説明

軟質ポリウレタンフォームの製造方法

【課題】水酸基価の低い高分子量のポリオールを原料とした、機械物性に優れた軟質ポリウレタンフォームの製造方法の提供。
【解決手段】本発明は、ポリオールとポリイソシアネート化合物とを触媒、発泡剤および整泡剤の存在下に反応させて軟質ポリウレタンフォームを製造する方法において、ポリオールとして水酸基価が15mgKOH/g以下のポリオールを使用することを特徴とする軟質ポリウレタンフォームの製造方法および該製造方法によって得られた軟質ポリウレタンフォームを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水酸基価の低い高分子量のポリオールを使用した軟質ポリウレタンフォームの製造方法とそれにより得られた軟質ポリウレタンフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、軟質ポリウレタンフォームはポリオールを原料とし、スラブ成形法のような開放系の製造方法または密閉されたモールドを用いる密閉系の製造方法によって製造されている。開放系の製造方法で製造されるスラブフォームは、原料のポリオールの分子量が3000〜5000程度のものを一般に使用している。
【0003】
一般に、軟質ポリウレタンフォームの原料として用いられるポリオールは、水酸化ナトリウム等のナトリウム系触媒、または、水酸化カリウム等のカリウム系触媒を用い、多価アルコール等をイニシエータとして、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを開環付加重合させて製造される。この製造方法では、副生物として不飽和結合を有するモノオール(不飽和モノオール)が生成し、この不飽和モノオールの生成量はポリオールの水酸基価の低下(分子量の増大)とともに増加する。
【0004】
不飽和度の高いポリオールを用いて軟質ポリウレタンフォームを製造すると、硬度の低下、圧縮永久歪の悪化、成形時のキュア性の低下等の問題が生じる。また、ナトリウム系触媒またはカリウム系触媒を用いて水酸基価の低いポリオールを製造しようとすると、その不飽和度は著しく高くなり、製造が非常に困難になる。
【0005】
一方、低水酸基価、低不飽和度のポリオールを製造する方法としては、複合金属シアン化物錯体触媒を用いてアルキレンオキシドを開環付加重合させる方法が知られている。
【0006】
複合金属シアン化物錯体触媒を用いて製造すれば低不飽和度のポリオールが製造できるものの、水酸基価が15mgKOH/g以下のような高分子量のポリオールを原料とすると、フォーム製造時の安定性が低下し、軟質ポリウレタンフォームの製造は困難であると推察されていた。
【0007】
上記の成形性の問題を改善するため、複合金属シアン化物錯体触媒を用いて製造したポリオールと、水酸化ナトリウム触媒または水酸化カリウム触媒を用いて製造したポリオールとのポリオール混合物を用いて軟質ポリウレタンフォームを製造する方法が提案されている(特許文献1参照。)。しかしながら、該提案には、モールドフォームに関するものであり、且つ高分子量ポリオールを用いた製造例は記載されていない。ここで、本発明においては、「成形性」とは、軟質ポリウレタンフォームを製造する際のフォーム安定性を意味する。すなわち、成形性が良好であるとは、軟質ポリウレタンフォームを製造する際に、コラプスまたは収縮が発生しないことを意味する。
【0008】
また、複合金属シアン化物錯体触媒を用いて製造した水酸基価が10〜80mgKOH/gのポリオールを使用してスラブフォームを製造する方法も提案されている(特許文献2および3参照。)。しかしながら、これら文献の実施例中には、分子量5000のポリオールで軟質フォームを製造する例が記載されているのみで、それ以上の高分子ポリオールを使用した製造例は記載されていない。
さらに、平均分子量1500以上のポリオキシアルキレンジオールと平均分子量150から350のポリオキシアルキレンジオールを必須成分として引張り強さ、および伸び率等の機械物性に優れる軟質ポリウレタンフォームを製造する方法も提案されている(特許文献4参照。)。そして同提案には、前記2成分を必須としない場合、特に官能基数2のポリオキシアルキレンジオールを用いない場合に、機械物性が不十分となる例が記載されている。且つ、同提案には分子量5000以上のポリオールを原料とした軟質ポリウレタンフォーム製造例については、なんら記載されていない。
【特許文献1】特開平8−231676号公報
【特許文献2】米国特許第6028230号明細書
【特許文献3】米国特許第6066683号明細書
【特許文献4】特開平2−286707号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来はフォームの製造が困難であるとされていた、水酸基価の低い高分子量のポリオールを原料とする軟質ポリウレタンフォームの製造方法を提案するものである。また、本発明は、高分子量のポリオールを使用することによって、機械物性に優れた軟質ポリウレタンフォームを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、水酸基価の低い高分子量ポリオールを原料とし、成形性が良好な軟質フォームの製造方法に関する発明である。高分子量のポリオールを原料とすることによって、得られる軟質ポリウレタンフォームは、機械物性が良好であるという特徴を有している。また、本発明により得られる軟質ポリウレタンフォームは、温度による物性の変化が少ないという特徴を有している。さらに、複合金属シアン化物錯体触媒を用いることによって、不飽和度が低く、且つ、分子量分布が狭いポリオールが製造できる。分子量分布が狭いポリオールは、分布が広いポリオールに比較して粘度が低いので、軟質ポリウレタンフォーム製造時のフォーム安定性が向上する
【0011】
すなわち本発明は、ポリオールとポリイソシアネート化合物とを触媒、発泡剤および整泡剤の存在下に反応させて開放状態で軟質ポリウレタンフォームを製造する方法において、ポリオールとして水酸基価が15mgKOH/g以下のポリオールを使用することを特徴とする軟質ポリウレタンフォームの製造方法を提供する。
また、本発明は、上記製造方法により製造された軟質ポリウレタンフォームを提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る軟質フォームの製造方法によれば、機械物性に優れる軟質ポリウレタンフォームを製造できる。また本発明に係る軟質ポリウレタンフォームは、温度による物性の変化が少ないという特徴を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、ポリオールとポリイソシアネート化合物とを触媒、発泡剤および整泡剤の存在下に反応させて常温で開放系にて軟質ポリウレタンフォームを製造する方法において、ポリオールとして水酸基価が15mgKOH/g以下の高分子量のポリオールを使用することを特徴とする軟質ポリウレタンフォームの製造方法である。すなわち、本発明は、従来はフォームの製造が困難であるとされていた、水酸基価の低い高分子量のポリオールを原料とする高分子量のポリオールを使用して軟質ポリウレタンフォーム(以下、軟質フォームと略記する)を製造することを特徴としている。水酸基価の低い高分子量のポリオールを原料として製造された軟質フォームは、機械物性が良好なので好ましい。また、該軟質フォームは、低温時の感温性が低く、低温状況下であっても常温状況下のフォーム特性を維持できることから好ましい。
【0014】
本発明において使用するポリオールの水酸基価は15mgKOH/g以下であり、10mgKOH/g未満が好ましい。
本発明において用いられる水酸基価の低いポリオールは、適切なポリオール合成触媒を用い、イニシエータにアルキレンオキシドを開環付加重合反応させて得られる。ポリオール合成触媒としては、複合金属シアン化物錯体触媒、水酸化セシウム触媒、ホスファゼニウム化合物触媒等が挙げられる。水酸基価の低いポリオールを製造するためには、複合金属シアン化物錯体触媒を用いることが好ましい。
【0015】
この複合金属シアン化物錯体触媒を用いると、水酸基価が低く、且つ分子量分布の狭いポリオールが製造できる。分子量分布が狭いポリオールは、同程度の分子量領域で分子量分布が広いポリオールと比較して粘度が低いので、軟質フォーム製造時のフォーム安定性が向上するので好ましい。
【0016】
上記複合金属シアン化物錯体触媒としては、例えば、特公昭46−27250号公報に記載のものが使用できる。具体例としては、亜鉛ヘキサシアノコバルテートを主成分とする錯体が挙げられ、そのエーテルおよび/またはアルコール錯体が好ましい。
前記エーテルとしては、エチレングリコールジメチルエーテル(グライム)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、エチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル(METB)、エチレングリコールモノ−tert−ペンチルエーテル(METP)、ジエチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル(DETB)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(TPME)等が好ましい。また、前記アルコールとしては、tert−ブチルアルコール等が好ましい。
【0017】
前記アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−エポキシブタン、2,3−エポキシブタン等が挙げられ、プロピレンオキシドまたはエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの併用が好ましい。特に、ポリオール製造時にアルキレンオキシドとして、プロピレンオキシドを50質量%以上使用すること(ポリオキシアルキレン鎖中のポリオキシプロピレン基が50質量%以上であること)が好ましい。
【0018】
前記イニシエータとしては、分子中の活性水素数が2〜6である化合物が好ましく、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、meso−エリスリトール、メチルグルコシド、グルコース、ソルビトール等の多価アルコール類;ビスフェノールA等のフェノール類;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ピペラジン、アミノエチルピペラジン、ジアミノジフェニルメタン、モノエタノールアミン等のアミン類;フェノール樹脂、ノボラック樹脂等の縮合系化合物類が挙げられる。上記イニシエータの内でも、多価アルコール類が好ましい。これらのイニシエータは2種類以上を併用してもよく、活性水素を7個以上有するショ糖等の活性水素化合物と併用してもよい。また、上記化合物にさらにアルキレンオキシドを開環付加した化合物をイニシエータとしてもよい。
【0019】
本発明において用いるポリオールは、分子中にオキシエチレン基を含有することが好ましい。ポリオール中にオキシエチレン基を導入する方法としては、例えば、イニシエータにエチレンオキシドと炭素数3以上のアルキレンオキシドとを、順次または混合して付加重合することにより得られる。特に、分子末端にオキシエチレン基を有するポリオールを製造する方法としては、例えば、上記重合の後にエチレンオキシドを付加重合する方法がある。
【0020】
ポリオールの水酸基数は、2〜8が好ましく、2〜6がより好ましく、2.8〜5.2が特に好ましい。ただし、水酸基数とは、開始剤の活性水素数の平均値を意味する。水酸基数を2以上とすることで、軟質フォームが柔らかくなり、圧縮永久歪が悪化する欠点を回避することができる。水酸基数を8以下とすることで、得られる軟質フォームが硬くなり、伸び等の機械的物性が悪化する欠点を回避することができる。
【0021】
ポリオールの水酸基価は、15mgKOH/g以下であり、10mgKOH/g未満がより好ましい。水酸基価が15mgKOH/g以下のポリオールを用いることで、優れた機械物性を有し、且つ温度による物性の変化が小さいという特徴を有する軟質フォームを製造できる。また、水酸基価があまり低すぎるとポリオールの粘度が高くなるため、実質上は軟質フォームの製造が困難になる。すなわちポリオールの水酸基価は5mgKOH/g以上が好ましい。
【0022】
本発明で使用するポリオールの不飽和度は、0.05meq/g以下が好ましい。不飽和度を0.05meq/g以下とすることで、製造された軟質フォームの耐久性が悪化する欠点を回避することができる。より好ましくは、ポリオールの不飽和度は0.04meq/g以下である。
【0023】
本発明で使用するポリオールは、ポリマー微粒子を含有していてもよい。ベースポリオール中にポリマー微粒子が安定に分散している分散系をポリマー分散ポリオールという。ポリマー微粒子は付加重合系ポリマーまたは縮重合系ポリマー微粒子を用いることができる。付加重合系ポリマーは、例えば、アクリロニトリル、スチレン、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル等のモノマーを単独で重合するかまたは2種以上を共重合して得られる。また、縮重合系ポリマーとしては、例えば、ポリエステル、ポリウレア、ポリウレタン、メラミン等が挙げられる。ポリオール中にポリマー微粒子を存在させることにより、ポリオールの水酸基価が低く抑えられ、軟質フォームの硬度、通気性等の物性向上に有効である。またポリマー分散ポリオール中のポリマー微粒子の含有率は、特に制限されないが、50質量%以下が好ましく、3〜35質量%がより好ましい。なお、ポリマー分散ポリオールのポリオールとしての諸物性(不飽和度、水酸基価等)は、ポリマー微粒子を除いたベースポリオールについて考えるものとする。
【0024】
本発明の軟質フォームは、前述のポリオールとポリイソシアネート化合物とを、ウレタン化反応触媒、発泡剤および整泡剤の存在下で反応させて製造する。
【0025】
本発明において用いられるポリイソシアネート化合物としては、特に制限はなく、イソシアネート基を2以上有する芳香族系、脂環族系、脂肪族系等のポリイソシアネート;前記ポリイソシアネートの2種類以上の混合物;これらを変性して得られる変性ポリイソシアネート等が挙げられる。具体例としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDIまたはモノメリックMDI)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(通称:クルードMDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)等のポリイソシアネート又はこれらのプレポリマー型変性体、ヌレート変性体、ウレア変性体、カルボジイミド変性体等が挙げられる。これらのうちでも、TDI、MDI、クルードMDI、またはこれらの変性体が好ましい。さらにこれらのうちクルードMDIまたはその変性体(特にプレポリマー型変性体が好ましい。)を用いると発泡安定性が向上する、耐久性が向上する等の点で好ましい。
【0026】
ポリイソシアネート化合物の使用量は通常イソシアネートインデックス(ポリオール、架橋剤、水等の全ての活性水素数の合計に対するイソシアネート基の数の100倍で表される数値)で表すが、本発明におけるポリイソシアネート化合物の使用量は、イソシアネートインデックスで40〜120の範囲が好ましく、50〜110の範囲がより好ましい。
【0027】
前記ポリオールとポリイソシアネート化合物とを反応させるウレタン化触媒としては、ウレタン化反応を促進する全ての触媒を使用でき、例えば、トリエチレンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミンなどの3級アミン類;酢酸カリウム、2−エチルヘキサン酸カリウム等のカルボン酸金属塩;スタナスオクトエート、ジブチルスズジラウレート等の有機金属化合物が挙げられる。
【0028】
また、前記発泡剤としては特に制限はないが、水及び不活性ガスから選ばれた少なくとも1種が好ましい。不活性ガスとしては具体的には、空気、窒素、炭酸ガス等が挙げられる。これらのうちでも、水が好ましい。発泡剤の使用量は特に限定されないが、水を使用する場合、ポリオール100質量部に対して10質量部以下が好ましく、0.1〜8質量部がより好ましい。
【0029】
本発明に用いられる整泡剤としては、通常のポリウレタンフォームの製造に用いられているものは使用でき、例えばシリコーン系整泡剤、フッ素系整泡剤等が挙げられ、このうちシリコーン系整泡剤が好ましい。ここでシリコーン系整泡剤とは、ポリシロキサン鎖とポリオキシアルキレン鎖を有する化合物である。このポリシロキサン鎖とは、側鎖に有機基を有するオルガノポリシロキサン鎖を意味し、その例としてはジメチルシロキサン鎖等が挙げられる。またポリオキシアルキレン鎖とは前述したものと同様のアルキレンオキシドが付加した部分を意味する。アルキレンオキシドの付加としては、単一のアルキレンオキシドが付加したブロック付加、2種以上のアルキレンオキシドがランダムに付加したランダム付加等が挙げられ、これらの付加が混在してもよい。この整泡剤の構造としては、ポリシロキサン鎖とポリオキシアルキレン鎖とのブロック型構造であっても、主鎖のポリシロキサン鎖に側鎖としてポリオキシアルキレン鎖がグラフトした構造であってもよい。軟質フォームの成形性が良好な点で、主鎖のポリシロキサン鎖に側鎖としてポリオキシアルキレン鎖がグラフトした構造が好ましい。
【0030】
本発明において用いる整泡剤としては、以下に規定されるシリコーン系整泡剤が最も好ましい。この整泡剤のシリコーン含有量は10〜50質量%が好ましく、30〜50質量%がより好ましい。ここでシリコーン含有量とは、整泡剤中のポリシロキサン鎖の割合であり、残りはポリオキシアルキレン鎖である。またこの整泡剤のエチレンオキシドの含有量として、前記ポリオキシアルキレン鎖中のオキシエチレン基の含有量は、70〜100質量%が好ましく、90〜100質量%がより好ましい。また前記ポリオキシアルキレン鎖の鎖長(分子量に相当する)は1000以下が好ましく、500以下がより好ましい。
【0031】
また前記ポリオキシアルキレン鎖は末端に水酸基を有することが好ましい。しかし全ての末端が水酸基である必要はなく、該水酸基の水素原子を1価の有機基で置換したものが含まれていてもよい。該末端のうち水酸基の割合としては、ポリオキシアルキレン鎖の全末端のうちの水酸基の割合が、50〜100モル%が好ましく、70〜100モル%がより好ましく、100モル%すなわち末端の全部が水酸基であることが特に好ましい。前記1価の有機基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基等のアルキル基;フェニル基等のアリール基;アセチル基等のアシル基等が挙げられ、これらのうち炭素数が1〜6の有機基が好ましい。
【0032】
本発明に係る軟質フォームの製造方法において、前記の整泡剤を2種類以上併用してもよく、また前記特定の整泡剤以外の整泡剤を併用してもよい。本発明に係る軟質フォームの製造において、整泡剤の使用量は、ポリオール(ただし架橋剤は含まない)100質量部に対して、0.01〜5質量部が好ましく、0.1〜2質量部がより好ましい。
【0033】
本発明においては、架橋剤等も必要に応じて使用することができる。
架橋剤としては、水酸基、1級アミノ基または2級アミノ基等の活性水素を有する官能基を2個以上有する化合物が好ましい。また、架橋剤の分子量は10000以下が好ましい。さらに、架橋剤は2種以上を併用してもよい。具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、デキストロース、ソルビトール、シュークロース、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ビスフェノールA、エチレンジアミン、3,5−ジエチル−2,4(または2,6)−ジアミノトルエン(DETDA)、2−クロロ−p−フェニレンジアミン(CPA)、3,5−ビス(メチルチオ)−2,4(または2,6)−ジアミノトルエン、1−トリフルオロメチル−4−クロル−3,5−ジアミノベンゼン、2,4−トルエンジアミン、2,6−トルエンジアミン、ビス(3,5−ジメチル−4−アミノフェニル)メタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、m−キシリレンジアミン、1,4−ジアミノヘキサン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン等の化合物、およびこれらにアルキレンオキシドを付加して得られる化合物等が挙げられる。
【0034】
上記のような架橋剤を使用した場合に、例えば発泡剤を多く使用して低密度の軟質フォームを製造しようとする場合にも、発泡安定性が良好となり、軟質フォームが製造可能となる。特に高分子量のポリオールを使用した場合には、従来発泡が困難とされていた低密度の軟質フォームも製造可能となる。また架橋剤を使用すると使用しない場合に比べて耐久性が改善される。本発明のように高分子量のポリオールを使用した場合には、比較的高分子量、例えば分子量で4000以上の化合物を用いると発泡安定性が特に改善されやすい。
【0035】
本発明の軟質フォームの製造方法では、上述した触媒、発泡剤、整泡剤、架橋剤以外に所望の添加剤を使用できる。添加剤としては、炭酸カリウム、硫酸バリウム等の充填剤;乳化剤、フォーム安定化剤等の界面活性剤;酸化防止剤、紫外線吸収剤等の老化防止剤;難燃剤、可塑剤、着色剤、抗カビ剤、破泡剤、分散剤、変色防止剤等が挙げられる。
【0036】
本発明の軟質フォームは、スラブ成形の成型法により所定形状に成形することが可能である。
ポリウレタンの製造は通常の方法で行うことができ、ワンショット法、セミプレポリマー法、プレポリマー法等の公知の方法により行うことができる。ポリウレタン製造には、通常用いられる製造装置が使用できる。
【0037】
本発明による軟質フォームは、寝具、マット、クッション、座席シート等に用いられる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、以下の例1〜例16中の発泡処方欄の数値は質量部を表す。なお、例1〜10は実施例、例11〜16は比較例である。
【0039】
以下の例1〜例16で使用したポリオールは以下の方法で製造した。なお不飽和度の測定はJIS K−1557に準拠した方法で実施した。後述するポリオールAの製造において用いたDMC−グライム錯体触媒とは、亜鉛ヘキサシアノコバルテート−エチレングリコールジメチルエーテル錯体触媒を示し、ポリオールCおよびDの製造において用いたKOH触媒とは水酸化カリウム触媒を示す。また開始剤1は、グリセリンにプロピレンオキシドを付加させた水酸基価56mgKOH/gの化合物であり、開始剤2は、グリセリンにプロピレンオキシドを付加させた水酸基価168mgKOH/gの化合物である。
【0040】
ポリオールAの製造
開始剤1の3000gの存在下、DMC−グライム錯体触媒を用いてプロピレンオキシド21700gを約120℃で反応させ、次いでKOH触媒を用いてエチレンオキシド1300gを約120℃で反応させ重合を完了した。反応後、吸着剤(合成ケイ酸マグネシウム)処理、濾過を行い、水酸基価が9.14mgKOH/g、不飽和度が0.038meq/gのポリオキシアルキレンポリオールAを得た。
【0041】
ポリオールCの製造
開始剤2の1000gの存在下、KOH触媒を用いてプロピレンオキシド4250gを約110℃で反応させ、次いでエチレンオキシド800gを約120℃で反応させ重合を完了した。反応後、吸着剤(合成ケイ酸マグネシウム)処理、濾過を行い、水酸基価が34.0mgKOH/g、不飽和度が0.056meq/gのポリオキシアルキレンポリオールCを得た。
【0042】
ポリオールDの製造
開始剤2の1000gの存在下、KOH触媒を用いてエチレンオキシド10質量%を含むエチレンオキシドとプロピレンオキシドの混合物2200gを約110℃で反応させ製造を完了した。反応後、吸着剤(合成ケイ酸マグネシウム)処理、濾過を行い、水酸基価が56.1mgKOH/g、不飽和度が0.045meq/gのポリオールDを得た。
【0043】
表1〜表4に示す原料及び配合量(数字は質量部を示す。)を用いて軟質フォームを製造した。例1〜10は、これらの原料及び配合剤のうち、ポリイソシアネート以外の全原料の混合物の液温を50℃±1℃に調整し、ポリイソシアネート化合物溶液を液温20±1℃に調整し、ポリオール含有混合物にポリイソシアネート化合物を所定量加えて、全量1kgを高速ミキサーで5秒間混合し、室温状態で上部が開放になっている縦横および高さが各々300mmの木箱に注入した。ポリウレタンフォームを取り出して24時間以上放置してから各種物性の測定を行った。
例11〜16については、ポリイソシアネート以外の全原料の混合物およびポリイソシアネート化合物溶液をそれぞれ25℃±1℃に調整する以外は、全て例1〜10と同様にしてポリウレタンフォームを製造した。
【0044】
その測定結果を表2〜表4に示す。なお、フォーム物性の測定方法は下記に準拠し、密度に関してはフォームの中央部から端部を除いて縦横各100mm、高さ50mmの大きさに切り出したものを測定に用いた。なお、表2〜表4中の不飽和度はポリオールとポリマー分散ポリオール中のベースポリオールの総不飽和度であり、単位は(meq/g)である。
【0045】
以下に、軟質フォームの物性の測定に用いた規格を示す。
コア密度(単位:kg/m)、25%硬さ(ILD)(単位:N/314cm)、CLD硬度(単位:N/cm)、コア反発弾性率(単位:%)、引き裂き強度(単位:N/cm)、引っ張り強度(単位:kPa)、伸び率(単位:%)、乾熱圧縮永久歪(単位:%)、通気性(単位:ft/min(SI換算:28.3L/min))はJIS K−6400に準拠した方法である。なお、フォームの安定性(セトリング率)は、以下の式に基づき算出し、セトリング率が0%〜20%未満:良好○、20%以上〜40%未満:ほぼ良好△、40%以上:×として評価した。セトリング率=((最高発泡高さ−最終発泡高さ)/最高発泡高さ)×100また、独立気泡性(クラッシング性)については、発泡後収縮なし:○、発泡後収縮があるが数回クラッシング後もとに戻る:△、発泡後収縮があり数回のクラッシング後もとに戻らず:×として評価した。
【0046】
ポリイソシアネートd3の合成
1Lの三つ口フラスコに窒素雰囲気中、クルードMDI(商品名:ミリオネートMR200、日本ポリウレタン工業社製、イソシアネート基含有量31.0%)1000gを仕込み、次いでポリエチレングリコールモノメチルエーテル(商品名:MPG−081、日本乳化剤社製、水酸基価84.0mgKOH/g)36.1gを撹拌下にて連続滴下し、温度70℃にて3時間反応させてイソシアネート基末端プレポリマーを得た。このプレポリマーのイソシアネート基含有量は、29.5質量%であった。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
【表3】

【0050】
【表4】

【0051】
表2〜表4に示した結果から、水酸基価が15mgKOH/g以下のポリオールを用いて製造した例1〜10の軟質フォームは、それよりも水酸基価の高いポリオールを用いて製造した例11〜16の軟質フォームに比べて、優れた機械物性を有していることが分かった。なお例6のポリオール混合物の平均水酸基価は12.0mgKOH/gである。
実施例と比較例とは、イソシアネートがTDIを使用した場合(例1〜6、11、12)とMDI(プレポリマー化した場合を含む)を使用した場合(例7〜10、13〜16)に分けて比較できる。すなわちMDIを使用した場合には、耐久性の指標である乾熱圧縮永久歪(小さい方が好ましい)については、実施例は7%より小さく比較例に比べて好ましい値である。また機械物性としては、引き裂き強度、引っ張り強度、伸び(いずれも大きい方が好ましい)の3点が比較できるが、これらはそれぞれ、実施例は比較例に比べて同等以上の値となっている。一方TDIを使用した場合には、乾熱圧縮永久歪は7%より小さく比較例に比べて好ましい値である。また機械物性については、特に引っ張り強度、伸びについて、実施例は比較例よりも優れた値となっている。
また特にプレポリマー化したMDIを用いることにより、従来は製造が困難とされていた低水酸基価のポリオールを用いた場合でも、フォームの安定性が良好であり(実施例の中でも特に安定していた。)、かつ優れた耐久性を示す軟質フォームが得られることがわかった。
また例1〜10の軟質フォームは、温度変化による物性の変化(−25℃/23℃硬度比)が少ない(理想的には変化がなく、前記の比は1であることが好ましい。)という特徴を有している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオールとポリイソシアネート化合物とを触媒、発泡剤および整泡剤の存在下に反応させて開放状態で軟質ポリウレタンフォームを製造する方法において、ポリオールとして水酸基価が15mgKOH/g以下のポリオールを使用することを特徴とする軟質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項2】
ポリオールの水酸基価が10mgKOH/g未満である請求項1に記載の軟質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項3】
整泡剤として、シリコーン含有量が10〜50質量%であるシリコーン系整泡剤を用いる請求項1または2に記載の軟質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項4】
ポリオールとポリイソシアネート化合物とを触媒、発泡剤および整泡剤の存在下に反応させて開放状態で製造された軟質ポリウレタンフォームであって、ポリオールとして水酸基価が15mgKOH/g以下のポリオールを使用することを特徴とする軟質ポリウレタンフォーム。

【公開番号】特開2008−88438(P2008−88438A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−332642(P2007−332642)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【分割の表示】特願2002−342058(P2002−342058)の分割
【原出願日】平成14年11月26日(2002.11.26)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】