説明

軟質型枠及び軟質型枠ユニット並びに土木用構造物の構築方法

【課題】作用する曲げ力及び引張力に対抗することができ、且つ組み立てが容易な軟質型枠と、この軟質型枠を構成する軟質型枠ユニットと、軟質型枠を用いた土木用構造物の構築方法を提供する。
【解決手段】軟質型枠Aは、表裏のシート材料1、2の周縁部を閉じて袋状とし、該表裏のシート材料1、2に複数箇所で連結された立体補強体3を有する。型枠ユニットBは、表裏のシート材料1、2の間に立体補強体3を配置して連結すると共に周縁部に面ファスナー5を有する。軟質型枠Cは、複数の型枠ユニットBが連結されてなり、最も外側の周縁部が、端部閉止部材9によって閉止されている。シート材料1、2が、織物又は不織布からなる繊維製シートである。立体補強体3が、三次元エキスパンドメタルである。土木用構造物の構築方法は、軟質型枠A、Cに、流動性材料を充填する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水路の護岸や斜面或いは法面等の保護を行う際に用いる軟質型枠と、この軟質型枠を構成する軟質型枠ユニット、及び軟質型枠を用いた土木用構造物の構築方法とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
水路や斜面、法面を含む保護すべき部位に、表裏面を布によって構成した布製の型枠を設置すると共に、この布製の型枠にコンクリートやモルタル、或いは砂等を充填し、充填されたコンクリートやモルタルが固化し、或いは砂が圧密することで、これらの水路の護岸や、斜面或いは法面を保護することが行われている。
【0003】
このような布製の型枠では、充填されたコンクリートやモルタル或いは砂等が固化することによって護岸や保護を行うため施工が容易であり、勾配の異なった複雑な斜面にも良くなじみ、均一な厚みが得られる等の特徴を有する。しかし、鉄筋で補強された現場打ちコンクリートやプレキャストブロックに比較すると、曲げ強度、引張強度が低いため、水路の急流部、急勾配の斜面、法面等、大きな力がかかる可能性のある場所での使用には制約があった。
【0004】
このような問題に対処するために特許文献1に記載されたコンクリート用布製型枠が提案されている。この技術では、上下の生地を結合材によって連結して形成されたコンクリート充填部の長さ方向に補強用索条を設けたものである。このように構成されたコンクリート用布製型枠では、コンクリートが硬化した後、曲げ力が作用した場合でも高い強度を発揮することができるという特徴を有する。
【0005】
【特許文献1】特開平11−336084号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の如く、布製の型枠にコンクリートやモルタル或いは砂等を充填して固化させることで構成した護岸や保護構造は、鉄筋で補強された現場打ちコンクリートやプレキャストブロックに比較すると、曲げ強度、引張強度が低いため、敷設し得る場所に制約があるという問題がある。
【0007】
特許文献1に記載されたコンクリート用布製型枠の場合、曲げ強度、引張強度を強化することができるが、多数の補強用索条を配置することが必要であり、組み立てる際に手間がかかる虞がある。
【0008】
本発明の目的は、作用する曲げ力、引張力に対抗することができ、且つ組み立てが容易な軟質型枠と、この軟質型枠を構成する軟質型枠ユニットと、軟質型枠を用いた土木用構造物の構築方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明に係る軟質型枠は、表裏のシート材料の周縁部を閉じて袋状とした軟質型枠であり、前記表裏のシート材料の間に、該表裏のシート材料に複数箇所で連結された三次元構造補強体を有するものである。
【0010】
上記軟質型枠に於いて、表裏のシート材料の周縁部に面ファスナーを有し、前記表裏のシート材料の間に、該表裏のシート材料に複数箇所で連結された三次元補強体を有する軟質型枠ユニットの複数個が周縁部の面ファスナーによって連結されてなり、且つ、最も外側の周縁部が、該周縁部に設けた面ファスナーを介して端部封止部材によって閉止されていることが好ましい。
【0011】
また上記何れかの軟質型枠に於いて、シート材料が、織物又は不織布からなる繊維製シートであることが好ましい。
【0012】
また上記何れかの軟質型枠に於いて、三次元構造補強体が、三次元エキスパンドメタルであることが好ましい。
【0013】
また上記何れかの軟質型枠に於いて、シート材料と前記三次元構造補強体との連結が、前記軟質型枠の表側及び裏側の両側に於いて、前記シート材料に部分的に織り込まれた連結用ロープ状体と前記三次元構造補強体とを結束材を用いて接続することでなされていることが好ましい。
【0014】
また本発明に係る軟質型枠ユニットは、表裏のシート材料の周縁部に面ファスナーを有し、前記表裏のシート材料の間に、該表裏のシート材料に複数箇所で連結された三次元構造補強体を有するものである。
【0015】
上記軟質型枠ユニットに於いて、シート材料が、織物又は不織布からなる繊維製シートであることが好ましい。
【0016】
また上記何れかの軟質型枠ユニットに於いて、三次元構造補強体が、三次元エキスパンドメタルであることが好ましい。
【0017】
また上記何れかの軟質型枠ユニットに於いて、シート材料と前記三次元構造補強体との連結が、前記軟質型枠の表側及び裏側の両側に於いて、前記シート材料に部分的に織り込まれた連結用ロープ状体と前記三次元構造補強体とを結束材を用いて接続することでなされていることが好ましい。
【0018】
また本発明に係る土木用構造物の構築方法は、上記何れかの軟質型枠に、流動性材料を充填することを特徴とするものである。
【0019】
また上記土木用構造物の構築方法に於いて、流動性材料が水硬性材料であることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の軟質型枠では、表裏のシート材料の間に該表裏のシート材料に複数箇所で連結された三次元構造補強体を有するので、この軟質型枠にコンクリートやモルタル或いは砂等の流動性を持った充填材を充填し、この充填材が固化した後で曲げ力又は引張力が作用した場合、作用した力に対して三次元構造補強体が対抗することができる。このため、高い曲げ強度及び引張強度を発揮することができる。
【0021】
また表裏のシート材料の周縁部に設けた面ファスナーを利用することで連続させて連結することができ、且つ最も外側の周縁部が端部封止部材によって閉止されるので、広い面積を持った袋状の軟質型枠を構成することができ、この広い面積を持った軟質型枠に流動性材料を充填することができる。
【0022】
また本発明の軟質型枠ユニット(以下「型枠ユニット」という)では、表裏のシート材料の周縁部に面ファスナーを有し、前記表裏のシート材料の間に、該表裏のシート材料に複数箇所で連結された三次元構造補強体(以下「立体補強体」という)を有するので、本発明に係る軟質型枠を容易に構成することができる。
【0023】
また上記軟質型枠又は型枠ユニットのシート材料が、織物又は不織布からなる繊維製シートであることで、透水性を発揮させることが可能となり、水分を含有した充填材を加圧充填した場合、水分をシート材料と透過させることが可能となり、速やかな硬化を実現することができる。
【0024】
また上記軟質型枠又は型枠ユニットの立体補強体が、三次元エキスパンドメタルであることで、曲げ剛性が高く且つ曲げに対し高い強度を発揮することができる。このため、充填された充填物が硬化した後、曲げ方向の外力が作用した場合であっても、この外力に対して抵抗することができる。
【0025】
また上記軟質型枠又は型枠ユニットに於けるシート材料と前記立体補強体との連結が、前記軟質型枠の表側及び裏側の両側に於いて、前記シート材料に部分的に織り込まれた連結用ロープ状体と前記立体補強体とを結束材を用いて接続することでなされていることで、表裏のシート材料と立体補強体との位置関係を保持することが可能となり、該立体補強体を厚さ方向の略中央に位置させることができる。
【0026】
また本発明の土木用構造物の構築方法では、上記した何れかの軟質型枠に水硬性材料を含む流動性材料を充填することで、水路の護岸や、斜面或いは法面の保護を目的とした土木用構造物を構築することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明に係る軟質型枠及び型枠ユニットの最も好ましい実施形態について図を用いて説明し、合わせて土木用構造物の構築方法の手順を説明する。図1は軟質型枠の構成を説明する図である。図2は型枠ユニットの展開図である。図3は表裏のシート材料と立体補強体とを連結した状態を説明する図である。図4は複数の型枠ユニットを連続させて構成した軟質型枠を説明する模式図である。図5は隣接させた型枠ユニットを鉄筋を介して連続させた軟質型枠を説明する模式図である。
【0028】
先ず、図1により軟質型枠Aの構成について説明する。軟質型枠Aは、該軟質型枠Aの表面側に配置される表面シート材料1と、裏面側に配置される裏面シート材料2と、これらのシート材料1、2の間に配置されると共に複数箇所で連結された立体補強体(三次元構造補強体)3とを有し、且つ周縁部が閉じた袋状に構成されている。
【0029】
軟質型枠Aの表面シート材料1及び裏面シート材料2は、柔軟性を持ったシート状の材料であれば用いることが可能である。このようなシート材料としては、例えばゴムシートを含む可撓性を有する合成樹脂製のもの、或いは織布、不織布を含む繊維製のシートを選択的に用いることが可能である。
【0030】
特に、軟質型枠Aに充填する充填材が水分を含有する流動性材料であるような場合、透湿性を有する織布、不織布からなる繊維製シートであることが好ましい。このような繊維製シートを用いて表裏のシート材料1、2とした場合、水分を含有する充填材を充填したとき、充填に伴って含有した水分が表裏シート材料1、2から外部に浸出することが可能となり、速やかな固化を実現することが可能となる。
【0031】
表面シート材料1と裏面シート材料2の間に配置されると共に接続される立体補強体3としては、適度な厚さを有し、軟質型枠Aに充填される流動性を持った充填物が流動することが可能で、且つ適度な引張強度および曲げ強度を持つものであれば利用することが可能である。このような立体補強体3としては、例えばジグザグに折り曲げて形成した線材を複数並列させると共に、これらの線材を結合させて形成した立体網状体や、複数の金属網状体を複数並列させ、これらを複数の線材により結合して形成した立体網状体等がある。
【0032】
更に、相互に平行な骨組を表面に有し、これらの骨組を結合する傾斜した交差支柱を内部に有する三次元エキスパンドメタルも好ましく利用することが可能である。この三次元エキスパンドメタルは、薄い鋼板を環状ナイフを有するローラ間を通過させる等の方法により、長手方向の切断部を形成し、更に、横方向に切断した後、伸張力及び/又は押圧力を付与して展開することにより形成することが可能である。この三次元エキスパンドメタルを用いると、軽量で且つ量産が可能であるため、品質の安定した軟質型枠Aとすることが可能となって好ましい。
【0033】
表面シート材料1、裏面シート材料2と立体補強体3を連結する構造については特に限定するものではなく、三者が安定した連結状態を維持し得るような連結構造であれば良く、且つ連結する際の作業が容易であれば良い。このような連結構造としては、例えば充分に長く且つ丈夫な糸を用いて縫製することで連結する構造がある。また、予め表面シート材料1、裏面シート材料2の内部側にテープを縫い込み或いは接着によって取り付けておき、このテープを利用して三者を連結する構造であっても良い。
【0034】
更に、予め連結用のロープ状体を織り込んで適宜設けた織組織による浮きループ部を利用して結束材によって結束することで連結するように構成しておくことが好ましい。この構成では、連結用ロープ状体の浮きループ部に、例えば結束テープ、針金、紐等の中から選択された結束材を通し、この結束材によって立体補強体3を連結することが可能である。特に、表裏のシート材料1、2に予め連結用ロープ状体を織り込んでおくことで、夫々のシート材料1、2の強度を向上させることが可能となる。
【0035】
軟質型枠Aの周縁部を閉じる構造は特に限定するものではなく、この軟質型枠Aに流動性を持った充填物を充填する際に、この充填物が漏洩することがない程度に閉じていれば良い。即ち、図に示すように、表裏に配置される各シート材料1、2の周縁部分を軟質型枠Aの厚さ分延長させておき、この延長部の端部を重ね合わせてハンドミシン等の縫製器具を利用して縫い合わせることで縫製部4を形成して閉止することが可能である。
【0036】
また、表裏のシート材料1、2の周縁部を閉じる際に面ファスナーを用いることも可能である。この場合、予め表裏のシート材料1、2の周縁部に面ファスナーを取り付けておき、表裏のシート材料1、2の周縁部を軟質型枠Aの端面(側面)で重ね合わせて面ファスナーを噛合させて閉止することが可能である。このように、面ファスナーを利用して閉止し得るように構成することで、閉止に要する作業を極めて簡単に行うことが可能となる。
【0037】
更に、軟質型枠Aの周縁部を閉止する場合、予め軟質型枠Aの厚さに対応する幅を持った第3のシート材料を用意しておき、この第3のシート材料と表裏のシート材料1、2の周縁部とを結合することで端面(側面)を閉止し得るように構成することも可能である。この場合、第3のシート材料と、表裏のシート材料1、2とを、前述したハンドミシンを用いた縫製により、面ファスナーを利用して、閉止することが可能である。
【0038】
軟質型枠Aに流動性を持った充填物を充填する場合、該軟質型枠Aに図示しない充填口が接続され、この充填口から充填物が充填される。この充填口の構造は、水路の護岸や斜面或いは法面等の保護を行う際に用いる従来の布製の型枠の場合と同じである。
【0039】
次に、軟質型枠Aを構成する際に用いて有利な型枠ユニットBの構成について、該型枠ユニットBを展開した図2により説明する。尚、図に於いて、前述の軟質型枠Aと同一の部分又は同一の機能を有する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0040】
図に於いて、表面シート材料1、裏面シート材料2は予め設定された寸法を持ったシート状の材料によって構成されており、周縁部には全周にわたって面ファスナー5が縫製或いは接着等の手段で一体的に取り付けられている。尚、前述したように、表裏のシート材料1、2としては可撓性を有するシート状の材料であれば用いることが可能であるが、本実施例では織布を用いており、この織布の周縁に面ファスナー5を縫製して取り付けている。
【0041】
また夫々のシート材料1、2には、予め同じ方向(各シート材料1、2の長手方向)に連結用ロープ状体6が織り込まれており、所定の間隔で浮きループ部6aが設けられている。尚、連結用ロープ状体6に設ける浮きループ部6aの間隔は特に限定するものではなく、立体補強体3の形状等の条件に対応させて適宜設定することが可能である。
【0042】
立体補強体3としては、所定位置に多数のスリットを形成した薄い鋼板を引き延ばして立体的に形成したエキスパンドメタルを用いている。この立体補強体3は、直線状に形成された峰部3aと谷部3bとが、高さ方向及び水平方向に交互に配置されると共に、斜めに配置された連結部3cによって連結されて構成されている。
【0043】
立体補強体3の平面寸法は各シート材料1、2の平面寸法よりも小さい値を有しており、該シート材料1、2の周縁部に設けた面ファスナー5よりも内側に配置し得るように構成されている。そして立体補強体3は、各シート材料1、2の間で、且つ峰部3a、谷部3bが連結用ロープ状体6と並行するように配置される。従って、立体補強体3は、長手方向の端部側から見たとき峰部3aと谷部3bが交互にあるジグザグ状となり、幅方向の端部側から見たとき上下に峰部3aと谷部3bが連続して配置されこれらの間をジグザグ状に連結部3cが配置される。
【0044】
上記の如く配置された立体補強体3は、図3に示すように、複数箇所で表面シート材料1と裏面シート材料2とに連結され、三者が連結されることで型枠ユニットBが構成されている。
【0045】
立体補強体3と各シート材料1、2との連結は、結束材7を用いて行われる。結束材7としては、連結用ロープ状体6の浮きループ部6aを利用して立体補強体3を各シート材料1、2に連結することが可能で、且つ簡単に離脱し得ないものであれば良く、材料や仕様を限定するものではない。このような結束材7としては、例えば、布製の或いは合成樹脂製のテープ、針金、紐等があり、何れも好ましく用いることが可能である。
【0046】
図3(a)は、短めの結束材7を用いて、立体補強体3の峰部3aと表面シート材料1を、谷部3bと裏面シート材料2を、夫々連結したものである。また同図(b)は、長めの結束材7を用いて立体補強体3を包み込むようにして表裏のシート材料1、2に連結したものである。
【0047】
立体補強体3と表裏のシート材料1、2との連結を、何時行うかは限定するものではなく、予め工場からの出荷段階で行っても良く、また敷設すべき現場で行っても良い。何れにしても、結束剤7を用いて立体補強体3と表裏のシート材料1、2とを連結する作業は容易であり、短時間で簡単に行うことが可能である。
【0048】
例えば、表裏のシート材料1、2及び立体補強体3の寸法を規格化しておき、予め工場段階で表裏のシート材料1、2、立体補強体3を連結して組み立てておくことで、品質の安定した型枠ユニットBを提供することが可能である。更に、工場段階で組み立てた型枠ユニットBを施工現場に搬入して施工することで、現場の工事を容易に行うことが可能となる。
【0049】
上記の如く構成された型枠ユニットBは、面ファスナー5を利用して隣接する他の型枠ユニットBと接続することが可能であり、また面ファスナー5を利用して表裏のシート材料1、2を直接接続して、或いは第3のシート材料を接続して端面(側面)を閉止することも可能である。
【0050】
図4は複数の型枠ユニットBを連続させて構成した軟質型枠Cの構成を説明する図である。図に示すように、複数の型枠ユニットBを連続して配置しておき、夫々の型枠ユニットBを構成する表面シート材料1の周縁に設けた面ファスナー5どうしを接続すると共に、裏面シート材料2の周縁に設けた面ファスナー5どうしを接続することで、複数の型枠ユニットBを連結して面積の大きい軟質型枠Cを構成することが可能である。
【0051】
特に、軟質型枠Cの端部に配置された型枠ユニットBの表面シート材料1と裏面シート材料2との間には第3のシート材料となる端部閉止部材9が接続されており、この端部閉止部材9によって軟質型枠Cの端部側面が閉止されている。
【0052】
端部閉止部材9は、各シート材料1、2と同じ材質を持ったシート材料からなり、型枠ユニットBの長さ方向の端部側面に適用されるものと、幅方向の端部側面に適用されるものとの二種類が用意される。即ち、端部閉止部材9は、軟質型枠Cの厚さに対応した幅寸法と型枠ユニットBの幅寸法に対応した長さ寸法を有するものと、軟質型枠Cの厚さに対応した幅寸法と型枠ユニットBの長さ寸法に対応した長さ寸法を有するものとの二種類のものが構成される。この端部閉止部材9の周縁部には面ファスナー5が取り付けられており、この面ファスナー5を利用して表裏のシート材料1、2の周縁部に設けた面ファスナー5と接続し得るように構成されている。
【0053】
このため、図4に示すように、面ファスナー5を利用して複数の型枠ユニットBを連結させると共に、端部に配置された型枠ユニットBの長手方向の端部側面、及び幅方向の端部側面に端部閉止部材9を連結することで、袋状に形成された軟質型枠Cを構成することが可能である。
【0054】
複数の型枠ユニットBを連結して構成した軟質型枠Cでは、表面シート材料1どうし、裏面シート材料2どうしは連続しているものの、立体補強体3どうしは連結することがなく互いに独立している。このように、立体補強体3が互いに独立した状態で水路の護岸や斜面或いは法面等の保護を行うことが可能である。
【0055】
しかし、連結した複数の型枠ユニットBの一体化をはかる場合、図5に示すように、立体補強体3を棒状体10によって接続することが好ましい。棒状体10としては、例えば、鉄筋材のような適度の強度を持った棒状の部材を用いることが可能である。鉄筋材からなる棒状体10は、必要に応じて、一方向のみに或いは縦横二方向に配置することが可能であり、立体補強体3の補強効果を補うために、連続的に配置することも行われる。
【0056】
次に、本発明に係る土木構造物の構築方法について説明する。この土木構造物の構築方法は、上記した軟質型枠A或いは軟質型枠Cを利用して目的の水路の護岸や、斜面或いは法面等の保護すべき部位(以下、法面等)を保護する土木構造物を構築するものであり、法面等に沿って軟質型枠Cを敷設し、この軟質型枠Cに流動性材料を充填して硬化させることによって構築するものである。
【0057】
先ず、保護すべき法面等の施工現場に予め工場段階で組み立てられている型枠ユニットBを搬入して土木構造体を構築する場合について説明する。
【0058】
複数の型枠ユニットBを保護すべき法面等の表面に敷き並べ、必要に応じて裏面シート材料2にアンカーを打ち込むことによって法面等に固定する。次いで、隣接する型枠ユニットBの裏面シート材料2どうし、表面シート材料1どうしを、夫々面ファスナー5を介して接続する。次に、複数の表面シート材料1、裏面シート材料2が接続された最も外側の端部側面に対し、面ファスナー5を介して端部閉止部材9を取り付けることで閉止する。
【0059】
複数の型枠ユニットBを連続させて接続することで軟質型枠Cを構成するに際し、必要に応じて隣接する立体補強体3を棒状体10によって接続する。
【0060】
上記の如くして複数の型枠ユニットBを接続した軟質型枠Cを構成することが可能である。この軟質型枠Cは、表裏両面が表面シート材料1、裏面シート材料2によって、端面側面が端部閉止部材9によって閉塞された袋状に構成されている。このため、軟質型枠Cの所定位置に充填材の充填口(図示せず)が設けられる。この充填口は従来の布製の型枠に充填材を充填する場合と同じ手順と構造を持って構成される。
【0061】
また複数の型枠ユニットBを接続して構成した軟質型枠Cの面積(容積)は無制限に大きくし得るものではなく、軟質型枠Cに充填する充填材の種類や充填機器の能力に対応して設定される。このため、保護すべき法面等の面積が広い場合には、独立した複数の軟質型枠Cを構成すると共に、これらの軟質型枠Cを並べて設置することが必要である。
【0062】
上記の如くして保護すべき法面等に軟質型枠Cを構成した後、図示しない充填口を利用して流動性材料を充填する。軟質型枠Cに対する流動性材料の充填はポンプによる圧送によって行うのが一般的である。そして、流動性材料を圧力充填することによって、流動性材料が含有する水分が表裏のシート材料1、2及び端部閉止部材9を透過し、速やかな硬化を実現することが可能である。
【0063】
ここで、軟質型枠Cに充填する流動性材料とは、充填時に流動性を有し、経時的に硬化するような材料であれば良い。このような材料としては、例えばコンクリート、モルタル、ベントナイト、泥等があり、何れも利用することが可能である。また流動性材料の性状としては、液体、粉体、粒体等の何れであっても良い。
【0064】
特に、表裏のシート材料1、2が透水性を有する織布或いは不織布によって構成される場合、流動性材料としては、コンクリートやモルタルを含む水硬性材料であることが好ましい。このように、流動性材料が水硬性材料である場合、軟質型枠Cに対する充填時に含有する水分が透過して速やかな硬化を実現することが可能である。
【0065】
そして、軟質型枠Cに充填された流動性材料が硬化することによって、目的の法面等の表面に硬化した層が形成され、この硬化した層によって法面等を保護することが可能である。
【0066】
次に、型枠ユニットBを予め工場で組み立てておくことなく、法面等の施工現場で組み立てる場合の手順について説明する。
【0067】
先ず、法面等の表面に複数の裏面シート材料2を隣接させて敷き込むと共に、隣接する裏面シート材料2を面ファスナー5を介して連結する。更に、必要に応じてアンカーを利用して裏面シート材料2を法面等の表面に固定する。次に、裏面シート材料2上に立体補強体3を設置すると共に該立体補強体3の上部に表面シート材料1を被せる。このとき、必要に応じて立体補強体3を棒状体10によって接続する。
【0068】
裏面シート材料2に立体補強体3、表面シート材料1を設置しつつ、或いは設置した後、結束材7を用いて表裏のシート材料1、2と立体補強体3とを連結する。また隣接する表面シート材料1どうしを面ファスナー5を介して連結する。次に、複数の表面シート材料1、裏面シート材料2が接続された最も外側の端部側面に対し、面ファスナー5を介して端部閉止部材9を取り付けることで閉止する。
【0069】
上記手順を経ることで、複数の型枠ユニットBを接続した軟質型枠Cを構成することが可能である。尚、保護すべき法面等に複数の裏面シート材料2を敷き込んだ後、立体補強体3の配置と連結、立体補強体3の上部に対する表面シート材料1の配置と連結、を含む作業の順位は限定するものではなく、如何なる順序で作業を行っても良い。
【0070】
上記の如くして構成された軟質型枠Cに流動性材料を充填し、充填された流動性材料が硬化することによって目的の法面等を保護することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の軟質型枠、軟質型枠ユニットは、水路の岸を保護し、斜面或いは法面等の保護すべき部位を保護する際に利用することが可能である。また本発明の土木用構造物の構築方法は、上記軟質型枠を利用して保護すべき部位を保護することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】軟質型枠の構成を説明する図である。
【図2】型枠ユニットの展開図である。
【図3】表裏のシート材料と立体補強体とを連結した状態を説明する図である。
【図4】複数の型枠ユニットを連続させて構成した軟質型枠を説明する模式図である。
【図5】隣接させた型枠ユニットを鉄筋を介して連続させた軟質型枠を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0073】
A、C 軟質型枠
B 型枠ユニット
1 表面シート材料
2 裏面シート材料
3 立体補強体(三次元構造補強体)
3a 峰部
3b 谷部
3c 連結部
4 縫製部
5 面ファスナー
6 連結用ロープ状体
6a 浮きループ部
7 結束材
9 端部閉止部材
10 棒状体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表裏のシート材料の周縁部を閉じて袋状とした軟質型枠であり、前記表裏のシート材料の間に、該表裏のシート材料に複数箇所で連結された三次元構造補強体を有することを特徴とする軟質型枠。
【請求項2】
表裏のシート材料の周縁部に面ファスナーを有し、前記表裏のシート材料の間に、該表裏のシート材料に複数箇所で連結された三次元補強体を有する軟質型枠ユニットの複数個が周縁部の面ファスナーによって連結されてなり、且つ、最も外側の周縁部が、該周縁部に設けた面ファスナーを介して端部封止部材によって閉止されていることを特徴とする請求項1に記載した軟質型枠。
【請求項3】
前記シート材料が、織物又は不織布からなる繊維製シートであることを特徴とする請求項1又は2に記載した軟質型枠。
【請求項4】
前記三次元構造補強体が、三次元エキスパンドメタルであることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載した軟質型枠。
【請求項5】
前記シート材料と前記三次元構造補強体との連結が、前記軟質型枠の表側及び裏側の両側に於いて、前記シート材料に部分的に織り込まれた連結用ロープ状体と前記三次元構造補強体とを結束材を用いて接続することでなされていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載した軟質型枠。
【請求項6】
表裏のシート材料の周縁部に面ファスナーを有し、前記表裏のシート材料の間に、該表裏のシート材料に複数箇所で連結された三次元構造補強体を有することを特徴とする軟質型枠ユニット。
【請求項7】
前記シート材料が、織物又は不織布からなる繊維製シートであることを特徴とする請求項6に記載した軟質型枠ユニット。
【請求項8】
前記三次元構造補強体が、三次元エキスパンドメタルであることを特徴とする請求項6又は7に記載した軟質型枠ユニット。
【請求項9】
前記シート材料と前記三次元構造補強体との連結が、前記軟質型枠の表側及び裏側の両側に於いて、前記シート材料に部分的に織り込まれた連結用ロープ状体と前記三次元構造補強体とを結束材を用いて接続することでなされていることを特徴とする請求項6乃至8の何れかに記載した軟質型枠ユニット。
【請求項10】
土木用構造物の構築方法であって、請求項1乃至5の何れかに記載した軟質型枠に、流動性材料を充填することを特徴とする土木用構造物の構築方法。
【請求項11】
前記流動性材料が水硬性材料であることを特徴とする請求項10に記載した土木用構造物の構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−287306(P2009−287306A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−141980(P2008−141980)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】