説明

軒先構造

【課題】十分な防水性を備えるために、波板の下側端にシール部材・面戸を設けて閉塞した場合であっても、通気を十分にとることが可能となる。
【解決手段】野地板12上に配置される波板13と、波板13の軒先側で、かつ、下面側にその上側端部を重ねて配置され、波板13から滴下する雨水を野地板12の軒先側に案内する水切り部材20と、波板13の軒先側先端の下面と水切り部材20上面との間に設けられたシール部材30とを具備し、水切り部材20は、シール部材30と野地板12の先端部分との間の位置に、空気流通孔25が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、山型屋根材(波板、折半等)と水切り部材を用いた軒先構造に関し、特に雨水を軒樋に案内できるとともに軒先から棟へ空気が流れる通気性を有するものに関する。
【背景技術】
【0002】
家屋の野地板上に設置する屋根材や屋根下葺防水材として波板(山型屋根材)を用いた家屋の屋根構造が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。このような波板は低コストであるとともに、防水性及び耐久性を兼ね備えている。
【0003】
また、野地板に雨水が滴下することを防ぐため、水切り部材が設置され、この水切り部材で受けた雨水を軒先から排出する軒先構造が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−091787号公報
【特許文献2】特開2009−257019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した軒先構造では、次のような問題があった。すなわち、水切り部材は、軒先の全体にわたって形成されるため、波板下面と水切り部材との間が閉塞される。また、波板の下側端にシール部材や面戸を設けないと、波板と野地板との間から雨水が浸入する虞がある。したがって、軒先側からの風が入らず、波板と野地板の間の換気が不十分となった。
【0006】
そこで本発明は、十分な防水性を備えるために、波板の下側端にシール部材・面戸を設けて閉塞した場合であっても、通気を十分にとることができる軒先構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決し目的を達成するために、本発明の軒先構造は次のように構成されている。
【0008】
野地板上に配置される波板と、この波板の軒先側で、かつ、下面側にその上側端部を重ねて配置され、上記波板から滴下する雨水を上記野地板の軒先側に案内する水切り部材と、上記波板の軒先側先端の下面と上記水切り部材上面との間に設けられた止水部材とを具備し、上記水切り部材は、上記止水部材と上記野地板の先端部分との間の位置に、空気流通孔が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、十分な防水性を備えるために、波板の下側端にシール部材・面戸を設けて閉塞した場合であっても、通気を十分にとることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る軒先構造を示す断面図。
【図2A】同軒先構造に組み込まれた波板を示す正面図。
【図2B】同軒先構造に組み込まれた折半を示す正面図。
【図3】同軒先構造に組み込まれた水切り部材を示す斜視図。
【図4】同軒先構造の要部を一部切欠して示す平面図。
【図5】同軒先構造の要部の裏面を示す平面図。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る軒先構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は本発明の第1の実施の形態に係る軒先構造10を示す断面図、図2Aは軒先構造10に組み込まれた波板13を示す正面図、図2Bは軒先構造10に組み込まれた折半15を示す正面図、図3は同軒先構造10に組み込まれた水切り部材を示す斜視図、図4は同軒先構造の要部を一部切欠して示す平面図、図5は同軒先構造10の要部の裏面を示す平面図である。なお、軒先構造10は、家屋の屋根構造の一部を構成している。なお、図1中100は樋を示している。
【0012】
軒先構造10は、垂木11と、この垂木11に下面が支持された野地板12と、この野地板12の上に配置された波板(山型屋根材)13と、波板13の軒先側で、かつ、下面側にその上側端部を重ねて配置され、波板13から滴下する雨水を野地板12の軒先側に案内する水切り部材20と、波板13の軒先側先端の下面と水切り部材20の後述する本体部21との間に設けられたスポンジ材製のシール部材(止水部材)30と、水切り部材20と野地板12との間に設けられ、水切り部材20を支持する支持部材40とを備えている。なお、シール部材30の他、蓋状の面戸(止水部材)を取り付けてもよい。
【0013】
なお、波板13と野地板12との間には防水シート50が配置され、防水シート50の下端部51は、波板13と水切り部材20との間に位置している。
【0014】
波板13は、主に金属材製であり、図2Aに示すように、波上部13aと波下部13bとが交互に、かつ、一定の間隔で形成されている。また、波上部13aと波下部13bとが並ぶ波方向は、垂木11の延びる方向と直交して配置されている。なお、固定釘14は、波上部13aを貫通して打ち込まれている。
【0015】
なお、波板15の代わりに図2Bに示すような折半(山型屋根材)を用いても良い。折半15は、波上部15aと波下部15bとが交互に、かつ、一定の間隔で形成されている。
【0016】
水切り部材20は、金属製の板材を折曲して形成され、野地板12に沿って配置される本体部21と、この本体部21の下側端側に形成され、波下部13bに連なる緩衝板部22と、この緩衝板部22の下方に折り返して形成されるとともに、支持部材40の下端41に係合する係合部23とを備えている。緩衝板部22は、基端部22aより先端22bが緩やかになるように屈曲されているため、雨水の流速を減じさせる機能を有している。
【0017】
水切り部材20の本体部21において、シール部材30と野地板12の先端部分との間の位置に、スリット状の空気流通孔25が設けられている。
【0018】
支持部材40は、野地板12の下端部に水平方向に沿って間欠的に配置されている。また、支持部材40の下端41は水切り部材20の係合部23と係合することで水切り部材20の位置決めを行い、雨水が樋100内に滴下するように調整する機能を有している。なお、水切り部材20に十分な強度を持たせることで、支持部材40を省略してもよい。
【0019】
このように構成された軒先構造10では、次のようにして雨水の排水、及び、通気を行う。すなわち、降雨があると、波板13上に滴下した雨水は波下部13bに集められ、軒先側に案内される。そして、波板13から飛び出た雨水はそのまま緩衝板部22に当たり、減速し、そのまま樋100の中に滴下する。したがって、野地板12上に雨水が滴下することは無い。
【0020】
一方、風Fは水切り部材20の空気流通孔25を通って、波板13と水切り部材20との間に入り込む。さらに、波板13と野地板12との間に入り、上部へ抜けていく。このため、通気を確保することができる。このため、野地板12の湿気を野地板12と波板13との空間から棟へ排湿できる、野地板12での結露を防止でき、野地板12の耐久性を向上させることができる。
【0021】
なお、空気流通孔25から雨水が入り込むには下から上へ強く吹き上げる条件が必要であり、空気流通孔25から野地板12側へ雨水が浸入することは防止できる。
【0022】
したがって、十分な防水性を備えるために、波板13の下側端にシール部材30・面戸を設けて閉塞した場合であっても、通気を十分にとることが可能となる。
【0023】
上述したように、本実施の形態に係る軒先構造10によれば、合成樹脂製の波板13を用いることで十分な耐久性を有しつつ、防水性を維持し、また野地板12と波板13との間の換気を行うことが可能となる。
【0024】
図6は、本発明の第2の実施の形態に係る軒先構造10Aを示す断面図である。なお、図6において図1と同一機能部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0025】
本実施の形態においては、上述した水切り部材20の代わりに水切り部材20Aが用いられている。水切り部材20Aは、緩衝板部22Aが設けられている。緩衝板部22Aは、波板13の下端に配置され、波下部13bを流れ落ちた雨水を広い面積の面上に拡げることによって速度を低下させる機能を有している。雨水は速度が低下することで、樋100内に落下することとなる。
【0026】
このように構成された軒先構造10Aにおいても、軒先構造10と同様の効果を得ることができる。
【0027】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能であるのは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
波板の下側端にシール部材を設けて閉塞した場合であっても、十分な防水性を備えるとともに、換気を十分にとることができる軒先構造が得られる。
【符号の説明】
【0029】
10,10A…軒先構造、12…野地板、13…波板(山型屋根材)、13b…波下部、15…折半(山型屋根材)、20,20A…水切り部材、22…緩衝板部、25…空気流通孔、30…シール部材(止水部材)、40…支持部材、50…防水シート、100…樋。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
野地板上に配置される波板と、
この波板の軒先側で、かつ、下面側にその上側端部を重ねて配置され、上記波板から滴下する雨水を上記野地板の軒先側に案内する水切り部材と、
上記波板の軒先側先端の下面と上記水切り部材上面との間に設けられた止水部材とを具備し、
上記水切り部材は、上記止水部材と上記野地板の先端部分との間の位置に、空気流通孔が設けられていることを特徴とする軒先構造。
【請求項2】
上記水切り部材と上記野地板との間には、上記水切り部材を支持するとともに、上記水切り部材の位置決めを行う支持部材が水平方向に沿って間欠的に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の軒先構造。
【請求項3】
上記水切り部材は、上記波板の波下部の延長線上に設けられた緩衝板部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の軒先構造。
【請求項4】
上記波板と上記野地板との間には防水シートが配置され、
上記防水シートの下端部は、上記波板と上記水切り部材との間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の軒先構造。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−19147(P2013−19147A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152139(P2011−152139)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(503341996)エバー株式会社 (36)
【出願人】(595031731)株式会社神清 (37)