説明

軟水化装置及びそれを用いた給湯機

【課題】構成が簡易で且つ薬剤を使わずにメンテナンスフリーで軟水化及び再生することができ、電気分解によって生成したガスが滞留することを防止し、使用性を向上した軟水化装置を提供すること。
【解決手段】少なくとも一対の電極20と、陽イオン交換体22、陰イオン交換体23を有する水分解イオン交換体21と、前記水分解イオン交換体21の表面に接する流路24と、外装19と、前記電極20に電圧を印加して前記水分解イオン交換体21を再生する時に生成する濃縮水を、前記外装19内より外部へ排出する排水配管25とを備え、前記排水配管25を前記外装19の上部または側面上部に設けるとともに、軟水化処理時には、前記電極に0V以上、かつ、水の分解電圧未満の電圧を印加することを特徴とする軟水化装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟水処理された水を使用者に提供したり、機器の配管内のスケール生成を防止する軟水化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、給湯機の配管内のスケール生成を防止する技術として、イオン交換樹脂によって軟水化及び薬剤を用いずにメンテナンスフリーで再生する以下のような技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図4は、従来配管のスケール生成を防止する給湯機の構成図を示すものである。
風呂給湯機に水を供給する水路となる原水供給パイプ1は、三方弁2を介して電気分解装置3の下部及び軟水化装置13の上部に接続されており、採水時には軟水化装置13に通水し、再生時には電気分解装置3に通水するように三方弁2を切り換える構成となっている。
【0004】
電気分解装置3は、ポーラスな隔膜4、例えば、素焼きの隔膜によって陽極室7と陰極室8に仕切られ、これら極室にそれぞれ電極5及び6を配設している。また、陽極室7の上部には酸性水出口パイプ10が三方弁11を介して、陽イオン交換樹脂12を充填した軟水化装置13の上部及び三方弁18を介して浴槽21への水供給パイプ23に接続されており、再生時には軟水化装置13に通水し、浴槽21で酸性風呂に入浴するときには、浴槽21への水供給パイプ23に通水するように三方弁11を切り換える構成となっている。
【0005】
また、陰極室8の上部にはアルカリ水出口パイプ9が三方弁19を介して排水パイプ22及び飲用水パイプ20に接続されており、アルカリ水飲用時には飲用水パイプ20に通水し、飲用以外のときは排水パイプ22から排水するように三方弁19を切り換える構成になっている。また、軟水化装置13の下部には三方弁14を介して排水パイプ15及びパイプ16を介して風呂給湯機17が接続されている。
【0006】
上記構成において、水は原水供給パイプ1を通り、採水時には三方弁2を切り換えて、陽イオン交換樹脂12の充填してある軟水化装置13上部から供給し、陽イオン交換樹脂12により水中のカルシウム、マグネシウム等の陽イオンは、水素イオンと置換され、軟水がパイプ16、風呂給湯機17を介して、パイプ23により浴槽21に供給される。
【0007】
陽イオン交換樹脂再生時には、水は三方弁2を切り換えて、隔膜4によって陽極室7及び陰極室8を分離形成し、これら極室にそれぞれ電極5、6を配設した電気分解装置3に供給される。電極5、6の両極間に直流電圧を印加し、陽極室7で得られた酸性水を三方弁11を切り換えて軟水化装置13の上部から供給する。このとき、三方弁14を排水パイプ15側に切り換え、水を風呂給湯機17に通水しないようにする。
【0008】
酸性風呂入浴時には、三方弁11及び18を切り換え陽極室7で得られた酸性水をパイプ10、パイプ23を介して浴槽21に供給する。このとき、三方弁18が切り換えられているため、風呂給湯機17に酸性水は通水しない。
【0009】
また、浴室内でアルカリ水を飲用するときには三方弁19を切換える。以上のように、陽イオン交換樹脂で水中のカルシウム、マグネシウム等の硬度成分を除去し、風呂給湯機配管及び浴槽内へのスケール付着を防止できる。これにより、浴槽掃除の頻度を減らすこ
ともできる。
【0010】
さらに、水の電気分解で得られる酸性水で、陽イオン交換樹脂を再生するため、食塩等の供給が不要になり連続的に軟水を供給することができる。また、酸性水を浴槽に通水することで、酸性風呂を楽しむこともでき、アルカリ水を浴室内で飲用することもできる。
【0011】
一方、軟水化処理する技術として、水分解イオン交換膜を用いた技術がある(例えば、特許文献2参照)。
【0012】
この方式では、一対の電極間に陽イオン交換層と陰イオン交換層の2層から成る水分解イオン交換膜を挟み込んだ構成であり、電極に通電すると水分解イオン交換膜の表面に硬度成分が吸着してイオン交換されて軟水化処理される。また、極性を逆にして電圧を印加すると陽イオン交換層と陰イオン交換層の界面で水が解離し、解離により生成した水素イオン、水酸化物イオンにより水分解イオン交換膜を再生することができる。
【特許文献1】特開平7−68256号公報
【特許文献2】特許第4044148号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1に示した前記従来の構成では、電気分解装置3と軟水化装置13が別個に備えられているので、装置が複雑となると共に大きな設置スペースを必要となるという課題があった。また、陽イオン交換樹脂を再生する時、電気分解装置3によって電気分解により水を解離させて酸性水を生成しているが、水中で電気分解を行うと、電極表面から水素及び酸素のガスが発生する。そして、この発生したガスがシステム内に溜まり蓄積する可能性があるという課題があった。
【0014】
一方、特許文献2に示した水分解イオン交換膜を用いた方式は、水分解イオン交換膜表面に硬度成分を吸着しイオン交換して硬度成分を除去している。そして再生時には、電極に電圧を印加することにより、硬度成分がイオン交換した水分解イオン交換膜の界面で水を解離させて水素イオンと水酸化物イオンを生成して再生する。したがって、軟水化処理と再生処理をひとつの装置内で行うことができる為、装置が簡易であり省スペース化が図れ、かつ、薬剤を使わずにメンテナンスフリーで軟水化及び再生することができ、給湯機への応用が期待できる有効な軟水化技術と考えられる。
【0015】
しかし、特許文献1と同様に水中で電気分解が行われる為、給湯機に適用した場合、発生したガスが、貯湯タンク等のシステム内に溜まり蓄積する可能性があるという課題があった。
【0016】
本発明は前記従来の課題を解決するもので、構成が簡易で且つ薬剤を使わずにメンテナンスフリーで軟水化及び再生することができ、電気分解によって生成したガスが滞留することを防止し、使用性を向上した軟水化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記課題を解決するために、本発明の軟水化装置は、少なくとも一対の電極と、陽イオン交換体、陰イオン交換体を有する水分解イオン交換体と、前記水分解イオン交換体の表面に接する流路と、外装と、前記電極に電圧を印加して前記水分解イオン交換体を再生する時に生成する濃縮水を、前記外装内より外部へ排出する排水配管とを備え、前記排水配管を前記外装の上部または側面上部に設けるとともに、軟水化処理時には、前記電極に0V以上、かつ、水の分解電圧未満の電圧を印加することを特徴とするものである。
【0018】
これにより、水分解イオン交換体で硬度成分を吸着しイオン交換して硬度成分を除去し、そして再生時には、硬度成分がイオン交換した水分解イオン交換体の界面で水を解離させて水素イオンと水酸化物イオンを生成して再生するため、硬度成分の除去と再生に必要な水の解離の双方を水分解イオン交換体内で行うので、軟水化装置と別に電気分解装置を設置する必要がなく、装置の構成が簡易且つ小型で薬剤を使わずにメンテナンスフリーで軟水化及び再生することができる。
【0019】
また、軟水化処理時は電圧を印加しないかあるいは水の分解電圧以下の電圧を印加するので、水が電気分解して水素及び酸素が発生することがないので、軟水処理された水中にガスは含まれずガスが機器内に溜まることがないため、使用性を向上した軟水化装置を提供できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、構成が簡易で且つ薬剤を使わずにメンテナンスフリーで軟水化及び再生することができ、電気分解によって生成したガスが滞留することを防止し、使用性を向上した軟水化装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
第1の発明は、少なくとも一対の電極と、陽イオン交換体、陰イオン交換体を有する水分解イオン交換体と、前記水分解イオン交換体の表面に接する流路と、外装と、前記電極に電圧を印加して前記水分解イオン交換体を再生する時に生成する濃縮水を、前記外装内より外部へ排出する排水配管とを備え、前記排水配管を前記外装の上部または側面上部に設けるとともに、軟水化処理時には、前記電極に0V以上、かつ、水の分解電圧未満の電圧を印加することを特徴とするものである。
【0022】
これにより、水分解イオン交換体で硬度成分を吸着しイオン交換して硬度成分を除去し、そして再生時には、硬度成分がイオン交換した水分解イオン交換体の界面で水を解離させて水素イオンと水酸化物イオンを生成して再生するため、硬度成分の除去と再生に必要な水の解離の双方を水分解イオン交換体内で行うので、軟水化装置と別に電気分解装置を設置する必要がなく、装置の構成が簡易且つ小型で薬剤を使わずにメンテナンスフリーで軟水化及び再生することができる。
【0023】
また、軟水化処理時は電圧を印加しないかあるいは水の分解電圧以下の電圧を印加するので、水が電気分解して水素及び酸素が発生することがないので、軟水処理された水中にガスは含まれずガスが機器内に溜まることがないため、使用性を向上した軟水化装置を提供できる。
【0024】
第2の発明は、特に、第1の発明の軟水化装置の外装の上面部は凸面形状で、排水配管との接続口を、前記外装の上面部の略最上部に設けたことを特徴とするもので、再生時は電圧を印加することでガスが発生するが、再生時に発生したガスは、外装上部の排水配管との接続口に集められ、外装を出た排水配管に集中して溜められるため、再生後に濃縮水と共に排水配管中に集中して溜まったガスは外部へ排出されることで、外装上部に局部的にガスが残留することを防止することができる。
【0025】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明において、軟水使用機器へ軟水を供給する軟水配管を、外装の下部または側面下部に設けたことを特徴とするもので、排水配管と軟水配管が独立して設けられているので、再生時に発生したガスが通過する排出配管を用いることなく、軟水使用機器へ軟水化処理された水が導入されるので、再生後に排出配管内にガスが残留した場合でも、軟水化処理時に軟水使用機器内へガスが導入されることを防止することができる。
【0026】
また、軟水配管は外装の下部または側面下部に設けられているので、再生後に外装の上部にガスが残留した場合でも、軟水化処理時に残留したガスを直接軟水配管に吸い込んで、軟水使用機器内へガスが導入されることを防止することができる。
【0027】
第4の発明は、特に、第1〜第3の発明において、原水を供給する給水配管を備え、水分解イオン交換体による軟水化処理時と前記水分解イオン交換体の再生時とでは、流路において原水の流通方向が逆方向になるように、前記給水配管を接続したことを特徴とするもので、再生時に発生して外装上部に溜まったガスが層流状態となるので、排水配管を通じて外部へ排出され易くすることができる。
【0028】
また、主に流路の上流側の水分解イオン交換体にイオン交換した硬度成分が、再生時には脱着して逆方向の下流側から上流側に流出することから、生成した高濃度の濃縮成分がイオン交換体に付着することを防止し耐久性を向上することができる。
【0029】
第5の発明は、特に第4の発明において、給水配管は、分岐部に三方弁を有する第1給水配管と第2給水配管とから構成され、軟水化処理時には、前記第1給水配管は上流側に、前記第2給水配管は下流側となるように、前記三方弁により、軟水化処理時と再生時とで給水経路を切り換える構成としたことを特徴とするもので、簡易な構成で、軟水化処理時と再生時で軟水化装置における流路の流通方向を切り換えることができ、再生時に発生して外装上部に溜まったガスを外部へ排出され易くすることができる。
【0030】
また、生成した高濃度の濃縮成分がイオン交換体に付着することを防止し耐久性を向上することができる。
【0031】
第6の発明は、第1〜第5のいずれかの軟水化装置を搭載した給湯機で、軟水化処理時は電圧を印加しないかあるいは水の分解電圧以下の電圧を印加するので、水が電気分解して水素及び酸素が発生することがないので、軟水処理された水中にガスは含まれず給湯機の貯湯タンク等のシステム内にガスが溜まることがない。
【0032】
また、再生時は電圧を印加することでガスが発生するが、排水配管が軟水化装置の外装上部に設けられているので、発生したガスが排水配管の設けられている外装上部に溜まる。これにより、再生後に濃縮水と共に排水配管を通じて外装上部に溜まったガスは外部へ排出される。したがって、再生後に外装内部にガスが残留することを抑制することができるので、再生時に軟水化装置で発生したガスが、軟水化処理時に給湯機の貯湯タンク内に導入されて、貯湯タンク等のシステム内に溜まることを防止し、使用性を向上することができる。
【0033】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0034】
(実施の形態1)
図1に、本発明の第1の実施の形態の給湯機の構成図を示す。
【0035】
図2には、本発明の第1の実施の形態の軟水化装置の断面図を示す。図3には、本発明の第1の実施の形態の再生時の軟水化装置の断面図を示す。
【0036】
図1において、貯湯ユニット1には、原水と沸き上げられた湯を貯留する貯湯タンク2が設置されている。貯湯タンク2の下部には、水道水から原水を貯湯タンク2へ供給する原水配管3が開口して接続されて設けられている。また、貯湯タンク2の下部及には給水
配管4が開口して接続されており、軟水化装置5へポンプ6を介して給水されるようにされるように設けられている。
【0037】
ここで、給水配管4は軟水化装置5の上流側で分岐しており、一方が第1給水配管7として軟水化装置5の側面上部に接続され、他方が第2給水配管8として軟水化装置5の下部に接続されている。分岐部には三方弁9が備えられており、軟水化装置5に導入する原水の給水経路を切り換えるように構成されている。
【0038】
そして、軟水化装置5で軟水化処理された軟水は、軟水化装置5の下部に設けられた軟水配管10を通じてヒートポンプユニット11で沸き上げられて貯湯タンク2の上部へ供給される。軟水化装置5から出た軟水配管10には電磁弁12が設けられており、軟水化処理された水のヒートポンプユニット11への供給動作を行う。さらに、貯湯タンク2の上部には給湯配管13が開口して接続されており、沸き上げられて貯湯タンク2の上部に存在する湯を風呂等へ供給する。
【0039】
ヒートポンプユニット11内には、圧縮機14、水加熱手段15である水熱交換器、外気の熱を吸熱する空気熱交換器16が冷媒配管17で接続されて構成されたCO等の冷媒を用いたヒートポンプサイクル18を内蔵している。
【0040】
図2において、軟水化装置5は、外装19内に1対の電極20が両端に設けられている。電極20はチタンに白金がメッキされたものであり、電極の耐消耗性を確保している。
【0041】
電極20の間には、1対の水分解イオン交換体21が流路22を挟んで設けられている。水分解イオン交換体21は、強酸性のイオン交換基を持つ陽イオン交換体22と強塩基性のイオン交換基を持つ陰イオン交換体23が1枚に張り合わされた2層構造となっている。そして、陽イオン交換体22と陰イオン交換体23が向き合うように設置されている。
【0042】
ここで、陽イオン交換体22は、−SOHを官能基とする強酸性イオン交換基を含み、陰イオン交換体23は、−NROHを官能基とする強塩基性イオン交換基を含む。そして、水分解イオン交換体21の陽イオン交換体22と陰イオン交換体23に水が接するように流路24が構成されている。
【0043】
ここで、外装19の天面は凸面形状を成し、その最上部に再生時に生成する濃縮水を外部に排出する排水配管25が接続されている。そして、軟水化装置5を出た排水配管24には排水用電磁弁26が設けられており、軟水化装置5の再生時に生成した濃縮水の排水動作を行う。
【0044】
以上のように構成された給湯機について、以下その動作について説明する。
【0045】
図1において、まず、原水配管3を通じて、貯湯ユニット1の貯湯タンク2へ原水が供給される。ここで、原水には硬度成分のカルシウムやマグネシウムが含まれており、水源が地下水を利用している地域や温泉地などでは硬度は100ppm以上の硬水となっており、給湯機の加熱手段の配管内にスケールを形成する原因となり得る。
【0046】
通常、ヒートポンプ給湯機の沸き上げは、電気代の安価な深夜電力の時間帯を通じて行われる。深夜電力の開始時刻になると、ポンプ6によって貯湯タンク2内の硬度の高い原水が給水配管4を通じて軟水化装置5へ送られる。このとき、三方弁9により給水経路は第1給水配管7を通じて原水が軟水化装置5の外装19の側面上部から導入される。
【0047】
原水中には硬度成分の炭酸カルシウムがイオン化した状態で、流路24の上部から流入し下方へ流れる。このとき、外装19に設置された電極20には直流電圧が印加され、陽イオン交換体22側の電極20にはプラスの電圧が印加され正極となる。一方、陰イオン交換体23側の電極20は負極となる。このとき、印加する電圧は水の分解電圧である1.26V未満の電圧が印加される。
【0048】
この結果、原水中のカルシウムイオンは陽イオン交換体22へ、炭酸イオンは陰イオン交換体23へ電気泳動して入り込む。そして、カルシウムイオンは、陽イオン交換体22の強酸性イオン交換基の−SOHの水素イオンとイオン交換し、炭酸イオンは、陰イオン交換体23の強塩基性イオン交換基の−NROHの水酸化物イオンとイオン交換する。
【0049】
こうして、流路24中の硬度成分は除去されて軟水化される。そして、軟水化された水は、外装19の下部に接続された軟水配管10を通じて処理水が流出する。ここで、電磁弁12は開状態、排水用電磁弁26は閉状態となっているので、軟水化処理水は軟水配管10を通じてヒートポンプユニット11の水熱交換器15に流入する。
【0050】
ヒートポンプサイクル18において、圧縮機14の運転により空気熱交換器16内の冷媒が蒸発し外気の熱を吸熱する。そして、冷媒配管17を通じて外気を吸熱した冷媒が高圧に圧縮され水熱交換器15で放熱される。この熱により水熱交換器15内の水が加熱されて原水が沸き上げられる。ここで、加熱された処理水は硬度成分が除去されているので、水熱交換器15の内面で炭酸カルシウムや硫酸マグネシウムといったスケールが付着することを防止することができる。そして、この水熱交換器15で沸き上げられた湯が貯湯タンク2の上部から導入される。
【0051】
このようにして、給湯機の沸き上げ時に軟水化装置5で原水が軟水化され、処理水は軟水配管10を通って水熱交換器15で加熱されて軟水化処理された湯が貯湯タンク2に溜められる。使用者が風呂(図示せず)などにおいて湯を使用する時は、貯湯タンク2に溜められた上層の湯が給湯配管13を通じて風呂の浴槽へ供給される。
【0052】
ここで、軟水化処理時は軟水化装置5の電極20には、水分解電圧である1.26V以下の微弱電圧を印加するため、電極20から水素、酸素のガスが発生することが無い。このため、軟水化処理水にはガスは混合されないので軟水配管10を通じて貯湯タンク2内にガスが溜まることはない。
【0053】
次に、沸き上げ運転中あるいは沸き上げ完了後に軟水化装置5の再生工程が行われる。軟水化装置5の再生運転時、電磁弁12は閉状態となり、ヒートポンプユニット11に処理水は導入されない。また、三方弁9により給水経路が第2給水配管8へ切り換えられる。貯留タンク2の下部から一定量の水がポンプ6により、給水配管4及び第2給水配管8を通じて原水が軟水化装置5の下部から導入される。
【0054】
そして図3に示すように、軟水化装置5において、外装19の下部から流路24に一定量の原水が流入すると、電極20には軟水化時とは逆方向の電圧が印加される。陰イオン交換体23側の電極20が正極となり、陽イオン交換体22側の電極20は負極となる。
【0055】
水分解イオン交換体21の両側に電圧を印加すると、陽イオン交換体22と陰イオン交換体23の界面中のイオン成分が減少して抵抗が高くなり、ある時点で水の解離が行われ、水素イオン及び水酸化物イオンが生成する。
【0056】
陽イオン交換体22では、軟水化時にイオン交換されたカルシウムイオンが、生成した
水素イオンとイオン交換し再生される。そして、カルシウムイオンは流路24中に放出される。一方、陰イオン交換体23では、軟水化時にイオン交換された炭酸イオンが、生成した水酸化物イオンとイオン交換し再生される。そして、炭酸イオンは流路24中に放出される。
【0057】
ここで、水分解イオン交換体21の再生には、水の分解電圧以上の電圧が必要であり、電極20の表面には水素と酸素のガスが発生する。そして、このガスは外装19の上部に移動する。外装19の天面は凸形状に形成されているので、外装19の上部に部分的に溜まらずに、排水配管25との接続口に集中して溜められる。
【0058】
そして、再生中に閉じられていた排水用電磁弁26が開き、排水配管25を通じて生成した濃縮水と発生したガスが排出される。排水は貯湯ユニット1の下部にある排水溝(図示せず)へ流される。こうして、排水配管25を通じて濃縮水と共に外装19上部に集中して溜まったガスは外部へ排出される。したがって、再生後に外装19内部にガスが残留することを抑制することができる。
【0059】
濃縮水が排水された後、再び貯留タンク2から一定量の水が軟水化装置5に導入されて、排水用電磁弁26は再度閉じた状態となる。水分解イオン交換体21の再生が行われる。その後、排水用電磁弁26が開き、排水配管25を通じて再生後の濃縮水が排出される。このような工程を数回繰り返すことで、軟水化装置5の再生が行われる。
【0060】
一定時間、水分解イオン交換体21に電圧を印加して軟水化装置5の再生が終了すると、排水用電磁弁26が閉じ、三方弁9により給水経路が第1給水配管7に切り換えられる。そして、再び電磁弁12が開いて、貯留タンク2から原水が第1給水配管7を通じて軟水化装置5の上部側方から導入され、流路24の上方から下方に向かって原水は軟水化処理されて軟水配管10を通じて流出する。
【0061】
このように、排水配管25と軟水配管10が独立して設けられているので、再生時に発生したガスが通過する排水配管25を用いることなく貯湯タンク等のシステムへ軟水化処理された水が導入されるので、再生後に排水配管25内にガスが残留した場合でも軟水化処理時にシステム内へガスが導入されることを防止することができる。また、軟水配管10は外装19の下部に設けられているので、再生後に外装19の上部にガスが残留した場合でも軟水化処理時に残留したガスを直接軟水配管10に吸い込んでシステム内へガスが導入されることを防止することができる。
【0062】
また、流路24において、軟水化処理時は原水の流通方向が上方から下方となるのに対して再生時は下方から上方と逆方向になるので、再生時に発生して外装19の上部に溜まったガスが層流状態となって排水配管25を通じてガスを外部へ排出され易くすることができる。さらに、主に流路24の上流側の水分解イオン交換体21にイオン交換した硬度成分が、再生時には脱着して逆方向の下流側から上流側に流出することから、生成した高濃度の濃縮成分がイオン交換体に付着することを防止し耐久性を向上することができる。
【0063】
以上のように、本実施の形態においては、貯湯タンク2と、水加熱手段15と、軟水化装置5を設け、軟水化装置5は、外装19の内部に、少なくとも一対の電極20と、陽イオン交換体22と陰イオン交換体23を有した水分解イオン交換体21と、水分解イオン交換体21の表面に接する流路24とから構成されており、電極20に電圧を印加して水分解イオン交換体21を再生する時に生成する濃縮水を外部へ排出する排水配管25を外装19の上部または側面上部に設け、軟水化処理時は前記電極に0V以上水の分解電圧未満の電圧を印加することとしたことにより、軟水化処理時は電圧を印加しないかあるいは水の分解電圧以下の電圧を印加するので、水が電気分解して水素及び酸素が発生すること
がないので、軟水処理された水中にガスは含まれず貯湯タンク等のシステム内にガスが溜まることがない。
【0064】
再生時は電圧を印加することでガスが発生するが、排水配管25が軟水化装置5の外装19上部に設けられているので、発生したガスが排水配管25の設けられている外装19上部に溜まる。これにより、再生後に濃縮水と共に排水配管25を通じて外装19上部に溜まったガスは外部へ排出される。
【0065】
したがって、再生後に外装19内部にガスが残留することを抑制することができるので、再生時に軟水化装置5で発生したガスが軟水化処理時に給湯機のシステム内に導入されて貯湯タンク等のシステム内に溜まることを防止し安全性を向上することができる。
【0066】
また、硬度成分の除去と再生に必要な水の解離の双方を水分解イオン交換体21内で行うので、軟水化装置5と別に電気分解装置を設置する必要がなく、装置の構成が簡易且つ小型で薬剤を使わずにメンテナンスフリーで軟水化及び再生することができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
以上のように、本発明にかかる給湯機は、メンテナンスの必要がなく装置構成が簡易で小型化を図ることができ、ガスがシステム内に溜まることを防止することができるので、洗濯機や食器洗い機の用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施の形態1における給湯機の構成図
【図2】同軟水処理時の軟水化装置の断面図
【図3】同再生時の軟水化装置の断面図
【図4】従来の給湯機の構成図
【符号の説明】
【0069】
2 貯湯タンク
3 原水配管
4 給水配管
5 軟水化装置
7 第1給水配管
8 第2給水配管
10 軟水配管
15 水加熱手段
19 外装
20 電極
21 水分解イオン交換体
22 陽イオン交換体
23 陰イオン交換体
24 流路
25 排水配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一対の電極と、陽イオン交換体、陰イオン交換体を有する水分解イオン交換体と、前記水分解イオン交換体の表面に接する流路と、外装と、前記電極に電圧を印加して前記水分解イオン交換体を再生する時に生成する濃縮水を、前記外装内より外部へ排出する排水配管とを備え、前記排水配管を前記外装の上部または側面上部に設けるとともに、軟水化処理時には、前記電極に0V以上、かつ、水の分解電圧未満の電圧を印加することを特徴とする軟水化装置。
【請求項2】
外装の上面部は凸面形状で、排水配管との接続口を、前記外装の上面部の略最上部に設けたことを特徴とする請求項1に記載の軟水化装置。
【請求項3】
軟水使用機器へ軟水を供給する軟水配管を、外装の下部または側面下部に設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の軟水化装置。
【請求項4】
原水を供給する給水配管を備え、水分解イオン交換体による軟水化処理時と前記水分解イオン交換体の再生時とでは、流路において原水の流通方向が逆方向になるように、前記給水配管を接続したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の軟水化装置。
【請求項5】
給水配管は、分岐部に三方弁を有する第1給水配管と第2給水配管とから構成され、軟水化処理時には、前記第1給水配管は上流側に、前記第2給水配管は下流側となるように、前記三方弁により、軟水化処理時と再生時とで給水経路を切り換える構成としたことを特徴とする請求項4に記載の軟水化装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の軟水化装置を搭載したことを特徴とする給湯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−201346(P2010−201346A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−50056(P2009−50056)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】