説明

軟水装置制御弁用の一体形シールを備えたピストン

【課題】本発明は、水を軟水化するための装置に関し、さらに具体的には軟水装置内の樹脂の再生を制御するためのシステムを提供する。
【解決手段】水処理装置の制御弁(16)用ピストン(30)は、中央部分(50)とそれから半径方向外側に突き出した1以上のフランジ(51,52,53)とを有する本体を含む。各フランジは、中央部分(50)の周囲に延在する外周面(57,58,59)を有していて該外周面に環状溝を備える。環状溝はアンダーカットされて外周面からフランジ内部に向かって半径方向内側に増大した幅を有する。別個のシールリング(61,62,63)が各フランジの環状溝内に配設されていて、溝の増大した幅によって溝内に捕捉される。かかる捕捉によって各シールはフランジから外れなくなり、制御弁を流れる水で生じる力に耐える能力が増す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水を軟水化するための装置に関し、さらに具体的には軟水装置内の樹脂の再生を制御するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
井戸から汲み出した水については、水が地中の鉱床から浸出した2価及び時には3価の陽イオンを含む点で「硬質」と考えられるのが一般的である。かかるイオンは、通常の洗剤及び石鹸で不溶性塩類を形成して沈殿を生じ、そのため洗浄に必要な洗剤又は石鹸の量が増す。ボイラで硬水を用いると、蒸発によって不溶性残留物の沈殿を生じるが、かかる沈殿はスケールとして堆積する傾向がある。
【0003】
硬水が供給されるビルディングの配管系に硬水軟化装置を設けるのが一般的である。最も一般的な種類の硬水軟化装置は、硬水を流して不都合な無機物その他の不純物を除去する樹脂層を保持したタンクを有するイオン交換装置である。樹脂層の結合部位は最初は陽イオン(通常は1価ナトリウム又はカリウム陽イオン)を含む。硬水が樹脂に流入すると、結合部位での競争が起こる。硬水中の2価及び3価陽イオンは、その高い電荷密度のため優勢であり、1価陽イオンと置換する。1個の2価又は3価陽イオンによってそれぞれ2又は3個の1価陽イオンが置換される。
【0004】
無機物及び不純物を吸着する樹脂層の吸着容量には限りがあり、最終的には部位の大部分が2価及び3価陽イオンで占められると水の軟化が止まる。これが起こると、再生剤(通常は塩化ナトリウム又は塩化カリウム溶液)で樹脂層を洗浄することによって、樹脂層を回復又は再生する必要が生じる。再生剤の1価陽イオンの濃度は、不利な静電競争を打ち消すのに十分なほど高く、結合部位は1価陽イオンで再生される。再生から次の再生までの軟水化処理が行われる期間は、サービスモードの作動と呼ばれる。
【0005】
初期のタイプの硬水軟化装置の再生は、樹脂層の処理能力を超え、樹脂層を流れる水が「軟質」でなくなったと分かった後で手動で行われていた。手動再生の必要性をなくすため、硬水軟化装置の制御システムに、硬水軟化装置の再生を定期的に開始する機械クロックが設けられた。その再生頻度は、樹脂層の既知の吸着容量及び軟水の1日の予想使用量に基づいて設定されていた。機械クロック式硬水軟化装置の制御装置は、樹脂層の手動再生の必要性は解消したが、かかる制御装置では再生を一定間隔で行うため、水の使用量によってはその頻度に過不足を生じるという短所がある。水処理に十分な吸着容量が残っているのに硬水軟化装置の樹脂層を再生するのは、再生に用いる再生剤及び水の浪費となる。逆に、樹脂層の吸着容量が硬水の処理に必要なレベル未満に低下した後まで硬水軟化装置を再生しなかったときは、硬水軟化装置から硬水が流れ出る結果を生じかねない。
【0006】
硬水軟化装置の再生の頻度の調整を改善すべく、樹脂層の水を軟化する残存吸着容量を判定するデマンド型の硬水軟化装置制御装置が開発されている。かかる改良型の制御システムの一つのタイプでは、前回の再生以降に処理した水のボリュームを流量計で測定し、規定のボリュームの水が硬水軟化装置を通過したときに樹脂層を再生する。このタイプのシステムは、多くの施設に適しているが、公共システムでは、硬度の異なる水を含む幾つかの井戸から交互に水を汲み出すことがある。この場合、樹脂層の消耗は、前回の再生以後に処理した水のボリュームの一次関数ではない。
【0007】
樹脂層の消耗を直接検出する他のタイプの制御システムも開発されている。電子式コントローラーは、離隔した2箇所で電極を使用して樹脂層の電気伝導度を測定する。伝導度測定値の比率を、前回の樹脂層再生以後に発生した最小及び最大比率値と併せて、樹脂層の消耗の確率の判定に用いて、再生を開始させる。
【0008】
樹脂層を何時再生すべきかを決定するために用いる制御システムの種類とは無関係に、この制御システムでは、弁を駆動するモーターを始動させる。弁は、再生処理の逆洗、塩水処理、洗浄処理及び塩水補充の各ステップに対応する位置を有する。従来の弁の本体はボアを有していて、軟水装置の入口、出口及び内部通路に接続した幾つかのチャンバーを有する。陥凹部及びランド部を備えたピストンがボア内を滑動して異なるチャンバーを選択的に相互接続し、運転段階に応じて弁内の様々な経路に水を導く。別個のシールリングが、チャンバー間のボアの環状溝内に設置される。シールは、ピストンのランド部と係合してチャンバー間の不都合な水の流れを遮断する。各シールリングを各々の溝に正確に設置するには幾つかの製造ステップが必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第3874412号明細書
【特許文献2】米国特許第5250187号明細書
【特許文献3】米国特許第5910244号明細書
【特許文献4】米国特許第5513674号明細書
【特許文献5】独国実用新案第29507257号明細書
【特許文献6】独国特許第19619999号明細書
【特許文献7】米国特許第4892287号明細書
【発明の概要】
【0010】
水処理装置の制御弁用ピストンは、中央部分とそれから半径方向外側に突き出した1以上のフランジとを有する本体を含む。各フランジは、中央部分の周囲に延在する外周面を有していて該外周面に環状溝を備える。環状溝はアンダーカットされて外周面からフランジ内部に向かって半径方向内側に増大した幅を有する。別個のシールリングが各フランジの環状溝内に配設され、溝の増大した幅によって溝内に捕捉される。
【0011】
制御弁ピストンは、本体をインベストメント鋳造法を用いて形成し、溝を例えばワックスのようなロスト材料によって画成することによって製造することができる。これによって、各溝をアンダーカットすることができ、シールリングを捕捉する構造が形成される。本体が固まった後、第2のモールドに入れてシールリングを形成する。この第2のモールドは、各フランジの周囲に小さな空隙を残して弁ピストン本体がぴったりと収まるキャビティを有しており、この空隙にシールリング用の材料を充填して材料をフランジ溝内に流し込む。シールリングが固まった後で、第2のモールドを開いて、完成弁ピストンを取り出す。
【0012】
ピストン本体の溝内にシールリングをオーバーモールド成形することによって、シールリングは溝内に固定され、例えば組立てた制御弁を流れる水の力などによって容易に外れることはない。これは、ピストンが弁本体内で移動して制御弁内の経路を開閉する時に水がピストンフランジの縁部を急激に通過してシールリングを離脱させる傾向をもつ力を生じるので、設計上重大な関心事である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る弁ピストンが組み込まれた軟水装置の構成要素の断面図。
【図2】弁ピストンの断面図。
【図3】弁ピストンに組み込まれたシールの実施形態の拡大図。
【図4】弁ピストンに組み込まれたシールの別の実施形態の拡大図。
【図5】弁ピストンに組み込まれたシールの別の実施形態の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず図1を参照すると、軟水装置10は、イオン交換樹脂粒子の層14を収容した処理タンク12を備える。制御弁16は処理タンク12の頂部に取り付けられる。サービスモードでは、軟化すべき硬水を入口通路18に供給し、水が入口通路18から処理タンクの頂部の入口20に流れ、次いで樹脂層内を流れて水から無機物を吸着する。出口導管22が、処理タンク12の底部近傍の位置から樹脂層14を貫通して制御弁16の出口通路24まで延在する。樹脂層14で処理された水は、出口導管22を通して弁の出口通路24に流れ、そこから水が軟水装置10から出て建物の配管内へと流れ込む。
【0015】
樹脂層14は次第に消耗して、水をそれ以上軟化できなくなる。タイマーに応答して周期的に或いは樹脂層の消耗を検出するセンサーに応答して、コントローラー26は標準的な再生プロセスを開始する。コントローラー26は弁の頂部に取り付けられ、制御弁16の円形ボア15内でゆっくりと連続往復動サイクルによって動く弁ピストン30を駆動するように構成されたモーター28を有する。ピストン30が移動すると、再生処理の様々な段階で異なる経路に水を導くように制御弁16の通路が幾つかの組合せで接続され。
【0016】
典型的な樹脂層の再生処理は逆洗段階で始まるが、この段階では、硬水は制御弁から出口導管22に導かれ、樹脂層14を上方に流れて、最終的にドレン通路(図示せず)を介して軟水装置から排出される。逆洗ステップの後に、塩水処理が続く。制御弁16はインジェクター32を有しており、インジェクター32は導管34によって遮断弁36及び配管38を介して塩水タンク40に接続している。塩水タンク40は、塩化ナトリウム又は塩化カリウムのような塩の塩水溶液42を収容している。この再生段階では、インジェクター32を通る硬水の流れで生じた部分的真空によって、塩水タンク40から導管29及び27を通して塩水を汲み上げて処理タンク12へと流す。濃縮塩水溶液によって、樹脂層14の2価及び3価陽イオンを1価陽イオンで置換され、層が回復する。塩水タンク40の内容物が消尽すると、空気がシステム内に注入されるのを防ぐため逆止弁44が閉じられ、塩水なしで水がインジェクター32内を流れ続ける。この水は処理タンク12から塩水溶液を駆逐し、層14を洗浄して残留塩水を除去する。
【0017】
再生処理の最終段階では、塩水タンク40が再充填され、軟水装置の樹脂層14が浄化される。これは、開いた遮断弁36を通して塩水タンク40内に水を供給するとともに、入口20を通して処理タンク12内に水を供給することによって達成される。樹脂層14を通過した水はドレン通路から排出される。しかる後に、制御弁16を、軟水装置10を上述のサービスモードとする位置に戻して、建物用の水を処理する。
【0018】
図2を参照すると、制御弁16は、中央部分(シャフトともいう)50を有する新規なピストン30を備えており、シャフト50から半径方向外側に複数の円板状フランジ51,52及び53が突出していて、フランジ間に陥凹部54及び55を形成する。中央部分50の一端からロッド状ステム56が軸方向に延びていて、コントローラー26のメカニズムに取り付けられるように構成されており、コントローラー26は、再生モード時に制御弁16のボア15内でピストン30を移動させる。中央部分50、フランジ51〜53及びステム56は、弁ピストン30の本体ピストン(30)を形成し、本体ピストンは好ましくはステンレス鋼その他の耐食性材料から製造される。
【0019】
各フランジ51,52及び53は、中央部分50の周囲に延在する外周面57,58及び59をそれぞれ有しており、外周面57,58及び59はその面に環状溝を備えている。別個のシールリング61、62及び63がそれぞれ外周面57,58及び59内の環状溝に各々に位置している。好ましくは、シールリング61〜63は、架橋熱硬化性ゴムのようなゴム或いは熱可塑性エラストマーのような弾性プラスチックから作られる。各シールリング61〜63はそれぞれのフランジ51〜53から外側に突出して、制御弁ボア15の内面と係合する。この係合によって、陥凹部54又は55内の流体がフランジと弁ボア15面との間(図1参照)から流出するのを防ぐ。
【0020】
図3は、フランジ51の外周面57の溝66内に位置するシールリング61の断面図を示す。環状溝66は、フランジ52の外周面58を通る溝の開口部よりも内面が広くなるようにアンダーカットされたダブテール形断面を有する。このアンダーカットによってシールリング61が環状溝66内に捕捉され、組立てた制御弁16を流れる水で生じる力によってシールリングが溝から引き出されるのを防ぐ。このことは、ピストン30がボア15内で移動して制御弁内の経路を開閉する時に水がピストンフランジの外周面57を急激に通過してシールリングを離脱させる傾向をもつ力を生じるので、設計上の必要条件である。
【0021】
図4は、フランジ52の外周面58の溝72内に位置する第2の形式のシールリング70を示す。溝72はT字形断面を有しており、その内側領域74の幅はフランジ外周面58の外側領域76の溝の幅よりも大きい。 シールリング70はその内側領域74で拡大しており、それによってシールリングは溝72内に捕捉される。この形式のシールリング70は、弁ボア15の内面と係合する1対のローブ78を有する。
【0022】
図5は、フランジ52の同じ環状溝72内に位置する第3の形式のシールリング80を示す。この形式のシールリング80は、弁ボア15の内面と係合する3つのローブ82を有する。
【0023】
弁ピストン30は、最初にロストワックス鋳造のようなインベストメント鋳造法を用いて本体60を製造することによって製造される。この鋳造法のモールドは、フランジ51〜53の外周面に溝を画成するワックスのような材料を含む。この材料は本体60の材料が固まった後に容易に取り除くことがきるので、前述の通り、溝をアンダーカットしてシールリングが所定の位置に固定される溝を形成することができる。弁本体60が固まった後、シールリング61〜63を形成するための第2のモールド内に弁本体を配置する。この第2のモールドは、各フランジの周囲に小さな空隙を残して弁ピストン30の本体60がぴったりと収まるキャビティを有しており、これらの空隙にシールリング用の材料を充填して、材料が各フランジ51〜53の溝57〜59全体に流し込む。シールリングが固まった後で、第2のモールドが開いて、完成弁ピストンを取り出す。
【0024】
ピストン30の金属部分の溝内にシールリング61〜63をオーバーモールド成形することによって、シールリングは溝内に固定され、例えば組立てた制御弁16を流れる水の力などによって容易に外れることはない。非固定式の溝を用いて、弾性シールリングをフランジ51〜53の周りで伸長させて溝内に開放しただけの場合には、シールリングを離脱させる傾向をもつ水流の力に耐えるほど十分にしっかりとシールリングを所定の位置に保持することができないことがある。
【0025】
以上の説明は、主に本発明の好ましい実施形態に関するものである。本発明の技術的範囲に属する様々な代替形態にもある程度の注意を払ったが、本発明の実施形態に関する開示から自明なその他の形態も当業者には明らかであろうと予想される。従って、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲に基づいて定まり、以上の開示に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0026】
10 軟水装置
12 処理タンク
14 樹脂層
15 円形ボア
16 制御弁
18 入口通路
20 入口
22 出口導管
24 出口通路
26 コントローラー
28 モーター
30 弁ピストン
32 インジェクター
36 遮断弁
40 塩水タンク
42 塩水溶液
44 逆止弁
30 ピストン
50 中央部分
51,52,53 フランジ
54、55 陥凹部
57,58,59 外周面
60 本体
61,62,63 シールリング
66,72 環状溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水処理装置の制御弁用ピストンであって、
中央部分とそれから半径方向外側に突き出した1以上のフランジとを有する本体であって、各フランジが中央部分の周囲に延在する外周面を有していて外周面からフランジ内部に向かって半径方向内側に増大した幅を有する環状溝を外周面に備えている、本体と、
各フランジの環状溝内に配設されて溝の増大した幅によって溝内に捕捉される別個のシールリングと、を備えるピストン。
【請求項2】
前記本体から軸方向に突出したステムをさらに備える、請求項1記載のピストン。
【請求項3】
前記本体が複数のフランジを含む、請求項1記載のピストン。
【請求項4】
各シールリングが弾性材料で製造される、請求項1記載のピストン。
【請求項5】
前記本体がインベストメント鋳造法によって製造される、請求項1記載のピストン。
【請求項6】
各シールリングが本体の環状溝内で成形される、請求項1記載のピストン。
【請求項7】
1以上のシールリングが、フランジから外に突出した複数のローブを有する、請求項1記載のピストン。
【請求項8】
1以上のシールリングが、フランジから外側に延びる湾曲面を有する、請求項1記載のピストン。
【請求項9】
1以上の溝がT字形断面を有する、請求項1記載のピストン。
【請求項10】
1以上の溝がダブテール形断面を有する、請求項1記載のピストン。
【請求項11】
各シールリングが成形ゴムからなる、請求項1記載のピストン。
【請求項12】
各シールリングが弾性プラスチックからなる、請求項1記載のピストン。
【請求項13】
水処理装置の制御弁用ピストンの製造方法であって、
中央部分とそれから半径方向外側に突き出した1以上のフランジとを有する本体であって、各フランジが中央部分の周囲に延在する外周面を有していて外周面からフランジ内部に向かって半径方向内側に増大した幅を有する環状溝を外周面に備えている、本体を製造する段階と、
溝の増大した幅によって本体に捕捉されるように各フランジの環状溝内に別個のシールリングを成形する段階と、を含む方法。
【請求項14】
前記本体がインベストメント鋳造法によって製造され、各溝がロスト材料によって形成される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記本体がステンレス鋼で製造される、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記本体がステンレス鋼で製造される、請求項13記載の方法。
【請求項17】
各シールリングが成形ゴムからなる、請求項13記載の方法。
【請求項18】
各シールリングが弾性プラスチックからなる、請求項13記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−206117(P2012−206117A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−121051(P2012−121051)
【出願日】平成24年5月28日(2012.5.28)
【分割の表示】特願2007−552251(P2007−552251)の分割
【原出願日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(510080820)ペンテア レジデンシャル フィルトレイション リミテッド ライアビリティ カンパニー (3)
【Fターム(参考)】