係止片21jが備えられる。この係止片21jは断面略Z字状に形成されており、上方板下面部21eの上面に突設するように固定されており、上方板21の桁行き方向の端部にそれぞれ備えられている(図8を参照)。なお、この係止片21jの作用については後述する。
【0045】
(下方板22の構成)
図5に示すように、下方板22は、上記の上方板21の上方板化粧面部21b(より詳細には、上方板固定部21a)に重ねられて固定される下方板固定部22aと、下方板固定部22aの下端部から建物本体1の屋内方向へ曲折して略水平に延びる下方板中間部22bと、下方板中間部22bから下方に曲折して延びる下方板化粧面部22cと、下方板化粧面部22cの下端部から建物本体1の屋内方向へ曲折して略水平に延びる下方板下面部22dと、下方板下面部22dの屋内側端部から上方へ向かって曲折して延びる下側突設部22eとを有し、これらは一体的に形成されている。したがって、下方板22は、断面が階段状に形成されている。なお、下方板22の下方板下面部22dの下方側の面には、外壁面材2との気密をとるためにシール部材29が取着されていても良い。また、下側突設部22eの作用効果は、後述する。
【0046】
下方板22は、下方板固定部22aが、上方板化粧面部21b(より詳細には、上方板固定部21a)の屋外方向側の面に重なるように固定されており、さらに、下方板中間部22bが上方板下面部21eの下面に重なるようにして固定されている。
上記構成とすることにより、上方板化粧面部21bと下方板化粧面部22cとの間には段差が形成されるため、意匠性の高い鼻隠し部材20を形成することができる。
【0047】
下方板22の板厚は、上方板21の板厚と比較して薄くなるように形成されていると好ましい。一例として、下方板22の板厚は0.4mm程度であると好ましい。
このように、下方板22の板厚を上方板21よりも薄くすることにより、下方板22の加工性が向上し、上記のような段差等を形成しやすくなる。また、下方板22を構成する板材は、破風板を構成する板材と同じとすると好ましい。下方板22を、破風板と同じ板材によって形成することにより、材料調達の点や、色の統一を図ることができるという点から、好適である。
【0048】
また、上記上方板21と下方板22は、それぞれ色や形状が異なって形成されていても良く、また、下方板化粧面部22cを屋内方向又は屋外方向に膨出させ、その表面が凹凸(溝)形状を備えたものであってもよいし、また、側面視で鉤状に折曲されたものであってもよい。このように、鼻隠し部材20を構成する上方板21と下方板22を組み合わせることにより、鼻隠し部材20全体としての色や形状を自由に変更可能であるため、意匠性の高い軒先ユニット100を提供することができる。
【0049】
(下方板補強プレート23の構成)
さらに、上記下方板22よりも屋内側に配設される下方板補強プレート23は、下方板22を補強するために備えられるものであり、少なくともその一部がそれぞれ上方板21と下方板22とに対して固定されている。
下方板補強プレート23は、下方板22と比較して厚さが同等以上の板材によって形成されていると好ましい。一例として、下方板補強プレート23の板厚は1.2mm程度であると好ましい。
【0050】
下方板補強プレート23は、図5に示すように、下方板22に対して対向するように備えられ、下方板22と同様、断面が階段状に形成されている。下方板補強プレート23は、上記の上方板21の上方板下面部21eに重ねられて固定される補強プレート固定部23aと、補強プレート固定部23aの前端部から曲折して下方に延びる補強プレート中間部23bと、補強プレート中間部23bから前方に曲折して延びる補強プレート下面部23cとを有し、これらは一体的に形成されている。したがって、下方板補強プレート23は、断面が階段状に形成されている。
【0051】
下方板補強プレート23は、補強プレート固定部23aが、上方板下面部21eの下方側の面に重なるように固定されており、さらに、補強プレート下面部23cが下方板下面部22dの上面に重なるようにして固定されている。このとき、下方板22の下方板化粧面部22cと、下方板補強プレート23の補強プレート中間部23bとは、互いに対向するように離間して配設される。下方板化粧面部22cと補強プレート中間部23bとの間には、保温板27が配設されるため、下方板補強プレート23は、保温板を固定するための固定部材としての役割も果たしている。
【0052】
このように、下方板22及び下方板補強プレート23が対向して配設されると共に、両者の上端部が上方板21に対して固定され、さらに両者の下端部が互いに固定されているため、上方板21、下方板22、下方板補強プレート23とが組み合わされて閉断面構造となり、より強度を向上させることができる。したがって、鼻隠し部材20を一枚の板材で形成するよりも高い強度が得られ易く、好ましい。
【0053】
<他の実施形態に係る鼻隠し部材120>
以下、図6を参照して、他の実施形態に係る鼻隠し部材120に関して説明する。なお、上記実施形態の鼻隠し部材20と同じ構成である部分は、その説明を省略する。
【0054】
(上方板121の構成)
図6は、鼻隠し部材120の断面図である。図6に示すように、上方板121は、上記実施形態の上方板21と比較して、下側突設部21fを備えていないが、下側突設部21fの替わりに、突設片121fを備えている。この突設片121fは、断面略鉤状に形成されており、その一片が上方に突出するように、上方板下面部121eに固定されている。
【0055】
そして、上方板121は、突設片121f以外の構成は上記上方板21と同様の構成を備えている。すなわち、支持部材40及び樋受け部材50等が取着される上方板化粧面部121bと、上方板化粧面部121bの上端部から建物本体1側斜め上方へ曲折して延びる上方板上面部121cと、上方板上面部121cの建物本体1側の端部から下方へ曲折して延びる上側突設部121dと、上方板化粧面部121bの下端部から建物本体1側へ曲折して延びる上方板下面部121eとを有し、これらは一体的に形成されている。したがって、上方板121は、断面略コ字状に形成されている。なお、上方板化粧面部121bの下方の一部(上方板固定部121a)には、以下で詳述する下方板122の一部が重ねられ、ボルト−ナット等の固定手段128によって固定されている。
【0056】
そして、上方板121の上方板化粧面部121bの上方には、上記上方板21と同様に、複数の換気口121gが設けられていてもよい。また、換気口121gにはリブ121hが備えられていても良い。
さらに、図6では図示していないが、上方板121の1上方板化粧面部21bの建物本体1側の面において、上記実施形態の上方板21と同様に、防火ダンパーや、換気口経路カバーが取り付けられていても良い。
【0057】
さらにまた、上方板121の屋内側において、保温板127を配設するため、保温板固定部材126が取着されている構成としても良い。図6では、保温板固定部材126の固定箇所は上方板121の上側突設部121dと、突設片121fとの間に架設されている構成を示したが、特にこれに限定されるものではなく、また、形状も図6の形状に限定されるものではない。
【0058】
(下方板122の構成)
下方板122は、上記実施形態の下方板22と同様の構成である。
すなわち、下方板122は、図6に示すように、上記の上方板121の上方板化粧面部121b(より詳細には、上方板固定部121a)に重ねられて固定される下方板固定部122aと、下方板固定部122aの下端部から建物本体1の屋内方向へ曲折して略水平に延びる下方板中間部122bと、下方板中間部122bから下方に曲折して延びる下方板化粧面部122cと、下方板化粧面部122cの下端部から建物本体1の屋内方向へ曲折して略水平に延びる下方板下面部122dとを有し、下方板下面部122dの屋内側端部から上方へ向かって曲折して延びる下側突設部122eと、を有し、これらは一体的に形成されている。したがって、下方板122は、断面が階段状に形成されている。なお、下方板122の下方板下面部122dには、シール部材29が取着されていても良い。また、下側突設部122eの作用効果は、後述する。
【0059】
(下方板補強プレート123の構成)
さらに、上記下方板122よりも屋内側に配設される下方板補強プレート123は、下方板122を補強するために備えられるものであり、少なくともその一部がそれぞれ上方板121と下方板122とに対して固定されている。
【0060】
下方板補強プレート123は、図6に示すように、下方板122に対して対向するように備えられ、断面が略コ字状に形成されている。下方板補強プレート123は、上記の上方板121に備えられた突設片121fに重ねられて固定される補強プレート固定部123aと、補強プレート固定部123aの下端部から曲折して建物本体1の屋内側に延びる補強プレート折曲部123dと、補強プレート折曲部123dの屋内側端部から前下方に曲折して延びる補強プレート中間部123bと、補強プレート中間部123bの下端部から屋外側に曲折して延びる補強プレート下面部123cとを有し、これらは一体的に形成されている。したがって、下方板補強プレート123は、断面が略コ字状に形成されている。
【0061】
下方板補強プレート123は、補強プレート固定部123aが、突設片121fの屋内側の面に重なるように固定されており、さらに、補強プレート下面部123cが下方板下面部122dの上面に重なるようにして固定されている。このとき、下方板122の下方板化粧面部122cと、下方板補強プレート123の補強プレート中間部123bとは、互いに対向するように離間して配設される。
【0062】
<軒先ユニット取付部材30>
本実施形態に係る軒先ユニット100は、図2に示すように、軒先ユニット取付部材30を備えており、軒先ユニット取付部材30を軒桁3に固定された腕木部材10に固定することにより、軒先ユニット100が建物本体1の軒先に取着される。
【0063】
軒先ユニット取付部材30は、鼻隠し部材20(より詳細には、上方板21)の屋内側の面に固定されており、SUS等の金属製の部材によって構成されている。軒先ユニット取付部材30の形状や、腕木部材10に固定される構成は特に限定されるものではなく、公知の手法が用いられる。
例えば、略L字状に形成された板材を組み合わせることにより軒先ユニット取付部材30を構成し、ボルト−ナット等の固定部材によって腕木部材10に固定される構成としても良い。
また、軒先ユニット100と軒桁3との相対位置や取付角度が適宜調節可能な構成としても良い。
【0064】
<支持部材40>
図1及び図2に示すように、支持部材40は、鼻隠し部材20(より詳細には、上方板21)の建物本体1の屋外方向側に取り付けられる略板形状のプレート支持部41と、プレート支持部41から建物本体1の屋外方向へ突出して設けられる転落防止部材500取付用の取付部42と、を備えている。支持部材40は、転落防止部材500の一対の下端部504が挿入可能なように、鼻隠し部材20の桁行方向の端部にそれぞれ配置されている。
【0065】
プレート支持部41は、その所定位置に複数のボルト挿通孔(図示省略)が形成され、鼻隠し部材20の桁行方向の端部のそれぞれに取り付けられている。支持部材40は、鼻隠し部材20の上方板化粧面部21bを、軒先ユニット取付部材30(より詳細には、軒先ユニット取付部材30の鼻隠し部材20に固定された部分)と支持部材40のプレート支持部41との間で挟み込んだ状態で、それぞれに設けられたボルト挿通孔にボルトを挿通してナットを締め込むことにより、鼻隠し部材20に締結されている。すなわち、支持部材40は、鼻隠し部材20を介して軒先ユニット取付部材30に締結されている。
【0066】
取付部42は、転落防止部材500を上方から挿入可能な略円筒形状を有し、転落防止部材500を上方から着脱可能に支持する。
【0067】
図1及び図2に示すように、転落防止部材500は、水平部501と、水平部501の両端部から下方へ曲折して延びる一対の鉛直部502と、水平部501と略平行に配置され2つの鉛直部502同士を所定の位置で連結する複数の中桟部503と、を備えている。この転落防止部材500は、鉄等の金属製のパイプ状部材により形成されており、その重量の軽量化が図られている。一対の鉛直部502の下端部504の間の内幅は、軒先ユニット100の両端部に取り付けられる取付部42の間隔と略等しく設定されている。鉛直部502の下端部504は、軒先ユニット100の取付部42に上方から挿入可能な形状に形成されている。
【0068】
また、支持部材40は、後述する軒樋70が樋受け部材50に支持された状態で、軒樋70の底面部71から上方へ所定距離離間した、軒樋70の排水機能を阻害しない高さ位置に配置される。このため、建物の外観上の美観が損なわれることを防止しつつ、軒樋70を流下する雨水等の排水を円滑に行うことができる。
【0069】
<樋受け部材50>
樋受け部材50は、鼻隠し部材20の上方板化粧面部21bの建物本体1の屋外方向側の外面に、建物本体1の桁行方向に沿って所定間隔をあけて複数取り付けられており、建物本体1の桁行方向に沿って配置される軒樋70を上方から支持するように構成されている。樋受け部材50は、鼻隠し部材20に対してビス等により固定されるプレート部51と、プレート部51から建物本体1の屋外方向に突設される突設部52と、突設部52の建物本体1の屋外方向側の先端部53と、突設部52の下端部に設けられる弾性係止部54と、を備えている。
【0070】
また、軒樋70は、断面略U字状に形成されており、雨水等の排水が可能な底面部71と、底面部71の建物本体1の屋外方向側の端部に設けられる鉤形状のフック部72と、底面部71の建物本体1側端部から軒樋70の開口方向へ突出する突部73と、を備えている。軒樋70は、樋受け部材50に取り付けられた状態で、雨水等の排水を促進するため長手方向の一端側から他端側へ向けて傾斜して配置される。なお、軒樋70の傾斜方向の下端部には、縦樋(図示省略)と連結可能な排水口(図示省略)が設けられている。
【0071】
次に、軒樋70の樋受け部材50に対する取り付けについて図2及び図4に基づいて説明する。
軒樋70の樋受け部材50に対する取り付けは、先ず、軒樋70のフック部72を樋受け部材50の先端部53に嵌合させる。次に、この状態で、軒樋70の建物本体1側を上方へ移動させる。軒樋70を上方へ移動させると、弾性係止部54が軒樋70の突部73の進入により建物本体1の屋外方向へ弾性変形する。さらに、軒樋70を上方へ移動させると、弾性係止部54が軒樋70の突部73に嵌合して、その状態が保持される。このように、軒樋70は、樋受け部材50の先端部53と軒樋70のフック部72、及び樋受け部材50の弾性係止部54と軒樋70の突部73をそれぞれ嵌合させることにより、樋受け部材50に対して取り付けられる。軒樋70が樋受け部材50に対して取り付けられた状態では、支持部材40は、軒樋70によって下方から覆われる位置で、且つ軒樋70の底面部71から上方へ所定距離離間した、軒樋70の排水機能を阻害しない高さ位置に配置される。
【0072】
以上のように、本実施形態に係る軒先ユニットによれば、鼻隠し部材20の外面から建物本体1の屋外方向へ突設された支持部材40が軒樋70の上方に配置される。すなわち、軒先ユニット100を下方から見たときに、支持部材40は軒樋70の後方に配置されるため、支持部材40を下方から視認することは困難である。従って、屋根上での作業が完了して転落防止部材500を取り外した後、例えば、建物の新築工事が竣工した後においても、軒先ユニット100に存置された支持部材40によって、建物の外観上の美観が損なわれることがない。
【0073】
また、建物の新築工事が完了した後であっても、建物の美観を損なうことなく軒先ユニット100に存置される支持部材40に、転落防止部材500を取り付けることが可能なため、屋根の改修工事等をその後に行う場合においても、軒先作業における作業の安全性を確保することができる。そして、特に狭小地において、特に軒の出がない(または、極めて小さい)建物であっても、建物の外観上の美観を損なうことなく、建物本体1の周囲に転落防止部材500を配設することができる。
【0074】
<連結部材80>
次に、隣接する鼻隠し部材20同士を連結する鼻隠し部材20の連結部材80について図7乃至図10を参照して説明する。なお、以下、上方板21及び下方板22からなる鼻隠し部材20に対して取着される場合を説明するが、上記の鼻隠し部材120においても、以下の趣旨に沿って適用可能である。
連結部材80は、軒先ユニット100を建物本体1の桁行方向に沿って複数個連続して配設したときに、隣接する鼻隠し部材20,20の桁行方向の端部間に跨った位置に配置される。
【0075】
連結部材80は金属製の板バネであり、図8に示すように、隣り合う鼻隠し部材20,20の境界部分において跨るように、鼻隠し部材20の上方板21の建物本体1の屋内側の面に嵌合される。
図8に示すように、まず、連結部材80の下方を上方板21に当接させるように、また、上方は上方板21と離間するように斜めにして配置する。
【0076】
その後、連結部材80の上方を図8に示す矢印の向きに動くように押圧し、連結部材80の上方を上方板21に嵌合させることにより、隣り合う軒先ユニット100,100の鼻隠し部材20,20を連結することができる。
【0077】
連結部材80は、図10に示すように、上方板21の上方板化粧面部21bの建物本体1の屋内側の面に沿って配設される連結面部81と、連結面部81の上方端部から屋内側に向かって曲折されて斜め上方に延びる連結部材上面部82と、連結部材上面部82の屋内方向側端部から下方に曲折して延びる連結部材突設部83とを備えており、これらは一体に形成されている。また、連結部材突設部83の下方端部からは、さらに建物本体1の屋内側へ向かって延びる押圧部84が曲折して形成されていても良い。また、連結面部81の短手方向の両端部からは、建物本体1の屋内側に向かって曲折されて延びる側面部85が備えられていても良い。
【0078】
連結面部81の下方は、鼻隠し部材20の上方板21に備えられた係止片21jと、上方板化粧面部21bとの間に挿入される。このように、連結面部81の下方を係止片21jと上方板化粧面部21bとの間に挿入することにより、連結部材80が鼻隠し部材20の上方板21に仮固定された状態とすることができる。したがって、係止片21jと上方板化粧面部21bとの間は、若干離間するように上方板21が形成されており、連結部材80の板厚は、少なくとも、係止片21jと上方板化粧面部21bとの間に形成された空間の幅よりも小さくなるように形成されている。なお、図10は、説明のため、連結部材80と鼻隠し部材20の上方板21を図示しており、上方板21において、防火ダンパー24や換気口経路カバー25が備えられていない部分(すなわち、鼻隠し部材20の桁行方向の端部)に係る断面図を示すものである。
【0079】
一方、連結面部81の上方、連結部材上面部82、連結部材突設部83によって構成される断面略コ字状の部分は、可撓性の板バネであり、鼻隠し部材20の上方板21の上方板化粧面部21b、上方板上面部21c、上側突設部21dによって構成される断面略コ字状の部分の内側に嵌合される。
【0080】
したがって、係止片21jと上方板化粧面部21bの間に連結面部81を上方から差し込んで仮固定し、その後、連結部材突設部83または押圧部84を鼻隠し部材20側へ押圧することにより、連結部材80を鼻隠し部材20の上方板21に嵌合させることができる。
【0081】
軒の出がない(または、極めて小さい)建物に備えられる軒先ユニット100は、軒桁3から鼻隠し部材20の距離が極めて小さいため、連結部材を大型化することができないが、上記構成の連結部材80とすることにより、極めて省スペース化され、隣り合う軒先ユニット100,100を簡便且つ良好な状態で連結することができる。
【0082】
そして、連結面部81の表面(鼻隠し部材20側に向けられる面)には、図7に示すように、上下方向に沿って延在する止水材86が二箇所に貼着されている。止水材86は連結面部81の側方部分に備えられており、連結面部81の上端から下端にわたって互いに略平行となるように配置されている。
止水材86としては、耐水性及び可撓性を備えた材料を用いることができ、例えば、エチレン・プロピレン・ゴム(EPT)等を用いることができる。
【0083】
止水材86は、図10に示すように、板バネの弾発力により連結面部81が鼻隠し部材20の上方板21に対して押圧された状態では、止水材86が鼻隠し部材20の上方板21と密着可能なように構成されている。
【0084】
このように、止水材86を備えた連結部材80を鼻隠し部材20に嵌合することにより、隣接する鼻隠し部材20の桁行方向の端部間に形成される隙間から雨水等が流入するのを防止することができる。また、連結部材80として、を鼻隠し部材20内に嵌合するだけでよいので、その設置工程が簡素化される。
【0085】
<他の実施形態に係る連結部材180>
以下、図12を参照して、他の実施形態に係る連結部材180に関して説明する。図12は、説明のため、連結部材180と鼻隠し部材20の上方板21、下方板22を図示しており、上方板21において、防火ダンパー24、換気口経路カバー25、下方板補強プレート23が備えられていない部分(すなわち、鼻隠し部材20の桁行方向の端部)に係る断面図を示すものである。なお、上記実施形態の連結部材80と同じ構成である部分は、その説明を省略する。
【0086】
連結部材180は、まず、連結部材80の下方を下方板22(より詳細には、下方板化粧面部22c)に当接させるように、また、上方は上方板21と離間するように斜めにして配置する。
その後、連結部材180の上方を上方板21側に向かって押圧し、連結部材180の上方を上方板21に嵌合させることにより、隣り合う軒先ユニット100,100の鼻隠し部材20,20を連結することができる。
【0087】
連結部材180は、図12に示すように、上方板21の上方板化粧面部21bの建物本体1の屋内側の面に沿って配設される第1の連結面部181と、第1の連結面部181の上方端部から屋内側に向かって曲折されて斜め上方に延びる連結部材上面部182と、連結部材上面部182の屋内方向側端部から下方に曲折して延びる連結部材突設部183と、第1の連結面部181の下方端部から屋内側に向かって曲折されて略水平に延びる連結部材中間部187と、連結部材中間部187の屋内側端部から下方に曲折されて延びると共に、下方板22の下方板化粧面部22cの屋内側の面に沿って配設される第2の連結面部188と、第2の連結面部188の下方端部から屋内側に曲折されて延びる連結部材下面部189とを備えており、これらは一体に形成されている。
【0088】
また、連結部材突設部183の下方端部からは、さらに建物本体1の屋内側へ向かって延びる押圧部184が曲折して形成されていても良い。また、第1の連結面部181及び第2の連結面部188の短手方向の両端部からは、建物本体1の屋内側に向かって曲折されて延びる側面部185(第1の側面部185a、第2の側面部185b)が備えられていても良い。
【0089】
第1の連結面部181の下方は、鼻隠し部材20の下方板22において、第2のフランジ部としての下方板下面部22dの上方に突設された下側突設部22eと、下方板化粧面部22cとの間に挿入される。このように、第2の連結面部188と、連結部材下面部189を下側突設部22eと下方板化粧面部22cとの間に挿入することにより、連結部材180が鼻隠し部材20の下方板22に仮固定された状態とすることができる。したがって、連結部材下面部189の幅は、下側突設部22eと、下方板化粧面部22cとの幅よりも若干小さくなるように形成されている。
【0090】
一方、第1の連結面部181の上方、連結部材上面部182、連結部材突設部183によって構成される断面略コ字状の部分は、可撓性の板バネであり、鼻隠し部材20の上方板21の上方板化粧面部21b、上方板上面部21c、上側突設部21dによって構成される断面略コ字状の部分の内側に嵌合される。また、第1の連結面部181の下方、連結部材中間部187、第2の連結面部188によって構成される略Z字状の部分もまた可撓性の板バネであり、鼻隠し部材20の下方板22の下方板中間部22bと連結部材中間部187が当接し、さらに上方板化粧面部21bに対して第1の連結面部181が、下方板化粧面部22cに対して第2の連結面部188が押圧するように形成されている。
【0091】
したがって、下方板化粧面部22cと下側突設部22eの間に連結部材下面部189を上方から差し込んで仮固定し、その後、連結部材突設部183または押圧部184を鼻隠し部材20側へ押圧することにより、連結部材180を鼻隠し部材20の上方板21に嵌合させることができる。
【0092】
そして、第1の連結面部181、連結部材中間部187、第2の連結面部188の表面(鼻隠し部材20側に向けられる面)には、図12に示すように、上下方向に沿って連続して止水材186が貼着されている。止水材186は第1の連結面部181、連結部材中間部187、第2の連結面部188の側方部分に1箇所ずつ、計2箇所備えられており、これら2箇所に設けられた止水材186は、第1の連結面部181の上端から、連結部材中間部187を経由して第2の連結面部188の下端まで、互いに略平行となるように配置されている。
【0093】
止水材186は、図12に示すように、板バネの弾発力により第1の連結面部181が鼻隠し部材20の上方板21に、第2の連結面部188が下方板化粧面部22c対して押圧された状態では、止水材186が鼻隠し部材20の上方板21、下方板22と密着可能なように構成されている。
【0094】
このように、上方板21及び下方板22にわたって一体の連結部材180で連結することにより、雨水等の止水効果がさらに向上するだけでなく、上方板21及び下方板22をそれぞれ別体の連結部材で連結する場合と比較して、軒先ユニット100の設置作業も簡素化することができる。
【0095】
さらに、連結部材80を備えることにより、軒先ユニット100が、建物本体1の桁行方向に沿って複数個連続して配置可能となるため、軒先ユニット100自体をコンパクトに形成することが可能であり、軒先ユニット100の建物本体1に対する取付作業、運搬作業、及び工場等での製作作業の容易化を図ることができる。
【0096】
<建物施工方法>
次に、本発明の軒先ユニット100を用いた建物の施工方法について図1、図2及び図13を参照して説明する。
図13に示すように、本実施形態に係る軒先ユニット100を用いた建物の施工方法は、建物躯体構築工程S1と、軒先ユニット仮固定工程S2と、軒先ユニット本固定工程S4と、を備えている。また、上記工程に加えて、さらに、軒先ユニット調整工程S3と、転落防止部材取付工程S5と、転落防止部材取外工程S6と、を備えていてもよい。
【0097】
図1に示すように、建物躯体構築工程S1では、建物本体1の柱(図示省略)、軒桁3、小屋梁5等の構造体の骨組を構築する。本実施形態では、鉄製の部材である軒桁3、小屋梁5等の構造体をボルトや溶接等によって接合することにより建築躯体が構築される。
【0098】
そして、建物躯体構築工程S1の後に、軒先ユニット仮固定工程S2が行われる。この工程は、軒桁3に腕木部材10がボルト等により固定された状態で開始される。
鼻隠し部材20、軒先ユニット取付部材30、支持部材40、及び樋受け部材50が、予め一体化された複数の軒先ユニット100を、建物本体1の屋外側で吊り上げて(または、屋内側から屋外側へ軒先ユニット100を吊り下げるように運搬して)、軒先ユニット100に設けられる軒先ユニット取付部材30を、建物本体1の屋内または屋外方向から腕木部材10に当接させる。
そして、軒先ユニット取付部材30を腕木部材10に当接させた後、ボルト等の締結手段を上方から軒先ユニット取付部材30と腕木部材10とに挿通させた状態とし、ナット等の締結手段を仮締めすることにより、軒桁3に対して仮固定される。この構成により、軒先ユニット100の落下が防止される。
【0099】
上記軒先ユニット仮固定工程S2において、軒先ユニット100は、軒桁3に対して仮保持される。なお、軒先ユニット仮固定工程S2においては、軒先ユニット100を、建物本体1の屋外側で吊り上げて軒先ユニット取付部材30を腕木部材10上に配設する場合に限られず、軒先ユニット100を建物本体1の屋内側から搬入して、軒先ユニット取付部材30を腕木部材10上に配設することも可能である。
【0100】
なお、上記軒先ユニット仮固定工程S2の後に、軒先ユニット調整工程S3を備えていても良い。この軒先ユニット調整工程S3では、軒先ユニット100と腕木部材10との相対位置が調整される。したがって、軒先ユニット100の軒先ユニット取付部材30及び腕木部材10を、締結手段によって仮固定した部分について適宜位置調整可能な構成とするとよい。このような構成として、例えば、軒先ユニット取付部材30または腕木部材10において形成された締結手段を挿通させる孔を、いずれか一方を長孔とすることにより、軒先ユニット100の取付位置を適宜調整することができる。
【0101】
また、軒先ユニット調整工程S3では、軒先ユニット取付部材30と腕木部材10の相対位置だけでなく、互いの成す角度が調整可能な機構をさらに備えていると好適である。
また、この軒先ユニット調整工程S3で行われる作業は、全て建物本体1の屋内側から行われる。
【0102】
上記のように、軒先ユニット100を適宜移動させて、建物本体1に対する軒先ユニット100の取付角度、屋内外方向の取付位置、の両方が適正なものとなったときに、軒先ユニット調整工程S3は終了する。隣接する他の軒先ユニット100においても同様に行われる。
【0103】
軒先ユニット調整工程S3の後は、図13に示すように、軒先ユニット本固定工程S4が行われる。この軒先ユニット本固定工程S4で行われる作業は、軒先ユニット調整工程S3と同様に全て建物本体1の屋内側から行われる。
【0104】
軒先ユニット本固定工程S4では、軒先ユニット取付部材30と腕木部材10とを締結する締結手段(ボルト−ナット等)を、作業者が建物本体1の屋内側から本締めする。また、上記作業手順は、隣接する他の軒先ユニット100においても同様に行われる。
なお、本実施形態では、上記の締結手段を本締めした後に、隣接する鼻隠し部材20の桁行方向の端部間に建物本体1の屋内側から、上記の連結部材80が装着される。
【0105】
軒先ユニット本固定工程S4の後は、図13に示すように、転落防止部材取付工程S5が行われてもよい。この転落防止部材取付工程S5で行われる作業も、軒先ユニット本固定工程S4と同様に全て建物本体1の屋内側から行われる。
図1及び図2に示すように、転落防止部材取付工程S5では、各軒先ユニット100に設けられる支持部材40の取付部42に対して上方から転落防止部材500の取り付けを行う。
【0106】
転落防止部材500の軒先ユニット100への取り付けは、支持部材40の取付部42に、建物本体1の屋内側から転落防止部材500の下端部504を挿入することにより行われる。なお、転落防止部材500の軒先ユニット100への取り付けを、軒先ユニット100が軒桁3に固定された後に行うとして説明したが、予め転落防止部材500を軒先ユニット100に装着した状態で、この軒先ユニット100を建物本体1の屋外側から吊り上げて、上記軒先ユニット仮固定工程S2を行ってもよい。したがって、転落防止部材取付工程S5は、軒先ユニット仮固定工程S2の前に行われてもよい。
【0107】
このように、転落防止部材500が、軒先ユニット100を構成する支持部材40に容易に取付可能であるため、外部足場を設置することが困難な狭小地においても、転落防止部材500を配設することができる。したがって、狭小地において、特に軒の出がない(または極めて小さい)建物においても転落防止部材500を配設することができ、屋根上での軒先工事における安全性を十分に確保することができる。また、建物本体1の周囲に地面等から外部足場を組み立てる必要がないため、軒先工事の作業工程を省略することができ、工期の短縮化を図ることができる。さらに、支持部材40は、軒先ユニット100にそのまま存置されるため、例えば、屋根等の改修工事を行う際に、この転落防止部材500を再度使用することも可能となる。
【0108】
転落防止部材取付工程S5の後は、図13に示すように、転落防止部材取外工程S6が行われる。
転落防止部材取外工程S6は、転落防止部材取付工程S5において転落防止部材500を軒先ユニット100に取り付けた後、さらに、屋根パネル4の取付作業や屋根上でのアンテナ設置作業等の屋根上での作業が行われ、全て完了した後に行われる。転落防止部材取外工程S6では、建物本体1の屋外側から転落防止部材500を軒先ユニット100から取り外す作業を行う。
【0109】
本発明の軒先ユニット100を用いた建物の施工方法は、少なくとも、建物本体の建物躯体を構築する建物躯体構築工程S1と、建物躯体構築工程S1の後に、軒先ユニット取付部材30を、軒桁3から建物本体1の屋外方向へ突設された腕木部材10に仮固定する軒先ユニット仮固定工程S2と、軒先ユニット仮固定工程S2の後に、軒先ユニット調整工程S3の後に、軒先ユニット100を建物本体1の屋内側から腕木部材10に本固定する軒先ユニット本固定工程S4と、を備えている。また、軒先ユニット仮固定工程S2の後に、建物本体1に対する軒先ユニット100の上下方向の取付角度、屋内外方向の取付位置、及び桁行方向の取付位置の調整を建物本体1の屋内側から行う軒先ユニット調整工程S3をさらに備えていてもよく、さらに、軒先ユニット本固定工程S4の後に、転落防止部材500を支持部材40に取り付ける転落防止部材取付工程S5と、転落防止部材取付工程S5の後に、転落防止部材500を支持部材40から取り外す転落防止部材取外工程S6と、を備えていてもよい。
【0110】
本発明の軒先ユニット100を用いた建物の施工方法では、上述した軒先ユニット100を用いているため、建物の外観上の美観を損なうことなく、狭小地において、特に軒の出がない(または極めて小さい)建物の施工作業の安全性を十分に確保でき、工期の短縮化を図ることが可能である。
【0111】
また、本発明の軒先ユニット100を用いた建物の施工方法では、軒先ユニット100の取付位置の調整、及び軒先ユニット100の仮固定及び本固定を建物本体1の屋内側から行うため、作業の安全性をさらに向上させることができる。
【0112】
本発明によれば、軒の出がない(または、極めて小さい)建物の周囲に外部足場を設置しなくとも、作業者は、建物の屋内側から軒先作業をより安全且つ正確に行うことができる。さらに、建物の外観上の美観を損なうことなく、意匠性の高い軒先ユニットを用いた建物の施工方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0113】
1 建物本体
2 外壁面材
3 軒桁(建物躯体)
4 屋根パネル
4a 垂木
4b 野地材
4c 屋根葺き材
4d 先端部
5 小屋梁
10 腕木部材(建物側取付部材)
20,120,20’ 鼻隠し部材
21,121 上方板
21a,121a 上方板固定部
21b,121b 上方板化粧面部
21c,121c 上方板上面部
21d,121d 上側突設部
21e,121e 上方板下面部
21f 下側突設部
121f 突設片
21g,121g 換気口
21h,121h リブ
21j 係止片
22,122 下方板
22a,122a 下方板固定部
22b,122b 下方板中間部
22c,122c 下方板化粧面部
22d,122d 下方板下面部
22e,122e 下側突設部
23,123 下方板補強プレート
23a,123a 補強プレート固定部
23b,123b 補強プレート中間部
23c,123c 補強プレート下面部
123d 補強プレート折曲部
24 防火ダンパー
25 換気口経路カバー
26,126 保温板固定部材
27,127 保温板
28,128 固定手段
29 シール部材
30 軒先ユニット取付部材
40,40’ 支持部材
41 プレート支持部
42 取付部
50 樋受け部材
51 プレート部
52 突設部
53 先端部
54 弾性係止部
60 水切材
70 軒樋
71 底面部
72 フック部
73 突部
80,180 連結部材
81 連結面部
181 第1の連結面部
82,182 連結部材上面部
83,183 連結部材突設部
84,184 押圧部
85,185 側面部
185a 第1の側面部
185b 第2の側面部
86,186 止水材
187 連結部材中間部
188 第2の連結面部
189 連結部材下面部
100,100’ 軒先ユニット
500,500’ 転落防止部材
501 水平部
502 鉛直部
503 中桟部
504 下端部
S1 建物躯体構築工程
S2 軒先ユニット仮固定工程
S3 軒先ユニット調整工程
S4 軒先ユニット本固定工程
S5 転落防止部材取付工程
S6 転落防止部材取外工程
R 軒天部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物本体の軒先に取り付けられ、軒樋を取着可能な軒先ユニットであって、
前記軒先を覆うように配設される鼻隠し部材と、
該鼻隠し部材の前記建物本体側の内面に設けられ、前記軒先ユニットを建物躯体に固定するための軒先ユニット取付部材と、
前記鼻隠し部材から前記建物本体の屋外方向へ突設され、前記軒樋を支持する樋受け部材と、を備え、
前記鼻隠し部材は、
上方に配設されて前記軒先ユニット取付部材及び前記樋受け部材が取着される上方板と、
該上方板及び外壁面材に固定される下方板と、
前記上方板及び前記下方板に固定され、前記下方板よりも前記建物本体の屋内側に対向して配設される下方板補強プレートと、を備えてなることを特徴とする軒先ユニット。
【請求項2】
前記鼻隠し部材の外面から前記建物本体の屋外方向へ突設されると共に前記軒樋の上方に配置され、転落防止部材を上方から着脱可能なように、前記転落防止部材を下方から支持する支持部材をさらに備え、
該支持部材は、前記鼻隠し部材に取り付けられてなることを特徴とする請求項1に記載の軒先ユニット。
【請求項3】
前記上方板と前記下方板とを互いに固定する固定手段は、前記軒樋が配設される高さと略同じ高さ、または該高さよりも上方に配設されてなることを特徴とする請求項1または2に記載の軒先ユニット。
【請求項4】
前記上方板は、
前記樋受け部材が取着される上方板化粧面部と、
該上方板化粧面部の下方端部から前記建物本体の屋内方向へ延設された上方板下面部と、を有し、
前記下方板は、
前記上方板化粧面部と重ねられる下方板固定部と、
該下方板固定部の下方端部から前記建物本体の屋内方向へ延設された下方板中間部と、
該下方板中間部から下方に延設された下方板化粧面部と、を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の軒先ユニット。
【請求項5】
前記上方板には、複数の換気口が形成されてなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の軒先ユニット。
【請求項6】
前記上方板の前記建物本体の屋内側に、保温板を取着するための保温板固定部材をさらに備えてなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の軒先ユニット。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の軒先ユニットを用いた建物の施工方法であって、
前記建物本体の前記建物躯体を構築する建物躯体構築工程と、
前記建物躯体構築工程の後に、前記軒先ユニット取付部材を、前記建物躯体から前記建物本体の屋外方向へ突設された建物側取付部材に仮固定する軒先ユニット仮固定工程と、
前記軒先ユニット仮固定工程の後に、前記軒先ユニットを前記建物本体の屋内側から前記建物側取付部材に本固定する軒先ユニット本固定工程と、を備えたことを特徴とする軒先ユニットを用いた建物の施工方法。
【請求項8】
前記建物躯体構築工程の後に、転落防止部材を支持部材に取り付ける転落防止部材取付工程を備えることを特徴とする請求項7に記載の軒先ユニットを用いた建物の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−32650(P2013−32650A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169416(P2011−169416)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)